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Vol.22 No.4, Impression-based Fabrication: An Automated Design System of Picture Frames Suitable for a Desired Impression Takashi Tot

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Academic year: 2021

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原著論文 Vol.22 No.4, 2020

ユーザの求める印象に適合したフォトフレームを自動設計する

感性ファブリケーションシステムの実現

戸塚 敬

∗1

  木下 雄一朗

∗2 ∗3

  白神 翔太

∗1

  郷 健太郎

∗2 ∗3

Impression-based Fabrication: An Automated Design System of Picture Frames Suitable for a Desired Impression

Takashi Totsuka∗1, Yuichiro Kinoshita∗2 ∗3, Shota Shiraga∗1and Kentaro Go∗2 ∗3

Abstract This paper focuses on impression-based fabrication, a framework of personal fabrication that automatically generates 3D printing data of multiple designs suitable for user’s desired impression, and develops a design system for picture frames as a case study. The framework consists of a design generation unit creating design candidates and an im-pression evaluation model assessing the candidates in terms of their appropriateness to the desired impression. In developing the system, an impression evaluation experiment is first conducted to clarify the relationship between various picture frames and their im-pression. By training neural networks using the experimental result, a set of impression evaluation models is implemented. The design generation unit is built based on the ap-proach of a genetic algorithm in which the implemented model set is used as an evaluation function. An experiment evaluating the designs generated by the system demonstrates the validity of the framework in terms of the suitability and diversity of the designs.

Keywords : Kansei engineering, automated design, personal fabrication, picture frame, impression 1. はじめに 3D プリンタの普及により,パーソナルファブリケー ションという,個人がその場で欲しいものを作成とい う考え方が注目されている.パーソナルファブリケー ションでは,多くの場合,作成したい人工物の 3D モ デルを事前に用意する必要があるため,3D モデルの 形成支援を目的とした研究が行われている[1] [2] [3].し かし,これらの研究では,作成したい人工物の形状が 既にイメージできていることが前提となっており,デ ザインの経験がない初心者ユーザにとっては,3D モ デルの形成は容易ではない.一方,3D モデルのデータ を共有・ダウンロードできるオンラインサービスも存 在するが,この 3D モデルデータを使用した場合,作 成される人工物に個人的な嗜好を反映できないという 問題点がある.そこで,本研究では,ユーザが手軽に イメージ通りの人工物を入手できるよう,ユーザの求 める印象に合致した人工物を自動設計する枠組み[4] [5] をパーソナルファブリケーションに適用する.筆者ら はこれを,感性ファブリケーション[6]と呼ぶ. *1:山梨大学大学院 医工農学総合教育部 *2:山梨大学大学院 総合研究部 *3:山梨大学 工学部 コンピュータ理工学科

*1:Integrated Graduate School of Medicine, Engineering, and Agricultural Sciences, University of Yamanashi

*2:Graduate Faculty of Interdisciplinary Research, University of Yamanashi

*3:Department of Computer Science and Engineering, Faculty of Engineering, University of Yamanashi

感性ファブリケーションにおいては,対象となる人 工物に応じたシステムの構築が必要である.そこで, 本論文では,「感性ファブリケーション」のケーススタ ディとして,これをフォトフレームの設計に適用し, ユーザの求める印象を加味したフォトフレームを自動 設計するシステムを実現する. 近年スマートフォンの普及により,高画質な写真を 手軽に撮影できるようになった.その写真をプリント して飾る場合,現状では市販のフォトフレームを購入 することが一般的である.しかし,飾る写真にはそれ ぞれ思い出やこだわりがあることが多く,その形は様々 である.その際,フォトフレームのデザインも個々の 思い出に合った印象のものにすることで,写真の思い 出をより鮮明に映し出せるようになると考えられる. 2. 関連研究 2. 1 3D モデルの形成支援 3D プリンタを利用したファブリケーションに必要 となる 3D モデルの形成を支援する研究が行われてい る.MixFab[1]は,複合現実による仮想オブジェクト とジェスチャを用いた入力により 3D モデルの形成を 支援する環境を実現している.また,粘土で形成した 形状のスキャンによる支援のアプローチも報告されて いる[2] [3].しかし,設計する人工物でユーザの理想と する印象を実現するためには,その印象をどのように 形状に落とし込むべきかイメージできている必要があ

