トン ネル 工 学 研 究 論 文 ・ 報 告 集 第13巻2003年11月 報 告 (11)
大 断 面 トン ネ ル の 交 差 部 の 設 計 ・施 工
Design
and
Construction
of Large
Sectional
Divergence
大 窪 克 己1)・ 片 寄 学2)・ 小 川 直 司3)・ 矢 部 幸 男4)・ 高 杉 英 則3)
Ookubo Katumi, Katayose Manabu, Ogawa Naoji,Yabe
Yukio, Takasugi Hidenori
The both portals of Shizuoka 3rd tunnel is located the steep slope. So the access tunnel (42m2) was
required and diverge the main tunnel (180m2). This report reports on the design and the
construction
of the large section divergence.
Key Words:
large section divergence, seismic reflection
survey, PS anchor
1. は じ め に 第 二 東 名 高 速 道 路 静 岡 第 三 トン ネ ル で は,両 坑 口 が 急 峻 な崖 の 上 部 に 位 置 す る た め,作 業 坑 を施 工 し,本 坑 は 作 業 坑 か ら直 角 に施 工 す る必 要 が あ っ た.作 業 坑 断 面 は42m2,本 坑 は180m2で あ り,約4倍 の 分 岐 工 事 で あ る.本 報 告 は 大 断 面 交 差 部 の 設 計 と施 工 に つ い て 報 告 す る もの で あ る.設 計 に あ た っ て は作 業 坑 が 約 60m程 度 の 離 隔 距 離 で 本 坑 に平 行 す る 区 間 を利 用 し て,調 査 は3成 分 のHSPを 実 施 した.ま た,地 質 の 変 化 が な い こ と を確 認 し,作 業 坑 で の トン ネ ル 挙 動 を 分 析 す る こ と に よ っ て,設 計 に 必 要 な諸 定 数 を推 定 し,分 岐 部 の 設 計 に フ ィ ー ドバ ッ ク を行 っ た. 2. 調 査 2.1 地 質 概 要 と作 業 坑 で の 観 察 新 第 三 紀 に 付 加 さ れ た 付 加 体 で あ り, 岩 石 は 泥 岩 と して い る が,岩 石 強 度 は40 ∼60Mpaと 推 定 さ れ,む しろ 頁 岩 や 粘 板 岩 に 分 類 して も 良 い 状 況 で あ っ た.屈 折 法 の 弾 性 波 速 度 も4∼4.5km/secあ り,地 山 等 級 と し て はC等 級 と判 断 さ れ た. 本 地 域 は,瀬 戸 川 帯 の 分 布 域 で あ り,主 に, 泥 岩,泥 岩 砂 岩 互 層 お よび 砂 岩 か ら構 成 され, 一 部 に 玄 武 岩 ,チ ャー ト,石 灰 岩 な ど を伴 う. 地 層 は 一 般 に北 南 西 方 向 な い し,北 北 東-南 東-南 西 の 走 向 をもち,北 西 方 向 に傾 斜 す る. 図-1に 作 業 坑 地 質 観 察 結 果 を示 す.作 業 坑 の 地 質 状 況 は 以 下 の 通 りで ある. ・全 線 に わ た り黒 灰 ∼ 暗 灰 色 を呈 す る泥 岩 が 分 布 し,他 の岩 種 は 分 布 しな い. ・泥 岩 は 亀 裂 が発 達 し,白 色 粘 土 を挟 在 す ることが 多 い.鏡 肌 は認 められ な い. ・亀 裂 の 方 向 は,瀬 戸 川 帯 の一 般 的 な 地 層 とほ ぼ 同 じ方 向 に卓 越 す る.
