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団地に住み続けることの意味と方法

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団地に住み続けることの意味と方法

著者

増永 理彦

雑誌名

生活科学論叢

40

ページ

71-79

発行年

2009-03-10

URL

http://doi.org/10.14946/00001644

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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団地に住み続けることの意味と方法

増 永 理 彦

1.継続居住を実現するために

(1)住み続けることの意味 この20年間ほど、大都市での公共賃貸住宅においては、建替えを主流にした団地再生が盛んであ る。老朽化し、陳腐化していく団地の再生は避けられない。しかし、これまでの日本における公共 賃貸住宅の団地再生は建替え一辺倒あるいは都市機構のように2007年末に発表された「建替えもや らず住宅をつぶし、更地にして民間事業者などに売却する」といった手荒な事業方針(注1)であ ることから、特に高齢者などの経済的弱者が住み続けることができない事態が全国的に拡がり、大 きな問題になりつつある。つまり、2つのサスティナビリティ(「居住の継続」と「居住空間の継承」) のうち、特に居住の継続が確保できていないという問題が拡大している。 ところで、住み慣れた団地を出て、別の場所に居を定めることも個人の自由である。 しかしながら、住み続けることにより自分の住まいでかけがえのない家族との安定した生活を送り、 また、形成されてきた団地や近隣地域におけるコミュニティを維持し発展することもできる。住み なれた住環境には愛着が湧き、いつくしみ、大事にしようという気持もわきあがってくる。将来、 振り返るときそれが思い出多い“ふるさと”にもなっていく。 昨今、かつて高度成長期以降に開発・整備された大都市の団地では急速に高齢化率が高まってい る。住み続けてきた現高齢者たちあるいはその子ども達の多くは、以下のような思いを抱えている のではなかろうか。 1)居住者の思い 若い頃、地方から出てきて、会社の寮や民間の木賃アパートに単身で入居した。やがて、高度経 済成長に伴い収入も増え結婚もでき、当時新たな都市住宅として脚光を浴びていた団地に高倍率を クリアしてやっと入居できた。特に都市機構・公社住宅は入居当初、家賃はべらぼうに高く“高嶺 の花”であったが、“憧れの団地住まい”ができ、将来の所得増加の見込みもあったので、なんとか やりくりして入居した。入居当初は、何かと不便であった生活関連施設(保育所・幼稚園・学校・ 商店など)やバス・電車など交通の便も次第に整備され、緑も豊かになった。居住者同士も親しく なり、自治活動も盛んになり、レベルの高い居住環境へと熟成していった。時間の経過とともに予