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り,デザインの経験がない初心者ユーザにとって 3D モ デルの形成は容易ではない.一方,Thingiverse1のよ うに,ユーザが作成した 3D モデルのデータを共有で きるオンラインサービスが存在する.ここから,ユー ザ自身の求める印象に合致した 3D モデルのデータを ダウンロードすることも可能である.しかし,この場 合,ダウンロードした 3D モデルに則った,型にはまっ たファブリケーションしかできないといった問題があ る.本研究で実現するシステムでは,人工物設計の際, ユーザの求める印象を加味するとともに,設計のたび に少しずつ違ったデザインの 3D モデルを提示するこ とで,個人の嗜好を反映する余地を作りこの問題を解 決する. 2. 2 感性工学による人工物の設計 人工物を設計する過程でユーザの印象を加味する手 法として,感性工学[7]がある.感性工学では,人工物 の物理的特徴とそこからユーザが受ける印象との関係 を分析し,その分析結果に基づき人工物を設計すると いう手法が採られる.さらに,これらの関係を数値モ デルとして構築し,設計に活用した研究も見られる. 例えば,Hsiao ら[8]は,オフィスチェアを対象とし て,その物理特徴量と印象との関係をニューラルネッ トワークを使用してモデル化している.このようなモ デルの構築により,設計された人工物がユーザに与え る印象を推定することが可能となる. 一方で,入力された印象をもとにその印象に合致し た人工物を出力する数値モデルを構築した例もある. Misaka ら[9]は,6 種類の印象の程度を入力すること で,それに対応したカップのひび割れデザインの物理 特徴量を出力するモデルを構築している.また,Emo-tiveModeler[10]は,人間の感情を表す語を入力するこ とにより,その語に合致した立体物の取得が可能なシ ステムである.ただし,これらの例では入力された印 象に対して常に同一の解しか出力できず,出力された 複数の解からユーザが自身の嗜好にあったものを選ぶ といったことはできない. 2. 3 多様なデザインの自動生成 ある入力に対して複数のデザインを生成して出力す る手法として,遺伝的アルゴリズムを用いた事例が存 在する.これらは,遺伝的アルゴリズムの,最適解に 加え複数の準最適解も同時に探索できるという特徴を 利用したものである.Geigel ら[11]は,遺伝的アルゴ リズムを用いて,アルバムにおける写真のレイアウト を自動生成するシステムを構築している.一方,遺伝 的アルゴリズムにおいてユーザの印象や嗜好を考慮す る際,評価関数の代わりにユーザ自身が評価に関与す る,対話型遺伝的アルゴリズム[12]が用いられる例も 1:http://www.thingiverse.com/ 出力 3Dモデル プリンタ3D 入力 理想の印象 印象 評価値 デザイン 候補 感性ファブリケーションシステム デザイン生成ユニット 印象評価モデル 図1 感性ファブリケーションの枠組み.

Fig. 1 Components of impression-based

fabri-cation. 多い.例えば,Cluzel ら[13]は,自動車の側面形状の デザインに対話型遺伝的アルゴリズムを適用している. この方法では,ユーザの評価が直接人工物の設計に反 映される反面,ユーザの関与が必要となるため,遺伝 的アルゴリズムにおける世代の進行に時間を要すると いう問題が指摘されている. ユーザの評価に要する時間を削減するため,前節で 述べた,人工物の印象をその物理特徴量に基づいて推 定するモデルをあらかじめ構築し,それを遺伝的アル ゴリズムの評価関数として使用するという方法が考え られる.この方法により,Hsiao ら[4]は求める印象に 合致したドアロックのパネル形状を探索するシステム を,Kinoshita ら[5]は求める印象に合致した街並みの 色彩配置を提案するシステムをそれぞれ実現している. これらの規模の問題であれば,一般的な PC において も数秒程度で最適解を得ることが可能である.本研究 で実現するシステムは,この方法を 3D プリント可能 な完成形デザインの出力に応用したものであり,形状 および色彩の両方を考慮したより複雑なデザインを実 現する.本システムの利点は,ユーザの最小限の関与 により,自身の求める印象に合致した多様なデザイン が自動設計され,そこから自身の嗜好にあったものを 選択できる点にある. 3. 感性ファブリケーション 感性ファブリケーション[6]の枠組みは,印象評価モ デルとデザイン生成ユニットからなる.この枠組みを 図 1 に示す.ユーザは,まず,ユーザインタフェース を通して,理想とする人工物の印象を,1 語または 2 語の印象語で入力する.すると,デザイン生成ユニッ トがランダムな人工物の設計データを複数生成し,そ れぞれを印象評価モデルに入力する.印象評価モデル は入力された設計データに対して,どれだけ入力され た印象語に適合しているか,という観点から評価値を 付け,デザイン生成ユニットに返す.なお,評価値は 高ければ高いほど,より,その印象語に適合している ことを表す.デザイン生成ユニットはその評価値を基 に,新たな設計データを生成し,印象評価モデルに対 して出力する.この,印象評価モデルが評価値を付け,

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表1 印象評価実験に用いた印象語対.

Table 1 Impression word pairs used in the impression evaluation experiment.

