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紙 の物 理的 性質 にお よぼ す繊 維 間結合
面積 お よびヘ ミセ ル ロース の影響*
戸 田 久 昭,木
島 常 明,浜
田 忠 平**
Effects
of
Fiber
Bonded
Area
and
Hemicelluloses
on
Physical
Properties
of
Paper.
By Hisaaki Toda, Tsuneaki Kijima and Tadahira Hamada
(Research Laboratory of the Kokusaku Pulp Industry Co. Ltd., 1-184 Kami-ochiai,
Shinjuku-ku, Tokyo, Japan)
Birch bleached sulphite pulps extracted with 1-5% sodium hydroxide solutions were beaten by Lampen
mill or Tappi standard test beater. Beating rate and tensile or bursting strengths of the pulp at the
equal freeness decrease with the amount of hemicelluloses extracted (Table 1, Fig. 1 and 2). The reason
seems to be that water retention value of pulp beaten at the equal freeness and fiber bonded area in the
dried sheet (shown as specific scattering coefficient) decrease with the amount of hemicelluloses extracted
(Fig 3). However, the water retention value, especially specific scattering coefficient relates closely with
tensile or bursting strengths of the sheet, irrespective of the amount of extracted hemicelluloses (Fig. 4
5 and 6).
The pulp beaten in aluminium sulphate solution is poor in beating rate and bursting strength compared
with the pulp beaten in water. On the other hand, the uronic acid-rich pulp bleached with sodium
chlorite (Table 2) is easier to swell by beating and higher in bursting strength at the equal freeness
compared with the pulps bleached by a conventional 3 stages process (chlorination, caustic extraction,
hypochlorite bleaching).
In all these pulps, however, specific scattering coefficient relates with the
tensile or bursting strengths (Fig. 7 and 8). Speciffic scattering coefficient relates also with air
permea-bility (Fig. 9 and 10).
The tearing strength and the wet tensile strength of the pulps treated with sodium hydroxide
solu-tions are higher than those of the original pulp at the equal specific scattering coefficient (Fig. 11 and
12) This result shows probably that the bonding strengths at the equal bonded area of these pulps are
not invariably constant.
Sheet density does not relate with specific scattering coefficient in the case of pulps varied in
hemi-cellulose contents (Fig. 13).
緒
言
