• 検索結果がありません。

事象知覚の観点から捉えた明るさ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "事象知覚の観点から捉えた明るさ"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.38.7

事象知覚の観点から捉えた明るさ

1

新 井 哲 也

a, b,

*・増 田 知 尋

a

・増 田 直 衛

c

a文教大学人間科学部,b神奈川大学人間科学部,c慶應義塾大学文学部

Lightness/brightness reviewed

from the perspective of event perception

Tetsuya Arai

a, b,

*, Tomohiro Masuda

a

and Naoe Masuda

c

a Faculty of Human Sciences, Bunkyo University, b Faculty of Human Sciences, Kanagawa University, c Faculty of Letters, Keio University

A number of studies on lightness/brightness perception have been done from several different perspectives, in-cluding those of physical factors, physiological mechanisms, and perceptual organization. While these studies have revealed various phenomena such as lightness/brightness contrast, assimilation, and constancy, few studies have re-ferred to variabilities of perception, such as perceived changes of configuration when observing a Fuchs’s transpar-ency pattern. This article defines this kind of perception as “event perception” and reviews studies of lightness/ brightness perception from this viewpoint. First, we collated and analyzed a wide variety of lightness/brightness studies. Second, we identified several phenomena which could be considered event perception from these studies. Finally, we revisited lightness/brightness perception from the perspective of event perception. In conclusion, event perception is a perspective that allows us to find and explore the variability of perception. Regarding lightness and brightness perception from this perspective is useful because it provides the opportunity to identify changes in light-ness/brightness and to explore the variability of perceptual attributes while an object or pattern is being observed.

Keywords: lightness/brightness perception, event perception, variability of perception, perceptual organization

は じ め に 我々が対象を見るとき,その形や運動とともに,必ず 明るさを経験している。このとき,ある観察面の明るさ は,それと隣接する領域の明るさの影響を受けることが 知られており,古くはvon Goethe (1810 高橋・前田・南 大路・嶋田・中島訳 1999) やChevreul (1839/1981) の色 彩論において記述されている。例えばFigure 1では,中 央に配置されたグレイの正方形の明るさは,周辺の正方 形の明るさによって大きく異なって知覚される。定量的 な研究は Hess & Pretori (1894/1970) まで遡ることがで

き,以降,対象の明るさは対比・同化や恒常性の問題と して扱われてきた。その後,明るさに影響する変数の検 討や,各変数の作用の生理学的メカニズムの解明が行わ れたほか,知覚体制化と明るさとの関係が論じられてき た。1960年代以降はそれらの枠組みに加え,三次元対 象や三次元空間に着目した研究も盛んに行われている。 実験的研究においては,Figure 1のように2つの観察 パターンを直接比較し,調整法などを用いて明るさの差 異を求める方法や,別途マッチングパターンを用意して 等色を行う方法により定量化が行われてきた。多くの研 究に共通しているのは,異なるパターン間での観察結果 の違いを量的に示すことにより,明るさに影響を及ぼし うる要因を明らかにすることである。基礎的な要因であ る輝度をはじめ,面積や提示時間といった量的な要因 や,三次元を含む図形構造の要因などの質的な要因も同 様の手法で検討されてきた。一方で,Figure 2を観察す る場合はどうだろうか。しばらく観察すると,白い十字 形が手前に現れる場合と黒い長方形が手前に現れる場合 Copyright 2019. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. * Corresponding author. Faculty of Human Sciences,

Bun-kyo University, 3337 Minami-Ogishima, Koshigaya-shi, Saitama 343–8511, Japan. E-mail: araitet@gmail.com

1 本研究は,JSPS科研費JP17K04500, 文教大学人間科学

部共同研究費の助成を得た。また,本稿執筆にあた り貴重なご意見をいただいた明星大学境敦史教授に 謝意を表する。

(2)

とがあることに気づく。そして見え方が切り替わる際 に,交差面の明るさも変化しているように感じられる。 この例では,Figure 1のように要因を切り出して複数の パターンを比較する観察の仕方とは異なり,我々は静止 した同一の対象において,時間経過に伴う見え方の変動 を経験している。このような同一図形の観察における見 えの切り替わりは知覚交替(perceptual switching)と呼 ばれるが,形の変化に加えて明るさの変化を経験する点 に鑑みて,Figure 2の観察は知覚交替の文脈で研究され る現象よりも多様性をもつ。また,トロクスラー効果 (Troxler, 1804) における,時間経過に伴う消失現象のよ うに,観察中の明るさの変化は必ずしも交替を伴うもの ではないため,より包括的に現象を記述できる概念が必 要である。 観察内容の種々の変化を表現する用語として事象 (event)や事象知覚(event perception)がある。事象知覚 の代表的な研究者はJ. J. GibsonとG. Johanssonであり,彼 らは事象および事象知覚を具体例に基づいて明確に定義 し,次節で述べるバイオロジカルモーションや生態学的 事象のように,知覚を事象の観点から捉え直すことの意 義を述べた(Gibson, 1979; Johansson, 1978, 1985; Johansson, von Hofsten & Jansson, 1980)。事象知覚のアプローチは, 従来研究されてきた現象を再整理するだけに留まらな い。例えば,Rubin (1921) の図地反転図形は,観察中に 図と地が反転する知覚交替現象として知られるが,同時 に奥行の変化や明るさの変化が経験される。この観察で は,図と地という1つの知覚属性における交替だけでは なく,複数の知覚属性における変化を経験しており,こ れを包括的に事象と呼ぶのがふさわしい。そうであるな らば,既存の枠組みで研究されてきた現象についても, 事象の観点から捉え直すことで新たな問題を提起できる 可能性がある。明るさの研究についても同様である。 Figure 2で見たように,重なりの知覚が変化するとともに 明るさも変化する,すなわち,変化が知覚の根幹を成し ているという点で,この種の現象を事象知覚として再整 理することは可能である。また,従来は異なる文脈で研 究されてきた現象から,明るさの知覚に関する有益な知 見を引き出すこともできるだろう。本稿の目的は,(1) 多岐にわたる明るさ研究を整理し,(2)その中で事象知 覚として捉えうる現象を抽出し,(3)明るさの知覚を事 象の知覚と捉え直すことの意義を唱える点にある。以降 の節では事象知覚の定義,対象の明るさ研究の概観,事 象知覚と見なしうる明るさ現象の順に進めていく。 Figure 1. Typical patterns of simultaneous lightness contrast. The two small gray squares have equal reflectance, but the

square surrounded by light gray appears darker than the square surrounded by black.

Figure 2. Phenomenal transparency shown by Fuchs (1923a). The black bar appears transparent and looks as if it is in front of the white cross, or the white cross appears transparent and looks as if it is in front of the black bar. And the gray area of intersection appears darker when the black bar is transparent than when the white cross is transparent.

(3)