No. 印象語対 1 伝統的な — 近代的な 2 かたい — やわらかい 3 精密な — 粗雑な 4 美しい — 醜い 5 男性的な — 女性的な 6 あたたかい — つめたい 7 豪華な — 安っぽい 8 フォーマルな — カジュアルな 9 派手な — 地味な 10 明るい — 暗い 11 かっこいい — かっこ悪い 12 静かな — 騒がしい 13 かわいい — かわいげのない 14 斬新な — ありふれた 15 おもしろい — つまらない 16 はっきりとした — ぼんやりとした 17 力強い — 弱々しい 18 大人っぽい — 子供っぽい 19 魅力的な — 魅力のない 20 ひろびろとした — こぢんまりとした 21 自然な — 人工的な 22 重厚な — 華奢な それを基にデザイン生成ユニットが新たな設計データ を生成する,という処理を何度も繰り返した後,評価 値が高い人工物のデザインを最大 5 種類出力する.な お,出力されるデザインの多様性を考慮し,出力した デザインの中に酷似したデザインがあった場合は出力 をやめ,次に評価値が高いデザインを出力する.出力 は,人工物のデザインを 3D モデル化した画像と,カ ラー情報が添付された OBJ 形式の 3D データである. 前者は,ユーザにデザインの外観を示す画像として, 後者は,フルカラー 3D プリンタ等でプリントするた めのデータとして利用される.この枠組みでは,ラン ダムな人工物の設計データを基にした評価・生成を, ユーザから入力を受けた都度行うことで,実行ごとに 異なったデザインの出力を可能としている. 4. フォトフレーム印象評価実験 4. 1 実験概要 フォトフレームを設計する感性ファブリケーション システムの実装に先立って,人が様々なフォトフレー ムに対しどのような印象を抱くのかを調査することを 目的とした印象評価実験を行った.実験は 21–28 歳 (平 均:22.9 歳,標準偏差:2.1 歳) の大学生, 大学院生 12 名 (男性 11 名, 女性 1 名) の実験協力者を対象とした. 実験協力者は PC の画面に提示されたフォトフレーム のサンプル画像に対して抱く印象を評価した.実験に は Semantic Differential (SD) 法[14]を採用した. 4. 2 印象語対の選定 印象評価実験で使用する印象語の選定にあたり,ま ず,ウェブ上のフォトフレームに関する記事,オンラ インショッピングサイトやフォトフレーム専門店のウェ ブページ,形容詞辞典[15]から合計 290 語の形容詞, 表2 フォトフレームの物理的特徴を表すパラ メータ.

Table 2 Parameters representing physical characteristics of the picture frames.

パラメータ名 値の範囲 フレーム色 (L∗値) [0, 100] フレーム色 (a∗値) [−50, 50] フレーム色 (b∗値) [−50, 50] フレーム幅 [0.05, 0.18] 1 段目段形状 台形,長方形,直線上り,長方形上り,丸上り,丸 1 段目幅 (0, 1] 2 段目段形状 なし,直線,長方形下り,丸 2 段目幅 [0, 1) 3 段目段形状 なし,直線下り,長方形下り,丸下り 3 段目幅 [0, 1) 内フレーム有無 あり,なし 内フレーム色 なし,白,金 マット形状 なし,V カット,丸抜き マット短辺幅 なし,または [0.09, 0.22] マット長辺幅 なし,または [0.07, 0.24] 内フレーム フレーム マット 断面図 1 段目 2 段目 3 段目 図2 フォトフレームにおける「フレーム」,「内 フレーム」,「マット」および「段」の定義.

Fig. 2 Definition of frame, inner frame, mat

board and steps in a picture frame.

直線 (直前の高さを保持) 丸 台形 長方形 長方形下り 丸下り 直線下り 丸上り 直線上り 長方形上り 図3 段形状の名称とその断面図.

Fig. 3 Step shape names and their cross sec-tional view. 形容動詞を収集した.その後,参加者 8 名により,KJ 法[16]を用いて収集した語をグルーピングした後,グ ループの代表語を決めた.そして,反対の意味を持つ 代表語を対にして,表 1 に示す 22 対 44 語の印象語対 を実験で提示する語として選定した. 4. 3 サンプルの生成 実験で提示するフォトフレームサンプルの生成に あたり,まず,オンラインショッピングサイトである Amazon2から種類やサイズを問わず 208 種のフォト フレームを収集し,それらの縦横比,形状などを調査 した.そして,一般的なフォトフレームの特徴を表現 するのに適切なパラメータとして,表 2 に示す 15 種 類を抽出した.「フレーム」,「内フレーム」,「マッ ト」,「段」の定義を図 2 に,段形状の定義を図 3 に示 す.フレーム色は,L∗ab色空間で表現し,フレーム 2:http://www.amazon.co.jp/

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図4 評価システム実行画面.

Fig. 4 Screen appearance of the evaluation system.

(a) サンプル 1 (b) サンプル 14 (c) サンプル 31

図5 サンプル1,14,31の外観.

Fig. 5 Appearance of Samples 1, 14, and 31.

幅,マット水平辺幅,マット垂直辺幅については,写 真の短辺に対する割合で表現した.また,1,2,3 段 目の幅については,フレーム幅に対する割合とした. 最後に各パラメータの値をランダムに選択し,L 版サ イズの写真用を想定した 100 種類のフォトフレームサ ンプルを 3D モデルで生成した.この時,フレーム色 の L∗a∗b∗各値については,(L∗, a∗, b∗) = (50, 0, 0) か らの距離が 50 以下となる範囲で値を選択した. 4. 4 実験方法 実験は Processing3で作成した評価システムを用い て,PC 上で実施した.実験協力者は,直射日光を遮 断した蛍光灯照明の室内で,27 インチディスプレイ (Dell U2713HM, ガンマ値: 2.2, 白色点の色温度: 6500 K) から 60 cm の距離に着座した.評価システムの画 面表示を図 4 に示す.図のように画面上部に 3 視点か らのサンプル画像が提示される.各視点の目的は左か ら順に,フレームの細かい形状を示すため,正面から の概観を示すため,各部の厚みの概観を示すためであ る.実験協力者はフォトフレームの画像を見て,その 印象を画面下部に提示された 5 段階 SD 尺度で評価し た.なお,尺度の 1–5 の各値は,例えば「伝統的な— 近代的な」の印象語対であれば,1 が「伝統的な」2 が 「やや伝統的な」3 が「どちらでもない」4 が「やや近 代的な」5 が「近代的な」に対応している旨を事前に 実験協力者に教示した.また,L 版サイズの写真が入 るフォトフレームを想定して評価するよう教示した. 3:http://processing.org/ 伝統的な かたい 精密な 美しい 男性的な 豪華な フォーマルな 派手な 明るい かっこいい あたたかい 静かな かわいい 斬新な おもしろい はっきりとした 力強い 大人っぽい 魅力的な ひろびろとした 自然な 重厚な 近代的な やわらかい 粗雑な 醜い 女性的な 安っぽい カジュアルな 地味な 暗い かっこ悪い つめたい 騒がしい かわいげのない ありふれた つまらない ぼんやりとした 弱々しい 子供っぽい 魅力のない こぢんまりとした 人工的な 華奢な 1 2 3 4 5 平均評価値 サンプル 31 サンプル 14 サンプル 1 図6 サンプル1,14,31の印象評価結果.

