事 業 を 始 めた 当 時 出 版 物 は GHQ の 検 閲 を 受 け 従 来 の 日 本 の 思 想 は 一 切 禁 止 さ れていたため 歴 史 的 人 物 の 札 は 難 航 した そのほか 内 容 の 選 定 に 苦 難 が 続 いたが 民 主 主 義 にふさわしいかるたが 完 成 し

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全文

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上毛かるたのこれから

―更なる発展に向けて―

田島 広大 1.はじめに 私が住む群馬県には全国に誇ることのできる「上毛かるた」がある。上毛かるたは多 くの県民に認知され、親しまれている。私自身も群馬で生まれ育ち地域の子ども会を通 じて上毛かるたで遊んできた。上毛かるたを通じて群馬県のことを知り、親しみを持て るようになったと感じている。しかしながら、上毛かるたの意義や歴史、札が表す意味 を知っている県民がどれほどいるだろうか。読み札の後ろに解説文が書かれていること すら知らない県民も多いだろう。また、群馬県の魅力を知る県民が少ないと感じる。群 馬県に対して親しみを持つ県民は多いが、いざ県外の者に群馬県の魅力を伝えることが できる県民は少ないのではないだろうか。そこで、私は上毛かるたの歴史や意義を再確 認し、群馬県の魅力について県民に知ってもらう活動について考えてみたい。 2.上毛かるたとは 2.1 歴史 上毛かるたは1947 年 1 月 11 日付の上毛新聞の呼びかけから始まる。当時、群馬県 は戦後復興期であり深刻な食糧、住居問題に悩まされていた。それに加えカスリン台 風の上陸で大きなダメージを受けていた。そんな厳しい状況が続く中、人々の再起を 支援するために「恩賜財団群馬県同胞援護会」によって上毛かるたはつくられた。 当時の子どもたちは物資の不足で勉強も満足にできなかった。また、GHQ の占領 政策で日本の地理教育と歴史教育が完全に停止されていた。しかし、援護会の設立者 の浦野匡彦は郷土を復興させるためには、郷土を愛する心が必要であり、そのための 地理と歴史教育が必要であると考えた。そこで、遊ぶこともでき、教育にもなる郷土 かるたを作成しようと考えたのである。 浦野はまず「上毛かるた編纂委員会」を発足させた。その後、上毛新聞を通して県 民にかるたの題材を募集した。そして、県内の全域を網羅することを前提として編纂

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事業を始めた。当時、出版物はGHQ の検閲を受け、従来の日本の思想は一切禁止さ れていたため、歴史的人物の札は難航した。そのほか内容の選定に苦難が続いたが、 民主主義にふさわしいかるたが完成した。 上毛かるたの普及には、「上毛かるた競技大会」や「上毛かるた立札運動」などの影 響があった。前者は県内の小中学生を対象に現在まで行われている。後者はかるたに 読み込まれた現地に立札を立てて、郷土を再認識するという運動であった(が、現在は ほとんど立札が見られない)。 2.2 かるたの特徴 原口(1996)によると読み札は「自然」「温泉・観光」「人物」「産業・交通」「史跡」 「文化・その他」に分けられる。これらの札は多岐にわたり、群馬県内全域に分布し ている。そして札は県内の川に沿って分布しており、人々が川(水)を求めて居住して いることがわかる。 読み札は七五調である。七五調は日本人に馴染みがあり、適当に休符を入れて唱え ることができる。それとともに 12 音という少ない字数で表現しなければならないた め、簡潔明快な用語を選択している。そのことが記憶に残りやすい要因ともいえる。 絵札は写実的な要素が強い。実際の場所に行ったことはないがその場にいったよう な感覚を持たせる効果がある。読み札と絵札が完全にリンクしているのでその絵の意 味を自然と学習することができる。 2.3 競技活動 上毛かるたが普及するにあたって「上毛かるた競技県大会」が多くの効果をもたら したと考えられる。参加者は各市町村を勝ち抜いてきた小中学生である。子どもたち は放課後や休日を使い、一生懸命に練習をしてきた。大会は二月に行われており、冬 の寒い時期に室内で練習をしながら群馬のことについて学習できる。また、ルールに ついても厳しく設定されている。始めと終わりには礼を交さなければならないこと、 異議がある場合には審判に意見を述べることができるなど、子どもに対する教育的配 慮も含まれている。さらにやく札というルールがある。これは特定の札(主要市町村と 上毛三山の札)をそろえれば、加点がなされるというルールである。このルールにより、