前 報1)に お い て蒸 解 度 の 異 る漂 白サ ル フ ァイ トパ ル プ(BSP)の 抄 紙 性を 比 較 した結 果,パ ル プ 中 の ア ル カ リ易溶 性 ヘ ミセ ル ロー ス 含 量,特 に ウロ ン酸 含 量 が パ ル プの膨 潤 性 と密 接 な 関 係 が あ り,そ の 結果 乾 燥 シ ー トの繊 維 間 結 合面 積 な らび に 引張 りお よび破 裂 強 度 に 大 き く影 響 す るこ とが 認 め られ た。 本報 で は ア ル カ リで ヘ ミセ ル ロ ース を抽 出 した パ ル プの抄 紙 性 の 差, 叩 解 液 に 硫酸 アル ミニ ウ ムを 添 加 した 場合,お よび 漂 白 方法 を 変 えた パ ル プの 抄紙 性 の 差 な どにつ い て研 究 し,ヘ ミセル ロ ース の抄 紙性 に お よぼ す 役割 につ い て 一 層深 く検 討 を 行 な った 。 実 験 お よ び 考 察 1. ア ル カ リ抽 出 した パ ル プ試 料 の 調 製 通常 の カル シ ウ ムベ ー ス酸性 サ ル フ ァ イ ト蒸 解 に よ って 製造 した 蒸 解 全 収率55.0%,過 マ ン ガ ン 酸塩 価 28.2の カバ材SPを,塩 素 化,ア ル カ リ洗 滌,ハ イ ポ クロ ライ トに よ り3段 漂 白 し,こ のBSPを1,2,3お よび5%苛 性 ソー ダ溶液 中 に20℃ で それ ぞれ1時 間 浸せ き して ヘ ミセ ル ロー スを 抽 出 除 去 した 。 残存BSPの 収 率 お よびヘ ミセ ル ロー ス の残 存量 を 第1表 に 示 した が,抽 出 除去 され た もの は 大部 分 が キ * 本 研 究 を “製 紙 用 パ ル プ 製 造 に お け る ヘ ミ セ ル ロ ー ス の 研 究 第6報 ” と す る 。 * 原稿受付35 .10.1 ** 国策 パル プ工業KK中 央研究 所 昭 和36年2月 27110 戸 田 久 昭 ・木 島常 明 ・浜 田 忠 平 シロー ス とウ ロ ン酸 とか ら成 る物 質,す な わ ち メチ ル グルキ ュロ ノキ シ ラ ンで あ り,マ ンナ ンは ほ とん ど除 去 されてい な い 。 抽 出 物 の組 成を 分析 した 結 果 で も, マ ンナ ンは 抽 出 物 中 に せ いぜ い1%程 度 しか 認 め られ なか った。 また これ らの 抽 出 処 理 に よって,残 存 パ ル プの重 合 度お よび単 繊維 強 度 に ほ とん ど変 化が 認 め られ なか っ た。 2. アル カ リ抽 出 パ ル プの 叩解速 度 お よ び強 度 の 比 較 上記 の試 料 を 前 報 と同 じ方法 に よ っ て ラ ンペ ン ミル 叩 解を行 な った 結 果,ヘ ミセ ル ロー ス抽 出量 の増 す に したが って,同 一 叩 解時 間 で の濾 水度 が 下 が り難 く (第1図)ま た 同 一 濾 水度 で の引張 りお よび 破 裂 強 度 は 低下 した 。 た だ し 引裂 キ強度 は2%苛 性 ソー ダ溶 液 で抽出 処理 した パ ル プ で最 高値 を 示 した(第2図)。 な お この よ うな方 法 で,抄 紙性 に お よぼ す ヘ ミセ ル ロー スの影響 を し らべ た 研 究 はか な り多 くあ るが,大 体 に お いて こ こま で の 研 究 で終 って い て,こ の よ うな 差が 生 じた原 因 につ い て は 定 性的 に しか 説 明 され て い な い。 こ の点 を 明 らか にす るた め,前 報 と同 様 これ らの パ ル プ の保 水度 と乾 燥 シ ー トの比 散 乱 係 数 を 測定 して さ らに検 討 を 行 な った 。そ の結 果 第3図 の よ うに,ヘ ミ セ ル ロー スの 抽 出量 が 増 す に した が って,同 一 濾 水度 に ま で叩 解 した パ ル プの 保 水度 が 小 さ く(膨 潤 性が 小 さ い),比 散 乱 係 数が 大 き くな る。 す な わ ち,結 合面 積 Table 1 Changes of Polysaccharide Contents and Degree of Polymerization
of Birch Bleached Sulphite Pulps Extracted with NaOH Solutions of Various Concentrations.
a. expressed as the basis of original bleached pulp. b. expressed as methylglucuronic acid residue.
Fig. 1 Beating rate of birch bleached sulphite pulps extracted with NaOH solutions of various concentrations.
Fig. 2 Strength vs. freeness of birch bleached sulphite pulps extracted with NaOH solutions.
