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超高真空対応温度可変型マニピュレータの作製と改良 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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&RQVWUXFWLRQDQG,PSURYHPHQWRID9DULDEOH7HPSHUDWXUH0DQLSXODWRU

6XLWDEOHIRU8+9&RQGLWLRQ

長 島 礼 人

$\DWR1$*$6+,0$

1. はじめに  反射高速電子回折(5+((')は,1030NH9 程度に加速した電子線を,試料表面とのなす角(視射 角)が数度以下のすれすれの方向から入射し,その回折パターンを観察する手法である1)。回折強度 の視射角依存性,いわゆるロッキング曲線に基づいて,表面の組成も含めた構造が決定できる。成 長中ではない,静的で非常に平坦な表面を対象にした構造解析からは,信頼性のある高い精度の結 果が多数報告されている2)。高速電子線の原子散乱断面積は;線と比較して4桁以上大きいことから, 5+((' のロッキング計測は原理的には,高時間分解測定が可能な,従って,成長中の表面の構造解 析に適した手法であると言える。だが,実際のデバイス生産で用いられるような,成長速度の速い動 的過程を5+(('ロッキング計測を通じて追跡した研究はこれまでなかった。それは,結晶成長に伴 い生起する表面の凹凸構造および組成の不均一の効果を動力学的回折強度計算の中に取り入れる方法 論が確立していないためである。  適用範囲の拡大を目指し,上記のような表面の不完全さの効果を取り入れた動力学的な回折強度計 算を行うには,表面構造の特徴的な距離(相関距離)と入射電子線の可干渉距離との間の大小関係に 応じた適切な場合分けがなされる必要がある。そのためには先ず,相関距離が良く制御された表面か らの信頼性ある実験データを多数,蓄積する必要がある。成長に伴い生ずる表面構造の相関距離を良 く制御するには,成長中の基板温度を再現性良く定量的に制御することが必須となる。また,計測し たデータの解析結果の妥当性を判断するには,同じ試料表面を5+(('以外の実験手法でも観察する ことが重要である。そのためには,試料表面の汚染を最小限に止めるため,大気に曝すことなく試料 を5+(('観察装置から他の観察装置へと搬送する必要がある。  上記の目的を適えるため筆者は,既存の超高真空5+((' 観察装置および走査トンネル顕微鏡 (670)に適合した温度可変型マニピュレータを自作した。本稿では自作装置の構造の概要を説明し, 次いで,評価試験の結果とそれに基づく改良の過程 を報告する。 2. 装置の概要と実験方法  作製したマニピュレータの性能評価は,1×10−10 7RUUの超高真空に到達可能な真空槽内で行った。但 し本実験では,準備時間短縮のため,真空槽のベー キング作業は省略した。そのため,評価試験自体は 10−6∼10−77RUUの高真空環境下で行った。  図1(D)に,作製したマニピュレータの先端部及 びこれに取付ける試料ホルダの模式図を示す。図中, 水色と橙色に着色した部品群AとBが試料ホルダで あり,無着色の部品群Cがマニピュレータ先端部で 図1 マニピュレータ先端部とこれに取付ける 試料ホルダの模式図。マニピュレータ先 端部を固定する液体窒素チューブの先端 部を灰色で表示してある。

