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統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請スタイルの関連

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(1)Title. 統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請スタイルの関連. Author(s). 本田, 真大; 益子, 洋人; 永井, 智. Citation. 学校臨床心理学研究 : 北海道教育大学大学院教育学研究科学校臨床心理 学専攻研究紀要, 17: 23-31. Issue Date. 2020-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11301. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請スタイルの関連 本田 真大*・益子 洋人**・永井 智***. The Relationships Among Integrating Conflict Resolution Skills, Emotional Regulation, and Help-Seeking Styles. 要 約 本研究の目的は統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請スタイルの関連を検討することである。 高校生86名のデータの重回帰分析の結果, 援助要請スタイルの「過剰型」は統合的葛藤解決スキルの「粘 り強さ」と正, 「感情調整」と負の関連にあること, 「回避型」は「粘り強さ」と負の関連にあること, 「自 立型」は「粘り強さ」と正の関連にあることが明らかになった。また,統合的葛藤解決スキルへの介入 を行った結果,統合的葛藤解決スキルの低い群において統合的葛藤解決スキルの向上が見られたものの, 感情調整と援助要請スタイルには効果は見られなかった。統合的葛藤解決スキルと援助要請スタイルの 関連について考察された。. 問題と目的. 性(ニーズがあっても自ら援助を求めないこと) , 過剰性(援助を求めすぎること),非機能性(援. 1.援助要請の過少性,過剰性,非機能性. 助を求めるが結果が好ましくないこと) ,という. 援助要請とは「情動的または行動的問題を解決. 3つに集約される(本田・水野,2017) 。これら. する目的でメンタルヘルスサービスや他のフォー. の中では,過少性に関する研究が主流でありその. マルまたはインフォーマルなサポート資源に援助. 研究数も非常に多い一方で,過剰性と非機能性の. を求めること」と定義され(Srebnik, Cause, &. 研究は未だ少ないのが現状である。. Baydar, 1996) ,援助要請に対する肯定的・否定. 非機能性については,本田・新井・石隈(2015). 的 な 態 度(attitude) , 意 図(intention) ,意志. が援助要請行動から適応に至るプロセスモデルを. (willingness) ,行動(behavior)などの側面か. 実証している。このモデルによれば,援助要請行. ら研究されている(本田・新井・石隈,2011) 。. 動後の個人の適応に影響すると考えられる要因は. 援助要請研究からは自殺企図やいじめ被害など重. 悩みの経験の多さ,援助要請スキル,他者からの. 大な問題を抱え,精神的健康状態が悪化している. 援助(実行されたサポート),援助評価,の4つ. 者が適切な援助資源に接近しやすくなるための有. である。そして,本田・新井・石隈(2010)は援. 益な知見が期待できる。. 助要請スキルが高いほど他者から得られる援助が. 援助要請研究において,援助要請の問題は過少. 多いなど,機能的な援助要請行動であることが明. *. Masahiro HONDA:北海道教育大学函館校. **. Hirohito MASHIKO:北海道教育大学札幌校. ***. Satoru NAGAI:立正大学. キーワード:統合的葛藤解決スキル,感情調整,援助要請の過剰性,被援助志向性. 23.

