6
2
次実対称行列の直交行列による対角化
2 次の正方行列は平面から平面への線形変換を表す.特に,直交行 列は任意の図形をそれと合同な図形に移す. x,y の 2 次方程式の係数から構成されるような 2 次の実対称 行列の固有値は必ず実数である.さらに嬉しいことに,2 次の実対 称行列は必ず直交行列によって対角行列に変形される.このことを 利用すれば,x,y の 2 次方程式の係数から構成される実対称行列 の 2 つの固有値の符号を調べることによって,その 2 次方程式が 表す曲線が楕円の仲間であるか,双曲線の仲間であるか,放物線の 仲間であるかを判定できる.6.1
直交行列と合同変換
≪直交行列とは≫ tP P = P tP = I を満たす実正方行列 P を 直交行列 という. この条件は P の転置行列が P の逆行列であることを示す. ≪直交行列は合同変換を表す≫ たとえば,つぎの行列は 2 次の直交行列である. ( −1 0 0 1 ) , ( 1 0 0 −1 ) , ( cos θ − sin θ sin θ cos θ ) , ( cos θ sin θ sin θ − cos θ ) 左から順番に,y 軸に関する対称変換,x 軸に関する対称変換,原点のまわり に θ だけ回転する変換,x 軸に関する対称変換の後に原点のまわりに θ だけ回 転する変換を表す行列である.これらの例には,変換前後の図形が合同である という共通の性質があるが,実は,以下に示すように,すべての直交行列は任 意の図形を合同な図形に移す合同変換を表す.実際,P を直交行列,x,y を 任意のベクトルとすると 内積 (P x, P y) =t(P x)(P y) =tx(tP P )y =txy = (x, y) (6.1) である.ここで x = y としてみれば,直交行列はベクトルの長さを変えないこ とが分かる.さらに,2 つのベクトルの内積も変えないから,ベクトルがなす 角も変えない.これは直交行列がすべての図形を合同な図形に写像することを 意味している(Figure 6.1 参照). θ x y θ′ , , Px = x Py = y θ′=θ P Py Px Figure 6.1: 直交行列は合同変換を表す6.2
正規直交系
≪直交行列の列ベクトルと行ベクトル≫ n 次の直交行列 P の第 j 列ベクトル を vj (j = 1, 2,· · · , n)とする:P = ( v1 v2 · · · vn ) .すると, tP P = tv 1 tv 2 .. . tv n ( v1 v2 · · · vn ) = tv 1v1 tv1v2 · · · tv1vn tv 2v1 tv2v2 · · · tv2vn .. . ... . .. ... tv nv1 tvnv2 · · · tvnvn である.つまり,tP P の (i, j) 成分は v i と vj の内積 tvivj = (vi, vj) である. したがって,条件 tP P = I は 内積 (vi, vj) = { 1 (i = j) 0 (i̸= j) (6.2) を意味する.すなわち,v1,v2,· · · ,vn はすべて長さ 1 のベクトルであり,し かも,互いに直交してしている.このようなベクトルの組は 正規直交系 と呼 ばれる. つぎに,直交行列の行ベクトルの性質を調べよう.n 次直交行列 P の第 i 行ベクトルを ui (i = 1, 2,· · · , n)とする:P = u1 u2 .. . un .すると, P tP = u1 u2 .. . un (t u1 tu2 · · · tun ) = u1tu1 u1tu2 · · · u1tun u2tu1 u2tu2 · · · u2tun .. . ... . .. ... untu1 untu2 · · · untun である.つまり,P tP の (i, j) 成分は u i と uj の内積 uituj = (ui, uj) である. したがって,条件 P tP = I は 内積 (ui, uj) = { 1 (i = j) 0 (i̸= j) (6.3) を意味する.すなわち,行ベクトル u1,u2,· · · ,un も正規直交系である.以 上より,直交行列の列ベクトル全体は正規直交系,行ベクトル全体も正規直交 系 であることが分かる. ≪ 2 次の直交行列の決定≫ 2 次の直交行列 P = ( p q r s ) をすべて求めよう. p2+ r2 = 1 より p = cos θ,r = sin θ となる θ が存在する.また,q2+ s2 = 1 より q = cos α,s = sin α となる α が存在する.P の第 1 列ベクトルと第 2 列 ベクトルは直交するからしたがって,α = θ±π
