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障がい者・高齢者と築く社会参加支援:2.視覚障がい者の聴覚空間認知

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Academic year: 2021

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(1)特集 障がい者・高齢者と築く社会参加支援 視覚障がい. 当事者理解. 基応 専般. 視覚障がい者の聴覚空間認知. 2. 関 喜一(産業技術総合研究所). 視覚障がいと音  視覚障がい者にとって,音情報を利用して周囲の 状況を認知すること(以下 聴覚空間認知 という) は歩行・生活を行う上で不可欠である.聴覚空間認 知は,大きく 音源定位 と 障害物知覚 に分類 できる.視覚障害教育・リハビリテーションにおい て,聴覚空間認知を獲得する教育・訓練がとても重 要であることは言うまでもない.  音源定位のメカニズムは音響学の分野では一般的. 図 -1 障害物知覚の様子.物体による音の変化を手がかりに,物 体の存在を知覚する. に知られている事項なので説明を省略し,本稿では 視覚障がい者の生活に必要な 障害物知覚 のメカ. 障害物知覚のメカニズム. ニズムと実際について概説し,その教育・訓練の現 状と今後の展望について述べたい..   障害物知覚 は, 非発音体(以下単に 物体 と表記)の存在を聴覚によって知覚し定位する能力. 歩行訓練と聴覚環境認知. と定義づけることができる.物体は,たとえ自分で は音を発しなくても,音場の中に存在すれば,音の.  視覚障がい者の歩行は, 環境認知 と 歩行運. 伝わり方を変化させる(以下これを 音場の変化. 動 の 2 つの側面からなるものであり,英語では. と呼ぶ).この音場の変化を聴覚によって捕えるこ. Orientation & Mobility(以下 O&M) と呼ばれて. とにより物体を検出する能力が障害物知覚である. いる.視覚障がい者の歩行訓練は,第 2 次世界大戦. (図 -1).. 後のアメリカで,失明退役軍人の歩行能力獲得を目.  障害物知覚は,手がかりとなる音場によって,環. 的として訓練方法が体系化されたのが始まりである.. 境音を用いる場合と自発音(足音や白杖の音など). そしてその後さまざまな発展を遂げて今日に至って. を用いる場合の 2 種類に分類できる(図 -2).. いる 1 ..  環境音を用いる障害物知覚の物理的要因は,物体.  O&M のすべての方法に共通する基礎的技能の. に対し聴取者と同側から到来する環境音の反射,お. 1 つは,残存感覚を駆使して環境を認知することで. よび反対側から到来する環境音の遮音(透過・回折. ある.その中で,聴覚は空間認知を行う重要な役割. 損失)である.心理的要因は,(1)遮音による音像. を担っている.. の消失 (2)反射音像の消失 (3)音質の変化 . ). の 3 つに大きく分けられる. (1)遮音による音像の消失  物体に対し聴取者と反対側から到来する環境音は,. 情報処理 Vol.56 No.6 June 2015. 535.

