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全文

(1)

調査報告

純淡水魚と水生植物を指標とした湖沼の生物多様性広域評価の試み

松崎 慎一郎

1,

*・西廣 淳

2

・山ノ内 崇志

2

・森 明寛

3

・蛯名 政仁

4

・榎本 昌宏

5

福田 照美

6

・福井 利憲

7

・福本 一彦

7

・後藤 裕康

8

・萩原 彩華

9

・長谷川 裕弥

10

五十嵐 聖貴

11

・井上 栄壮

12

・神谷 宏

13

・金子 有子

12

・小日向 寿夫

14

・紺野 香織

5

松村 俊幸

15

・三上 英敏

11

・森山 充

16

・永田 貴丸

12

・中川 圭太

14

・大内 孝雄

14

尾辻 裕一

17

・小山 信

6

・榊原 靖

18

・佐藤 晋一

4

・佐藤 利幸

5

・清水 美登里

19

清水 稔

20

・勢村 均

21

・下中 邦俊

16

・戸井田 伸一

22

・吉澤 一家

10

・湯田 達也

17

渡部 正弘

23

・中川 惠

1

・高村 典子

1 1国立研究開発法人国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター・2東邦大学理学部 生命圏環境科学科 3鳥取県衛生環境研究所・4地方独立行政法人青森県産業技術センター内水面研究所・5福島県内水面水産試験場 6熊本市環境総合センター・7鳥取県栽培漁業センター・8静岡県環境衛生科学研究所・9浜松市保健環境研究所 10山梨県衛生環境研究所・11地方独立行政法人北海道立総合研究機構 環境 ・ 地質研究本部環境科学研究センター 12滋賀県琵琶湖環境科学研究センター・13島根県保健環境科学研究所・14茨城県霞ケ浦環境科学センター 15福井県海浜自然センター・16福井県衛生環境研究センター・17鹿児島県環境保健センター 18名古屋市環境科学調査センター・19愛知県環境調査センター・20熊本市立熊本博物館・21島根県水産技術センター 22神奈川県水産技術センター内水面試験場・23宮城県保健環境センター

Biodiversity of freshwater fish and aquatic macrophytes in Japanese lakes: A broad assessment

Shin-ichiro S. Matsuzaki1,*, Jun Nishihiro2, Takashi Yamanouchi2, Akihiro Mori3, Masahito Ebina4, Masahiro Enomoto5,

Terumi Fukuda6, Toshinori Fukui7, Kazuhiko Fukumoto7, Hiroyasu Goto8, Ayaka Hagiwara9, Yuya Hasegawa10,

Seiki Igarashi11, Eiso Inoue12, Hiroshi Kamiya13, Yuko Kaneko12, Hisao Kobinata14, Kaori Konno5, Toshiyuki Matsumura15,

Hidetoshi Mikami11, Mitsuru Moriyama16, Takamaru Nagata12, Keita Nakagawa14, Takao Ouchi14, Yuichi Otsuji17,

Makoto Oyama6, Yasushi Sakakibara18, Shin-ichi Sato4, Toshiyuki Sato5, Midori Shimizu19, Minoru Shimizu20,

Hitoshi Semura21, Kunitoshi Shimonaka16, Shin-ichi Toida22, Kazuya Yoshizawa10, Tatsuya Yuda17, Masahiro Watanabe23,

Megumi Nakagawa1 and Noriko Takamura1

1Center for Environmental Biology and Ecosystem Studies, National Institute for Environmental Studies, 2Faculty of Sciences, Toho University, 3Environmental Sanitation Research Center of Tottori Prefecture,

4Aomori Prefectural Industrial Technology Research Center Fisheries Institute,

5Fukushima Prefectural Inland Water Fisheries Experimental Station, 6Kumamoto City Environmental Research Institute, 7Tottori Prefectural Fisheries Research Center, 8Shizuoka Institute of Environment and Hygiene,

9Hamamatsu City Health Environment Research Center, 10Yamanashi Institute for Public Health and Environment, 11Institute of Environmental Sciences, Environmental and Geological Research Department, Hokkaido Research Organization,

12Lake Biwa Environmental Research Institute, 13Shimane Prefectural Institute of Public Health and Environmental Science, 14Ibaraki Kasumigaura Environmental Science Center, 15Fukui Marine Park Center, Fukui Prefecture,

16Fukui Prefectural Institute of Public Health and Environmental Science,

* 〒 305-8506 茨城県つくば市小野川 16-2 国立研究開発法人国立環境研究所

National Institute for Environmental Studies, 16-2 Onogawa, Tsukuba-shi, Ibaraki 305-8506, Japan e-mail: [email protected] 2015 年 7 月 13 日受付、2015 年 11 月 27 日受理

(2)

