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低炭素社会とフェアトレードタウンの包括的な取り組みの可能性 : 包括的な「まち」の形成を目指して

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Academic year: 2021

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(1)低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. 研究ノート. 低炭素社会とフェアトレードタウンによる 持続可能な「まち」の形成 ―包括的な取り組みを通じてその可能性を探る―. 渡耒 絢 1) はじめに 1.低炭素社会―環境配慮型の持続可能な社会の実現を目指したまち― 1.1 低炭素社会とは 1.2 低炭素社会の形成に必要な要素―北九州市を例に 1.3 低炭素社会の持続可能な社会の実現に向けて 2.‌フェアトレードタウン―持続可能な経済社会の形成を目指したまち全体の 取り組み― 2.1 フェアトレードとは 2.2 フェアトレードタウンとは 2.3 ‌フェアトレードタウン認定におけるガースタンおよび熊本市の実践 過程 2.4 フェアトレードタウン基準 3.フェアトレードタウンと低炭素都市形成要素の比較と共通する要素の検討 まとめ 473.

(2) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). はじめに 現代社会には持続可能な社会の実現に向け、さまざまな都市の形が存在する。 人間社会と生態系の調和を目指した自然共生社会や効率的な廃棄物管理やリサ イクルによる循環型社会、炭素排出量を低減させた低炭素社会などである。低 炭素社会は、地球温暖化防止や安心安全で持続可能なエネルギーの確保に資す る観点から、国内外でさまざまなアプローチが展開されている。この社会の形 成と継続化には、社会システムの変革と人間の価値観の変化が必要である。つ まり、環境を配慮しながら人びとの生活の豊かさも向上させる都市の中で、人 びとの低炭素社会に対する関心を高め、彼らの日常生活に対する価値を環境配 慮型へ変革していくことが重要である。低炭素社会の形成に寄与する要素を日 常生活にうまく浸透させ、関与するステークホルダーすべてが、無理のない範 囲で行動・活動し、豊かさや幸せを実感できるような仕組みが必要である。 環境・社会・経済の持続可能な発展を目指す低炭素社会の形成において、国 際協力・貢献、国際交流の要素を組み込む都市も存在する。低炭素社会の形成 要素を国外にも発信しようとする、世界も視野においた都市である。この要素 をより円滑に機能させる上で、フェアトレードは大きな役割を担っていると考 える。このアプローチは、途上国の経済・社会状況の向上に貢献する。途上国 の人びとの社会・経済成長の促進に資するため、途上国で生産された商品は公 正な価格で先進国によって購入される。途上国はその利潤を対価として受け取 り、アプローチの継続性や自身のコミュニティの生活環境を豊かにするために 活用する。フェアトレードが日常生活に浸透することは、国際問題に意識を 向ける機会となる。同時に国際問題は環境問題とも関連性を有していることも 理解する。直接的ではないが、フェアトレードはライフスタイルを変革させる 要素を備えたアプローチの 1 つと位置づけることができる。特にフェアトレー ドタウンとして位置づけられているフェアトレード調達や関連活動を積極的に 実践する自治体は、フェアトレードを通じた持続可能な都市の形成を社会・経 474.

(3) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. 済・環境的側面から支え、まち全体の社会システムおよびライフスタイルを変 革させる可能性を有している。 低炭素社会とフェアトレードタウンは、それぞれの「まち」を形成する上で 持続可能な社会の実現を目指している。関与するすべてのステークホルダーの 理解や活動への参加促進、そして日常生活に浸透させること等、まちの形成に 必要な要素において類似性が見られる。双方の「まち」を統合的に形成するこ とで、 「まち」の、 より一層の普及促進と拡大が見込めるのではないかと考える。 持続可能な社会の形成に向け、本稿では低炭素社会の形成とフェアトレード タウンの形成を統合的に考え、包括的に押し進めることは、環境的側面だけで はなく社会・経済的側面を備えた新たな「まち」づくりのあり方となりうる可 能性を示す。本稿は初段階として、 低炭素社会形成に必要な要素とフェアトレー ドタウン形成に必要な要素を整理し、双方における共通点を分析する。また持 続可能な社会の実現に必要な要素を明示し、低炭素社会が持続可能な社会とな る上で、フェアトレードタウンはその補完的な役割を担っていることも明示す る。まちを形成する上で双方が統合する可能性とその意義を検討する。. 1.低炭素社会―環境配慮型の持続可能な社会の実現を目指したまち― 1.1 低炭素社会とは 低炭素社会は環境配慮型社会である。地球温暖化を促進する CO2 排出量が 低い社会を指す。CO2 の排出量は人びとの日常生活や企業の経済活動に直結し ている。再生可能エネルギーや新エネルギーの生産と有効的な活用、 エネルギー 効率のよい技術の導入および運用、環境に負荷のかからない交通網の整備等、 環境配慮型の技術は、CO2 排出量削減に寄与する。加えて低炭素社会の形成に 関する政策や規制、税制度等の見直しや技術開発・普及促進、環境に対する意 識改革や啓発活動によるライフスタイルの変革や改善などの活動は、環境問題 のみならず、少子高齢化社会や雇用促進といった経済社会問題の解決にも貢献 475.

