小型のウェアラブルセンサを用いた姿勢計測
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(2) 情報処理学会論文誌. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). 作業者と初心者の木目細かい姿勢変化を可視化し比較する. 本論文では,健康管理や作業管理のために,日常的に姿. ことで,腰に負担がかかる要因を詳細に調査することがで. 勢を計測することを目指し,日常における姿勢計測が可能. きる [6].継続時間を示すために,姿勢を代表的な姿勢へ. な実証システムを構築した.本システムは,日常的な計測. 分類し,時間や日単位での累積結果を可視化する.これに. を実証するために試作した,小型軽量で長時間連続稼働可. より,たとえば,日常業務中に無意識に取っている姿勢を. 能なウェアラブルセンサ(以下,肌装着型センサ)と,新. 把握でき日々の姿勢を見直すきっかけを与えることができ. たな体幹姿勢の可視化手法および分類手法が搭載されたア. る [7].. ルゴリズムで構成される.. しかしながら,姿勢計測で多用されている光学式モー. 論文の構成は以下のとおりである.次章でセンサの詳. ションキャプチャシステム [8] は,複数台のカメラを設置. 細・実験手法・姿勢の定義を述べた後,3 章では 2 次曲線. するために広い空間を確保する必要があること,カメラ視. を用いた体幹姿勢の可視化手法および適用事例を示す.4. 野外の広範囲にわたる活動を計測できないこと,着席時に. 章では,姿勢分類手法を説明した後,最適なセンサ装着箇. 反射マーカーが隠れた場合正確なデータを取得できないこ. 所の選定および日常のオフィス業務中の姿勢計測への適用. となどから,日常的な計測には不向きである.一方,ウェ. 事例を報告する.5 章では,まとめと今後の課題を述べる.. アラブルセンサを用いた計測システムの場合,小規模かつ. 2. 実験手法. 計測部位や計測範囲にとらわれないため,様々な環境や状 況に適応できる [9], [10].装着箇所の制約や長時間の装着. 2.1 機器構成. によるユーザの負荷を考慮すると,ウェアラブルセンサは. 姿勢計測に用いた機器を図 1 に示す.加速度・気圧・. 小型軽量かつリアルタイムで長期間連続計測でき,装着数. 温度の同時計測が可能な肌装着型センサ,肌装着型セン. は可能な限り少ない方が望ましい.. サからワイヤレスでリアルタイムに取得したデータを受. これまでに,少数のウェアラブルセンサを用いた体幹姿 勢の可視化および分類手法が報告されている.. 信・分析する受信機付きコンピュータ(PC)を用いる.ま た,実験参加者を実験中にビデオカメラに記録し,姿勢の. 体幹姿勢の可視化手法に関しては,加速度センサとジャ. 計測リファレンスとする.肌装着型センサは,サイズが. イロセンサを背中に 3 個装着し,座位については 4 姿勢(前. 22.0 mm × 9.9 mm,サンプリング周波数は 128 Hz,無線周. 傾・後傾・右側屈・左側屈)に限定した計測例がある [11].. 波数は 2.4 GHz 帯である.電池は,補聴器用の空気電池を. しかし,姿勢を常時・継続的に計測する場合,消費電力の. 使用した.肌装着型センサに搭載されている全センサを使. 大きいジャイロセンサの使用は望ましくない.また,伸縮. 用したときの連続稼働時間は 9 日間程度である.人体に貼. を測定できる布センサを用いて試作したサスペンダーを. り付けやすいように,薄いアクリル板に両面テープで装着. 装着し,リアルタイムに体幹姿勢を可視化した計測例があ. し肌にテープで固定して使用する.. る [12].しかし,計測にはサスペンダーが必須であり,長 時間の装着によるユーザの負荷や嗜好を考えると,日常的 な計測には不向きである. 体幹姿勢の分類手法に関しては,加速度センサとジャイ ロセンサが搭載された携帯端末を用いて,直立・前後傾き・ 左右傾きなどの姿勢を推定する手法や [13], [14],3 個の加 速度センサを用いて姿勢悪化を検出し,その状況を通知す る姿勢改善補助システムが提案されている [15], [16].ま た,単一のウェアラブルセンサを用いて,体幹姿勢の修正 を促す製品も報告されている.たとえば,胸・鎖骨付近・ 腰付近に装着した単一の加速度センサを用いて体幹の傾き を算出し,設定した値の範囲外であればセンサを振動させ, 姿勢の修正を促す製品がある [17], [18], [19].また,加速 度センサと歪みゲージを腰付近に装着し,同様に姿勢の修 正を促す製品がある [20].しかし,これらの研究や製品で は,たとえば左右方向への屈曲や猫背・反りといった,腰 に負担がかかる姿勢の多くを検出することはできない.ま た,検出できる姿勢に対しても,特徴量に対して閾値処理 を行っているため,想定している閾値以外での有効性は不 明である.. c 2015 Information Processing Society of Japan . 図 1. 肌装着型センサと機器構成. Fig. 1 Small-size wearable sensor and measurement system.. 22.