2 + 2nπ(n = 0,±1, ±2, · · · )である.α = θ +
π
2 + 2nπ ならば,cos α = cos(θ + π
2) = − sin θ,sin α = sin(θ +
π 2) = cos θ より P = ( cos θ − sin θ sin θ cos θ ) (6.4) である.一方,α = θ− π 2 + 2nπ ならば,cos α = cos(θ− π 2) = sin θ,sin α = sin(θ− π 2) = − cos θ より P は P = ( cos θ sin θ sin θ − cos θ ) = ( cos θ − sin θ sin θ cos θ ) ( 1 0 0 −1 ) (6.5) となる. まとめ: 2 次の直交行列 2 次の直交行列は原点のまわりの回転変換を表す行列 (6.4) か座標軸に関す る対称移動と原点のまわりの回転変換の合成を表す行列 (6.5) のいずれかで ある. 課題6−1 ( 0.8 0.6 r s ) が直交行列になるように r,s の値を定めよ. 課題6−2 つぎの行列が直交行列であるか否かを判定せよ.また,直交行列 である場合には,適切な角 θ を使って (6.4) か (6.5) の形に書き直せ. (1) 1 2 (√ 3 1 1 √3 ) (2) 1 2 (√ 3 1 1 −√3 ) (3) 1 2 (√ 3 1 −1 √3 ) (4) 1 2 (√ 3 1 −1 −√3 ) (5) 1 2 ( −√3 1 1 √3 ) (6) 1 2 ( −√3 1 1 −√3 ) (7) 1 2 ( −√3 1 −1 √3 ) (8) 1 2 ( −√3 1 −1 −√3 ) (9) ( −1 0 0 −1 ) (10) ( 1 0 0 −1 ) (11) ( 0 1 −1 0 ) (12) ( 0 1 1 0 )
6.3
実対称行列の固有値と固有ベクトル
≪ 2 次の実対称行列の固有値≫ 2 次の実対称行列 A = ( a b b d ) の固有方程式 は,det(A− λI) = (λ − a)(λ − d) − b2 よりλ2− (a + d)λ + ad − b2 = 0 (6.6) となる.判別式は D = (a + d)2− 4ad + 4b2 = (a− d)2+ 4b2 ≥ 0 であるので, 固有値は実数である.判別式が 0 になるのは a = d,b = 0 の場合だけに限る. したがって,スカラー行列 A = ( a 0 0 a ) の固有値だけが重解になり,それ以外 の実対称行列は相異なる実固有値を持つ. ≪ 2 次の実対称行列の固有ベクトル≫ スカラー行列については,すべての非零 ベクトルが固有ベクトルであるから,たとえば,v1 = ( 1 0 ) ,v2 = ( 0 1 ) と選 べば,2 つの固有ベクトルが正規直交系になる. スカラー行列ではない 2 次の実対称行列 A の相異なる固有値を λ1,λ2,対 応する固有ベクトルをそれぞれ v1,v2 とする.すると, λ1(tv1v2) = (λ1tv1)v2 = t(λ1v1)v2 = t(Av1)v2 = (tv1tA)v2 = (tv 1A)v2 = tv1(Av2) = tv1(λ2v2) = λ2(tv1v2) (6.7) である.λ1 ̸= λ2 より,(6.7) はtv1v2 = 0,つまり,v1 と v2 が直交することを 意味する.したがって,正規直交系になるように 2 つの固有ベクトル v1,v2 を選ぶことができる.