はじめに

 陸水生態系は、地球表面の 1%にも満たない。しかし、 現在記載されている生物種の約 6%、中でも魚類につい ては約 40%が陸水域に生息している(Dudgeon et al. 2006)。また、飲料水や漁獲物など多様な生態系サービ スを提供する。しかし、陸水生態系は、汚染、生息場所 の改変、水資源開発(ダムなどの分断化や水位操作)、 外来種の侵入など様々な人間活動の影響を強く受けてき

た(Dudgeon et al. 2006;Strayer and Dudgeon 2010)。そ のため、陸水域の生物多様性は危機的な状況にあり、種 数の減少速度は、陸上や海洋の生態系と比べて大きいこ とも明らかとなっている(Loh 2000)。愛知目標に掲げ られているように、生物多様性・生態系の更なる損失・ 劣化を食い止め早急な回復を促すためには、科学的根拠 に基づいた生物多様性の定量的な評価を行い、効果的な 保全政策と今後のモニタリング体制に結びつけることが 不可欠である(Revenga et al. 2005;McGill et al. 2015)。

17Kagoshima Prefectural Institute for Environmental Research and Public Health, 18Nagoya City Environmental Science Research Institute, 19Aichi Environmental Research Center,

20Kumamoto City Museum, 21Shimane Prefectural Fisheries Technology Center, 22Kanagawa Prefectural Fisheries Technology Center Freshwater Experiment Station,

23Miyagi Prefectural Institute of Public Health and Environment

要旨:地域の生物多様性を保全する上で、その現状や傾向を把握することは、極めて重要な課題である。しかし、日 本の湖沼の生物多様性の現状や傾向は定量的に評価されていない。過去の生物分布データが散在しており電子化され ていないこと、1990 年代中頃から自然環境保全基礎調査等の統一的な調査が行われておらずデータが不足している ことが、その障害となっている。そのため、本研究では、地方環境研究所、試験研究機関、博物館等と連携し、湖沼 の生物多様性の現状を評価することを試みた。全国 19 湖沼を対象に、純淡水魚と水生植物に関する過去の分布デー タを網羅的に収集した。また、純淡水魚については 7 湖沼、水生植物については 12 湖沼において、モニタリング調 査を実施し、現在の分布データを取得した。過去(1999 年以前)と現在(2000 年以降)の在来種数を比較した結果、 純淡水魚においては平均 25%、水生植物においては平均 48%減少していた。一方、純淡水魚、水生植物のいずれに おいても、国外外来種の侵入が広域で確認され、国外外来種の種数が、在来種の種数を上回る湖沼も見られた。さらに、 純淡水魚については、多くの湖沼で複数の国内外来種が侵入していることが確認され、その平均種数は国外外来種と 同程度にあった。今回、5 つの指標を用いて生物多様性の状態を評価したが、用いた指標間でその結果は大きく異な った。このことから、複数の指標を用いた様々な側面からの状態評価が不可欠であることが示された。最後に、本ネ ットワークによる湖沼の生物多様性広域モニタリングの可能性と課題について議論した。   キーワード:外来種の侵入、局所絶滅、種多様性、生態系の健全性、モニタリングネットワーク

Abstract: There is an urgent need to measure trends in biodiversity. This has not been quantified in Japanese lakes because the distribution data for freshwater species is sporadic and has not been digitized. No nationwide monitoring has been conducted since the mid-1990s. In this study, we developed a research network with regional environmental research organizations, including prefectural research institutes and museums, and assessed the biodiversity in lakes. We reviewed the literature on the distributions of strictly freshwater fish and aquatic macrophytes in 19 lakes. We also newly surveyed the presence/absence of fish in seven lakes and macrophytes in 12 lakes. Overall, the richness of native species of fish and macrophytes had declined from pre-1999 to post-2000. On average, 25% of the fish and 48% of the macrophytes species had disappeared. Many exotic fish and macrophyte species were found to have invaded these lakes, even those with high native species richness. Furthermore, the introduction of fish species native to Japan into drainages where they did not occur historically was observed in many lakes, and the numbers of translocated and exotic fish species were similar. The status of biodiversity varied greatly among the five indices we used, highlighting the need to incorporate multiple indices in biodiversity assessments. Finally, we discuss the potential and constraints of our assessment for broad-scale freshwater biodiversity monitoring.