(3) 情報処理学会論文誌. 図 2. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). 前額面・矢状面と 3 軸加速度センサの座標系. Fig. 2 The coronal plane and the sagittal plane of the body, and the coordinates of the tri-axial accelerometer.. 図 4 傾斜と曲がり具合を考慮した代表的な 13 種類の座位姿勢. Fig. 4 Typical thirteen sitting postures in consideration of tilt and flexion of the trunk.. に,前額面上のセンサ角度 ϕ1 ,ϕ01 と姿勢角度 θ1 の関係 を示す.. (θ1 , θ2 ) := (ϕ1 − ϕ01 , ϕ2 ). (2). 2.3 デスクワーク中の姿勢の定義 本論文ではデスクワーク中の椅子に座っている場合の姿 図 3 前額面上のセンサ角度 ϕ1 ,ϕ01 と姿勢角度 θ1 の関係. Fig. 3 The relationship between sensor angle ϕ1 , ϕ01 and posture angle θ1 in the coronal plane.. 勢計測を前提とする.代表姿勢として,図 4 に示すよう に,腰を痛めやすいと報告されている,前後傾き,左右傾 き,猫背・反りの 3 つのパラメータに着目し,各軸を代表す る特徴点として 13 種類の姿勢(図中 “□” 印)を選択する.. 2.2 加速度センサを用いた姿勢角度の算出 本論文では,肌装着型センサに搭載されている 3 軸加速 度センサを使用し,重力加速度を基準とするセンサ角度を,. 3. 体幹姿勢の可視化 体幹姿勢の変化を可視化することで,腰に負担がかかる. 図 2 に示す前額面上および矢状面上に対して算出する.前. 要因の詳細な調査が可能になると考えられる.そこで本章. 額面は人体を前後に分け,矢状面は左右に分ける仮想の平. では,体幹姿勢を背中表面に沿った曲線で表現する手法を. 面である [6].3 軸加速度センサの出力値を x,y ,z とする. 説明する.3.1 節で,センサの装着箇所および姿勢の計測. と,鉛直上方に対するセンサ角度は次式で算出できる.単. 方法を述べる.3.2 節では,できるだけ少ないセンサ数で. 位は [rad] である.. 体幹姿勢を表現するために,3 個のセンサを用いて体幹姿. ϕ1 = tan−1. z , y. ϕ2 = tan−1. . −x y2 + z2. . 勢を表現する手法を説明し,3.3 節では 13 種類の体幹姿勢. (1). ここで,ϕ1 は前額面上のセンサ角度であり,ϕ2 は矢状面. へ適用した結果を報告する.. 3.1 13 種類の姿勢計測. 上のセンサ角度である.センサが前額面上で回転して取り. ヒトの脊柱には,生理的彎曲があり,矢状面内で頸椎と腰. つけられている場合に対応するために,ϕ2 は y–z 平面上の. 椎は前彎し胸椎は後彎している [6].そこで,2 つの 2 次曲. 成分と x 成分との比を用いて算出する.基準姿勢でのセン. 線をつなぎ合わせることで,体幹姿勢を背中表面に沿った. サ角度を(ϕ01 , ϕ02 ) ,任意姿勢でのセンサ角度を(ϕ1 , ϕ2 ). 2 次曲線として表現できると考えた.2 次曲線のパラメー. とする.センサ平面と前額面が平行であると仮定すれば,. タを決定するためには,1 つの曲線についてそれぞれ 2 つ. x 軸は前額面の法線方向成分と一致するので,矢状面上の. のセンサが必要である.今回はできるだけ少ないセンサ数. 姿勢角度 θ2 は任意の姿勢でのセンサ角度 ϕ2 と一致する.. で姿勢を表現するために,中央のセンサを共有した.図 5. したがって,姿勢角度(θ1 , θ2 )は次式で与えられる.図 3. に示すように,センサ 1 と 3 は,腰から首の付け根までの. c 2015 Information Processing Society of Japan . 23.