Fig. 6 Impression evaluation results for Sam-ples 1, 14, and 31. 100 種類のサンプルの印象を 22 対の印象語で評価 するため,実験協力者 1 名あたりの評価回数は合計 2,200 回である.評価回数が多いため,実験は 100 種 類のサンプルを 50 種類ずつ 2 セットに分けて実施し た.各セットの実施順序,セット内のサンプルの提示 順序は,実験協力者ごとに無作為とした.実験中は, 20 分の評価が終わるごとに休憩を設けた.2 セット分 の実験時間の合計は,休憩時間を含め 2 時間 10 分程 度であった. 4. 5 実験結果 印象評価結果の一例として,図 5 に示すサンプル 1, 14,31 の印象語対ごとの平均評価値を図 6 に示す.な お,これらの評価値の標準偏差を確認したところ,中 央値は 1.03,最大値は 1.61 であった.図 5 および図 6 より,彩度が低い,マットがないなど,物理特徴量の 似ているサンプル 1 とサンプル 14 の平均評価値の分 布は似ているが,彩度が高い,マットがあるなど,物 理特徴量が他と異なるサンプル 31 の平均評価値は大 きく異なっていることがわかる.例えば,「かわいい— かわいげのない」という印象語対において,サンプル 1 とサンプル 14 は共にかわいげのない印象を与えて いる.一方,サンプル 31 はかわいい印象を与えてい る.さらに,「男性的な—女性的な」という印象語対に おいて,サンプル 1 とサンプル 14 は共に男性的な印 象を与えている.一方,サンプル 31 は女性的な印象 を与えている.以上より,サンプルの物理特徴量を操 作することにより,フォトフレームが与える印象を変 えることが可能であることが示唆された.

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表3 各因子における因子負荷量および因子寄 与率

Table 3 Factor loadings and factor contribu-tion ratios for each factor.

印象語対 因子1 因子2 因子3 因子4 かわいい — かわいげのない .927 −.191 −.008 .112 明るい — 暗い .884 −.120 .076 .184 男性的な — 女性的な −.763 .254 .060 .093 大人っぽい — 子供っぽい −.740 .440 .182 .171 静かな — 騒がしい −.726 .502 −.232 .050 あたたかい — つめたい .711 .391 .244 .010 派手な — 地味な .709 −.490 .262 .279 フォーマルな — カジュアルな −.699 .614 −.005 .123 かたい — やわらかい −.658 .039 .353 .161 おもしろい — つまらない .606 −.450 .336 .329 伝統的な — 近代的な −.329 .865 .194 .132 自然な — 人工的な −.093 .835 .072 .073 斬新な — ありふれた .155 −.780 .087 .167 力強い — 弱々しい −.133 .026 .939 .179 重厚な — 華奢な −.103 .031 .880 .174 はっきりとした — ぼんやりとした .157 −.056 .506 .442 ひろびろとした — こぢんまりした .278 .102 .497 .205 美しい — 醜い .330 .109 .276 .759 精密な — 粗雑な −.116 −.062 .074 .754 かっこいい — かっこ悪い −.455 .177 .235 .719 魅力的な — 魅力のない .323 −.052 .491 .672 豪華な — 安っぽい −.111 −.059 .557 .604 固有値 8.06 5.55 2.41 1.41 累積寄与率 .287 .453 .606 .749 4. 6 フォトフレームの印象における意味構造の 解明 実験に用いた印象語全体の意味構造を明らかにする ために,全実験協力者の平均評価値を用いて因子分析 (主因子法,Varimax 回転) を行った.そして,固有値 が 1 以上である因子を基準に表 3 に示す 4 因子を抽出 した.表の各値は,各因子と印象語対の相関の強さを 表した因子負荷量である.因子 1 は「明るい—暗い」 など,明るさ,朗らかさを表す印象語対に大きな因子 負荷量を有していることから「明朗性因子」と名付け た.因子 2 は「伝統的な—近代的な」など,新しさ, 奇抜さを表す印象語対に大きな因子負荷量を有してい ることから「新奇性因子」と名付けた.また,因子 3 は「力強い—弱々しい」などの印象語対に大きな因子 負荷量を有していることから,Osgood ら[14]の主張 する「力量性因子」,因子 4 は「美しい—醜い」など の印象語対に大きな因子負荷量を有していることから 同様に「評価性因子」と解釈できる.これら 4 因子の 累積寄与率は 74.9 %となり,フォトフレームの印象に おける意味構造の大部分がこれらの 4 因子で表現でき ることを意味する. 因子分析の結果,選定した印象語対の中には,意味 の似た対があることがわかった.例えば,「力強い— 弱々しい」,「重厚な—華奢な」における各因子の因子 負荷量は同じ傾向にある.このことを踏まえ,似た意 味の印象語対が複数ある場合は,それらの中から 1 対 を選定した.この結果,表 1 の No. 8,10,15,18, 19,20,21,22 の印象語対を除外した.以後,分析な どには,残った 14 の印象語対を用いる. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 段形状 形状 1 段目 2 段目 3 段目 フレーム形状 色 フレーム 内フレーム マット 段形状 段形状 色 有 無 垂 直 辺 幅 水 平 辺 幅 幅 幅 幅 幅 ビ ッ ト 1 ビ ッ ト 2 ビ ッ ト 1 ビ ッ ト 2 ビ ッ ト 1 ビ ッ ト 2 ビ ッ ト 1 ビ ッ ト 2 ビ ッ ト 3 b*a*L* 値 図7 フォトフレームの物理的特徴を表すパラ メータ.