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やく札は特に印象強いものとなっており、群馬県の重要な場所を学習することができ る。 また、ここで特に注目しておきたいのは学校単位での参加ではなく、子ども会とい った各地域の学校外の集団単位での参加が多いということである。これは小中学生が 上毛かるたに慣れ親しむにあたって子ども会が重要だということである。 3.上毛かるた活用の問題点 上毛かるたは遊びながら群馬県を学べるということや郷土に対する親近感を育むと いう効果を持っている。上毛かるたの理念そのものにはほとんど問題はないであろう。 しかし、上毛かるたの活用方法に問題があるのではないだろうか。ここでは実体験を もとに上毛かるたの活用の問題点を考えていく。 第一に上毛かるたを行う際に「遊び」という側面だけが強調されがちではないかと いうことである。つまり、子どもたちが読み札と絵札を対応させてかるたを取ってい き、その得点を競い合うという「かるた遊び」の側面が強いのではないかということ である。確かに上毛かるたは遊びながら郷土を学んでいくという側面もある。しかし、 上毛かるたが基本的に行われる子ども会では、その札の意味や役割を学習するといっ た機会はほとんどない。その場に実際に赴き、観察や体験をするといった活動や読み 札の裏側に書かれている解説文を取り上げて学習する時間をとっている子ども会はか なり少ないだろう。上毛かるたは12 音という少ない文字で構成されており簡潔明快な 表現であることはすでに指摘されている。その簡潔明快な表現で様々な群馬県の事柄 を表さなければいけないため、小学生には比較的難しい漢字や言い回しも多い。私自 身、この文章を書くにあたって初めて知った表現などがたくさんあった。だから小学 生などでは読み札の意味を知らず、かるたに興じている場合が多いだろう。これでは 上毛かるたの効果を活用しきれているとは言えない。 第二に、小学校卒業後は上毛かるたとの接点や学習する機会が少なくなってしまう ということである。上毛かるたが子ども会を中心に営まれていることについては触れ た。しかし、子ども会は主に小学生の時にしか所属していないことが多い。中学生に なると学習や部活動で多忙となり自由な時間が取れなくなるので、ほとんどの子ども は小学校卒業の時点で子ども会を卒業していく。それによって上毛かるたとの接点も 失われてしまう。また、中学校では小倉百人一首を取り入れてそれについて学習した