(4) 情報処理学会論文誌. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). 図 5 肌装着型センサの装着箇所(★:第 7 頸椎,●:第 5 腰椎). Fig. 5 Location of small-size wearable sensors (★: seventh cervical vertebra, ●: fifth lumbar vertebra).. 範囲を可視化するために,第 5 腰椎と第 7 頸椎上の背中表 面に装着した.センサ 2 は,S 字曲線の変曲点に位置する のが理想的であるが,変曲点は姿勢によって変化するので, 今回は第 5 腰椎と第 7 頸椎の中間に装着した. 実験参加者は 1 名(40 代男性)である.計測回数各姿勢 において 1 回ずつである.測定時には背もたれがある椅子 を使用した.後傾姿勢 3 種類の際は,肌装着型センサが背 もたれにあたって測定に影響しないよう,背もたれを使用 しなかった.また前傾姿勢 3 種類においては,姿勢が維持 できるよう机に肘を置き,体を支えた.. 3.2 2 次曲線を用いた体幹姿勢の表現手法 センサ i の前額面および矢状面上の角度を θ1,i , θ2,i とす る.また,センサ i とセンサ i + 1 の距離を Li とする.前 額面に対して,センサ i を原点とし,センサ i + 1 に至る 2 次曲線 y = ai x2 の ai は次式で算出できる.. . Li =. xi. 0. . 1 + 4a2i x2 dx. xi 1 dy = + 1dy 1 + 4ai y √ 2 a y 4a i iy 0 0 4a2i x2i + 1 − 2ai xi 1 2 2 = 4ai xi 4ai xi + 1 − log 8ai 4a2i x2i + 1 + 2ai xi . =. xi. . (3) センサ i+1 のセンサ i に対する傾きを βi = tan(θ1,i+1 −θ1,i ) と す る と ,傾 き は 関 数 の 一 階 微 分 で 与 え ら れ る の で. 2ai xi = βi より 2+1−β β 1 i ai = 2βi βi2 + 1 − log i 8Li βi2 + 1 + βi. (4). となる.可視化の際には,上記曲線を θ1,i + π/2 だけ回転 させる.同様に矢状面上の曲線が算出できる.. 3.3 13 種類の体幹姿勢の可視化 3.2 節の式を用いて表現した 13 種類の体幹姿勢をそれぞ. 図 6 13 種類の体幹姿勢と静止画の比較(ピンク線:前額面,赤線: 矢状面.(a):左右方向への屈曲結果,(b):前後方向への屈曲 結果). Fig. 6 Comparison between postures in the images and estimated shape profiles for thirteen postures.. している.図 6 (a) のうち,直座位を除く 4 種は左右へ, 図 6 (b) の 8 種類は前後へ屈曲する姿勢である.. れ,図 6 に示す.ピンク線は前額面上の曲線であり,赤. 図 6 (a) の 2 段目で示す 2 種類の右側屈姿勢では,可視. 線は矢状面上の曲線である.各点はセンサの装着箇所を示. 化した曲線は,“右側屈” よりも “右側屈で猫背” の姿勢の. c 2015 Information Processing Society of Japan . 24.
