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新生児期の皮膚トラブル実態とその関連要因

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Academic year: 2021

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新生児期の皮膚トラブル実態とその関連要因

Prevalence and risk factors for skin problems among newborns

米 澤 かおり(Kaori YONEZAWA)

春 名 めぐみ(Megumi HARUNA)

松 崎 政 代(Masayo MATSUZAKI)

* 抄  録 目 的 新生児は皮膚トラブルが多く,育児不安の大きな原因となっているが,そのリスク要因は明らかでな い。本研究では,新生児期に多い皮膚トラブル毎の発症割合と関連要因を明らかにすることを目的とし た。 対象と方法 研究対象は生後1か月児325名で,自記式質問紙による観察研究(2012年5月~8月にデータ収集)と スキンケア介入研究(2014年3月~2015年3月にデータ収集)のデータを統合して用いた。生後1か月健 診の際に,対象児の養育者に皮膚トラブルの有無と,その関連要因について自記式質問紙への回答を依 頼,出生時の母児の状況を診療録より収集した。統計分析は,各皮膚トラブルの有無を従属変数とし た,多重ロジスティック回帰分析を行った。 結 果 生後1か月の期間に何らかの皮膚トラブルがあった者は213名(65.5%),その内おむつ皮膚炎は109名 (33.5%),脂漏性湿疹は105名(32.3%),汗疹は55名(16.9%)であった。 おむつ皮膚炎では排便回数の多い児(AOR=1.19,95%CI:1.09–1.30)や男児(AOR=1.70,95%CI: 1.04–2.77)が,脂漏性湿疹では在胎日数が長い児(AOR=1.05,95%CI:1.02–1.08)が,汗疹は冬と比べ て春(AOR=9.34,95%CI:1.17–74.90),夏(AOR=18.97,95%CI:2.44–147.44)という季節要因ととも に,1か月健診までの1日あたり体重増加量が多い児で(AOR=1.03,95%CI:1.00–1.06)リスクが高い ことが明らかになった。 結 論 児の背景によって,おむつ皮膚炎・脂漏性湿疹・汗疹それぞれの関連要因が明らかになった。今後, リスクに合わせた予防的なスキンケアを明らかにするとともに,個別性に応じた保健指導がなされるこ とが望まれる。 キーワード:新生児,皮膚トラブル,おむつ皮膚炎,脂漏性湿疹,汗疹 2017年2月17日受付 2017 年7月28日採用 2017 年12月15日早期公開

東京大学大学院医学系研究科(Graduate School of Medicine, The University of Tokyo)

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Purpose

Many newborns often have skin problems resulting in parents generally becoming anxious regarding these con-ditions. However, the risk factors for skin problems among newborns are not well understood. This study aims to determine the prevalence and such risk factors, especially those that may be potentially associated with diaper der-matitis, seborrheic eczema, and prickly heat among newborns.

Methods

This study combined data from two different researches. The first was an observational study conducted among parents, whose newborns were delivered in a single hospital between May and July 2012. The other was an inter-ventional study related to skincare, which was conducted among parents and their newborns, who were born between March 2014 and February 2015. We analyzed the data of 325 parents. Both researches were conducted on parents of 1-month-old infants, using a self-administered questionnaire. The questions included those related to the presence of skin problems in the newborns that were observed by their parents, including diaper dermatitis, seborrheic eczema, and prickly heat. In addition, data from medical records, including the newborn's sex, family history of atopic derma-titis, gestational age, birth weight, and external factors, which could lead to skin disorders like, season at birth, and frequency of stool, were included. The association between each skin problems (diaper dermatitis, seborrheic eczema, prickly heat) and characteristics of neonates was assessed using multiple logistic regression.

Results

The prevalence of skin problems was 65.5% (n=213), of the skin problems, diaper dermatitis was 33.5% (n=109), seborrheic eczema was 32.3% (n=105), prickly heat was 16.9% (n=55).

The risk factors for diaper dermatitis in newborns were determined as high frequency of stool (AOR=1.19, 95% CI: 1.09–1.30) and male sex (AOR=1.70, 95% CI: 1.04–2.77). The risk factor for seborrheic eczema was a long gestational age (AOR=1.05, 95% CI: 1.02–1.08). Lastly, newborns who were born during spring (AOR=9.34, 95% CI: 1.17–74.90) and summer (AOR=18.97, 95% CI: 2.44–147.44) were at higher risk of prickly heat than those born in winter. In addition, weight gain in the first month after birth was also a risk factor of prickly heat (AOR=1.03, 95%Cl: 1.00–1.06).

Conclusion

We identified the risk factors for skin problems among newborns. These results can help in developing guidance for skincare, which needs to be individualized, depending on the risk factors.