事象知覚について 日常において,我々は変化を知覚する。自動車やリン ゴといった対象(object)を知覚するだけでなく,自動 車が眼前を過ぎ去る,リンゴが成熟するといった「出来 事」をも知覚する。さらに,対象自体の物理的な変化だ けでなく,観察点の移動など知覚者の活動も含めれば, 変化のない静止状態を観察することの方が稀である。こ のように,心理学において,環境で生じる多様な「出来 事」の知覚こそが知覚の本質であると主張する理論的立 場が誕生した。そのアプローチの代表である Gibsonと Johanssonについて,両者の研究は本稿の根幹を成すた め,その共通点と相違点について整理する。 Johansson et al. (1980) が指摘しているように,視空間 知覚への伝統的な(そして本稿の時点では古典的な)ア プローチは,大部分が静止状態の知覚(static percep-tion)に焦点を当てており,そこでは知覚者と対象は静 止していると仮定している。近刺激は網膜に投影される 静止した像として扱われており,運動知覚(motion per-ception)は理論的に満足のいく扱いが困難な限定的な事 例とされてきた。これに対し,GibsonとJohanssonは共 通して対象の変化,すなわち事象の知覚に関する論を展 開した。彼らは,静止状態の知覚よりも変化の知覚を理 論の中心に据えており,時間的・空間的な分析こそが妥 当であると考えた。例えばJohansson (1973) が報告した バイオロジカルモーション(biological motion)は,観 察パターンが静止している際にはランダムな配置の光点 群に見えるが,それらが動き出すと人の動きとして知覚 される。この例ではまさに,時間上で展開される光点間 の空間的な関係の変化に,人の動きを知覚しているので ある。また,彼らが関心をもっていた事象とは,いわゆ るトークン(token)としての事象ではなく,タイプ (type)としての事象であった(Mace, 1985)。すなわち, 一度しか観察されないような個別・特定の出来事ではな く,繰り返し観察される対象の回転や変形,移動などの 運動を研究対象とし,事象の整理を試みた。このよう に,GibsonとJohanssonは理論構築において,共に運動 知覚こそが知覚の本質であると考え,研究交流の中で互 いに影響を及ぼし合ったが,事象および事象知覚につい ての見解には決定的な相違も見られる。まず,Johans-sonは事象知覚を,遠刺激の運動または明るさや色の変 化に起因する光配列の閾上の変化による,直接的かつ自 発的な所産であると定義している(Johansson, 1985)。さ らに,事象を,個体がそれについて情報を必要とする物 理的事象としての遠事象(distal events),感覚器官にお いて利用可能なエネルギーの流動パターンである近事象 (proximal events),近刺激から得られる感覚情報である 知覚事象(perceptual events)の3つに分類し,そのうえ で近事象と知覚事象との関係を強調した。以上の分類か ら察せられるように,Johanssonは刺激と反応との関係 で知覚を説明する,伝統的な知覚理論の枠組みを出てい ない。一方でGibsonは,従来の「刺激」の概念(Gibson, 1960) や,近刺激と遠刺激の関係で知覚を記述すること を棄却し,事象については,物理的事象と明確に区別さ れた生態学的事象(ecological event)を重視した。また, そのほとんどを環境内の(かつ地上における)面の変化 とみなせると考え,以下の3つに分類した。すなわち, 物理的な力によってもたらされる面の配置の変化,物質 の組成の変化によって生じる面の色と肌理の変化,そし て物質の状態の変化によって引き起こされる面の存在の 変化である。 それでは,上記の定義に基づき,明るさの知覚を事象 知覚と捉えることができるだろうか。まず,対象の明る さに関する実験的研究では,明るさに影響しうる諸要因 を厳密に統制する必要があるため,動的な観察パターン を使用することは極めて少ない。後述するように,特に 輝度(または反射率)の影響は大きいため,一般的には 観察中にパターン内領域の輝度関係を変えることはな い。 例 え ば Agostini & Proffit (1993) や Ashida & Scott-Samuel (2014) では運動事態における明るさを測定した が,輝度の統制が十分に可能な,単純な図形と軌道を用 いている。このように,GibsonやJohansson, 彼らに後続 する研究者たちが行ったような運動パターンを用いて明 るさを研究することには,条件統制という点で限界があ るように思われる。ましてや,知覚者の行為を含めた事 象知覚の観点から明るさを扱った心理学実験を行うこと は極めて困難である。 ここで再度,Figure 2を観察してみよう。観察対象で ある図自体は運動するわけでも形状を変えるわけでもな いが,我々は十字と長方形の奥行反転という明確な変化 を経験している。また同時に,交差面の明るさが変化し ている。ここで我々が経験しているのは,Gibsonが定義 に用いたような物質上の面の変化ではなく,Johansson が理論の中心に据えたような近事象の変化に伴う知覚事 象の変化でもないが,両者が共有したアイデアである変 化の知覚,すなわち事象の知覚であろう。また,Figure 2 のような知覚交替を伴わずとも,トロクスラー効果 (Martinez-Conde, Macknik, Troncoso, & Dyar, 2006; Troxler,

1804)における消失や,運動誘発盲(Bonneh, Cooper-man, & Sagi, 2001)における消失・出現は,持続的な観

(4)

察における明るさの変化であることから,明るさについ ての事象知覚に含めることができる(両現象を比較した 研 究 と し て Bonneh, Donner, Cooperman, Heeger, & Sagi (2014)がある)。このように,基本的な事象の定義に立 ち返り,対象の変化の知覚だけでなく知覚の変化をも事 象知覚に含めることにより,明るさを事象の問題として 捉え直すことが可能である。さらに,変化が知覚の本質 である限りにおいて,見え方の変化は明るさを知覚する ことの本質であり,明るさの変化に着目することで,明 るさの研究に新たな展開がもたらされるだろう。具体的 な提案は本稿の終盤で行うこととし,次節以降では,対 象の明るさに関する研究を概観するとともに,事象知覚 の観点から現象の整理を試みる。 明るさに関わる用語について 我々が明るさを知覚するには光が必要である。物理学 では,光はエネルギーとして量的に表現される。また, 我々の感じる明るさは光の強度と非線形の関係にある (Stevens, 1957, 1960)。このような事実から,視覚系の感 度を考慮しながら物理量を測定し,再尺度化した値を測 光量と呼ぶ。測光量は心理量によって物理量を評価した 心理物理量である。明るさに関する実験的研究では,独 立変数としての測光量と,従属変数としての明るさとを 明確に区別する必要がある。以下に知覚属性の1つであ る明るさ(心理量)について概説する。なお,測光量に 関する説明は付録に記述した。 知覚研究においては,「明るさ」という用語は主とし て2つの意味を含んでいる。1つは輝度に対応し,「明る い–暗い」の次元で変化する現れ方であり,英語では brightnessと訳される。もう1つは,「白い–黒い」の次元 で変化する現れ方でありlightnessと訳される。両者は異 なる知覚属性であり,厳密に区別する必要がある場合に は,後者を白さや明度と表現することもある。以上は一 般 的 な 定 義 で あ る が, 両 者 の 定 義 は 多 様 で あ り (Wyszecki, 1986),その区別そのものが長らく議論の対象 となっている(Adelson, 2000; Evans, 1964; Katz, 1935; 古 崎,1979)。例えばAdelson (1993, 2000) は,白さは表面 の反射率と対応し,「白–灰–黒」の次元で表現され,明 るさは観察領域の輝度と対応し,「明るい–暗い」の次元 で表現されると定義した。つまり白さの知覚とは照明あ るいは照度を考慮しない,表面そのものを知覚すること であり,明るさの知覚とは照明を考慮した,光の強度を 知覚することとされる。一方で,Katz (1935) は,実験 現象学の立場から区分した「色の現れ方(modes of ap-pearance of colour)」と対応づけて,面色の無彩色には, 「明るい–暗い」の両極性をもつ「明るさ」が,表面色の 無彩色には,「白い–黒い」の両極性をもつ「白さ」が知 覚されるとした。また,両者を同一の枠組みで説明しよ うとする試みもあり(Kingdom, 2011),同化・対比現象 など,brightnessとlightnessに関わる現象は同様の傾向を 示すことも多いが,必ずしも一致するわけではなく(例え ばBloj & Hurlbert (2002) や Schirillo, Reeves, & Arend (1990)),両者を混同することで研究の結論を見誤るこ とになりうる。また,知覚された照明のことを bright-nessと定義する研究もあるため,文献を的確に理解する ためには,用語の定義に細心の注意を払う必要がある。 本稿では,両者を厳密に区別する必要がある場合には brightnessまたはlightnessを用い,それ以外の場合には, 便宜上,区別せずに「明るさ」と表記する。 明るさ対比・同化に関する古典的研究 明るさに関する古典的かつ代表的な理論は,Hering (1964) に よ る 感 覚 レ ベ ル の 理 論 と von Helmholtz (1910/1962) による認知レベルの理論である。Figure 1の ような同時対比が知覚される図形について,Heringは入 射光に対応する網膜神経の興奮と抑制によって現象を説 明した。中央のグレイは左右とも同じ輝度をもつため同 程度の神経興奮をもたらすが,周辺領域の輝度は異なり 興奮の程度も異なる。このとき,周辺の輝度が高く興奮 の程度も大きい左図のグレイは周辺からの強い抑制を受 けて暗く見えるが,右図では周辺の興奮は弱いため比較 的明るく見える。この抑制のメカニズムは後述の側抑制 (lateral inhibition)の発見により生理学的な裏づけを得 た。一方,Helmholtzの説明は全く異なる。この立場で は「無意識的推論(unconscious inference)」と呼ばれる トップダウン処理を基盤として明るさを説明する。その 基本的な説明の仕方は次の通りである。観察者には反射 率と照度の積として定義される輝度が与えられるが,観 察者は「知覚された」照明を考慮して,あるいは差し引 いて当該表面の lightnessを知覚する。Figure 1において は,グレイの周辺領域はそれぞれ強く照明を受けた表面 (左図)と濃い影が落ちた表面(右図)と知覚され,そ れらの照明状況を差し引いた分だけ中央の正方形は左図 で暗く,右図では明るく知覚される。この場合,左右の 図は実際には異なる照明を受けているわけではないの で,Helmholtzによれば,明るさ対比は「照明の誤判断」 の結果である。2人の説の正否は決着していないが,現 象ごとに適する理論が異なるとの見解がある(例えば Logvinenko & Kane (2004))。