Fig. 7 Parameters representing physical char-acteristics of the picture frames.

5. フォトフレームを設計する感性ファブリケー ションシステムの実装 5. 1 印象評価モデル 5. 1. 1 印象評価モデルの構成 印象評価モデルは,入力されたフォトフレームデザ インが与える印象を推定し,印象推定値として出力す る.入力は表 2 に示すフォトフレームの物理的特徴を 表すパラメータのうち,カテゴリ値を取るパラメータ を複数ビットの 2 進数で表現した計 20 種類で,出力 は入力されたフォトフレームが,どのような印象を与 えるかを表した印象推定値を 0–1 の範囲に正規化した 値である. 20 種類の入力パラメータを図 7 に示す.1–4,8,11, 14,19,20 番目のパラメータは,フレームの色や図 2 に示す各部位の幅を浮動小数点数の実数値で表すもの であり,値の範囲は表 2 と同一である.5–7 番目,9, 10 番目,12,13 番目のパラメータがそれぞれ 1,2,3 段目の形状の種類に対応しており,1 段目では 3 ビッ トの 2 進数で表 2 に示す 6 種類の形状を,2,3 段目で はそれぞれ 2 ビットの 2 進数で 4 種類の形状を表す. なお,各段が存在しない場合は,その段に対応する全 ビットが 0 となる.15 番目のパラメータは内フレー ムが存在するか否かを,存在する場合は 1,しない場 合は 0 で表したものである.16 番目は内フレームの 色を表すパラメータ (白: 0,金: 1) であり,17,18 番 目がマットの形状の種類に対応する 2 進数である (00 はマットが存在しないことを表す). 5. 1. 2 印象評価モデルの実装 印象評価モデルは,ニューラルネットワークで実装 した.使用したネットワークの構造は,入力層 20 ユ ニット,中間層 5 ユニット,出力層 1 ユニットであり, 印象語対ごとにそれぞれ個別のモデルとした.学習に は,フォトフレーム印象評価実験の際に提示したサン プルフォトフレームの物理的特徴を表すパラメータ 20 種類と,フォトフレーム印象評価実験の平均評価値の 組み合わせを教師データとして用いた.教師データ作 成にあたり,印象評価実験で提示した合計 100 サンプ

(6)

(かわいげのない) (かわいい) 0 0.25 0.50 0.75 1.00 1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 印象評価値 サンプル番号 実測値 推定値 誤差 (a) かわいい—かわいげのない (つめたい) (あたたかい) 0 0.25 0.50 0.75 1.00 1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 印象評価値 サンプル番号 実測値 推定値 誤差 (b) あたたかい—つめたい (派手な) (地味な) 0 0.25 0.50 0.75 1.00 1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 印象評価値 サンプル番号 実測値 推定値 誤差 (c) 派手な—地味な 図8 実装した印象評価モデルの汎化誤差の例.

Fig. 8 Examples of generalization errors in the impression evaluation models.