6.4
実対称行列の対角化
≪ 2 次の実対称行列の回転行列による対角化≫ 2 次の実対称行列の固有ベクト ル v1,v2 は P = ( v1 v2 ) が直交行列になるように選べるだけではなく,−v2 も固有ベクトルであるから P = (v1 v2 ) が原点のまわりの回転を表すように できる.したがって,2 次の実対称行列は原点のまわりでの回転を表す回転行 列によって対角化できる. 例題6−1 つぎの実対称行列を回転行列によって対角化せよ. (1) ( 2 √3 √ 3 4 ) (2) ( 0 2 2 3 ) (3) ( 1 −1 −1 1 ) (解答例)各問に対して行列を A と書く. (1) 固有方程式 det(A− λI) = 2− λ √ 3 √ 3 4− λ = 0 を整理した (λ− 2)(λ − 4) − 3 = λ2− 6λ + 5 = (λ − 5)(λ − 1) = 0から,固有値 λ1 = 5,λ2 = 1 が得られる.λ1 = 5 に対応する固有ベクトルは A− λ1I = ( −3 √3 √ 3 −1 ) (1)/√3 −−−−→ (2)+(1) ( −√3 1 0 0 ) から v1 = 1 2 ( 1 √ 3 ) と選べる.係数 1 2 は |v1| = 1 にするためのものである. λ2 = 1 に対応する固有ベクトル v2 は,行基本変形 A− λ2I = ( 1 √3 √ 3 3 ) (2)−√3×(1) −−−−−−−→ ( 1 √3 0 0 ) から,v2 = 1 2 ( −√3 1 ) と選べる.係数 1 2 は |v1| = 1 とするためのもの である.以上より,A は原点のまわりでの回転行列 P = 1 2 ( 1 −√3 √ 3 1 ) = cosπ 3 − sin π 3 sinπ 3 cos π 3 によってtP AP = ( 5 0 0 1 ) と対角化される. (2) 固有方程式 det(A− λI) = −λ 2 2 3− λ = 0 を整理した −λ(3 − λ) − 4 = λ2− 3λ − 4 = (λ − 4)(λ + 1) = 0 から,固有値 λ1 = 4,λ2 =−1 が得られる.λ1 = 4 に対応する固有ベクトルは A− λ1I = ( −4 2 2 −1 ) (1)/2 −−−−→ (2)+(1) ( −2 1 0 0 ) から,v1 = 1 √ 5 ( 1 2 ) と選べる.係数 √1 5 は|v1| = 1 とするためのものである. λ2 =−1 に対応する固有ベクトル v2 は,行基本変形 A− λ2I = ( 1 2 2 4 ) (2)−2×(1) −−−−−−→ ( 1 2 0 0 ) から,v2 = 1 √ 5 ( −2 1 ) と選べる.係数 √1 5 は|v1| = 1 とするためのものである. 以上より,A は原点のまわりでの回転行列 P = √1 5 ( 1 −2 2 1 ) = ( cos α − sin α sin α cos α ) によってtP AP = ( 4 0 0 −1 ) と対角化される.ここに α は cos α = √1 5,sin α =
2 √ 5 を満たす角度である. (3) 固有方程式 det(A− λI) = 1− λ −1 −1 1− λ = 0 を整理した (λ− 1)2− 1 = λ2− 2λ = λ(λ − 2) = 0 から,固有値 λ1 = 2,λ2 = 0 が得られる.λ1 = 2 に対応する固有ベクトル v1 は,行基本変形 A− λ1I = ( −1 −1 −1 −1 ) (2)−(1) −−−−−→ (1)×(−1) ( 1 1 0 0 ) から,v1 = 1 √ 2 ( 1 −1 ) と選べる.係数 √1 2 は |v1| = 1 とするためのものであ る.λ2 = 0 に対応する固有ベクトル v2 は,行基本変形 A− λ1I = ( 1 −1 −1 1 ) (2)+(1) −−−−→ ( 1 −1 0 0 ) から,v2 = 1 √ 2 ( 1 1 ) と選べる.係数 √1 2 は |v1| = 1 とするためのもの である.以上より,A は原点のまわりでの回転行列 P = √1 2 ( 1 1 −1 1 ) = cos ( −π 4 ) − sin(−π 4 ) sin ( −π 4 ) cos ( −π 4 ) によってtP AP = ( 2 0 0 0 ) と対角化される. 課題6−3(TAチェック) つぎの実対称行列を回転行列によって対角化せよ. ( 7 −3√3 −3√3 13 ) 課題6−4(TAチェック) つぎの実対称行列を回転行列によって対角化せよ. ( 0 1 1 0 ) 課題6−5(TAチェック) つぎの実対称行列を回転行列によって対角化せよ. ( 1 2 2 4 )