紙 の物 理 的性 質に お よぼ す繊 維 間 結 合面積 お よび ヘ ミセ ル ロ ース の影 響 111 が 小 さい こ とが わか った 。 この 保 水度 または 比 較 散 乱 係 数 に 対 して 引張 りお よび 破 裂 強 度を プ ロ ッ トす る と 第4お よび5図 の よ うに,い ず れ もほ ぼ1本 の線 上 に 乗 った 。 な お,保 水度 の 低 い 部 分 では,僅 か に 保 水 度 が 低 下 す るだけ で強 度 は い ち じる し く低下 し,ま た ア ル カ リに よる繊 維 の膨 潤 も考 え られ るの で,あ る程 度 以 上 濃 度 の 高 い アル カ リで 抽 出 した場 合 の 保 水度 と強 度 との 関 係 は あ ま り明瞭 で は な い 。 しか し比 散 乱 係 数 に 対 し て プ ロ ッ トす る と,非 常 に 強度 の 低 い所 か らか な り強 度 の 高 い所 まで,比 散 乱 係 数 の減 少 に 伴 って 直 線 的 に 強 度 が 増加 した 。 な お,こ れ ら試 料 をTappi標 準 ピー タ ーで 叩解 した場 合 に は ラ ンペ ン ミル の時 ほ ど 強 度 差 が 大 き く現 われ な い が,傾 向 は前 と同様 で あ る。 す なわ ち,ア ル カ リで ヘ ミセル ロー スを 除去 した パ ル プは 叩 解 され 難 く,ま た 第6図 の よ うに 同 一 濾 水 度 で の 破裂 お よび 引張 り強 度は 低 いが,比 散 乱 係 数 に対 し て プ ロ ッ トす ると,こ れ ら強 度 は 未抽 出 パ ル プ の強 度 と ほぼ 同 じ線 上に 乗 っ た 。 また,こ の線 は ラ ンペ ン ミ ル叩 解 の場 合 の強 度一 比 散 乱 係 数 の直 線 と も全 く一 致 した 。 3. 硫 酸 ア ル ミニ ウ ム 溶液 中 で の 叩解 以 上 の実 験 は ヘ ミセ ル ロー スを 抽 出 した パ ル プ に つ いて 行 な った も の であ るが,た とえ ヘ ミセ ル ロー ス を 除 去 しな くて も,適 当 な 方法 で膨 潤 を抑 制 す れ ば,や は り同 様 の 傾 向が 現 わ れ るはず で あ る。 硫 酸 ア ル ミニ ウム溶 液 が パ ル プの 膨潤 を 抑 制 す る こ とは す で に 知 られ て い る3)の で,上 記 の カバ 材BSP を 水中 お よび0.1%硫 酸 アル ミニ ウム溶 液 中 で ラ ンペ ン ミル 叩 解 した場 合 の比 較 を 行 な った 。そ の 結 果 硫 酸 アル ミニ ウ ム溶 液 中 で叩 解 す る と,水 中 で 叩 解 した場 合 に 比 べ て 第7図 の よ うに 濾 水度 が やや 低 下 し難 く, また,同 一 濾 水 度 で の破 裂 強 度は 低 下す るが,比 散 乱 係数 と破 裂 強 度(引 張 り強 度 の場 合 も同 じ)のと の関 係 はい ず れ もほ ぼ 同 じ直 線 関 係 を示 した 。 4. ウ ロン 酸 含有 量 が 異 る パ ルプ の強 度 変 化 以 前 わ れ わ れ は未 晒 サ ル フ ァイ トパ ル プを 塩 素 化 ― Fig. 3 Water retention value or scattering
coefficient vs. freeness of birch bleached sulphite pulps extracted with NaOH
solutions. Fig. 4 Tensile and bursting strengths-water
retention value relationship for birch bleached sulphite pulps extracted with NaOH solutions.
