化学反応を伴う温度成層乱流場の数値シミュレーション
京都大学大学院工学研究科機械工学専攻 大西 領 (Ryo Onishi), 小森 悟 (Satoru Komori) *
電力中央研究所 道岡武信 (Takenobu Michioka) *2
*lDepartment
of Mechanical
Engineering, Kyoto University*2
Central
ResearchInstitute
ofElectric
Power Industry1
緒言
乱流場で乱流混合の影響を受けながら化学反応が進行する現象は, $\mathrm{N}\mathrm{O}\mathrm{x}$.
$\mathrm{S}\mathrm{O}\mathrm{x}$などの反応性汚 染物質が大気中を乱流拡散する場合のような環境中の流れや, 燃焼・反応器のような工業装置内 の流れの中に数多く見られる. このような反応乱流場での混合反応過程の解明や反応の進行状況 を数値計算により精度良く予測することは工学的に非常に重要である. 近年, スーパーコンピューターの発達によりナビエ. ストークス方程式や物質の拡散方程式を 乱流モデルを用いずに直接差分化して解く直接数値計算 (DNS) が盛んに行われているが,DNS
を適用できる流れ場はレイノルズ数やシュミット数の低い流れ場に限定されている. これに対し,LES(Large Eddy Simulation) はレイノルズ数やシュミット数の高い流れ場までをも計算できる
ため, 有効な計算手法と考えられている. しかし,
LES
ではフィルター幅より小さなスケール (subgrid-scale:SGS) に対して適切なモデルを用いなければならないという問題点がある.
SGS
レ イノルズ応力やSGS
乱流物質流束に関しては多くの研究者によりいろいろなモデルが提案されて
いるが, 反応乱流場で問題となるフィルターを施した反応項に対するSGS
反応モデルは数少ない. しかも既存のSGS
反応モデルはSGS
での物質の混合状態を正しく評価できるとは言えず. 小ス ケールでの物質の混合状態を考慮しなければならない適度に速い反応や液相乱流場中での反応に 適用することはできない. 従って, フィルターを施した反応項に対してSGS
での物質の混合状態 までをも考慮に入れた適切なSGS
反応モデルを考案することが望まれている. また,LES
のような応用性の高いツールは複雑な流れ場に対する適用性も求められる. そのた め, 流れ場を複雑なものにする代表的な要因の一つである浮力の影響を正確に評価できるLES
の 開発も望まれている. そこで, 本研究ではSGS
での物質の混合状態までをも考慮することにより, 反応を伴う液相乱 流場に対しても適用可能なSGS
反応モデルを開発することを第一の目的とした. さらに開発され たモデルを組み込んだLES
を温度成層乱流中の化学反応に対しても適用し, その適用性について 検討することを目的とした.2Large-Eddy Simulation(LES)
のための
SGS
反応モデル
化学反応を伴う乱流場を支配する方程式は連続の式,Navier-Stokes
方程式およひ物質の拡散方 程式である. これらの式にフィルタ操作を施すことにより $\mathrm{G}\mathrm{S}$成分に対するLES
での支配方程式 を得ることができる. $\frac{\partial\overline{U_{1}}}{\partial x_{1}}.\cdot=0$ (1) 数理解析研究所講究録 1339 巻 2003 年 74-8274
75
$\frac{\partial\overline{U_{\dot{l}}}}{\partial t}+\overline{U_{j}}\frac{\partial\overline{U_{i}}}{\partial x_{\mathrm{j}}}=-\frac{1}{\rho}\frac{\partial\overline{P}}{\partial x_{\dot{\iota}}}+\nu\frac{\partial^{2}\overline{U_{i}}}{\partial x_{j}\partial x_{j}}-\frac{\partial\tau_{ij}}{\partial x_{j}}-\beta g_{\dot{*}}(\overline{T}-T_{\epsilon})$ (2)
$\frac{\partial\overline{\Gamma_{i}}}{\partial t}+\overline{U_{j}}\frac{\partial\overline{\Gamma_{i}}}{\partial x_{j}}=\frac{\nu}{Sc}\frac{\partial^{2}\overline{\Gamma_{i}}}{\partial x_{j}\partial x_{j}}-i^{j}\partial q+\overline{\omega}\partial x_{j}$ (3)
ここでーはフィルタ操作を施された量であることを表しており,
$\tau_{\dot{l}j}$およひ$q_{\dot{l}j}$ はフイルタ操作 によって現れるSGS
レイノルズ応力,SGS