(3) 学校臨床心理学研究 第17号(2019年度). らかになっている。また,他者からの援助(実行. ルの過剰型は感情調整と負の関連を示すことを明. されたサポート)は援助要請相手の要因であり援. らかにしている。過剰型と再確認傾向の間に正の. 助要請スキルのみによって規定されるものではな. 関連があることからも(永井,2013),過剰型に. い。そして,援助評価(本田・石隈,2008)とは. は不快感情を抱えられないことが影響している可. 援助要請行動後の認知であり, 「問題状況の改善」 , 能性がある。 「他者からの支えの知覚」という認知が高いほど. また,先行研究では検討されていないが,本研. 約1か月後の適応状態が良く, 「対処の混乱」 , 「他. 究では統合的葛藤解決スキル(益子,2013)との. 者への依存」という認知が高いほど約1か月後の. 関連を検討する。統合的葛藤解決スキルとは「日. 適応状態が悪化することが明らかになっている. 常的な対人葛藤において個人が用いる,葛藤当事. (本田・新井,2008) 。これらの研究が示すように, 者双方がお互いに納得・満足して葛藤を解決する 援助要請行動の非機能性を理解し,機能性を高め. ためのスキル」である(益子,2013)。ここでい. るために,本田他(2015)のモデルに沿った各変. う「葛藤」は,「自分の欲求や期待が他者によっ. 数の検討が重要である。. て阻止されていると認知することで生じるもの」. 過剰性の概念自体の検討や過剰性を直接測定す. というThomas(1976)の定義や,「個人の行動,. る尺度は十分確立されているわけではないが,既. 感情,思考の過程が,他者から妨害されている状. 存の尺度としては援助要請スタイル尺度(永井,. 態」というKelly(1987)の定義に基づく。すな. 2013)の下位尺度である「過剰型」が該当する。. わち,対立関係の顕在化以前に当事者が感じるで. 援助要請スタイルは,悩みがあり自分で解決でき. あろう,わだかまりなども,葛藤とみなすもので. なくても相談しない「回避型」 ,悩みがあると自. ある。この定義によるのならば,「自分は援助要. 分で取り組む前に相談する「過剰型」 ,悩みに対. 請したいのに,他者がそれに応えてくれるかどう. して自分で取り組み, 解決しなければ相談する 「自. か分からない状態」は,対人葛藤である。このス. 立型」という3つのパターンに分類される。そし. キルの高い人は,そのような葛藤場面において,. て,過剰型は悩みが少ないときにも援助要請行動. どの程度の援助ならば求めることができるのか. を多く行うことや,自己効力感とは関連せず,再. (反対に,どの程度ならば求められず,自分で解. 確認傾向と正の関連があることが示されている. 決すべきなのか),対話を通して決定しようとす. (永井,2013) 。さらに過剰型の傾向を有する者は, るであろう。したがって,援助要請の自立型と正 援助要請時に不適切な自己開示を行う傾向にある. の,過剰型とは負の関連を示すと予想される。一. (ひいては本人にとって不利益になる)ことが明. 方,話し合う前から援助要請を諦めることもない. らかになっている(永井,2017) 。したがって,. と考えられるため,回避型とも負の関連を示すと. 過剰型で示されるような過剰な援助要請を適切な. 予想される。. 水準に変容することは援助要請者本人の適応状態. また,この統合的葛藤解決スキルは,介入によっ. の改善にも寄与すると考えられる。しかし,これ. て変容可能であることが示唆されている。Seren. までの援助要請研究の大半は過少性の改善のため. & Ustunt(2008)は,看護学生を対象とした年. の介入(援助要請を促進する介入)であり(e. g.,. 単位のカリキュラムを開発,実施し,統合的葛藤. Gulliver, Griffiths, & Christensen, 2010) ,過剰型. 解決スキルと内容的に類似する,対話のスキルや. を抑制する介入は試みられていない。そこで本研. アンガーマネジメント能力が上昇したことを報告. 究では,高校生を対象に援助要請の過剰型を抑制. している。本邦においても,益子(2017)は教員. するための介入を実施しその効果を検証する。. 養成課程の大学生を対象とした90分×4回の心理. 2.援助要請の過剰性の関連要因. 教育プログラムを開発し,当該スキルだけでなく,. 過剰性の関連要因として,成人アタッチメント. 過剰適応傾向を適応的に変化させることを報告し. の「見捨てられ不安」と正, 「親密性の回避」と. ている。さらに,益子・本田(2017)は中学2年. 負 の 関 連 が あ る こ と が 示 さ れ て い る( 永 井,. 生を対象に統合的葛藤解決スキルへの介入(50分. 2017)。さらに,本田(2018)は援助要請スタイ. のセッション2回分)を行い,統合的葛藤解決ス 24.