図-1作
業坑 地質観 察 結果
1正会 員 日本 道路 公 団 本 社 道 路 技術 部 2正 会員 日本道 路 公 団 静 岡建 設局 静 岡工 事 事務 所 3正会 員 清 水建 設(株)名 古 屋 支店 静 岡 第三 トンネル作 業所 4正会 員 清水 建 設(株)土 木 事 業本 部 技術 第2部・多 亀 裂 帯 や 脆 弱 な 区 間 が 多 く見 られ る. ・湧 水 はほ とん どな い .多 くて滴 水 程 度 で ある. ・亀 裂 の 多 い 区 間 で は10∼30リ ツトル/minの 湧 水 が 見 られ る. 2.2 HSP切 羽 前 方 探 査 図-2にHSP切 羽 前 方 探 査 の概 念 図 を示 す. 3成 分HSP切 羽 前 方 探 査 は 坑 内 切 羽 付 近 に お い て,起 振 点 ・受 振 点 を設 置 して 弾 性 波 に よる測 定 をお こな い,VSP検 層 お よ び 反 射 法 地 震 探 査 の 処 理 ・解 析 技 術 を用 い て,切 羽 前 方 の 地 質 境 界,断 層 破 砕 帯 な どの 不 連 続 面 か ら到 来 した 反 射 波 を抽 出 し可 視 的 に表 現 す る 探 査 法 で ある. 弾 性 波 探 査 反 射 法 に よる切 羽 前 方 探 査 に は,TSP,HSP が あ る.今 回 は,3成 分HSP切 羽 前 方 探 査 に より測 定 を実 施 した.本 探 査 法 はTSP等 従 来 の2成 分 に よる探 査 に比 べ,虚 像 の 発 生 が 少 な く,反 射 面 の 位 置 ・角 度 の 精 度 が 優 れ て い るた め,切 羽 前 方 の より正 確 なイメー ジ ング が 可 能 と な って いる. 2.3 探 査 結 果 解 析 結 果 図 を 図-3に 示 す.測 定 は2回 行 った が,結 果 図 で は1・2回 目の 結 果 を重 ね合 わ せ た.切 羽 前 方 の 地 山 速 度 は,同 時 に 行 っ た 坑 内 弾 性 波 探 査 の 結 果 か ら, 4.25km/sお よび4.1km/sを 用 い た.反 射 面 の 色 調 と地 質 状 況 との 関係 は,赤 及 び 黄 色 が 「硬 → 軟 」,黒及 び 青 色 が 「軟 → 硬 」の 岩 質 変 化 を示 す .反 射 面 の 大 きさ(反 射 強 度)と 地 質 状 況 の 関 係 は,反 射 面 の 色 が 濃 色 で ある ほ ど反 射 面 前 後 の 地 質 状 況 の 変 化 が 大 きい ことを示 す. また,地 質 状 況 か ら考 慮 す る と,探 査 区 間 で は 岩 石 自 体 の 密 度 や 弾 性 波 速 度 の 変 化 が少 な い た め,反 射 面 は,岩 盤 内 に発 達 す る亀 裂 状 況 の 変 化 を示 す と想 定 され た.特 に, 亀 裂 が 開 口し集 中 湧 水 が み られ る 区 間 や,厚 い 粘 土 化 した 挟 在 物 をもつ 亀 裂 が 多 い 区 間 など は,大 きな反 射 エ ネル ギ ー をもつ 面 として検 出 され る可 能 性 が 高 い. 2.4 地 質 解 釈 と結 果 図-4に 解 析 結 果 か ら解 釈 され た 地 質 状 況 予 測 を 示 す. 探 査 か らは,多 亀 裂 帯 と脆 弱 帯 が 予 測 され た.他 の 区 間 は,測 線 区 間 と同 様 の 硬 質 な 泥 岩 の 分 布 が 予 測 され た. 実 際 の 地 山 状 況 は,図-1に 示 した 通 りで あっ た. 多 亀 裂 帯 は,出 現 位 置 は ほ ぼ 一 致 した.幅 は予 測 され た 幅 に 比 べ 広 い 分 布 を示 した.し か し,多 亀 裂 帯 の 終 端 部 と考 えられ た反 射 面 は認 め られ る.地 山 の 性 状 は 亀 裂 の 多 い 区 間 であ ると予 測 した が 予 測 通 りで あ った. 脆 弱 帯 は,出 現 位 置,幅 とも に お お む ね 一 致 した.地 山 の 性 状 は,明 瞭 な 境 界 面 で あ ると予 測 した が,亀 裂 間 に 白色 の シル トを多 く挟 在 し,亀 裂 が細 か く脆 弱 化 して い る状 況 で あった.探 査 区 間 内 で は 最 も反 射 面 を形 成 しや す い 岩 盤 状 況 であ った と考 えられ る. そ の他 の 区 間 に つ い て は 硬 質 な 泥 岩 が 分 布 す るもの と 予 測 した.部 分 的 にシル ト分 を薄 く挟 在 した り,亀 裂 が 細 か い 部 分 が あっ た りす るもの の,全 体 的 に は,予 測 通 り特 に脆 弱 な 区 間 もな く硬 質 な 泥 岩 が 分 布 した. 図-4よ り,交 差 部 に は 脆 弱 帯 が 存 在 せ ず,作 業 坑 の 挙 動 を分 析 す ることで,交 差 部 の 設 計 が 可 能 と判 断 した. 図-2 HSP切 羽 前 方 探 査 の 概 念 図 図-3 HSP解 析 結 果(1・2回 目合 成) 図-4 HSP切 羽 前 方 探 査 に よ る 地 質 予 想
2.5 坑 内 弾 性 波 速 度 HSPは 多 受 振 方 式 で あ る の で,受 振 した デ ー タ を 屈 折 法 で 解 析 す る こ と に よ っ て,ト ン ネ ル 周 辺 の弾 性 波 速 度 を把 握 す る事 が で き る.図-5に 坑 内 弾 性 波 結 果 を 示 す.