ルの 15 のパラメータ値を,前節で説明した 20 種類 のパラメータに変換した.その際,実数値であるパラ メータについては,表 2 に示した値の範囲を 0–1 の範 囲に正規化した.また,それらに対応する平均評価値 も同様に 1–5 の範囲を 0–1 の範囲に正規化し,教師 データとして用いた.学習には誤差逆伝搬法を用い, 学習係数は 0.01,慣性係数は 0.9 で,ニューラルネッ トワークの出力値と教師データの値の間の平均二乗誤 差が 0.01 になるまで学習させた. 5. 1. 3 性能検証 実装した各印象語対のモデルごとに,leave-one-out 交差検定により汎化性能の検証を行った.例として, 「かわいい—かわいげのない」「あたたかい—つめた い」「派手な—地味な」の結果を図 8 に示す.図の横 軸がフォトフレーム印象評価実験におけるサンプル番 号,縦軸が各印象語対における印象を表す.赤線は印 象評価モデルが出力した各フォトフレームの印象推定 値(推定値),青線は印象評価実験で得られた平均評 価値を 0–1 の範囲に正規化した値(実測値),緑線は それらの差の絶対値である.いずれも,赤線と青線が ほぼ一致しており,モデルによる推定値と実測値の間 で誤差が小さいことが確認できる.表 4 にすべての印 象語対のモデルについて,誤差の平均を示す.それぞ れの誤差は 6 %前後であった.5 段階 SD 尺度{1, 2, 3, 4, 5} の 1 の評価が 2 の評価になった時に生じる差 は 25 %であることから,この 6 %という値はそれに 比べ非常に小さい値であるといえる.このことから, 実装した印象評価モデルの良好な印象推定能力が確認 された. 5. 2 デザイン生成ユニット 5. 2. 1 個体の構造 デザイン生成ユニットは,遺伝的アルゴリズムを用 いて実現した.デザイン生成ユニットでは,フォトフ レームの物理的特徴を配列で表現する.遺伝的アルゴ リズムの 1 個体,すなわち 1 つのフォトフレームデザ インは図 7 に示した 20 のパラメータをそれぞれ配列

(7)

表4 各印象評価モデルにおける汎化性能.

Table 4 Generalization performance in each impression evaluation model.

印象語対 誤差の平均 標準偏差 かわいい — かわいげのない 6.1 % 3.9 % あたたかい — つめたい 6.9 % 3.6 % 派手な — 地味な 6.6 % 3.7 % 男性的な — 女性的な 6.2 % 3.9 % 静かな — 騒がしい 6.0 % 3.7 % かたい — やわらかい 6.8 % 3.6 % 伝統的な — 近代的な 6.7 % 3.6 % 斬新な — ありふれた 6.5 % 3.7 % 力強い — 弱々しい 6.0 % 3.5 % はっきりとした — ぼんやりとした 6.2 % 3.4 % 美しい — 醜い 6.0 % 3.7 % 精密な — 粗雑な 6.5 % 3.5 % かっこいい — かっこ悪い 5.9 % 3.9 % 豪華な — 安っぽい 6.0 % 3.7 % の要素として格納することで構成される. 5. 2. 2 デザイン生成アルゴリズム まずはじめにランダムなパラメータで初期化された 100 個体を生成し,それらを 1 世代目として,印象評 価モデルを用いて各個体の評価を行う.そして,評価 値に基づく選択,交叉,突然変異というプロセスを経 て,1 世代目の個体群の持つ良い特徴を受け継いだ 2 世代目の個体群を生成する.2 世代目以降の個体群に ついても同様のプロセスを繰り返すことで,より評価 値の高い個体を生成していく. 評価では,各個体を,システムに入力された印象語 への適合度に基づき評価する.ここで,システムに入 力された 1 語または 2 語の印象語の集合を S とする. 印象語 j (j ∈ S) が,印象語対の右側の印象語であっ た場合には,個体 i の印象語 j への適合度 eijは単純 に,個体 i に対する印象語 j の印象評価モデルによる 印象推定値 oijにより, eij= oij (1) となる.一方,入力された印象語 j が印象語対の左側 の印象語であった場合には, eij= 1− oij (2) となる.この適合度 eijを基に,個体 i の評価値 fiを, fi= ∑ j∈Seij n(S) (3) のように設定した. 次に,選択では,ルーレット選択を用い,入力され た世代の中から評価値の高い個体を中心に,重複を許 して 100 個体を選択する.個体 i が次世代への親個体 として選択される確率 piは, pi= fiN k=1fk (4) のように表される.ここで,N は 1 世代の個体数で ある. (地味な) (派手な) 0 0.25 0.50 0.75 1.00 世代数 1 51 101 151 201 251 個体評価値の平均 図9 「地味な」を入力した際の世代ごとの個体 評価値の推移.

Fig. 9 Transition of the fitness score for the input of modest with respect to each generation. 交叉では,選択された親個体の配列に対し,一定の 確率で一点交叉を適用することで新しい個体を生成す る.交叉確率は 90 %とした.また,個体の 5–7 番目, 9,10 番目,12,13 番目,17,18 番目の 2 進数を構 成する各ビット間での交叉は禁止した.さらに,片方 の個体のフレームが 1 段目しかなく,もう片方の個体 が 3 段目まである場合,11 番目と 12 番目の間で交叉 すると,交叉後の個体は 1 段目と 3 段目を持った個体 となってしまう.これは,2 段目が存在しないにもか かわらず 3 段目が存在する,という矛盾を持った個体 であり,個体として不適切である.よって,このよう な矛盾を排除するため,11 番目と 12 番目の間で交叉 することは禁止した. 突然変異では,交叉により生成された新たな個体の 配列の要素を,1 %の確率でランダムに設定しなおす. 突然変異についても,2 進数を構成するパラメータに ついてはビットごとではなく 2 進数に対してまとめて 適用することとした. 以上のプロセスを 300 世代繰り返すことで,システ ムに入力された印象に適合しない個体は淘汰され, 入 力された印象を与える個体はその良い形質を受け継ぎ, 進化を繰り返していく.最終的に,入力された印象に 適合した多様なフォトフレームデザインが獲得される. 5. 2. 3 性能検証 実装したデザイン生成ユニットについて,性能検証 を行った.まず,それぞれの印象語を入力した際,世 代を重ねるごとに各個体の評価値 fiがどのように推移 しているかを調査した.結果の例として,図 9 に「地 味な」を入力した際の各世代 100 個体の評価値 fiの推 移を示す.図の横軸が世代数,縦軸がそれぞれの世代 における各個体の評価値の平均である.個体評価値の 平均は,1 世代目から 150 世代目付近までで 0.9 程度 にまで上昇している.これより,デザイン生成ユニッ トは徐々に適切な解を獲得しており,適切に動作をし