6.5
x
の
2
次方程式が表す図形
≪ x の 2 次方程式≫ はじめに x の 2 次方程式 ax2+ 2bx + c = 0 (a̸= 0) (6.8) が表す図形を考える.ここに,(6.8) が表す図形とは (6.8) を満たす点の集合, つまり (6.8) の実数解全体のことである.いうまでもなく,(6.8) を満たす点は, 判別式 D = b2 − ac が正ならば 2 つ,D = 0 ならば 1 つあり,D < 0 のとき は 1 つもない. 2 次方程式が表す図形の係数への依存性は,簡単な例 x2+ c = 0 (6.9) の場合にはつぎのようになる. • c < 0 ならば (6.9) を満たすのは x = −√−c と x =√−c の 2 点である. この範囲で c が 0 に近づくにつれて 2 点はしだいに近づく. • c = 0 で 2 点は原点で合体して 1 点になる. • c > 0 に対しては (6.9) を満たす点は存在しない. ≪空集合≫ 要素が何もない集合を空集合という.c > 0 の場合,(6.9) の左辺は 常に正であり,右辺は 0 である.したがって,(6.9) を満たす実数 x は 1 つも 存在しないので,この方程式が表す図形は空集合であるという.6.6
交差項
xy
の係数が
0
である
2
次方程式が表す曲線
≪ 2 次曲線≫ xy 平面において x と y の 2 次方程式 ax2 + 2bxy + cy2+ dx + ey + f = 0 (6.10) が表す図形を 2 次曲線 という.ここに,a,b,c,d,e,f はすべて定数であ り,2 次の項の係数 a,b,c の少なくとも 1 つは 0 ではない. 課題6−6 xy 平面上の 2 次曲線を表す一般式は (6.10) である.つぎの例に ついて,a∼ f の値を求めよ.ただし,α,β は正の定数である. (1) x 2 α2 + y2 β2 = 1 (2) x2 α2 + y2 β2 = 0 (3) x2 α2 + y2 β2 =−1 (4) x 2 α2 − y2 β2 = 1 (5) x2 α2 − y2 β2 = 0 (6) x2 α2 = 1 (7) x 2 α2 = 0 (8) x2 α2 =−1 (9) x2 α2 = y≪交差項 xy の係数が 0 である 2 次方程式≫ 課題6−6の例のように xy の 係数が 0 の場合 ax2+ cy2 + dx + ey + f = 0 (6.11) について,2 次方程式が表す図形を考えよう.(6.11) とこれに −1 を掛けた 2 次方程式は同じ図形を表す.また,x と y を交換した 2 次方程式は合同な図形 を表す.したがって,a > 0 であると考えてよいので,(6.11) は本質的にはつ ぎの 3 つに類別される. 楕 円 (E) 型: a > 0, c > 0 双曲線 (H) 型: a > 0, c < 0 放物線 (P) 型: a > 0, c = 0 課題6−7 課題6−6の 2 次方程式が楕円 (E) 型,双曲線 (H) 型,放物線 (P) 型のいずれかであるかを判定せよ. ≪楕円とその仲間たち:1つの例≫ 楕円型の例として,第1章の (1.2) で扱った 5x2+ y2− 10x + 2y + f = 0 (6.12) を再び取り上げる.これを x,y の両方について平方完成して,整理すれば 5(x− 1)2+ (y + 1)2 = 6− f ⇔ (x − 1)2+(y + 1) 2 5 = 6− f 5 となる.したがって,(6.12) は • f = −9 のとき楕円(Figure 6.2 の左上)を表す. • f < 6 の範囲では楕円を表す.