(4) 統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請スタイルの関連. キルの4つの下位概念( 「丁寧な自己表現」 , 「粘. 65名,平均年齢17.56±0.52歳)。. り強さ」,「受容・共感」 , 「統合的志向」 )すべて. 2.調査時期. が介入後に上昇し,1か月後にも維持していたこ. Time1(事前)は2017年11月,Time2(事後). と,友人関係満足度は介入前後では変化は見られ. は12月に調査し,その間に学級単位の統合的葛藤. なかったが介入の1か月後に上昇したことを示し. 解決スキル教育を行った。. ている。そして,本田・益子(2017)は高校1~. 3.質問紙の構成. 3年生を対象に障害理解教育と統合的葛藤解決ス. ⑴ 統合的葛藤解決スキル. キルを組み合わせた介入(50分のセッション1回. 益子(2013)の統合的葛藤解決スキル尺度を使. 分)を学年別に実施し,統合的葛藤解決スキルの. 用した。「丁寧な自己表現」, 「粘り強さ」, 「受容・. 4つの下位概念の上昇,ならびに児童生徒版障害. 共感」,「統合的志向」の4つの下位尺度から構成. 者に対する多次元的態度尺度(楠・金森・今枝,. され,16項目5件法で回答が求められた。. 2012)の「自発的交流意識」の向上を確認してい. ⑵ 感情調整. る。これらの研究が示すように,統合的葛藤解決. 小塩・長谷・金子・長峰(2002)の精神的回復. スキルは介入によって変容可能であり,標的とな. 力尺度の下位尺度の「感情調整」を使用した。9. る統合的葛藤解決スキルのみでなく,その他の変. 項目5件法であった。. 数にも介入の効果が見られる場合がある。本研究. ⑶ 援助要請スタイル. では統合的葛藤解決スキルへの介入を行い,その. 永井(2013)の援助要請スタイル尺度を用いた。. 介入によって統合的葛藤解決スキル,感情調整,. 「過剰型」,「回避型」,「自立型」の3つの下位尺. 援助要請スタイルにどのような変容が見られるか. 度から構成され,12項目7件法であった。. を検証する。特に, 援助要請スタイルの 「過剰型」. 4.介入プログラムの概要(50分×3回). の抑制に効果があるかどうかを検討する。. 第一著者と第二著者がプログラムを作成した。. 以上より本研究では統合的葛藤解決スキル,感. 第1回は葛藤解決の心理教育と感情のコントロー. 情調整と援助要請スタイルの関連を検討すること. ル,第2回は上手な聴き方スキルと上手な伝え方. を目的とする。. スキル,第3回は総合練習とまとめ,という内容 であった。プログラムの概要をTable 1に示した。. 方 法. 葛藤場面として,「学校の先生(またはバイトの 上司)に提出するように言われた書類(プリント). 1.調査対象者. を書いて出したら, 『これじゃ全然分からないよ。. 北海道の全日制公立高等学校1校の第3学年3. 書き直して!』とその場で返されました。しかし,. 学級の生徒116名を対象とした(男子51名,女子. あなたは何がいけなかったのか分かりません。先. Table 1 本研究で作成した統合的葛藤解決スキル教育のプログラム セッション. テーマ. 概 要. 葛藤解決の心理教育. 葛藤解決には5つの型(回避,支配,服従,妥協,統合)があり,統合をめざすと よいことを知る。. 感情のコントロール. 感情の種類と強さを知り,自分が葛藤を経験した時の感情を考える。不快な感情の 重要性を知る。リラクセーションの方法を練習する。. 上手な聴き方スキル. 相手の話の内容を理解しつつ,相手が「聴いてもらえた」と実感できるような聴き 方を練習し,統合的な解決のために,相手の望みを聞き取る重要性を知る。. 上手な伝え方スキル. 統合的な解決のために,自分が望んでいることに気づき,それを相手にわかりやす く伝える練習をする。. 総合練習. 具体的な葛藤場面で,統合的葛藤解決スキルの各構成要素を使って統合的な解決を 考え,それを伝える練習をする。. まとめ. 統合的葛藤解決スキル教育の全体を振り返り知識の定着を図る。. 第1回. 第2回. 第3回. 25.