乱流物質フラックスである. これらの項に対してはSmagorinsky
モデルやDyanamic
SGS
モデルなどのモデルが提案されている. 一方, 次式で表さ れるフィルタを施した反応項に対してもSGS
モデルが必要であるにも関わらず, これまで適度に 速い反応や液相にも適用できる適切なSGS
反応モデルは提案されていなかった. $\overline{\omega}=k_{\mathrm{r}}\overline{\Gamma_{A}\Gamma_{B}}$ $=k_{r}(\overline{\overline{\Gamma_{A}\Gamma_{B}}}+\overline{\gamma_{\acute{A}}\overline{\Gamma_{B}}}+\overline{\overline{\Gamma_{A}}\gamma_{\acute{B}}}+\overline{\dagger_{A}\sqrt B})$ (4)2.1
適度に速い反応に対する
SGS
反応モデル
適度に速い反応とは, 化学反応の時間スケール$\tau_{\mathrm{c}}$ と乱流拡散の時間スケール$\tau_{t}$ とが同程度であ る反応のことである. プリミティブなモデルは式 (4) の右辺第二項以降を無視してしまう. しか し, このモデルはSGS
の濃度変動を無視, つまりSGS
では完全混合状態にあると仮定している ことになり, 特に液相のように濃度場の最小スケールが小さい流れには到底適用できない. そこ で, 本研究ではSGS
での物質の混合状態を考慮するため無次元化された反応項$\overline{\omega}$ を次のように定 義した. $Da \overline{\Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}^{*}}=Da\int_{0}^{1}P(\Gamma_{A}^{*})<\Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}^{*}|\Gamma_{A}^{\mathrm{B}}>d\Gamma_{A}^{*}$ (5) ここで各成分の濃度は初期濃度で無次元化されており(
例えば$\Gamma_{A}^{*}=\Gamma_{A}/\Gamma_{A}0$), * は無次元化さ れた濃度であることを表している. この式において$P(\Gamma_{A}^{*})$はSGS
での物質A
の濃度$\Gamma_{A}^{*}$ の確率密度関数であり, $<\Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}^{*}|\Gamma_{A}^{*}>$は物質
A
の濃度$\Gamma_{A}^{*}$に対するSGS
での$\Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}^{*}$の条件付き期待値である. これらの二つの関数に対して適切なモデルを与えることにより, 反応項$Da\overline{\Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}^{*}}$を計算
することが可能である. $P(\Gamma_{A}^{*})$ に対しては G廿$\mathrm{i}\mathrm{m}\mathrm{a}\mathrm{j}\mathrm{i}^{[3]}$ が提案した$\beta$
$P( \Gamma_{A}^{*})=\frac{\Gamma_{A}^{*a-1}(1-\Gamma_{A}^{*})^{b-1}}{B(a,b)}$ (6)
ここで,
$a= \overline{\Gamma_{A}^{*}}(\frac{\overline\Gamma_{A}^{*}(1-\overline{\Gamma_{A}^{*}})}{\overline{\gamma_{A}’\mathrm{s}^{2}}}-1)$ $b=(a/\neg\Gamma_{A}^{*}-a$
$B(a,b)= \int_{0}^{1}\Gamma_{A}^{\mathrm{r}a-1}(1-\Gamma_{A}^{*})^{b-1}d\Gamma_{A}^{*}$
である. また, $\overline{\gamma_{A}^{l_{*}F}}$
は無次元化された
SGS
での反応物質A
の濃度分散. $B(a, b)$ はベータ関数である.
しかし, この$\beta$
LES
では直接計算することができないSGS
での$\Gamma_{A}^{*}$の分散$\overline{\gamma_{A}^{*2}}$を必要とする. そこで,
LES
での計算格子幅(
フィルタ幅$\overline{\Delta}$) より大きなフイルタ幅$\tilde{\Delta}(=2E)$ を
もつテストフィルタを施すことによりその領域内の$\mathrm{F}\ovalbox{\tt\small REJECT}$の分散$\gamma$
?
を求め, 次式に示すようにSGS
での $\mathrm{r}\ovalbox{\tt\small REJECT}$の分散$\gamma$
?
と $\gamma$?