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ある。試料ホルダを大気中から真空槽内へとその真空を破ることなく導入するための,予備排気機構 を備えた搬送システムも自作で用意した。マニピュレータ先端部の円筒カバーの溝に,試料ホルダB 部の3本のツメをねじ込むことで両者を固定するバヨネット式を採っている。以降,この円筒カバー をバヨネットホルダと称する。  試料ホルダのA部はそれ単体がユニソク社製670 用の試料ホルダである。5+((' 観察用と670 観察用の2つの真空槽の間で試料を大気に曝すことなく搬送可能とするため,5+((' 観察時の試料 ホルダはA部をアダプタのB部にねじ込む合体式の形態に設計した。  バヨネットホルダ以外の部品を組み上げた状態 のマニピュレータ先端部を図2に示す。先端部に は肉厚1PPの金属円盤が2枚,存在する。そのう ちの,図中に31 と記した円盤には試料加熱用の フィラメント(φ04の7D線)を固定している。も う1枚の円盤である32 は,上記のフィラメント からの導線と電流導入端子からの導線をつなげる ターミナルの機能を果たしている。温度測定用の K型熱電対(クロメル−アルメル)の熱起電力を 真空槽の外へ引き出す目的でもこのターミナルを利用している。今回の実験では,2組の熱電対を使 用した。そのうちの1つは部品31 の温度を測定するため,その先端をスポット溶接で図2に黄色い 円で示す箇所に固定してある。以降,この熱電対を常設熱電対と呼称する。もう1つの熱電対はその 先端を試料ホルダAの前面にスポット溶接で固定した。2番目の熱電対が溶接された状態では無論, 試料ホルダをマニピュレータから分離し,別の真空槽へと搬送する事はできない。以降,2番目の熱 電対を仮設熱電対と呼ぶ。  K型熱電対の場合,−100℃ 以下の温度域で温度と熱起電力の関係が線形から比較的大きく逸脱す る3)。そのため,市販の温度調節器やマルチメータが簡単な計算式に従って熱起電力を温度に換算し た値は−100℃ 以下では誤差の大きい事が分かった。本実験では,オメガ社から提供されている1℃ 刻みの熱起電力のデータ4)をもとに作図したグラフに,実際に計測した熱起電力の値を内挿すること で温度を求めた。  試料冷却の特性向上のため,マニピュレータ先端部は改修を2回 行った。改修前の段階1では,図1(E)に水色で示す部品のみが高 融点金属の0R 製で,その他の比較的フィラメントから離れた構成 部品は出費抑制のためステンレス(686316)製であった。最初の改 修で,試料ホルダの$部も含めたステンレス製の部品を0R製のもの に交換した(段階2)。2回目の改修では,試料ホルダからバヨネッ トホルダへの熱伝導を改善するため,両者の接触をそれ以前よりも 強固なものとした(段階3)。段階3のバヨネットホルダを図3に示 す。段階2のバヨネットホルダに3箇所,四角い穴を開け,そこに 図2 マニピュレータ先端部 図3 段階3のバヨネットホルダ 段階 状況 1 マニピュレータ先端部の主要部品のうち一部がステンレス製。 2 マニピュレータ先端部の主要部品を全て0R製にする。 3 試料ホルダとバヨネットホルダの間の接触強化。 表1 マニピュレータ先端部の各段階における状態

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&X 製の薄いブロックを配置し,このブロックが試料ホルダと接触する方式に改めた。バヨネットホ ルダの外周を囲む幅広の%H&X製のリングにネジ止めすることで,ブロックは所定の位置から脱落し ないようになっている。幅広のリングは板バネとしても機能している。これによって,試料ホルダの 円滑な着脱動作と確実な保持を両立させている。各段階におけるマニピュレータ先端部の状態を表1 にまとめる。  試料冷却は寒剤として沸点が−195℃ の液体窒素を利用する方式を採った。液体窒素の容器とマニ ピュレータのシャフトを兼ねた液体窒素チューブを図4に示す。図中,灰色に表示してある箇所は熱 伝導に優れた無酸素銅(&1020)製であり,その他はステンレス(686316686304)製である。窒素 を蓄える内径13PPのパイプの内容積は約85㎤であり,室温が14℃の場合,これに満たした液体窒 素が蒸発しきるまでの持続時間は約3時間であった。  マニピュレータ先端部(段階3)を液体窒素 チューブに取り付け,組み上がった状態のマニピュ レータを図5に示す。評価試験のため,仮設熱電 対が試料ホルダの前面にスポット溶接してある。 熱伝導性向上のため,液体窒素チューブ先端の銅 ブロックとバヨネットホルダの間を銅編組線で直 接つなげている。図中,緑色の矢印が銅編組線の 両端を指し示している。液体窒素による冷却時, 試料ホルダからの熱は主に銅編組線を経由して液 体窒素チューブへと伝導している(詳細は後述)。  真空槽に取り付けたマニピュレータの外観を図6に示す。試料を回転させるため,[\]の3 方向に直線移動可能な3軸ステージと液体窒素チューブの間には差動排気式の回転導入器(9*・ ='35)55+)を介在させている。回転導入器は3枚の&) フランジを有しており,図中に①と記した フランジが液体窒素チューブのフランジと接合する。①の真向かいのフランジ③は,3軸ステージの フランジに接合する。手動式の回転ハンドルを回すことで,フランジ②および③を固定したまま,① だけを003°よりも良い精度で角度変更が出来る。テフロン製のシール材が入れ子になっているため, 真空を保ったまま部品間の相対角度を変更できる。但し,テフロンによる気密は,特に回転時は,十 分でないため,シール箇所の外側を10−27RUU 以下に保つ必要がある。そのための排気ポートがフラ ンジ②である。10/の液体窒素容器(図6の左下)から窒素を汲み出す電動の汲み出し機とタイマー を組み合わせることで,液体窒素チューブに窒素を自動供給する。10/の液体窒素で試料を約13時間 冷却できる。  低温の実験では通常,抵抗値の温度依存性が小さいマンガニン線をヒーターの線材として使用する5) 図4 液体窒素チューブ 図5 組上り状態のマニピュレータ(真空槽内側)

