新しい大学保健体育の構想

新 しい大学保健体 育の構 想

小 林

勝

法

A New Design for Health

and Physical

Education

in the University

Katsunori

Kobayashi

The revision of "The Standards for Establishing

Universities" gives each

universi-ty greater latitude to develop its own curriculum.

Preparing

for a curriculum

re-formation in Bunkyo University, this study reviews the purpose and the roles of

Uni-versity Health and Physical Education and proposes a new plan for Bunkyo Universi

ty, Shonan campus.

The purpose is

(1) to make students aquire knowledge of the human body and its movement,

(2) to foster students' academic spirit,

(3) to educate intellectually, morally, emotionally, and physically through human

movement,

(4) to develop students' human nature

The roles are

(1) Health and Physical Education in the curriculum,

(2) Support for extracurricular

sports activities,

(3) Health Care for the whole campus,

(4) Health and Sports Service Programs for students, faculties and the

hood.

Factors that have been preventing University Health and Physical Education from

accomplishing its purpose are discussed in extracts from some critical reports on it

up to the present, taken from the National University Council's Report on the Survey

by Questionaire on General Education, 1986, and discussions of the University Council,

Japanese Ministry of Education and Culture. It pointed out pitfalls in the ongoing

University Education Reformation.

Mr. Kobayashi's tentative plan for Health and Physical Education in Bunkyo

Uni-versity, Shonan campus, is characterized

by

(1) changing the name of Health and Physical Education to Sport and Health

ence,

(2) setting up a curriculum consisting of lectures, seminars and exercises,

(3) creating a 4-year consistent curriculum.

Activities to improve Health and Physical Education in Bunkyo University, Shonan

campus, are as follows

(1) Student Physical Activities Research,

(2) Sport Resource Research,

(3) Instructional Development,

(4) Student Evaluation,

(5) Curriculum Development.

目次 工.理 念 の 実 現 を阻 む要 因 II.新 し い大 学 で の 保 健 体 育 の 意 義 と役 割 皿.新 しい大 学 保 健 体 育 の構 想 IV.改 革 へ む け て の 方 策 は じめ に 自 ら の行 為 を よ り良 い もの へ と改 善 す る た め に は,自 らな し え た 行 為 の 評 価(See)が 欠 か せ な い 。 そ し て,そ の 結 果 を フ ィ ー ド バ ック して,次 の 計 画(Plan)を 立 案 また は 修 正 し,実 行(Do)す る こ と に よ っ て,初 め て改 善 が 可 能 と な る 。 こ の計 画(Plan)→ 実 行(Do)→ 評 価(See)の 作 業 連 環 は,行 為 の様 々 な 水 準 ・段 階 で 途 切 れ る こ とな く行 わ れ る必 要 が あ る。 大 学 で 保 健 体 育 を担 当 す る教 員 と して,筆 者 は,自 らの授 業,保 健 体 育 科 目の カ リキ ュ ラ ム,担 当 教 員 組 織 とそ の 運 営,運 動 施 設 と そ の利 用 な ど につ い て,十 分 とは言 え ない ま で も この 作 業 連 環 を続 け,そ れ ぞ れ の 改 善 に 努 め て 来 た 。 こ の度,大 学 設 置 基 準 が 改 正 さ れ,カ リキ ュ ラ ム の 自由 度 が 大 幅 に 高 ま っ た こ と を受 け て,改 め て 大 学 保 健 体 育 を見 直 す と と もに,そ の理 念 を確 認 す る機 会 を与 え ら れ た 。 旧設 置 基 準 の保 護 と制 約 を よ う や く離 れ る こ とに よ っ て,大 学 保 健 体 育 はそ の本 来 の 使 命 を取 り戻 し,そ の 理 念 を実 現 す る こ と が よ り容 易 と な り うる 。 そ の た め に は,大 学 保 健 体 育 の理 念 の 確 認 と もに,理 念 の 実 現 を阻 む要 因 を 整 理 し,解 決 の方 策 を探 らな け れ ば な らな い 。 本 稿 は, そ の作 業 の 結 果 と,具 体 的事 例 と して の文 教 大 学 湘 南 校 舎(1)保 健 体 育 改 革 の 私 案 で あ る。 1.理 念 の 実現 を 阻 む要 因 大 学 保 健 体 育 の 理 念 の実 現 を阻 む要 因 を, 先 ず,現 在 まで 数 回 に わ た って な さ れ た 大 学 保 健 体 育 批 判 か ら抽 出 ・整 理 し,次 に,現 在 進 め られ て い る大 学 教 育 改 革 に潜 む 危 険 性 に つ い て 言 及 す る。 1.大 学 保 健 体 育 批 判 か ら 昭 和22年7月 大 学 基 準 協 会 で採 択 さ れ た 大 学 基 準 で は,大 学 の 卒 業 要 件 と して120単 位 以 上 を履 修 す る こ とが 規 定 さ れ,保 健 体 育 科 目につ い て は,何 等 言 及 さ れ て い なか った 。 と ころ が,昭 和24年 に新 制 大 学 が 発 足 す る際 に は,実 技2単 位,理 論2単 位,合 計4単 位 が 卒 業 の 要 件 に 加 え ら れ,大 学 保 健 体 育 が 誕 生 し た 。 当 時 の 大 学 基 準 に は,「 学 士 号 を与 一74一

え る資 格 の 最低 要 求 は,七 の4に 定 め た 定 義 に 従 っ て 決 定 さ れ た 単 位120及 び体 育 の単 位 4を4箇 年 以 上 に獲 得 す る こ と とす る」 と規 定 され て い る。1946年 の ア メ リカ教 育 使 節 団 の勧 告,1946年 の 文 部 省 に 設 置 さ れ た学 校 体 育 研 究 委 員 会 の 答 申,1947年 のCIEか らの 強 い 要 望 な どの言 わ ば 「外 圧 」 が,大 学 保 健 体 育 を誕 生 させ た(2)。 そ の た め か,旧 制 高 校 で は 体 育 が 必 修 で あ っ た に も拘 らず,新 制 大 学 にお い て は保 健 体 育 が,積 極 的 に歓 迎 さ れ た と は言 え な か っ た よ うで あ る。 保 健 体 育 担 当教 員 の努 力 に も 拘 らず,「 大 学 教 育 に な じ ま な い」 とい う違 和 感 が あ っ た よ うで,大 学 保 健 体 育 に対 す る 批 判 と改 善 の提 案 が 過 去4回 お きて い る 。 そ れ らの 要 点 は以 下 の 如 くで あ る。 1961年 1971年 日本 学 術 会 議 「大 学 制 度 改 善 に つ い て 」(内 閣総 理 大 臣 あ て の 勧 告 文) 「体 育 保 健 は_{,単 位 制 度 か ら はず し,} 学 生 の保 健 指 導,健 康 管 理 の面 か ら 別 途 そ の あ り方 を検 討 し,こ とに そ の た め の 人 的,物 的 条 件 を充 実 させ る こ と」 中 央 教 育 審 議 会 第22回 答 申(い わ ゆ る46答 申) 第3章 「高 等 教 育 の 改 革 に 関 す る 基 本 構 想 」 「保 健 体 育 につ い て は ,課 外 の 体 育 活 動 に対 す る指 導 と全 学 生 に対 す る 保 健 管 理 の徹 底 に よ っ て そ の 充 実 を は か る。」 そ の 説 明 に,「 保 健 体 育 の 単 位 を卒 業 の要 件 と して 画 一 的 か つ 形式 的 に 課 す るだ けで は,そ の本 来 の 目的 は 達 成 され な い 。今 後 は,各 教 育機 関 が 教 育 方 針 に応 じて そ の 単位 を弾 力 的 に 取 り扱 え る よ うに 改 め る と と も に,指 導 体 制 の 充 実 と施 設 の 整 備 を は か るべ きで あ る。」 1981年 1983年 日本 私 立 大 学 連 盟 「大 学 設 置 基 準 検 討 結 果 に つ い て 」 「大 学 教 育 に お け る保 健 体 育 科 目の 位 置 づ け,意 義,目 的 を明確 に す る と と もに,ク ラ ブ活 動,夜 間 学 部, 学 生 の多 様 化 と体 力 差,体 育 施 設 な ど の現 状 を 十 分 に勘 案 しつ つ,選 択 科 目 とす る な どの 可 能 性 を含 め て現 行 規 定 の再 検 討 が 必 要 で は な い か。」 大 学 基 準 協 会 「大 学 設 置 基 準 に 関 す る問 題 点 」(第 一 次 中 間 報 告) 「… … 保 健 体 育 科 目 の履 修 を卒 業 の 要 件 に含 め るべ きで あ る か否 か につ い て は,そ れ が 大 学 教 育 本 来 の 在 り 方 との 関連 で検 討 す べ きで あ る ば か りで な く,保 健 体 育 科 目の具 体 的 な 履 修 の 方 法 等 に つ い て も問題 が な い わ けで は な い の で,大 学 に お い て保 健 体 育 科 目を設 置 して い る趣 旨,目 的 等 を 根 本 的 に 検 討 す る必 要 が あ る」 い ず れ の 場 合 も,保 健 体 育 の 意 義 を再 度 認 識 さ れ る こ と に よ っ て,保 健 体 育 科 目の 廃 止 あ る い は選 択 化 に ま で は 至 ら な か った もの の, 同 種 の批 判 が お よ そ10年 ご と に お こ って い た とい う こ と は,保 健 体 育 内 部 で の改 革 が 十 分 に 果 たせ て い なか っ た の で は な い か と反 省 さ せ ら れ る。 2.国 立 大 学 協 会 の調 査 か ら 昭 和61年2月 に,国 立 大 学 協 会 ・教 養 課 程 に 関 す る特 別 委 員 会 か ら出 さ れ た,「 学 部 卒 業 生 を対 象 とす る 『大 学 教 養 課 程 教 育 の 内 容 と改 善 に関 す る ア ンケ ー ト』 調 査 報 告 書 」 は, 大 学 教 養 課 程 に お け る教 育 の抜 本 的 見 直 しの 参 考 資 料 を得 る 目的 で 行 わ れ た ア ンケ ー ト調 査 の 報 告 書 で あ る 。 この 調 査 が 実 施 され た の は昭 和58年11.月 で,国 立 大 学13校 の 各 学 部 の 昭 和38年 卒 業 生,昭 和53年 卒 業 生,合 計660 一75一