(4) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). 表 1 環境モデル都市に選定された都市の主要施策のまとめ ◉⒕. ⮶尞㲰掌ゑ ▦⃬ねゑ 㲹㿫ゑ ℻掌ゑ ⫉ゑ. ₼尞㲰掌ゑ ⹛⼀ゑ ゾㄒゑ 歾䞿ゑ 廙䞿ゑ. ⺞尞㲰掌ゑ ₚぬ䟉 㭋☮䟉 ⸽♳⾅ゑ 㻃≲ゑ. 䔈⒴◉ ◒ⅲ䞿◉. ⃊尐㡌䷥. 㡌䷥ቑ䔈㉃. ⇝䌼侯掌ゑቋሺ቉ቑ䥽㖖ሼ掌ゑ⍞. ዘ嫦◉ᇬ掌ゑቈ ሲቭ ዘ䞲㯼ዘ俛䂗㒟 栆 ዘ዆ኁኲኒኁኌ ወ ዘℳ抩. ¾ 9嫦◉ᇬ掌ゑቈሲቭቊቒᇬቀቑ⦿◉ቑ嫦₵ቢㇱ㒟቎栱抲 ሼቮ檔䥽ሯ⸮㡌ሸቯ቉ሧቮ᧤偠▥ቧ㣾层ᇬ⇞⸔㠃⌨䷘᧥ᇭ ¾ 9䞲㯼ዘ俛䂗㒟栆ቊቒᇬ㠿ኅኪወኋዙቑⒸ䞷ቧኅኪወ ኋዙ╈䘖ት₼㉒ቋሺቂ檔䥽ሯ⸮悄ሸቯ቉ሧቮᇭ栱抲ሼቮ ¾ 㔏嫢栚䤉ቧ,7ቑ⺝⏴ᇬ↬倀䞲㯼ቋ㦏⏗䵾㔏嫢ቑ娜⚗䷘ብ ⸮㡌ሸቯ቉ሧቮᇭ 9዆ኁኲኒኁኌወቊቒᇬ䜿⬒揜㏽⨚嫛╤ቑ≒拁ቧ呹㽊⇢ 栢抲㛉᧤ゑ␔⮥᧥ᇬ䜿⬒቎栱ሼቮኁ኶ዐእቑ栚⌻ት⸮㡌 ሺ቉ሧቮᇭ㟨十ብ₏捷⸮㡌ሺ቉ሧቮᇭ 9ℳ抩ቊቒᇬ⏻␀ℳ抩ቑ㠃⌨ቧℳ抩㿐ቑ␕䅠▥ᇬℳ抩慙 ₰ቑ䲊嫛᧤呹慱慙ቧ㈡㷸ቛቑ䲊嫛᧥ሯ⸮㡌ሸቯ቉ሧቮ. ࠙㒔ᕷീࠚࠕ⤒῭࣭⏕άᇶ┙ࢆഛ࠼ࡓ 」ྜⓗ࡞㒔ᕷࠖ ࠙㒔ᕷࡢ᪉ྥᛶࠚ⤒῭άືࡢ୰ᚰࠊ฼ ౽ᛶࡢ㧗࠸㒔ᕷ ࠙⏘ᴗ࣭⤒῭ᡂ㛗࡟ᑐࡍࡿ࢔ࣉ࣮ࣟ ࢳࠚ᪂࢚ࢿࣝࢠ࣮฼⏝ࠊ࢚ࢿࣝࢠ࣮ຠ ⋡ࡢᨵၿ. ዘ嫦◉ᇬ掌ゑቈ ሲቭ ዘ䞲㯼ᇬ扁㨦㻃 䞲㯼ᇬ←㯼㿊╤ ዘኅኪወኋዙ ዘℳ抩. 9呹䏅␀䞮ᇬ㭽㨦ቊቒᇬክኁኇ኉ኖ䞮㒟ℚ㯼ሯ⸮悄ሸቯ ቉ሧቮᇭ㭽㨦丰䚕ብ⸮悄ሸቯ቉ሧቮᇭ 9ኅኪወኋዙቊቒᇬክኁኇኻኖ䞮㒟ሯ⸮悄ሸቯ቉ሧቮᇭ ኅኪወኋዙ∪俵ቑቂቤቑ䪣䴅ቧ彖摠䭉≬ብ⸮悄ሸቯ቉ሧ ቮᇭ 9ⅉ㧟ቊቒᇬ⷟ቌብ⚠ሴቑ㟨十ቑ⸮悄ቧ⮶ⅉ⚠ሴቑ⟢䤉 㿊╤ᇬ₥ⅲት怔ራ቉㰌ሺባሶቋሯቊሰቮኁ኶ዐእቧኡዙ ዇ኗኽት栚⌻ሺᇬⅉ㧟十㒟቎┹ቤ቉ሧቮᇭ. ¾. ࠙㒔ᕷീࠚࠕ⤒῭࣭♫఍ᇶ┙ࢆ㞟⣙ࡋ ࡓࢥࣥࣃࢡࢺ࡞ࡲࡕࠖ ࠙㒔ᕷࡢ᪉ྥᛶࠚᆅᇦάᛶ໬࡟ᑐࡍࡿ ᥐ⨨ ࠙ᆅᇦάᛶ໬࡟ᑐࡍࡿ࢔ࣉ࣮ࣟࢳࠚࣂ ࢖࢜࢞ࢫ⏕ᡂ஦ᴗࡢᐇ㊶ࠊ◊✲㈝࣭㈨ 㔠ᨭ᥼. ዘ呹䏅␀䞮ᇬ㭽 㨦 ዘኅኪወኋዙ ዘⅉ㧟. 9呹䏅␀䞮ᇬ㭽㨦ቊቒᇬክኁኇ኉ኖ䞮㒟ℚ㯼ሯ⸮悄ሸቯ ቉ሧቮᇭ㭽㨦丰䚕ብ⸮悄ሸቯ቉ሧቮᇭ 9ኅኪወኋዙቊቒᇬክኁኇኻኖ䞮㒟ሯ⸮悄ሸቯ቉ሧቮᇭ ኅኪወኋዙ∪俵ቑቂቤቑ䪣䴅ቧ彖摠䭉≬ብ⸮悄ሸቯ቉ሧ ቮᇭ 9ⅉ㧟ቊቒᇬ⷟ቌብ⚠ሴቑ㟨十ቑ⸮悄ቧ⮶ⅉ⚠ሴቑ⟢䤉 㿊╤ᇬ₥ⅲት怔ራ቉㰌ሺባሶቋሯቊሰቮኁ኶ዐእቧኡዙ ዇ኗኽት栚⌻ሺᇬⅉ㧟十㒟቎┹ቤ቉ሧቮᇭ. ¾ ࠙㒔ᕷീࠚࠕ⮬↛㈨※ࡢಖ඲࣭ά⏝࡟ࡼ ࡿపⅣ⣲㒔ᕷࡢᐇ⌧ࠖ ¾ ࠙㒔ᕷࡢ᪉ྥᛶࠚ㇏࠿࡞⮬↛㈨※ࢆά⏝ ࡋࡓ࢚ࢿࣝࢠ࣮౪⤥࡜ࡑࡢᣢ⥆ⓗ࡞ά⏝ ¾ ࠙᭷ຠ࡞⮬↛㈨※ά⏝࡟ᑐࡍࡿ࢔ࣉ࣮ࣟ ࢳࠚࣂ࢖࢜࢞ࢫ⏕ᡂ஦ᴗࡢᐇ᪋ࠊ◊✲ ㈝࣭㈨㔠ᨭ᥼ࡢᐇ᪋. ዘ嫦◉ᇬቡቄቈ ሲቭ ዘ⇞⸔ ዘ⦿⩮抲㛉. 9嫦◉ᇬቡቄቈሲቭቊቒᇬℳ抩㿐ቑ㠃⌨ቧ◉䟊㠃⌨ᇬ ኯዙእቿኁ዆ዐኦ⺍䷥ሯ⸮悄ሸቯ቉ሧቮᇭ 9⇞⸔ቊቒᇬ䦐ኅኪ岼⌨⺝⏴ሯ⸮悄ሸቯ቉ሧቮ 9⦿⩮抲㛉ቊቒᇬ掌ゑ⦿⩮栢抲㛉ቑ⸮悄ቧⅉ㧟十㒟ᇬ⮶ ⷵቋቑ抲㛉ት抩ሻቂ⇝䌼侯掌ゑቡቄቈሲቭት≒拁ሺ቉ሧ ቮ. ¾. ¾ ¾. ¾ ¾. ࠙㒔ᕷീࠚࠕ༊࡜ࡋ࡚ࡢྍ⬟࡞⠊ᅖ࡛ ࡢపⅣ⣲໬࡟ࡴࡅࡓࡲࡕ࡙ࡃࡾࠖ ࠙㒔ᕷࡢ᪉ྥᛶࠚఫᏯᵓ㐀ࡢ┬࢚ࢿ໬ ಁ㐍ࠊᆅᇦ㐃ᦠ➼࡟ࡼࡿၨⓎάື ࠙┬࢚ࢿ໬ಁ㐍࡟ᑐࡍࡿ࢔ࣉ࣮ࣟࢳࠚ ┬࢚ࢿタഛࡢᑟධࡢᐇ᪋. 出典:各自治体の環境モデル都市実行計画を参考に作成. する 2)。低炭素都市は、経済・社会・環境の側面を包括的に組み込んだ都市の 1 つのコンセプトといえる。 日本では、2010 年前後に CO2 の低排出のまちづくりや環境問題解決と生活 の豊かさの向上を目指した都市形成事業が開始された。これらの都市は環境モ デル都市および環境未来都市と称されている。環境モデル都市は 2009 年に開 始された。大規模都市、中規模都市、小規模都市、特別区の 4 区分から、低炭 素なまちの形成を目指した実践を展開する 13 都市 3)が現在選定されている 4)。 環境未来都市は 2010 年、持続可能な経済社会への変革を目指し、環境、社会、 経済の各側面から生じる課題を包括的にとらえ、解決を目指す自治体が選定さ 476.

(5) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. れている。2012 年 12 月時点、11 都市が選定されている 5)。 表 1 は、環境モデル都市に選定された自治体の低炭素社会形成に向けた取り 組みをまとめたものである。大規模都市においては、生活圏と企業活動圏か ら排出される CO2 量を削減するため、環境配慮型の社会インフラや産業活動、 生活スタイル等、まち全体が低炭素の要素を備えた取り組みが実践されている。 中規模都市では、地域資源の有効活用によるバイオ燃料の生成と利便性の高い 社会インフラの整備を通じ、市民が安心安全に生活できる社会空間の形成にむ けた取り組みが実践されている。小規模都市では、地域資源の有効活用(バイ オ燃料の生成)とそれを持続的に維持・保全し、活用できるよう、産業促進と CO2 排出量削減に努めた取り組みおよび地域経済の持続的な成長を目指した取 り組みが実践されている。特別区の千代田区では、住宅への省エネ設備の導入 や環境配慮型の住宅改修等、区という小さな単位でも実践できる低炭素都市の 形成を目指している。都市の規模は異なるものの、どの都市も自身の都市から 排出される CO2 量の削減を目指した取り組みをまち全体で実践している。し かし CO2 排出量を削減するだけでは都市の継続は難しい。エネルギー消費量 を大幅に減らせば CO2 排出量は削減されるが、経済成長や日常生活に大きな 影響を与える。都市は、 都市計画を基盤に、 都市開発や都市交通整備、 福祉対策、 教育政策、環境対策、廃棄物処理政策といった生活に必要なさまざまな政策・ 施策が集約されて形成されている。低炭素社会の形成には、社会システムや福 祉政策等、包括的な側面・視点から社会・経済的要素を組み入れたアクション やまちづくりが必要である。この点において環境未来都市では、 「都市環境に 対する負荷を増加させずに、いかに生活の豊かさを実現するか」を目指し、経 済・社会・環境が抱える普遍的な課題を解決するため、包括的なまちの形成を 推進している 6)。 環境モデル都市に選定された自治体の中で、環境未来都市に選定された自治 体 は、北九州市、横浜市、富山市、北海道下川町 の 4 都市 で あ る 7。表 2 は 4 都市の環境モデル都市および環境未来都市の形成要素をまとめたものである。 477.