Key words: newborns, skin problems, diaper dermatitis, seborrheic eczema, prickly heat

Ⅰ.緒   言

1.研究の背景 新生児は皮膚トラブルが多いと言われており,母親 の心配事の上位にも挙げられている(島田他,2006)。 その一方で,皮膚トラブルはほとんどが一過性のもの であり,予後が良いことから,医療者の関心は高くな い。しかし,両親にとっては症状が目に見えるもので あることから心配につながりやすいと考えられる。さ らに,児が皮膚トラブルを発症すると,適切なスキン ケアをするよう医療者から指導される場合が多く(馬 場,2009),スキンケアの方法,つまり自分の育児手 技に問題があった為に皮膚トラブルを発症したと感 じ,自責の念を感じやすい可能性があることも,皮膚 トラブルが心配事の上位に上がる一因であると考えら れる。 新生児期の皮膚トラブルの発症割合については,い くつか報告があり,おおよそ55–70%の新生児が皮膚 トラブルを経験するとされている(Matsumoto, et al. 2005;杉山他,2014;土浜他,2011)。新生児期の皮 膚トラブルの代表例としては,おむつ皮膚炎,脂漏性 湿疹,汗疹等がある。しかし,先行研究では,どのよ うな児が各皮膚トラブルの発症リスクが高いのか,明 らかにされたリスク要因は限られている。 それぞれの皮膚トラブルに関する報告は以下の通り である。まず,おむつ皮膚炎はおむつで覆われている 部分に生じる皮膚の炎症を指し,新生児期のおむつ皮 膚炎の発生割合は 25–29% と高い(眞嶋他,2015; Philipp, et al. 1997; Yonezawa, et al. 2014)。 排 便 回 数が 多い 場合(Philipp, et al. 1997; Yonezawa, et al. 2014),生後4日目の腕の皮膚pHが高い場合に低い場 合よりも(Yonezawa, et al. 2014)おむつ皮膚炎発症の

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リスクが高いとされている。乳児脂漏性湿疹は新生児 期の発症割合 10–30%,生後 2–8 週頃の発症が多く, 皮脂分泌・マラセチア真菌の関与が考えられている が,明確なリスク要因は明らかでない(清,2012; Gupta, et al. 2004)。汗疹の発症割合は明らかでない が同様の症状を見ていると思われる間擦疹について は,Matsumoto(2005)によれば105名中14名(13.3%) が発症していたとの報告がある(p.71)。一般的に夏に 多いと言われているが,その点を明らかにした先行研 究はない。 以上の通り,これまで個別のリスク要因を明らかに した研究は少なく,個別性のある保健指導に繋げにく い。出産後,産科病棟入院中に把握できる出生時在胎 週数や出生季節,出生時体重等の要因が明らかになれ ば,個別性に合わせた保健指導を行うことができる。 さらに,発症リスクが高い児がいるということが明ら かになれば,両親の育児手技の問題だけではないとい うことであり,皮膚トラブルを発症した場合にも自責 の念を感じずに済む可能性がある。 以上より,本研究では新生児期に多い皮膚トラブル (皮膚トラブル全般,おむつ皮膚炎,脂漏性湿疹,汗 疹)の関連要因を明らかにすることは,個別性のある 保健指導に繋げるために重要であると考える。 2.目的 新生児期に多い皮膚トラブル(皮膚トラブル全般, おむつ皮膚炎,脂漏性湿疹,汗疹)の発症割合と,関 連要因を明らかにする。

Ⅱ.研 究 方 法

1.研究デザイン 研究デザインは,自記式質問紙による2つの横断研 究データの内,本研究目的に関連する変数のデータを 抜き出し,1つの研究データとして統合して用いた二 次解析である。 2.対象 調査対象は,観察研究(研究 A)と介入研究(研究 B)の対象者,計 325 名である。どちらも同じ分娩件 数約1000件の1総合病院で生まれた新生児と,その母 を対象にリクルートを行った。 研究Aは新生児の皮膚状態,特におむつ皮膚炎の状 態を出生後から生後1年まで追跡した縦断観察研究で ある。対象者の包含基準は在胎週数35週以降に出生, 両親ともに日本人,調査時に加療を必要ではないこと とした。産科入院中に包含基準を満たした108名の母 親へ調査を依頼し 106 名から同意を得て,1 か月調査 ができなかった 6名を除外した 100名のデータを分析 対象とした。リクルート時期は5月1日から7月8日で あり,主に 5月・6 月生まれの児が対象として含まれ ている(詳細はYonezawa[2014]参照)。 研究Bは新生児へのスキンケアによる皮膚トラブル 予防効果を検証した無作為化比較介入試験である(詳 細はYonezawa[2017]参照)。介入群では沐浴頻度を2 日に 1 回に減らし,毎日保湿剤塗布を行う保湿ケア を,対照群では沐浴指導の通り毎日沐浴を,生後 12 週まで行うよう依頼した。対象者の包含基準は在胎週 数35週以降に出生,両親ともにアジア人,生後4日目 時点で小児科病棟での加療を必要としないこと,先天 的な皮膚疾患が疑われていないこととした。 産科入院中に包含基準を満たす911名に研究参加者 募集のパンフレットを配布し,関心を示した264名を リクルート対象者とした。同意が得られた 227 名の 内,1 か月健診までに同意を撤回した 1 名,生後 1 か 月の皮膚トラブル有無への回答がなかった 1 名の計 2 名を除く 225 名(介入群 111 名,対照群 114 名)を分析 対象とした。リクルート時期は 3 月 1 日から翌年の 2 月28日であり,すべての季節の対象者を含んでおり, 各月でほぼ均等に介入群・対照群に割付けられた。 対象者については,最も発症割合が低く 15% 程度 と想定された汗疹について多重ロジスティック回帰分 析に投入する関連要因を最低 5変数(調査内容,季節 は関連すると想定),その上で投入変数×10 のサンプ ルサイズが必要(Peduzzi, et al. 1996)と考えると,最 低 300 名のデータが必要と算出され,研究 A と研究 B 全ての対象者を分析に含める必要があった。また,今 回検討した関連要因はスキンケアとは関連しない,児 の基本属性であり,対照群や観察研究である研究Aに もスキンケアの内容にバラつきがあったため,スキン ケアによる皮膚トラブルへの影響を検討することは困 難と判断した。以上の理由により,介入研究である研 究Bの介入群も含め,研究Aと研究B全ての対象者を 本研究の対象とした。 3.データ収集の時期と期間 研究 A は 2012 年 5 月から 8 月,研究 B では 2014 年 3 月から2015年3月にデータ収集が行われた。 新生児期の皮膚トラブル実態とその関連要因

