尿 路 性 器 感 染 症 に 対 す るTE-031の
臨 床 的 検 討
山 越 昌 成 ・長 田 尚 夫 ・中 目真 理 子 ・井 上 武 夫
聖マ リア ンナ医科大学泌尿器科学教 室
(主任:井 上武夫教授)
平 野 昭 彦
聖 マ リア ンナ医科 大学 附属東横病 院泌尿 器科
男子 尿 道 炎 患 者44例 お よ びChlamydia trachomatis(以 下C. Tと 略 す)陽 性 の女 性 パ ー トナ ー6例 の 計 50例 につ きTE-031の 臨床 効果 を検 討 した結 果,以 下 の 成績 を得 た 。 1. C. T陽 性 の 非 淋 菌 性 尿 道 炎(NGU)17例 で は 著 効14例,や や 有 効2例,無 効1例 で 有 効 率 82.4%で あ っ た。 2. C. T陽 性 の淋 菌 性 尿 道 炎(GU)7例 で は著 効4例,有 効1例,や や 有 効1例,無 効1例 で有 効 率71.4%で あ っ た。 3. C. T陰 性 のNGU11例 で は著 効9例,有 効2例 で有 効 率100%で あ った 。 4. C. T陰 性 のGU9例 で は著 効2例,や や 有 効3例,無 効4例 で 有 効 率22.2%で あ っ た。 5. C. T陽 性 で 無 症 状 の 女 性 パ ー トナ ー6例 で は本 剤 投 与 後,全 例 でC. Tは 陰 性 化 し全 例 著 効 と な り有 効率100%で あ った 。 6. 全 群 中 のC. T陽 性 の30例 で は 本剤 投 与 終 了 時 に29例 でC. Tは 陰 性 化 し消 失率 は96.7%で あ っ た 。 またNeisseria gonorrhoeaeの 消 失 率 は本 剤 投 与3日 後 で67%と 不 良 で あ った 。 7. 検討 した50症 例 全例 で 本 剤 に よる と思 わ れ る 自 ・他 覚 的 副 作 用 は 認 め られ な か った 。 また,本 剤 投 与 前 後 の 臨 床 検 査 を32例 に 行 っ た結 果,総 ビ リル ビ ン値,S-Crの 軽 度 上 昇 を 各 々2例 に, γ-GTP, Al-P, Naの 軽 度 上 昇 を各 々1例 に認 め たが 本 剤 との 因果 関 係 は な い と思 われ た。 以 上 よ り本剤 はC. T陽 性 のNGU, C. T陰 性 のNGUな ら び にC. T陽 性 の 女 性 パ ー トナ ー に対 して 極 めて 有効 か つ安 全 で有 用 な薬 剤 と考 え られ た 。 大正製 薬研 究 所 で 開発 さ れ たTE-031はErythromycin (EM)か ら誘 導 され た新 しい マ ク ロ ラ イ ド系 抗 生 物 質 で Fig. 1に 示 す化 学構 造 式 を 有 して い る。 本 剤 の 特 徴 は EMと の比 較 で酸 に対 して 極 め て 安 定 で 吸 収 ・分 布 の 高 い事があげ られ,血 中濃 度,尿 中排 泄 と もに 高 い事 が確 認 されてい る。 また,尿 道 炎 の 原 因 とな り得 る グ ラ ム 陽 性菌,ク ラ ミジ ア,淋 菌 等 に 対 す る 抗 菌 力 はEMと 同等 ない しは1管 程 度 強 い 事 が 報 告 され て い る1)。今 回,わ れわれ は本 剤 を尿 路性 器 感 染 症 に使 用 し,臨 床効果 なら びに安全性 につ き検 討 した の で そ の成 績 を報 告 す る。 I. 対 象 お よび 検 討 方 法 1. 対象 症例 昭和61年1月 か ら10月 まで の10ヶ 月 間 に 当科 を受 診 し た男子尿 道 炎患 者 の うち 本剤 投 与 前 後 の評 価 可 能 な44症 例 とそ の女 性 パ ー トナ ーでC . T陽 性 者6症 例 の 計50症 例 を対 象 と した 。 なお,女 性 パ ー トナ ー は全 例 無 症 状 で あ っ た が ,C. T 陽 性 の た め 非 淋 菌 性 子 宮 頸 管 炎(NGC)と して 検 討 に 加 え た 。 年 齢 は19∼53歳 で 平 均 年 齢33歳 で あ った 。 こ の50症 例 を 淋 菌 お よ びC. Tの 有 無 に よ り以 下 の5 群 に 分 け て 検 討 した 。 