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1世代目

150世代目

300世代目

図10 「地味な」を入力した際のデザイン生成

ユニットの出力推移.

Fig. 10 Output transition of the design gen-eration unit for the input of modest.

図11 実装したシステムのユーザインタフェース.

Fig. 11 User interface for the system.

ているといえる.また,この 0.9 という値は,5 段階 SD 尺度{1, 2, 3, 4, 5} に変換すると 4.6 であり,十分 に「地味な」印象を与えるフォトフレームであるとい える. 次に,出力されたフォトフレームの外観について検 証する.デザイン生成ユニットが 1 世代目,150 世代 目,300 世代目に出力したフォトフレームの設計デー タのうち,個体評価値の上位 3 種類を 3D モデル化し たものを図 10 に示す.この図では,世代を重ねるご とにフォトフレームの明度,彩度の低いフォトフレー ムが増えていることがわかる.これより,世代を重ね るごとに,より地味な印象を受けるフォトフレームが 出力されていることが確認された. 5. 3 ユーザインタフェース システムのユーザインタフェースを図 11 に示す. ユーザは,実現したい理想の印象に対応する印象語を ドロップダウンリストから 1 語または 2 語選択する (図中の Step 1).選択後,Design ボタンを押すと,生 成されたフォトフレームのデザインが画面の左下に表 A2 A1 (a) つめたい B2 B1 (b) あたたかい C1 C2 (c) 安っぽい×地 味な D1 D2 (d) 豪華な×派 手な 図12 各印象語を入力した際に出力されたフォ トフレームのうち,個体評価値が1位お よび2位のもの.

Fig. 12 Picture frames with the 1st and 2nd highest fitness scores with respect to each input impression word.

表5 「つめたい」と「あたたかい」の入力に対し

て出力されたデザインにおける平均評価値.

Table 5 Average evaluation result for the de-sign output for the input of cool and

warm. 入力した印象語 サンプル番号 平均評価値 つめたい A1 4.25 A2 4.42 あたたかい B1 1.58 B2 1.42 示される.この時,Design ボタンが Re Design ボタ ンになり,生成されたデザインが気に入らなかった場 合,これを押すことで新たなデザインが再生成される (図中の Step 2).表示された候補の一つをクリックす ると,その詳細が画面の中央に表示される.Print ボ タンを押すと 3D プリンタでプリント可能なデータが 出力される (図中の Step 3). 印象語の選択後,フォトフレームのデザインの生成 に要する時間は,一般的な PC において 1 秒程度で あった. 6. システム性能評価実験 6. 1 実験方法 実装したシステムが出力したフォトフレームが,入 力された印象語を表現できているかを評価するため, システム性能評価実験を行った.実験はフォトフレー ム印象評価実験とは異なる,22–24 歳 (平均:22.3 歳, 標準偏差:0.6 歳) の大学生 12 名 (男性 11 名, 女性 1 名) を対象とた.提示したサンプルは,「つめたい」と 「あたたかい」を理想の印象として 1 語ずつ入力した 際に出力されたフォトフレームデザインのうち,それ ぞれ個体評価値の上位 2 種類 (サンプル A1, A2, B1, B2) と,「安っぽい」,「地味な」と「豪華な」,「派手な」

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1 2 3 4 5

図13 「弱々しい」を入力した際の個体評価値が上位5位までのフォトフレーム.

Fig. 13 Picture frames with the top five fitness scores for the input of weak.

表6 「安っぽい×地味な」と「豪華な×派手な」

の入力に対して出力されたデザインにおけ る平均評価値.

Table 6 Average evaluation result for the de-sign output for the input of cheap×

modest and gorgeous × flashy.