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従属変数である皮膚トラブルについては,1か月健 診時に母へ自記式質問紙への回答を依頼し,データを 収集した。具体的には「この 1 か月間,赤ちゃんのお 肌のトラブルはありましたか?」の質問に対し,「特に なかった」「あった」のどちらかを選択してもらい, 「あった」の場合には「おしりかぶれ」「脂漏性湿疹」 「あせも」「上記以外の湿疹」「その他」から複数回答可 で選択を依頼した。研究A,研究Bともに同様の質問 項目でデータ収集を行った。 独立変数については,アトピー性皮膚炎の家族歴 (対象児の母・父・同胞)の有無,生後1か月時点での 母乳割合,1日あたりの排便回数・排尿回数について は質問紙でデータを収集した。母の分娩情報(初経 産,分娩方法),児の情報(出生月,性別,出生時在 胎日数,出生時体重,出生時の胎脂量,胎脂付着部 位,光線療法の実施有無,1 か月健診までの 1 日あた り体重増加量)については,診療録よりデータを収集 した。出生季節については,3 月~5 月を春,6 月~8 月を夏,9月~11月を秋,12月~2月を冬とした。 5.分析 分析は,皮膚トラブル全般,おむつ皮膚炎,脂漏性 湿疹,汗疹それぞれの有無の2群に分け,独立変数が カテゴリーの場合にはχ2 検定,連続値の場合にはt検 定を行った。その上でそれぞれの皮膚トラブル有無を 従属変数,二群間の比較でp<0.1であったものを独立 変数,研究群間の違いを調整変数として強制投入した 多重ロジスティック回帰分析を行った。なお相関係数 0.4以上の場合は多重共線性有りとして,より p 値の 小さい変数を投入した。 また,研究 A は 5 月・ 6 月生まれの児が中心であり 季節による影響が,研究Bの介入群では介入の効果に よる影響があり,結果に偏りがある可能性がある。そ こで年間を通して全季節を含んだ調査を行い,さらに 介入による影響がなく一般的なスキンケアを行ってい た研究 B の対照群のみを対象として感度分析を行っ た。 分析には SPSSver24.0 を用いて,有意水準は両側 5%,10%を傾向ありとした。 6.倫理的配慮 研究 A・Bともに東京大学医学部倫理委員会(審査 番号 A:3758,B:10312)と調査病院で承認を得た 行った。 研究A・Bどちらにおいても,研究対象者へは研究 への参加と同意撤回は自由であり不参加や同意撤回の 場合も不利益はないこと,個人情報を破棄するまでの 期間については,いつでも同意撤回が可能であるこ と,研究データは5年間保存・利用すること,データ 収集から5年後に破棄すること,加えて研究Bでは介 入群・対照群のどちらのグループが良いのかはわ かっていないこと,皮膚トラブル発症時はスキンケア 方法の変更は養育者の判断で可能であることを文書で 説明し,書面で同意を得た。どちらの研究データも本 研究著者本人が,対象者から同意を得て行った研究で ある。 データは IDを用いて連結可能匿名化し,ID と個人 情報の対応表は鍵のかかるロッカーで保存した。研究 Aでは生後 1 年,研究 B では生後 2 年経った時点で個 人情報を破棄したため,本分析を行った時点では,ど ちらも個人情報を破棄した後であり,連結不可能匿名 化された状態であった。

Ⅲ.結   果

1.対象者の属性 表1に対象者の属性と,皮膚トラブルの発症割合を 示す。 分析対象である 325 名の内,176 名(54.2%)が男 児であり,早産である出生時週数 37 週未満は 7 名 (2.2%),Appropriate For Date(AFD)が268名(82.5%)