この範囲で f が 6 に近づくにつれて長径 も短径も小さくなる. • f = 6 では 1 点 ( 1 −1 ) を表す. • f > 6 のときには空集合を表す. 一般の楕円型については ≪楕円 (E) 型の 2 次方程式が表す図形≫ を参照せよ. ≪双曲線とその仲間たち:1つの例≫ 双曲線型の例として 4x2− y2+ 8x + 2y + f = 0 (6.13) を取り上げる.これを x,y の両方について平方完成して,整理すれば 4(x + 1)2− (y − 1)2 = 3− f ⇔ (x + 1)2− (y− 1) 2 4 = 3− f 4 となる.したがって,(6.13) は
• f = 1 のとき双曲線(Figure 6.2 の右上)を表す. • f < 3 の範囲では x 軸方向に開いた双曲線を表す.この範囲で f が 3 に 近づくにつれて双曲線は 2 本の漸近線に近づく. • f = 3 のとき漸近線(Figure 6.2 左下)を表す. • f > 3 の範囲では y 軸方向に開いた双曲線を表す. 一般の双曲線型については≪双曲線 (H) 型の 2 次方程式が表す図形≫ を参照 せよ. 㸦᭤⥺㸧 㸦ᴃ㸧 㸦ᕪࡍࡿ┤⥺㸧 㸦ᨺ≀⥺㸧 2 2 ( 1) ( 1) 3 5 y x + − + = 2 2 ( 1) 1 ( 1) 4 2 y x − + − = 2 2 ( 1) ( 1) 0 4 y x − + − = 2 ( 1) 3 y = x+ − Figure 6.2: 典型的な 2 次曲線 ≪放物線とその仲間たち:1つの例≫ 放物線型の例として 2x2 + 4x + ey− 4 = 0 (6.14) を考える.これを x について平方完成して,整理すれば (−e)y = 2(x + 1)2− 6 となる.したがって,(6.14) は • e = −2 のとき放物線(Figure 6.2 の右下)を表す.
• e < 0 の範囲では下に凸の放物線を表す.この範囲で e が 0 に近づくに つれて放物線は平行な 2 直線 (x + 1)2 = 3 に近づく. • e = 0 のとき平行な 2 直線 (x + 1)2 = 3 を表す. • e > 0 の範囲では上に凸の放物線を表す. 一般の放物線型については ≪放物線 (P) 型の 2 次方程式が表す図形≫ を参照 せよ. ≪楕円 (E) 型の 2 次方程式が表す図形≫ 一般の楕円型を考えよう.(6.11) に おいて a > 0,c > 0 としてよい.(6.11) を平方完成すれば a ( x + d 2a )2 + c ( y + e 2c )2 = d 2 4a + e2 4c − f (a > 0, c > 0) となる.ここで,x1 =− d 2a,y1 =− e 2c,p = d2 4a + e2 4c − f 置けば a(x− x1)2+ c(y− y1)2 = p (a > 0, c > 0) と整理され,p の符号によりつぎのように分類される.. p > 0 ⇒ (x− x1) 2 α2 + (y− y1)2 β2 = 1 (楕円)( α =√p/a, β =√p/c ) p = 0 ⇒ (x− x1) 2 α2 + (y− y1)2 β2 = 0 (1 点)( α =√1/a, β =√1/c ) p < 0 ⇒ (x− x1) 2 α2 + (y− y1)2 β2 =−1 (空集合)( α =√−p/a, β =√−p/c ) (6.15) ≪双曲線 (H) 型の 2 次方程式が表す図形≫ 次に一般の双曲線型を考えよう. (6.11) において a > 0,c < 0 としてよい.(6.11) を平方完成すれば a ( x + d 2a )2 + c ( y + e 2c )2 = d 2 4a + e2 4c − f (a > 0, c < 0) となる.ここで,x1 =− d 2a,y1 =− e 2c,p = d2 4a + e2 4c − f と置けば a(x− x1)2− (−c)(y − y1)2 = p (a > 0, −c > 0) と整理され,p の符号によりつぎのように分類される.
