序文

序文

著者

齋藤 雅典

雑誌名

複合生態フィールド教育研究センター報告

巻

27

発行年

2012-03

URL

http://hdl.handle.net/10097/00121502

序

文

平成22年度も押し迫り，年度末の会議や新年度への準備が進められていた3月11日， マグニチュード9.0という巨大地 震が東日本を襲った。本センターの教職員 ・学生に人的被害はなかったものの，女川フィーノレドセンター(複合水域生産シ ステム部)は壊滅的な被害を受けた。あらためて，去る3月11日に発生した東日本大震災で被災された方々にお見舞いを申 し上げるとともに，亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げる。 この震災は，女川フィーノレドセンターに壊滅的な被害をもたらし，震災直後の停電などによって川渡・雨宮を含むフィー ノレドセンターの教育研究に大きな影響を与えた。さらに，福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染は原発から150キ ロも離れている宮城県北部にも広がり，農場の生産システムは大きな影響を受け，きわめて困難な状況に至っている。 本報告は22年度事業報告であるので，震災後の20日間ほどの直接的な被害とその対応についてl章を設け，掲載するこ ととした。 23年度に入ってからの状況等については，次号 (23年度版)で詳細に報告したい。 福島原発の事故は，人々の科学技術の信頼性を著しく低下させた。さらに，政府の対応のまずさは，行政への信頼性も低 下させることになってしまった。「社会の中の科学技術」という言葉の重みを今ほど感じることはない。農学，特にフィー ノレドで実際に生物生産を基盤とした教育研究を進めた私たちは，基礎的な研究分野と異なり， ["社会の中の科学技術」を実 践してきたと自負している。しかしながら，本当に，私たちが考えているように，社会は私たちを認識しているだろうか? 私たちは，["聞かれたフィーノレドセンターJ として，公開講座や小中学校の総合教育等への協力など地域社会への貢献活 動を活発に行ってきた。こうした活動で，川渡と女川の両生産システム部が受け入れている児童 ・学生・市民の数は延べ約 900名に達している。教員が一般市民向けの講座や出前授業とする機会も増えてきている。科学技術に対する信頼が低下し てしまったこうした時代だからこそ，センターで行われている教育研究の内容，そしてその成果を積極的に一般市民に公開 し，そのことを通じて，私たちセンターへの支持基盤を確実なものとしていく必要があるだろう。 一般市民向け活動のみならず，大学本来の役劃である教育の面でも新たな展開が求められている。文部科学省は大学の附 属施設のより効果的な利用を図るために，農場を含むさまざまな附属施設の共同利用を進めるための「教育関係共同利用拠 点制度」を設けた。当センターは，複合生態フィーノレドとして他大学にはない広大なフィールドと優秀で充実したスタッフ を有しており，これらを他大学の学生・院生の教育に有効に活用できると考えているロ 22年度より共同利用委員会を設け， 共同利用を進める体制を整備し，新たな教育プログラムを実践してきた。その甲斐もあって， 23年4月，川渡フィールドセ ンター(複合陸域生産システム部)が教育関係共同利用拠点、に認定されたロ 本報告は，そのほとんどが震災以前の業績に関わるものである。これらが読者の何らかに参考になれば幸いである。また， 震災以降きわめて難しい問題が次から次へと起こっている状況であるが，センター教職員一丸となって困難に立ち向かって いきたい。 平成24年 3月 複合生態フィーノレド教育研究センター長

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藤

雅

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