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本実験では,−160℃から500℃の範囲で 試料温度を調整するため,ヒーターのフィ ラメントには高融点金属の7Dを使用した。 温度の低下に伴い金属の抵抗値は減少す る。そのため,フィラメントに流れる電流 値を一定に保つように直流電源を制御した 場合,温度の低下とともにフィラメントで 発生する単位時間当たりのジュール熱は低 下する。従って,液体窒素で冷却された状 態のマニピュレータのフィラメントに一定 値の電流を印加した場合,最終的にフィラ メントが(ひいては試料が)到達する定常 温度は,フィラメントが何℃ の時点でこ れへの通電を開始したのかに依存してしま う。これを回避するため,電力コントロー ラを自作し,フィラメントでの消費電力が 一定となるように直流安定化電源を外部制 御する方法をとった。電力コントローラの 詳細は末尾の附録に記す。 3. 結果と考察 3−1.最低温度および到達所要時間  段階1,2および3のマニピュレータの 冷却特性を図7,8および9にそれぞれ示 す。空の液体窒素チューブに窒素を充填したときを時刻の原点としている。グラフの温度曲線に現れ るスパイクは,チューブに液体窒素を補充したときに発生している。これは,液体窒素の沸騰(バブ リング)による振動が摩擦熱を生じるためである。  本実験で使用した真空槽はゲージポートにヌードイオンゲージを取りつけているが,その真空ゲー ジのフィラメントからの光が試料を直接は照射しない配置になっている。図7から分かる様に,真空 ゲージのフィラメントからの間接光による輻射熱が冷却中の試料の到達温度に与える影響は無視でき る程度である。  常設熱電対で温度測定している箇所(部品31)は仮設熱電対で測定している試料ホルダ前面より も液体窒素チューブに近い場所にある。それにも拘らず,段階1のマニピュレータでは,部品31 は 試料ホルダと比較して10℃高い温度までしか下がらなかった。これは,0Rと比較してステンレスの 熱伝導率が110 以下であることに起因している3)。即 ち,部品31の熱を液体窒素チューブに伝える主要な経 路が,図1(E)に示す無着色のステンレス製部品群を経 由するものではなく,バヨネットホルダと銅編組線(図 5参照)を経由する方となっていることが原因であっ た。上記のステンレス製部品を0R製のものに交換した 結果,部品31は試料ホルダと比較してより低い温度に 到達するようになった(図8)。併せて,冷却開始から 図6 マニピュレータの外観図 段階 到達温度(℃) 所要時間 (K) 部品31 試料ホルダ 1 −148 −158 56 2 −179 −159 63 3D −179 −165 41 3E −176 −165 36 表2 到達温度と所要時間