p > 0 ⇒ (x− x1) 2 α2 − (y− y1)2 β2 = 1 (x 軸方向に開いた双曲線) ( α =√p/a, β =√−p/c ) p = 0 ⇒ (x− x1) 2 α2 − (y− y1)2 β2 = 0 (交差する 2 直線) ( α =√1/a, β =√−1/c ) p < 0 ⇒ (y− y1) 2 β2 − (x− x1)2 α2 = 1 (y 軸方向に開いた双曲線) ( α =√−p/a, β =√p/c ) (6.16) ≪放物線 (P) 型の 2 次方程式が表す図形≫ 一般の放物線型を考えよう.(6.11) で a > 0,c = 0 としてよい.a > 0 を利用すれば (6.11) は a ( x + d 2a )2 + ey = d 2 4a − f (a > 0) と平方完成される.ここで,x1 =− d 2a,p = d2 4a − f と置けば a(x− x1)2+ ey = p (a > 0) と整理され,e が 0 であるか否かと p の符号によりつぎのように分類される. e = 0, p > 0 ⇒ (x− x1) 2 α2 = 1 (平行な 2 直線)( α =√p/a ) e = 0, p = 0 ⇒ (x− x1) 2 α2 = 0 (1 直線)( α =√1/a ) e = 0, p < 0 ⇒ (x− x1) 2 α2 =−1 (空集合)( α =√−p/a ) e̸= 0 ⇒ y = p e − a e(x− x1) 2 (放物線) (6.17) 以上に示したように,交差項 xy の係数が 0 である 2 次方程式は,必要な らば両辺に−1 を掛けたり,変数 x と y を交換したりし,適切な平方完成をす れば,標準形と呼ばれる (6.15),(6.16),(6.17) のいずれかに変形できる.
課題6−8(TAチェック) つぎの 2 次方程式を標準形に変形し,どのよう な 2 次曲線を表すか判定せよ. (1) 9− x2− 4y2+ 4x + 24y = 0 (2) 28− x2+ 4y2+ 4x + 24y = 0 (3) x− 4y2+ 24y− 31 = 0 (4) 13− 4y2− 24y = 0 まとめ: 交差項の係数が 0 である 2 次方程式が表す図形 交差項 xy の係数が 0 である 2 次方程式 ax2 + cy2 + dx + ey + f = 0 (|a| + |c| > 0)が表す図形はつぎの通りである. (E) ac > 0 ならば,楕円,1 点,または,空集合 (H) ac < 0 ならば,双曲線,または,交差する 2 直線 (P) ac = 0 ならば,放物線,平行な 2 直線,1 直線,または,空集合
6.7
一般の
2
次曲線
≪一般の 2 次方程式が表す 2 次曲線≫ x,y の 2 次方程式 (6.10) は 2 次の実 対称行列 A = ( a b b c ) ,1× 2 実行列 B =(d e),実数 f を用いて ( x y)A ( x y ) + B ( x y ) + f = 0 (6.18) の形に書くことができる.また,A は回転を表す行列 P = ( p −q q p ) (p = cos θ, q = sin θ) によって tP AP = ( λ1 0 0 λ2 ) , λ1, λ2 : A の固有値 と対角化されることを学んだ.そこで,(6.10) ≡ (6.18) の x,y に変数変換 ( x y ) = P ( u v ) (6.19) を施すと,(6.10) ≡ (6.18) は (6.18) ⇔ (u v)tP AP ( u v ) + BP ( u v ) + f = 0 ⇔ (u v) (λ1 0 0 λ2 ) ( u v ) + BP ( u v ) + f = 0を経て,交差項 uv の係数が 0 である u,v の 2 次方程式 λ1u2+ λ2v2+ (dp + eq)u + (−dq + ep)v + f = 0 (6.20) に変換される.直交行列は合同変換を表すから,u,v の 2 次方程式 (6.20) が 表す 2 次曲線は x,y の 2 次方程式 (6.10) ≡ (6.18) が表す 2 次曲線と合同で ある.実際,直交行列 P を原点のまわりの θ だけの回転を表す行列として選 んだから,(6.20) が定める uv 平面上の図形を原点のまわりの θ だけの回転し たものが (6.10)≡ (6.18) によって定まる xy 平面上の図形となる. まとめ: 2 次方程式が表す図形 実対称行列 ( a b b c ) (|a| + |b| + |c| > 0) の固有値を λ1,λ2 とする.2 次 方程式 ax2+ 2bxy + cy2+ dx + ey + f = 0 が表す図形はつぎの通りである. (E) λ1λ2 > 0 ならば,楕円,1 点,または,空集合 (H) λ1λ2 < 0 ならば,双曲線,または,交差する 2 直線 (P) λ1λ2 = 0 ならば,放物線,平行な 2 直線,1 直線,または,空集合 ≪楕円とその仲間たち≫ 楕円とその仲間たちを表す 2 次方程式の例を提供しよ う. 