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想通り収入も増加してきたし、子どもも大きくなり就学、就職あるいは結婚などで団地から出て行 き、残されたのは高齢夫婦や高齢単身者となっている。 団地内では高齢者や単身や夫婦が増えると同時に、一時はあれだけたくさんいた子どもたちもい つの間にかいなくなってしまった。長い間、子ども二人の四人世帯では狭く・窮屈で何とかしなけ ればと思い続けてきた「2DK」住宅ではあったが、夫婦だけあるいは単身であれば住み続けられ る広さである。広さに不満はない。 また、周囲をみれば、入居以降、同じような年齢・世帯構成の居住者が多く、あるいは職業や所 得階層も似ていて、子ども・子育てを介しての近隣間の付き合いも多い。当時、地方の生活では、 両親、親戚あるいは地域の年寄りたちから伝授された縦方向からの“生活の知恵”が大いに役立っ たが、大都市の団地生活では、同世代・同階層間でのいわば横方向からの相互情報によってカバー されてきた。このような団地での近隣間の付き合いの中から得たものも大きく、その結果団地での コミュニティが形成されている。 今後の継続居住を考えると、現在の団地では近隣間の付き合いや団地コミュニティを維持しなが ら、ハード面では、誰でもが気軽に利用できる高齢者向け福祉施設の整備が望まれている。居住者 には、年金生活者が増え、医療・介護あるいは生活費用もかさんでいくことに生活上の不安が増す ことは避けられない。一方、住まいについては今のままでほぼ満足している。だから、建替えする ことによって、払えないような家賃の高額化はぜひ避けてほしいし、今の住宅については保全ある いはリフォーム程度で十分だと考えている。そして、これからも住み慣れたこの団地にずっと住み 続けたいと念願しているのだ。 2)団地での暮らし かつての団地では、若い世代が多く活気があった。 どこに行っても、ブランコ、砂場、鉄棒の遊具の「三種の神器」があり、子どもが嬉々として遊 びまわっていた。ベランダには「おしめ」が干され、ベビー服などの洗濯物が満艦飾のようにひら めいていた。そのような団地で生活し、成長し、団地を巣立った、子どもたちの思いはどんなもの だろう。 「団地っ子」たちは、計画的に創られた緑・公園・原っぱ・池あるいは遊具類の豊富な屋外空間 のなかで、同世代の多くの友だちとともに一日中遊びまわり、年々豊かになっていった居住環境と のふれあいのなかから多くのものを学んだ。保育所や幼稚園も整備され、新しい考え方で設計され た小・中学校の施設や教育方針の下で育った。彼らが成長して振り返るとき、団地生活のなかで獲 得したもの、触れ合ったものは間違いなく人生の糧になっているはずだ。いつの間にか「団地がふ るさと」として心の中に取り込まれていることに気づく。子ども時代に住み続けてきた団地には思 い出が数限りなく詰まっている。 このようなことは、今の団地の子どもたちにも、未来の子どもたちにとっても極めて大切な生活

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体験でもあり、自由に遊びまわれる団地の緑豊かな広々とした屋外環境も残しておくべきである。 高齢者あるいは子どもにとって団地での継続居住の意味をイメージとして例示的に述べてきた。 他の多くの居住者も建替えせずに今のままでいいから、住み続けたいと願っている。また、その創 られ・熟成した住環境及びコミュニティは、次の時代あるいは次の世代にも引き継いで行く価値が あるとも考えている。 つまり、老朽化した団地で生活している居住者の多くは、次の4点のいわば「居住資源」を大切 にして、将来にわたっての今の団地に住み続けることをイメージしているのである。 1)入居当初高かった家賃も相対的に安くなり、今の家賃がこのままならば、今後年金生活者とな っても何とか暮らしていける。 2)住戸は老朽化し、設備は陳腐化してきたが、修繕などリフォームを中心にリニューアルさえや ってもらえれば何とかしのげる。狭かった住戸も子どもが巣立っていった後は、今のままで充 分である。 3)団地の生活環境は年々良くなってきたし、立地もよく、公園・広場などの豊富になった緑など 環境資産などにも恵まれている。これらは生活になじんだ、得がたくかつ貴重な景観を形成し ている。 4)長年一緒に住み続けてきた近隣の友人・知人も多く、今後とも付き合いを続けていきたいし、 コミュニティは社会的財産でもある。 (2)継続居住の保障 1)法による保障――憲法と住生活基本法 日本国憲法第22条には、居住と移転の自由が定められている。また、第25条において、生存権的 居住権が保障されていると考えることができる。さらに、この場合の居住権とは住むことに関する 様々な内容を含んでおり、その重要なことの一つとして「住み続ける権利」も含んでいる。これら から憲法には、生存権の一つとして居住の継続性が保障されているといえよう。 また、2006年2月に制定された、住生活基本法は、住宅政策の推進にあたって、「低所得者、被災 者、高齢者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が 図られること」を定めている。これを受けて、同法は、さらに国及び地方公共団体が「住生活の安 定の確保及び向上の促進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定めている。 「居住の安定」という言葉によって「住み続ける権利」を認め、責任の所在も明確にしているのだ。 この基本法制定後は、国土交通省住宅局や「都市機構」の文書にも「居住の安定」という言葉が枕 詞のようによく使われるようになった。 つまり、憲法および住生活基本法において「住み続けること」は基本的権利であり、国及び自治