112 戸 田久 昭 ・木 島 常 明 ・浜 田忠 平 アル カ リ洗 滌 ― ハ イ ポ ク ロライ ト漂 白(ま た は二 酸化 塩 素漂 白)の よ うな 多 段漂 白を 行 な う と,パ ル プ中 の ウ ロン酸 は 漂 白 中 に20∼30%が 除 去 され るが,亜 塩 素 酸 ソーダに よ る1段 漂 白の場 合に は ウ ロ ン酸 量が 減 少 しな い ことを 報告 した 。 そ こで同 一 未 晒 パ ル プか ら上 記3種 の 漂 白法 に よ って第2表 に 示 した3種 のBSP を 製 造 し,そ れ ぞれ の パ ル プ の抄 紙 性 の比 較 を行 な っ た 。 そ の結 果,亜 塩 素 酸 ソー ダに よ り1段 漂 白を行 な った ウ ロ ン酸 含量 の高 い パ ル プは,第8図 の よ うに他 のパ ル プ よ りも叩解 速 度 が速 く(特 に 保 水 度 の向上 は 大 きい)ま た 叩 解初 期 の 同 一濾 水度 に お け る強 度 も幾 分 高 い が,比 散 乱係 数 と強 度 とは いず れ もほ ぼ同一 の 直 線 関 係を 示 した 。 5. 紙 の 透 気度 とヘ ミセ ル ロー ス との 関 係 紙 の透 気度 は 印刷 適 性 また は紙 袋 の強 度 の 点で も重 要 な性 質 であ るの で,上 記 の ア ル カ リで ヘ ミセル ロー スを 抽 出 した パル プの透 気 度 をGurley透 気度 測定 器 に よ って測 定 し,濾 水度 また は,比 散 乱 係 数 との 関 係 を求 め た 。結 果 は 第9図 の よ うに,ヘ ミセル ロースを 除 去 した パ ル プは,同 一 濾 水 度 に ま で 叩解 して も紙 の 透 気 速 度 はか な り速 いが,比 散 乱係 数 に対 しては 第10 図 の よ うにか な りの相 関 性 を 示 した ° 6. 繊維 間 結 合強 度 に 関 す る一,二 の考 察
Fig. 5 Tensile and bursting strengths-scattering coefficient relationship for birch bleached sulphite pulps extracted with NaOH solutions.
Fig. 6 Bursting strength-freeness and scattering coefficient relationship for birch bleached sulphite pulps (beaten by Tappi standard test beater).
Fig. 7 Comparisons of beating rate and bursting strength of birch bleached
sulphite pulp beaten in water and 0.1%Al2 (SO4)3 solution.
● beating in water.
紙 の物 理 的性質 に お よぼす 繊 維 間 結 合 面積 お よび ヘ ミセ ル ロ ース の影 響 113
Table 2 Comparisons of Polysaccharide Content and Degree of Polymerization of Birch Sulphite Pulps Bleached by Various Method.
Fig. 8 Comparisons of beating rate and bursting strength of birch sulphite pulps bleached by various bleaching process.
Fig. 9 Air permeability vs. freeness of birch bleached sulphite pulps extracted with NaOH solution.
Fig. 10 Air permeability-scattering coefficient relationship.