図1保 健 体 育教 育の評 価(設 問) 図 教 養 課 程 を中心 に行 われ て い る もの に,も う一 つ,保 健体 育教 育 が あ ります 。 あ な た が 「大 学 にお い て保 健 体育 教 育 を受 けた こ と」 を,現 在 の 目で総 合 的 に評 価 して下 さい 。 (i)下 の 各欄 の,該 当す る と考 え られ る とこ ろに ○ をお つ け下 さい。 体 育 実 技 講 義 体 育 理 論 保 健 理 論 イ たい へ ん役 に立 った 口 か な り役 に立 った ノ 丶 _{あ ま り役 に 立 た な か っ} た 二 ま っ た く 役 に 立 た な か った ホ 以 上 の い ず れ と もい い 難 い (ii)保 健体 育教 育 の内 容 に不満 が あった とす れ ば 特 に どんな点 だ った で しょうか。 自由に お書 き下 さい。 名 に調 査 用 紙 を送 付,協 力 を依 頼 し,返 送 さ れ て き た 回 答 は368(回 答 率59.8%)で あ っ た。 こ の 調 査 報 告 書 が,昭 和63年11月 の 国立 大 学 協 会 ・教 養 課 程 に 関 す る 特 別 委 員 会 の 「_{教 養 課 程 の 改 革 」 に 強 く反 映 した 。} こ の 調 査 で保 健 体 育 に 関す る問 い は設 問V で,図1に 示 した設 問 で あ る 。 この 回答 結 果 は 図2で あ り,こ れ に付 さ れ て い る コ メ ン ト は,「 体 育 実 技 の 評 価 が,38年 の や や 否 定 寄 りか ら,53年 の ほ ぼ 相 半 ば に まで 向 上 して い る こ と は,体 育 設備 の 充 実,指 導 内 容 の改 善 が,こ の 間 に もた ら さ れ た こ と と関連 して い る か と思 わ れ る。(中 略)し か し,体 育 講 義 に対 す る評 価 は低 く,否 定 寄 り70%は,肯 定 寄 り20%を 大 き く上 回 る 」(3)であ る。 設 問(ii)の自由 回 答 に は,中 に は,充 実 した 授 業 を受 け た経 験 を 持 ち,厂 講 義 の 中 で は, 実 技 に対 す る学 問 的 理 論 づ け と して,中 学, 高 校 で は得 られ なか っ た 『物 の 考 え 方』 が 身 に つ い た と思 う」(38年 農 学 部 卒)と い う感 想 を寄 せ て い る卒 業 生 もい るが,大 半 は,実 技 の 楽 しさ は評 価 して い る もの の,実 技,講 義 と もに印 象 が うす か っ た こ とを述 べ て い る 。 報 告 書 に記 載 され て い る56の 自 由 回 答 か ら, 大 学 保 健 体 育 の 問 題 点 を 整 理 す る と以 下 の4 点 に な る。 ① 実 技 は,遊 び に 過 ぎ な い 。 自 由放 任 。 学 生 も教 員 も真 剣 さの 不 足 。 ② 実 技 は,設 備 の 不 足,時 間 の 不 足 。 マ ス プ ロ教 育 。 ③ 大 学 の 保 健 は,高 校 の保 健 の む しか え し。 単 位 数 が 少 な い か ら履 修 内 容 も少 ない 。 ④ 講 義 は,実 技 と関 係 の な い 授 業 で あ っ た 。 以 上 の問 題 点 か ら,総 合 的 に判 断 す れ ば, 厂実 技 及 び 講 義 の両 面 と も高 校 教 育 よ り劣 る」 (53年 理 学 部 卒)と い う意 見 も頷 け る 。 昭 和 38年,53年 当 時 よ りは,施 設 ・設 備 も改 善 さ れ,大 学 院 で の教 育 を終 え た 教 員 も増 え た こ と もあ り授 業 の 改 善 もか な りの 程 度 な さ れ た と思 わ れ る が,依 然 と して 上 記 の 問 題 点 は批 判 と して受 け と め な け れ ば な らな い だ ろ う。 3.大 学 審 議 会 の 議 論 か ら 大 学 審 議 会 大 学 教 育 部 会 で の保 健 体 育 関 係 者 か らの ヒヤ リ ング は,1990年10月16日,約 50分 問 か けて 行 わ れ た 。 そ の時 の 質 疑 と意 見 交 換 の 中 で 出 て きた 問 題 点 は,以 下 の4点 で あ る(4)。高 等 教 育 部 会 の 最 終 答 申(1991年 2月8日)を 目前 に して,大 綱 化 の方 針 は決 ま っ て い る 中で は,以 前 か ら指 摘 さ れ て い る よ うな 理 念 的 な あ る い は一 般 的 な批 判 で は な く,改 革 ・改 善 に む けて の具 体 的 な,そ して 一76一

図2保 健 体育 教 育の評 価(回 答) m(i)体 育実技 昭和38年 昭和53年 38・53年 の 合 計 0 50 100(%) 体育理論 昭和 昭和 38 の合 0 50 100(%) 保 健 理 論 (イ) 1.8 昭 和38年 昭 和5R年 38・53年 の 合 計 0 50 -77 100(%)