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体あるいは、都市機構や公社においても、それを促進させる義務がある、と解釈することができる。 そして、賃貸住宅に関しては、「借地借家法(1991年制定)」の第28条(旧借家法では第1条の2) によって、正当な事由がなければ賃貸人は賃貸借契約終了時の更新拒否あるいは解約の申し入れが できないことになっている。この正当事由(家主が借家契約を解約する場合、その借家に住まざる を得ないあるいは老朽化して大規模な修繕をしないことには住めないなどの正当な理由)について は、これまでの都市機構や公社の建替え事業において、その団地で住み続けたいという居住者の強 い要望に対して、賃貸人である都市機構や公社が賃貸借契約更新を拒否したことをめぐっての裁判 において主要な論点となった。 ただ、この正当事由に関する都市機構や公社の裁判事例では、事業主の建替え事業方針や意向に 沿った判決がほとんどであり、居住者側に居住の継続について多少なりとも有利な判決が出たのは 金町団地などであるが、非常に少ない。結果的には多くの団地居住者が継続居住を寸断される事態 になっている。 2)不充分な事業者の対応 以上のように、公共賃貸住宅団地居住者の継続居住は基本的な権利として、憲法を始め、法的に は保障されているとみることができる。 ところが、国や地方自治体の公的住宅政策を実施する責任を有すべき機関である自治体や事業の 当事者である都市機構・公社における建替え事業における施策システムには、その考え方が充分で はない。近年、国・自治体の市場原理・民間事業化政策の大波のなかで、公共賃貸住宅団地建替え 事業は、住み続けたいと思う居住者に厳しい事態を強いている(特に都市機構・公社)。 ところで、建替え事業においては戻り入居家賃の高額化が問題になる。公営住宅では、入居条件 に収入制限があり、家賃も低く抑えられているので建替え後の家賃の高額化も避けられ、家賃に関 してはあまり問題にならない。また、公営住宅法には「再入居」の規定もあり、戻り入居が保障さ れている(公営住宅法第40条)。 問題は都市機構や公社の賃貸住宅である。現在、両者の建替え事業では、戻り入居家賃の減額措 置制度はあるが、住み続けたいと願う居住者にとってはきわめて不十分な内容である。 また、居住者には高齢者など低所得階層も多く、戻り入居家賃の減額ができないのであれば、都 市機構・公社の団地内に公営住宅併設あるいは公営住宅として借り上げることにより、救うことも 出来る。ところが、これらの制度があるにもかかわらず、公営住宅供給側の自治体が主には財政問 題をあげて実施を渋る。結局は、ごく一部の自治体でしか実現しないことになる。 そこで、建替えせずに団地をそのままの状態で保全あるいはリニューアルをすることで家賃の高 額化を防ぐという考え方がクローズアップされることになる。「保全」あるいは「リニューアル」で あれば、継続居住の可能性が飛躍的に高まるのである。

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(3)居住者参加で継続居住を実現する 継続居住の保障のない建替え事業に対して、居住者はどのような対応をしてきたのであろうか。 公営住宅の場合は、上述のようなことから、建替え事業そのものについての反対の声が少なく、 建替えは比較的スムースである。公社住宅については、たとえば、賃貸住宅を比較的多く供給して いる大阪府住宅供給公社(府公社)でも一定の家賃減額はあるが、継続居住の保障については全く 不十分な対応である。千里ニュータウンにある府公社の「新千里西町団地」では、建替え事業に対 して居住者が立ち上がり、「建替えは不要であり、今までのように住み続けたい」と公社に訴えたが 願いが届かなかった。公社側は住宅の明け渡し訴訟を大阪地裁に起こし、居住者側は大阪高裁へ控 訴したが、高裁判決は地裁判決を支持し、現在、居住者側が最高裁へ上告した。最大論点は「正当 事由」であるが、建替え事業の公共性、建替えそのものの是非、家賃の高額化あるいは事業の進め 方の非民主性などをめぐって争われた。この事例も含めて、府公社賃貸住宅の建替え事業全体に居 住者が参加する道に目処は立っていない。 都市機構についても同様の現状ではある。しかしながら、都市機構によるほぼ20年間の建替え事 業の歴史の中で、わずかではあるが建替え反対の行動に立ち上がり、「建替え対策委員会」を設置す るなど、居住者・自治会の運動により、居住の継続が進んだ事例がある。家賃の減額をはじめとし て、公営住宅併設あるいは都市機構住宅の公営住宅としての借り上げ、建替え事業そのもの撤回、 既存住棟の一部存置、あるいは、高齢者・子育て関連福祉施設の設置の実現など、多様な継続居住 の条件づくりが精力的に行われている。つまり、都市機構住宅居住者・自治会は住みこなし慣れ親 しんだ団地における継続居住をなんとか実現しようと考え、行動し組織的運動へと発展させてきた のである。