との間に一定の相関関係が存在すると仮定した.$\overline{\gamma_{A}^{*2}}\approx c_{f}\gamma_{A}^{\mathrm{s}2}-$ (7)
ここで, $cf$ま相関係数であり,
Sc
数に依存すると考えられる. 気相乱流場においてCook&
$\mathrm{R}\mathrm{i}1\mathrm{e}\mathrm{y}^{[1]}$はこの$\mathrm{c}_{f}$ 1 こ対して
1.0
を用いたが, 液相乱流場における $cf$ の値は提案されていなかった. そこで, $8\pi\cross 8\pi \mathrm{X}8\pi \mathrm{m}\mathrm{m}$
の小さな計算領域における液相定常等方性乱流場に対して
DNS
を実行し,液相乱流場(Sc$=600$) における $cf$の最適値を求めた [6].
図
1
にSGS
での濃度とテストフィルタ内での分散との結合確率密度の等高線分布を示す
.
図中の実線は最小二乗法によって求められた直線であり, $cf=5.0$ の場合に相当する. よって, 液相
のような高
Sc
数流れにおいては$c_{f}=5.0$が最適値であることがわかる.(a) (b)
Fig.
1:Joint probability density functions of the filtered and test-filtered
mean
squaredcon-centration
fluctuations of
species $\mathrm{A}:(\mathrm{a})$ in anon-reacting flow; (b)in
areactingflow with
a
moderately
fast reaction.
以上により, 既存のモデルを改良することによって, 気相およひ液相乱流場の両方において適 用できる $P(\Gamma_{A}^{*})$ に対するモデルを提案できた. 反応項 $Da\overline{\Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}}$ を計算するためには, さらに, $<\Gamma_{A}^{*}.\Gamma_{B}^{*}|\Gamma_{A}^{*}>$ に対する適切なモデルを考案しなければならない
.
そこで,$\cdot$ 気相格子乱流場に対してDNS
を行い, 得られた $<\Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}^{*}|\Gamma_{A}^{*}>$ に関するデータを元に 次に示すモデルを考案した [6]. (8) $< \Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}^{*}|\Gamma_{A}^{*}>=\alpha\{-\beta(\Gamma_{A}^{*}-\frac{1-\overline{\Gamma_{P}^{*}}}{2})^{2}+\frac{1}{4}(1-\ovalbox{\tt\small REJECT}_{P}^{*2}\}$ (10) $\alpha=\alpha_{1}\cdot\alpha_{2}$ (9) $\alpha_{1}=\{-(-1.0)^{16}+1.0-(^{\frac{\overline\Gamma_{A}^{*}}{\Gamma_{B}^{*}}}-1.0)^{16}+1.0(\leq\overline{\Gamma_{B}^{*}})(^{\frac{\overline\Gamma_{A}^{*}}{\Gamma_{B}^{l}}}\leq ff_{A}^{-})$ $\alpha_{2}=\frac{0.25(1.0-\neg\Gamma_{P}^{*2}-\mathit{0}_{\alpha}\ovalbox{\tt\small REJECT}_{\gamma_{P}^{l_{*}}}}{0.25(1.0-\neg\Gamma_{P}^{*2}}$(11)
76
$\beta=\{1-\overline{\Gamma_{P}^{*}}\cdot[\Gamma_{A}^{*}+\frac{1+\overline{\Gamma_{P}^{*}}}{2}]\}^{2}$ (12)
$[]$
:
ガウス記号以上に示す式 (6)および式(8)$\sim(12)$ を用いて, $\overline{\Gamma_{A}^{*}},$ $\overline{\Gamma_{B}^{*}},$ $\overline{\Gamma_{P}^{\mathrm{r}}},$
$\overline{\gamma_{P}^{r_{*}}}F$を入力することにより, 式(8) からく $\Gamma_{A}^{*}\Gamma_{B}^{*}|\Gamma_{A}^{l}>$ の値を計算することが可能となる. 以上のように, 木
SGS
反応モデルはSGS
での混合状態を考慮するので気相乱流場だけでなく
液相乱流場における適度に速い反応に対しても適切なモデルであると考えられる
.
