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月面重力計データを利用した月震波解析と月の内部構造の推定

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Academic year: 2021

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月面重力計データを利用した月震波解析と月の内部構造の推定

○川村太一

1

、齋藤靖之

1

、田中智

2

、小野正太

1

、宝来帰一

2

、Axel Hagermann

3 1

東京大学、

2

ISAS/JAXA、

3

Open University

ア ポ ロ 17 号 に 搭 載 さ れ た LSG ( Lunar surface gravimeter)は本来の目的であった重力波の観測には成功し なかったが(J.Webber 1974)月震計として機能しており、月震 波を捉えていることが確認されている(Ono et al., 2007; Saito et al., 2007)。アポロ 12 号~16 号で行われた月震波観測の 観測点はちょうど1辺は約 1100km の正三角形を描くように 配置されており、核の存在を含めた月の内部の構造を議論 する上では不十分であった。しかしこの観測ネットワークに 17 号の LSG による観測を加えることができればさらに詳細 な内部構造の議論が可能となる。月の内部構造は月の全球 組成に大きな制約を与えるものであり、月の起源を論じる上 で欠かすことができない。そのため、LSG は月の科学におい て持つ意味は非常に大きい。そこで本研究ではこれまで月震 学的な観点から解析がなされたことがなかった LSG のデー タの解析を試みた。月震の中でも比較的振幅の大きい先発 月震の到着時刻の決定、走時曲線の作成を行い月の平均 的な地殻厚さを推定した。LSG のデータを用いた到達時間の 決定、内部構造の推定が可能かを評価し、その方法を検討 した。同時に、未解析であった LSG のデータを用いて地殻厚 さを推定することで地殻厚さの決定精度を向上させることを 試みた。 本研究では 1976 年 3 月 6 日の浅発月震と 1976 年 5 月 28 日の隕石衝突を用いて解析を行った。浅発月震と隕 石衝突はは月震の中でも比較的 S/N 比がよいにも関わらず、 それを用いて到達時間を正確に決定するには精度が十分で はなかった。我々は月震が1Hz 付近に強い特性を持つこと を注目し、バンドパスフィルタを用いてノイズの除去を試みた。 これにより、月震波成分の抽出に成功し、到達時刻を決定す ることができた。(図 1) 月震波を用いた月内部の速度モデルの推定や月震 の震源の決定は過去の研究で行われている。(Nakamura, 1983; Lognonne et al., 2003; Chenet et al., 2006)本研究では 速度モデル、震源の位置については Lognonne(2003)になら い、過去の 3 点の観測点に LSG のデータを加えた走時曲線 を作成し、それをもとに地殻の平均の厚さを推定した。内部 構造の推定にはレゴリス層、地殻、マントルの 3 層モデルを 仮定した。Lognonne(2003)の速度モデルをもとに、各層での 月震波速度は一定として、月震波経路、到達時間をモデル から計算した。ある地殻厚さを仮定すると各観測点における 到達時間は一意に決まり、全球で一定の厚さを持つ地殻を 考えると走時曲線は直線になる。この直線の傾きは平均の 地殻厚さによって決まるため、波形から読み取ったデータに 合う直線を求めることで地殻厚さを推定することができる。計 算の結果、月の平均の地殻厚さは約 35km と推定される。こ の結果は Chnet(2006)の 40 km±5kmと調和的である。しか し Nakamura(1983)の 58±8km よりは薄く、従来考えられて いた平均 60km よりも薄い地殻の存在が示唆される。また 17 号地点の地殻厚さについても Chenet(2006)で他の観測点か ら求められた値と調和的であることから約 35km、もしくはさら に薄いことが予想される。本研究では観測点の数を増やすこ とでよりよい精度で地殻厚さが決定できたといえる。 本研究により LSG を用いた月内部構造の議論が可 能であることが示された。また、観測点を増やすことで月地殻 の平均の厚さをより正確に決定することができた。過去に Wieczorek et al.(2006)などにより全球の地殻厚さの分布が 求められているがこれらは平均的な地殻厚さを仮定した上で 重力データを用いに推定されたものである。その結果は仮定 した平均値に依存し、直接観測によってその値を精度よく決 定することが重要である。 さらに、「かぐや」で得られる重力データと合わせるこ とでより詳細な月の地殻の構造を明らかにすることも期待で きる。また今後、深発月震を利用することでさらに深部の構 造や核の存在などについて新たな知見が得られることも期待 できる。 図 2 1976 5/28 における隕石衝突の月震波形。ノイズ除去 前とノイズ除去後の波形を示した。バンドパスフィルタを用い てノイズ成分が除去したことで波形が明確になっている。

参照

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