であった。対象児の母は 188 名(57.2%)が初産婦, 269名(82.8%)が経膣分娩であった。 アトピー性皮膚炎家族歴については,両親または同 胞に家族歴のある者が 92 名(28.3%),両親ともアト ピー性皮膚炎である者が 13 名(4.0%),経産婦 137 名 中対象児の同胞がアトピー性皮膚炎である者が 17 名 (12.4%)であった。 研究 A,研究 Bの介入群と対照群の 3 群間の属性比 較では,出生季節に差があったこと(研究 A は主に 5 月~6 月生まれの児が対象であるため)以外は,研究 群間に有意な差を認めなかった。 2.皮膚トラブル発症割合 全分析対象者 325 名中,何らかの皮膚トラブル(皮 膚トラブル全般)があった者は 213 名(65.5%),おむ

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つ皮膚炎があった者は 109 名(33.5%),脂漏性湿疹が あった者は 105 名(32.3%),汗疹があった者が 55 名 (16.9%)であった。 研究群間(研究 A ・研究 B の介入群・対照群)で皮 膚トラブル全般・おむつ皮膚炎の発症割合に有意な差 が見られたが,季節をそろえて,5~6 月に出生した 児のみを対象(研究 A 100 名,研究 B 介入群15 名,研 究B対照群17名)に検討すると,研究Bでやや皮膚ト ラブル全般が多く(研究A 60名[60.0%],研究B 介入 群8名[53.3%],研究B 対照群14名[82.3%]),研究A でおむつ皮膚炎が多い傾向が見られた(研究 A 34 名 [34.0%],研究B 介入群3名[20.0%],研究B 対照群4 名[23.5%])ものの,明らかな差は見られなかった。 3.皮膚トラブルの関連要因 それぞれ皮膚トラブルの種類毎に,関連のある属性 ・背景が明らかとなった。 まず皮膚トラブル全般では,男児で有意に発症割合 が高かった(p=0.006)。 次に,おむつ皮膚炎でも男児に有意に発症割合が高 く(p=0.010),経産婦においては,同胞のアトピー性 皮膚炎家族歴があると有意に発症割合が高かった (p=0.033)。また,おむつ皮膚炎を発症した児では, 有意に生後1か月時点での 1日あたり平均排便回数が 多かった(おむつ皮膚炎有群では平均±標準偏差が6.1 回±2.8 回/日,無群では4.7±2.8回/日)。なお,排便回 数は有意に男児の方が多かった(男児では5.5±3.0回, 表1 基本属性と皮膚トラブルの関連 全体 (n=325) (n=213, 65.5%皮膚トラブル全般a (n=109, 33.5%おむつ皮膚炎a (n=105, 32.3%脂漏性湿疹 a (n=55, 16.9%汗疹 a n %a n %b p 値 n %b p 値 n %b p 値 n %b p 値 性別 男 176 (54.2) 127 (72.2) 0.006 70 (39.8) 0.010 63 (35.8) 0.144 31 (17.6) 0.718 女 149 (45.8) 86 (57.7) 39 (26.2) 42 (28.2) 24 (16.1) 出生時 在胎週数 36週 7 (2.2) 5 (71.4) 0.882 3 (42.9) 0.824 0 (0.0) 0.006 1 (14.3) 0.533 37–38週 114 (35.1) 75 (65.8) 39 (34.2) 28 (24.6) 15 (13.2) 39–40週 173 (53.2) 111 (64.2) 55 (31.8) 61 (35.3) 32 (18.5) 41–42週 31 (9.5) 22 (71.0) 12 (38.7) 16 (51.6) 7 (22.6) 出生時児体重