(5)

で最も盛んに行われてきたものの1つは,明るさ同化・ 対 比(lightness/brightness assimilation and contrast) の 定 量化である。すでに 19 世紀終盤には体系的な研究が あ り, 例 え ば Hering の 弟 子 で あ っ た Hess & Pretori (1894/1970) は,正方形の検査領域と,それを取り囲む 誘導領域を2組用い,一方を標準刺激,もう一方を比較 刺激として,比較刺激の誘導領域を調整させるマッチン グ課題を行った2。その結果,誘導領域の輝度が増加す るにつれて検査領域は暗く知覚されることや,2つの検 査領域の輝度がいかに異なっていようとも,誘導領域の 輝度調整によって等色可能であることを示した。このよ うな量的な研究は20世紀半ばに最も盛んであった。Dia-mond (1953) は,より洗練された手法によって Hess & Pretoriの結果を再検証し,上記の2つの傾向のうち前者 のみを支持した。Heinemann (1955) はDiamondと同様, 明るさ対比における誘導領域の輝度の影響を示したが, 検査領域の輝度が比較的低い場合には,検査領域よりも 輝度の低い誘導領域によって明化(enhancement)が生 じることを明らかにした。このように,対比への影響が 最も大きいのは誘導領域と検査領域の輝度関係である が,その他の物理的要因による影響も無視はできない。 Diamond (1955) では,高輝度の誘導領域において,あ る程度の範囲までは,その面積を増大させると対比効果 が強く現れた。Helson & Joy (1962) およびHelson (1963) は,灰色の色紙に白または黒の線分を引き,線分を誘導 領域,元の色紙を検査領域として,線分の幅を体系的に 変えたときの検査領域の明るさを調べた。その結果,誘 導領域が大きくなるほど対比が大きくなることが再現さ れたが,同領域が極めて小さい場合には同化が観察され た。このような量的変数と明るさとの関係は,Hartline らによるカブトガニの側抑制メカニズム(Hartline & Ratliff, 1957; Hartline, Wagner & Ratliff, 1956) の 発 見 に

よって生理学的基盤を得ることになった(Cornsweet,

1970; Jameson & Hurvich, 1964)。また,後に大きな議論 を巻き起こすことになるWallach (1948) では,取り囲む 領域の輝度と内側の領域の輝度の比が一定である限り, それぞれに知覚される明るさは一定であることを示した (ratio principle)。この結果は Hess & Pretori (1894/1970)

では支持されていないが,両者の相違についてはJacob-sen & Gilchrist (1988) が検証し,誘導領域と検査領域の 輝度比が比較的小さいとき(おおむね 100 : 1まで)に ratio principleが成立すること,検査領域の方が高輝度の 条件では同法則は成立しないことを明らかにした。以上 の量的変数に関わる知見は明るさの実験をする際の基礎 となり,これらを厳密に統制することが次節以降に紹介 する研究の前提となっている。量的変数と明るさとの関 係はおおむね解明されているが,それらだけでは説明の 困難な現象も多数報告されており,心理学における明る さ研究の中心的な関心事となってきた。 知覚体制化と明るさ ―もう1つの潮流― 量的変数および生理学的メカニズムに主眼を置いた研 究が盛んな一方で,「対象をどのようなまとまりとして 知覚するか」という知覚体制化の観点から明るさを論じ た研究も古くから行われている。このような視点はゲ シュタルト心理学の潮流を汲むものであり,生理学的な 機構よりも,見えの世界の記述と理解に重点を置いてい る。例えば,Figure 3に示したBenary (1924) の図形にお いては,2つグレイの三角形の反射率および面積は等し く,接する領域の反射率も等しい。先に示した量的研究 や側抑制のメカニズムから予測すれば,2つの三角形は 同じ明るさに見えるはずである。ところが,上部の三角 形の方が明るく知覚され,物理的な構造からの単純な予 測が成り立たないことを示している。この場合,上部の 三角形は黒い十字形に所属しているように知覚され,下 部の三角形は白い背景の一部として知覚される。それぞ れの三角形は所属する領域からの対比を受け,上部では より明るく,下部ではより暗く知覚される。すなわち, 検査領域の明るさは,それが所属して見える領域からの 影 響 を 受 け る。 こ の よ う な 解 釈 は Figure 4 に 示 し た White効果 (White, 1979, 1981)の1つの解釈として用い られることもある(Agostini & Profitt, 1993; Taya, Ehren-stein, & Cavonius, 1995; Bonato, Cataliotti, Manente, & Del-nero, 2003)。またAnderson (1997) は,Figure 3やFigure 4

の観察について,異なる輝度領域の接点(X型接点やT 型接点)から現象的な面の分岐や,それに伴う明るさを 予測できるとしているが,面の現れ方は必ずしも一義的 でなく,知覚された構造と明るさに多様性があることを 十分に説明してはいない。 知覚体制化に関わる視覚研究を通観すると,本稿で定 義した事象知覚に相当する明るさ現象を見出すことがで きる。すなわち,静止した二次元対象の観察において, 2 慣例的に,影響を及ぼすと考えられる領域を誘導領 域(inducing field), 影響を受けると考えられる領域 を被誘導領域(induced field)または検査領域(test field)と呼ぶが,文献によっては後者をターゲット と称したり,他の知覚実験と同様に標準刺激と称し たりすることもある。本稿では原文に即した語を用 いる。

(6)

明るさの動的な変化を経験する場合である。まず,Ru-bin (1921) は図地反転に関する記述の中で次のように報 告している。白黒からなる扇形を組み合わせた図地反転 図形において,白領域に影を落として観察すると,同領 域が地になった時よりも図になった時に影が目立つ。す なわち,図地反転という変化とともに明るさの変化を観 察する。Koffka (1935) は有彩色とグレイから成る扇図 形を用いて,グレイの扇形が図として現れるときにだけ 色対比が起きると記述している。これを受けた Coren (1969) は無彩色の図地反転図形を用いて,検査領域が 地として見えるときよりも図として見えるときの方が, 明るさ対比が大きくなることを示した。一般的には観察 中の構造の変化として知られる図地反転現象だが,反転 に伴って明るさや色の変化を同時に経験するのである。 また,Figure 5はFuchs (1923b) が紹介した現象である。 図中の9つの小円群は,正立した十字形と四隅の円とし て見ることもできるし,斜めの十字形と上下左右の円と して見ることもできる。正立した十字形の一部と見ると きには,中央の円の明るさが上下左右の円の明るさに近 づき,斜めの十字形の一部として見るときには四隅の円 の明るさに近づく。つまり,所属する十字形の明るさに 同化する。同様の同化は透明視においても生じる。新井 (2005),Morinaga, Noguchi, & Ohishi (1962) やNoguchi & Motoki (1972) が量的に示したように,透明視では交差 領域の明るさ(brightness)が,それが所属しているよ うに見える面の明るさと同化する。つまり,明るい面が 上層に現れれば交差領域はより明るく,暗い面が上層で あれば交差領域は暗く知覚される。このように観察対象 (検査領域)となる面がどの領域の一部として知覚され るか,どの領域に所属して見えるかという所属性が明る さに影響する。以上の研究が興味深いのは,同一の対象 を観察しており,網膜像も変化していないにもかかわら ず,観察の間に知覚された構造が変化し,同時に明るさ が変化しうることを指摘している点にある。また,この Figure 3. The Benary cross. The triangle on the cross

appears lighter than the triangle in the corner of the cross, but both have the same reflectance and have the same reflectance at their boundaries. In this way, the lightness and brightness of a surface is influenced by the area to which it seems to belong.