(5) 学校臨床心理学研究 第17号(2019年度). ては,統合的葛藤解決スキルの「粘り強さ」から. 生(上司)はとても忙しそうにしており,あなた を見ずにパソコンの画面を見ています。 」などの. 正の標準偏回帰係数があることが明らかになった. 3つの場面を作成した。介入は学級ごとに実施し. (β=.34, p<.01) (Table 1)。調整済み決定係数は,. た。. 「過剰型」はadj.R2=.13,「回避型」はadj.R2=. 5.倫理的配慮. 09,「自立型」はadj.R2=.11であった。. 本研究の実施に当たって,北海道教育大学研究. 2.統合的葛藤解決スキル教育の効果の検証. 倫理委員会の承認を得た。. Time1,Time2のデータを用いて対応のあるt 検定を行った。その結果,いずれの変数にも有意. 結 果. な得点の変化は認められなかった(Table 4)。 そこでTime1の統合的葛藤解決スキルの合計得. 欠損値のなかった83名のデータを分析に用いた。 点が平均値未満の生徒37名をスキル低群として抽 1.統合的葛藤解決スキル,感情調整,援助要請. 出し同様の分析を行った。その結果,統合的葛藤. スタイルの関連. 解決スキルの「丁寧な自己表現」 (t=4.00, p<.01),. まず,Time1のデータを用いて,統合的葛藤解. 「粘り強さ」(t=3.32, p<.01),「受容・共感」(t. 決スキルの各下位尺度( 「丁寧な自己表現」 , 「粘. =2.21, p<.01),「統合的志向」(t=2.36, p<.01). り強さ」 , 「受容・共感」 , 「統合的志向」 ) ,と「感. の4つの下位尺度すべてにおいてTime1よりも. 情調整」 ,援助要請スタイルの各下位尺度( 「過剰. Time2の方が得点が高かった。しかし, 「感情調整」. 型」 ,「回避型」,「自立型」 )の単相関係数を算出. と援助要請スタイル尺度の3つの下位尺度得点に. した(Table 1) 。そして,Time1のデータを用いて, は有意な変化は見られなかった(Table 5)。 統合的葛藤解決スキルの各下位尺度と 「感情調整」. 考 察. を独立変数,援助要請スタイルの各下位尺度を従 属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を 行った(Table 2) 。. 本研究の目的は統合的葛藤解決スキル,感情調. 重回帰分析の結果,援助要請スタイルの「過剰. 整と援助要請スタイルの関連を検討することで. 型」に対しては,統合的葛藤解決スキルの「粘り. あった。. 強さ」から正(β=.36, p<.01) ,感情調整から負. 1.本研究のまとめ. (β=-.25, p<.05)の有意な標準偏回帰係数が. ⑴ 統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請. 得られた。「回避型」に対しては統合的葛藤解決. スタイルの関連. スキルの「粘り強さ」から負の標準偏回帰係数が. 統合的葛藤解決スキルの「粘り強さ」は援助要. 得られた(β=-.32, p<.01) 。 「自立型」に対し. 請スタイルの「過剰型」, 「自立型」と正, 「回避型」. Table 2 Time1データの各変数の単相関係数. Table 3 Time1データの重回帰分析. (N=83). (ステップワイズ法,N=83). 援助要請スタイル 過剰型 回避型 自立型 統合的葛藤解決スキル 丁寧な自己表現 粘り強さ 受容・共感 統合的志向 精神的回復力 感情調整.     .30**     .31**     .03     .16. -.28** -.32** -.03 -.10. .25* .34** .12 .26**. -.17. -.02. .23*. 援助要請スタイル 過剰型 回避型 自立型 統合的葛藤解決スキル 丁寧な自己表現 粘り強さ 受容・共感 統合的志向 精神的回復力 感情調整 adj.R2. *p<.05, **p<.01.. .36**.  -.32**.      .34**. .09. .11. -.25* .13. *p<.05, **p<.01.. 26.

(6) 統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請スタイルの関連 Table 4 介入効果の検証(N=83) pre. post. t値. M. SD. M. SD. 3.46 3.49 3.77 3.70.  .78  .79  .69  .66. 3.59 3.46 3.72 3.67.  .73  .80  .75  .71. 1.21  .23  .48  .33. 3.04.  .62. 3.11.  .72.  .65. 3.91 3.48 4.48. 1.48 1.27 1.11. 3.84 3.59 4.48. 1.26 1.31 1.10.  .38  .54  .02. 統合的葛藤解決スキル 丁寧な自己表現 粘り強さ 受容・共感 統合的志向 精神的回復力 感情調整 援助要請スタイル 過剰型 回避型 自立型. Table 5 スキル低群への介入効果の検証(n=37) pre 統合的葛藤解決スキル 丁寧な自己表現 粘り強さ 受容・共感 統合的志向 精神的回復力 感情調整 援助要請スタイル 過剰型 回避型 自立型. post. t値. M. SD. M. SD. 2.96 2.86 3.39 3.20.  .60  .60  .66  .46. 3.51 3.43 3.72 3.57.  .72  .79  .81  .77. 4.00** 3.32** 2.21** 2.36**. 2.83.  .58. 3.12.  .72. 1.95. 3.65 3.77 4.10. 1.46 1.24 1.22. 4.01 3.50 4.43. 1.13 1.34  .99. 1.48 .86 1.18 **p<.01.. と負の関連にあることが明らかになった。 「粘り. ない。. 強さ」は葛藤相手に働きかけて関わろうとするス. 他方,統合的葛藤解決スキルの「粘り強さ」以. キルである。「過剰型」と「自立型」も,ともに. 外の3因子と援助要請スタイルの間には,有意な. 他者に働きかけて援助要請行動を実行する援助要. 関連は示されなかった。この結果は,他者に援助. 請スタイルであり, 「回避型」は援助要請行動を. を「どのように求めるのか」ということと,援助. 実行しない援助要請スタイルである。そのため,. を求めるときに「相互に納得できるような行動を. 他者に関わっていこうとする「粘り強さ」との間. とるかどうか」ということの間には,直接的な関. に正の関連が見られたと考えられる。また, 「粘. 連が見られないことを示唆している。人は,「自. り強さ」は過剰適応傾向の「自己抑制」との間に. 分は援助を要請したいのに,他者がそれに応えて. 負の単相関係数が見られることが報告されており. くれるかどうか分からない」葛藤場面において,. (益子,2013) , 「粘り強さ」が高い人は,何か問. どの程度ならば援助を求めることができるか(逆. 題が生じたときに我慢(自己抑制)せず,他者に. に,どの程度ならば自己解決するべきなのか) ,. 働きかけると推測される。このことも, 「過剰性」. 必ずしも話し合って決定しないようである。しか. との直接的な関連が見られた一因であるかもしれ. し,これらが独立的であるという現象は,援助要 27.

(7) 学校臨床心理学研究 第17号(2019年度). 請者,援助要請相手双方にとって不本意な結果を. 見られなかったのかもしれない。ただし,これら. もたらす可能性がある。たとえば,過剰型の援助. の研究はいずれも,介入の回数や1セッションご. 要請者が援助要請相手の都合を考慮せずに援助を. との時間が異なるため,単純に比較することは困. 求めるならば,その相手は疲弊し,援助要請者か. 難である。今後は,厳密に条件を設定するなどし. ら離れてしまうかもしれない。逆に,過剰型の人. て,引き続き効果を検討していく必要があるだろ. が対話によって相手の応えうる限界を理解できる. う。. ならば,その過剰性は現実的な期待に調整される. また,統合的葛藤解決スキル教育の効果として,. かもしれない。このように考えると,統合的葛藤. 全体では,感情調整と援助要請スタイルにも変容. 解決スキルは,援助要請スタイルそのものを変化. は認められなかった。この理由には,統合的葛藤. させるのでなく,援助要請スタイルがもたらす結. 解決スキルと感情調整,援助要請スタイルの関連. 果を調整する要因となる可能性がある。この点に. 自体が弱く介入の標的として妥当ではなかった可. 関する今後の検討が望まれる。. 能性や,対象者全体の統合的葛藤解決スキルの向. 感情調整は「過剰型」と負の関連にあり,本田. 上が見られない程度の効果であったために感情調. (2018)と一致する結果であった。さらに,本田. 整や援助要請スタイルの変容まで影響しなかった. (2018)は中学生を対象としたのに対し本研究は. 可能性が考えられる。統合的葛藤解決スキルの標. 高校生を対象にしており, 援助要請スタイルの 「過. 準的な介入方法が確立されているわけではないた. 剰型」と感情調整の関連が中学生,高校生のいず. め,本研究の結果も踏まえてより適切な介入方法. れにおいても確認された。. を作成することも今後求められよう。. ⑵ 統合的葛藤解決スキル教育の効果. 一方,統合的葛藤解決スキルの低い生徒にはス. 参加者全体ではスキルの向上は見られなかった。 キル向上の効果が認められた。低群の生徒のスキ これは,大学生の統合的葛藤解決スキルの向上を. ル得点は,どの因子においても先行研究における. 目指し90分×3回のセッションを行った介入研究. 高校生(益子,2015)よりおよそ1SD低くなって. (益子,2019) の結果と類似しており,50分のセッ. いた。このことと,統合的葛藤解決スキルが一般. ションを1回(本田・益子,2017) ,50分のセッ. 的なソーシャルスキルと異なり,年齢の向上に. ションを2回(益子・本田,2017)実施した結果, 伴って自然に上昇するものではないという指摘 (益子,2015)を考慮すれば,低群の生徒は,こ. 参加者全体のスキルの向上が見られたという知見. とは異なるものである。両者の相違を確認すると, れまでの生活の中で統合的葛藤解決スキルを習得 本研究で十分な結果が得られなかった理由として. する機会に恵まれなかったのではないかと推測さ. は,葛藤相手との関係性の代替可能性の違いが挙. れる。このような生徒の生活が今後も変わらない. げられるかもしれない。これまで効果の見られた. とすれば,今後の生活の中で統合的葛藤解決スキ. 研究では,中学生(益子・本田,2017)において. ルを習得できる可能性も低いと予測される。した. はクラスや学年,学校など,教員養成課程に在籍. がって,学校で低群の生徒の統合的葛藤解決スキ. する大学生(益子,2017)においては専門職業集. ルを育む機会を提供していくことは,それを学び. 