技 術 的 な 問 題 点 が 下 記 の よ う に指 摘 さ れ た 。 ① 講 義 は,高 校 まで で よい の で は な い か 。 ② 運 動 施 設 だ け を用 意 して,学 生 の 自主 性 に任 せ れ ば よ い の で は な い か 。 ③ 部 活 動 な ど の課 外 ス ポ ー ツ を単 位 と して 認 め る こ と につ い て,ど う考 え る か。 ④ 「健 康 科 学 教 育 」 や 「人 間科 学 教 育 」 と い う発 想 も あ る が,こ れ に つ い て ど う考 え る か 。 これ らの 問 題 点 に対 して,出 席 した 日本 体 育 学 会 松 田 岩 男 会 長,浅 見 俊 雄 理 事 長,(社) 全 国 大 学 体 育 連 合 波 多 野 義 郎 基 本 構 想 検 討 委 員 長 は,次 の よ う に 答 え て い る。 ① に対 して は,「 高 校 まで の 教 育 が 必 ず し も十 分 に な され て い な い とい う現 実 に 加 え て, 体 力 や 健 康 の 衰 え を実 感 で き,し か も知 的 吸 収 欲 が 旺 盛 な この 時 期 に,科 学 的研 究 の バ ッ ク グ ラ ウ ン ドを持 っ た大 学 の 教 官 に よ って な さ れ る身 体 や健 康,身 体 運 動 に 関す る 知 的 な 教 育 が 必 要 」 で あ る こ と,さ ら に,「 自分 か ら運 動 ・ス ポ ー ッ に参 加 す る必 要 性 に つ い て, 大 学 生 の 教 養 レベ ル に合 わ せ て 明 確 に 理解 し て も ら う教 育 を行 わ な け れ ば,中 高 年 齢 者 に な っ て も相 変 わ らず 運 動 ・ス ポ ー ツ に参 加 し な い ま ま成 人 病 な ど の健 康 障 害 を増 大 させ る こ とに も な り,個 人 に と って も社 会 に と って も大 きな 損 失 で あ る」 こ と を説 明 した 。 ② に対 して は,「 学 生 を調 査 す る と,70% 以 上 の 学 生 が 体 育 は必 修 に す べ きで あ る とい う結 果 に な るが,そ の理 由 と して は,必 修 で な くな る と 自分 か ら運 動 す る機 会 が な くな る か ら と言 う 学 生 が 非 常 に 多 い」 こ と,「 正 課 で 行 うの が も っ と も効 率 的 に 多 くの学 生 に運 動 の機 会 を与 え る こ とが 出 来 る」 こ と を指 摘 した 。 ③ に対 して は,「 課 外 ス ポ ー ッへ の 参 加 者 は,全 学 生 の10%程 度 で あ り,こ れ の み に頼 る訳 に は い か な い こ と,運 動 な らな ん で も望 ま しい 効 果 を もた らす とは 限 らず,現 に部 活 動 の 中 に は不 当 に厳 しい上 下 関 係 や,非 科 学 的 な ト レ ー ニ ン グ な ど も散 見 さ れ て い る 」 こ と が 述 べ ら れ た 。 ④ に 対 し て は,「 運 動 参 加 の 目 的 に,20, 30代 で は ス ポ ー ッ の 持 つ 楽 し さ や 仲 間 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 第 一 位 に あ げ,40,50代 以 降 で は 健 康 ・体 力 を あ げ て い る 。 健 康 の み を 扱 う と す る と 目 的 の 一 部 し か カ バ ー で き な い こ と に な る 」 と答 え た 。 以 上,1か ら3で 現 れ た 批 判 を ま と め る と, 次 の2つ に集 約 で きる 。 批 判1保 健 体 育 の 意 義,目 的 に関 す る も の (「卒 業 の要 件 か ら はず せ 」,「高 校 まで の体 育 で 十 分 」,厂ア カ デ ミズ ム に な じま な い 」,「運 動 施 設 を用 意 す る だ け で 十 分 」,「課 外 ス ポ ー ッ で 単 位 の 代 替 が で き な い か」 等) 批 判2保 健 体 育 の授 業 に関 す る も の (「理 論 と実 技 が か い離 して い る」, 「保 健 は_{,高 校 の む しか え し」,} 「実 技 の 授 業 は_{,自 由 放 任,遊 び} 半 分 」,「実 技 は,施 設 と時 間が 不 足 して い る 上 マ ス プ ロ授 業 で 成 果 が 挙 が らな い 」) 批 判1は 理 念 的 批 判 で あ り,批 判2は 実 践 的 批 判 で あ る。 こ れ らの 批 判 に対 して は,上 述 した 以 外 に,第2章 以 降 にお い て,反 駁 あ るい は解 決 策 が 提 示 さ れ る。 4.大 学 教 育 改 革 の 落 し穴 大 学 基 準 協 会 や,一 般 教 育 学 会,全 国大 学 教 員 懇 談 会 な どで は,早 くか ら大 学 教 育 の 充 実 と改 善 につ い て 熱 心 に 論 議 さ れ て き た。 そ の 成 果 は蓄 積 され て きた もの の,個 々 の大 学 の 教 育 改 革 に は力 が 及 ば な か っ た 。 しか し,7月1日 に 大 学 設 置 基 準 が 改 正 さ れ た の を受 け て,個 々 の 大 学 で に わ か に大 学 教 育 改 革 に取 り組 み始 め た 。 大 学 教 育 改 革 に 一78一

は,カ リ キ ュ ラ ム の 改 善 と と も に,自 己 点 検 ・評 価,フ ァカ ル テ ィ ・デ ベ ロ ップ メ ン ト が 不 可 欠 で あ るの だ が,後 二 者 の こ と を念 頭 にお か ず,カ リ キ ュ ラ ム の 改 正 に ば か り意 識 が 集 中 して い る嫌 いが あ る し,大 学 設 置 基 準 が 改 正 さ れ た か ら と い っ て,即 座 に カ リキ ュ ラ ムの 改 正 に 走 るの は早 計 に す ぎ る と思 わ れ る 。 先 ず 最 初 に,大 学 の建 学 の 精 神 ・教 育 の 理 念,学 部 の 設 置 理 由が 再 確 認 さ れ た上 で, そ れ ら の達 成 に必 要 で あ れ ば こそ,カ リキ ュ ラ ム の 改 正 が お こ な わ れ るべ きで あ る 。 そ も そ も,カ リキ ュ ラ ム の見 直 し は,教 育 の営 み の 中 で 不 断 に 実 施 さ れ て い な け れ ば な らな い 筈 で,大 学 設 置 基 準 の改 正 後 慌 て て 取 り組 も う と し て い る の は,こ の不 断 の 見 直 しの作 業 を怠 っ て い た か ら と疑 わ れ て も仕 方 が な い 。 つ ま り,従 来 か ら大 学 教 育 の 充 実 と改 善 の 努 力 が 十 分 に な され て い る場 合 は,今 回 の大 学 設 置 基 準 の 改 正 に もゆ る ぎな い 筈 で,む し ろ 大 綱 化 ・簡 素 化 さ れ た こ と に よ っ て,教 育 ・研 究 の改 善 と充 実 に取 り組 み 易 くな った こ とで あ ろ う。 問 題 なの は,過 去 の議 論 と努 力 の蓄 積 が な い と こ ろ に,に わ か に カ リキ ュ ラ ム を改 正 し た と こ ろで,果 た して実 効 が 上 が るで あ ろ う か とい う こ とで あ る。 そ して,改 正 さ れ た カ リキ ュ ラ ム の 理 念 の 実 現 を支 え る態 勢 が 整 っ て い るか ど うか で あ る。 そ の 態 勢 とは,前 述 の 自己 点 検 ・評 価 で あ り,フ ァカ ル テ ィ ・デ ベ ロ ッ プ メ ン トで あ る 。 そ して,そ の た め の 学 内組 織 で あ る。 この よ う な 基 盤 の整 備 な く して,カ リキ ュ ラ ム の 改 正 に 取 り組 む とい う こ とは,い きお い,各 教 科 毎 の 必 修 単 位 数 の 取 り合 い,あ る い は,大 学 経 営 上 の理 由 に よ る教 育 の劣 化 に 陥 って しま う危 険 が あ る 。 そ の よ うな うね り の 中 で,大 学 保 健 体 育 の 理 念 を十 分 に 理 解 さ れ ず に,ま た,さ れ た と して も,学 内 の 権 力 構 造 上,大 学 教 育 に お け る正 当 な地 位 を得 ら れ な くな っ て しま う危 険 性 が あ る 。 皿.新 しい大 学 で の 保 健 体 育 の 意 義 と役 割 保 健 体 育 は,い わ ゆ る 身 体 面 の 教 育(Pys-icalEducation)で あ っ て,他 の 二 つ の 教 育 機 能 の 知 育(IntellectualEducation),徳 育 (MoralEducation)と と も に 相 互 補 完 的 に 営 ま れ な け れ ば な ら な い 。 大 学 で の 保 健 体 育 は, 大 学 教 育 の 目 的 に 契 合 し,他 の 教 科 目 と密 接 に 関 連 し つ つ,独 自 の 教 育 目的 と役 割 を 担 っ て い る 。 そ し て,こ れ を 大 学 教 育 に お い て 実 現 す る た め の 活 動 は,主 に 次 の4つ の 領 域 に 区 分 で き る 。 1.保 健 体 育 科 目 2.健 康 管 理 業 務 3.課 外 ス ポ ー ッ活 動 指 導 4.そ の 他 の保 健 体 育 的 活 動 これ らの 領 域 の役 割 に つ い て 順 に述 べ る。 1、 保 健 体 育 科 目 大 学 保 健 体 育 科 目の 目的 は,一 般 的 に次 の よ う に定 義 され る 。 保 健 体 育 科 目は,大 学教 育 の一 環 と し て,身 体 や 身 体 運 動 に 関 す る幅 広 い 知 識 を授 け,学 問 的 な 思 考 態 度 を養 う と と も に,身 体 や 身 体 運 動 の 実 践 を通 して 豊 か な 感 性 を培 い,知 性 的,道 徳 的 素 養 を育 み,身 体 的 教 養 を 育 成 し,こ れ ら を通 し て 人 間 性 の 発 達 を 図 る こ と を 目 的 とす る(5)。 そ して,特 に大 学 教 育 と して の保 健 体 育 科 目の 特 質 を形 成 す る 目標 は,次 の よ う に考 え られ て い る ⑥ 。 身 体 の虚 弱 化 や 身体 意 識,現 実 感 覚,生 活 実 感 の 希 薄 化,人 間 関係 形 成 能 力 の 未 熟(7), ス ポ ー ツ享 受 能 力 が 低 い な どの 学 生 の実 態 を 目前 にす る と き,大 学 保 健 体 育 の 意 義 の深 さ を 改 め て感 じ ざ る を得 な い 。 79