Light for date 21 (6.5) 16 (76.2) 0.565 7 (33.3) 0.547 8 (38.1) 0.828 1 (4.8) 0.161 Appropriate for date 268 (82.5) 174 (64.9) 87 (32.5) 86 (32.1) 50 (18.7) Heavy for date 36 (11.1) 23 (63.9) 15 (41.7) 11 (30.6) 4 (11.1) 低出生体重児 19 (5.8) 14 (73.7) 0.441 9 (47.4) 0.188 5 (26.3) 0.565 0 (0.0) 0.043 出生時胎脂量 なし 8 (2.5) 8 (100.0) 0.111 4 (50.0) 0.439 4 (50.0) 0.066 3 (37.5) 0.211 少 161 (49.5) 101 (62.7) 57 (35.4) 50 (31.1) 22 (13.7) 中 105 (32.3) 73 (69.5) 35 (33.3) 41 (39.0) 19 (18.1) 多 51 (15.7) 31 (60.8) 13 (25.5) 10 (19.6) 11 (21.6) (再掲)全身に有 46 (14.2) 31 (67.4) 0.775 13 (28.3) 0.413 8 (17.4) 0.020 11 (23.9) 0.172 分娩方法 経膣 269 (82.8) 177 (65.8) 0.828 89 (33.1) 0.705 93 (34.6) 0.056 46 (17.1) 0.852 初経産 初産 188 (57.8) 127 (67.6) 0.371 67 (35.6) 0.348 42 (22.3) 0.587 27 (14.4) 0.149 光線療法 有 37 (11.4) 28 (75.7) 0.168 12 (32.4) 0.880 10 (27.0) 0.466 7 (18.9) 0.731 アトピー家族歴 有 92 (28.3) 60 (65.2) 0.939 32 (34.8) 0.765 31 (33.7) 0.737 17 (18.5) 0.638 両親共に有 13 (4.0) 10 (76.9) 0.378 5 (38.5) 0.701 5 (38.5) 0.628 2 (15.4) 0.880 同胞に有(n=137) 17 (12.4) 11 (64.7) 0.860 9 (52.9) 0.033 7 (41.2) 0.315 3 (17.6) 0.760 出生季節 春(3–5月) 87 (26.8) 53 (60.9) 0.672 30 (34.5) 0.897 24 (27.6) 0.396 14 (16.1) <0.001 夏(6–8月) 125 (38.5) 84 (67.2) 39 (31.2) 42 (33.6) 36 (28.8) 秋(9–11月) 63 (19.4) 44 (69.8) 23 (36.5) 25 (39.7) 4 (6.3) 冬(12–2月) 50 (15.4) 32 (64.0) 17 (34.0) 14 (28.0) 1 (2.0) 研究群別 研究A 100 (30.8) 60 (60.0) 0.041 34 (34.0) 0.039 28 (28.0) 0.542 24 (24.0) 0.069 研究B:介入群 111 (34.2) 68 (61.3) 28 (25.2) 38 (34.2) 14 (12.6) 研究B:対照群 114 (35.1) 85 (74.6) 47 (41.2) 39 (34.2) 17 (14.9) 出生時在胎日数(日) 275.2 ±8.6 275.5 ±8.7 0.408 275.3 ±9.0 0.821 277.8 ±8.0 <0.001 276.2 ±8.3 0.352 出生時体重(g) 3039 ±362 3042 ±365 0.747 3051 ±391 0.632 3094 ±377 0.049 3095 ±353 0.196 1か月平均排便回数/日(回) 5.1 ±2.9 5.3 ±2.9 0.121 6.1 ±2.8 <0.001 4.8 ±3.0 0.158 5.5 ±2.6 0.24 1か月平均排尿回数/日(回) 9.5 ±2.2 9.6 ±2.1 0.28 9.6 ±2.1 0.497 9.7 ±2.1 0.205 9.6 ±2.2 0.717 1か月体重増加量(g)/日 37.8 ±11.4 37.5 ±12.0 0.725 37.3 ±11.0 0.325 37.9 ±12.1 0.743 42.0 ±10.6 0.002 1か月時点哺乳量中の母乳割合(%) 82 ±27 83 ±30 0.132 83 ±26 0.400 83 ±26 0.626 85 ±26 0.242 n(%)または 平均値±標準偏差 a:全体(n=325)に対する割合 b:各項目中の皮膚トラブルそれぞれの発症割合 新生児期の皮膚トラブル実態とその関連要因

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女児では4.7±2.8回,p=0.022)。

おむつ皮膚炎に関連する多重ロジスティック分析 (表2)では,先行研究でおむつ皮膚炎との関連が明ら かな排便回数を調整しても,男児で有意にリスクが高 かった(Adjusted Odds Ratio[AOR]=1.70,95%Con-fidence interval[95%CI]:1.04–2.77,p=0.033)。

ただし,分析対象を経産婦に限った場合,表2の変 数(性別,排便回数)に同胞のアトピー性皮膚炎家族 歴も追加すると,排便回数のみが有意な変数となり (AOR=1.24,95%CI:1.07–1.45,p=0.005),性別は有 意ではなくなった(AOR=1.64,95%CI:0.72–3.29, p=0.237)。同胞のアトピー性皮膚炎家族歴は有意 ではないが,リスクが高い傾向は見られた(AOR= 2.98,95%CI:0.92–9.63,p=0.068)。初産婦のみの 分析でも,排便回数のみが有意な変数となったが (AOR=1.17,95%CI:1.05–1.31,p=0.004)男児でリ ス ク が 高 い 傾 向 は 見 ら れ た(AOR=1.73 , 95%CI: 0.91–3.27,p=0.093)。 脂漏性湿疹では,出生時の在胎週数に有意な差があ り(p=0.006),早産である36週台では誰も発症してお らず,41週以降では半数以上が発症していた。連続値 の在胎日数でも,脂漏性湿疹有群の方が,有意に日数 が長かった(脂漏性湿疹有群で277.8±8.0日,無群では 273.9±8.6日,p<0.001)。また,脂漏性湿疹有群の方 が,有意に出生時体重が重かった(有群で3094±377g, 無群で3010±352g,p=0.049)。また,全身に胎脂が付 着していた場合に,脂漏性湿疹の発症割合が低かった (p=0.020)。なお,出生時在胎日数と出生時体重には 有意な正の相関(r=0.42,p<0.001),在胎日数と胎脂 の量には負の相関(r=−0.30,p<0.001)があった。 脂漏性湿疹に関連する多重ロジスティック分析(表 3)では,連続値で在胎日数が長い程有意にリスクが 高かった(AOR=1.05,95%CI:1.02–1.08,p=0.003)。 全身の胎脂量は在胎日数で調整すると有意な関連は見 られなかった。 最後に汗疹では,季節によって有意な差があり (p<0.001),低出生体重児では誰も発症しておらず, 汗疹有群で出生時から1か月健診時までの1日当たり の体重増加量が有意に多かった(汗疹有群42.0±10.6g/ 日,無群で36.9±11.4g/日,p=0.002)。 汗疹に関連する多重ロジスティック分析(表 4)で は,季節によるリスクの違いが明らかであり,冬に比 べ て 春(AOR=9.34 , 95%CI: 1.17–74.9 , p=0.035), 夏(AOR=18.97,95%CI:2.44–147.44,p=0.005)で有 意にリスクが高かった。また,季節要因を調整して も,1か月までの1日当たり体重増加量(g)が多い程, 有 意 に リ ス ク が 高 く な っ た(AOR=1.03 , 95%CI: 1.00–1.06,p=0.036)。 4.感度分析(研究B対照群での分析) 研究 B の対照群のみ(n=114)を対象とした感度分 析では,皮膚トラブル全般の発症割合に性別がほとん ど関連しない(男児48名[75.0%],女児37名[74.0%], p=0.903)点は全体の傾向と異なった。しかし,それ以 外の項目については以下の通り,サンプルサイズが小 さくなるため統計的に有意な差はなくなることはあっ