図-5 側 壁 の弾性 波 速 度の分布
側 壁 か ら約2∼2.5mの 範 囲 は2.2∼2.4km/sで あ り,こ れ 以 深 は4.3km/sが 得 られ た.事 前 の弾 性 波 速 度 も4km/s相 当 で あ る こ とか ら,壁 面 か ら約2∼2.5mの 範 囲 が ゆ る み 部 で あ る こ と が わ か る.設 計 時 の 再 現 解 析 で も こ の 数 値 を 目標 に 強 度 定 数 を 推 定 した. 3. 設 計 3.1 再 現 解 析 再 現 解 析 に用 い る岩 盤 物 性 値 は,弾 性 波 速 度 との 相 関 よ り推 定 さ れ た 弾 性 係 数 は 非 常 に 大 き な値 で あ る が,地 山等 級CIで の 標 準 的 な 変 形 係 数 を選 定 し,作 業 坑 の 計 測 変 位 を 再 現 す る こ と と した.つ ぎ に 強 度 定 数 は 弾 性 波 探 査 よ り,ト ン ネ ル壁 面 の ゆ る み 領 域 は2∼3 mと い う結 果 が 得 ら れ て い る こ と を 考 慮 し, CIで の 値 を上 限 値 と し て,ゆ る み 範 囲 が 同 程 度 と な る ま で 低 減 す る こ と と した. 表-1に 再 現 解 析 に 用 い た 諸 定 数 を示 す.参 考 の た め ケ ー ス(2)で は 新 鮮 部 の 弾 性 波 速 度 か ら推 定 さ れ る弾 性 係 数 も試 算 した. 再 現 解 析 結 果 か ら ケ ー ス(5)の定 数 が 変 形 と トン ネ ル 周 辺 の ゆ る み 領 域 を 再 現 で き る 結 果 と な っ た.定 数 と し て は 変 形 係 数 は2000MPa, 粘 着 力 は0.5MPa,内 部 摩 擦 角35° 弾 性 限 界 パ ラ メ ー タk=4,非 線 形 指 数a=2が 得 られ た. 図-6に 拡 幅 断 面 で の 再 現 解 析 結 果 を 示 す. 表-1 再 現 解 析 に 用 い る 岩 盤 物 性 値 計 測 変 位 の 平 均 値 は 天 端 沈 下:V1=5.3mm,水 平 変 位:H1=2mm,H2=3.8mmで あ る.図-6 再 現解 析 結果(変 形 図,ゆ るみ領 域 図)
3.2
交差 部 の設 計
交差 部 は,当 初破 砕 帯 が想定 され てい た ため 図-7示 す位 置 に計 画 され てい た.前 方探査 結 果 か ら この よ
うな破砕 帯 は存在 しない可 能性 が高 い ことが判 明 した.さ らに12%の
上 り勾 配で の 中断面 作 業坑 の換 気 効
率 を向上 す るこ とお よび交差 部 の補 強箇所 が3箇 所 か ら2箇 所 に減 少 し,経 済 性の 観点 か ら交差 箇所 の変 更
とそ れ に伴 う交 差 部 の 補 強 の 設 計 を行 っ た.交 差 は3次 元 問 題 と な る た め3次 元FEM解 析 を 実 施 した. 図-8に 解 析 モ デ ル を示 す.節 点 数 は40528, 要 素 数 は9236で あ る.
図-7 交差 位置 の変更
図-8 解 析 モ デ ル 解 析 結 果 の 安 全 率 の 分 布 形 状 は,避 難 連 絡 坑 を 掘 削 す る こ と で ほ ぼ 左 右 対 称 に な り,む し ろ 偏 土 圧 に 関 して は安 定 す る 結 果 とな っ た. ま た,天 端 沈 下 に つ い て は,片 側 作 業 坑 で 27mm,両 側 作 業 坑 で29mmと な り,両 側 作 業 坑 で 遜 色 な い こ とが 判 明 した. 交 差 部 の 補 強 方 針 は,こ の ゆ る み 部 を荷 重 と し て 考 慮 し,PSア ン カ ー で 釣 り下 げ る こ と と し ア ン カ ー の 仕 様 を 定 め た.PSア ン カ ー の 仕 様 は,設 計 導 入 力350kN,L=12mと し,ロ ッ ク ボ ル トの 打 設 ピ ッ チ がDIパ タ ー ン(周 方 向 1.4m× 延 長 方 向1.0m)で あ る こ と を考 慮 し,周 方図-9 安全 率 の分 布
向2.8m× 延 長 方 向2.0mと し,各 断 面 に7本 配 置 し た.な お,プ レス トレス は 導 入 せ ず 待 ち 受 け ア ンカ ー と し,掘 削 時 の 計 測 に よ りPSの 導 入 を行 う こ と と した.吹 付 け コ ン ク リー トに つ い て も鋼 繊 維 補 強 を行 っ た. 図-10 補 強 図 図-11 補 強 範 囲 図