す な わ ち,第I群:淋 菌 陰 性, C. T陽 性 群17例(NGU, C. T(+))第II群:淋 菌 陽 性, C. T陽 性 群7例(GU, C. T(+))第III群:淋 菌 陰 性,C. T 陰 性 群11例(NGU, C. T(-))第IV群:淋 菌 陽性,C. T陰 性 群9例(GU, C. T(-))第V群:淋 菌 陰 性,C. T陽 性 の 女 性 パ ー トナ ー6例(NGC, C. T(+))の5群 に分 け て 検 討 した 。 2. 投 与 薬 剤,投 与 方 法 お よび投 与期 間 非 淋菌 性 尿 道 炎 症例 す な わ ち 第1群 お よび 第 皿群 につ い て は当 初 の7例 に 対 してTE-031150mgを1日2回 (朝,夕 食 前),後 の21症 例 に対 して はTE-031 200mg を1日2回(朝,夕 食前)原 則 と して14日 間連 続 経 口投 与 した。 ま た,淋 菌性 尿 道 炎 す な わ ち 第II群 お よび 第IV群 につい て は 当 初 の7例 に 対 し てTE-031 150-200mgを1 日2回(朝,夕 食 前)14日 間 連 続 経 口 投 与 し た が,後 の9 例 に つ い て は3日 間TE-031 400mgを1日2回(朝, 夕 食 前)経 口 投 与 し,以 後4日 後 ∼14日 後 ま でTE-031 200mgを1日2回(朝,夕 食 前)連 続 経 口 投 与 を 原 則 と し た 。 ま た,C. T陽 性 の 女 性 パ ー トナ ー(NGC, C. T(+))に 対 し て はTE-031 200mgを1日2回(朝,夕 食 前)14日 間 連 続 経 口 投 与 し た 。
Fig. 1 Chemical structure of TE-031
Code number: TE-031 Chemical name:
(-) (3R, 4S, 5S, 6R, 7R, 9R, 11R, 12R, 13S, 14R)-4-[(2,
6-dideoxy-3-C-methyl-3-O-methyl-a-L-ribo-hexo-pyranosyl) oxy]-14-ethyl-12, 13-dihydroxy-7-meth- oxy-3,5,7,9,11,13-hexamethy1-6-[[3,4,6-trideoxy-3-(dimethylamino)-ƒÀ-1)-xylo-hexopyranosyl] oxy] oxacyclotetradecane-2,10-dione M. F.: C38H69N013 M. W.: 747.96 消 炎鎮 痛 剤 等 の 併 用 薬 は原 則 と して投 与 しなか った。 3. 細 菌 学 的 検 討 淋 菌 を含 む一 般 細 菌 につ い て は尿 道分 泌物 の グ ラム染 色 標 本 鏡 検 と培 養 に よ り検 査 し,C. Tに つ い て は尿道 ス ワ ブ を用 いてEnzyme immunoassay(Chlamydiazyme(R)) な ら び に直 接 塗 抹 法(Micro Trak(R))にて 検 出 を試み2.3), ど ち ら か 一 方 以 上 が 陽 性 の場 合C. T陽 性 と判 定 した。 細 菌 学 的検 討 は 原則 と して本 剤 投 与 前,3日 後,7日 後, 14日 後 また は投 与 終 了時 の各 観 察 日毎 に行 った。 4. 自 ・他 覚 症 状 の観 察 本 剤投 与 前,3日 後,7日 後,14日 後 また は投 与終了 時 に(1)排膿,排 尿 痛 な どの 自覚 症 状(2)肉眼 的尿道 分泌物 の 有 無 な らび に性 状(膿 性 ま た は漿性)(3)直接 塗抹 標本中 の 多 核 白血 球(PMN)の 数 の各 項 目に つ いて観 察 した。 5. 臨 床 効 果 判 定 各 観 察 日毎 に行 う淋 菌 を含 む一 般 細 菌,C. T,尿 道分 泌 物(肉 眼 的 所 見,直 接 塗 抹 標 本 中のPMN数)検 査 お よ び 自覚 症 状 の 有 無 に よ りExcellent, Good, Fair, Poor の4段 階 で 効 果 判 定 を行 った(Table 1)。 またExcellent とGoodを 合 せ た もの を有 効 率 と した。 効 果 判 定表 の (-)と は尿 道 分 泌 物 につ い て は 肉眼 的 に認 め られない事, 直 接 塗抹 標 本上(1000倍)PMNが4個/毎 視 野以 下であ る 事,C. Tに つ い て はChlamydiazyme(R),Micro Trak(R)と もに 陰性 で あ る事,淋 菌 につ い て は グラ ム染色標 本,培 養 と もに陰 性 で あ る事,自 覚症 状 につ い ては排 膿,排 尿 痛 等 が すべ て認 め られ ない 事 と した。 