114 戸 田久 昭 ・木 島 常 明 ・浜 田忠 平 以 上 の よ うに紙 の 引 張 り,破 裂強 度 だけ で な く,透 気度 まで も繊維 間 の 結 合 面 積 に よ って非 常 に 影 響 を受 け る もので あ り,易 溶 性 ヘ ミセ ル ロー ス また は,ウ ロ ン酸 の 役割 は叩 解 中 に 繊 維 の膨 潤 性 を急 速 に 増 加 させ , これ に よ って乾 燥 後 の シー ト中の繊 維 間 の 結 合 面 積 を 増 加 させ るこ とに あ る 。 しか し ここで問 題 に な る のは,ア ル カ リ抽 出 を 行 な わ ない も との パ ル プ で も,ま た は アル カ リ抽 出 に よっ て 多量 の ヘ ミセ ル ロ ー ス を除 去 した パ ル プ で も,単 位 結 合面 積当 りの結 合 強 度 また は 結 合状態 が 全 く同 一 で あ るか ど うか とい うこ とで あ る。第5お よ び6図 の結 果 か らはヘ ミセル ロ ー ス の種 類 お よび量 には 関 係 な く, 繊 維 間 の単 位結 合 面 積 当 りの 結合 強 度は ほ と ん ど差 が な い よ うに 思わ れ る。 しか し これ らの結 合 が 全 く同一 で あ るな らは,繊 維 間 結 合 面 積が 等 しい パ ル プ で は, 単 に 引張 りお よび 破 裂 強 度 だ け でな く,他 の強 度 も等 しい はず で あ る。 そ こで 上 記 の種 々 の濃 度 の ア ル カ リ で 抽 出 を行 な った カバ 材BSPの 比散 乱 係 数 と引裂 キ 強 度 との関 係を 求 め た 。 そ の結 果第11図 の よ うに, ア ル カ リ抽 出 を行 な った パ ル プの方 が,同 一 比 散 乱係 数 の紙 で 引裂 キ強 度 が 高 い とい う結 果が 得 られ た 。な お未 抽 出 の もとの パ ル プを 硫 酸 アル ミニ ウ ム の 存在 下 で膨 潤 を抑 制 しな が ら叩 解 した場 合 には,前 述 の よ う に 引張 りお よび,破 裂 強 度 の 点で は,ヘ ミセ ル ロース を除 い た とき と同 様 な 結 果 が 認め られ た が,引 裂 キ強 度 の 点 で は 後 者 の方が か な り高 い 値 を示 した 。 乾 燥 シ ー トを水 中 に30分 間 浸 せ き し た 後,湿 潤 強 度 を 測 定 した場 合 で も,第12図 の よ うに ア ル カ リで 多量 の ヘ ミセ ル ロー スを 除 去 す るに した が って 同一 比 散 乱 係 数 の 紙 の強 度 は増 加 した 。 これ らの 原 因に つ い て は さ らに 検討 中 で あ るが,現 在 の段 階 で推 測 を 下 す な らば紙 の 引裂 キ強 度 に は 単 位結 合の 強 さが か な り影 響 し,ま た 湿潤 強度 に 影 響 す る因子 は 紙 の中 の比 較 的 強 固 な結 合 であ る と考 え られ るの で,以 上 の こ とか ら 同 一 比 散 乱 係 数 の シ ー トが 得 られ る までに 叩 解 した 場 合,パ ル プ中 に ヘ ミセル ロー スが 余 り多量 に あ る場 合 よ りも,特 に 易 溶性 の ヘ ミセ ル ロース をあ る程 度 除去 した パ ル プの 方が 結 合 強 度(単 位 結 合面 積 当 り)の 高 い 結 合 が で きて い るの で は な いか と考 え られ る。 な お, 前 記 の2%苛 性 ソーダ 溶液 で抽 出 除去 され た ヘ ミセ ル ロー スの 平 均重 合度 は61で あ った が,こ の パ ル プ中 に 残 存 し,さ らに5%苛 性 ソー ダ溶 液で 抽 出 され た へ
Fig. 11 Tearing strength vs. scattering coefficient of birch bleached sulphite pulps.
Fig. 12 Wet tensile strength vs. scattering coefficient of birch bleached sulphite pulps.