*理 論 と 実践 の 統 合 力 の 育 成 *学 問 的 精 神 の 養 成 とそ れ に基 づ い た 学 習 態 度 の 育 成 *意 思 と勇 気 の 陶 冶 *知 性 的 な社 会 性,道 徳 性 の養 成 *自 己 開発 能 力 の 育 成 体 力 ・健 康 の 面 か ら して も,体 力 は19才 に そ の ピ ー ク を むか え る が,衰 え 始 め て よ うや く体 力 ・健 康 の 大 切 さ を認 識 す るで あ ろ う し, 親 の保 護 を 離 れ て 自律 的 な生 活 を始 め る と健 康 に 関 す る 学 習 の 必 要 性 に も気 づ くで あ ろ う(8)。 こ の よ う な 時 期 に,体 力 ・健 康 を科 学 的 に理 解 し,自 己 の 身 体 を い わ ば 題 材 に し て 体 力 ・健 康 を維 持 ・増 進 して い く態 度 と生 活 習 慣 を形 成 す る こ と は非 常 に 重 要 で あ る 。 さ らに,ス ポ ー ツ に価 値 を見 出 しそ れ を 享 受 す る能 力 を育 成 す る こ と も 必 要 で あ る 。 「人 生 を通 じて ス ポ ー ッ を 楽 しむ と い うす ぐ れ て 人 間 的 行 為 そ れ 自体,あ る い は そ うい う もの と して こ れ を認 識 し,人 生 の なか で今 後 ど う ス ポ ー ッ を 楽 し む か の 方 向 を 見 出 させ る」(9)こと は,人 間形 成 の 重 要 課 題 で も あ る 。 そ して,ま た,教 養 教 育 の 立 場 か ら言 え ば, 身体 の教 養 を 身 につ け させ る こ と も大 学 教 育 の 目標 の 一 つ で あ る と考 え る 。 身 体 とそ の 動 き を通 して 自己認 識 と人 間 の 探 究 をす る こ と は,現 代 の 教 養 人 と して必 要 な こ とで あ る。 この 正 課 保 健 体 育 科 目 を必 修 科 目か ら はず し選 択 必 修 科 目あ る い は 自由 科 目に した 場 合, 保 健 体 育 の 重 要 性 を十 分 認 識 して い な い 学 生, つ ま り履 修 の 必 要 性 が 最 も高 い 学 生 が 受 講 し な い とい う こ と に な りは しない か と危 惧 さ れ る。 大 学 保 健 体 育 は,単 に体 力 ・健 康 づ く り や 運 動 技 術 の 指 導 だ け で は な い こ と を理 解 さ せ な けれ ば な ら な い 。 2.健 康 管 理 業 務 学 生 だ け で な く,教 職 員 を含 め た す べ て の 構 成 員 の健 康 の 維 持 ・増 進 を 図 る の が,健 康 管 理 業 務 で あ る。 この 業 務 の責 任 組 織 と して は,保 健 管 理 セ ン ター な どが 一 般 的 で あ る が, 多 くの場 合,非 常 勤 の 学 校 医 と保 健 婦,看 護 婦,事 務 員,そ して,時 に は カ ウ ンセ ラ ー に よ っ て 構 成 さ れ て い る。 「健 康 を 守 る 」 だ け で は な く,「 健 康 を創 る」 た め に も,保 健 体 育 担 当教 員 が,積 極 的 に こ の業 務 に 関 与 す る こ とが 望 ま し く,そ れ に よ っ て教 育 の 成 果 も 著 し く挙 が るで あ ろ う。 3.課 外 ス ポ ー ツ活 動 指 導 学 生 が 自主 的 に行 って い る課 外 ス ポ ー ッ は, 授 業 と して の保 健 体 育 科 目 とは 異 な っ た 目的 を も って 行 わ れ て い る ので,こ れ を単 位 制 度 に組 み 入 れ る こ と に は無 理 が あ る。 そ して, 第1章 第3節 で 紹 介 した よ う に,「 現 に部 活 動 の 中 に は不 当 に厳 しい上 下 関係 や,非 科 学 的 な トレ ー ニ ン グ な ど も散 見 され て い る 」 の で,民 主 的 で合 理 的 な ク ラ ブ 運 営 と科 学 的 で 安 全 な ト レー ニ ン グ の指 導 を,保 健 体 育担 当 教 員 が 行 う必 要 が あ る で あ ろ う。 ま た,課 外 ス ポ ー ツ を行 って い る学 生 に は,従 来 の 一 般 体 育 の 授 業 で は な く,よ り専 門 性 の高 い授 業 科 目 を用 意 す る こ と も考 え な けれ ば な ら な い。 4.そ の 他 の保 健 体 育 的 活 動 体 力 ・健 康 相 談,運 動 処 方,ス ポ ー ッ ・レ ク リエ ー シ ョン行 事 の 開 催,ス ポ ー ッ施 設 ・ 用 具 の貸 し出 し,学 内外 の ス ポ ー ツ 教 室 の 開 催 な どは,日 頃 運 動 をす る機 会 の少 ない 学 生 と教 職 員 にそ の機 会 を与 え,学 内外 で の生 涯 ス ポ ー ッ の 実 践 と健 康 で 明 る い キ ャ ンパ ス の 創 造 に寄 与 で きる と思 わ れ る 。 これ ら を実 施 す る に あ た っ て は,従 来 か ら担 当 して い た 学 生 課 な ど と緊 密 な ネ ッ トワ ー ク を形 成 し,積 極 的 な協 力 体 制 を作 り上 げ る こ とが 肝 要 で あ る。 :1