Figure 4. The White effect. The gray rectangles between black bars appear darker than the gray rectangles be-tween white bars although they have the same reflec-tance. This phenomenon cannot be explained by later-al inhibition.

Figure 5. Assimilation effect shown by Fuchs (1923b). When the nine circles are perceived as the combina-tion of an upright cross and remainders, the central circle appears lighter. When they are perceived as the combination of a tilted cross and remainders, the cen-tral circle appears darker.

(7)

ような見え方の変化は,必ず時間経過を伴っていること にも留意したい。すなわち,本稿の定義に照らせば,我々 は形態と明るさに関する事象を経験しているのである。 より近年になって,知覚体制化と明るさとの関係が いっそう盛んに論じられるようになった。ただし,ゲ シュタルト心理学に即した研究がいくつか見られる一方 で(Agostini & Galmonte, 2002; Agostini & Proffitt, 1993; Soranzo & Agostini, 2006),多くは知覚体制化を記述的な 概念としてではなく,明るさ変化のための付加条件とし て捉 え て い る よ う に 見 受 け ら れ る。 例 え ば Adelson (1993) は非常に印象的かつ説得力のある図版を発表し ている(Figure 6)。透明視が成立し,透明な暗い帯が観 察される場合には内側の菱形が外側の菱形よりも明るく 見え(Figure 6a),そうでない場合には内外の菱形に違 いは見られない(Figure 6b)。Adelsonは透明な帯の向こ うに見える菱形の明るさを「推論」する視覚システムを 論じたが,透明の知覚は必要でないとする説もある (Bressan, 2001; Logvinenko, 1999)。同様に,透明や影の 知覚と明るさとの関係を示した研究は多いが(Adelson, 2000; Kingdom, Blakeslee, & McCourt, 1997; Logvinenko & Ross, 2005; Somers & Adelson, 1997),透明や影に見えるか 否かを条件とした観察であり,前述のような透明視に伴 う明るさ変化そのものを扱ってはいない。これらの研究 の基盤はHelmholtzの提唱した認知論的解釈にある。し たがって,現象自体の理解よりも視覚システムの解明に 重点が置かれており,知覚研究にとって有意義な知見を 提供しているが,一方でゲシュタルト心理学や実験現象 学が試みてきた,現象の緻密な記述や分類が軽視され, 本節で例示した類の現象の理解から遠のくことが懸念さ れる。 奥行と明るさ

Wallach (1948) が提唱した ratio principle の影響によ り,網膜上の近接領域間の輝度比がlightnessを決定づけ ると考えられるようになった。ratio principleを支持する 研究として,Gogel & Mershon (1969) やMershon (1972) は,誘導領域と検査領域の知覚された奥行関係を変える とlightness (原文ではwhiteness)の対比効果が減じるこ とを報告している。一方で,ratio principleだけでは十分

にlightness を予測できないとする反論もある。例えば

Hochberg & Beck (1954) は,網膜像が同様であっても, 表面に対する照明の「見た目の方向」,すなわち表面と 照明が垂直に見えるか平行に見えるかによって表面の lightnessが変わることを示した(原文ではbrightnessの語 を用いているが,扱っているのはlightnessである)。諸 研究間の不一致について整理し,洗練された実験事態に よってlightnessにおける奥行知覚の重要性を改めて明示 したのがGilchrist (1977) である。Gilchristは,Figure 7に 示した観察パターンにおいて,片眼で観察し,ターゲッ トが背景の一部として知覚される条件と,両眼で観察 し,ターゲットが背景から分離して知覚される条件とで 観察を行った。その結果,両条件はほとんど同一の網膜 像であるにもかかわらず,ターゲットのlightnessが著し く異なったのである。このことから,lightnessはター ゲットの輝度と,それと同一平面に見える領域の輝度と の関係で決まるのであって,同一平面に見えない領域の 輝度は網膜上で近接しているか否かにかかわらず無関係

であるとし,これをcoplanar ratio hypothesisと名づけた。

言うまでもなく,この研究の背景には Wallach の ratio principle がある。また Gilchrist (1980) は,coplanar ratio Figure 6. The Wall-of-blocks. Areas a1 and a2 are the same shade of gray but appear different. Although the diamonds b1

(8)

hypothesisが適用されるのはターゲット面が何らかの背 景と同一平面に見える場合,かつ輝度比が30 : 1を超え る場合であることを示し,lightnessに与える奥行の影響 が認められなかった上記の諸研究では,これらの条件を 満たしていないことを指摘している。また,Radonjić, Todorović, & Gilchrist (2010) は,Gilchrist (1977, 1980) お

よびKardos (1934) の実験を精緻化し,ターゲットと周 辺領域が接していない場合でも奥行の効果が生じること を示した。Gilchristらは後に仮説を発展させ,anchoring theoryという明るさに関する広範な記述モデルを提唱し ており(Gilchrist et al., 1999),このルールの一部は奥行 をもつ観察事態においても適用できることを示した (Radonjić & Gilchrist, 2013)。すなわち,lightnessに与え る奥行の効果は表面の分節(articulation)によって増大 する,ターゲットのlightnessは,ターゲットとの位置関 係に関係なくそれと同一平面上の最高輝度に依存する, 複数の照明領域をもつ面では同一平面上の最高輝度では なく,同一照明内の最高輝度にlightnessが依存するとし ている。 このように,Gilchristらの報告が1つの転機となり, 奥行の現れ方によって明るさが変化することが様々な研 究によって示されてきた。これらの研究の多くはいくつ かの

lightness知覚モデルを検証しており,先述のcopla-nar ratio hypothesisと後述するalbedo hypothesisはその代 表である。Gilchristらのグループ以外でcoplanar ratio hy-pothesisに関わる研究として,Taya et al. (1995) はWhite 効果(Munker–White効果)について,立体鏡を用いて 格子と間のターゲットグレイを奥行方向に分離し,グレ イの領域が四角形として格子の奥の背景と同一平面に 「見える」条件でlightnessのマッチングを行った。その 結果,通常のWhiteパターンよりも効果は大きく,light-ness知覚においてターゲットと周辺領域が同一平面に見 えることの重要性が示唆された。一方,時にcoplanar ra-tio hypothesis と対比して論じられる伝統的な仮説とし て,先述のvon Helmholtz (1910/1962) に代表される認知 論的解釈があり,明るさ研究においてはalbedo hypothe-sisと呼ばれることがある。奥行と明るさに関して,こ の仮説をよく表す現象として,Knill & Kersten’s illusion Figure 7. Observation patterns and results in Gilchrist (1977). The stimulus consists of a horizontal white square with a

hor-izontal black tab, and a vertical black square with a vertical white tab. Figure (a) shows the perspective view of the stimulus, figure (b) shows the monocular retinal pattern showing luminance in foot-lamberts, and figure (c) shows average Munsell matches for monocular and binocular viewing conditions. In the monocular viewing condition, the tabs seem to lie on the same plane as the large squares, and the lightness is influenced by them. However, in the binocular viewing condition, the tabs seem to be connected to the opposing squares, and the lightness of both tabs reverses. Modified after Gilchrist (1977).