(2) 特集 障がい者・高齢者と築く社会参加支援. 聴覚空間認知の教育・訓練  視覚障がい者にとって聴覚空間認知がとても重要 であることが指摘されているのにもかかわらず,視 覚障害教育・リハビリテーションにおける聴覚訓練 は,現在のところ 科学的 , 体系的 といえる方 法論はなく,現場の 経験的 訓練手法に依存して 1 いるところが大きい .このことを踏まえて,最新 ). の音響技術や聴覚科学を基に,科学的・体系的な訓 練方法が提案されつつある. 2 3  近年,大内・岩谷ら (図 -3),関ら (図 -4) ). ). などによって,音響技術を用いて聴覚空間認知を獲 得する教育・訓練を行うシステムが開発され,実用 化されている.  このシステムの原理は,ヒトの頭部や耳介による 音響特性(頭部伝達関数)をディジタル信号処理で 図 -2 障害物知覚の種類.(a)環境音の反射や遮音を用いる場合 (上)と,(b)自発音の反射を用いる場合(下)がある. 再現することにより,ステレオヘッドホンを通じて. 3 次元的に音像を再現する技術が用いられている.こ れにより,音源定位のみならず,前述の障害物知覚 物体が接近するに従い回折による損失が増加するの. のメカニズムを分かりやすく強調して再現し,聴覚. で,音の大きさが小さくなり音像も徐々に消失する.. 空間認知の初心者に最適な学習環境を提供している.. これにより物体の存在を知ることができる..  この訓練システムを用いた訓練により,音源定位. (2)反射音像の消失. 536. の獲得や歩行訓練時のストレスやベアリングの軽減 2),3). ..  物体の距離が近くなると,反射音の遅延時間が小. に効果があることが報告されている. さくなり,反射音像が消失する.これにより,物体.  このうち,関ら. の存在,およびその距離を知ることができる.なお. 教育・リハビリテーションの現場で導入されること. 音像の消失に伴い, 圧迫感 を反射音源方向の顔. を考慮し,特別な機器を用いず,汎用の Windows. 表面に生じることがある.. PC,ステレオヘッドホン,量産ゲームコントロー. (3)音質の変化. ラなど,誰でも簡単に入手可能な機器のみを用いて.  物体からの反射音が干渉して,音質が変化する.. 構成されている.訓練システムのソフトウェアは以. ただしこの変化は,環境音の周波数帯域が狭いと生. 下の Web サイトから無償で視覚障害関係者に提供. (2)に比べると実環 じにくくなるため,上記(1). されている.. 境中での聴取は難しい場合がある.. http://staff.aist.go.jp/yoshikazu-seki/AOTS/.  自発音を用いる障害物知覚の物理的要因は,自発. WR-AOTS/index-j.html. 音の反射である.物体反射面から離れている場合に.  2013 年 4 月に視覚障害関係者への提供を開始し,. は,反射音は直接音と分離した音像として知覚され. 2015 年 3 月までに盲学校など約 70 件(海外含む). るが,距離が短い場合には,反射音像は消失する.. に配布済みである.また,視覚障がい者の歩行訓練. この音像の消失が,物体が近距離に存在することを. 指導員の養成課程でも本システムを使用した教育を. 知る手がかりとなる.. 行っている.. 情報処理 Vol.56 No.6 June 2015. 3). の訓練システムは,視覚障害.

(3) 視覚障がい者の聴覚空間認知. 訓練環境を自由に設計. 2. 訓練環境を分かりやすく再現して訓練 仮想環境なので安全!. 広範囲測位技術 訓練環境の編集. 頭部位置計測. 訓練環境の再現. 3次元音響処理 SifASoTM. ※XMLで表現. 指導員. ※聴覚空間認知 のメカニズム強調. 広範囲聴覚空間認知訓練システム ソフトウエアWR‐AOTS TM. 図 -3 視覚障がい者用聴覚訓練ゲーム(東北大学電気通信研究所 他).  今後の展望として,さらなる技術革新により,さ らに高度な音響技術や情報通信技術を駆使した低コ ストの訓練システムの実現が望まれる.これによ り,視覚障がい者の社会参加のさらなる促進が期待 できる. 参考文献 1) Wiener, W. R., Welsh, R. L. and Blasch, B. B. : Foundations of. Orientation and Mobility, Third Edition, AFB Press, New York (2010).. ヘッドホン. 訓練生. 図 -4 視覚障がい者用聴覚空間認知訓練システム(産業技術総合 研究所 他). 2) 大内 誠,岩谷幸雄,鈴木陽一,棟方哲弥:汎用聴覚ディス. プレイ用ソフトウェアエンジンの開発と音空間知覚訓練シス テムへの応用,日本音響学会誌,62, pp.224-232(2006).. 3)Seki, Y. and Sato, T. : A Training System of Orientation and Mobility for Blind People using Acoustic Virtual Reality, IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering, 19 (1), pp.95-104(2011). (2015 年 1 月 9 日受付). 関 喜一. [email protected].  1994 年北海道大学大学院工学研究科生体工学専攻博士後期課程 修了.工学博士.現在,産業技術総合研究所主任研究員.. 情報処理 Vol.56 No.6 June 2015. 537.

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(※1) 「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会報告書」 (平成 29(2017)年 12 月 15 日)参照。.. (※2)

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