皿.新 しい 大学 保 健 体 育 の構 想 第II章 で 述 べ た大 学 保 健 体 育 の意 義 と役 割 を具 現 化 す るた め の構 想 に つ い て 論 じ る。 先 ず 初 め に,現 在,各 大 学,あ るい は個 人,関 連 団 体 な どで 取 り組 ま れ て い る大 学 保 健 体 育 改 革 の 中 で現 れ て き た構 想 の モ デ ル を類 型 化 す る 。 そ の 後 に,文 教 大 学 湘 南 校 舎 の 構 想 (小林 試 案)を 提 示 す る。 1.改 革 構 想 の モ デ ル 現 在,現 れ て い る 各 大 学,個 人,関 連 団体 な どの 改 革構 想 を,目 的 ・目標 の観 点 か ら類 型 化 す る と,① 健 康 科 学 教 育 型,② 生 涯 ス ポ ー ツ教 育 型,③ 身体 の教 養 教 育 型 の3つ に な る と思 わ れ る。 そ れ ぞ れ の モ デ ル の 目的 ・ 目標 と特 徴,問 題 点 に つ い て 論 じる 。 ① 健 康 科 学 教 育 こ れ は,国 大 協 の 「教 養 課 程 の改 革 」(昭 和63年)に 提 案 さ れ た モ デ ル で,保 健 体 育 を 健 康 科 学 教 育 に,名 実 と も に変 更 し よ う とす る もの で あ り,理 論(健 康 科 学)と 実 技 の 統 合 を企 図 した 点 で 優 れ て い る。 国立 大 学 の 多 くが こ の モ デ ル を踏 襲 す る 様 子 で あ る 。 しか し,国 大 協 は 具 体 的 な構 想 を示 して い な い し, 国 立 大 学 も未 だ構 想 の段 階 な の で,こ こで は, 「教 養 課 程 の 改 革 」 の 提 案 か ら ,そ の 特 徴 と 問題 点 を検 討 す る。 目的 につ い て は,次 の よ う に規 定 して い る 。 保 健 体 育 本 来 の 目的が,健 康 ・体 力 に つ い て の 知 的 理解 を通 じて 正 しい 身体 運 動 の 実 践 を習 得 せ しむ る もの で あ る な らば,新 た な 視 点(勝 つ た め よ り も健 康 づ く りを考 え る)に 立 つ体 力 科 学 は,総 合 的 な 「健 康 科 学 教 育 」 の 重 要 な柱 の ひ とつ で あ る(10)。 履 修 につ い て は,実 技 を 「他 の 教 科 に お け る 実 験 ・実 習 に相 当 す る もの 」 と し,「 社 会 にお け る積 極 的 な健 康 生 活 の 実 践 学 習 と して 必 要 で あ る」 と して い る。 そ して,そ の学 習 内 容 は理 論 と実 技 の 相 関 を企 図 し,「 種 目別 コ ー ス 」 で は な く 「目的 別 コ ー ス 」 を推 奨 し て い る 。 具 体 的 に は,「 運 動 処 方 」,「 トレ ー ニ ン グ」,「コ ンデ ィシ ョニ ン グ」,「 競技力 向 上 コ ー ス」 な ど で あ る 。 さ ら に,保 健 管 理 業 務 に つ い て,「 従 来 の 保 健 体 育 教 育 と保 健 管 理 セ ン タ ー業 務 の 有 機 的 連 携 に よ る,人 間 の健 康 に関 す る研 究 体 制 の 充 実 を計 り… … 」 と提 案 して い る が,こ れ は 大 変 評 価 で き る こ とで あ る。 実 際 に,九 州 大 学 の健 康 科 学 セ ン タ ー や 名 古 屋 大 学 の 総 合 保 健 体 育 科 学 セ ン タ ー な どは,成 果 を挙 げ て い る 。 しか し,こ の モ デ ル の最 大 の 問 題 点 は,先 ず 第 一 に ス ポ ー ッの 文 化 的側 面 が 殆 ど抜 け 落 ち て い る こ とで あ る。 現 代 の ス ポ ー ツ は,文 化 ・社 会 的 に ます ます 大 きな 問 題 と な っ て い る の で,こ ,の点 に関す る理解 は,21世 紀 の社 会 人 と して 必 要 で あ る。 第 二 に,身 体 を体 力 ・健 康 の側 面 か ら の み 把 握 す るだ けで,行 為 主体 と して の 身体 に対 す る 理 解 が 欠 落 して い る こ とで あ る 。 こ れ で は,自 己 の 身 体 を ます ます 知 的 に(頭 で)理 解 し操 作 す る こ とを助 長 す る ば か りで,身 体 の 持 つ 感 性 を軽 視 あ る い は 無視 し,自 己 の 疎 外 を増 幅 す る こ とに な りは し な い か と危 惧 さ れ る 。 以 上 見 て きた よ うに,こ の モ デ ル は,理 論 と実 技 の統 合,教 育 と保 健 管 理 業 務 の連 携 を 企 図 した 点 で は大 変 評 価 で き るが,保 健 体 育 の 目 的 を健 康 教 育 の そ れ に 限 定 した た め に, ス ポ ー ッ の 文 化 的 側 面 と身体 の 教 養 の面 が 欠 落 し て し ま って い る。 ② 生 涯 ス ポ ー ツ教 育 こ の モ デ ル は,筑 波 大 学 の体 育 セ ン タ ー の 構 想 と実 践 に代 表 され る。 筑 波 大 学 は,そ の 設 立 の 当初 よ り,保 健 体 育 の4年 間履 修 制 を しい てL>る 。保 健 体 育 理 論 の講 義 は,特 に 開 講 せ ず に実 技 の 中 で 理 論 の指 導 を行 う と し, 学 生 の ス ポ ー ッ実 習 を4年 間 に 亙 って 保 証 す べ く,一 年 一 単 位 履 修 を実 施 して きた 。 と こ 一81一

図3生 涯 ス ポー ツ教育 の構成(筑 波大 学) 1生 涯 スポ ー ッ理 論1 1.総 論1(プ レー,レ ジ ャ ー と して の 生 涯 ス ポ ー ツ 論) 2.総 論II(健 康 づ く りの た め の生 涯 ス ポ ー ッ 論) 3.各 論(ス ポ ー ツ能 力 開発 の た め の 生 涯 ス ポ ー ッ論) 1生 涯 ス ポ ー ツ実 習1 1ヘ ル ス,フ ィ ッ トネ ス コ ー ス エ ア ロ ビ ク ス,フ ィ ッ トエ クサ サ イ ズ な ど2類 型 2ス ポ ー ッ コ ース 各 種 ス ポ ー ツ,ダ ン ス な ど10類 型 う が,昭 和62年 か ら保 健 体 育 カ リ キ ュ ラム の 改 善 に む け て の 検 討 が 行 わ れ,「 健 康 教 育 科 学 」 へ の変 容 で は な く 「生 涯 ス ポ ー ッ教 育 」 へ の 革 新 を 目指 して 取 り組 ま れ て い る。 こ こ で は,筑 波 大 学 体 育 セ ン タ ー の 「筑 波 大 学 の 共 通 科 目 『体 育 』 の現 状 と改 善 の 方 向 」(11)か ら,そ の特 徴 と問 題 点 を検 討 す る 。 生 涯 ス ポ ー ツ 教 育 の ね ら い を, 、「自 己 の ラ イ フ ス テ ー ジ や心 身 の 状 態 に適 した ス ポ ー ッ を生 活 の 中 に取 り入 れ,豊 か な ラ イ フ ス タイ ル を形 成 で き る能 力 を 身 に つ け させ る こ と」 と規 定 して い る。 こ の 目的 は 学 習 社 会 とい う 時代 の 要 請 に応 えて い る と言 え よ う。 そ して, カ リキ ュ ラ ム を 「生 涯 ス ポ ー ッ理 論 」 と 「生 涯 ス ポ ー ッ 実 習 」 とか ら構 成 し,具 体 的 に は 図3の 如 くで あ る 。 授 業 科 目 の配 列 は,総 論1を1年 次 第1学 期 に オ リエ ン テ ー シ ョン を含 め て,3∼4時 間 集 中 開 講 し,各 論 は1年 次 か ら4年 次 ま で の 各 開 設 科 目(実 習)に お い て行 い,総 論n を4年 次 ま た は3年 次 に3∼4時 問集 中 開 講 す る。 生 涯 ス ポ ー ツ実 習 は,平 成 元 年 度 で は 定 時 コ ー ス26種 目,集 中選 択 コ ー ス9種 目が 開 設 さ れ て お り誠 に多 彩 で 豊 富 な プ ロ グ ラム で あ る 。 こ の よ う な カ リ キ ュ ラ ム は,充 実 し た ス ポ ー ッ施 設 と体 育 セ ン タ ー教 官30名,非 常 勤 講 師5名,体 育 専 門 学 群 教 官16名,計51名 と い う恵 まれ た教 育 環 境 が あ る か ら実 施 で き る の で あ る が,そ こに は問 題 が な い わ けで は な いo 先 ず 第 一 に,目 的 を生 涯 ス ポ ー ッ に 置 い て い る た め に,生 涯 ス ポ ー ッ を実 践 して い る と 考 え られ る 課 外 ス ポ ー ツ や 学 外 で の ス ポ ー ツ 活 動 と競 合 す る こ とに な るの で は な い か とい う点 で あ る。 大 学 設 置 基 準 の 改 正 に よ り,大 学 以 外 の教 育 機 関 で履 修 した場 合 や 各 種 検 定 試 験 に合 格 した場 合 も大 学 の単 位 と して認 定 で き る こ と に な った 。 保 健 体 育 に関 して 言 え ば,カ ル チ ャー ・ス ク ー ル で の 受 講 や課 外 ス ポ ー ッの 参 加,ス キ ー や ダ イ ビ ン グ の検 定 資 格 の 取 得 な ど を大 学 の単 位 と して 認 定 で き る 訳 だ が,こ れ を認 定 しな い とい う根 拠 は,生 涯 ス ポ ー ッ を 目的 と して い る限 りは 薄 くな る で あ ろ う。 第 二 に,現 在 の段 階 で は生 涯 ス ポ ー ツ に対 す る学 生 の ニ ー ズ も高 い が,高 等 学 校 で平 成 6年 度 か ら実 施 され る新 しい学 習 指 導 要 領 で も生 涯 ス ポ ー ッ を 目的 と して い るの で,高 等 学 校 で の 教 育 が 成 果 を挙 げ れ ば 挙 げ る ほ ど大 学 で の 生 涯 ス ポ ー ッ教 育 の存 在 理 由 が 危 う く な る。 ま た,小 規 模 の大 学 で は多 種 目 を 開設 す る こ とは 困 難 で,学 生 の 要 望 に 十 分 応 え ら れ な い 。 そ うす る と尚 更 学 生 は ス ポ ー ツ の機 会 を学 外 に 求 め る よ うに な るで あ ろ う。 第 三 に,理 論 が 細 切 れ で 授 業 時 数 も少 な い た め,知 識 の切 売 り的 な 授 業 に な る恐 れ が な い と は 言 え な い で あ ろ う。 「もの を 見 る 目や 自 主 的 ・総 合 的 に 考 え る力 を養 う こ と」(大 学 審 議 会 高 等 教 育 部 会 答 申 「大 学 教 育 の 改 善 に つ い て 」1991.2.8)な ど は,各 種 目 に お 一82一