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部品31が最低温度に到達するまでの所要時間も改修前の2時間超から約1時間へと短縮された。  表2に各段階のマニピュレータでの部品31 と試料ホルダの到達温度,および試料ホルダ冷却の所 要時間をまとめる。ここでは,冷却開始から最低温度の2℃手前まで温度が下がるのに要した時間を 「所要時間」としている。表2から分かるように,部品31 の場合とは異なり試料ホルダに関しては, ステンレス製の部品を0R製のものに交換した事が冷却特性の改善に結びついていない。この結果か ら次のことが読み取れる;ステンレス製の部品を全て0R製の部品で置き換えた段階2(および段階 3)のマニピュレータにおいてですら,試料ホルダからの熱を液体窒素チューブへと伝える主な経路 は液体窒素チューブ先端のオネジ経由のものではなく,銅編組線経由の方である。  最初の改修を経ても解決できていない最大の問題点は,試料を最低温度にまで冷却するのに約6時 間も要していることであった。これを改善すべく2度目の改修では,バヨネットホルダが試料ホルダ をより確実に保持する構造に改良した(図3参照)。段階3のマニピュレータに対して,冷却試験を2 回行った。表2では,1回目と2回目の試験時のマニピュレータを指して 3D および 3E とそれぞ れ称している。2度目の改修の結果,試料冷却の所要時間をそれ以前の23以下に短縮できた。  段階3Dと比較して3Eでは冷却の所要時間が短くなっている。実験データに基づく論考は次節で後 述するが,3Dと比較して3Eの方が試料ホルダとバヨネットホルダ間の熱伝導特性が良好になってお 図7 段階1のマニピュレータ先端部の冷却特性 図8 段階2のマニピュレータ先端部の冷却特性

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り,これが冷却所要時間の短縮に結びついている。 3−2.温度調節(室温以下)  段階3のマニピュレータに対して,液体窒素で冷却しつつ図2に示すフィラメントで加熱すること で,到達最低温度から室温までの範囲内で,所望の温度に保持する試験を行った。フィラメントで発 生する単位時間当たりのジュール熱(ヒーターの消費電力)を一定値に保持したときの,温度の推移 の一例を図10に示す。こうしたグラフから読み取った到達温度とヒーターの消費電力の関係を図11に まとめる。黒色と赤色の記号が部品31 と試料ホルダの温度をそれぞれ表している。四角と菱形の記 号がそれぞれ,段階3Dと3Eのマニピュレータでの実験データを表している。  部品31 の温度については,2回の実験から得られたデータどうしの間に良好な再現性が認められ る。一方,試料ホルダの温度に関しては,2回の実験結果には系統的な不一致がある。段階3D と比 較して段階3E のマニピュレータでは,試料ホルダを所望の温度にするため,より大きなジュール熱 図9 段階 3a のマニピュレータ先端部の冷却特性 図10 液体窒素で冷却しつつ,ヒーターでの消費電力を一定に保った場合の温度変化

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を加える必要があった。換言すれば,3E ではヒーターから試料ホルダに加えられた熱がより効率的 に周囲へと伝導して(逃げて)いた。段階3D での試験終了後,一旦マニピュレータ全体を真空槽か ら抜き取り,熱電対その他に異常は無いか目視確認した。そのような作業を行う過程で与えた振動が, 試料ホルダとバヨネットホルダ間の熱伝導特性を若干向上させたのだと推測している。 3−3.温度調節(室温以上)  ヒーター加熱のみ行い試料を室温以上に加熱した場合の,フィラメントでの消費電力と到達温度の 関係を図12にまとめる。液体窒素による冷却とヒーター加熱を同時に行った場合とは対照的に,段階 3Dと3Eのデータは試料ホルダでの温度に関して良い再現性を示した(図には3Eのデータのみ示して ある)。前節との対照的な結果から次の事が読み取れる;室温以上に加熱されたとき,試料ホルダか ら熱を逃す機構として輻射が大きな役割を果たすようになる。その結果,試料ホルダとバヨネットホ ルダ間の伝導効率が若干変動したとしても,試料ホルダの到達温度は大きく変動しない。 図11 ヒーターでの消費電力と到達温度の関係(液体窒素による冷却を同時に行っている)。黒色と 赤色の記号がそれぞれ,部品P1と試料ホルダの温度を表している。 図12 ヒーターでの消費電力と到達温度の関係(液体窒素による同時冷却は行っていない)