例題6−2 つぎの 2 次方程式を標準形に変形し,どのような 2 次曲線を表 すか判定せよ. (1) 2x2+ 2√3xy + 4y2− (5 +√3)x + (1− 5√3)y− 9 = 0 (2) 2x2+ 2√3xy + 4y2− (5 +√3)x + (1− 5√3)y + 6 = 0 (3) 2x2+ 2√3xy + 4y2− (5 +√3)x + (1− 5√3)y + 11 = 0 (解答例)A = ( 2 √3 √ 3 4 ) ,B = (−(5 +√3) 1− 5√3) と置けば,どの方 程式も ( x y)A ( x y ) + B ( x y ) + f = 0 と表現される.(1) なら f = −9,(2) なら f = 6,(3) なら f = 11 であ
る. 例題6−1 (1) によれば A は原点のまわりでの π/3 回転を表す行列 P = 1 2 ( 1 −√3 √ 3 1 ) によって tP AP = ( 5 0 0 1 ) と対角化される. 変数変換 ( x y ) = P ( u v ) を施せば, BP =(−(5 +√3) 1− 5√3) 1 2 ( 1 −√3 √ 3 1 ) =(−10 2) であるから,変換後の 2 次方程式は 5u2+ v2− 10u + 2v + f = 0 ⇔ 5(u − 1)2+ (v + 1)2 = 6− f (6.21) となる.したがって,(1) は楕円を,(2) は 1 点 ( 1 −1 ) を,(3) は空集合を表す. f =−9 のときの (6.21) (u− 1)2+(v + 1) 2 5 = 3 が表す楕円を Figure 6.3 左側に示す.これを原点のまわりで π/3 回転したもの が (1) で定まる xy 平面上の楕円(Figure 6.3 右側)である. π/3 回転
O
u
v
O
y
x
Figure 6.3: (1) が定める楕円:左は uv 平面上,右は xy 平面上 課題6−9 つぎの 2 次方程式を標準形に変形し,どのような 2 次曲線を表 すか判定せよ(課題6−3参照のこと). (1) 7x2− 6√3xy + 13y2+ 4√3x + 4y− 12 = 0 (2) 7x2− 6√3xy + 13y2+ 4√3x + 4y + 4 = 0 (3) 7x2− 6√3xy + 13y2+ 4√3x + 4y + 5 = 0≪双曲線とその仲間たち≫ 双曲線とその仲間たちを表す 2 次方程式の例を提供 しよう. 例題6−3 つぎの 2 次方程式を標準形に変形し,どのような 2 次曲線を表 すか判定せよ. (1) 4xy + 3y2+√4 5x + 18 √ 5y + 1 = 0 (2) 4xy + 3y2+√4 5x + 18 √ 5y + 3 = 0 (3) 4xy + 3y2+√4 5x + 18 √ 5y + 5 = 0 (解答例)A = ( 0 2 2 3 ) ,B = ( 4 √ 5 18 √ 5 ) と置けば,どの方程式も ( x y)A ( x y ) + B ( x y ) + f = 0 と表現される.(1) なら f = 1,(2) なら f = 3,(3) なら f = 5 である. 例 題6−1 (2) によれば A は原点のまわりでの回転行列 P = √1 5 ( 1 −2 2 1 ) = ( cos α − sin α sin α cos α ) によって tP AP = ( 4 0 0 −1 ) と対角化される.ここに α は cos α = √1 5,sin α = 2 √ 5 を満たす角度である. 変数変換 ( x y ) = P ( u v ) を施せば, BP = ( 4 √ 5 18 √ 5 ) 1 √ 5 ( 1 −2 2 1 ) =(8 2) であるから,変換後の 2 次方程式は 4u2− v2+ 8u + 2v + f = 0 ⇔ 4(u + 1)2− (v − 1)2 = 3− f (6.22) となる.したがって,(1),(3) は双曲線を,(2) は交差する 2 直線を表す. f = 1 のときの (6.22) は (u + 1)2−(v− 1) 2 4 = 1 2 となるが,これが表す双 曲線を Figure 6.4 左側に示す.これを原点のまわりで α 回転したものが (1) で 定まる xy 平面上の双曲線(Figure 6.4 右側)である. f = 3 のときの (6.22) は (u + 1)2− (v− 1) 2 4 = 0 となるが,これが表す交 差する 2 直線を Figure 6.5 左側に示す.これを原点のまわりで α 回転したも のが (2) で定まる xy 平面上の交差する 2 直線(Figure 6.5 右側)である.