(3)

特に、国による環境行政・国土計画・経済政策に対する 提言に結びつけるためには、マクロスケールでの多様性 の現状把握が第一に必要となる(Yoccoz et al. 2001;天 野ほか 2010;Tisseuil et al. 2013)。  湖沼は、陸水生態系の中でも、特に生物多様性の減少 とそれに伴う生態系機能や生態系サービスの劣化が進ん でいる(Dudgeon et al. 2006)。そのため、湖沼管理にお いても、生物多様性のモニタリングと評価の必要性が高 まっている(Revenga et al. 2005)。わが国の湖沼は、こ れまで、水中の COD や全リン・全窒素濃度等を指標と した水質管理や水質浄化を期待した植生帯の保全等を基 本とした管理が実施されてきた。1970 年の水質汚濁防 止法により COD 等 5 項目に関する基準値が設定され、 1982 年には全リン・全窒素に関する基準値が追加され た。その後も、1984 年の湖沼水質保全特別措置法制定、 2005 年同法の改正を経て、現在も、水質の保全を基本 とした湖沼管理が実施されている。しかし、多様な生態 系サービスを安定的かつ持続的に提供することができる 健全な生態系を維持するためには、水質指標のみでの評 価では不十分である(Palmer and Febria 2012)。様々な 先行研究から、生物多様性は生態系の健全性の重要な指 標であるが示されていることから(Rapport et al. 1998; Costanza and Mageau 1999;Revenga et al. 2005;鷲谷・鬼 頭 2007)、湖沼の健全性を維持するためには、生物多様 性の評価とモニタリングの体制を今後構築することが不 可欠である。

 地球規模生物多様性概況第 3 版(Global Biodiversity Outlook 3、GBO3)の日本版である日本の生物多様性総 合評価(Japan Biodiversity Outlook、JBO)は、国内の様々 な生態系における生物多様性の現状と傾向を様々な生態 系で評価したものであるが、湖沼の生物多様性について は評価されていない。湖沼の生物多様性評価を実施する 上での大きな障害の一つに、生物分布データが散在して いることがあげられる。行政、大学・研究機関、NGO、 市民が行った断片的あるいは継続的な生物調査の結果 は、学術論文や報告書などの形で公表されていない場合 や、公表されていてもそれらのデータが電子化されてい ない場合も多い。湖沼の生物多様性評価を行うためには、 既存の生物分布データの電子化し、データベースとして 整備する必要がある。もう一つの障害として、生物分布 データが近年不足していることがあげられる(Nishihiro et al. 2014)。環境庁の第 4 回自然環境保全基礎調査(1991 年度)以降、湖沼では、統一的な大規模調査は実施され ていない(Nishihiro et al. 2014)。2009 年度から、環境省 モニタリングサイト 1000 がスタートしたが、予算上の 制約から、調査湖沼数、対象分類数ともにごく一部に限 られている。また、モニタリングの減少にともなって、 博物館標本の登録数も減少傾向にあることが国内外で指 摘されている(Gardner et al. 2014)。このため、近年の 生物多様性の状態を把握するためには、新たにモニタリ ングを実施する必要がある。  全国湖沼の生物多様性モニタリングを行う主体とし て、地方自治体の環境関連研究機関が考えられる。多く の湖沼は、地方環境研究所などの機関によって、公共用 水域の水質測定が行われ、それらの結果は全国的に統合 された形でデータが公開されている(例えば、環境数値 データベース https://www.nies.go.jp/igreen/index.html、 2015 年 6 月 30 日確認)。また地方環境研究所は、湖沼 調査のノウハウをもち、生物に関する分布情報、既存の 先行研究やアセスメントの報告書など様々な知見を蓄積 している。そのため、全国各地の湖沼で調査を行ってい る地方環境研究所・試験研究機関・博物館等(以下、地 方環境研究所等とする)と連携することで、上述したよ うな、生物分布データの散在と不足という課題を克服で きる可能性がある。  そこで、本研究では試験的な試みとして、地方環境研 究所等と連携し、既存の分布データ(在・不在の情報) に関する文献情報や標本情報の収集、さらに新たにモニ タリング調査を実施し、全国湖沼の生物多様性の評価を 試みた。指標分類群として、純淡水魚(一生を淡水で過 ごす魚類)と水生植物(ここでは沈水植物、浮葉植物、 浮遊植物)を用いた。これらの分類群は、湖沼生態系の 中で重要な生態系機能を担っている、環境変化に対し脆 弱性が高く絶滅危惧種の割合が高い、親しみやすい、わ かりやすい、調査しやすい、という点から指標として適 切な分類群と考えられる(Johnson and Hering 2010; Søndergaard et al. 2010;Kadoya et al. 2011)。本研究では、 純淡水魚と水生植物の過去から現在の種組成データをも とに、複数の指標を算出し、全国の湖沼の生物多様性の 現状を把握した。最後に、生物多様性広域モニタリング の実施にむけた課題や展望について整理した。

方 法

研究体制と対象湖沼  本研究は、地方環境研究所等と国立環境研究所との共 同 研 究 の 枠 組 み(https://www.nies.go.jp/kenkyu/ chikanken/、2015 年 6 月 30 日確認)を活用して実施した。

(4)