COR (95%CI) p 値 AOR (95%CI) p 値 性別a 1.86 (1.16–2.99) 0.010 1.70 (1.04–2.77)

0.033 排便回数 1.20 (1.10–1.30) <0.001 1.19 (1.09–1.30) <0.001

a:女児=0,男児=1 b:COR=Crude Odds Ratio  c:95%CI=95%Confidence interval

d:AOR=Adjusted Odds Ratio(研究群[研究 A,研究 B の介 入群,研究Bの対照群]と表中変数で調整)

COR (95%CI) p 値 AOR (95%CI) p 値 在胎日数 1.06 (1.03–1.09) <0.001 1.05 (1.02–1.08) 0.003 胎脂:全身有 0.40 (0.18–0.88) 0.023 0.54 (0.23–1.27) 0.159

a:COR=Crude Odds Ratio  b:95%CI=95%Confidence interval

c:AOR=Adjusted Odds Ratio(研究群[研究 A,研究 B の介 入群,研究Bの対照群]と表中変数で調整)

表4 汗疹発症の関連要因

CORa (95%CIb) p 値 AORc (95%CIb) p 値 季節(ref:冬) Ref Ref

 春 9.40 (1.20–73.79) 0.033 9.34 (1.17–74.90) 0.035  夏 19.82 (2.64–149.02) 0.004 18.97 (2.44–147.44) 0.005  秋 3.32 (0.36–30.70) 0.290 3.00 (0.32–27.94) 0.334 体重増加量(g) 1.04 (1.01–1.07) 0.003 1.03 (1.00–1.06) 0.036 a:COR=Crude Odds Ratio b:95%CI=95%Confidence interval

c:AOR=Adjusted Odds Ratio(研究群[研究 A,研究 B の介入群,研究 B の対照群]と表中変 数で調整)

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ても,本研究全体の分析と同様の傾向が見られた。 具体的には,おむつ皮膚炎の発症割合では全体の分 析で有意な差の見られた性別(男児28名[43.8%],女 児 19 名[38.0%],p=0.536),同胞のアトピー性皮膚 炎家族歴(同胞にアトピー家族歴有群 2 名中 2 名とも [100%],家族歴無群40名中15名[37.5%],p=0.079), 1か月平均排便回数(おむつ皮膚炎有群で 6.5±2.9 回, 無群で4.9±2.6回,p=0.003)と,感度分析でのみ有意 な差があった低出生体重児(低出生体重児 6 名中 5 名 [83.3%]が 発 症, そ の 他 の 児 で は 108 名 中 42 名 [38.9%],p=0.031)ともに同様の傾向であった。 脂漏性湿疹の発症割合では,出生時在胎週数(36週 で は 3 名 中 0 名[0.0%], 37–38 週 で は 41 名 中 12 名 [29.3%],39–40 週では 59 名中 21 名[35.6%],41–42 週では 11 名中 6 名[54.5%],p=0.253),胎脂の量(胎 脂なし群で 4 名中 2 名[50.0%],少群で 59 名中 25 名 [42.4%],中群で30名中10名[33.3%],多群で21名中 2名[9.5%],p=0.048),出生時全身の胎脂有無(全身 に胎脂あり群で 20 名中 1 名[5.0%],全身にはなし群 で 94 名中 38 名[40.4%],p=0.002),発症有無による 関連では,在胎日数(脂漏性湿疹有群で278.3±8.2日, 無群で274.7±9.2日,p=0.003),出生時体重(有3051g vs無 2978g,p=0.318)に全体の分析と同様の傾向が 見られた。 最後に,汗疹の発症割合では低出生体重児(低出生 体重児では 6 名中 0 名[0.0%],その他の群では 108 名 中17名[15.7%],p=0.292),季節(春生まれは27名中 4名[14.8%],夏生まれは 29 名中 10 名[34.5%],秋生 まれは 32 名中 2 名[6.3%],冬生まれは 26 名中 1 名 [3.8%],p=0.042)に,発症有無による関連では,1 か月体重増加量(g)/日(有 35.8±7.3g/日 vs 無 34.4± 10.7g /日,p=0.613)に全体の分析と同様の傾向が見ら れた。