2.団地再生2つの方法

(1)マスハウジングから再生へ 1)リニューアルか建替えか 本稿では、「リニューアル」と「建替え」を含めて「団地再生」とよんでいる。 新しい団地は保全で十分である。ところが人が住むようになって月日が経過すると、修繕・修 理・補修といった保全では、機能を全うできなくなり、再生がテーマとなる。つまりリニューアル か建替えかの選択が迫られる。 わが国での公共賃貸住宅においては、比較的新しい団地ではリニューアルも行われているが、建 設後35年経過した団地については、特段の理由がない限りすべて建替え手法で実施されてきた。実 際にはリニューアルでの再生が可能であるにもかかわらずにだ。また、その調査や検討が全くなさ れていないところにも大きな問題がある。この結果、過去建替えにより、多くの高齢者など経済的 弱者が戻り入居家賃を払えず住み慣れた団地を退去せざるを得なくなっているのであり、かつ厖大

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な住宅が解体・廃棄されてきている。 2)マスハウジングの時代 終戦直後の絶対的な住宅不足と高度経済成長期の大都市圏における住宅需要の2つのマクロな要 請により、1950∼1970年代においては、官、民を問わず住宅の大量供給が行われた。いわゆる「マ スハウジング」の時代である。 この時期には、とりわけ公営・都市機構・公社の「公共賃貸三本柱」の供給主体による公共賃貸 住宅、都市機構・公社・公庫(住宅金融公庫、現独立行政法人住宅金融支援機構)の公的分譲住宅 など大量の住宅が供給され、日本の住宅供給を質・量共にリードしたことが特徴であった。 これまで全国レベルでは、公共・民間供給含めると年間100万戸程度の新規住宅が供給された。日 本全体での住宅戸数ストックは現在5400万戸ほどであるから、数の上では、戦後約60年たった現在 では全ての住宅が建替わってしまったことになる。 ところが、1970年代以降、住宅水準つまり質あるいは地域的偏在の問題は残るものの、数量だけ では広域的に見れば住宅が行き渡る状態になった。そのうえ石油ショックを契機に地価や建築費の 高騰により新規住宅建設そのものも困難になった。このようなことから、1980年代になると住宅ス トックの再生がクローズアップされてきた。 公共賃貸住宅は、現在全国で320万戸ほどあり、住宅総数5400万戸からすると6%程度に過ぎない が、高度経済成長期に都市で働く勤労者や低所得階層住宅として大きな役割を果たしてきた。 公共賃貸住宅のなかでも、公営住宅が最低所得者向けであり、都市機構・公社は都市勤労者向け という供給対象の階層差はあった。しかし、同じような時期に、同じように団地を開発し、同じよ うな住宅タイプ(例:階段室型2DKが典型)を大量に供給してきたことでは共通している。 3)建替えへの切り替え 建替え事業がはじまったのは、公営住宅では1963年度(建替え住宅供給スタート)であり、1969 年には公営住宅法改正により事業の法制度が整った。以降増加し1993年度には年間供給戸数3万2 千戸とピーク迎えた。 都市機構住宅では賃貸住宅建設スタートの1955年から約30年経過した1986年度に初めて二つの団 地において着手された。 公社は各県あるいは政令指定都市ごとに設定されており把握しにくいが、賃貸住宅供給量の多い 大阪府や神奈川県の公社でみれば、1989年頃からはじまっている。 また、団地再生方法においては、公営(自治体)・都市機構・公社に共通して、一律的な建替え、 高家賃化、高層化、及び残地の民間事業者等への処分とほぼ似通った事業パターンとなっている。 (2)ヨーロッパの団地再生から学ぶ