この共同研究では、国立環境研究所と地方公共団体環境 研究機関等との研究交流を促進し、環境研究の発展を図 るために行うものである。その中でもⅡ型共同研究と呼 ばれる枠組みは、全国環境研協議会と国立環境研究所の 協議のもとに共同研究計画を定め、国立環境研究所と複 数の地方環境研究所等の研究者が参加して共同研究を実 施するものである。今回、「湖沼の生物多様性・生態系 評価のための情報ネットワークの構築」と題した共同研 究(2012 ∼ 2014 年度)を立ち上げ、14 の地方環境研究 所、6 の水産試験場、1 つの博物館の合計 21 機関がこの 共同研究に参画した(表 1)。  本研究では、各地方環境研究所等が水質モニタリング 等を行っている 19 湖沼を対象とした(図 1)。なお、便 宜的に、伊豆沼と内沼を伊豆沼・内沼、上江津湖と下江 津湖を江津湖と、1 つの湖沼として扱った。 評価対象種  純淡水魚については、19 湖沼中 15 湖沼を対象とし(表 1、図 1)、Watanabe(2012)により記載されている魚種 を解析対象とした。ただし、コイ Cyprinus carpio につい ては、自然分布域が不明なため、解析から除外した。ま た、フナ類、シマドジョウ類、スジシマドジョウ類につ いては、種まで同定されているデータが少なかったため、 ここでは、フナ類 Carassius auratus complex、シマドジ

ョウ種群 Cobitis biwae species complex、スジシマドジョ ウ種群 Cobitis striata species complex として扱った。在 来種と国内外来種の判別については、Watanabe(2012) に加えて、侵入生物データベース(https://www.nies. go.jp/biodiversity/invasive/index.html、2015 年 6 月 30 日確 認)に基づき行った。  水生植物については19湖沼中15湖沼を対象とした(表 1、図 1)。本研究では、沈水植物、浮葉植物、浮遊植物 を対象として、それらを水生植物としてまとめて扱った。 沈水から抽水または陸生にわたって様々な生育型をとり うる種(ミズニラ Isoetes japonica A.Braun、デンジソウ Marsilea quadrifolia L.、コウホネ Nuphar japonica DC.、 ヒメミクリ Sparganium subglobosum Morong、マツバイ Eleocharis acicularis (L.) Roem. et Schult. var. longiseta Svenson、ハリイ Eleocharis congesta D.Don var. japonica (Miq.) T.Koyama、ヒメホタルイ Schoenoplectiella lineolata (Franch. et Sav.) J.D.Jung et H.K.Choi、 ヒ メ ウ キ ガ ヤ Glyceria depauperata Ohwi var. depauperata、 タ チ モ Myriophyllum ussuriense (Regel) Maxim.、 ミ ゾ ハ コ ベ Elatine triandra Schkuhr var. pedicellata Krylov、ミズユキ ノ シ タ Ludwigia ovalis Miq.、 ミ ズ ハ コ ベ Callitriche palustris L.、キクモ Limnophila sessiliflora (Vahl) Blume) については集計に含めた。一方で、ホソバノシバナ Triglochin palustris L. については、一般的に湿生植物と 表 1.湖沼の純淡水魚と水生植物に関する文献調査およびモニタリングの実施と実施した機関。 湖沼名 純淡水魚 水生植物 実施機関 文献収集 モニタリング 文献収集 モニタリング 屈斜路湖 ○ - ○ - 北海道立総合研究機構 環境 ・ 地質研究本部環境科学研究センター 小川原湖 - - ○ ○ 青森県産業技術センター内水面研究所 伊豆沼 ○ - ○ - 宮城県保健環境センター 猪苗代湖 ○ ○ - - 福島県内水面水産試験場 牛久沼 - - ○ ○ 茨城県霞ケ浦環境科学センター 芦ノ湖 ○ - ○ ○ 神奈川県水産技術センター内水面試験場 山中湖 - - ○ ○ 山梨県衛生環境研究所 佐鳴湖 ○ ○ ○ ○ 浜松市保健環境研究所、静岡県環境衛生科学研究所 油ヶ淵 ○ - ○ ○ 愛知県環境調査センター 北潟湖 ○ ○ - - 福井県海浜自然センター 三方湖 ○ ○ - - 福井県海浜自然センター 琵琶湖 ○ - ○ ○ 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 湖山池 ○ ○ ○ ○ 鳥取県衛生環境研究所、鳥取県栽培漁業センター 東郷池 ○ - ○ ○ 鳥取県衛生環境研究所、鳥取県栽培漁業センター 多鯰ヶ池 - - ○ ○ 鳥取県衛生環境研究所 宍道湖 ○ - ○ ○ 島根県水産技術センター、島根県保健環境科学研究所 神西湖 ○ ○ - - 島根県水産技術センター、島根県保健環境科学研究所 江津湖 ○ ○ ○ ○ 熊本市環境総合センター、熊本市立熊本博物館 池田湖 ○ - ○ - 鹿児島県環境保健センター

