巨大地震発生サイクルシミュレーション
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(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2011-HPC-131 No.4 2011/10/6. 2. 地震発生サイクルシミュレーション計算. 海・東南海・南海の破壊セグメントを持つ南海トラフ巨大地震の震源域は東海から四 国に及び M8.6 になると危惧されている。M9.0 の東北地方太平洋沖地震の発生を受け、 破壊域の日向灘までの進展や南海トラフ近くの浅部も震源域になる可能性もあり見直 しが進んでいる。このようにモデル領域は 1000km 以上に及ぶ。摩擦パラメータに依 存するが、離散化の影響をさけるためにセルサイズを小さくする必要がある(100m〜 1km)。このため N が 106 を超える大規模計算になる。 南海トラフ震源域深部では長期的・短期的スロースリップが観測され、巨大地震発 生前にその活動度が変化する可能性が指摘されている。予測につなげるには巨大地震 とともにこれらのスロースリップの活動もシミュレーションに加える必要がある。ま た、また 2011 年東北地方太平洋沖地震発生前には震源域における M5 以上の地震の b 値が減少していたという報告がある。現在は M7 以上のアスペリティを対象にしてい るが、このようにスロースリップや M5 までの地震といったマルチスケールシミュレ ーションが要請されており、この場合更に小さなセルサイズを必要となる。 また気象や海洋分野で用いられているデータ同化手法を用いた摩擦パラメータ推 定及び地震発生予測シミュレーションを行うには、繰り返し計算を必要とする このように大規模マルチスケール地震サイクルシミュレーションやデータ同化手 法を用いた予測シミュレーションが要請されている。このためにはシミュレーション の省メモリ化・高速化が必須である。. 日本列島には、東から日本海溝沿いに太平洋プレートが、南からはフィリピン海プ レートが南海トラフ沿いに沈みこみ、数十年〜百年に一度プレート境界型大地震を発 生させている。以下に地震発生サイクルシミュレーションの通常の計算手順について 述べる。 まず、半無限均質弾性体を仮定し、その中に3次元プレート境界形状を設定する。 境界要素法的解法を用いて、このプレート境界を N 個の小さなセルに分割すると、各 セル i での準静的運動方程式は次のように書ける。. . . i t K ij j t V pl , j t j. ここで、. i , Vi , j , V pl , j , Kij , G, . G 2. . Vi t. (1). は、それぞれ、セル i でのせん断応力、すべり速度、. セルjでのすべり、プレート収束速度、セル j での単位すべりによるセル i での応力 変化(すべり応答関数)、剛性率、S 波速度である。式(1)は、プレート沈み込みからの すべり遅れによって生じる応力(右辺第1項)と地震波放射による応力降下(右辺第 2項)の和とせん断応力(τ i)の釣り合いから得られる弾性体の準動的運動方程式で ある。このせん断応力と、速度と状態に依存する摩擦則のうち、composite law に従う 摩擦力. . . . . . i t i * i t ai ln V* / Vi t V* / Vst. 4. シミュレーションの省メモリ化・高速化. (2). Vpl,i Vpl,i t V t V t di t biVpl,i exp i exp i i i t bi ln dt Li bi Vc Li Vi t Vst . 式(1)のすべり応答関数行列とすべり損ベクトル籍に必要なメモリ及び計算量 は O(N2)である。これまで、この行列・ベクトル積で O(N)〜O(NlogN)のメモリ量や計算 量を達成する手法として、 1)モデル領域の対称性を仮定した FFT 法(Fast Fourier Transform method)、 2)高速多重極法(Fast Multipole method)、 3)階層型行列法(Hierarchical Matrices method) を試みてきた。 その結果、以下のことが分かっている。まず、沈み込み帯におけるプレート境界型 地震を扱うには対象性があまり期待できないため、FFT 法の適用は難しい。無限媒質 中でのすべり応答関数での高速多重極法の適用は有効であるが、地表を含む半無限媒 質中ではまだうまく多重極展開できる形が得られていない。これに対し、階層型行列 の要件はすべり応答関数が距離とともに減衰するという性質のみを要し、海溝型プレ ート境界巨大地震サイクルシミュレーションに適していることが分かった。また、沈 み込み帯では不均質構造や粘弾性構造を考える必要があるが、階層型行列法はこう言 った媒質の不均質性を考慮したすべり応答関数行列にも対応できる可能性がある。. (3). を連立させて各プレート境界セルにおけるすべりの発展をシミュレートする。実際に は、式(1)と(2)を時間で微分し連立させ、速度の時間微分を得て、これを式(3)と連立 させて、時間刻み幅可変の 5 次 Runge-Kutta 法により積分している。 式(2)(3)で、セル i には、摩擦パラメータ ai,b i, Li およびプレート収束速度 Vpli を与え る。a-b<0 だとすべり速度が増すと摩擦力が低下(速度弱化)する摩擦特性を示し、 地震を発生させるアスペリティ域にこのパラメータを与える。逆に a-b>0 だと速度強 化を示し、アスペリティ以外の領域に与える。L は特徴的すべり量と呼ばれ破壊エネ ルギーに比例するのですべりをコントロールする。. 3. 大規模マルチスケール地震発生サイクルシミュレーション M9.0 の 2011 年東北地方太平洋沖地震は 500x200km の巨大な震源域を持つ。また東 2. ⓒ 2011 Information Processing Society of Japan.
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