(5) 情報処理学会論文誌. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). 方が前額面上・矢状面上ともに屈曲が深く,重ね合わせた. あり,1 回ごとに直座位から移行し,10 秒間静止した.直. 静止画の体幹姿勢によく一致している.図 6 (a) の 3 段目. 座位の計測回数は計 60 回である.. で示す 2 種類の左側屈姿勢も,同様によく一致した結果が 得られている.図 6 (b) の 1 段目で示す 2 種類の直立姿勢. 4.2 確率分布の計算方法. や,2, 3 段目で示す前・後傾姿勢各 3 種においても,背中. 3.1 節で示した実験方法に従って,姿勢角度 Θ = (θ1 , θ2 )T. の曲げ伸ばしを含めた姿勢は静止画の体幹姿勢によく一致. を算出し,各姿勢 j の姿勢角度の平均ベクトル Θj と共分. している.直座位から各姿勢へ至る途中の姿勢でも,姿勢. 散行列 Aj を求めて,多次元正規分布を作成した.分類す. 変化は静止画の体幹姿勢に追従できていることを確認して. べき角度 θ が姿勢 j に属する確率 Pj (θ) は次式で計算する.. いる.. d は次元数である.. 以上より,図 4 に示す各パラメータの軸における,原点・ 最小値・最大値の体幹姿勢を,加速度センサから算出した 姿勢角度を用いて表現できることを確認した.今後は,実 験参加者の人数を増やすとともに,提案手法をリファレン ス手法と比較することで,提案手法の有効性を定量的に評 価する予定である.. 4. 体幹姿勢の姿勢分類 姿勢を代表的な姿勢へ分類し,時間や日単位での累積結 果を観察することで,姿勢の気づきによる改善指導につな がると考えられる.そこで本章では,姿勢が最も精度よく 分類できるセンサ装着箇所を特定し,1 日の姿勢変化を代 表的な姿勢へ分類する手法について述べる.4.1 節ではセ ンサの装着箇所を述べ,4.2 節では姿勢の分類方法を述べ る.4.3 節では 2 個の 3 軸加速度センサを組み合わせた分 類結果を,4.4 節では単一の 3 軸加速度センサを用いた分 類結果を,4.5 節では 4.4 節で特定した箇所に肌装着型セ ンサを装着し,1 日の姿勢変化を代表的な姿勢へ分類した 結果を報告する.. T −1 1 1 e− 2 {(θ−Θj ) A (θ−Θj )} Pj (θ) = √ ( 2π)d |Aj |. (5). 姿勢角度 θ の分類は,確率 Pj (θ) が最も高い姿勢に属す るものとした.なお,多次元正規分布は実験参加者別に作 成した.. 4.3 最適なセンサ装着箇所の選定(センサ 2 個) 背中に装着したセンサのうち,2 カ所のセンサを組み合わ せて姿勢分類を行った.組み合わせ数は計 45 通りである. 上式で確率を算出する際,分散のきわめて小さい方向が 存在すると,共分散行列の逆行列の精度が劣化するという 問題がある.そこで,この問題を解決するために,主成分 分析を適用した.具体的には,固有値の小さい方向(固有 ベクトル方向)を無視して,対象とする空間の次元を下げ る手段を取った.今の場合は,共分散行列を固有値分解し た後,最大固有値に比べて極端に小さい固有値に対応する 固有ベクトル方向を棄却することに等しい.共分散行列 A の固有値 λi と固有ベクトル qi は次式で得られる.. A = QΛQT , Q = (q1 , . . . , qd ), Λ = diag(λ1 , . . . , λd ) 4.1 姿勢分類に最適な装着箇所の計測 実験参加者は 5 名(20–40 代男性)であり,背中に 8 カ 所,腰骨の左右に 2 カ所,計 10 カ所に肌装着型センサを 装着した.センサの取り付け箇所が体格に影響されないよ うに,第 7 頸椎および第 5 腰椎の間に,背骨に沿って等間 隔に配置した(図 7) .計測した姿勢は 3 章と同じである. 