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して分類されるため、集計から除外した。また、今回は シャジクモ植物については集計に含めなかった。なお、 一部の湖沼では、湖沼だけでなくその流入河川や周辺湿 地を含む植物相データが収集された。そのような場合、 元となった文献を精査し、湖外での記録と判断された場 合には集計から除外した。 文献・標本情報の収集とモニタリング  多様性の現状と変化を把握するため、対象湖沼の湖内 (流入河川や水路などは含めない)において純淡水魚、 水生植物の在・不在が記録されている学術論文・紀要・ 報告書・書籍・図鑑などの文献情報と博物館標本情報を 網羅的に収集した(付表 1)。水生植物については、 Nishihiro et al.(2014)によって最近整備されて全国湖沼 の分布データと文献情報を活用し、これに含まれていな い文献について付表 1 にまとめた。また、後述するよう に、外来種数も指標として用いるため、現在、侵入・定 着している国外外来種(国外に分布する種で国内に導入 された種)、国内外来種(国内に自然分布する種で国内 の分布域外に導入された種)についても在・不在情報を 収集した。  文献調査に加えて、現在の生物の分布情報を取得する ため、定性的なモニタリング調査を行った。参加機関に よって業務上の制約や人手不足の問題等があり、全ての 湖沼において調査を行うことは困難であったが、魚類に ついては 7 湖沼、水生植物については 12 湖沼において、 調査を実施することができた(表 1)。魚類については、 定置網、刺網、カゴ網、セルビン、タモ網等を用いて採 集し、採集された種を記録した。また目視で確認した種 も記録した。水生植物については、熊手にロープを括り つけた採集器を、岸あるいは船上から投げ入れ、ゆっく りとロープを手繰り寄せ、採集された種を記録した。ま た、補助的に徒手採取と目視による確認を行った。  今回得られたモニタリングの生データ(調査日、調査 地点の GPS 情報、採集方法や採集された種の情報など) については、国立環境研究所の生物・生態系環境研究セ 図 1.本研究の対象湖沼(19 湖沼)。

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ンターのウェブページもしくは GBIF(地球規模生物多 様性情報機構)のデータベースから公開予定であるが、 著者に直接問い合わせることで入手可能である。 データセットの作成と指標の算出  文献情報とモニタリングから得られた在来種と外来種 の在・不在データを統合し、1999 年以前の種組成はそ の湖沼における潜在的な種組成であるとみなし、今回 1999 年以前を「過去」、2000 年以降を「現在」と定義し、 「過去」と「現在」の種組成セットを作成した。このデ ータセットを用いて、純淡水魚・水生植物それぞれにつ いて以下の 5 つの指標を算出し、全国の湖沼の生物多様 性評価を行った。ただし、5 つ目の指標は魚類について のみ算出した。 指標 1:現在の在来種の種数  2000 年以降に残存する在来種数(ただし国内外来種 は除く、詳細は指標 5 を参照)を算出した。この指標は、 現在における在来種の種多様性の状況を示している。 指標 2:レッドリストスコア  現在残存する在来種数(指標 1)を、最新の全国版環 境省レッドリストのランクに基づき重み付けした(Oertli et al. 2002;Butchart et al. 2004)。絶滅危惧 IA 類の種は 4 点、絶滅危惧 IB 類の種は 3 点、絶滅危惧 II 類の種は 2 点、 準絶滅危惧種は 1 点、その他の種は 0 点として重み付け を行った。この指標は、現在、レッドリストに記載され る絶滅危惧種がどの程度残存しているかを示している。 指標 3:残存率  過去から現在における在来種数の割合(現在の種数/過 去の種数)を算出した。この指標は、過去の潜在的な種数 と比べて、どの程度種数が残っているかを示している。 指標 4:国外外来種の種数  現在、繁殖・定着している国外外来種の種数を算出し た。本研究では、偶発的に侵入が確認された種は含めな かった。国外外来種の増加は在来生物や生態系に大きな 影響を与えることから、不健全化の指標の一つとして用 いた(McGeoch et al. 2010)。 指標 5:国内外来種の種数  現在、繁殖・定着している国内外来魚種の種数を算出 した。ただし、回遊魚、汽水魚については、在来分布域 が明らかでない種が含まれるため、Watanabe(2012)に よって在来分布域が明らかにされている純淡水魚を対象 に、国内外来種数の評価を行った。国内外来魚の侵入や 分布拡大に伴い、在来魚との競争や交雑に加え、捕食な ど を 通 じ た 在 来 生 態 系 へ の 影 響 が 懸 念 さ れ て い る (Watanabe 2012;Matsuzaki et al. 2013;向井ほか 2015)。

なお、水生植物は、国内における潜在的な地理的分布が 広い種が多く、各湖沼で起こった植物相の変化が、人為 的に導入された国内外来種によるものか、あるいは埋土 種子からの発芽や水鳥による移動分散などの自然要因に よるものかを判断できる科学的な根拠が不足しているこ とから、本指標の算出は困難であった。