また,尿 道 分 泌 物 につ い て は特 にそ の程 度 を客観的 に 表現 す る た め,以 下 の 様 に細 分化 して 表現 した。 1) 尿 道分 泌 物(肉 眼 的 所 見) +++:自 然 に 排 出 あ り++:し ご くと 多 量 に排 出 あ り +:し ご く と少量 の排 出あ り-:な し 2) 尿 道 分泌 物(顕 微 鏡 所 見:PMN数) ++++:≧30/hpf +++:29∼10/hpf ++:9∼5/hpf +:4∼1/hpf -:0/hpf
Table 1 Criteria for evaluation of clinical efficacy of TE-031 in genitourinary infections
6.副 作用
自 ・他覚 的副作 用 は全 例 につ い て観 察 し,一 部 の 症例 では投与前後 の 血 液 ・生 化 学 検 査 も併 せ て行 った 。
II. 成 績
第1群 ∼ 第V群 の 臨 床 成 績 をTable 2∼6に 示 す 。
Table 2 Clinical summary of C. trachomatis-positive NGU (Group I) treated with TE-031
1. 総 合 臨床 成績
第I群 で は投 与7日 後 ∼24日 後 に総 合 臨 床 効 果 判定 を 行 い,7日 後 判 定3例,10日 後 判 定1例,12日 後 判定1 例,14日 後 判 定11例,24日 後 判 定1例 の 計17例 中 著 効
(Excellent)が14例,や や 有 効(Fair)が2例,無 効(Poor) は1例 で 有 効 率82.4%で あ っ た。 第II群 で は,4日 後判 定1例,7日 後 判 定4例,8日 後 判 定1例,14日 後 判定 1例 の計7例 中 著 効4例,有 効1例,や や 有 効1例,無 効1例 で 有 効 率71.4%で あ っ た。 第 皿群 で は,7日 後 判 定4例,8日 後 判 定1例,14日 後 判 定4例,16日 後 判定 2例 の 計11例 中 著 効9例,有 効2例 で 有 効 率100%で あ った 。 第IV群 で は,2日 後判 定2例,3日 後 判 定2例, 4日 後判 定1例,5日 後 判定1例,7日 後 判 定2例,9 日後 判定1例 の 計9例 中 著効2例,や や 有 効3例,無 効 4例 で 有効 率22.2%で あ っ た。 第V群 で は,10日 後 判定 1例,14日 後 判 定4例,15日 後 判 定1例 の 計6例 全例 が 著 効 を示 し有 効 率100%で あ っ た。 2. 自 ・他 覚 所 見 の 経 時 的推 移 投 与 後 の効 果 判 定 の 指標 と した 自覚 症 状,尿 道 分 泌 物 中 の 多核 白血 球(PMN)数 の 経 時 的 推 移 を 消 失 率 と して Fig. 2,3に 示 す 。 評価 日に つ い て は,原 則 と して 本 剤 投 与1日 後 か ら3日 後 まで を3日,4日 後 か ら7日 後 ま で を7日,8日 後 か ら16日 後 まで を14日 と して扱 った。 Fig. 2は 第1群,第III群 を併 せ たNGU群 で,自 覚症状 は投 薬3日 後 に25%が 消 失,7日 後 で は93%,14日 後で は92%の 消 失 率 で あ っ た。 尿 道 分 泌 物 中のPMNは 投薬 3日 後 で25%が 消 失,7日 後 で は47%,14日 後で は77% の 消 失 率 で あ った 。
Fig. 3は 第R群,第IV群 を併 せ たGU群 で,自 覚症状 は投 薬3日 後 で50%が 消 失,7日 後 で は62%,14日 後で は62%の 消 失 率 で あ った 。 尿 道 分 泌 物 中 のPMNは 投薬 3日 後 で は17%,7日 後 で は23%が 消 失,14日 後 では 54%の 消 失 率 で あ った 。 3. 微 生物 学 的成 績 Fig. 3に 投 薬 後 の 淋 菌 の 消 長 を,Fig. 4にC.Tの 消 長 を示 す。 評 価 日につ いて は,原 則 と して本 剤投与1日 後 か ら3日 後 まで を3日,4日 後 か ら7日 後 まで を7日, 8日 後 か ら16日 後 まで を14日 と して扱 った。淋 菌 は投薬 3日 後 で67%が 消 失,7日 後 で は75%,14日 後 で は63% の 消 失 率 で あ っ た。C.Tは 投 薬3日 後 で33%が 消失, 7日 後 で は83%,14日 後 に は全 例 で 消 失 した。