団などの,ひとたび所属すると離脱することが比. にくい生徒への教育の機会として一定の意義を有. 較的困難な関係性を想定している。それに対して, するであろう。 効果が少なかった益子(2019)では,友人関係や. また,この結果は,低群において,全体同様に. サークルの先輩/後輩関係のような,相手と関わ. 感情調整や援助要請スタイルに変化が認められな. ることが不快ならば離れることを検討しやすい,. かったことについても,全体とは異なる理由が存. いわば代替可能な関係性を想定している。本研究. 在すると推察する根拠になりうる。それは,介入. で想定されていた特定の教員やバイトにおける関. 前後を比較するだけでは,統合的葛藤解決スキル. 係性は,どちらかといえば後者に近いと考えられ. の向上に伴う他変数の変化を測定し切れなかった. る。それゆえ,統合的葛藤解決スキルの必要性が. という可能性である。益子・本田(2017)では,. 理解しにくく,動機づけが低下し,充分な効果が. 友人関係満足度のような対人関係に関わる変数が, 28.

(8) 統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請スタイルの関連. 要請行動から適応感に至るプロセスモデルの構. 介入の前後ではなく,1か月後に上昇したと報告. 築 カウンセリング研究,48,65-74.. されている。援助要請スタイルもまた,対人関係. 本田真大・石隈利紀(2008).中学生の援助に対. に関わる変数であるため,この群において1か月 後に変化している可能性は否定しきれない。今後,. する評価尺度(援助評価尺度)の作成 学校心. フォローアップデータを収集して,分析する余地. 理学研究,8 ,29-40.. があるだろう。. 本田真大・益子洋人(2017).障害理解教育と統. しかし,全体としてみれば,本研究では特に援. 合的葛藤解決スキルを組み合わせた実践の効果. 助要請の過剰性の抑制を試みたが,本研究の結果. 検証―多様性に寛容な態度とスキルの育成― . からは統合的葛藤解決スキルと援助要請スタイル. 日本カウンセリング学会第50回記念大会発表論. の関連は弱く,過剰性を抑制する効果は期待しに. 文集,185.. くいと思われる。援助要請の過剰性を抑制するこ. 本田真大・水野治久(2017).援助要請に焦点を. とに特化したプログラム開発が望まれよう。. 当てたカウンセリングに関する理論的検討 カ. 2.本研究の限界と課題. ウンセリング研究,50,23-31.. 本研究の課題は統制群を設定できていない点で. Gulliver, A., Griffiths, K. M., & Christensen, H.. ある。本研究の介入効果を厳密に検討するには統. (2010). Perceived barriers and facilitators to. 制群を設定した研究が不可欠であろう。また,葛. mental health help-seeking in young people: A. 藤解決スキルの「粘り強さ」は援助要請スタイル. systematic review. BMC Psychiatry, 10, 113.. の「過剰型」 , 「自立型」と正の関連にあったが,. Kelly, H. H. (1987). Toward a taxonomy of. 過剰性の抑制をめざす介入においては「過剰型」. interpersonal conflict process. In Oskamp, S.,. と負, 「自立型」と正の関連にある変数を見つけ. & Spacapan, S. (Eds) Interpersonal process:. ることが重要であろう。さらに,プログラムで取. The Claremont symposium on applied social. り扱う他者との関係性について,統合的葛藤解決. psychology. NewburyPark, CA: Sage, pp.122-. スキルの有効性をより見込みうるものに変更した. 147.. り,フォローアップデータを収集したりするなど. 楠敬太・金森裕治・今枝忠雄(2012) .障害理解. の余地があるだろう。. 教育の評価に関する研究―児童生徒版障害者に 対する多次元的態度尺度の開発を通して―大阪. 引用文献. 教育大学紀要 第4部門 教育科学,61,5966.. 本田真大(2018).援助要請の過剰性の実態把握. 益子洋人(2013) .大学生における統合的葛藤解. と関連要因の検討 本田真大・永井智・飯田敏. 決スキルと過剰適応との関連―過剰適応を「関. 晴・橋本剛・水野治久・木村真人 援助要請の. 係維持・対立回避的行動」と「本来感」から捉 えて―教育心理学研究,61,133-145.. 「過剰性」の特徴 日本心理学会第82回大会公. 益子洋人(2015) .青年期の発達段階と葛藤経験. 募シンポジウム,SS-054.. が統合的葛藤解決スキルに及ぼす影響 北海道. 本田真大・新井邦二郎(2008) .中学生の悩みの. 教育大学紀要(教育科学編),65(2),35-43.. 経験,援助要請行動,援助評価が学校適応に与 える影響 学校心理学研究,8 ,49-58.. 益子洋人(2017) .教員養成課程に在籍する大学 生の統合的葛藤解決スキルの向上を目指す心理. 本田真大・新井邦二郎・石隈利紀(2010) .援助 要請スキル尺度の作成 学校心理学研究,10,. 教育プログラムの効果 学校メンタルヘルス, 19,142-152.. 33-40. 本田真大・新井邦二郎・石隈利紀(2011) .中学. 益子洋人(2019) .大学生における統合的葛藤解. 生の友人,教師,家族に対する被援助志向性尺. 決スキル・トレーニングの効果の持続性 北海. 度の作成 カウンセリング研究,44,254-263.. 道教育大学紀要(教育科学編),70(1),91-101. 益子洋人・本田真大(2017).統合的葛藤解決ス. 本田真大・新井邦二郎・石隈利紀(2015) .援助 29.

