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巻頭言(立命館大学人文科学研究所紀要 119号)

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Academic year: 2021

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〈小特集〉「龍」のように奔出する〈新たなアジア〉と〈新たなツーリズム〉

巻頭言

〈小特集〉「龍」のように奔出する

〈新たなアジア〉と〈新たなツーリズム〉

Special Issue

: New Asia and

New Tourism gushing out like Dragons

現代において、地域や観光は、グローバリゼーションとローカライゼー ションが重層的にせめぎあう中で成立するようになっている。地域研究も、 観光研究も、今やそうしたすがたをとらえていかなくてはならず、これまで になく大きな刷新(innovation)がもとめられている。では、新たな地域研 究や観光研究とは、一体どのようなものであり得るのだろうか。 地域や観光は固定されたものでも所与のものでもなく、絶えず新たに構築 され続けているものであると言えよう。このことは〈アジア〉をキーワード とすることで、鮮明に浮かび上がるのではないだろうか。地域や観光を固定 的なものとして、実定化してとらえるのではなく、グローバリゼーションと ローカライゼーションが重層的にせめぎあう中でつねに変化にさらされて いる中でとらえていくこと―空をうねりながら飛ぶ「龍」のように、その かたちをつねに変え続けているアジアのコミュニティ(地域)や、アジアを めぐるツーリズムのありようは、そのことを可能とさせてくれる事例であ る。そこで本特集では、アジアを事例に新たに奔出する地域や観光のすがた を把捉しようと試みた。 まず安田論文「ヴァンクーヴァーにおける華人コミュニティと華人秘密結 社洪門民治党の現状」では、カナダのブリティッシュコロンビア州ヴァン クーヴァーの華人コミュニティに焦点を当てつつ考察を展開している。安田

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2 立命館大学人文科学研究所紀要(119号) 論文は、19 世紀から現代にかけてのカナダの華人社会の変遷を概観したうえ で、中国語資料と現地での聞き取りをもとにカナダにおける洪門の歴史と現 状を論じている。 次に藤巻論文「チャイナタウンはもはや チャイナタウン ではない! 外 国人労働者の街 だ!―クアラルンプルの〈ツーリズムスケープ〉 見」 では、マレーシアの経済社会が外国人労働者によって成り立っている現状 を、クアラルンプルの観光において最も人気のあるチャイナタウンの〈ツー リズムスケープ〉(tourismscape)を 、「遊歩者(フ ラヌール:flaneur)」的 目線を通して描き出している。 そして張論文「日本における中国人のコンテンツツーリズム―安倍晴明 に関する「聖地巡礼」を事例に」では、訪日中国人によるコンテンツツーリ ズムについて考察しようとしている。近年、中国人による訪日観光にあって は個人旅行者が増加している。こうした傾向のもと、アニメやゲームをはじ めとするメディアコンテンツに登場する日本の場所を訪れる中国人も、目立 ち始めている。本論文は、そうしたコンテンツツーリズムを行う訪日中国人 のすがたを描写している。 さらに神田論文「『Pokémon GO』が生じさせる移動と観光振興」では、2016 年に発表された『Pokémon GO』というゲームアプリが生み出した新たなる 移動と観光振興の関係性について考察を展開している。その際に、ナイアン ティックが最初に観光振興への同ゲームの活用を謳って取り組みを実施し た、東北地方太平洋沖地震による被災地域の宮城県石巻市における状況と、 自治体として最も早く同ゲームを活用した観光振興への取り組みを行った 鳥取砂丘について検討を行い、観光研究の新たな方向性を模索している。

最後に井澤論文「Tourism Development and Its Social Impacts in Bali, Indonesia, in the Post-Soeharto Era」では、ポストスハルト時代のインドネシ ア・バリを事例として、観光開発が社会的にどのようなインパクトを与えた のかを明らかにしようとする。バリはインドネシアにおいて最もポピュラー

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3 〈小特集〉「龍」のように奔出する〈新たなアジア〉と〈新たなツーリズム〉 な観光地であり、「神々の島」「最後の楽園」等とされている。しかしながら 観光開発が進められてきたことで、この地域に大きなインパクトがもたらさ れた。本論文では、そのことをつまびらかにする。 以上の論稿がひとつのきっかけとなって、地域研究、観光研究、そしてア ジア研究に関する、より活発で刺激的な議論が巻き起こってくれることを期 待したい。―多種多様な諸研究が、まさに「龍」のように奔出しながら。 2019年 2 月 立命館大学文学部教授・人文科学研究所所長 遠藤 英樹

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