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元来、多くの欧米諸国では、住まいを保全しながら長く使うという考えが一般的である。 第二次大戦後の住宅不足や経済成長期において大量に供給された公的賃貸住宅のストックについ ても、日本のようなスクラップアンドビルド型の建替え方式に拠らず、リニューアルによる団地再 生が主流である。 このような欧米での考え方では、自然環境との共生、および良質なストック形成や空間の継承な どを前提に、継続居住の保障が行き届いている。 近年、主にヨーロッパの団地再生に関しての紹介はよくなされている。ドイツ、オランダ、フラ ンス、イギリスそして北欧諸国である(参考文献1∼4、参照)。これらの国々の多くは第二次世界 大戦で国土や都市が破壊され、厖大な数の住宅不足に悩まされた。しかし、戦後復興の重要な柱に 住宅建設・供給が据えられ、大都市圏で大量の住宅供給が実施された。これらは日本の戦後の公共 貸住宅団地開発あるいはマスハウジングの時代状況とよく似通っていた。 ところが、その後の団地再生の考え方・方針については全く異なっている。 例えば、ドイツのライネフェルデ市の団地再生が有名であり、NHKテレビの「クローズアップ現 代」(2007年5月放映)でも紹介された。市長のイニシアティブのもとで、「都市再生は自治体政策 の中心である」(参考文献1.参照)との考えのもとで、産業・雇用を重視し、居住の質の向上・高水 準な自然の保全を考えながら、市民とワークショップを重ねていった。また、市の都市再生の重要 テーマの一つとして団地再生があった。ライネフェルデ団地はサスティナブル団地再生の典型事例 として名を馳せているが、具体的には、「減築」(住棟の一部あるいは全部を撤去)、「付加」(断熱材、 エレベーター、バルコニー、専用庭・専用玄関あるいは必要な生活関連施設など)、「改築」(部屋数 の拡大縮小、上下・左右の住戸をつないで一住戸化など)、「転用」(学校を高齢者福祉施設へ)など の多様なリニューアル手法を駆使している(参考文献1.参照)。 このような国々の団地再生の基本的な考え方にほぼ共通して、以下のような四つの特徴が指摘で きる。 【ヨーロッパの団地再生の特徴】 ①サスティナビリティに富んだ団地再生である ②再生対象団地の居住者あるいは市民が再生事業に参加するは当然のことである ③社会政策や経済政策など含めた包括的・総合的な計画である。 ④周辺地域を含めたまちづくり的視点がある このように、建替え一辺倒あるいは住宅つぶし残地処分方式に固執している日本とヨーロッパと では落差が大きい。上にあげたようなヨーロッパの団地再生の考え方をなぜ学ばないのだろうか。 戦後、国・地方自治体、都市機構あるいは公社はニュータウン、団地開発あるいは住宅供給に関 して、欧米から事業、計画・設計、施工・工法の諸手法を学び吸収し応用してきた。あるいはそれ らと協力しながら“公”のイニシアティブのもとで、民間サイドでは、ゼネコン(総合請負業)を