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り競技大会を開いたりすることも多くなる。それもまた上毛かるたとの接点が失われ ていく一つの要因であろう。そして、その後はどうだろうか。高校生、大学生、社会 人はほとんど上毛かるたと接点を持つことはない。時々、新聞や雑誌、あるいは各市 町村の広報などで懐かしい上毛かるたの言い回しに触れることはあるだろう。しかし、 実際に上毛かるたに興じたり、上毛かるたに書かれている表現などを学んだりする機 会はない。考えるべきは、今後の群馬県を背負っていくのはこれらの世代であるとい うことである。彼らには群馬県の魅力を知り、伝えていく義務がある。こうした世代 こそ学習する意義は大きいのに、その機会が設けられていないことは問題であると考 える。 4.問題解決の方法 前項で指摘した第一の問題を解決していく上で重要なのは小学校と子ども会の取り 組みだ。小学校は教育活動を行う基本的な場所である。子ども会は2.3 で確認したよう に上毛かるたの普及活動において重要な役割を果たしている。 では、具体的に何を行えばいいのか。私が提案することは次の三つのことである。 一つ目は小学校で群馬県について学習する際に上毛かるたを用いるということである。 教師が一方的に教えるのではなく、自主的な活動を通して学ぶことが重要である。そ れにはそのクラスのオリジナルの上毛かるたを作ることを提案する。まずはこどもに 札を分担し、調べ学習を通してその意味や歴史をまとめる。学習したことをもとに自 分なりの読み札と絵札を作成する。それを簡単な解説を添えて発表する。作成した札 はクラスに掲示しておく。注意しなければならないのは、読み札の頭文字は元々の上 毛かるたと一緒にしなければならない。どの札を作成したかをわかりやすくするため である。このような活動を通してこどもは自分なりに学習することができ、札への理 解を深めることができる。 二つ目は毎回子ども会でのかるた練習の前に、読み札の裏側の解説文をもとにして、 その札がどのような意味を持っているかを学習するということである。毎回一つの札 についてでよい。それが何回も何年も積み重なることによって小学校卒業までには 44 枚のすべての札について学習することができる。毎回札を学習することによって、そ の都度札を意識して競技をすることができ、次第に上毛かるたが何について述べてい るのかが分かってくる。また、子どもたちに学習させるために、かるた練習の当番も

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あらかじめ学習しておかなければならないため、保護者にも学習を促す効果がある。 かるたの当番はほとんどの場合、保護者が交代して行うので多くの保護者が学べると いう点でも効率的である。 三つ目は、毎年、数回ほどかるたに読まれている現地に赴くということである。現 状として、上毛かるたで学んで知ってはいるけれども、実際に行ったことがないとい う県民も多いのではないか。上毛かるたの活動は主に冬にしか行われないが、現地を 訪れることは長期休みなどを使って一年を通して行うことができる。やはり現地に行 って実際の郷土を体験することが重要であると考える。 次に第二の問題についてである。この問題を解決するためには、上毛かるたとの継 続的な関わりを持てるようにする必要がある。そのことを促すために私が提案したい ことはスタンプラリーである。上毛かるたに書かれた現地にそれぞれスタンプを置い ておき、スタンプを集める。そのスタンプを獲得するためにはその現地に関する簡単 な問題を解かなければならない。そして、上毛かるたに書かれたすべての場所を回る と賞状や非売品の記念品をもらえるという制度だ。これにはいくら時間がかかっても よい。だが、スタンプラリーを集めるためだけに集中してしまうと現地に訪れた意味 がなくなってしまうため、スタンプの置き場所には注意する必要がある。これによっ て訪問者の学習を促すことができ、期限をつけないことで自分のペースで進めること ができる。また、休日などにはその土地に詳しい地域住民がガイドとして働きかける とさらに効果的なのではないかと考える。地域住民の学習を促進や、社会とのつなが りを作ることもできる。訪問者にとっては、地域住民しか知らないような詳しい話を 聞くことができるため、更に学習を深めることができる。 5.終わりに 上毛かるたは戦後間もないころに、復興の願いを込めて、郷土愛を育もうとしたこ とが始まりであった。そこには多くの思いが託されている。これほど多くの県民に親 しまれ、愛されているかるたは多くない。この事実だけでも群馬県の誇れる文化であ る。しかし、その誇れる文化をいかにして有効活用できるかが問われているように感 じる。どんなにいい文化でも活用できなければ意味がない。上毛かるたを単なる「か るた」で終わらせてはいけない。どのような形であれ、多くの県民が上毛かるたにつ いて学習し、群馬県の魅力を再発見することが求められる。そして、一人でも多くの

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県民が上毛かるたを使って次の世代や県外の人々に群馬県の魅力を伝えられるように なることを期待したい。

〈参考文献〉

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参照

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