計測回数は直座位を除く 12 の各姿勢において 10 回ずつで. ただし,λ1 , . . . , λd は降順とする. ここでは,棄却する固有ベクトルを累積寄与率により決 定する.累積寄与率は次式で定義される.. n λk ξ(n) := k=1 d j=1 λj. (6). ξ(n) は固有ベクトル q1 , . . . , qd が張る部分空間のもとの データ分布に対する表現能力を示している.共分散行列 A に対し,ξ(n) が ξc(今回は 0.999 とした)以上になる最小 の n を nc と書く.nc が得られたとき,分類すべき角度 θ の姿勢 j に属する確率 Pj (θ) は以下のように書き直せる. T −1 1 1 Pj (θ) = √ e− 2 {(θ−Θj ) Aj (θ−Θj )} j | ( 2π)nc |A. (7). ただし, T. 図 7 肌装着型センサの装着部位(★:第 7 頸椎,●:第 5 腰椎). Fig. 7 Location of small-size wearable sensors (★: seventh cervical vertebra, ●: fifth lumbar vertebra).. c 2015 Information Processing Society of Japan . j = Q j Λ j Q j , A. j A. −1. j Λ j =Q. −1. j Q. T.
(6) = (q1 , . . . , qnc ) Q
(7) = (λ1 , . . . , λnc ) Λ 25.
(8) 情報処理学会論文誌. 図8. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). 装着箇所別の正解率の結果(黒枠:70%台,赤枠:80%台,赤 塗りつぶし:90%台の正解率). Fig. 8 Classification accuracy at each location (black frame: 70%∼, red frame: 80%∼, red square: 90%∼).. である. 各箇所を組み合わせた際の正解率は 10-fold 交差検定で 求めた.各姿勢が 1 回ずつ含まれるよう計測を 10 分割し,. 9 分割から Pj (θ) を計算して 1 分割の姿勢を分類した.そ の後,正解の姿勢と比較し,正解率を求めることを 10 回繰 り返し,組み合わせごとに正解率を求めた.その結果,ど の 2 カ所の組み合わせでも 90%以上の正解率となった.特 に,上から 1, 2, 3, 4, 5 番目のセンサから 2 個を選択し組 み合わせた場合は,5 名とも正解率は 95%以上であった.. 図9. 装着箇所ごとの角度分布の例(a:上から 2 番目のセンサ,b: 下から 2 番目のセンサ). Fig. 9 Examples of the angular distribution of two locations (a: the second top secsor, b: the second bottom sensor).. 4.4 最適なセンサ装着箇所の選定(センサ 1 個) 4.3 節と同様に,ただし背中に装着したセンサのうち,単. でも高精度に姿勢を分類できることが分かる.. 一のセンサのみで姿勢分類を行った.図 8 に 5 名の正解. 正解率が高くなる要因は,同一姿勢内の角度の分散が小. 率を記す.たとえば A さんの場合,1 番上に装着したセン. さく,姿勢間の角度の分散が大きいことである.図 9 に,. サのみで代表的な姿勢を分類した結果,90%以上の正解率. D さんの上から 2 番目のセンサと下から 2 番目のセンサの. だったことを示す.全 50 カ所(10 カ所 × 5 名)のうち 2. 13 の各姿勢の角度をプロットした結果を示す.たとえば. カ所を除き,正解率は 80%以上だった.中でも,上から 2,. 前傾(図 9 “∗” 印)と前傾反り(図 9 “・” 印)や左側屈. 4 番目は,5 名とも正解率が 90%以上だった.