紙 の 物理 的 性 質 に お よぼす繊 維 間結 合 面 積 お よ びヘ ミセ ル ロー ス の影響 115 ミセ ル ロー ス の重 合 度 は80で,幾 分高 い 値 を 示 した 。 7. 緊度 にお よぼ す ヘ ミセ ル ロー スの 影 響 これ らの紙 の緊 度 と比散 乱 係 数 と の 関 係 は 第13図 の よ うに,ア ル カ リでヘ ミセ ル ロー スを 抽 出す る こ と に よ って 同一 比散 乱 係 数 の紙 の緊 度 が 上 昇 した 。 この こ とは ス トロ ン グ蒸 解 を行 な ったBSPよ りも,蒸 解 の進 んだ 易溶 性 ヘ ミセ ル ロ ース 含量 の低 いBSPの 方 が 緊 度 が 高 い とい う前 報 の 結 果 とよ く一 致 す る。 易 溶 性 ヘ ミセ ル ロー ス また は ウ ロ ン酸含 量 の低 い パ ル プの 方 が,同 一比 散 乱 係 数 の シ ー トを得 るた め に は一 層 長 い時 間 叩 解 しな け れ な らず,そ れ に よ って 繊維 が 開 裂 して緊 度 が 向上 す る こ とが 考 え られ るが,こ の現 象 も か な り興 味 あ る問 題 で あ る。 総 括 ア ル カ リで ヘ ミセル ロー スを 抽 出 した パ ル プは,も との パ ル プに 比 べ て叩 解速 度が 低 下 し,ま た 同 一 濾 水 度 に お け る引 張 りお よび,破 裂 強 度 は低 下す る。 ま た, パル プの膨 潤 を あ る程 度 抑制 す る よ うな 方法 で叩 解 を 行 な うと,ヘ ミセ ル ロー スを除 去 した 場 合 と同様 な 傾 向が 認 め られ る。反 対 に 亜 塩 素酸 ソー ダで1段 漂 白 し た パル プは,通 常 の 多段 漂 白 パ ル プ よ りも ウ ロ ン酸 含 量 が 多 く,叩 解速 度,強 度 ともに 大 き い 。 しか しいず れ の パル プ で も,比 散 乱 係 数 と引 張 りお よび,破 裂強 度 とは 常 に ほ ぼ 同 一 の 直線 関係 を 示 す 。 パ ル プ中 の ヘ ミセ ル ロー スは紙 の透 気 度 に も影 響 を お よぼ し,ヘ ミセ ル ロー ス含量 の 高 い パ ル プは,ヘ ミ セ ル ロース含 量 の 少 い パ ルプ に比 べ て 同 一濾 水度 で透 気速 度 が 遅 い が,比 散乱 係 数 と透 気 度 とはほ ぼ 一 定 の 相 関{生を 示 す 。 な お,ヘ ミセ ル ロ ース を抽 出 した パ ル プの 方が,も との パ ル プに 比 べ,同 一比 散 乱係 数 の 紙 の 引裂 キお よ び 湿 潤強 度 が 高 い の で,こ の こ とか ら,パ ル プ中 の単 位 結 合面 積 当 りの結 合 強 度 は必 ず しも一 定 で は な く, 前 者 の 方が 後 者 よ りも 単位結 合 力 の強 い結 合 が で き て い るの で は な いか と考 え られ る。 な お,ヘ ミセ ル ロー ス含 量 の低 い パ ル プ の方 が 同一 比 散 乱 係 数 の 紙 で 緊 度が 増 大す る。 終 りに 本研 究 を 行 な うに 当 って御 懇 切 な 御指 導 を 賜 わ った 東 京 大学 の右 田 伸彦 教授,国 策 パ ル プ工 業 株 式 会 社 の軒 原栄 三 博 士 お よび吉 野勇 博 士 に 厚 く謝 意 を 表 す る。 また,実 験 に 協 力 された 深谷 昌弘 君 に 感 謝 す る。 な お,本 研 究 の大 要 は 昭 和35年5月 繊 維 学会 春 期 研 究 発表 会 で 講 演 した 。
文
献
(1) 戸 田 久昭,木 島常 明本誌 投稿 中(本 研 究 第5報)(2)
D. A. Sitch, H. B. Marshall ; Can. Res. j., 28,376,(1950)今 村 力 造;繊 学 誌;8,539(1952) 右 田 伸 彦,神 田 孝,佐 藤 修 一,小 島 幸 雄;繊 学 誌,
12,14(1956)
上 野 桂 助;紙 パ 技 協 誌11.239(1957)
(3) G.Jayme Proc., Australian Pulp Paper Ind.,
Tech. Assoc., 3, 432 (1949)
(4) 戸 田 久 昭,木 島 常 明;繊 学 誌 投稿 中(本 研 究第3
報(昭 和34年10月,化 学関 係 学 協 会連 合 秋 季研 究
発表 会 講演) Fig. 13 Density vs. scattering coefficient of
birch bleached sulphite pulps.