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3−4.今後の課題  段階3のマニピュレータが解決できていない問題点を列挙すると以下のようになる。(1)寒剤の液 体窒素の沸点が195℃ であるのに対して,試料ホルダの最低温度は165℃ に止まっており,両者の 間には30℃の隔たりがある。(2)冷却開始から最低温度に到達するのに要する時間が,部品31の箇 所では15時間程度であるのに対して,試料ホルダでは約4時間を要している。(3)室温以下の温度を 得るため液体窒素による冷却とヒーター加熱を同時に行う場合,試料ホルダとバヨネットホルダ間の 伝導効率の変化が,試料ホルダの到達温度のヒーター消費電力への依存性を大きく変更してしまう。  上記の問題点(2)(3)を抱えたままの状態では,常設熱電対が計測する部品31の温度を指標にして, 試料温度を定量的に,かつ,再現性良く制御する事は出来ない。従って,試料ホルダ前面にスポット 溶接した仮設のはずの熱電対を撤去できない。これは,試料交換の度に試料と真空槽を大気に曝さな ければならないことを意味しており,第2章で述べた装置全体の設計思想「試料を大気に曝さず,真 空槽の真空も破ることなく,試料を2つの装置間で行き来させる」の実現を阻害するものである。  第2章で説明したように段階3のマニピュレータでは,バヨネットホルダの外周を取り囲む幅広の リング状の板バネにネジ止めした3個のブロックが,バネの力で試料ホルダを側面から押さえつける 方式になっている。バヨネットホルダの側面に開けられた穴を通して,3個のブロックはその一部を 外周から内周へと突き出している(図3参照)。試料ホルダの円滑な着脱を実現するため,3個のブ ロックとリング状の板バネはバヨネットホルダとの 接触をあまり強固なものにはなし得ない。3−1節 で考察したように,試料ホルダからの熱は主に銅編 組線経由で液体窒素チューブに伝導している。従っ て段階3のマニピュレータでは,試料ホルダからの 熱が伝導する主な経路は,ブロック→板バネ→バ ヨネットホルダ→銅編組線であると考えられる。  上記の問題(1)−(3)を改善するため,以下の 2つの方策を今後,実施する予定である。(L)銅編 組線の一端を図5に示すようなバヨネットホルダ側 面中央に固定するのではなく,図3に示すネジでブ ロックにとも締めするように改める。これによって, ボトルネックの無い経路で熱を液体窒素チューブへ と伝導させる。(ⅱ)銅編組線を1本から2本に増やす。図13に示すような無酸素銅製の部品を液体 窒素チューブにネジ止めし,これに2本目の銅編組線の一端を固定し,もう一端は(L)に記す要領 でブロックにとも締めする。 4. まとめ  超高真空の環境下で,液体窒素の沸点近傍から数百 ℃ の温度範囲に試料(基板)を保持した状態 で結晶成長を行い,その試料表面を5+(('で実時間観察する。成長後の試料を大気に曝すことなく 別の真空槽へと搬送し,試料表面を670観察する。―以上の目的を適えるため,温度可変型マニピュ レータとそれに適合した搬送システムを自作した。2度の改修を経て上記マニピュレータは現状で, 試料を−165℃ まで冷却可能であり,その所要時間は約4時間である。問題点を列挙・考察し,今後 着手する改善のための具体的な方策を記した。 図13 (a)銅編組線増設のための追加部品。     (b)液体窒素チューブへの取り付け位置。