個別に見る. (図 9 “☆” 印)と左側屈で猫背(図 9 “◇” 印)の角度分布. と,姿勢分類の正解率が最も高かった箇所は,A さんは上. を比較すると,上から 2 番目のセンサの方が姿勢内での角. から 2 番目(約 97%) ,B さんは下から 1 番目と 2 番目(同. 度の分散に対して姿勢間の角度の分散が相対的に大きかっ. 率で約 96%),C さんは上から 3 番目と下から 2 番目(同. た.したがって,図 8 において白抜きとなっている正解率. 率で約 92%) ,D さんは上から 2 番目(約 98%) ,E さんは. 70%台,80%台の装着箇所は,2 つ以上の姿勢が混在する. 上から 4 番目と下から 1 番目(同率で約 93%)であった.. など,姿勢内の分散が大きく,姿勢間の分散が小さかった. この結果より,特定の箇所に限定すれば単一のセンサのみ. と考えられる.. c 2015 Information Processing Society of Japan . 26.
(9) 情報処理学会論文誌. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). 図 10 計測時間のうち各姿勢が占める割合(時刻による変化). Fig. 10 The ratio of postures in measurement time (every hour).. 中の姿勢を計測した.計測したデータを 4.4 節で作成した モデルに当てはめ,代表的な姿勢へ分類した結果を図 10, 図 11 に示す.この際,高い分類精度を確保するために,. 5 分以上定常でない信号は対象から外した.図 10 は,1 時 間ごとの姿勢変化を 100%積み上げグラフで示したもので あり,横軸は時刻,縦軸は割合である.たとえば,B さん の場合,10 時台に直立を約 14%・直立猫背を約 5%・前傾 を 24%・前傾反りを 43%・後傾猫背を約 13%取っている ことを示す.図 11 は,全業務時間における姿勢の割合を, 図 4 で示した姿勢上にプロットした結果である.円の大き さは各姿勢の継続時間を示している. たとえば A さんの場合,前傾猫背などいくつかの姿勢を 取っているが,図 10 を見ると時刻に関係なく後傾猫背の 姿勢の割合が最も高いことが分かる.本結果は,図 11 に 示した全業務時間の結果でも確認することができ,後傾猫 背は計測時間の約 88%を占めている.B さんは,1 日を通 して体を前へ傾ける,前傾直立と前傾反りの姿勢の割合が 高く,12 時台(昼休み)は,直立猫背の割合が一時的に高 くなっている(図 10).全業務時間においては,前傾,前 傾反りの姿勢が合計で約 68%と高いことが視覚的に確認 できる(図 11).C さんは,時刻にかかわらず直立や前傾 猫背の姿勢が 20%∼30%の割合を占めており,午後になる と,直立猫背が出現していることが分かる(図 10).全業 務時間において,時刻依存の小さい前傾猫背や直立の割合 が高いことが分かる(図 11).D さんは,時刻に関係なく 直立の姿勢の割合が最も高く(図 10),全業務時間におい ても直立が約 67%と最も高い割合を占めていることが分か る(図 11).E さんは,時刻にかかわらず後ろへ傾ける, 後傾・後傾猫背の姿勢の割合が高く(図 10),全業務時間. 4.5 オフィス業務中の姿勢の計測. の割合も,後傾猫背と後傾の合計は 67%であり,後傾姿勢. 実験参加者 5 名に対し,4.4 節で特定した最も精度よく姿. の割合が高いことが分かる(図 11).以上の結果から,5. 勢分類ができる箇所にそれぞれセンサを 1 個装着し,およ. 名の姿勢を比較すると,業務中に最も多く取っている姿勢. そ 7 時間にわたるデスクワークを中心とするオフィス業務. とその割合は人ごとに異なることや,左右への側屈姿勢の. c 2015 Information Processing Society of Japan . 27.