(6) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). 表 2 環境モデル都市および環境未来都市に選定された自治体のとりくみ (概要) 㑅ᐃ㒔ᕷ ໭஑ᕞᕷ. ᶓ὾ᕷ. ᐩᒣᕷ. ୗᕝ⏫. ⎔ቃ䝰䝕䝹㒔ᕷᐇ⾜ィ⏬ᴫせ. ⎔ቃᮍ᮶㒔ᕷィ⏬ᴫせ. 䖃බඹ᪋タ䜔௻ᴗ䠄⏘ᴗ䠅䜢ᑐ㇟䛸䛧䛯⎔ቃ㓄៖ᆺ䝅䝇䝔䝮䛾ᑟධ 䖃⎔ቃᏛ⩦➼䛾ேᮦ⫱ᡂ䛾ᐇ᪋ 䖃䜰䝆䜰ᆅᇦ䜈䛾ᢏ⾡⛣㌿䞉◊ಟ䛾ᐇ᪋ 䖃᪥ᖖ⏕ά䛻ᾐ㏱䛥䛫䜛䛯䜑䛾ព㆑ᨵ㠉䞉ၨⓎάື䛾ᐇ᪋. 䖃⎔ቃ䝰䝕䝹㒔ᕷ䛷ᐇ㊶䛩䜛せ⣲䛻ຍ䛘䚸2せ⣲㏣ຍ 䖂ከୡ௦䝛䝑䝖䝽䞊䜽ᵓ⠏ 䖂೺ᗣᨵၿ䚸ྥୖ䚸ಁ㐍 䖂㧗㱋⪅䚸Ꮚ䛹䜒䚸㞀䛜䛔⪅䜢ᑐ㇟䛸䛧䛯᪋タ䛾᏶ഛ 䖂㟈⅏᚟⯆ᨭ᥼䠖䝇䝬䞊䝖䝁䝭䝳䝙䝔䜱䚸ᆅᇦ䜶䝛䝹䜼䞊䛾ಁ㐍䚸⏘ᴗ䞉ᆅᇦ䛾 άᛶ໬䚸䛔䛴䛷䜒฼⏝䛷䛝䜛IT䝃䞊䝡䝇ᇶ┙䛾ᩚഛ➼. 䛂㐣ཤ䛾⤒㦂䜔▱ぢ䜢ά⏝䛧䚸㏵ୖᅜ䛾పⅣ⣲໬䜢ᨭ᥼䛩䜛䜎䛱䛃. 䛂పⅣ⣲㒔ᕷ䜢ᙧᡂ䛩䜛ᢏ⾡䜔䝅䝇䝔䝮䜢᭱኱㝈ά⏝䛧䚸ᅜෆእ䛾ே䚻䛻㇏ 䛛䛺⏕ά䜢ᥦ౪䛩䜛䜎䛱䛃. 䖃ᐙᗞ㒊㛛䛾䝊䝻䜹䞊䝪䞁ಁ㐍 䖃෌䜶䝛⏕⏘䞉฼⏝ಁ㐍 䖃஺㏻ศ㔝䛻䜘䜛䝊䝻䜶䝭䝑䝅䝵䞁໬ 䖃 ᬮ໬ᑐ⟇䛻ྥ䛡䛯ᅜෆእ䛾㐃ᦠಁ㐍. 䖃CO2᤼ฟ㔞๐ῶ䜢ᇶ┙䛻5せ⣲ 䖂䝛䝑䝖䝽䞊䜽䠖ᅜእ䚸⿕⅏ᆅ䚸ከୡ௦䠄㧗㱋⪅䚸Ꮚ䛹䜒䚸㞀䛜䛔⪅䚸ⱝ⪅➼䠅䛾 ⏕ά䜢ᨭ䛘䜛 䖂஺㏻䠖⎔ቃ㈇Ⲵ䛾ప䛔஺㏻⥙䛾ᩚഛ䚸䝞䝸䜰䝣䝸䞊໬䛻䜘䜛ከୡ௦䛾Ᏻ඲ 䛺⏕άᇶ┙ᩚഛ䚸᪂䛧䛔஺㏻ᡭẁ䛾ᥦ᱌➼ 䖂ᶓ὾ᩥ໬䛾ά⏝䠖ᩥ໬䜔ᘓ⠏≀䚸ᅜ㝿㒔ᕷ䚸ⱁ⾡➼䜢ά⏝䛧䛯ほග㒔ᕷ໬ 䖂⚟♴䠖ዪᛶ䛾ാ䛟⎔ቃᩚഛ䚸་⒪䞉௓ㆤ䝅䝇䝔䝮䛾ᵓ⠏ 䖂ᅜ㝿༠ຊ䠖పⅣ⣲♫఍ᙧᡂ䛻㛵㐃䛩䜛ᢏ⾡ᨭ᥼䞉◊ಟ䛾ᐇ᪋. 䛂CO2᤼ฟ㔞๐ῶ䛾㐩ᡂ䛻ྥ䛡䛯䜎䛱䛃. 䛂ᅜෆእ䛻ᵓ⠏䛧䛯䝛䝑䝖䝽䞊䜽䜢ά⏝䛧䛯䝇䝬䞊䝖䝅䝔䜱䛾ᬑཬಁ㐍䛃. 䖃බඹ஺㏻⥙䛾ᩚഛ䛚䜘䜃పCO2䛻㈨䛩䜛஺㏻ᡭẁ䜈䛾㌿᥮ 䖃䝁䞁䝟䜽䝖䝅䝔䜱໬䠄䜎䛱䛾㞟⣙ᆺ䠅 䖃䜶䝁䝷䜲䝣䛾ಁ㐍 䖃䜶䝛䝹䜼䞊䛾㌿᥮ 䖃㎰ᯘỈ⏘ᴗ䛾ಁ㐍. 䖃⏘ᴗಁ㐍䛸㧗㱋⪅ᑐ⟇䛻≉໬ 䖂䜎䛱䛾䝁䞁䝟䜽䝖໬䠖⮬ື㌴䛜䛺䛟䛶䜒⏕ά䛷䛝䜛䜎䛱䛵䛟䜚䜢㏻䛨䛯㧗㱋⪅ 䛻䜔䛥䛧䛔䜎䛱 䖂䜶䝛䝹䜼䞊⏕ᡂ䛸㏆㞄⮬἞య䜈䛾䜶䝛䝹䜼䞊౪⤥䜢㏻䛨䛯⤒῭䞉⏘ᴗ䛾ά ᛶ໬ 䖂᪤Ꮡ⏘ᴗ䠄་⒪⏘ᴗ䠅䛾ᙉ໬䛻䜘䜛⏘ᴗ䛸⚟♴䛾ྥୖ 䖂㎰ᯘỈ⏘ᴗ䛾άᛶ໬䠖䝞䜲䜸䝬䝇䛾⏕ᡂ 䖂᳃ᯘ䛾㠀⤒῭ⓗά⏝䠖⎔ቃᏛ⩦䛾ሙ䚸᠁䛔䛾ሙ䚸⒵䛧䛾ሙ➼. 䛂⏕ά䚸䜶䝛䝹䜼䞊䚸⏘ᴗ䛾ᨵၿ䞉ಁ㐍䛻㈨䛩䜛䜎䛱䛃. 䛂᳃ᯘ䛾᭷ຠά⏝䛸䜎䛱䛾䝁䞁䝟䜽䝖໬䛻䜘䜛CO2᤼ฟ๐ῶ䛸㧗㱋⪅䛻䜔䛥䛧 䛔䜎䛱䛃. 䖃᳃ᯘ㈨※䛾ά⏝䠖⟶⌮䚸䜶䝛䝹䜼䞊⏕ᡂ䠄䝞䜲䜸䝬䝇䠅䚸ほග䠄䜶䝁 䝒䞊䝸䝈䝮䠅䛸⎔ቃᩍ⫱䛾ᐇ㊶ 䖃᳃ᯘ㈨※䛾᭷ຠά⏝䛻㛵䛩䜛◊✲ㄪᰝ 䖃䝞䜲䜸䝬䝇䛾ᑟධ䠖බඹ᪋タ䚸Ẹ㛫஦ᴗ⪅➼ 䖃ព㆑䞉ၨⓎάື䠖୍⯡ఫᏯ䜢ᑐ㇟䛸䛧䛯䝞䜲䜸䝬䝇⇞ᩱ䛾ᑟධಁ㐍. 䖃᳃ᯘ䛾᭷ຠά⏝䛸䝁䝭䝳䝙䝔䜱ᵓ⠏䛻≉໬ 䖂᳃ᯘ⥲ྜ⏘ᴗ䛾ᵓ⠏䠖䝞䜲䜸䝬䝇䚸᳃ᯘᩥ໬䛾๰ฟ䠄୍⯡ఫᏯ䜈䛾ᆅᇦᮦ ά⏝䛾ಁ㐍䜔᳃ᯘయ㦂䛜䛷䛝䜛⎔ቃᩚഛ➼䠅䚸◊✲㛤Ⓨ䠄᳃ᯘ㈨※䛾᭷ຠά ⏝䠅 䖂䝁䝭䝳䝙䝔䜱䛾ᵓ⠏䠖ከୡ௦䛾೺ᗣ䛵䛟䜚䚸೺ᗣᨵၿ䞉ྥୖ䚸⏕άᨭ᥼䚸⏫ෆ ぢᅇ䜚䝅䝇䝔䝮䛾タ⨨䠄IT䝅䝇䝔䝮䛻䜘䜛㧗㱋⪅䛾Ᏻྰ☜ㄆ䝅䝇䝔䝮䛾ᑟධ䠅䚸 㞟ఫ໬䝰䝕䝹䛾ᵓ⠏䠄ከୡ௦䛜䛸䜒䛻⏕ά䛩䜛㞟ⴠ䛾ᵓ⠏䛻䜘䜛పⅣ⣲໬䛸 㧗㱋⪅ᑐ⟇䜢┠ᣦ䛩䠅. 䛂᳃ᯘ㈨※䛸᭷ຠά⏝䛧䛯CO2᤼ฟ๐ῶ䜈䛾ྲྀ䜚⤌䜏䛸᳃ᯘ⏘ᴗ䛾Ᏻ ᐃ໬䜢┠ᣦ䛧䛯䜎䛱䛃. 䛂䜎䛱䛾పⅣ⣲໬䛸㧗㱋⪅䛾೺ᗣಁ㐍䚸⏕ά䛾Ᏻ඲䜢ಖド䛩䜛䜎䛱䛃. 出典:4都市の環境モデル都市実行計画および環境未来都市計画を参考に作成. 環境未来都市は、環境保全のほか、経済活性化、社会福祉の充実の 3 側面を中 心に、単なる低炭素社会ではなく、 「人々の生活の質を向上させる」8)持続可 能な社会の実現を志した取り組みを目指している。 4 都市の環境モデル都市では、エネルギー資源の代替による産業・経済促進 とまちの低炭素化や利便性の高い交通手段への転換によるまちの低炭素化、省 エネ機器導入による低炭素化等、CO2 排出削減のための都市形成が中心である が、これからますます深刻化する高齢化社会対策や都市が抱える他のさまざま な経済・社会問題を念頭に、どのように低炭素化技術を導入し、どのように取 478.