(9)

(Knill & Kersten, 1991)が挙げられる。Figure 8(a)に示 した隣接する 2つの直方体の側面の輝度勾配は等しい が,左の側面の方が暗く見える(クレイク・オブライエ ン・コーンスウィート効果)。Figure 8(b)の2本の円柱 の側面も(a)図と同様の輝度勾配をもつが,(a)図ほ ど側面間の明るさの差は認められない。(a)図と(b) 図の違いは形(および知覚された形)のみである。この 現象は次のように説明される。(a)図は左右の直方体と もに均等な照明を受けているように見え,左右の違いは 塗りの違いであると解釈されlightnessは大きく異なる。 一方で(b)図は円柱のカーブに沿って影が落ちている ように見え(奥に行くほど暗い),輝度勾配の違いを照 明の違いと解釈することから,左右のlightnessは近似し て見える。このように,表面のlightnessを決定する前に 視覚系が輝度勾配の原因を考慮すると説明するのがal-bedo hypothesisの基本である。また,照明の考慮を説明 の中心に据えているわけではないが,実際の三次元対象 を用いた実験(Bloj et al., 2004; Ripamonti et al., 2004)や

コンピュータグラフィックスを用いた実験(Boyaci,

Ma-loney, & Hersh, 2003)において,照明に対する表面の配 置を「考慮して」lightnessが知覚されることが示されて いる。例えば,観察者の方向から一定の照明を当てた表 面の角度を奥行方向に組織的に変えると,ある程度の角 度までは恒常性が保たれることから,視覚系は表面と照 明の関係からlightnessを判断していると考える。このよ うな知見は,輝度勾配のある曲面や周辺領域をもたない 対象に基づくものであるから,同一平面を基本とする coplanar ratio hypothesisと必ずしも相反するわけではな

い。両説を直接的に比較したうえで albedo hypothesisの 優位性を唱えた研究もあるが(Howe, 2006; Menshikova, 2013),実験条件が限定的であり,いまだ十分な証拠が 集まっているとは言えない状況にある。あるいはHering 説とHelmholtz説のように,現象によって適用可能な理 論が異なるのかもしれない。そのほか,奥行知覚と明る さの関係を検討した研究として,Boyaci, Doerschner, & Maloney (2006),Ikeda, Shinoda, & Mizokami (1998), Kitazaki, Kobiki, & Maloney (2008),Logvinenko & Menshi-kova (1994),Pessoa, Mingolla, & Arend (1996),Peterson, Kersten, & Mannion (2018) などがある。

近年では,輝度勾配が同じ立体図形であっても,知覚 される形状が異なると表面の質感が異なって見えること が報 告 さ れ て い る(Marlow & Anderson, 2015; Marlow, Todorović, & Anderson, 2015)。Marlowらは,波状面とそ の輝度勾配の位相を変えることにより,表面の質感が マットに見える場合と鏡面や金属のように輝いて見える 場合があることを示した。より最近になって,彼らは照 明方向と表面の法線のなす角度と,表面の光強度とが強 く共変しているときに陰影が知覚されるというモデルを 提唱している(Marlow, Mooney, & Anderson, 2019)。知覚 された三次元構造の影響が色の現れ方(Katz, 1935)と いう明るさ以外の知覚属性に及んでいる点で興味深く, 本稿で強調する知覚の多様性を示唆している。 以上の研究は明るさに及ぼす奥行の影響を明確にし, その機構についての理解を進めた点で有益であるが,観 察中の構造の変化に伴う明るさに言及したものではな い。すでに示してきたように,二次元平面においては知 覚された構造の変化に伴う明るさの変化が認められるこ とから,三次元対象についても同様の視点で臨むこと は,我々の日常的な知覚世界を知るうえで有意義であろ う。三次元対象において,網膜像が同一であっても観察 中に知覚された構造が変化し,同時に明るさも変化する ことは,古くは Mach (1886/1959) によって報告されて いる。Machは後に「マッハの本」として知られるよう になった立体図を用いて,奥行の反転に伴って明るさが 変化することを指摘している。Machの報告した観察は 次の通りである。折り曲げたカードを机上に立て,出っ 張った側を手前に向ける。左側から光を当てると左半面 は右半面よりもずっと明るく見えるが,何気なく眺めて いるときにはそのことには気づかない。ところが,片眼 で観察するなどして,出っ張りが凹んで見えるようにな ると同時に,まるで「塗分けたかのように」明暗がくっ Figure 8. Knill and Kersten’s illusion. In figure (a), two

adjacent blocks have the same luminance ramp, but the left one appears much darker (Craik–O’ Brien–Corn-sweet effect). The two cylinders in figure (b) have the same luminance ramp as the two blocks in figure (a), but the difference in brightness is smaller.

(10)

きりと現れる。これは Machが用いた表現ではないが, 奥行が反転することで表面のlightnessが変化したのであ

る。この観察はBeck (1965) によって最初に実証が試み

られたが,ほとんど効果は得られなかった。その後, Bloj, Kersten, & Hurlbert (1999) は有彩色を用いて再検証 し,奥行の反転に伴ってlightnessが変化することを示し た。また,Bloj & Hurlbert (2002) は,無彩色を用いて,

マッハの本における奥行反転がlightnessの変化をもたら

すことを示し,lightnessの恒常性の観点から考察してい

る3, 4。すなわち,物理的な構造通り谷折りに見えるとき

には,左右の表面に当たる照明は異なるにもかかわら ず,左右面の真のlightness (true lightness)が復元される (恒常性の成立)。一方で,知覚上で奥行が反転し山折り に見える条件では,視覚系は同じ表面の異なる領域(左 右領域)に異なる反射率を割り当ててしまう(恒常性の 不成立)。論文中で直接言及されているわけではないが, このような解釈は先の認知論的解釈と同種のものであろ う。しかしながら,いずれの実験でも,奥行の効果が 見られたのはlightnessのみであり,brightnessについては 効果が見られないか言及されていない。一方,先述の ように二次元平面において brightnessの変化が見られる ならば,条件が整えば三次元においても観察される可能 性がある。そこでArai, Igarashi, Omori, Aizawa, & Masuda

(2016) は,オリジナルの立体模型を用いて,奥行反転 に伴う brightnessの変化を検討した。Lightnessに比べて 効果は小さいが,反転に伴ってbrightnessも変化するこ とを示し,Blojらの恒常性の観点からは解釈が困難であ ることから,知覚体制化(構造的要因)の観点から考察 した。以上のように,静止事態における知覚上の奥行反 転に伴って lightness も brightness も変化することから, 知覚された構造の変化に伴い多様な知覚属性での変化が 生じることがわかる。 明るさを事象知覚と捉えることの意義 ここまでは明るさに関する様々な研究から,知覚され た構造の変化に伴って明るさが変化する例を紹介してき た。本稿ではそれらの変化を包括的に事象と称し,現象 の整理を試みた。明るさを事象知覚として捉えることの 意義は2点に集約される。それは,観察中の変化への気 づきを与える点と,多様な見えへの気づきを与える点で ある。このような変動性と多様性に関する気づきが,従 来の明るさ研究の発展と,新たな現象の発見をもたらす と考えられる。 静止対象の観察における知覚の変化については,事象 の用語を使わないまでも,多くの研究者が現象を報告し 理論づけている。それは図地反転,透明視,奥行反転, 総じて知覚交替として語られることが多いが,知覚交替 と同時に多岐にわたる属性の変化が経験されうることを 事象知覚の観点は強調する。加えて,従来の研究では捉 えきれなかった現象の側面を明らかにする。この主張を 支持する例として,再度Figure 6aを観察されたい。図の 全体を眺めるようにして観察する場合にはAdelsonの報 告通りに見えるが,図の一部(例えば2段目中央の菱形) をしばらく凝視すると,a1とa2の明るさの差は次第に 小さく感じられるようになる。一義的な見え方をすると 考えられてきたパターンにおいても,時間を伴う明るさ の変化が経験される。この変化が感覚レベルのものか, 透 明 視 の よ う な 面 の 分 岐 に 伴 う 現 象 か, ま た は Tse (2005) が示したような注意レベルの問題かは,十分に 検討の余地がある。また,新井・鎌田・増田 (2018) は, 不可能図形として知られるペンローズの三角形の立体模 型を作成し,不可能図形として知覚されるか否かで構成 面の明るさが変化することを報告している。知覚交替の 研究で扱われてこなかった現象においても,明るさを含 む観察中の見えの変化を指摘することができる。 本稿で示した研究はすでに定量化が行われたものがほ とんどであるが,関連する現象の定性的な記述はKaniz-sa (1979) が数多く行っている。例えばFigure 9に示す図 3 Bloj et al. (1999)やBloj & Hurlbert (2002) では,Mach