表1改 革構 想 の類 型 目 的 特 徴 問 題 点 ①健康科学教育 (国大協) ・健康 ・体 力 につ い て の知 的理 解 を通 じて正 しい 身体 運 動 の実 践 を習得 す る ・理論 と実技 の統合 ・保健体育教 育と保健管 理業務の有機的連携 ・ス ポ ーッ の文 化 的側 面 が 欠 如 ・身体 の教 養 面 の 欠如 ② 生 涯 ス ポ ー ツ 教 育 (筑波大 学) ・ス ポ ー ッ享 受能 力 の 開発 ・学 習社 会 に適 合 _{・課 外 ス ポ ー ッ,学 外 ス} ポ ー ッ と競 合 ・高 校 の新 指 導要 領 の 目 的 と同等 ③身体 の教養教 育 ・身体 とそ の動 きを 通 して 自己認 識 と 人 間の 探究 をす る ・大 学教 育 の 普 遍 的 目的 の一 つ(人 間教 育)に 合 致 ・実 践例 が 少 な い ・体 育教 師の 中 で も理 解 を して い る者 が 少 な い い て行 わ れ る各 論 に委 ね られ て い る形 に な っ て い て 些 か こ ころ も と な い 。各 種 目の授 業 は, ど う して も技 術 指 導 中心 に な って しま い が ち だ か らで あ る 。 ③ 身体 の 教 養 教 育 他 の2つ の モ デ ル が,運 動 ・ス ポ ー ッ を い わ ば手 段 化 した,外 在 的 目 的型 で あ る の に対 し,こ の モ デ ル は,身 体 と そ の運 動 そ の もの を 目的 と し た 内在 的 目的 型 で あ る と言 え,身 体 の 教 養 の 修 得 を 中 心 課 題 と した教 育 で あ る 。 身 体 の教 養 と は,「 そ の 人 が 運 動 中 に 意 味 を見 付 け 出 し,そ れ に よ って 自 己 と世 界 とを 拡 げ る た め の 道 具 能 力 ・知 識 ・経 験 ・認 識 を 身 に つ け て い る こ と」(12)を 意 味 し て い る。 また,扇 谷 は 「身 体 の 自 己 表 現 形 式 と精 神 的 自己 表 現 形 式 とが 結 びつ く とい う こ とが 分 か っ て い る 人 が 身 体 的 教 養 を持 ち 得 ま す」 と述 べ て い る(13)。 よ り具 体 的 に は, (i)身体 と し て の 自己 と世 界 の認 識 (ii)身体 と し て の他 者 理 解 と共 感 ㈹ 身 体 の 自 由 の獲 得 (i・)身体 に対 す る知 識 と学 問 的 接 近 の 方 法 な どで あ り,こ れ らの修 得 が 身 体 の教 養 教 育 の 目標 と な る 。 身体 の 虚 弱 化 や 身体 意 識,現 実 感 覚,生 活 実 感 の 希 薄 化,人 間 関係 形 成 能 力 の 未 熟(扇 谷)と い う現 代 学 生 に,第 一 に必 要 な の は身 体 の教 養 で あ る と言 って も過 言 で は あ る まい 。 こ の 点 か ら も,大 学 教 育 の 普 遍 的 目的 の 一 つ で あ る人 間教 育 に合 致 して い る と言 え よ う。 しか し,こ の教 育 は現 在 の と こ ろ独 自の教 育 体 系 を持 つ まで に は至 っ て い な い 。 保 健 体 育 の 授 業 実 践 と して 若 干 現 れ て い る に過 ぎな い(14)。 ま た,体 育 教 師,研 究 者 の 中 に お い て も この 教 育 理 念 を理 解 して い る 者 が 少 な い よ う に 思 わ れ る 。 しか し,こ れ こ そ が 大 学 保 健 体 育 の 中 核 とな るべ き だ と考 え る 。 2.文 教 大 学 湘 南 校 舎 の 構 想(小 林 試 案) 文 教 大 学 湘 南 校 舎 は,他 の 総 合 大 学 に比 し て,保 健 体 育 担 当教 員 数,運 動 施 設 と も に優 れ て い る と は言 え な い の で,包 括 的 な カ リ キ ュ ラ ム を編 成 して も,そ の 実 施 は極 め て 困 難 で あ る 。 そ こで,現 状 で は,教 育 目標 を い くら か 限 定 して改 革 構 想 を組 ま な け れ ば な ら ない 。 1.目 的 ・目標 目 的 は,第II章 第1節 で紹 介 した一 般 的 な 保 健 体 育 の 目的 とな ん ら異 な る も ので は な い が,具 体 的 な 目標 を設 定 す る際 に は,文 教 大 学 湘 南 校 舎 の 特 色 と事 情 を考 慮 し な け れ ば な らな い。 平 成3年 度 に 実 施 し た 学 生 実 態 調 査(15)に よれ ば,現 時 点 で の学 生 の ニ ーズ は,① 健 康 な 生 活 を営 む た め の知 識 と教 養,② ス ポ ー ッ 享 受 能 力 の 開 発 に あ る 。勿 論,③ 身 体 の教 養 の修 得 も必 要 で あ る と考 え られ るが,① ② の ニ ー ズ が よ り高 い よ うに思 わ れ る。 一83一