結果と考察

純淡水魚の多様性の現状と変化  分析した 15 湖沼のうち、現在の在来種数は琵琶湖で 圧倒的に多かった。琵琶湖は長い歴史をもつ古代湖であ ることに加え(Watanabe 2012)、湖面積を含む生息場所 が多様であることを反映している。琵琶湖に次いで江津 湖で種数が多かった(図 2a)。レッドリストスコアは、 在来種数の多かった琵琶湖と江津湖で高かったが、次い で、伊豆沼・内沼と猪苗代湖で高かった(図 2b)。三方湖、 池田湖のように、在来種数が多いわりにレッドリストス コアが低い湖沼も見られた。  残存率は、在来種数やレッドリストスコアと異なるパ ターンを示した(図 2c)。在来種数が 2 番目に多かった 江津湖は、消失している種は確認されず、残存率は 1 で あった。猪苗代湖では、在来種数は多くないものの、残 存率は 1 であった。琵琶湖、東郷池、宍道湖でも高い残 存率であった。一方、最も残存率が低い湖沼は、芦ノ湖 であった(残存率 0)。芦ノ湖で過去に見られていた純 淡水魚はアブラハヤ Phoxinus lagowskii steindachneri 1 種 であったが、現在、本種は確認されていないためである。 次いで、三方湖と池田湖において残存率が低かった。対 象湖沼全体での平均残存率は、0.75(約 1/4 の種が消失) であった。エコリージョンスケールで全国の純淡水魚の 種多様性を評価した研究では、27 のうち 2 つのエコリ ージョンでそれぞれ 1 種のみ絶滅しており、在来種数の 減少はほとんどみられていない(Watanabe et al. 2012; Matsuzaki et al. 2013)。一方、本研究で扱った湖沼のよ うなローカルスケールでは、在来純淡水魚の局所絶滅が おこっていることを示唆している。  分析した 15 湖沼において、国外外来魚が侵入してい

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ない湖沼はなく、対象湖沼全体で平均 4.1 種が侵入・定 着していた(図 2d)。在来種数の多かった琵琶湖、江津 湖で国外外来種数が多かった。次いで、猪苗代湖、油ヶ 淵で多かった。オオクチバス Micropterus salmoides とブ ルーギル Lepomis macrochirus が最も多く出現し(両種 ともに 12 湖沼)、タイリクバラタナゴ Rhodeus ocellatus ocellatus とカムルチー Channa argus が次に多く出現した (両種ともに 9 湖沼)。国内外来種についても多くの湖で 複数の種の侵入・定着が確認された(図 2e)。対象湖沼 全体での平均種数は 4.5 種と、国外外来魚の種数と同程 図 2.純淡水魚を指標とした全国湖沼の生物多様性評価の結果。(a)現在の在来種の種数、(b)残存率(現在の在来種数/ 過去の在来種数)、(c)現在のレッドリストスコア、(d)現在の国外外来種の種数、(e)現在の国内外来種の種数。ND は、評価を行っていない湖沼を指す。棒グラフおよび ND の表示がない湖沼は、指標値が 0 であることを示している。

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度であった。国内外来種の種数は、佐鳴湖で最も多く、 伊豆沼・内沼、芦ノ湖、油ヶ淵、江津湖でも高かった。 多く出現した種は、ゲンゴロウブナ Carassius cuvieri(12 湖沼)、ハス Opsariichthys uncirostris uncirostris(7 湖沼)、 ワタカ Ischikauia steenackeri(6 湖沼)、オイカワ Zacco platypus(6 湖 沼 )、 ビ ワ ヒ ガ イ Sarcocheilichthys variegatus microoculus(5 湖沼)であった。前者 3 種は いずれも琵琶湖固有種であり、直接的な放流あるいは琵 琶湖産アユ Plecoglossus altivelis の種苗への混入による 間 接 的 な 導 入 に よ る 結 果 と 考 え ら れ る(Watanabe 2012)。また江津湖では、絶滅危惧種 IA 類であるイチ モンジタナゴ Acheilognathus cyanostigma や絶滅危惧種 IB 類のオヤニラミ Coreoperca kawamebari が、宍道湖で は、絶滅危惧種 II 類のスゴモロコ Squalidus chankaensis biwae が見られるなど、絶滅危惧種が国内外来種となっ ているケースもあった。 図 3.水生植物(沈水植物・浮葉植物・浮遊植物)を指標とした全国湖沼の生物多様性評価の結果。(a)現在の在来種の種数、 (b)残存率(現在の在来種数/過去の在来種数)、(c)現在のレッドリストスコア、(d)現在の国外外来種の種数。ND は、 評価を行っていない湖沼を指す。棒グラフおよび ND の表示がない湖沼は、指標値が 0 であることを示している。残 存率が 1 以上の値を示す湖沼は、在来種か国内外来種が判別できない種が含まれるため、現在の方が過去に比べて 種数が多いことを示している。