Table
3 Clinical summary of C. trachomatis-positive GU (Group II) treated with TE-031
N. G.: Neisseria ganorrhoeae S: Serous P: Purulent
4. 副作用 50例全 例 につ きTE-031投 与 後 の 自 ・他 覚 的 副 作 用 を 検討 したが本 剤 に よる と思 わ れ る 症状 は 認 め られ な か っ た。 また,本 剤 投 与 前 後 に32例 に 対 して 血 液 一 般 な らび に 血清生化学 検 査 を施 行 した結 果 をTable 7に 示 す 。Al-P の軽度上 昇(Case No.9),Naの 軽 度 上 昇(Case No.10), S-Crの 軽 度 上 昇 を2例(Case No.26,31)に 認 め た が 病 的意義 なら びに本 剤 との 因 果 関 係 はな い もの と思 わ れ た 。 また,投 与 前 か ら γ-GTPが 軽 度 上 昇 し て い たCase No.22は投 与 後 さ らに軽 度 上 昇 したが 本 剤 との 因 果 関 係 はない もの と思 われ る。 総 ビ リル ビ ン値 の 軽 度 上 昇 が2 例(Case No.7,41)に み られ た が,2例 と も投 与 前 よ り 軽度の肝 機能 障害 を有 して お り,こ れ も本 剤 との 因 果 関 係 は な い も の と 思 わ れ る 。 III. 考 察 近 年,欧 米 に お け る と 同 様 に 本 邦 に お い て もSexually Transmitted Diseases (STD)患 者 の 増 加 が 指 摘 さ れ 医 学 的 に も 社 会 的 に も 関 心 が 高 ま っ て き て い る 。STDの な か で もC.Tに よ る 非 淋 菌 性 尿 道 炎(NGU)の 増 加 が 著 し い4)。 ま た,古 くか ら 知 ら れ て い る 疾 患 で あ る 淋 菌 性 尿 道 炎 (GU)は 尿 道 炎 全 体 に 占 め る 比 率 こ そ 減 少 し て い る も の の 実 数 は1978年 以 降 明 ら か に 増 加 し て お り5),両 者 と も 早 急 な 公 衆 衛 生 学 的 対 策 が 必 要 と 考 え ら れ る 。 C.Tの 薬 剤 感 受 性 に つ い て は 多 く の 研 究 者 に よ り 報 告 さ れ つ つ あ り6-8), Tetracycline(TC), Doxycycline
Table 4 Clinical summary of C. trachomatis- negative NGU (Group III) treated with TE-031
Table 5 Clinical summary of C. trachomatis-negative GU (Group IV) treated with TE-031
N. G.: Neisseria gonorrhoeae S: Serous P: Purulent
Table 6 Clinical summary of C. trachomatis-positive NGC (Group V) treated with TE-031
Fig. 2 Decreasing symptoms and PMN in NGU (Group I and III)
(DOXY), Minocycline (MINO), Rifampicin, Erythromy-cin(EM), Rosaramycinな ど のMICが 優 れ て い る 。