(7) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. り組みを実践することで CO2 排出量の低減と経済社会問題の解決ができるか という視点が組み込まれている。表 2 にて示した 4 都市の環境未来都市計画を 見てみると、北九州市では、低炭素社会を形成する技術やシステムを最大限に 活用し、国内外の人びとに豊かな生活を提供するまちの形成を目指している。 新エネルギーや再生可能エネルギーの生成・利用促進のほか、子どもや高齢者 の安心安全な生活を保証する医療・介護・教育インフラの充実化が行われてい る。加えて北九州市の過去の経験や知見を生かし、エネルギー分野を通じた東 北地方の被災地復興支援や国際環境協力も行っている 9)。横浜市では、国内外 に構築したネットワークを活用したスマートシティの普及促進に取り組んでい る。低炭素技術を取り入れ、まち全体の GHG 排出量の大幅な削減を目指して いる。多世代が安心安全を確保した生活を送るための社会基盤整備として、医 療・介護サービスの充実化や雇用機会の促進を実践している。また北九州市同 様、エネルギー分野における被災地復興支援も展開している 10)。富山市では、 森林の有効活用とまちのコンパクト化による CO2 排出削減と高齢者にやさし いまちの形成を目指している。コンパクトシティ化による CO2 排出削減と高 齢者問題改善にむけ、環境に負荷をかけることなく、高齢者の利用促進に寄与 する交通網の整備は、高齢者が安心して生活できる環境を提供している。また 地域資源である森林資源を活用したエネルギー生成は、エネルギーの地産地消 を可能とし、 既存産業の強化は地域経済の促進剤となっている 11)。下川町では、 まちの低炭素化と高齢者の健康増進、生活の安全を保証するまちを目指してい る。森林資源を有効活用し、森林産業の活性化や人びとの心身を豊かにする環 境整備が行われている 12)。 今後形成される低炭素社会は、包括的に経済・社会状況をとらえ、それらの 問題解決を導く持続可能な社会の実現が必要である。この 4 都市はさらに加速 する社会経済問題や環境問題を見据えた対応をしており、環境モデル都市に選 定された自治体の中で特に先駆的な取り組みといえる。. 479.

(8) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). 1.2 低炭素社会の形成に必要な要素―北九州市を例に このように社会状況を複合的にとらえ、持続可能な社会の実現を目指す都市 を継続的に押し進めていくためには、どういった要素が必要であるのかについ て、環境モデル都市および環境未来都市に選定されている北九州市を例に考察 する 13)。北九州市は古くから工業地区として栄えた。その一方で、環境問題 は深刻化をたどっていたこともあり、長きにわたり環境問題に向き合ってきた 都市である。現在では、環境問題の解決に積極的に取り組む都市の 1 つとして 国内外で認識されている。北九州市は、4 つの地区を中心に低炭素社会が形成 されている 14)。4 地区はそれぞれの低炭素地区としての役割を担い、各地区が 関連性を有することで北九州市という低炭素社会を形成している。 北九州市では、豊かで住みやすいまちや海外に対する国際協力・環境協力、 そしてアジア地域で先駆的な低炭素社会であり続けるという要素を基盤に備 え、技術と環境のまちづくりという北九州市のまちの将来像を目指している。 北九州市の場合、低炭素社会が形成されるきっかけとなっているのは、市民に よる働きかけである。公害問題に対する市民の声に対して、 行政が多様なステー クホルダーを巻き込み、対策を講じたことが起点となっている 15)。低炭素社 会の形成においては、市民の声を数多く収集し、市民もまちの形成に大きく貢 献してもらうため、北九州市環境モデル都市地域推進会議という組織を立ち上 げている。このように市民を参画させた活動の展開により、環境に対する市全 体の意識は高まりを見せている。よりよいまちづくりに貢献する制度や政策の 策定のほか、低炭素社会の形成に向けた共通認識の醸成、低炭素技術の開発や 導入を通じた環境配慮型生活の基盤整備、そして北九州市のみならずアジア圏 への普及促進に向けた低炭素社会形成に資する人材育成・能力育成の機会創出 等が展開されている。 北九州市の事例から、低炭素社会を継続的に押し進めていくために必要な要 素は 4 点挙げられる。1 点目は各都市がどのような都市の将来像を見据え、そ の将来像に向かって取り組みを進めているのかについて、各自治体はステーク 480.

(9) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. ホルダーに対して明示する必要性である。2 点目は、都市の将来像を実現させ ようとする首長の意思やモチベーションの高さである。首長の高い志は、行政 職員の活動に対する結束力や率先した活動の姿勢をもたらす。3 点目は、行政 職員と市民・企業間の密なコミュニケーションを通じたステークホルダーの意 識改革や啓発活動、そして双方の信頼関係の構築である。4 点目は、過去の経 験や知見を含む地域資源や歴史、文化等地域の特性を生かした低炭素都市の形 成である 16)。低炭素社会の形成において、取り組みや政策・制度の策定だけ では不十分である。4 つの要素を中心に実践していくことで、低炭素社会の形 成を可能とする。. 1.3 低炭素社会の持続可能な社会の実現に向けて 低炭素社会形成には、上述した 4 点の要素が必要である。経済・環境・社会 的側面から問題解決に向けた取り組みが包括的に実践されつつある。しかし未 だ 3 側面の連携やステークホルダーへの機会提供、周辺地域との連携が欠ける とも言われている。白井信雄(2012 年)は、低炭素社会が持続可能な社会と なるためには、3 つの要素が必要であると示している。 「将来および他地域と の共生」 、 「起こり得る危機への対応」 、 「住民参加と活力」17)である。 「将来お よび他地域との共生」は、経済・社会・環境を横断的に配慮し、地域発展のみ ならず国際的な持続可能性も視野に、すべてにおいて持続可能性を発揮できる ようにする要素である。 「起こり得る危機への対応」は、一般的には自然災害 等に備え、起こり得る危機の影響をいかに最小限にし、また危機の影響からの 回復力をいかに高める、もしくは迅速にさせるかという対応力である。社会問 題に焦点をあててみると、少子高齢化問題は、起こり得る自然災害時に危機の 影響を最も受けやすい。この観点から、危機の影響を極力最小限にするために も少子高齢化対応として周辺住民との連帯感を形成し、常に安心安全な生活が 送れるようなまちの形成に貢献することは、起こり得る危機への対応としての 要素である。 「住民参加と活力」は、住民や NPO 等、草の根レベルが積極的 481.