Ⅳ.考   察

本研究は新生児期の皮膚トラブルの発症割合の実態 を明らかにすると同時に,新生児期に多い皮膚トラブ ルであるおむつ皮膚炎,脂漏性湿疹,汗疹に関連する 要因を初めて明らかにした研究である。 1.皮膚トラブルの発症割合 本 研 究 で は, 皮 膚 ト ラ ブ ル 全 般 の 発 症 割 合 が 65.5%,おむつ皮膚炎は 33.5%,脂漏性湿疹は 32.3%, 汗疹は16.9% であり,全体の6 割以上,おむつ皮膚炎 ・脂漏性湿疹に限っても約3人に1人が経験していた。 本研究では顔の乳児湿疹・脂漏性湿疹・新生児痤瘡 を含め脂漏性湿疹と答えた可能性が高く,顔の何らか の皮膚トラブルを本研究の脂漏性湿疹と比較して検討 すれば,どれも医師の診断や同一看護師による皮膚ト ラブルの評価を行った先行研究(Matsumoto, et al. 2005;杉山他,2014;土浜他,2011)と大きな違いは なかった。そのため,本研究の皮膚トラブルの回答は 養育者による回答であったという限界はあるものの, 概ね妥当なものであったと考える。 2.皮膚トラブル毎の関連要因 まず,おむつ皮膚炎のリスク要因として男児,同胞 にアトピー性皮膚炎の者がいること,排便回数が多い ことの3点が関連することが明らかになった。おむつ 皮膚炎には排便回数が関連することは先行研究からも 明ら かで あり(Philipp, et al. 1997; Yonezawa, et al. 2014),男児で発症割合が多い理由として排便回数が 女児より多いことも影響していると考えられる。しか し,多重ロジスティック解析で排便回数を調整して も,男児の方が有意にリスクが高かった。NICU ・ GCUの児を対象とした報告でも男児の方が女児より もおむつ皮膚炎の発症割合が高いという報告があり (田代他,2016),男児は排便回数以外のメカニズムに よっておむつ皮膚炎のリスクが高い可能性がある。 ただし,経産婦で同胞にアトピー性皮膚炎のある者 は男児が多かったこと,初産・経産別の分析では,初 産では男児の方が多い傾向はあるものの性別が有意で はなくなることも考えると,男児がおむつ皮膚炎のリ スクが高い理由は明確ではなく,複合的な要因による ものであると考える。仮説としては,男児は外性器の 分女児よりもおむつ内での摩擦を受けやすい可能性, 皮膚の機能や厚さに性差がある可能性が考えられる。 しかし,調査によって傾向に違いがないことから,男 児は女児に比べるとおむつ皮膚炎のリスクが高いと考 えて良いだろう。 次に脂漏性湿疹に関しては,在胎週数・日数,胎 脂,出生時体重等多くの要因が関連していたが,変数 同士での相関が高く,在胎期間が最も強く影響してい ると考える。脂漏性湿疹は,連続値で在胎日数が長く なるほどリスクが高くなり,特に妊娠 41 週以降でリ スクが高く,妊娠 36 週の早産ではリスクが低いこと が初めて明らかになった。その理由としては,脂漏性 新生児期の皮膚トラブル実態とその関連要因