2.2
瞬間反応に対する
SGS
反応モデル
瞬間反応とは, 化学反応の時間スケール$\tau_{\mathrm{c}}$が乱流拡散の時間スケール$\tau_{t}$ に比べ非常に小さい反 応のことである. 瞬間反応の場合,LES
での時間刻み $\Delta t$を $\tau_{\mathrm{c}}$ より十分小さく設定しなければな らない. しかしながら,現在のスーパコンビュータを用いてもこのような小さな時間刻みを設定
することはできないため, 物質の拡散方程式(
式 (3)) をそのまま解くことは困難である. そこで, $\mathrm{C}\mathrm{o}\mathrm{o}\mathrm{k}\ \mathrm{R}\mathrm{i}1\mathrm{e}\mathrm{y}^{[1]}$ が提案した保存スカラ $Z$を導入した. 保存スカラ $Z$ は化学反応が起こっても不 変な量であり, 二次の不可逆反応$(\mathrm{A}+\mathrm{B}arrow \mathrm{P})$の場合には次式のように表せる.
$Z=\Gamma_{A}-\Gamma_{B}$ (13) さらに, $Z$ を正規化した変数$\Gamma_{A}$ を次式のように定義する. $\zeta=\frac{Z-Z_{B0}}{Z_{A0}-Z_{B0}}$ $(0\leq\zeta\leq 1)$ (14) ここで, $Z_{A0}$およひ$Z_{B0}$ はそれぞれ計算領域入口断面または初期条件での値であり, 反応物質A
のみが存在する所では $Z_{A0}=\Gamma_{A0}$, 反応物質$\mathrm{B}$ のみが存在する所では$Z_{B0}=-\Gamma_{B0}$ となる.$\zeta$ の拡散方程式にフイルタ操作を施したものは, 式(3) に右いて反応項
$\overline{\omega}$ を除いた次式となる.
$\frac{\partial\overline{\zeta}}{\partial t}+\frac{\partial\overline{U_{j}}\overline{\zeta}}{\partial x_{j}}=D\frac{\partial^{2}\overline{\zeta}}{\partial x_{j}\partial x_{j}}-\frac{\partial q_{j}}{\partial x_{j}}$
(15)
SGS
での$\zeta$ の混合状態を考慮するため,SGS
での確率密度関数 $P(\zeta)$ を用いたSGS
モデルが$\mathrm{C}\mathrm{o}\mathrm{o}\mathrm{k}\ \mathrm{R}11\mathrm{e}\mathrm{y}^{[1]}$ により提案された.
$\overline{\Gamma_{\dot{*}}}=\int_{0}^{1}\mathrm{r}_{:}(\zeta)P(\zeta)d\zeta$ (16)
$P(\zeta)$ に対しては
21ffl
と同様に, G 石$\mathrm{m}\mathrm{a}\mathrm{j}\mathrm{i}^{[3]}$が提案した$\beta$
LES
では直接計算できないSGS
での $\zeta$の分散$\overline{\zeta^{\rho}}$を入力しなければならないので,2.1
節と同様に, 以下のモデルを使用した.
$\overline{\zeta}^{\hslash}$
$\approx$ $d_{f}\overline{\zeta^{\Omega}}$ (17)
$c_{f}’$ $=$
LO
(forgas
turbulenoe)$=$
5.0
(ffirliquid
turbulence)以上のように, 木
SGS
反応モデルはSGS
での混合状態を考慮するので気相乱流場だけでなく
液相乱流場における瞬間反応に対しても適切なモデルであると考えられる
.