(9) 学校臨床心理学研究 第17号(2019年度). キルと学校適応感,ストレス反応の変化―中学 生を対象とした心理教育プログラムの効果検討 ―日本カウンセリング学会第50回記念大会発表 論文集,184. 永井智(2013).援助要請スタイル尺度の作成― 縦断調査による実際の援助要請行動との関連か ら―教育心理学研究,61,44-55. 永井智(2017).援助要請スタイルと愛着および 適切な援助要請行動の関連の検討 立正大学心 理学研究所紀要,15,25-31. 小 塩 真 司・ 中 谷 素 之・ 金 子 一 史・ 長 峰 伸 治 (2002).ネガティブな出来事からの立ち直り を導く心理的特性―精神的回復力尺度の作成― カウンセリング研究,35,57-65. Seren, S., & Ustun, B. (2008). Conflict resolution skills of nursing students in problem-based compared to conventional curricula. Nurse Education Today, 28, 393-400. Srebnik, D., Cause, A. M. & Baydar, N. (1996). Help-seeking pathways for children and Adolescents. Journal of Emotional and Behavioral Disorders, 4, 210-220. Thomas, K. W. & Kilmann, R. H. (1976). Thomas-Kilmann conflict mode instrument. Tuxedo, NY: Xicom.. 付 記 本 研 究 は 科 研 費 補 助 金 基 盤 研 究(C) (JSPS16K04336)の助成を得て行われた。. 30.

(10) 統合的葛藤解決スキル,感情調整と援助要請スタイルの関連. SUMMARY The Relationships Among Integrating Conflict Resolution Skills, Emotional Regulation, and Help-Seeking Styles Masahiro HONDA*, Hirohito MASHIKO**, Satoru NAGAI*** (*Department of Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education) (**Department of Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education) (***Rissho University) The purpose of this study is to examine the relationships among integrating conflict resolution skills, emotional regulation, and help-seeking styles. The participants were 86 high school students. The results of regression analysis suggested that (a)“tenacity”positively related“excessive helpseeking”and ”self-directed help-seeking,”(b)“tenacity”negatively related“avoidant help-seeking,” (c)“emotional regulation”negatively related“excessive help-seeking.”Next, the intervention targeted on integrating conflict resolution skills (three sessions, each 50 minutes) was done. The results of intervention, it revealed that integrating conflict resolution skills were enhanced only in the group of participants who had low-level skills. The relationships among integrating conflict skills, emotion regulation, and help-seeking styles were discussed.. Key words : integrating conflict skill, emotion regulation, excessive help-seeking, help-seeking preference. 31.

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