(10) 情報処理学会論文誌. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). 図 11 計測時間のうち各姿勢が占める割合(1 日). Fig. 11 The ratio of posture in measurement time (one day).. 割合が少ないことが分かる. 今回は,5 名を対象とした 1 日分のデータを対象とする ことで,個人間の姿勢の相違を明らかにした.今後,多人 数の長期間にわたるデータを収集することで,日々のトレ ンドを含めた姿勢変化を分析する予定である.. 5. まとめ 日常的な計測を実証するために試作した,小型軽量で長 時間連続稼働可能なウェアラブルセンサ(以下,肌装着型 センサ)を用いて,デスクワークを中心とするオフィスで の体幹姿勢の可視化手法および分類手法を開発し,日常生 活環境下での姿勢を実測した. 体幹姿勢の可視化手法として,3 個の 3 軸加速度センサ. c 2015 Information Processing Society of Japan . 28.
(11) 情報処理学会論文誌. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). を用いて,体幹姿勢を滑らかな区分的 2 次曲線として表現 する手法を提案した.可視化結果を静止画で目視確認し, 可視化した曲線は,重ね合わせた静止画の体幹姿勢によく. [11]. 一致していることを確認した. 姿勢分類手法として主成分分析を用いた方法を提案した. 単一の 3 軸加速度センサを用いた 13 姿勢の分類の正解率. [12]. は,5 名を対象とした実験において 90%以上であった.さ らに,オフィス業務中の姿勢を計測し,13 姿勢へ分類した. [13]. 結果,全業務時間における姿勢の割合を視覚的に示すこと ができた.. [14]. 本論文で報告した,肌装着型センサと姿勢の可視化およ び分類手法は,腰に負担がかからない姿勢の指導への適用. [15]. を考えている.今後は,装着箇所の制約や長時間の装着に よるユーザの負荷を考慮し,単一の加速度センサのみで体. [16]. 幹姿勢を可視化する手法の開発を目指すとともに,姿勢の 可視化および分類結果のユーザへの有効な提示方法の開発 や,提案した手法による姿勢改善効果の検証に取り組んで いきたい.. [17] [18] [19]. 参考文献 [1]. 厚生労働省:膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防 のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研 究,厚生労働省(オンライン) ,入手先 http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/ NIDD00.do?resrchNum=201217001A. [2] Heneweer, H., Staes, F., Aufdemkampe, G., et al.: Physical activity and low back pain: a systematic review of recent literature, European Spine Journal, Vol.20, No.6, pp.826–845 (2011). 【責任編 [3] 【シリーズ編集】黒川幸雄,高橋正明,鶴見隆正, 集】伊藤俊一,鶴見隆正: 〈理学療法 MOOK〉14 腰痛の 理学療法,三輪書店 (2008). [4] Andersson, B.J., Ortengren, R., Nachemson, A., et al.: Lumbar disc pressure and myoelectric back muscle activity during sitting, Scandinavian journal of rehabilitation medicine, Vol.6, No.3, pp.104–114 (1974). [5] Heuer, F., Schemidt H., Klezl, Z., et al.: Stepwise reduction of functional spinal structures increase range of motion and change lordosis angle, Journal of Biomechanics, Vol.40, No.2, pp.271–280 (2007). [6] Neumann, D.A.: Kinesiology of the Musculoskeletal System: Foundations for Rehabilitation, Second Edition, Mosby (2009). 嶋田智明,有馬慶美(監訳):カラー 版 筋骨格系のキネシオロジー 原著第 2 版,医歯薬出版 (2012). 