米 国 のCenter for Disease Control(CDC)に よ るC,T 性 のNGUな ら び にNGC治 療 の ガ イ ド ラ イ ンで はTC, DOXYな ら び にEMを 勧 め て い る9}。 最 近,本 邦 に お い て もC.T感 染 症 に 対 す るDOXY,MINOの 臨 床 効 果 を 検 討 し た 報 告 が 多 くみ ら れ,い ず れ も良 好 な 治 療 成 績]が 得 ら れ て い る10∼13)。 本 邦 で はC.Tに 対 す るEMを は じ め と し た マ ク ロ ラ イ ド系 薬 剤 の 臨 床 効 果 を検 討 し た 報 告 は 少 な い が,妊 婦 や 乳 幼 児 に も比 較 的 安 心 し て 使 用 で き る 抗 菌 薬 と し て 今 後 検 討 さ れ る 必 要 が あ る と思 わ れ る 。 TE-031はEMか ら合 成 さ れ た 新 し い マ ク ロ ラ イ ド系 抗 生 物 質 で あ り,EMと の 比 較 で 酸 に 対 し極 め て 安 定 で 血 中 濃 度,尿 中 排 泄 と も に 高 い 事 が 確 認 さ れ て い る 。 ま た,C.Tな ら び に 淋 菌 に 対 す る 抗 菌 力 は,EMと 同 等 な い し は1管 程 度 強 い 事 が 報 告 さ れ て い る;)。 わ れ わ れ の 成 績 で はC.T陽 性 のNGU群(第1群)17例 に お け る 臨 床 効 果 は 著 効14例 で 有 効 率82.4%と 良 好 で あ っ た 。C.Tに 対 す る 細 菌 学 的 効 果 はC.T陽 性 のNGU群 (第I群),GU群(第II群)お よ び 女 性 パ ー トナ ー(NGC: 第V群)の 計30例 に お い て,投 与7日 後 判 定 に てMicro
Trak(R)の み 陽 性 を 呈 したCase No.11の1例 を除 く29例 でC.Tの 消 失 を 認 め,消 失 率 は96.7%で あ っ た。 これ は,C.T陽 性 の 尿 道 炎 に対 してMINO, DOXYを 使用 し た 臨床 検 討 と 同等 の 良好 な成 績 で あ っ た10,13)。 また,非 淋 菌 性 ・非 ク ラ ミジア性 尿 道 炎(第III群)11例 で は 有 効 率100%で,先 に わ れ われ がDOXYを 使用 した 臨床 成 績 の有 効 率64%と 比 較 し極 め て良 好 な成績 であっ た13)。 一 方 ,C.T陽 性 の 淋 菌 性 尿 道 炎(第II群)7例 で の有 効 率 は71.4%,C.T陰 性 の 淋 菌 性 尿 道 炎(第IV群)9例 で は有 効 率22.2%と 不 良 で あ っ た。 投薬 後 の淋 菌の消長 にお い て も3日 後 の 淋 菌消 失 率 は67%と 低 率で あ り,初 回 投 与 量400mg×2/日 と 増 量 し た 後 半 の9例(Case No.20,21,23,24,40∼44)に 限 っ て もそ の有 効率 は 55.6%と 低 率 で あ っ た。 この 成績 か ら淋 菌感 染症 に対 し て はペ ニ シ リ ン系 薬 剤,Spectinomycin, Azthreonamお よび新 しい ピ リ ドンカ ルボ ン酸系 薬 剤 等 と比 較 し本 剤の 有 用性 は低 い と思 われ た 団。 副 作 用 に つ い て は 検 討 した50例 全 例 で本 剤 投 与後の 自 ・他 覚 的 副 作 用 を検 討 した が,本 剤 に よる と思 われる 症 状 は認 め られ なか った 。 ま た本 剤 投 与 前 後 に 臨床 検 査 値 の 評価 を行 った32例に
Fig. 4 Decreasing C. trachomatis detected by Chlamydiazyme(R) and Micro Trak* in Group I, II and V
お いて 総 ビ リル ビ ン値,S-Crの 軽 度 上 昇 を そ れ ぞ れ2 例 に,γ-GTP, Al-P, Naの 軽 度 上 昇 を そ れ ぞ れ1例 認 め たが,い ず れ も本 剤 と の 因 果 関 係 は な い と 思 わ れ た 。 以 上 よ り,TE-031はC.T陽 性 のNGU, C.T陰 性 の NGUな ら び にC.T陽 性 の 女 性 パ ー トナ ー に 対 し て 極 め て有 用 か つ 安 全 な 抗 菌 薬 と 考 え ら れ た 。 文 献 1) 第35回 日 本 化 学 療 法 学 会, 新 薬 シ ン ポ ジ ウ ム 。 