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附録 電力コントローラの自作と運用  市販の直流安定化電源の多くは,電圧一定(&9)モードと電流一定(&&)モードの2通りの出力制 御の機能を備えている。温度の低下に伴い,金属の電気抵抗は値が小さくなる。そのため第2章で述 べたように,フィラメントへの出力を&&ないし&9モードで制御した場合,到達温度は7D線のフィ ラメントが何℃の時点で電流を流し始めたかに依存する。このような履歴依存性(ヒステリシス)は, 直流電源を電力一定モードで制御することにより解消される。但し,電力一定モードを備えた電源は 「電子負荷装置」と呼ばれる製品カテゴリーに属 し,「直流安定化電源」と比較して高価であり且 つ,選択肢も少ない。直流安定化電源の大多数 の機種では,0109 程度の信号を入力すること で,その出力電圧または出力電流を外部制御可 能である。フィラメントでの消費電力を一定値 に保つように直流安定化電源を外部制御するた め自作した回路(以後,電力コントローラと呼ぶ) について本附録で説明する。  図14に電力コントローラの回路図を示す。フィ ラメントに,$[$]の電流が流れているときに差 分アンプ,1$114の出力,9が,$[9]となる ように,1番と8番端子間につながれたポテン ショメータの抵抗値を設定する。,$ のとき正 しく,9 となるように,23$177の出力電圧で 図14 電力コントローラの回路 図15 電力コントローラの完成図

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オフセット補正する。乗算アンプ$'633 の12番端子にフィラメ ント両端の電位を印加し,34番端子にそれぞれ,1$114の出力と 基準電位(アース)を入力することで,乗算アンプの7番端子には フィラメントでの消費電力(単位は:)の110の値の電圧(単位は 9)が出力される。単電源23アンプ/0358 の非反転入力端子と反 転入力端子に,消費電力の設定値と実際の消費電力のそれぞれ110 の値を入力する。/0358の出力を直流安定化電源の外部制御信号入 力端子に印加する。これによって,フィラメントでの消費電力が一 定となるように直流安定化電源の出力電流を制御する。  図15に電力コントローラの実装の様子を示す。23 アンプ/0358 の反転入力端子の電位をフロントパネルの「消費電力モニタ」と名 付けた%1& 端子に引き出している。その右隣にある小穴からのぞ いているポテンショメータのダイアルを時計ドライバで回転するこ とで,フィラメントでの消費電力を設定する。前面パネルの左端にあるトグルスイッチで,/0358 の非反転入力端子に抵抗分割して入力する信号源を切り替える。2つの選択肢のうちの1つは,+ 109に固定された内部信号であり,他の1つは外部の汎用温度調節器からの制御信号(0−109)である。 直流安定化電源を電力一定モードで制御するのであれば,図15に示す「内部109」を選択する。  汎用の温度調節器(パナソニック・.77)を追加することで,直流安定化電源を試料温度が一定と なるように制御可能とした。そのときの構成器機間の連関を図16に示す。温度の情報(熱電対の熱起 電力)を温度調節器に入力すると,予め設定した値に試料温度を保つように,3,' 制御された電流信 号(4−20P$)が温度調節器から出力される。この電流信号を0−109の電圧信号に変換するアンプ も用意した。前面パネルのトグルスイッチを「温調器の出力利用」側に倒した状態の電力コントロー ラに,電流電圧変換後の制御信号を入力する.電力コントローラの出力は直流安定化電源の外部制 御信号入力端子に印加する。このように構成す ることで,フィラメントに流れる電流値ではな く,フィラメントでの消費電力を試料温度が一 定となるように3,' 制御することになる。この 場合,電力コントローラ前面のポテンショメー タはフィラメントでの消費電力の上限値を定め る。  3,' 制御のための構成機器を図17に示す(直 流安定化電源は除く)。構成機器は横一列に',1 レール上に固定されている。左から順に,① 温 度調節器,②電流電圧変換アンプ,③±159電 源,④ 電力コントローラ である。±159電源 は電力コントローラと電流電圧変換アンプの両 方に電力を供給している。 引用文献 1)例えば,$,FKLPL\DDQG3,&KRHQ5HIOHFWLRQ+LJK(QHUJ\(OHFWURQ'LIIUDFWLRQ(&DPEULGJH8QLYHUVLW\3UHVV 2004). 図16 試料温度一定モードで 制御する場合の構成機 器間の連関 図17 市販の直流安定化電源を試料温度一定モー ドにPID制御するための機器。

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2)例えば,$2KWDNH6XUIDFH6FLHQFH5HSRUWV63(2008)295±327. 3)例えば,国立天文台編著:「理科年表平成24年」丸善出版(2011).

4)オメガ社から提供のデータシートKWWSZZZRPHJDFRPWHPSHUDWXUH=SGI]204206SGI.

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