3
化学反応を伴う温度成層乱流場の
LES
31
中立温度成層の場合
(
温度成層が存在しない場合)
温度成層が存在しない液相格子乱流場に対して
LES
と室内実験との比較を行った [6]. 主流方向断面平均流速$U_{av\mathrm{e}}$ を.$0.25\mathrm{m}/\mathrm{s}$に設定し, テストセクション入口部に乱流格子を設置した. テス
トセクション入口までは上下層の流体はスプリッタプレートによって完全に分離された. 適度に
速い反応を伴う場合の反応系には水酸化ナトリウム (NaOH
:
物質A) と\yen酸メチル (HCOOCHs:
物質B)(
ともに初期濃度100
$\mathrm{m}\mathrm{o}1/\mathrm{m}^{3}$) のけん化反応 $\mathrm{N}\mathrm{a}\mathrm{O}\mathrm{H}+\mathrm{H}\mathrm{C}\mathrm{O}\mathrm{O}\mathrm{C}\mathrm{H}_{3}arrow \mathrm{C}\mathrm{H}_{3}\mathrm{O}\mathrm{H}+\mathrm{H}\mathrm{C}\mathrm{O}\mathrm{O}\mathrm{N}\mathrm{a}$ (18) を想定した. この場合の反応速度定数は$k_{r}\approx 0.02\mathrm{m}’/(\mathrm{m}\mathrm{o}\mathrm{l}\mathrm{s})$ である. 瞬間反応を伴う場合の反応系には酢酸 ($\mathrm{C}\mathrm{H}_{3}\mathrm{C}\mathrm{O}\mathrm{O}\mathrm{H}$:
物質A) と水酸化アンモニウム ($\mathrm{N}\mathrm{H}_{4}\mathrm{O}\mathrm{H}$:
物質B)(ともに初期濃度10
$\mathrm{m}\mathrm{o}1/\mathrm{m}^{3}$) の中和反応 $\mathrm{C}\mathrm{H}_{3}\mathrm{C}\mathrm{O}\mathrm{O}\mathrm{H}+\mathrm{N}\mathrm{H}_{4}\mathrm{O}\mathrm{H}arrow \mathrm{C}\mathrm{H}_{3}\mathrm{C}\mathrm{O}\mathrm{O}\mathrm{N}\mathrm{H}_{3}+\mathrm{H}_{2}\mathrm{O}$ (19) を想定した. この場合の反応速度定数は$k_{\mathrm{r}}\approx 10^{8}\mathrm{m}^{3}/(\mathrm{m}\mathrm{o}1\mathrm{s})$である.311
数値計算手法 計算領域の概略図を図2
に示す. 座標系を主流方向に$x$, 鉛直方向に $y$, スパン方向に $z$ とし,原点
$(x=y=z=0)$
を乱流格子面の中心とした. 計算領域を実次元で520
$\mathrm{X}80\cross 80\mathrm{m}\mathrm{m}$の直方体とし, 格子点数を
280
$\mathrm{x}80\mathrm{x}80$ とした. 乱流格子(格子間隔$M=0.02\mathrm{m}$) は計算領域入口から下流方向に$0.02\mathrm{m}$ の位置に設置された.
式(2), (3)およひ(15) 中に表れる$\tau_{\dot{l}j},$ $q_{1j}.,$ $q_{j}$ に対しては
Dynamic
SGS
モデルを用いた. また, 適度に速い反応の場合に対しては
21
節で示した本SGS
反応モデルを, 瞬間反応の場合に対しては
22
節で示した本SGS
反応モデルをそれぞれ用いて化学物質の濃度を求めた.Fig.
2:
The computational
domain for
grid-generated turbulence.
312
結果と考察図
3
に生成物質$\mathrm{P}$の時間平均濃度の主流方向分布を示す. プロットが実験結果を表しており, 曲線が
LES
の結果を表している. ただし, 図$3(\mathrm{a})$ はSGS
での混合状態を考慮しないプリミティブなモデルを用いた結果であり, 図$3(\mathrm{b})$ は本
SGS
反応モデルを用いた結果である. なお, 時間平均化した生成物質$\mathrm{P}$ の濃度く$\Gamma_{P}>$ は物質
A
の初期濃度 $\Gamma_{A0}$ で無次元化されている. 図 $3(\mathrm{a})$ ではLES
の結果は適度に速い反応の場合も瞬間反応の場合も実験値より大きな値となっている. それ に対して図$3(\mathrm{b})$ ではLES
の結果は実験値とよく一致している. これは,SGS
での混合状態を考 慮しない, つまり,SGS
での濃度むらを無視すると生成物濃度を過剰に評価してしまうことを表 しており, 本SGS
反応モデルを用いてSGS
での混合状態を考慮することによって初めて, 液相 乱流場における適度に速い反応および瞬間反応を正しく予測できることがわかる. (a) (b)Fig.
3: Streamwise distributions
of themean
concentration
of
speciesP. Symbols denote the
measurements and the lines
are
the
LES
predictionsby
(a)the present
SGS model
with
$cf=d_{f}$$=1.0$
and
(b)the
presentSGS
model
with
$c_{f}=d_{f}=5.0:\mathrm{O},$ $-$,arapid
reaction; $\square$ ,–,a
moderately fast reaction.