(10) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). にまちづくりに参加し、意思決定を行えるようにする要素である。これらの要 素は、フェアトレードを通じて補完することが可能であると推察する。次章で はフェアトレードを促進するまちの形成(フェアトレードタウン)について見 ていくこととする。. 2.‌フェアトレードタウン―持続可能な経済社会の形成を目指したまち 全体の取り組み― 2.1 フェアトレードとは フェアトレードタウンについて触れる前に、フェアトレードについての概 要を述べることとする。フェアトレードとは、途上国の人びとの経済・社会 的成長を目的とする貧困削減に資するアプローチの 1 つである。途上国と先 進国間において、透明性や公平性、双方の尊重を重視するこのアプローチは、 途上国で生産された産品を先進国が公平な価格で継続的に購入し、途上国の 人びとの持続的な雇用機会と経済社会成長、そして労働者・生産者の権利を 尊重した地域コミュニティの開発や活性化を目指している。また国際貿易の 変革を促すこともフェアトレードが目指す要素の 1 つである 18)。近年では、 58 の生産国で 120 万人以上の農家や労働者がフェアトレードに関わってい る 19)。フェアトレード産品の売上金や利益はコミュニティ開発に活用され、 生産者や労働者の家族を含む約 600 万人がフェアトレードからの恩恵を受け ているとされている 20)。. 2.2 フェアトレードタウンとは フェアトレードタウンとは、まち全体においてフェアトレード商品を積極的 に購入し、途上国のフェアトレード生産者の待遇を持続的に保証するコミュニ ティを指す。広義的には、国際貿易の変革促進とフェアトレードを通じた途上 国の持続可能な発展、そしてフェアトレードの普及促進という位置づけも有す 482.

(11) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. る。フェアトレードタウンは 2000 年から 2001 年にかけ、ヨーロッパ、特にイ ギリスにおいて誕生したまち・コミュニティのコンセプトである。その後世界 各地に拡大し、2012 年 12 月時点では 23 ヶ国、1152 の地域がフェアトレード タウンとして活動を実践している。 フェアトレードタウンはイギリスのガースタンが発祥地である。ガースタン のフェアトレードタウン認定を皮切りに、世界各地でフェアトレードタウンは 着実に増加している。これまでは先進国が主にフェアトレードタウン認定を受 けていたが、近年では途上国でもフェアトレードタウンが誕生している。2008 年にブラジルで認定されて以降、2009 年にはコスタリカが、2011 年にはガー ナがそれぞれ認定を受けている。途上国でのフェアトレードタウン認定は、さ まざまな国においてフェアトレード認定を検討する機会を提供しているものと いえる。アジア地域においては、2011 年に日本の熊本市が初めてフェアトレー ドタウン認定を受けた。日本国内には、フェアトレードタウン認定を受けよう と積極的な活動を展開する都市も誕生 21)しており、日本国内でもフェアトレー ドタウン都市が拡大する可能性を秘めている。. 2.3 ‌フェアトレードタウン認定におけるガースタンおよび熊本市の実 践過程 ガースタンはフェアトレードタウンとなった初の都市である。ガースタンで は 1994 年から草の根レベル(Oxfam)によりフェアトレードの促進運動が実 践されてきた。2000 年に開催したフェアトレードイベントにおいて、ガース タンの学校や教会、市民団体、企業等は、フェアトレード商品の利用と販売に 対して積極的に協力することを約束した。これをきっかけに、同年の年次市民 集会(Annual Public Meeting)において、ガースタンは、フェアトレード商 品を積極的に利用するフェアトレードタウンとなることを表明した。議会によ る承認とフェアトレード財団(イギリスのフェアトレード団体)によるフェア トレードタウン認定基準の策定により、2001 年、ガースタンは正式にフェア 483.

(12) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). トレードタウンとして認定された 22)。フェアトレード普及促進に向けた草の 根レベルの率先した活動は、さまざまなステークホルダーや行政のフェアト レードに対する認識や意識の変革に寄与し、フェアトレードタウン認定に向け た取り組みへの積極的な参加促進を可能としている。 熊本市はアジア地域初、日本初のフェアトレードタウンに認定された。熊 本市においてフェアトレードが動きはじめたのは、2003 年ころのことである。 フェアトレード活動を積極的に行う NGO により、フェアトレードに関連する さまざまなイベントの開催や行政への働きかけを行うなど、市内への普及促進 が実践された。2009 年には推進委員会を立ち上げ、フェアトレードタウンの 立ち上げに向けたさらなる普及促進活動が展開された 23)。市民や行政に対す る意識改革が継続して行われた結果、議会でも議題として扱われた。熊本市で は東アジア諸国との交流を通じながら東アジアとともに成長する「熊本市東ア ジア戦略」を策定している。この東アジア戦略では、観光、学術都市、ビジネ ス、環境の 4 つの側面を通じ、熊本市が東アジアから選ばれる都市となること を目指している。フェアトレードは、東アジア文化に対する熊本市民の理解・ 認識を高める要素の 1 つとして、また身近にできる国際協力として取り上げら れた。また市内におけるフェアトレード活動のさらなる実践と普及促進のため、 行政は市民に対してフェアトレード関連イベントの開催情報の提供やフェアト レード情報の提示等を行うことに努め、フェアトレードタウン認定に向けた周 知・広報活動を積極的に行うことも取り上げられた。このように、市内におけ るフェアトレードの位置づけやフェアトレードの普及促進に向けた行政の役割 等の明確化の議論の結果、2010 年 12 月に「フェアトレード理念周知に関する 発議」が決議された 24)。そして 2011 年 6 月、熊本市はアジア初、日本初、そ して世界で 1000 番目のフェアトレードタウンとして認定された。 熊本市もガースタン同様、NGO のフェアトレードの普及促進を目指した積 極的な活動・姿勢がフェアトレードタウン形成のきっかけとなっている。そし て首長のフェアトレードタウンに対する意思の高さ(議会を通じた決議)も、 484.

(13) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. 表 3 フェアトレードタウン認定基準 5つの基準 1.自治体において、フェアトレード支援の方針がしっかり定まっていること。フェアト レード商品を議会やミーティング、オフィス内、食堂、売店等に積極的に導入すること。 2. 扱うフェアトレード商品は多種多様であること。 3. 学校や職場、教会、コミュニティ団体等でフェアトレード支援を実施すること。 4. メディア取材やイベントを通じ、コミュニティ内でのフェアトレード理解や啓発活 動を促進させること。 5. 異なるセクターから構成されるフェアトレードステアリンググループは、ゴール達成 (基準達成)に向けて活動を調整し、年間を通じて実践していくことが求められている。 出典:Fairtade Towns Websiteより著者翻訳. フェアトレードタウン形成において重要な要素であるといえる。草の根レベル によるフェアトレードに関する意識改革の実践(ボトムアップ)は、市民や企 業の意識に浸透し、行政も検討せざるを得ない環境を形成する。フェアトレー ドの普及促進に向けた首長の意向(まちの方針)を企業・市民・草の根レベル に浸透させる(トップダウン)ことは、フェアトレード形成にむけたインフラ 整備を可能とする。双方の相互補完性によって、まちは一体となる。フェアト レードタウンを形成していこうとする気運が高まり、継続的に実践していくた めの基盤となる。. 2.4 フェアトレードタウン基準 ガースタンおよび熊本市の双方が、フェアトレードタウンに認定されるまで、 そして認定される上で有用に機能した要素について整理してきた。都市がフェ アトレードタウンと認定されるためには、フェアトレード認定基準をすべて遵 守する必要がある。フェアトレードタウンとして認定されるための基準は表 3 の通りである。この基準はフェアトレードタウン発祥地のイギリスの基準が基 盤となっている。ガースタンはこの基準を満たし、フェアトレードタウンの認 定を受けている。 485.

(14) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). 表 4 日本国内におけるフェアトレードタウン認定基準 基準. 概要. 指標. 1.推進組織の 設立と支持層 の拡大. ◎ フェアトレードタウン運動が フェアトレードタウンを目指すこ 持続的に発展し、 支持層に広がる とを規約等で明示した推進組織が よ う、 地域内 の さ ま ざ ま な セ ク 設立されている ターや分野の人びとからなる推進 組織が設立されている. 2.運動の展開 と市民の啓発. ◎ 地域社会の中でフェアトレー 各種のイベント・ キャンペーンが ドへの関心と理解が高まるよう、 行われ、 メディアに取り上げられ さまざまなイベントやキャペーン ている(複数あればよい) を繰り広げ、 フェアトレード運動 が新聞・ テレビ・ ラジオなどのメ ディアに取り上げられる ◎ 地元の企業や団体(学校や市 複数の企業、 複数の団体が組織内 民組織) がフェアトレードに賛同 でフェアトレード産品を利用し、 し、 組織の中でフェアトレード産 組織内外への普及をしている 品を積極的に利用するとともに、 組織内外へのフェアトレードの普 及に努めている. 3.地域社会へ の浸透. ※「地元の企業」には、個人経営の事 業体等も含まれ、「地元の団体」には、 学校・大学等の教育機関や、病院等の 医療機関、町内会・商工会等の地縁組 織、各種の協同組合、労働組合、寺院・ 教会等の宗教団体、 福祉・ 環境・ 人 権・まちづくり分野等のさまざまな非 営利・ 非政府団体(NPO・NGO) が 含まれる. 5 つの基準はフェアトレードタウン形成の基盤となる。その中でも、市全体 (議会)のフェアトレードタウン形成に対する積極的な意向、行政・市民・企 業の連携、まち全体を対象とした啓発活動は重要な要素である。市全体の意識 が高くなければ、フェアトレードの普及促進に資する環境整備は難しい。また 啓発活動を通じた市民や企業の意識の変化は、フェアトレード活動に参加しよ 486.