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水生植物の多様性の現状と変化  分析した 15 湖沼のうち、在来種数は小川原湖で最も 多く、次いで琵琶湖で多かった(図 3a)。また、伊豆沼・ 内沼、山中湖、江津湖も高い値を示した。一方、佐鳴湖 では、確認された水生植物は 0 種であった。レッドリス トスコアは、在来種数が最多であった小川原湖で最も高 かった。角野(2012)は、小川原湖には全国的に希少と なったトリゲモ Najas minor L. が分布するとともに、沈 水植物の種多様性の観点からも貴重な場所であることを 指摘している。また在来種数が 2 番目に多かった琵琶湖 よりも、スコアが高い湖沼が見られた(図 3b)。中でも、 屈斜路湖と伊豆沼・内沼では高いスコアであり、ともに 4 種の絶滅危惧種が残存していた。一方、牛久沼、油ヶ淵、 東郷池、池田湖では、確認された種に絶滅危惧種は含ま れておらず、レッドリストスコアは 0 であった。  残存率でみると、過去に記録された 7 種全てが消失し た佐鳴湖を除くと、池田湖、牛久沼、東郷池で低かった (図 3c)。小川原湖や江津湖では種多様性が高いにも関 わらず残存率が低かった。ただし、1999 年以前のデー タには誤同定や湖外の生育種を含む疑いがあり、そのた め過去の種数が過大に計数された可能性がある。また、 消失したとされる種にはミゾハコベ、ハリイ、ヒメウキ ガヤなどの両生植物が多いことから、たとえば調査時に 水位が低下して陸生状態をとっていたために、これらが 調査対象の水生植物として認識されなかった可能性があ る。そのため、これらの湖沼で実際に残存率が低くなっ ているかについてはさらなる検証が必要である。一方、 在来種数の少なかった油ヶ淵では、残存率が高かった。 対象湖沼全体での平均残存率は、0.70 であった。屈斜路 湖と多鯰ヶ池では、2000 年以降、在来種数が増加して おり、見かけ上、残存率が 1 以上となった。これは、自 然あるいは人為による侵入が起こった、もしくは過去の 調査が不十分で確認種が限られていたためと考えられ た。この 2 湖沼を除いて、平均残存率を計算したところ 0.52 であった。この値は、純淡水魚に比べて低かった。  水生植物の国外外来種数は、江津湖で最も高かった(図 3d)。次いで、油ヶ淵、琵琶湖、湖山池で高かった。一方、 屈斜路湖、小川原湖、伊豆沼・内沼、佐鳴湖、池田湖で は、国外外来種の定着は確認されなかった。種ごとに見 ると、オオカナダモ Egeria densa Planch. とコカナダモ Elodea nuttallii (Planch.) St.John は確認地点数が最も多く、 ともに 7 湖沼で確認された。これに次いでオオフサモ Myriophyllum aquaticum (Vell.) Veldc. が 5 湖沼、ホテイア オイ Eichhornia crassipes (Mart.) Solms とハゴロモモ

Cabomba caroliniana A.Gray が 3 湖沼、ボタンウキクサ Pistia stratiotes L. が 2 湖沼で確認され、その他 5 種の外 来水生植物はそれぞれ 1 湖沼でのみ確認された。 地方環境研究所等とのネットワークの有効性と課題  1999 年以前と 2000 年以降の 2 時期の比較ではあるが、 純淡水魚、水生植物の 2 つの分類群において、全国的に 在来種の多様性が減少し、健全性が低下していることが 明らかとなった。本研究は、著者らの知る限り、複数の 湖沼を対象に生物多様性の評価を行ったはじめての研究 であり、日本の湖沼の生物多様性の現状を理解するため の第一歩となると考えられる。また、5 つの共通指標を 用いて評価を行ったが、対象分類群によっても、指標に よっても湖沼の評価が異なった。前者の場合は、純淡水 魚類と水生植物の減少と関連する駆動因とそのメカニズ ムやプロセスが異なることが考えられる。後者の場合、 在来種数の多さで保全の重要性が評価されることが多い が、在来種数が少ない場合でも、残存率が高い湖沼は絶 滅がほとんどおこっていないことから、湖沼としての健 全性は高いといえる。したがって、単一の指標ではなく、 複数の指標を組み合わせて生物多様性の総合的な評価を 行い、保全施策等を検討することが重要である。  過去の文献が豊富であっても、現在、自然環境保全基 礎調査などの全国調査が行われていないため、今後のモ ニタリングの実施と継続が課題となる。1976 年の第 1 回自然環境保全基礎調査報告書の巻頭言には、「自然環 境についてのデータは全国的に整備されたものは皆無と もいえる状況であった。(省略)いうまでもなく自然に ついての調査研究は長期的に継続されることが必要であ り、その意味では本調査が今後 5 年毎に行われることは 特記されなければならない。」と書かれている。全国的 な湖沼の生物多様性の現状を継続的に把握するために は、現在実施されている環境省モニタリングサイト 1000 の枠組みの中で、地方環境研究所等との連携を図 っていくことが期待される。今回参加した機関は 21 機関 であったが、今後、参加機関数を増やしながらモニタリン グネットワークをより充実させていく必要があるだろう。  モニタリングを行う上では、様々な課題もある。まず、 予算と人員不足の問題があげられる。モニタリングに投 資できる資源は限られるため、調査の回数・場所・方法 等を精査し、より効果的かつ共通性の高いモニタリング 手法の確立が不可欠である。また、生物の同定に関する 技術の担保にも課題がある。種によっては、誤同定や種 レベルの同定が困難ということがある(山ノ内ほか