表2ス ポ ー ツ ・健 康 科 学 科 目 の 必 修 ・選 択 必 修 ・自 由 科 目 の 区 分 必修科 目 選択 必修 科 目 自 由 科 目 実 技 ・実 習 実習1①,II① 実習 皿① 講 義 ・演 習 概 論② 演習② 教 養 ゼ ミナ ー ル ④ ○ 内数字は,単 位数 を表す 表34年 間 の 必 修(◎)・ 選 択 必 修(○)・ 自由 科 目の 配 列 学 年 前 期 後 期 1 ◎ ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 実 習 工① ◎ ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 概 論 ② 2 ○ ス ポ ー ツ ・健 康 科 学 演 習 ② ◎ ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 実 習II① 3∼4 ○ ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 実 習 皿① (自 由科 目)教 養 ゼ ミナ ー ル は,1∼4年 次 に履 修 表4授 業科 目の 目的 と内容 科 目 名 目 的 内 容 ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 概 論 ス ポ ー ッ と健 康 に関 す る科 学 ス ポ ー ッ 科 学,健 康 科 学 の概 論 (1年 次 必 修,2単 位) 的思考の理解 と知識 の修得 ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 実 習1 運動の楽 しさを知 る 各 種 ス ポ ー ッ と レ ク リエ ー シ ョ 識 (1年 次 必 修,1単 位) (ス ポ ー ッ 享 受 能 力 の 開 発) ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 実 習1 1.各 種 ス ポ ー ツへ の手 引 き 各 種 ス ポ ー ツ レ ク リ エ ー シ ョ ン (2年 次 必 修,1単 位) 2.か らだ と して の 自 己 認 識 気 づ きの レ ッ ス ン 3.運 動 処 方 の理 論 と実 際 フ ィ ッ トネ ス ダ イエ ッ ト ・プ ロ グ ラ ム 4.安 全 の 理 解 と方 法 応急処置 救助法 ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 実 習 皿 よ り高度 な技術 の修 得 と理論 各 種 ス ポ ー ッ(中 級) (3∼4年 次 選 択,1単 位) の理解 ス ポ ー ツ ・健 康 科 学 演 習 1.競 技 力 向 上 の 方 法 を学 ぶ ト レーニ ング 論 (2-4年 次 選 択,2単 位) 2.ス ポ ー ツ の マ ネ ジ メ ン ト ス ポ ー ツ経 営 学 学 ぶ 教 養 ゼ ミナ ール ス ポ ー ッ と健 康 を題 材 に人 間 1.人 間 と ス ポ ー ツ (1∼4年 次 自由,4単 位) とは何かを考え る 2.健 康 問 題 3.現 代 ス ポ ー ツ そ こ で,① と② を優 先 目標 と し,③ は努 力 目標 とす る こ とを提 案 す る 。 2.科 目名 の変 更 保 健 体 育 とい う科 目名 を 変 更 す る こ とは, 「社 会 的 な 通 念 を排 し_{,問 題 意 識 を 明 確 に す} る た め に も有 効 」(16)であ る 。 そ こ で,現 在 の 学 会 な どの 動 向(17)を踏 ま え て,「 ス ポ ー ッ ・ 健 康 科 学 」 に科 目名 を 変 更 す る こ と を提 案 す る。 3.カ リキ ュ ラ ム 編 成 ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 科 目は,講 義,演 習, 実 習 か ら編 成 さ れ,そ れ ぞ れ が 有 機 的 に 関 連 づ け られ て い る 。授 業 科 目の 目的 と 内容 に つ い て は,表4に 表 され て い る通 りで あ る 。 こ の 中 で,ス ポ ー ッ ・健 康 科 学 演 習 は2科 目開 設 され,一 つ は 課 外 ス ポ ー ツ を行 っ て い る学 生 向 け で あ り,他 の 一 つ は経 営 情 報 学 科 と国 際経 済 学 系 の学 生 で ス ポ ー ツ経 営 に 関心 の あ る 学 生 向 け の授 業 科 目で あ る。 科 目履 修 は,理 論2単 位,実 習2単 位 の 計 4単 位 が 必 修 で,2年 次 迄 に履 修 す る こ と を 勧 奨 す る 。3年 次,4年 次 に は選 択 必 修 科 目 の 演 習 や 自由 科 目の教 養 ゼ ミナ ー ル,よ り高 度 な履 修 内 容 の実 習 皿が 用 意 され,4年 間 一 貫 カ リキ ュ ラ ム の 実 現 を 目指 して い る 。 N.改 革 にむ けて の 方策 第 皿章 で述 べ た 改 革 構 想 を実 現 す るた め に は,カ リキ ュ ラ ム改 革 の 他 に,学 生 の 運 動 生 活 の実 態調 査 や,ス ポ ー ッ と健 康 に対 す る 意 識 調 査,運 動 施 設 と保 健 体 育 担 当教 員 の評 価, .,

組 織 改 革,教 授 法 の 研 究,自 己 点 検 の 整 備 等 々が 必 要 で あ る。 本 章 で は,大 学 保 健 体 育 改 革 に む けて 必 要 な方 策 につ い て 論 じる と と もに,文 教 大 学 湘 南 校 舎 で の取 り組 み を紹 介 す る 。 1.学 生 実 態 調 査 とス ポ ー ツ資 源 調 査 大 学 で の 保 健 体 育 をス ポ ー ツ経 営 学 的観 点 か ら見 る と,① 学 生 実 態 調 査(学 生 の ニ ー ズ の 把 握 と ター ゲ ッ トの選 定),② ス ポ ー ッ資 源 調 査(現 有 資 源 の特 性 ・強 み の 評 価)を 先 ず 行 う必 要 が あ る(18)。学 生 の ニ ー ズ の 把 握 と ター ゲ ッ トの選 定 と は,具 体 的 に は,学 生 の運 動 生 活 の実 態調 査 や,ス ポ ー ッ と健 康 に 対 す る意 識 調 査,レ デ ィ ネ ス ・テ ス トな どの 実 施 とそ の結 果 を考 慮 して教 育 対 象 を選 定 す る こ と を意 味 す る。 現 有 資 源 の特 性 ・強 み の 評 価 と は,運 動 施 設 や 保 健 体 育 担 当 教 員,保 健 管 理 セ ン タ ー な どの 評 価 の こ とで,① の結 果 を勘 案 して 具 体 的 な 保 健 体 育 の 実 施 計 画 を立 案 す る こ と に な る 。 こ の① と② を行 わ な け れ ば,ど の よ う な 教 育 目標 を 立 て,実 施 計 画 を練 っ た と して も 高 い 教 育 効 果 は あ ま り期 待 で きな い で あ ろ う。 しか し,従 来 の大 学 保 健 体 育 は 旧 設 置 基 準 に 守 られ て来 た た め に,こ の よ うな 堅 実 な努 力 を怠 っ て き た の で は な い だ ろ うか 。 新 しい大 学 で 本 来 の 責 務 を 果 た す に は,必 ず 実 施 しな け れ ば い け な い こ とで あ る。 的 に 大 学 教 授 団 能 力 開発 と呼 ば れ て い るが, こ れ は教 員 個 人 か ら大 学 の あ らゆ る レベ ル の 組 織(教 室,講 座,学 科,学 部,大 学)で の さ ま ざ ま な 自己 開 発 を意 味 し,多 面 的 な 活 動 くユの の総 称 で あ る。 新 堀 は,フ ァカ ル テ ィ ・デ ベ ロ ップ メ ン トを表5の よ う に整 理 して い る 。 各 大 学 が 自由 で 個 性 的 な独 自の 教 育 を可 能 に す る た め に大 学 設 置 基 準 が 大 綱 化 ・簡 素 化 され た が,大 学 の教 育 ・研 究 の 質 を保 証 す る た め に は,大 学 の 自主 的 な 絶 え ざ る 自己 点 検 と 自己 開発 が不 可 欠 で あ る 。個 人 的段 階 で 出 来 る こ と は勿 論 の こ と,制 度 的 に も実 施 で き る こ とか ら1頂次 実 施 して い くこ とが 急 務 で あ る。 3.文 教 大 学 湘 南 校 舎 の 取 り組 み と将 来 文 教 大 学 湘 南 校 舎 で は,前 述 の学 生 実 態 調 査 とス ポ ー ツ資 源 調 査,フ ァカ ル テ ィ ・デ ベ ロ ップ メ ン トに本 格 的 に取 り組 むべ く準 備 を 進 め て きた 。 現 在 実 施 して い る の は,以 下 の 如 くで あ る。 ① 学 生 の運 動 生 活 実 態 調 査 ② ス ポ ー ツ資 源 調 査 ③ 教 育 能 力 開 発(教 材 研 究 会,授 業 研 究 会) ④ 授 業 評 価('1青報 学 部 方 式 に よ る) ⑤ カ リキ ュ ラ ム 開発 保 健 体 育 担 当 教 員 は,非 常 勤 講 師 も含 め て, 2.フ ァ カ ル テ ィ ・デ ベ ロ ッ プ メ ン ト 学 期 始 業 前 に ス タ ッ フ ・ミ ー テ ィ ン グ を 開 き, フ ァ カ ル テ ィ ・デ ベ ロ ッ プ メ ン トは,一 般 文 教 大 学 の 保 健 体 育 の 目 的 と 内 容,方 法 の 確 表5フ ァ カ ル テ ィ ・デ ベ ロ ッ プ メ ン トの 発 達 と種 類(新 堀) ① 研 究 能 力 開 発(Professionaldevelopmentoffaculty) ② 教 育 能 力 開 発(Instructionaldevelopment) ・個 入 的 段 階 一 集 団 的 段 階 一 制 度 的 段 階(Staffdevelopment) ・授 業 評 価(Studentevaluation) ③ カ リ キ ュ ラ ム 開 発(Curriculumdevelopment) ④ 組 織 開 発(Organizationaldevelopment) ・大 学 評 価(lnstitutionalresearch) ・外 部 評 価(Externalexamination) 一85一