の報告とは反対に谷折りのパターンを観察者に提示 している。したがって奥行が反転すると山折り(原 文では「屋根」)に見える。 4 明るさの恒常性(lightness constancy)にはいくつか の定義があるので注意が必要である。まず,直射日 光を受ける石炭と,日陰の雪の明るさ(lightness) を比較するような場合に用いられる説明の仕方であ る。前者の方がより多くの光を反射し,より強い光 を観察者の網膜に届けている(輝度が高い)にもか かわらず,なおも石炭は黒く,雪は白く知覚され る。すなわち,これは日常経験における「物の恒常 性」を中心に据えた記述であり,照明強度が変わっ て網膜に入射する光の強度が変わっても,依然とし て対象の明るさはほぼ一定であることとして現象を 定義する。実験室的な場面では,一定の反射率をも つ対象に与えられる照度が変化するとき,対象の明 るさは照度の変化ほどには変わって見えず,ほぼ一 定の傾向として知覚されることを明るさの恒常性と 定義することもある。認知論的な立場では,このよ うな恒常が保たれるのは,知覚された照明を考慮 し,差し引いた上で表面の明るさを知覚しているか らであると考える。つまり,与えられた照明を正確 に知覚できているほど,表面の明るさの恒常性は大 きくなる。

(11)

は,中央に周囲よりも明るい三角形が見える現象として 有名であるが,しばらく観察していると,3つの穴から 三角形を覗いているようにも見える。そして見え方が変 わる時,面の明るさも変化する。Figure 10に示した図 も,不規則な線の集合として見る場合と,文字列として 見る場合とでは面の明るさが異なる。このように,質的 な表現は可能であるものの,定量化の難しい現象が未解 明のまま,あるいは未発見のまま存在する可能性があ る。事象知覚の観点は観察中の見えの変化と多様性を強 調するものであるから,Kanizsaのような定性的な研究 の一助にもなりうる。 また,研究の手順にも留意したい。多くの先行研究で 記述されている実験手続きは,現象観察の後の,要因特 定のための条件分析の手順であろう。例えばBlojらの実 験では,奥行反転眼鏡(pseudoscope)を用いて見えの 凹凸を切り替え,それぞれの見え方において明るさの判 断を求めている。あるいは奥行と明るさの研究でしばし ば用いられるのは,立体視によって奥行を作り出し,明 るさを観察する方法である。このように,仮説検証型の 研究においては一部の見えを切り取り,知覚された構造 と明るさの関係を調べている。一方で,本稿で述べた事 象知覚の視点は,実証的研究の前段階の,仮説探索型の アプローチに重きを置いている。実証的研究において現 象の切り分けを行う前に,見えの多様性を発見するため の姿勢を提案するものである。 以上から,事象知覚の観点,すなわち明るさをはじめ とした視覚現象を不変の現象ではなく,変化する事象と 捉える見方は,観察中に明るさが変動しうることを強調 し,見えの多様性への気づきを与え,新たな現象の発見 と解明に資すると考えられる。 結 語 明るさに関する研究は多岐にわたるが,本稿では,観 察中に見えが変化する事実をもって明るさを事象知覚と して整理した。すでにいくつかの多義図形において明る さの変化が生じることは知られているが,一義的な見え 方をすると考えられてきた現象や,従来は明るさ変化に 言及されなかった現象についても,明るさを含む多様な 見えが存在することを事象知覚の観点から指摘すること ができる。すなわち,明るさを事象知覚とみなすこと は,観察中の知覚の変化を強調し,見えの多様性への気 づきを与え,従来の実証的研究では捉えきれなかった明 るさの諸相を新たに解明すると期待される。 付 録 測光量の概念について概説する。以下は Le Grand (1948/1968) や大山 (1969),Riggs (1965) の要約に心理学 で測光量を扱う意義を付け加えたものである。 光は電磁波の一部であり,その物理的な強度は放射量 と呼ばれ,W (ワット)やJ (ジュール)といったエネル ギー量で表現される。これは人間の感度とは無関係に定 められ,明るさとは一定の関係をもたない。したがっ て,感覚や知覚を研究する際には,人間が感知できる範 囲に基づいて量的に表現した測度を用いるべきである。 まず,ある面を時間あたりに通過するエネルギー量を放 射束(単位はWまたはJ/s)という。これは物理量であ るから,眼の感度に照らして尺度化し直す必要がある。 前述のように,人間の眼で感知できる光の範囲はおおむ ね決まっており,波長にして380–780 nmとされている。 また,波長ごとに視感度,すなわち光に対する感度は異 なることが知られており(分光感度),そのうち最大の 感度をもつ波長に対する各波長の感度の相対値を比視感 度と呼ぶ。比視感度はCIE (国際照明委員会)による心 Figure 10. Example of the relationship between

per-ceived structure and brightness. The figure is seen as random lines or the word “THE”, and the brightness changes in each case.

Figure 9. Kanizsa triangle. A solid white triangle is per-ceived in the center of the figure although no lumi-nance ramp exists between the apparent triangle and the background. The figure can also be seen as three holes with a white triangle behind them. The bright-ness of the triangle varies with its configuration.

(12)

理物理実験により,基準光と各波長(360–830 nm)の光 の明るさをマッチングさせることによって算出されてい る。また,得られたデータの平均を標準比視感度(標準 分 光 視 感 効 率) と 定 め, そ の 最 大 感 度 は 明 所 視 で 555 nm, 暗所視で507 nmの波長において得られる。前述 の放射束に標準比視感度で重みづけをした測光量が光束 (単位はlm: ルーメン)である。ちなみに,ある面に対 してどの程度の光が入射しているかを表す測度を照度 (単位はlx: ルクス)という。照らされた面上の単位面 積あたりに入射する光束と定義することもできる。放射 束や光束は,光源から発せられるすべての光の強度を評 価した測度であり,この値から特定の方向に対してどの 程度の光が出ていくかを知ることはできない。一方で, 心理学実験においては観察者に提示される光の量が問題 になるため,方向や角度(立体角 sr: ステラジアン) を組み入れた測度が求められる。このように,光源から ある方向に時間あたりに放射されるエネルギーを放射強 度(単位はW/sr),これに標準比視感度で重みづけをし た測度を光度(単位はcd: カンデラ)と呼ぶ。光度は 光束の立体角密度と言い換えることができ,同じ光束で あっても,反射板などで指向性をもたせることによって 光度を変えることができる。 さて,心理学実験においてはコンピュータディスプレ イや色紙といった一定の面積をもつ光源を観察すること が多く,当然のことながら,面積が大きくなるほど光の 量は増し光度は変化する(そもそも光束や光度は微小な 面積をもつ点光源を前提としている)。一方で,実験条 件を記述する際には,ある1点における光の量が問題と なるため,面積に依存しない測度が必要である。このよ うな理由から,ある面光源の光度を,その光の方向に垂 直な面に,当該面を投影した面積(見かけの面積)で割 ることによって導出されるのが輝度(単位はcd/m2)で ある。言い換えれば,観察者から見た見かけの単位面積 あたりの光度,あるいは光度の密度を指す。発光面だけ でなく照明を受けた反射面や背後から照明された透過面 の測量にも用いられる。輝度は光度を基にしているた め,物理量(放射輝度)に人間の視感度を重みづけした 測光量である。なお,明るさを扱った研究で,輝度を 「反射率と照度の積」と説明するものがしばしば見られ るが,本来の輝度の定義に照らすと,この説明が正しい と言えるのは観察方向が問題にならない(どの方向から 見ても輝度が等しい)均等拡散面を対象とした場合のみ である。また,元々が物理量であることから比例尺度と して扱うことはできるが,これを心理量である「明る さ」と混同しないよう留意が必要である。 引用文献

Adelson, E. H. (1993). Perceptual organization and the judge-ment of brightness. Science, 262, 2042–2044.

Adelson, E. H. (2000). Lightness perception and lightness illu-sions. In M. Gazzaniga (ed.), The new cognitive neuroscience (2nd ed., pp. 339–351). Cambridge, MA: MIT Press. Agostini, T., & Galmonte, A. (2002). A new effect of

lumi-nance gradient on achromatic simultaneous contrast.

Psy-chonomic Bulletin & Review, 9, 264–269.

Agostini, T., & Proffit, D. R. (1993). Perceptual organization evokes simultaneous lightness contrast. Perception, 22, 263– 272.

Anderson, B. L. (1997). A theory of illusory lightness and transparency in monocular and binocular images: The role of contour junctions. Perception, 26, 419–453.