入力した印象語 サンプル番号 平均評価値 1 語目 2 語目 1 語目 2 語目 安っぽい 地味な C1 3.58 4.50 C2 4.17 4.58 豪華な 派手な D1 2.42 1.67 D2 2.75 1.75 の 2 語を入力した際に出力されたフォトフレームデザ インのうち,それぞれ個体評価値の上位 2 種類 (サン プル C1, C2, D1, D2) である.これらのフォトフレー ムデザインを図 12 に示す.サンプルの提示方法や評 価方法は 4 章のフォトフレーム印象評価実験と同様で あるが,評価に用いる印象語対は,システムへの入力 に対応したもののみとした. 6. 2 実験結果と考察 実験結果を,表 5, 6 に示す.表 5 は,1 語を理想の 印象として入力したサンプルに対する平均評価値であ り,表 6 は,2 語の組み合わせを入力したサンプルに対 する平均評価値である.なお評価には 5 段階の SD 尺 度を用いたため,評価値が 5 に近いほど「つめたい」, 「安っぽい」,「地味な」印象を,1 に近いほど「あた たかい」,「豪華な」,「派手な」印象を与えることを表 す.まず,表 5 では,サンプル A1, A2 はいずれも平 均評価値が 3 を上回っており,サンプル B1, B2 はい ずれも平均評価値が 3 を下回っている.さらに,表 6 では,サンプル C1, C2 はいずれもそれぞれの評価に おいて平均評価値が 3 を上回っており,サンプル D1, D2 はいずれもそれぞれの評価において平均評価値が 3 を下回っている.これより,入力された印象語に適 合した評価が得られていることが確認できた. ここで,入力した印象語に応じて,出力された設計 データの印象が変化しているかを調査するため,「つめ たい」と「あたたかい」および「安っぽい×地味な」 と「豪華な×派手な」の入力に対して出力されたデザ イン間で評価値に有意差があるか,対応 t 検定により 調査した.検定の対象は印象語対における個体評価値 が 1 位のもの同士とした.その結果,いずれも有意水 準 5 %で有意差が見られた.このことから,提案シス テムは入力した印象語の印象を与えるフォトフレーム デザインが出力できていることを確認した. 6. 3 システムの出力の多様性検証 システムの出力の多様性を示すため,例として「弱々 しい」を入力した際の個体評価値が 1 位から 5 位のも のを,図 13 に左から順に示す.フォトフレーム印象 評価実験で提示したフォトフレームの太さの平均が 1.00 cm である一方,図 13 に示した 5 種類のフォトフ レームは,太さがいずれも 1.00 cm 以下であり.平均 は 0.68 cm であった.一方,それぞれのフォトフレー ムの特徴を見ると,茶色のものや緑色のもの,マット があるものや無いものなど,様々である.以上より, 入力された印象に適合するデザインを出力をしつつ, 多様なフォトフレームを生成できていることが確認さ れた. 7. おわりに 本研究では,ユーザの求める印象を加味したパーソ ナルファブリケーション「感性ファブリケーション」 のケーススタディとして,ユーザの求める印象に適合 したフォトフレームが自動設計されるシステムを実装 した.実装したシステムで生成されたデザインを評価 する実験により,生成されたデザインの適性および多 様性の観点からこの枠組みのフォトフレーム設計にお ける有効性を確認した. 本システムの実装および検証の過程で,以下に示す 事項が明らかになった.(1)フォトフレームの物理特 徴量を操作することによ り,フォトフレームが与え る印象を変えることが可能 である.(2)フォトフレー ムの印象における意味構造の大部分が,「明朗性因子」 「新奇性因子」「力量性因子」「評価性因子」の 4 因子 で表現できる.(3)本システムにおいて使用した遺伝 的アルゴリズムでは,150 世代程度の演算で求める印 象に合致したフォトフレームの設計が可能である. なお,本研究はフォトフレームを対象としたケース スタディであるため,得られた知見および結果はこの 対象に依存する.他の人工物に対しては,印象評価モ デルにおける入力パラメータや,デザイン生成ユニッ トにおける個体の構造など,個別の対応が必要である. 今後,「感性ファブリケーション」のさらなる有用性を

(10)

Vol.22, No.4, 2020

検証するため,他の分野やより複雑なデザイン対象に おいて適用の可能性を探る.

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ACM SIGCHI,IEEE各会員.

白神 翔太 (正会員) 2018年山梨大学大学院医工農学総合 教育部人間環境医工学専攻博士課程修 了.博士(情報科学).ヒューマンコ ンピュータインタラクション,感性情 報処理に関する研究に従事.2016年 ヒューマンインタフェース学会学術奨 励賞受賞.ヒューマンインタフェース 学会会員. 郷 健太郎 (正会員) 1996年東北大学大学院情報科学研究科 博士後期課程修了.博士(情報科学). 同年,東北大学電気通信研究所助手. その後,バージニア工科大学Center

for Human-Computer Interaction研 究員,山梨大学工学部助手,助教授,准 教授を経て,現在,山梨大学大学院総合 研究部教授.上流工程でのシステム設 計法,遠隔医療システム,文字入力シス テムの研究に従事.ACM,IEEE,電 子情報通信学会,情報処理学会,ヒュー マンインタフェース学会,日本人間工 学会,人間中心設計推進機構各会員. (C)NPO法人ヒューマンインタフェース学会

Fig. 1 Components of impression-based fabri- fabri-cation. 多い.例えば,Cluzel ら [13] は,自動車の側面形状の デザインに対話型遺伝的アルゴリズムを適用している. この方法では,ユーザの評価が直接人工物の設計に反 映される反面,ユーザの関与が必要となるため,遺伝 的アルゴリズムにおける世代の進行に時間を要すると いう問題が指摘されている. ユーザの評価に要する時間を削減するため,前節で 述べた,人工物の印象をその物理特徴量に基づいて推
表 1 印象評価実験に用いた印象語対.
図 4 評価システム実行画面.
Table 3 Factor loadings and factor contribu- contribu-tion ratios for each factor.
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参照

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