f = 5 のときの (6.22) は (v− 1) 2 4 − (u + 1) 2 = 1 2 となるが,これが表す双 曲線を Figure 6.6 左側に示す.これを原点のまわりで α 回転したものが (3) で 定まる xy 平面上の双曲線(Figure 6.6 右側)である. α 回転
O
u
O
v
y
x
1
cos
5
α =
2
sin
5
α =
Figure 6.4: (1) が定める双曲線:左は uv 平面上,右は xy 平面上 α 回転O
u
O
v
y
x
1
cos
5
α =
2
sin
5
α =
Figure 6.5: (2) が定める交差する 2 直線:左は uv 平面上,右は xy 平面上 α 回転O
u
O
v
y
x
1
cos
5
α =
2
sin
5
α =
Figure 6.6: (3) が定める双曲線:左は uv 平面上,右は xy 平面上 課題6−10 つぎの 2 次方程式を標準形に変形し,どのような 2 次曲線を 表すか判定せよ(課題6−4参照のこと). (1) 2xy + 4√2x + 2√2y + 7 = 0 (2) 2xy + 4√2x + 2√2y + 8 = 0 (3) 2xy + 4√2x + 2√2y + 9 = 0≪放物線とその仲間たち≫ 放物線とその仲間たちを表す 2 次方程式の例を提供 しよう. 例題6−4 つぎの 2 次方程式を標準形に変形し,どのような 2 次曲線を表 すか判定せよ. (1) x2+ y2− 2xy + 2√2x− 2√2y = 0 (2) x2+ y2− 2xy + 2√2x− 2√2y + 2 = 0 (3) x2+ y2− 2xy + 2√2x− 2√2y + 4 = 0 (4) x2+ y2− 2xy +√2x− 3√2y− 4 = 0 (解答例)A = ( 1 −1 −1 1 ) ,B =(2√2 −2√2) と置けば,(1),(2),(3) は ( x y)A ( x y ) + B ( x y ) + f = 0 と表現される.(1) なら f = 0,(2) なら f = 2,(3) なら f = 4 である. 例題6− 1 (3) によれば A は原点のまわりでの−π/4 回転を表す行列 P = √1 2 ( 1 1 −1 1 ) によって tP AP = ( 2 0 0 0 ) と対角化される. 変数変換 ( x y ) = P ( u v ) を施せば, BP =(2√2 −2√2) 1√ 2 ( 1 1 −1 1 ) =(4 0) であるから,変換後の 2 次方程式は 2u2+ 4u + f = 0 ⇔ 2(u + 1)2 = 2− f ⇔ (u + 1)2 = 1− f/2 (6.23) となる.したがって,(6.23) は,f = 0 のときは平行な 2 直線 u =−2,u = 0, f = 2 のときは 1 直線 u =−1,f = 4 のときは空集合を表す. (1),(2),(3) の場合と同じ 2 次実対称行列 A を用い,B = (√2 −3√2), f =−4 と置けば (4) も ( x y)A ( x y ) + B ( x y ) + f = 0
と表現される.変数変換 ( x y ) = P ( u v ) を施せば, BP =(√2 −3√2) 1√ 2 ( 1 1 −1 1 ) =(4 −2) であるから,変換後の 2 次方程式は 2u2 + 4u− 2v − 4 = 0 ⇔ 2(u + 1)2− 2v = 6 ⇔ (u + 1)2− v = 3 (6.24) となる.したがって,(4) は放物線を表す.この放物線を Figure 6.7 左側に示 す.これを原点のまわりで −π/4 回転したものが (4) で定まる xy 平面上の放 物線(Figure 6.7 右側)である.