3.2
安定およひ不安定温度成層が存在する場合
安定およひ不安定温度成層が存在する液相混合層に対して
LES
と室内実験との比較を行った [7].上層の初期流速を$0.165\mathrm{m}/\mathrm{s}$, 下層の初期流速を$0.085\mathrm{m}/\mathrm{s}$ とし, 断面平均流速$0.125\mathrm{m}/\mathrm{s}$, 流速差
$0.08\mathrm{m}/\mathrm{s}$の混合層を形成させた. 安定温度成層が存在する場合は上層を T 層よりも
1OK
高く設定 し, 不安定温度成層が存在する場合は逆に上層を下層よりも1OK
低く設定することにより温度成 層を形成させた. 反応系としては酢酸($\mathrm{C}\mathrm{H}_{3}\mathrm{C}\mathrm{O}\mathrm{O}\mathrm{H}$:
物質A) と水歎化アンモニウム ($\mathrm{N}\mathrm{H}_{4}\mathrm{O}\mathrm{H}$:
物質B)(
ともに初 期濃度10
$\mathrm{m}\mathrm{o}1/\mathrm{m}^{3}$) の中和反応 (瞬間反応) を用いた.321
数値計算手法 計算領域の概略図を図4
に示す. 主流方向を$x$, 鉛直方向を$y$, スパン方向を$z$ として, 流入部 には長さ $40\mathrm{m}\mathrm{m}$ のスプリッタプレートを設置した. スプリッタプレートによって上下層は完全に 分離され, 上下層流体が混合を開始するスプリッタプレート先端に座標原点をとった. 中立の場合およひ安定温度成層が存在する場合の計算領域の大きさを480
$\mathrm{X}80\mathrm{x}80\mathrm{m}\mathrm{m}$とし, 格子点数を360
$\mathrm{X}60\cross 60$とした.不安定温度成層が存在する場合は中立の場合に比べ混合領域が
79
鉛直方向に拡大するので$y$方向の計算領域を大きくとり計算領域の大きさを$480\cross 106\mathrm{X}80\mathrm{m}\mathrm{m}$
とし, 格子数を
360
$\mathrm{x}80\cross 60$ とした.温度成層が存在する乱流場を計算するためには式 (1), (3)およひ(15) に加えて, 熱の拡散方程
式も計算する必要がある. フィルタ操作を施した熱の拡散方程式は以下のようになる.
$\frac{\partial F}{\partial t}+\overline{U_{j}}f\frac{fi}{\partial x_{j}}=\frac{\nu}{Pr}\frac{\partial^{2}F}{\partial x_{j}\partial x_{j}}-\frac{\partial h_{j}}{\partial x_{j}}$ (20)
$h_{j}$ はフィルタ操作によって現れる
SGS
乱流熱フラックスである. $\tau_{\dot{\mathrm{t}}j},$ $q_{j}$ と同様に, この項に 対してもDynamic
SGS
モデルを用いた. このDynamicSGS. モデルでは通常,shear
によるエネルギー生成が散逸と釣り合うと仮定する ことによって,SGS
レイノルズ応力を次式のようにモデル化する. $\tau_{\dot{l}\mathrm{j}}-\frac{1}{3}\delta_{1j}.\tau_{kk}=-2C\overline{\Delta}^{2}|\mathrm{F}|\Gamma_{1j}.$.
(21) ただし. $T_{1j}.=(^{\theta}ai_{eg}^{\overline{U}}+\neq_{x}^{\partial\overline{U}}‘)/2$ である. しかし, 温度成層が存在する乱流場においては浮力がSGS
の流れに影響を及ぼす可能性がある
.
特に液相は$\mathrm{P}\mathrm{r}$ 数が約5
と比較的大きいため, 温度場の最小スケールが比較的小さ$\text{く}$, 浮力がSGS
の流れに影響を及ぼす可能性が高いと考えられる. Wong&Lilly 15] は浮力によるSGS
のエネル ギ–生成を考慮に入れ,shear
によるエネルギ–生成と浮力によるエネルギー生成$(G_{kSGS})$が散 逸と釣り合うと仮定することによりSGS
の流れ場に対する浮力効果を考慮した. $\tau_{j}\dot{.}$ – $\frac{1}{3}\delta_{1j}.\tau_{kk}=-2\nu_{SGS}\mathcal{T}_{\dot{l}\mathrm{j}}$ $=$ $-2C \overline{\Delta}^{2}(1+\frac{g_{1}\beta}{Pr_{SGS}|\partial|^{2}}.\frac{\partial\overline{T}}{\partial x_{\dot{*}}})^{\mathrm{t}}|\mathrm{B}|\overline{S_{\dot{t}j}}$.