認 を して い る。 そ の 際 に は担 当 科 目の シ ラバ ス(授 業 計 画 表)を 提 出 して い る。 学 期 中 は,適 宜,教 材 研 究 会 を 開 い た り, 有 志 が 集 ま っ て の 授 業 研 究 会 を開 催 して い る。 い ず れ は,先 駆 的 な授 業 実 践 と して 学 会 発 表 が で き る よ うに な る こ とを 目指 して い る 。 学 期 終 了 時 に は,反 省 会 を 開 き,目 標 と内 容 の見 直 し,実 施 方 法 の改 善 な ど につ い て検 討 し,カ リ キ ュ ラム 開 発 に努 め て い る。 現 在 計 画 中 の もの は,ス ポ ー ツ と健 康 に対 す る意 識 調 査,レ デ ィ ネ ス ・テ ス ト(保 健 理 論,体 育 理 論),保 健 体 育 独 自 の 授 業 評 価, な どで あ り,近 い 将 来 予 定 さ れ て い る全 学 的 な カ リキ ュ ラ ム改 革 に向 け て鋭 意 努 力 中で あ る。 第 皿 章 第2節 で提 案 した改 革構 想 が 実 現 さ れ れ ば,保 健 体 育 科 目 は勿 論 の こ と,課 外 ス ポ ー ッ 活動 の支 援 と指 導 も改 善 され 充 実 す る こ とで あ ろ う。 将 来 的 に は,学 生 と教 職 員, さ らに は 地 域 住 民 を対 象 と した サ ー ビス ・プ ロ グ ラム と して の ス ポ ー ツ ・健 康 講 習 会 の 開 催 を実 現 し た い と考 えて い る 。 そ の た め に も, 健 康 科 学 セ ン タ ー設 立 の 検 討 や 同 じキ ャ ンパ ス に あ る短 期 大 学 の 保 健 体 育 担 当教 員 との協 力 体 制 の確 立 が 望 まれ る。 (付記)本 研 究 は,文 教 大 学 国 際 学 部 共 同 研 究 費(平 成3年 度)の 助 成 を受 けて 施 行 し た 「大 学 教 育 改 革 と一 般 教 育 等 に 関 す る共 同 研 究 」 の研 究 成 果 の 一 部 で あ る 。 一 注一 (1)文教 大 学 湘 南 校 舎 に は,情 報 学 部 と国 際 学 部,さ らに 女 子短 期 大 学 部 が あ るが,特 に こ とわ ら ない 限 り,本 稿 で は情 報 学 部 と国 際 学 部 を指 す もの と す る。 (2)加藤 橘 夫,『 新 制大 学 の発 足 と大 学 保 健 体育 誕 生 の 経 緯』,日 本 体 育 学 会 体 育 原 理 専 門分 科 会 編,「 大 学 教 育 改 革 と保 健 体 育 の 未 来 像 」,不 昧 堂 出 版, 1991,pp.59-72 (3)国立 大 学 協 会,「 学 部 卒 業 生 を対 象 とす る 『大 学 教 養 課 程 教 育 の 内 容 と 改 善 に 関 す る ア ン ケ ー ト』 調 査 報 告 書 」,1986,p.61 (4)浅 見 俊 雄,『 大 学 審 議 会 の 審 議 と 大 学 体 育 界 の 対 応 』,日 本 体 育 学 会 体 育 原 理 専 門 分 科 会 編,前 掲 書, pp.91-108 (5)(社)全 国 大 学 体 育 連 合 大 学 体 育 改 革 委 員 会,『 大 学 保 健 体 育 基 本 構 想 』,「 大 学 体 育 」,第43号,1991, p.42 (6)同 上 書,p.42 (7)扇 谷 尚,『 大 学 体 育 へ の 提 言 』,「 大 学 体 育 」,第41 号,1991,p.25 (8)筑 波 大 学 体 育 セ ン タ ー,『 正 課 体 育4年 間 履 修 に 対 す る 筑 波 大 学 生 の 意 識 』,「 大 学 体 育 研 究 」,第8号, 1986,pp. (9)『 札 幌 大 学 に お け る 一 般 教 育 カ リ キ ュ ラ ム改 革 』, L般 教 育 学 会 第13回 大 会 講 演 要 旨 集 」 ,1991 ⑩ 国 立 大 学 協 会,「 教 養 課 程 の 改 革 」,1985,p.54 ⑪ 筑 波 大 学 体 育 セ ン タ ー,『 筑 波 大 学 の 共 通 科 目 「体 育 」 の 現 状 と 改 善 の 方 向 』,日 本 体 育 学 会 体 育 原 理 専 門 分 科 会 編,前 掲 書,pp.109-123 (12)Mueller,Whatitmeanstobephysicallyeducated, JOPERD61-3,pp.100-101 (13)扇谷 尚,前 掲 書,p.25 (1の桝 本 直 文,『 大 学 正 課 体 育 に お け る 体 育 目標 と し て の 身 体 の 経 験 』,日 本 体 育 学 会 体 育 原 理 専 門 分 科 会 編,前 掲 書,pp.158-168 永 田 道 子 ら,『 「か ら だ の 気 づ き 」 を 促 す 授 業 に 関 す る 一 考 察 』,第24回 全 国 女 子 体 育 研 究 大 会 神 奈 川 大 会 紀 要,1990,pp.199-221 津 田 忠 雄,『 大 学 体 育 に お け る ボ デ ィ ・ワ ー ク の 展 開 』,日 本 体 育 学 会 第42回 大 会 大 会 号,1991, p.229 (15)1991年9月 に 湘 南 校 舎 の2年 生 に 予 備 的 に 実 施 し た 。 現 在 分 析 中 だ が,「 保 健 体 育 は,健 康 に 関 す る 知 識 と し て 必 要 で あ る」 と答 え た もの は,57%。 平 均 運 動 回 数 は,月 に4.8回 と 極 め て 少 な い 。 未 発 表 。 (is)国立 大 学 協 会,前 掲 書,p.53 ㈲ 日本 体 育 学 会 は1989年 か ら学 会 名 変 更 の 検 討 を 始 め た 。 案 と し て,日 本 体 育 ・ス ポ ー ツ 学 会 や 日 本 :・

ス ポ ー ッ科学 会 な どが 挙 げ られ てい る。 (ls)嵯峨 寿,『 大 学 ス ポ ー ツ経 営 の 特 性 と課 題』,日 本 体 育 学 会 第42回 大 会 体 育経 営 管 理 専 門分 科 会 シ ン ポ ジ ウ ム発表 資 料,1991 ⑲ 新 堀 通 也,『FDは なぜ 必 要 か 』,大 学 セ ミナ ー ハ ウ ス 編,「 第25回 大 学 教 員 懇 談 会 記 録」,1989, pp.33-39 (1991.10.18) 一87一