TE-031, 盛 岡, 1987 2) 山越 昌 成, 長 田 尚 夫, 中 目真 理 子, 西 田 信 一, 中 村 正 夫: 男 子 尿 道 炎 患 者 に お け るChlamydia trachomatis検 出 法 と し て のChlamydiazymeの 検 討 。 臨 床 病 理35: 183∼186, 1987 3) 西 浦 常 雄, 加 藤 直 樹, 中 尾 享, 熊 本 悦 明, 橋 爪 壮, 北 川 龍 一, 林 康 之, 中 村 正 夫, 長 田 尚 夫, 小 島 弘 敬, 赤 尾 頼 幸, 萩 原 敏 且, 藤 森 一 平, 高 瀬 善 次 郎: FITC標 識 モ ノ ク ロ ナ ー ル 抗 体(Micro Trak法)に よ るC. trachomatisの 検 出 。 感 染 症 誌 58: 1305∼1314, 1984 4) 斎 藤 功: STDと して の 尿 道 炎 お よ び 子 宮 頸 管 炎, そ の 臨 床 像 を 中 心 に 。Prog. Med. 6: 1309∼1319, 1986 5) 厚 生 の 指 標 。 臨 時 増 刊33: No.9, 国 民 衛 生 の 動 向, 昭 和61年, 厚 生 統 計 協 会
6) JOHANNISON, G.; A. SERNRYD & E. LYCKE: Suscepti-bility of Chlamydia trachomatis to antibiotics in vitro and in vivo. Sex. Transm. Dis. 6: 50•`57,
1979
7) RIDGWAY, G. L.; G. MUMTAZ; G. GABRIEL & J. D. ORIEL: The activity of miokamycin (MOM) against Chlamydia trachomatis and Mycoplasma in vitro. J. Antimicr. Chemoth. 12: 511•`514, 1983
8) BOWIE, W. R.; C. K. LEE & E. R. ALEXANDER: Pre-diction of efficacy of antimicrobial agents in treat-ment of infections due to Chlamydia trachomatis. J. Inf. Dis. 138: 655•`659, 1978
9) Center for Disease Control Sexually transmitted diseases treatment guidlines 1985. Morbidity & Mortality Weekly Report 34 (Suppl.): 1985 10) 斎 藤 功, 小 野 一 徳: ク ラ ミ ジ ア 感 染 症 に 対 す る Minocyclineの 治 療 効 果 。 西 日 泌 尿47: 1005∼ 1011, 1985 11) 小 島 弘 敬, 森 忠 三: Chlamydia trachomatis生 殖 器 感 染 症 のMinocycline内 服 に よ る 治 療 成 績 。 感 染 症 学 雑 誌59: 824∼829, 1985 12) 西 浦 常 雄, 加 藤 直 樹, 熊 本 悦 明, 橋 爪 壮, 村 上 信 乃, 斉 藤 功, 小 島 弘 敬, 長 田 尚 夫, 中 村 正 夫, 中 野 博: Chlamydia trachamatisに よ る 尿 路 性 器 感 染 症 に 対 す るDoxycyclineの 臨 床 効 果 。Che-motherapy 33: 712∼725, 1985 13) 山 越 昌 成, 長 田 尚 夫, 後 藤 真 理 子, 西 田 信 一, 中 村 正 夫: 非 淋 菌 性 尿 道 炎 に 対 す るDoxycyclineの 臨 床 的 検 討 。Jpn. J. Antibiot. 38 3156∼3168, 1985 14) 小 野 寺 昭 一, 岡 崎 武 二 郎: 淋 菌 感 染 症, 治 療 学 的 検 討 。Prog. Med. 6: 1335∼1341, 1986
CLINICAL STUDY ON TE-031 (A-56268) AGAINST INFECTIONS OF THE URINARY
TRACT AND GENITALIA
MASANARI
YAMAGOE,
TAKAO
OSADA,
MARIKO
NAKANOME
and TAKEO
INOUE
Department
of Urology
(Director:
Prof.