新井哲也 (2005).透明視再考―明るさ変化の問題と して見た透明視現象― 人間と社会の探求: 慶應義 塾大学社会学研究科紀要,59, 47–54. 新井哲也・鎌田晶子・増田知尋 (2018).不可能図形に おける明るさ知覚(2) 日本基礎心理学会第37回大 会プログラム,65.

Arai, T., Igarashi, Y., Omori, K., Aizawa, Y., & Masuda, T. (2016). Lightness perception in depth inversion.

Interna-tional Journal of Psychology, 51, 1018.

Ashida, H., & Scott-Samuel, N. E. (2014). Motion influences the perception of background lightness. i-Perception, 5, 41–49. Beck, J. (1965). Apparent spatial position and the perception of

lightness. Journal of Experimental Psychology, 69, 170–179. Benary, W. (1924). Beobachtungen zu einem Experiment über

Helligkeitskontrast. Psychologische Forschung, 5, 131–142. Bloj, M. G., & Hurlbert, A. C. (2002). An empirical study of

the traditional Mach card effect. Perception, 31, 233–246. Bloj, M. G., Kersten, D., & Hurlbert, A. C. (1999). Perception

of three-dimensional shape influences colour perception through mutual illumination. Nature, 402, 877–879. Bloj, M., Ripamonti, C., Mitha, K., Hauck, R., Greenwald, S., &

Brainard, D. H. (2004). An equivalent illuminant model for the effect of surface slant on perceived lightness. Journal of

Vision, 4, 735–746.

Bonato, F., Cataliotti, J., Manente, M., & Delnero, K. (2003). T-junctions, apparent depth, and perceived lightness contrast.

Perception and Psychophysics, 65, 20–30.

Bonneh, Y. S., Cooperman, A., & Sagi, D. (2001). Motion-in-duced blindness in normal observers. Nature, 411, 798–801. Bonneh, Y. S., Donner, T. H., Cooperman, A., Heeger, D., &

Sagi, D. (2014). Motion-induced blindness and Troxler fad-ing: Common and different mechanisms. PLoS ONE, 9, e92894.

Boyaci, H., Doerschner, K., & Maloney, L. T. (2006). Cues to an equivalent lighting model. Journal of Vision, 6, 106–118. Boyaci, H., Maloney, L. T., & Hersh, S. (2003). The effect of

perceived surface orientation on perceived surface albedo in binocularly viewed scenes. Journal of Vision, 3, 541–553. Bressan, P. (2001). Explaining lightness illusions. Perception,

(13)

30, 1031–1046.

Chevreul, M. E. (1981). The principles of harmony and contrast

of colors and their applications to the arts. New York: Van

Nostrand Reinhold. (Based on the first English edition of 1854 as translated from the first French edition of 1839) Coren, S. (1969). Brightness contrast as a function of figure–

ground relations. Journal of Experimental Psychology, 80, 517–524.

Cornsweet, T. N. (1970). Visual perception. New York: Aca-demic Press.

Diamond, A. L. (1953). Foveal simultaneous brightness con-trast as a function of inducing- and test-field luminances.

Journal of Experimental Psychology, 45, 304–314.

Diamond, A. L. (1955). Foveal simultaneous brightness con-trast as a function of inducing-field area. Journal of

Experi-mental Psychology, 50, 144–152.

Evans, R. M. (1964). Variables of perceived color. Journal of

the Optical Society of America, 54, 1467–1474.

Fuchs, W. (1923a). Experimentelle Untersuchungen über das simultane Hintereinandersehen auf derselben Sehrichtung.

Zeitschrift für Psychologie, 91, 145–235.

Fuchs, W. (1923b). Experimentelle Untersuchungen über die Änderung von Farben unter dem Einflufs von Gestalten.

Zeitschrift für Psychologie, 92, 249–325.

Gibson, J. J. (1960). The concept of the stimulus in psychology.

The American Psychologist, 15, 694–703.

Gibson, J. J. (1979). The ecological approach to visual

percep-tion. Boston: Houghton Mifflin.

Gilchrist, A. L. (1977). Perceived lightness depends on per-ceived spatial arrangement. Science, 195, 185–187.

Gilchrist, A. L. (1980). When does perceived lightness depend on perceived spatial arrangement? Perception &

Psychophys-ics, 28, 527–538.

Gilchrist, A., Kossyfidis, C., Agostini, T., Li, X., Bonato, F., Cataliotti, J., Economou, E. (1999). An anchoring theory of lightness perception. Psychological Review, 106, 795–834. von Goethe, J. W. (1810). Zur Farbenlehre. Tübingen: J. G.

Cotta’schen Buchhandlung. (ゲーテ,J. W. 高橋義人・ 前田富士男・南大路振一・嶋田洋一郎・中島芳郎

(訳) (1999).色彩論 工作舎)

Gogel, W. C., & Mershon, D. H. (1969). Depth adjacency in si-multaneous contrast. Perception & Psychophysics, 5, 13–17. Hartline, H. K., & Ratliff, F. (1957). Inhibitory interaction of

receptor units in the eye of Limulus. Journal of General

Physiology, 40, 357–376.

Hartline, H. K., Wagner, H. G., & Ratliff, F. (1956). Inhibition in the eye of Limulus. Journal of Genaral Physiology, 39, 651–673.

Heinemann, E. G. (1955). Simultaneous brightness induction as a function of inducing- and test-field luminances. Journal

of Experimental Psychology, 50, 89–96.

von Helmholtz, H. (1962). Treatise on physiological optics, Vol. 3. In J. P. C. Southall, (Ed.) New York: Dover Publications. (Original work published 1910)

Helson, H. (1963). Studies of anomalous contrast and assimila-tion. Journal of the Optical Society of America, 53, 179–184.

Helson, H., & Joy, V. L. (1962). Domains of lightness, assimila-tion and contrast effects in vision. Psychologische Beiträge, 6, 405–415.

Hering, E. (1964). Outline of a theory of the light sense. (L. Hurvich & D. Jameson, Trans.). Cambridge: Harvard Uni-versity.

Hess, C., & Pretori, H. (1970). Quantitative investigation of the lawfulness of simultaneous brightness contrast. (H. R. Flock & J. H. Tenney, Trans.). Perceptual and Motor Skills, 31, 947–969. (Original work published 1894)

Hochberg, J. E., & Beck, J. (1954). Apparent spatial arrange-ment and perceived brightness. Journal of Experiarrange-mental

Psy-chology, 47, 263–266.

Howe, P. (2006). Testing the coplanar ratio hypothesis of light-ness perception. Perception, 35, 291–301.

Ikeda, M., Shinoda, H., & Mizokami, Y. (1998). Three dimen-sionality of the recognized visual space of illumination proved by hidden illumination. Optical Review, 5, 200–205. Jacobsen, A., & Gilchrist, A. (1988). The ratio principle holds

over a million-to-one range of illumination. Perception &

Psychophysics, 43, 1–6.

Jameson, D., & Hurvich, L. M. (1964). Theory of brightness and color contrast in human vision. Vision Research, 4, 135– 154.

Johansson, G. (1973). Visual perception of biological motion and a model for its analysis. Perception & Psychophysics, 14, 201–211.

Johansson, G. (1978). Visual event perception. In R. Held, H. W. Leibowitz, & H. L. Teuber (Eds.), Handbook of sensory

physiology. Vol. 8. Perception (pp. 675–711). Berlin:

Spring-er-Verlag.

Johansson, G. (1985). About visual event perception. In W. H. Warren, Jr., & R. E. Shaw (Eds.), Persistence and change (pp. 29–54). New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates. Johansson, G., von Hofsten, C., & Jansson, G. (1980). Event

perception. Annual Review of Psychology, 31, 27–63. Kanizsa, G. (1979). Organization in vision: Essays on Gestalt

perception. New York: Praeger.

Kardos, L. (1934). Ding und Schatten: Eine experimentelle Untersuchung über die Grundlagen des Farbensehens.

Zeitschrift für Psychologie, 23, 1–184.

Katz, D. (1935). The world of colour. London: Kegan Paul. Kingdom, F. A. A. (2011). Lightness, Brightness and

Transpar-ency: A quarter century of new ideas, captivating demon-strations and unrelenting controversy. Vision Research, 51, 652–673.