青田洋一,齋藤知行,上杉昌章,他:長時間着座姿勢にお [7] ける連動型腰椎用 CPM の腰痛予防効果の根拠,腰痛学 会誌,Vol.15, No.1, pp.122–131 (2009). [8] Ranavolo, A., Don, R., Draicchio, F., et al.: Modelling the spine as a deformable body: Feasibility of reconstruction using an optoelectronic system, Applied Ergonomics, Vol.44, No.2, pp.192–199 (2013). [9] Baek, B.S., Kim, D.M., Bashir, F. and Pyun, J.Y.: Real Life Applicable Fall Detection System based on Wireless Body Area Network, Proc. IEEE Consumer Communications and Networking Conference, pp.62–67 (2013). [10] Chan, A.M., Selvaraj, N., Ferdosi, N. and Narasimhan, R.: Wireless Patch Sensor for Remote Monitoring of. c 2015 Information Processing Society of Japan . [20]. Heart Rate, Respiration, Activity, and Falls, Proc. IEEE Engineering in Medicine and Biology Society, pp.6115– 6118 (2013). Wong, W.Y. and Wong, M.S.: Measurement of Postural Change in Trunk Movement Using Three Sensor Modules, IEEE Trans. Instrumentation and Measurement, Vol.58, No.8, pp.2737–2742 (2009). 入手先 http://tobiassonne.com/project/ the-posture-suspenders/ (参照 2014-07-16). 関口純平,松井崇志,新津善弘:座位姿勢コンテキスト の推定方式,電子情報通信学会東京支部学生会研究発表 会,p.108 (2011). 村田幸之介,澁谷優貴,新津善弘:圧力センサとスマー トフォンを用いた座位姿勢推定方式,電子情報通信学会 東京支部学生会研究発表会,p.60 (2014). 森 祐馬,榎堀 優,間瀬健二:ウェアラブル加速度セ ンサを利用した姿勢評価の検討,情報処理学会研究報告, Vol.2013-HCI-155, No.12, pp.1–6 (2013). 森 祐馬,榎堀 優,間瀬健二:ウェアラブル加速度セン サを利用した姿勢改善補助システム,情報処理学会「マル チメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2014)シ ンポジウム論文集,pp.126–130 (2014). 入手先 http://www.winfrontier.com/lifescore.html(参 . 照 2014-07-16) 入手先 http://www.iposture.com/ (参照 2014-07-16) . 入手先 http://www.lumobodytech.com/lumoback/(参 . 照 2014-07-16) 入手先 http://www.uprightpose.com/ (参照 2014-0716).. 鷲澤 史歩 (正会員) 2012 年東京工業大学大学院総合理工 学研究科物理情報システム専攻修士課 程修了.同年,株式会社富士通研究所 入社.現在,センサデータを用いた人 の状態認識技術の開発に従事.. 中田 康之 1987 年東京工業大学大学院理工学研 究科電子物理工学専攻修士課程修了. 同年,株式会社富士通研究所入社.視 覚情報処理システム,ロボットの軌道 制御技術の研究開発を経て,現在は人 を対象にしたセンシング技術の研究開 発に従事.. 29.
(12) 情報処理学会論文誌. コンシューマ・デバイス & システム. Vol.5 No.4 21–30 (Oct. 2015). 猪又 明大 1995 年早稲田大学大学院理工学研究 科修士課程修了.同年,株式会社富士 通研究所入社.2003 年,層間交換結 合およびその記録媒体への適用に関す る研究で,同大学博士号取得.超高密 度磁気記録媒体の研究開発を経て,現 在は人を対象にしたセンシング技術と実世界情報の分析・ 可視化の研究開発に従事.. 柳沼 義典 1990 年東京工業大学大学院総合理工 学研究科電子システム専攻修士課程 修了.同年,株式会社富士通研究所入 社.ニューラルネットワーク応用,セ ンサフュージョンシステム,データマ イニングアルゴリズムおよびシステ ムの研究開発を経て,現在は実世界の人を対象にしたソ リューション開発と,そのための要素技術開発に従事.. c 2015 Information Processing Society of Japan . 30.
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