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はじめ、プレハブ住宅メーカー、住宅関連部品・設備のメーカーなどは独自の技術も開発してきた。 研究機関・大学などの研究者、設計事務所やコンサルタントなど専門家なども研究・実験を重ね支 援をしてきた。経済の高度成長に合わせて、いわば人・金・時間とも国を挙げて積極的に住宅地開 発・住宅建設につぎ込んできた歴史がある。 ところが近年の団地再生についてはどうであろうか。かつての新規住宅建設時と同じようにヨー ロッパ諸国から学ぶべきことが多いにもかかわらず、熱心なのは研究者、住宅建設の技術者、住宅 産業関係の専門家などの一部に留まっている。肝心の公共賃貸住宅の管理や団地再生関連を所管す る行政あるいは事業者は関心が極めて薄い。かつては、一番熱心で先進的・先取的でもあった都市 機構ですら、団地再生については建替え一辺倒あるいは残地処分路線を採っている。

3.リニューアルではだめなのか?

日本の公共賃貸住宅においては、建替え一辺倒の団地再生が進んできたわけであるが、手法をリ ニューアル中心に方向転換することにより、居住の継続が可能となる。と同時に、居住空間の継承 も実現することになり、環境共生上も重要な意味を持つ。つまり、リニューアルの手法を採用する ことにより2つのサスティナビリティが同時的に実現するのである。 リニューアル手法を採用することによって多少家賃が増額されたとしても、居住者からすればい わば「想定の範囲」であり、何とか家賃を払うことが可能である。そのことで住み続けることが可 能になる。また、一般的には建替えと異なり工事が比較的簡便なリニューアルにおいてはかかる工 事費用も少なく(特にリフォーム)、工事費見合いで家賃が上がる場合も高額化が避けられる。 過去数十年、特に都市機構・公社団地の居住者の多くは、入居当初の家賃負担が少々きつくとも 収入が少しずつでも上昇してきたから、何とかこれまで生活してきた。しかし、今後、ほとんどの 居住者は一層高齢化し収入は減っていく一方である。実際には、「公営住宅階層」が急増してきてい るのが実情だ。このような低所得者層にとって、工事費の高い建替え事業では、いくら戻り家賃で 減額措置が採用されたとしても支払いの負担は大きく、継続居住ができないケースが増える。多く の居住者にとってはリニューアルか保全によって工事費用を抑え、現状のまま住み続けることが最 善の道なのだ。 また、住宅や施設といった建築物を大事に使い続けることは、自然環境との共生面からも意義が ある。地球規模での環境問題に注目が集まる中で、環境を守り将来に承継していくためにも建設・ 住宅業界の果たすべき役割は大きいものがある。むしろ、公共賃貸住宅団地再生の事業主体は率先 して、一律建替えを止め、リニューアル中心の方針に大きく転換するべきである。 近年、総論的には住宅建設関連においてもサスティナビリティの重要性は認められだしている。 世界レベルでかつての「大量生産、大量消費、大量廃棄」の使い捨てから循環型の社会になりつつ

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ある。ただ、日本ではその歩みが遅く、公共賃貸住宅の団地再生の分野では、その切り替えが遅れ ているといわざるをえない。公共賃貸住宅供給体(都市機構、公社、自治体など)は、憲法や住生 活基本法あるいは借地借家法に定められた「居住の権利」あるいは「居住の安定」実現の立場から、 住み続けたいと希望する人にはそれを保障する責任と義務があるはずだ。 注:本稿は筆者の編著による『団地再生―公団住宅に住み続ける―』(クリエイツかもがわ、2008年 発行)の一部である。詳しくは、同書を参照されたい。 注1:ストック住宅の再生・再編方針、2007年12月(都市機構HP)

参 考 文 献

1.NPO団地再生研究会・舎人社計画研究所編著『団地再生まちづくり』水曜社、2006年 2.団地再生研究会編・著『団地再生のすすめーエコ団地をつくるオープンビルディング』マルモ 出版、2002年 3.松村秀一『団地再生―甦る欧米の集合住宅』彰国社、2001年 4.「わが家のミカタ、段違いな団地再生―欧州編」朝日新聞朝刊連載(2008年3月11、18、25日 5.大山眞人『団地が死んでいく』平凡社新書、2008年

参照

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