(22)
本研究では式(21) を用いてLES
を実行した場合と式(22) を用いて実行した場合の結果を比較す ることにより, 浮力がSGS
の流れに及ぼす影響についても調べた.Fig.
4: The computational domain for athermally stratified mixing layer.
3.2.2
結果と考察図
5
に速度混合層厚さおよひ濃度混合層厚さの主流方向分布をそれぞれ示す. ただし, 速度混合層厚さを $(<U>-U\iota)/\Delta U=0.1$ となる $y$座標を$y_{u1},$ $(<U>-U_{l})/\Delta U=0.9$ となる$y$座標
を九 2
として, 次式のように定義した.$\delta_{u}=|y_{u1}-y_{u2}|/0.8$ (23)
また, 濃度混合層厚さを化学反応を伴わない場合の物質
A
の時間平均濃度がく $C_{A}^{*}>/C_{A0}=$$0.1$ となる$y$座標を$ye1,$ $<C_{A}^{*}>/C_{A0}=0.9$となる$y$座標を$y\mathrm{c}2$ として, 次式のように定義した.
$\delta_{\mathrm{C}}=|y_{\mathrm{c}1}-y_{c2}|/0.8$ (24)
図5(a) の温度成層が存在しない中立の場合に注目すると $0.15\mathrm{m}\leq x\leq 0.40\mathrm{m}$の範囲で
LES
およひ実験ともに速度混合層厚さが直線的に増加することがわかる
.
その直線の傾き而$u/dx$ は0076
であり, この値はMehta&Westpha1[4]
によって提案された式に対して本実験での速度比 $(r=U\iota/U_{h})$ を代入することによって得られる値0073
と良好に一致する. また, 安定およひ不安 定温度成層が存在する場合に関して,SGS
への浮力効果を考慮した場合(
式 (22)) と考慮しなかっ た場合(式 (21))のLES
の結果に差異は見られず, ともに実験値によく一致している. このことは 本LES
が乱流混合に及ぼす温度成層の効果を精度良く予測できることだけでな$\text{く}$,SGS
への浮力 効果を考慮する必要がないことも示している. よって, 以Tでは式(21) を用いて計算した場合に 関して検討を行う. 化学反応に及ぼす温度成層の効果を本LES
が正しく評価できるかどうかを調べるために, 反応 生成物濃度を鉛直方向に積分した値(反応生成物量$M$) を調べた. その主流方向変化を図6
に示す.なお, 縦軸は$x=0.20\mathrm{m}$の断面における反応生成物量(LES の結果は$M_{LBS}$, 実験結果は$M_{EXP}$)
でそれぞれ割ることによって無次元化された各$x$断面での生成物量を示している. 図より, 木
LES
は反応生成物量の増加率や温度成層による変化を正しく予測できることがわかる.
$x[\mathrm{m}]$ $x[\mathrm{m}]$
(a) (b)
Fig.
5: Streamwise
distributions of the mixing
layerwidth
(a)in
the velocityfield
and
(b)in
the
concentration field. Symbols denote
the measurements,the thick
linesare
theLES
predictions
based
on
the
equation (21)and
the thin linesare
theLES
predictionsbased on
the
equation(22): $\bullet,$ $-,\mathrm{i}\mathrm{n}$neutral
stratffication;
$\Delta,$ $—,-\cdot--,\mathrm{i}\mathrm{n}$unstable
stratification; $\mathrm{O},$$\cdots\cdot,$$-,\mathrm{i}\mathrm{n}$
stable
stratification.
$\overline{\frac{\mathrm{I}}{\mathrm{s}^{\ovalbox{\tt\small REJECT}}}}$
\S
$\mathrm{s}^{\mathrm{B}}$
$\tilde{@}$
$x[\mathrm{m}]$
Fig.
6:
Streamwise
distributions of the amount of
chemicalproduct. Symbols
ae
in Fig.
5.
4
結言
本研究ではSGS
での混合状態を考慮したSGS
反応モデルを提案した. さらにそれを用いたLES
を化学反応を伴う種々の乱流場に適用した結果, 以下の結果が得られた. (1)本研究で開発したSGS
反応モデルを用いたLES
は気相のみならず液相乱流場における混合 反応現象を定性的にも定量的にも正しく予測できる. (2) 本LES
は, 温度成層した液相乱流場での混合反応現象をも予測できる. なお,SGS
の流れ 場への浮力効果の影響は非常に小さく, 無視できる.参考文献
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