(15) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. 4.地域活性化 への貢献. ◎ 地場の生産者や店舗、 産業の 種々のコミュニティ活動と連携・ 活性化を含め、 地域の経済や社会 連帯した行動が取られている の活力が増し、 絆が強まるよう、 地産地消やまちづくり、環境活動、 障がい者支援等のコミュニティ活 動と連携している. ◎ 多様なフェアトレード産品が (1)2品目以上のフェアトレード産 地元の小売店や飲食店等で提供さ 品を提供する店(商業施設) が、 人口3万人未満は2店以上、3万人以 れている ◎フェアトレード産品には、FLO 上は1万人あたり1店以上ある。 た (国際フェアトレードラベル機構) だし、 フェアトレードの推進・ 普 ラ ベ ル 認 証 産 品 と WFTO(世 界 及を主な目的とする店(売上げな フェアトレード機関) 加盟団体の い し 取 り 扱 い 品目 の 半分以上 を 5.地域の店 産品、 それに地域の推進組織が適 フェアトレード産品が占める店) (商業施設)に 切と認めるフェアトレード団体の が1店以上あること よるフェアト (2)各店は、2品目以上提供するこ 産品が含まれる レード産品の ※「適切と認めるフェアトレード団 とを基本とするが、1品目だけの場 幅広い提供 体」とは、すくなくとも以下の条件を 合は、0.5店として扱う 満たしている団体のことをいう (3)フェアトレード産品が年間6ヶ (a)WFTOの10原則、ないしEFTOと 月以上提供されている FLOが協同で定めた「フェアトレード の原則に関する憲章」 が掲げる5原則 に立って活動している (b)事業の透明性が確保されている. 6.自治体に よるフェアト レードの支持 と普及. ◎ 地元議会がフェアトレードを 支持する旨の決議を行うとともに、 自治体の首長がフェアトレードを 支持する旨を公式に表明し、 自治 体内へのフェアトレードの普及を 測っている. 地元議会による決議と首長による 意志表明が行われ、 公共施設や職 員・ 市民へのフェアトレードの普 及が図られている. 出典:フェアトレードタウンジャパンウェブサイトより著者作成(一部修正). うとする積極性を創出する。すべてのステークホルダーの関与により、継続的 な普及促進に資する。これら 3 要素は、フェアトレードタウンを形成し、継続 していく上で基盤となる。 表 3 に挙げたフェアトレードタウン認定基準を基盤に、フェアトレードタウ 487.

(16) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). ンの実践を試みる各国では、自国の都市に適した認定基準を追加することがで きる。日本でも独自のフェアトレード基準を策定した(表 4 参照) 。日本の基 準では 5 つの認定基準に加え、地域活性化の貢献という基準を新たに組み込み、 途上国への貢献と同時に地域経済や社会の活性化の双方を目指している。 フェアトレードタウンの基準において、 (1)ステークホルダーとの連携、 (2) 市民に対する意識改革の促進、 (3)市のトップ(首長や議会)のフェアトレー ドタウンに対する積極的な意志の 3 点が、フェアトレードタウンの形成と普及 促進に資する重要な役割となる。フェアトレードタウンを持続的に推進してい くためには、 「いかにフェアトレードを “ 地域に落とし込んで ”、地域経済・社 会をフェアで活力あるものとするか」という点が重要である 25)。そのために は地域全体の理解が不可欠である。市民・企業・行政の連携は、フェアトレー ドタウンに対する理解促進や普及促進、そして継続的な活動の可能性をもたら す。このような連携を形成するためには、NGO の積極的な活動も重要な役割 ではあるが、市のトップによるフェアトレードタウンの普及促進に対する明確 な意思と市民を含むすべてのステークホルダーの意識改革が必要である。 加えてフェアトレードに対する積極的な活動・情報発信と地域産品の積極的 な取扱いは、フェアトレードタウンの持続可能な形成に貢献している。ガース タンでは、Oxfam によるフェアトレードとフェアトレードマーク促進キャン ペーンが、フェアトレードタウン誕生のきっかけを作った。フェアトレードタ ウン活動として、ガースタンではフェアトレード商品の取り扱いとともに、地 域の農産品も扱った。産業の衰退や経済成長の低迷という問題は、世界共通で あることの理解を促進させ、フェアトレード産品と地産地消の持続可能な発 展を同時に推進させるためである 26)。熊本市でもフェアトレード活動を行う NGO 団体の率先的な働きかけが、フェアトレードタウン誕生のきっかけとなっ ている。またフェアトレードタウンの活動が地域の活性化に寄与するよう、コ ミュニティ活動と連携させたフェアトレードタウン活動を実践している。フェ アトレードの地域浸透度を加速させ、市民や企業等のフェアトレードタウンに 488.

(17) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. 表 5 低炭素社会およびフェアトレードタウン形成に必要な要素 低炭素社会形成に必要な要素 フェアトレードタウン形成に必要な要素 【共通要素】NGO(草の根)による率先的な取り組み ●目指すべき「まち」 の将来像・ 目標を共 ●ステークホルダーを対象とした意識改革 有する環境整備 の実践 ●将来像を実現させようとする首長の意志 ●首長の意志・モチベーションの高さ やモチベーションの高さ ●行政、 企業、 市民一体の連携構築(ネッ ●持続的なフェアトレードタウン形成に向 トワーク形成による意識改革や啓発活動、 けたステークホルダー同士の連携(ネット 双方の信頼関係の構築) ワーク形成) ●過去の経験や知見を含む地域資源や歴史、 ●地域特性の有効活用(地産地消の促進) 文化等地域特性の活用 これまでの調査研究結果をもとに著者作成. 対する意識の向上にも寄与する可能性を有する。 フェアトレードタウンは、草の根レベルによる積極的な働きかけから誕生し、 (1)フェアトレードタウンを継続していくためのステークホルダー同士の連携 やネットワーク形成、 (2)ステークホルダーを対象とした意識改革の実践、 (3) トップの意志・モチベーションの高さ、に加え、 (4)地域特性の有効活用の 4 点を実践している。この点は、継続的に低炭素社会を形成する上で必要な 4 つ の要素と類似する。. 3.‌フェアトレードタウンと低炭素都市形成要素の比較と共通する要素 の検討 以上、低炭素社会とフェアトレードタウンの形成に必要となる要素について 見てきた。双方のまちの形成には NGO の積極的な活動展開が大きく関係して いる。この活動が双方の形成に向けた基盤づくりとなったといえる。NGO の 率先した活動展開に加え、 低炭素社会の形成においては、 (1)目指すべき 「まち」 の将来像・目標を共有する環境整備、 (2)将来像を実現させようとする首長の 489.

(18) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). 意思やモチベーションの高さ、 (3)行政、 企業、 市民一体の連携構築(ネットワー ク形成) 、 (4)過去の経験や知見を含む地域資源や歴史、文化等地域特性の活 用が重要な要素として挙げられる。またフェアトレードタウン形成においては、 (1)持続的なフェアトレードタウン形成にむけたステークホルダー同士の連携 (ネットワーク形成) 、 (2)ステークホルダーを対象とした意識改革の実践、 (3) 首長の意志・モチベーションの高さ、 (4)地域特性の有効活用が必要な要素と いえる。 表 5 は、低炭素社会形成とフェアトレードタウン形成に必要な要素を比較し たものである。表 5 からも明らかなように、低炭素社会およびフェアトレード タウンの形成に必要とされる要素は類似している。首長の意志・モチベーショ ンの高さ、さまざまなステークホルダー間の連携による一体感の形成、そして すべてのステークホルダーを対象とした意識・認識向上は、双方のまちを形成 する上で不可欠な要素であるといえる。これらの要素は、まち全体のまち形成 に対する意識を明確にし、市民や企業の低炭素社会およびフェアトレードタウ ン関する認識・意識の促進を促す。結果としてまち全体の積極的な参画を可能 とする。またこれらの要素に加えて、 まちの将来像をすべてのステークホルダー と共有し地域資源を有効活用することで、まちをさらによりよいものするもの と考える。. まとめ 本稿では、低炭素社会の形成とフェアトレードタウンの形成を包括的に押し 進めることによる、新たな「まち」づくりのあり方となりうる可能性を示すた め、まちの形成においてどういった要素を必要とするかという点について検討 してきた。持続可能な「まち」づくりには、そのまちの政策・制度や社会イン フラ整備を必要とする。しかし前提条件として、そのまちで生活する人びとや 企業の理解や認識、 積極的な行動は不可欠となる。そのため、 さまざまなステー 490.