T. INOUE),
St. Marianna
University
School
of Medicine,
Kanagawa
AKIHIKO
HIRANO
Department
of Urology,
St. Marianna
University
Toyoko
Hospital,
Kanagawa
We studied the clinical effect of TE-031 (A-56268) in 44 male patients with urethritis and 6 female partners positive for Chlamydia trachomatis(C. T.). The results are as follows.
1. In 17 cases of C. T.-positive, non-gonococcal urethritis (NGU), clinical efficacy was excellent in 14, fair in 2 , and poor in 1, with an efficacy rate of 82.4%.
2. In 7 cases of C. T.-positive gonococcal urethritis (GU), clinical efficacy was excellent in 4, good in 1 , fair in 1, and poor in 1, with an efficacy rate of 71.4%.
3. In 11 cases of C. T.-negative NGU, clincal efficacy was excellent in 9 and good in 2, with an efficacy rate of 100% . 4. In 9 cases of C. T.-negative GU, clinical efficacy was excellent in 2 cases, fair in 3, and poor in 4, with an efficacy rate of 22.2%.
5. All 6 female partners who had been C. T.-positive but asymptomatic became C. T.-negative after the administration of TE-031, i. e., clinical efficacy was excellent in all cases, with an efficacy rate of 100%.
6. In 30 C. T.- positive cases of all groups, 29 became C. T.- negative at the end of TE-031 administration , the dis-appearance rate being 96.7%. The disappearance rate of Neisseria gonorrhoeae was low, 67% on day 3 of administration .
7. In all 50 cases examined, neither subjective nor objective side-effects possibly caused by TE-031 were noticed . Laboratory tests in 32 patients before and after TE-031 administration revealed slightly elevated total bilirubin and S-Cr in 2 cases each, and slightly elevated ƒÁ-GTP, Al-P, and Na in 1 case each , but these abnormalities were not considered TE-031-induced reactions.
Our conclusion, based on the above findings, is that TE-031 is safe, useful and remarkably effective in C. T.-positive and-negative patients with NGU and in C. T.-positive female partners .