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2016)。水草の場合、1 種の植物であっても生育型が異 なる場合もある(角野 1994)。したがって、地方行政で は頻繁に異動があることを踏まえると、同定マニュアル の整備あるいは分類の専門家との連携が不可欠であると ともに、形態だけではなく DNA 分析ができるような形 で標本を博物館等に残しておくことが重要になるだろう。  本研究では、在・不在データをもとにした定性的な多 様性の評価のみを行ったが、現存量などの定量的な変化 についても注目する必要がある(Balmford et al. 2003)。 種が絶滅していない場合でも、個体群としての量が減少 している可能性がある。現存量が非常に少ない希少種等 は、同一魚類群集内の他種によって補うことができない ユニークな生態学的特性や役割を持っている場合があり (Mouillot et al. 2013)、それらの種が絶滅することで生態 系機能の維持や生態系の安定性に影響を与えることが報 告されている(O’Gorman et al. 2011)。一方、希少種と 異なり、普通種の場合は、絶滅するリスクは低いが、生 態系の中で大きなバイオマスを占めるため、現存量が減 少することで、生態系機能やプロセスに大きな影響を与 える(Gaston and Fuller 2008)。今後、定量的な生物の動 態を把握するモニタリング手法や評価方法の検討も課題 となるだろう。同時に、本研究では扱わなかった回遊魚・ 汽水性魚類や抽水植物あるいは鳥類や甲殻類など他の分 類群の定性・定量的な評価について検討していく必要が あるだろう。 湖沼の生物多様性の保全・再生にむけて  本研究で収集したデータは、駆動因解析や保護区選定 などへの活用が期待される。環境要因や人為的要因デー タと統合分析することで、純淡水魚類と水生植物の種多 様性の減少に関連する駆動因を特定し、国レベルで優先 的に講じるべき対策、具体的な対策の提案につなげる必 要がある。Matsuzaki and Kadoya(2015)は、全国湖沼 の漁業資源量が減少していることを明らかにし、魚食性 外来魚の侵入の影響が、富栄養化や護岸化などの他の人 為的要因に比べて相対的に大きいことを報告している。 また、愛知目標 11 では、陸水域では少なくとも 17%が 保護区として保全されることが盛り込まれており、戦略 的な保護区選定の必要性が高まっている。山ノ内ほか (2016)は、相補性解析を用いて、全国湖沼の水生植物 の多様性を効率よく保全する上で優先度が高い湖沼を抽 出している。  愛知目標 15 では、劣化した生態系の 15%以上の回復 が掲げられており、湖沼の自然再生も喫緊の課題である。 本研究により、全国の湖沼の純淡水魚・水生植物の多様 性が減少していることが明らかとなったが、再生に向け た可能性は残されている。水生植物の場合、湖底の埋土 種子(土壌シードバンク)から、消失した種の復活が確 認されていることから、自然再生の重要な材料となるこ とが報告されている(Nishihiro et al. 2006)。鳥取県衛生 環境研究所が東郷池で行ったモニタリング調査では、半 世紀の間、記録がなかったセキショウモ Vallisneria asiatica Miki が見つかり、湖底の泥を撒き出した実験か らもセキショウモの発芽が確認された(森明寛氏、未発 表資料)。また、純淡水魚類・水生植物いずれも、湖と つながった流入河川や水路に、湖内で消失した種が残存 していることが報告されている(松崎ほか 2011;久保 ほか 2012)。湖内と周辺水域のハビタットの連続性を維 持・再生していくことも、湖沼の生物多様性の保全に向 けた可能性の一つといえる。最後に、今回の解析対象湖 沼に含まれる三方五湖や伊豆沼・内沼をはじめとするい くつかの湖沼では、自然再生推進法に基づく再生事業が はじまっており、自然再生協議会や地域計画の場でも、 生物多様性モニタリングで得られる科学的なデータが広 く活用されることが期待される。

謝 辞

 本研究は、環境省「環境研究総合推進費 S-9 アジア規 模での生物多様性観測・評価・予測に関する総合的研究」 ならびに国立環境研究所と地方公共団体環境研究機関等 との共同研究(Ⅱ型)「湖沼の生物多様性・生態系評価 のための情報ネットワークの構築」からの助成を受けた。 ここに記して厚くお礼申し上げる。

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