(19) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. クホルダーを対象とした認識・意識改革、そしてまちの目標を共有できる環境 整備が必要となる。これらの要素をより強固なものとするには、首長の活動に 対する積極的な姿勢やモチベーションの高さが有効に機能するといえる。首長 の積極的な活動は、まちが目標とする都市像を市民や企業に対して明確に示す ことが可能である。首長の積極的な姿勢は、行政・企業・市民の一体化を構築 し、ステークホルダー間での信頼関係も構築する。まちづくり活動のさらなる 円滑性が可能となる。 低炭素社会の形成とフェアトレードタウンの形成を統合したまちは、経済・ 社会成長や福祉問題といった社会が抱えるさまざまな課題解決と CO2 排出量 削減を統合的にとらえながら、国際協力にも資する低炭素社会とフェアトレー ドタウンの新しいまち形成のモデルとなる。たとえば、環境配慮型の技術やノ ウハウ支援は、低炭素社会としての新たなまちの形成要素となる。また、環境 配慮型技術を活用して生産された産品をフェアトレードタウンが積極的に調達 し販売することで、途上国をとりまく状況の理解・認識を高めるだけではな く、フェアトレードタウンにおける地域資源の環境配慮型活用の検討を可能と する。また、国際貢献や CSR 事業の一環として企業や事業者は、途上国が所 有する資源の有効活用や途上国が有するノウハウを最大限活用できる技術の提 供も可能となる。さらには、類似するような地域資源を有する途上国と姉妹都 市関係を結び、地域資源の有効活用法やノウハウ等の支援を行い、その地域で 生産された環境配慮型フェアトレード製品を積極的に購入するアプローチの実 践も可能となる。途上国側の環境に配慮したフェアトレードの実践は、途上国 の環境改善のみならず、フェアトレードタウンの環境的側面の促進をもたらす。 またフェアトレードタウンは、途上国と直接的なつながりを構築することで、 途上国側の労働環境や製品そのものに対する透明性が確保でき、より持続可能 なネットワークの形成を可能とする。統合的なまちの形成は、個々のまちとし ての新たな側面を生み出す機会となる。 本稿は、低炭素社会とフェアトレードタウンが統合された新たな「まち」づ 491.

(20) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). くりの可能性にむけ、双方の都市形成に必要となる要素の共通点を見てきた。 今後は、どのようなアプローチを展開させることでより多くのステークホル ダーの意識・認識を高め、率先した活動・行動を促すことができるのか、そし てすべてのステークホルダーの低炭素社会およびフェアトレードタウンの継続 的な形成に資するアプローチを検討していく。合わせてまちの形成において、 フェアトレードタウンがどの程度人びとの生活の豊かさに寄与しているのか、 そして低炭素社会がどの程度国際協力に貢献しうるのかを明確にしていく。さ らには、上述したまちの形成に必要な要素が双方のまち形成において実行可能 性を有しているのかという点も検討していく。実行可能性を有しない場合、実 行可能性とするための方策の検討も合わせて行っていく。フェアトレードタウ ンおよび低炭素社会を統合した新たなまちづくりの可能性を見出すとともに、 その実行可能性について引き続き課題としていきたい。. 献 辞 今年度で横浜国立大学を退官される池田龍彦教授には、修士課程入学から博 士課程修了までの約 6 年半、大変お世話になった。池田先生の講義では、歴史 的背景や現状、実践的な内容をさまざまな分野から学んだ。ある課題は 1 つの 原因ではなく、さまざまな原因によって引き起こされていること、そして包括 的な解決策を考える必要があることを学んだ。修士課程から開発学・国際協力 を学び始めた私にとっては、実に内容の濃いものであった。現在は環境の側面 から国際協力・支援に関わる研究を行うことができている。これも、先生の講 義において開発学や国際協力は分野横断的にさまざまな領域と関連しているこ とを学んだからであると感じている。研究者としてはまだまだであるが、今後 も先生に教えていただいたことを念頭に、研究者としての力をつけていきたい 所存である。 本稿は、池田龍彦教授の退官記念号への掲載となった。記念すべき号に掲載さ せていただけたことに感謝の意を表する。今後も池田先生のご健勝とますます 492.

(21) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. のご活躍を申し上げたい。. 参考文献 《報告書・論文》 飯田市.2009 年. 「飯田市環境モデル都市行動計画」 ,飯田市 大西隆.2010 年. 「低炭素社会に向けたまちづくり」 ,大西隆・小林光(編著) 『低炭素社会 これからのまちづくり』 ,学芸出版社,pp.9-10 帯広市.2009 年. 「帯広市環境モデル都市行動計画」 ,帯広市 北九州市.2006 年(a) . 「北九州市地球温暖化対策地域推進計画」 ,北九州市 北九州市.2006 年(b).「北九州市 IT 推進計画―IT の利活用による行政サービスの質の向 上と行政の簡素・効率化に向けて―」 (平成 18 年度版) ,北九州市 北九州市経済文化局観光課.2006 年(c).「北九州市観光振興プラン 新たな魅力を創出す る東アジアの国際観光都市を目指して ~ モノづくり、エコを活かした集客都市 ~」 ,北 九州市 北九州市.2006 年(d).「北九州市障害者支援計画」 ,北九州市 北九州市.2007 年 .「北九州市障害者支援計画実施計画」 ,北九州市 北九州市.2008 年(a) . 「元気発信!北九州」プラン(北九州市基本構想・基本計画) ,北九州市 北九州市.2008 年(b).「門司港レトロ観光まちづくりプラン」 ,北九州市 北九州市.2009 年. 「北九州市食育推進計画」 ,北九州市 北九州市教育委員会.2009 年 .「北九州市子どもの未来をひらく教育プラン」 ,北九州市 北九州市.2010 年(a).「社会資本総合整備計画(水の安全・安心基盤整備) 」 ,北九州市 北九州市.2010 年(b).「北九州市下水道ビジョン 水めぐる “ 住みよいまち ” をめざして」 , 北九州市 北九州市企画文化局文化スポーツ部文化振興課.2010 年 .「北九州市文化振興計画」 ,北九州 市 北九州市建設局道路維持課.2010 年 .「北九州市橋梁長寿命化修繕計画」 ,北九州市 北九州市.2011 年(a).「北九州市国際製作推進大綱 2011」 ,北九州市 北九州市.2011 年(b).「子ども読書プラン ~「読書好きな子ども日本一」をめざして ~」 , 北九州市 北九州市.2011 年(c).「社会資本総合整備計画(活力創出基盤整備) 」 ,北九州市 北九州市.2011 年(d).「グリーンアジア国際戦略総合特区」 ,北九州市,<http://www.city. kitakyushu.lg.jp/files/000108450.pdf>,ACCESS:2012/03/02 北九州市教育委員会.2011 年. 「北九州市生涯学習推進計画 ~ 市民が学び、 つどい、 輝くまち、 493.

(22) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). 北九州市をめざして ~」 ,北九州市 北九州市産業経済局農林水産部.2011 年 .「北九州市農林水産業振興計画」 ,北九州市 北九州市水道局.2011 年. 「北九州市水道事業中期(後期)経営計画(事業計画と財政計画) 」 (平成 23 年度 ~ 平成 27 年度) ,北九州市 北九州市. (発行年不明) 「北九州市地域福祉計画 北九州市の地域福祉 2011~2020」 ,北九州 市 北九州市. (発行年不明) 「第二次北九州市高齢者支援計画(介護保険事業計画及 び 老人福祉 計画) 」 (平成 21 年度 ~ 平成 23 年度) ,北九州市 北九州市. 「北九州市環境未来都市について」 ,北九州市,<http://www.city.kitakyushu.lg.jp/ files/000097774.pdf>,ACCESS:2012/03/02 北九州市.2012 年. 「北九州市環境未来都市計画」 ,北九州市 京都市.2009 年. 「京都市環境モデル都市行動計画」 ,京都市 小宮山宏.2010 年. 「低炭素社会」 ,幻冬舎新書,pp.155-164 堺市.2009 年. 「環境モデル都市行動計画」 ,堺市 下川町. (発行年不明) 「下川町環境モデル都市行動計画」 ,下川町 下川町.2012 年. 「下川町環境未来都市計画 人が輝く森林未来都市しもかわ」 ,下川町 白井信雄.2012 年. 「図解スマートシティ環境未来都市早わかり」 ,中経出版 武内和彦.2010 年. 「人間・自然関係の再構築と SATOYAMA イニシアティブ」 ,井村秀文 (編) 『資源としての生物多様性』 ,国際書院,pp.17-18 千代田区.2009 年. 「環境モデル都市行動計画」 ,千代田区 富山市.2009 年. 「豊田市環境モデル都市アクションプラン - 人と環境と技術が融合する環 境先進都市 -「ハイブリッド・シティとよたプラン」 」 ,豊田市 富山市.2012 年. 「富山市環境未来都市計画 コンパクトシティ戦略による富山型都市経営 の構築 ~ ソーシャル・キャピタルあふれる持続可能な付加価値創造都市を目指して ~」 , 富山市 豊田市.2009 年. 「豊田市環境モデル都市行動計画」 ,豊田市 水俣市.2009 年. 「水俣市環境モデル都市行動計画」 ,水俣市 宮古島市.2009 年. 「宮古島市環境モデル都市行動計画」 ,宮古島市 梼原町.2009 年. 「梼原町環境モデル都市行動計画」 ,梼原町 横浜市. (発行年不明) 「環境モデル都市提案書」 ,横浜市 横浜市.2012 年. 「横浜市環境都市 OPEN YOKOHAMA ひと・もの・ことがつながり、動 き、時代に先駆ける価値を見出す「みなと」 」 ,横浜市 環境未来都市構想ウェブサイト、2012/12/04 渡辺龍也.2012 年. 「フェアトレードタウン運動―その意義と課題―」 , 『現代法学第 21 号』 , 東京経済大学,pp.83-130 494.