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に関連がある可能性が考えられる。 脂漏性湿疹発症のメカニズムは不明とされている が,皮脂分泌部位に多発し,皮脂分泌量が多い生後3 か月までの発症が多いことから,皮脂とその脂質を栄 養源とする常在真菌であるマラセチアの関連が示唆さ れている(Gupta, et al. 2004)。仮説としては皮脂に含 まれるトリグリセライドがマラセチアによって分解さ れ,遊離脂肪酸となって皮膚に刺激を与えると考えら れているが,皮脂の量が発症に関連するのか,皮脂の 成 分 的 な 質 が 関 連 す る の か は 明 ら か で な い(清, 2012)。 今後,在胎週数と皮脂量・皮脂成分の関連を明らか にしつつ,脂漏性湿疹に在胎週数が与える影響のメカ ニズムを明らかにする必要がある。少なくとも,在胎 週数が延びる程リスクが高くなることは明らかであ り,予定日の近い39–40週台以降に関しては,洗浄剤 を用いた洗顔を推奨する等,在胎週数に合わせたスキ ンケア指導が重要であると考える。 汗疹に関しては,一般的に言われている通り,冬生 まれと比べて春生まれ・夏生まれで有意にリスクが高 かった。しかし,沐浴頻度を 2 日に 1 回とした研究 B の介入群で発症割合が高くならなかったことも合わせ て考えると,一般的に言われているような「こまめな シャワー」が本当に汗疹の予防になるのかは疑問が残 る。汗疹は汗かぶれ(汗による接触皮膚炎)だけでは なく,汗が大量にでることによる汗腺の閉塞が原因で あるとされている(馬場,2009)。そのため,汗を拭 きとることも必要ではあるが,汗をかかせすぎないよ うな気温調節も重要である可能性もある。 また,季節要因を調整しても,生後 1 か月までの 1 日当たりの体重増加量が多いと,有意に汗疹のリスク が高くなっていた。出生時や1か月健診時点の体重で はなく,あくまでも体重増加量が関連していたことか ら,体重増加が多いことは皮膚の伸び・発達や汗腺の 発達に影響を与えている可能性がある。しかし,その メカニズムは不明であり,今後体重増加と皮膚の機能 ・発達について検討していく必要がある。 同時に,低出生体重児は1日当たりの体重増加量は 出生時2500g以上の児と変わらないにも関わらず,汗 疹を発症した児がいなかったため,汗疹発症のリスク が低い可能性がある。汗腺数に大きな差はないと考え られる新生児では,発汗量は汗腺の大きさに比例し, 汗腺の大きさには個人差があるとされている(岩瀬 ほとんどが正期産児であり,皮膚や汗腺の成熟度は他 の児と同等でありながら,身体が小さい児であったと 言える。そのため,汗腺も小さい傾向があった可能性 も考えられる。その結果,発汗量が少なく,汗疹を発 症しにくい傾向があったのかもしれない。しかし,実 際の発汗量については不明であり,今後検討していく 必要である。 3.本研究の限界と今後の課題 本研究の限界としては,皮膚トラブルの判断を母に 委ねており,トラブルの重症度や状態が明らかでない こと,また母が脂漏性湿疹や汗疹という選択肢をどの ように理解したかは不明であり偽陽性・偽陰性が含ま れる可能性があることである。しかし,少なくともお むつ皮膚炎ではおむつの中に,脂漏性湿疹は顔に何ら かの皮膚トラブルを抱えていたことは間違いないと同 時に,母にとっての「トラブル」を明らかにするとい う点では本調査の方法に問題はなかったと考える。た だし,関連要因についてはトラブルの中身が統一され ていることが望ましく,その点に限界が残っている。 今後,客観的な指標やトレーニングを受けた評価者に よる皮膚トラブルの評価が望まれる。 次に,本研究の対象者に偏りがある可能性がある。 特に,研究Bは介入研究であり,特に皮膚トラブルや スキンケアに興味がある人が多く含まれていた可能性 がある。その結果,皮膚トラブルの発症割合に影響を 与えた可能性があるが,興味がある故に偽陽性が増え る可能性と,興味があるために熱心にスキンケアを行 い予防できた可能性が考えられる。全体の割合とし て,先行研究における日本での皮膚トラブルの割合か ら大きな乖離はなく,明らかになったリスク要因への 影響は大きくないと考える。また研究 A は 5 月・ 6 月 生まれの児が中心であり,季節による影響が大きい可 能性がある。しかし,感度分析として,一般的なスキ ンケアを行い,一年を通してリクルートを行った研究 Bの対照群での分析でも,全体の結果と大きな違いは なかったことから,本研究の結果は妥当性のあるもの と考える。 4.本研究からの臨床への示唆 本研究の結果から,おむつ皮膚炎では男児や排便回 数の多い児が,脂漏性湿疹では在胎日数が長い方が, 汗疹は季節とともに1か月健診までの体重増加量が多

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い児でリスクが高いことが明らかになった。本研究結 果から,出産後,産科での退院指導で,一律の指導で はなく,個別性に応じた指導 ― 例えば,妊娠 41 週で 生まれた男児の場合には,おむつ皮膚炎や脂漏性湿疹 のリスクが高いことを伝えた上で,予防・発症時の対 処方法を具体的に指導すると同時に,リスクが高い児 が存在し,母の育児手技に関わらず発症してしまう場 合もあるので,もし発症しても罪悪感を持つ必要はな い事を予め説明しておくことが可能になる。個別性に 基づいた指導を通して,皮膚トラブルに関連する育児 不安や負担を軽減できるような関わりが望まれる。

Ⅴ.結   論

約 6 割以上の新生児が皮膚トラブルを経験してお り,多くの児にとって問題となっていることが明らか になった。また,皮膚トラブルの種類によって,おむ つ皮膚炎では男児や排便回数の多い児が,脂漏性湿疹 では出生時在胎日数が長い児が,汗疹は春・夏の季節 とともに1か月健診までの体重増加量が多い児でリス クが高いことが明らかになった。今後,それぞれのリ スク要因がトラブル発症に至るメカニズムを今後と検 討していく必要があるが,まずは,本研究の結果を基 に,個別性に基づいた保健指導がなされていくことが 望まれる。 利益相反 本研究に関する利益相反はありません。 文 献 馬場直子(2009).新生児痤瘡・乳児脂漏性皮膚炎・汗疹 ・おむつ皮膚炎.小児科診療,11,1963-1969. Gupta, A. K. & Bluhm, R. (2004). Seborrheic dermatitis.

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Kojima, R. (2017). Effects of moisturizing skincare on skin barrier function and the prevention of skin prob-lems in 3-month-old infants: A randomized controlled trial. J Dermatol, in press.

表 4 汗疹発症の関連要因

参照

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