Kingdom, F. A. A., Blakeslee, B., & McCourt, M. E. (1997). Brightness with and without perceived transparency: When does it make a difference? Perception, 26, 493–506. Kitazaki, M., Kobiki, H., & Maloney, L. T. (2008). Effect of

pic-torial depth cues, binocular disparity cues and motion par-allax depth cues on lightness perception in three-dimen-sional virtual scenes. PLoS ONE, 3, e3177.

Knill, D. C., & Kersten, D. (1991). Apparent surface curvature affects lightness perception. Nature, 351, 228–230.

(14)

England: Harcourt, Brace.

古崎愛子 (1979).無彩色の心理的属性をめぐって 心 理学評論,22, 160–181.

Le Grand. Y. (1968). Light, colour and vision (2nd ed.) (R. W. G. Hunt & F. R. W Hunt, Trans.). London, England: Chap-man & Hall (Original work published 1948)

Logvinenko (1999). Lightness induction revisited. Perception,

28, 803–816.

Logvinenko, A. D., & Kane, J. (2004). Hering’s and Helm-holtz’s types of simultaneous lightness contrast. Journal of

Vision, 4, 1102–1110.

Logvinenko, A. D., & Menshikova, G. (1994). Trade-off be-tween achromatic colour and perceived illumination as re-vealed by the use of pseudoscopic inversion of apparent depth. Perception, 23, 1007–1023.

Logvinenko, A. D., & Ross, D. A. (2005). Adelson’s tile and snake illusions: A Helmholtzian type of simultaneous light-ness contrast. Spatial Vision, 18, 25–72.

Mace, W. (1985). Johanson’s approach to visual event percep-tion: Gibson’s perspective. In R. Held, H. W. Leibowitz, & H. L. Teuber (Eds.), Handbook of sensory physiology. Vol. 8.

Perception (pp. 55–65). Berlin: Springer-Verlag.

Mach, E. (1959). Analysis of sensations and the relation of the

physical to the psychical (S. Waterlow, Ed., C. M. Williams,

Trans.).New York: Dover Publications. (Original work published 1886)

Marlow, P. J., & Anderson, B. L. (2015). Material properties de-rived from three-dimensional shape representations. Vision

Research, 115, 199–208.

Marlow, P. J., Mooney, B. L., & Anderson, B. L. (2019). Pho-togeometric cues to perceived surface shading. Current

Biol-ogy, 29, 306–311.

Marlow, P. J., Todorović, D., & Anderson, B. L. (2015). Cou-pled computations of three-dimensional shape and materi-al. Current Biology, 25, R221–222.

Martinez-Conde, S., Macknik, S. L., Troncoso, X. G., & Dyar, T. A. (2006). Microsaccades counteract visual fading during fixation. Neuron, 49, 297–305.

Menshikova, G. Y. (2013). An investigation of 3D images of the simultaneous-lightness-contrast illusion using a virtual-reality technique. Psychology in Russia: State of the Art, 6, 49–59.

Mershon, D. H. (1972). Relative contributions of depth and directional adjacency to simultaneous whiteness contrast.

Vision research, 12, 969–979.

Morinaga, S., Noguchi, K., & Ohishi, A. (1962). Dominance of main direction in the apparent transparency. Japanese

Psy-chological Research, 4, 113–118.

Noguchi, K., & Motoki, M. (1972). Illuminance as a determi-nant of apparent transparency. Japanese Psychological

Re-search, 14, 204–208.

大山 正 (1969).視覚 和田陽平・大山 正・今井省 吾(編) 感覚知覚心理学ハンドブック (pp. 170–189)  誠信書房

Pessoa, L., Mingolla, E., & Arend, L. (1996). A contrast- and luminance-driven multiscale network model of brightness

perception. Vision Research, 35, 2201–2223.

Peterson, L. M., Kersten, D. J., & Mannion, D. J. (2018). Sur-face curvature from kinetic depth can affect lightness.

Jour-nal of Experimental Psychology: Human Perception and Per-formance, 44, 1856–1864.

Radonjić, A., Todorović, D., & Gilchrist, A. (2010). Adjacency and surroundedness in the depth effect on lightness. Journal

of Vision, 10, 1–16.

Radonjić, A., & Gilchrist, A. L. (2013). Depth effect on light-ness revisited: The role of articulation, proximity and fields of illumination. i-Perception, 4, 437–455.

Riggs, L. A. (1965). Light as a stimulus for vision. In C. H. Graham (Ed.), Vision and visual perception. New York: Wiley.

Ripamonti, C., Bloj, M., Hauck, R., Kiran, K., Greenwald, S., Maloney, S. I., & Brainard, D. H. (2004). Measurements of the effect of surface slant on perceived lightness. Journal of

Vision, 4, 747–763.

Rubin, E. (1921). Visuell wahrgenommene Figuren. Copenha-gen: Gyldendalske Boghandel.

Schirillo, J., Reeves, A., & Arend, L. (1990). Perceived light-ness, but not brightlight-ness, of achromatic surfaces depends on perceived depth information. Perception & Psychophysics,

48, 82–90.

Somers, D. C., & Adelson, E. H. (1997). Junctions, transparen-cy and brightness. Investigative Ophthalmology & Visual

Sci-ence (Supplement), 38, S453.

Soranzo, A., & Agostini. T. (2006). Does perceptual belonging-ness affect lightbelonging-ness constancy? Perception, 35, 186–192. Stevens, S. S. (1957). On the psychophysical law. Psychological

Review, 64, 153–181.

Stevens, S. S. (1960). On the new psychophysics. Scandinavian

Journal of Psychology, 1, 27–35.

Taya, R., Ehrenstein, W. H., & Cavonius, R. (1995). Varying the strength of Munker–White effect by stereoscopic view-ing. Perception, 24, 685–694.

Troxler, I. P. V. (1804). Über das Verschwinden gegebener Ge-genstände innerhalb unseres Gesichtskreises.

Ophthalmolo-gische bibliothek, 2, 1–53.

Tse, P. U. (2005). Voluntary attention modulates the brightness of overlapping transparent surfaces. Vision Research, 45, 1095–1098.

Wallach, H. (1948). Brightness constancy and the nature of achromatic colors. Journal of Experimental Psychology, 38, 310–324.

White, M. (1979). A new effect on perceived lightness.

Percep-tion, 8, 413–416.

White, M. (1981). The effect of the nature of the surround on the perceived lightness of gray bars within square-wave test gratings. Perception, 10, 215–230.

Wyszecki, G. (1986). Color appearance. In K. R. Boff, L. Kaufman, & J. P. Thomas (Eds.), Handbook of perception

and human performance volume I Sensory processes and per-ception. New York: John Wiley & Sons.

Figure 1. Typical patterns of simultaneous lightness contrast. The two small gray squares have equal reflectance, but the  square surrounded by light gray appears darker than the square surrounded by black.
Figure 5. Assimilation effect shown by Fuchs  (1923b) .  When the nine circles are perceived as the  combina-tion of an upright cross and remainders, the central  circle appears lighter
Figure 9. Kanizsa triangle. A solid white triangle is per- per-ceived in the center of the figure although no  lumi-nance ramp exists between the apparent triangle and  the background

参照

関連したドキュメント

Polarity, Girard’s test from Linear Logic Hypersequent calculus from Fuzzy Logic DM completion from Substructural Logic. to establish uniform cut-elimination for extensions of

Because of this property, it is only necessary to calculate a small range of cohomology groups, namely the even dimension and the odd dimension of cohomology groups, in order

I give a proof of the theorem over any separably closed field F using ℓ-adic perverse sheaves.. My proof is different from the one of Mirkovi´c

The result is close to the one obtained in the independent case, and, as stressed in the introduction, it holds interest from the perspective of numerical simulation, in cases where

Keywords: continuous time random walk, Brownian motion, collision time, skew Young tableaux, tandem queue.. AMS 2000 Subject Classification: Primary:

Using the T-accretive property of T q in L 2 (Ω) proved below and under additional assumptions on regularity of initial data, we obtain the following stabilization result for the

The study of the eigenvalue problem when the nonlinear term is placed in the equation, that is when one considers a quasilinear problem of the form −∆ p u = λ|u| p−2 u with

The object of this paper is the uniqueness for a d -dimensional Fokker-Planck type equation with inhomogeneous (possibly degenerated) measurable not necessarily bounded