(23) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. 渡耒絢.2012 年. 「フェアトレードの可能性 - 環境保全と生活向上に寄与する環境配慮型活 動を通じて -」 , 『横浜国際社会科学研究第 16 巻第 6 号,pp.87-101 《ウェブサイト・インタビュー・その他》 環境モデル都市構想〜未来へのまちづくりウェブサイト.<http://ecomodelprojecy.go.jp/>, ACCESS:2011/12/21, 2012/12/13 環 境 未 来 都 市 構 想 ウ ェ ブ サ イ ト.<http://futurecity.go.jp/>,ACCESS:2012/11/29, 2012/12/02 北九州市環境未来都市推進湿の東田倫子事業調整係長,村上恵美子エネルギー戦略担当係長, 城ノ下周平市からのインタビュー調査(実施日:2012 年 9 月 3 日,北九州市役所内にて) 熊本市議会ウェブサイト.<http://www.kumamoto-shigikai.jp/>,ACCESS:2012/06/27 Fairtade Town Website. <http://www.fairtradetowns.org/>, ACCESS:2012/12/02, 2012/12/09 フェア ト レード タ ウ ン ジャパ ン ウェブ サ イ ト.<http://www.fairtrade-town-japan.com/>, ACCESS:2012/12/02, 2012/12/07, 2012/12/09 渡耒絢・片山秀史.2012 年. 「低炭素街区群実現に向けた施策成立過程の変遷 - 北九州市を 事例として -」, 日本環境共生学会第 15 回学術大会(2012 年 9 月 2 日,北九州市立大学). 脚注 1)‌ (公財)地球環境戦略研究機関(IGES)プ ロ グ ラ ム マ ネ ジ メ ン ト オ フィス 特任研究員 (〒 240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口 2108-11。Email:[email protected]) 。本稿は あくまでも個人の見解を述べただけであり、IGES の見解を述べたものではない。 2)‌低炭素社会に関して、武内和彦(2010)は、持続可能な社会を形成する 1 要素として、循 環型社会と自然共生社会とならんで低炭素社会を挙げている。小宮山宏(2010)は、環 境に関する意識改革や啓発活動による人びとのライフスタイルの変革が結果として少子 高齢化問題や雇用問題等の解決に貢献すると述べている。大西隆(2010)は、政策や税 制度といった規制・経済手段、技術促進、ライフスタイルの改善といった複合的な側面 からの実践が低炭素社会を導くと述べている。詳細は、武内和彦.2010 年. 「人間・自然 関係の再構築と SATOYAMA イニシアティブ」 ,井村秀文(編) 『資源としての生物多様 性』 ,国際書院,pp.17-18;小宮山宏.2010 年. 「低炭素社会」 ,幻冬舎新書,pp.155-164; 大西隆.2010 年. 「低炭素社会に向けたまちづくり」 ,大西隆・小林光(編著) 『低炭素社 会これからのまちづくり』 ,学芸出版社,pp.9-10 の 3 者の書籍を参照のこと。 3)‌環境モデル都市に選定されているのは、 以下の 13 都市である (順不同) 。北九州市、 横浜市、 495.

(24) 横浜国際経済法学第 21 巻第 3 号(2013 年 3 月). 堺市、京都市、飯田市、帯広市、富山市、豊田市、下川町(北海道) 、梼原町(高知県) 、 水俣市、宮古島市、千代田区(環境モデル都市構想〜未来へのまちづくりウェブサイト. <http://ecomodelprojecy.go.jp/>,ACCESS:2012/12/13) 。 4)‌環境 モ デ ル 都市構想〜未来 へ の ま ち づ く り ウェブ サ イ ト.<http://ecomodelprojecy. go.jp/>,ACCESS:2012/12/13 5)‌環境未来都市構想ウェブサイト.<http://futurecity.go.jp/>,ACCESS:2012/12/02 6)‌ 「環境未来都市構想 と は」環境未来都市構想 ウェブ サ イ ト.<http://futurecity.rro.go.jp/ about/>,ACCESS:2012/12/04 7)‌4 都市は環境モデル都市の成功事例として、その取り組みのさらなる推進を目的に選出さ れた (白井信雄.2012 年. 「図解スマートシティ環境未来都市早わかり」 ,中経出版,p.85) 。 8)‌白井 前掲書,p86. 9)北九州市.2012 年. 「北九州市環境未来都市計画」 ,北九州市 10)‌横浜市.2012 年. 「横浜市環境都市 OPEN YOKOHAMA ひと・もの・ことがつながり、 動き、時代に先駆ける価値を見出す「みなと」 」 ,横浜市 11)‌富山市.2012 年. 「富山市環境未来都市計画 コンパクトシティ戦略による富山型都市 経営の構築 ~ ソーシャル・キャピタルあふれる持続可能な付加価値創造都市を目指して ~」 ,富山市 12)‌下川町.2012 年. 「下川町環境未来都市計画 人が輝く森林未来都市しもかわ」 ,下川町 13)‌ここで扱う北九州市の内容は、北九州市の政策、実行計画等の資料を参考に執筆した。 参照した資料は、参考文献を参照のこと。 14)‌4 つの地区とは以下の通りである。工場跡地の利用や工場技術のノウハウを生かした八 幡東田地区、産業振興や地域活性化、国際ビジネスの展開、住みやすいまちの基盤等多 面的な要素がまちなかに集約され、市民の定住化を促進させる小倉地区、持続可能な生 産と消費の資源循環型サイクルを備えたみどり豊かなまちづくり・人材育成・環境学習 の拠点を目指す響灘地区、産学連携や IT 技術の集積を活用し、国内外を対象とした高 度人材育成拠点を目指す学研都市地区である(渡耒絢・片山秀史.2012 年. 「低炭素街 区群実現に向けた施策成立過程の変遷 - 北九州市を事例として -」, 日本環境共生学会第 15 回学術大会(2012 年 9 月 2 日,北九州市立大学) 。 15)‌北九州市環境未来都市推進湿の東田倫子事業調整係長,村上恵美子エネルギー戦略担当 係長,城ノ下周平市からのインタビュー調査(実施日:2012 年 9 月 3 日,北九州市役所 内にて) 。 16)インタビュー,前掲. 496.

(25) 低炭素社会とフェアトレードタウンによる持続可能な「まち」の形成. 17)白井 前掲書,pp.90-94,pp.108-109. 18)‌渡耒絢.2012 年. 「フェアトレードの可能性 - 環境保全と生活向上に寄与する環境配慮 型活動を通じて -」 , 『横浜国際社会科学研究第 16 巻第 6 号,p88. 19)‌フェアトレードに従事する人数は、フェアトレード認証をうけた 827 の生産団体に関与 する数である。フェアトレード認証とは、生産者や労働者の経済社会の向上や地域の環 境保全に資するある一定基準(フェアトレード基準)を満たした生産プロセスの商品を 指す。認証商品の販売を通じ、不公平性や不平等、不安定の取引を是正し、生産地の持 続可能 な 開発 を 目指 す(Fairtrade International Website. <http://www.fairtrade.net/>, ACCESS:2012/12/13) 。 20)‌Fairtrade International Website. <http://www.fairtrade.net/facts_and_figures.html>, ACCESS:2012/12/13 21)‌2012 年 12 月時点で、フェアトレードタウン認定に向けた活動を行っている都市は以下 の 通 り で あ る。北海道札幌市、愛知県名古屋市、愛知県一宮市、栃木県宇都宮市、神 奈川県逗子市(フェアトレードタウンジャパンウェブサイト.<http://www.fairtradetown-japan.com/>,ACCESS: 2012/12/07) 。 22)Fairtade Town Website. <http://www.fairtradetowns.org/>, ACCESS:2012/12/09 23)‌渡辺龍也.2012 年. 「フェアトレードタウン運動―その意義と課題―」 , 『現代法学第 21 号』 ,東京経済大学,p95. 24)熊本市議会ウェブサイト.<http://www.kumamoto-shigikai.jp/>,ACCESS:2012/06/27 25)渡辺 前掲書,p115. 26)渡辺 前掲書,p87,111-112.. 497.

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参照

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