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巨大地震発生サイクルシミュレーション

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Academic year: 2021

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(1)情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2011-HPC-131 No.4 2011/10/6. 1. はじめに. 巨大地震発生サイクルシミュレーション 平原和朗. 摩擦現象は身近な現象であり、古くから研究されまた現在物理学においても重要な 研究課題である。この摩擦は地震の断層運動においても重要な役割を果たしている。 地球内部の断層面にはその深度さに比例する法線応力により大きな摩擦力が働き、地 震間には断層が固着しているが、プレート運動により断層に働くせん断応力が次第に 増し摩擦力に打ち勝つと急激なすべりが発生し、地震動や地殻変動、および海域では 津波を発生させる。これが地震の発生である。このように断層やプレート境界では地 震が繰り返し発生し、その繰り返しを地震サイクルと呼ぶ。 地震は断層における摩擦現象であるとの認識に立って、1970 年代から岩石の摩擦特 性を調べる室内実験が精力的に行われ、いくつかの摩擦構成則が得られている。この 内の速度と状態に依存する摩擦構成則とプレート運動を組み合わせ、1980 年代から断 層やプレート境界で自発的に地震が発生する地震発生サイクルシミュレーションが行 われるようになった。 当初のシミュレーションは計算機の能力による制約から小さなモデルから始めら れた。一方、地震波形解析から断層面上のすべり分布の解明が進み、断層における地 震時すべり量の大きい領域をアスペリティと呼び、プレート境界面におけるアスペリ ティマップが作成された。このアスペリティ域は地震間には固着しており地震時に大 きくすべるが、他の領域では地震間では定常的にすべり、地震時には急激なすべりは 発生せず、地震後ゆっくりした余効すべりが発生する。このようなプレート境界は斑 にくっついているというアスペリティモデルに基づき、摩擦パラメータをプレート境 界面に分布させ、摩擦構成則を用いて、プレート境界地震の研究が進んだ。特に、地 球シミュレータの出現等計算機の能力の向上により、現実的なシミュレーションも行 われるようになってきている。 過去の地震発生履歴を再現する摩擦パラメータを推定してシミュレーションの時 間ステップを進め、将来的に発生する地震についての予測を行うというのが目標であ るが、現在ではまだ、地震がなぜ発生したかを理解するためのシミュレーション研究 が主であると言える。特に、東日本大震災をもたらしたマグニチュード(M)9.0 の 2011 年東北地方太平洋沖地震の発生機構の解明や今世紀前半に発生し西南日本に甚 大な被害を及ぼすと危惧されている南海トラフ巨大地震の予測を目指して、巨大地震 発生サイクルシミュレーション研究が行われている。ここでは、地震発生シミュレー ションの考え方、物理方程式、大規模マルチスケールシミュレーションの必要性およ びそのための解法等、研究の概要について報告する。. †. 身近な現象である摩擦現象は、甚大な被害をもたらす地震断層運動においても、 重要な役割を果たしている。地震学では、岩石の摩擦特性に関する実験が精力的 に行われ、いくつかの摩擦構成則が得られてきた。このようにして岩石の摩擦実 験から得られた速度・状態依存の摩擦構成則に基づく、プレート運動を駆動力と する地震発生サイクルシミュレーションが盛んに行われ、歴史地震の複雑な発生 履歴の再現に成功するようになってきている。最近では、東北日本大震災をもた らした 2011 年東北地方太平洋沖地震の発生メカニズムの解明や、今世紀前半に発 生し西南日本に甚大な被害をもたらすと危惧されている南海トラフ巨大地震の 発生予測を目指して、地震発生サイクルシミュレーション研究が精力的に進めら れている。本講演では、この地震発生サイクルシミュレーションの基礎的考え方、 物理方程式、大規模マルチスケールシミュレーションの必要性、HPC 研究からの 問題点など、研究の概要を報告する。. Earthquake Cycle Simulation KAZURO HIRAHARA† Friction has an important role in our dairy life, and also in earthquake faultings which cause devastating disasters. In seismology, rock friction experiments have been carried out to derive friction laws. Earthquake cycle simulations based on such laboratory-derived rate- and state-dependent friction laws, which are driven by relative plate motions, have successfully reproduced complex occurrences of historical earthquake sequences. Especially, with such simulations, we have tried to reveal generation mechanisms of the 2011 Tohoku-oki earthquake causing the great disaster in east Japan and to provide information on the occurrence of the next Nankai great earthquake in southwest Japan which is anticipated to occur in the first half of this century. In this paper, I give a review of earthquake cycle simulations which includes basic concepts, physical equations, requirements of large- and multi-scale simulations and problems in view of high performance computing.. †. 1. 京都大学 JST/CREST Kyoto University JST/CREST. ⓒ 2011 Information Processing Society of Japan.

(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2011-HPC-131 No.4 2011/10/6. 2. 地震発生サイクルシミュレーション計算. 海・東南海・南海の破壊セグメントを持つ南海トラフ巨大地震の震源域は東海から四 国に及び M8.6 になると危惧されている。M9.0 の東北地方太平洋沖地震の発生を受け、 破壊域の日向灘までの進展や南海トラフ近くの浅部も震源域になる可能性もあり見直 しが進んでいる。このようにモデル領域は 1000km 以上に及ぶ。摩擦パラメータに依 存するが、離散化の影響をさけるためにセルサイズを小さくする必要がある(100m〜 1km)。このため N が 106 を超える大規模計算になる。 南海トラフ震源域深部では長期的・短期的スロースリップが観測され、巨大地震発 生前にその活動度が変化する可能性が指摘されている。予測につなげるには巨大地震 とともにこれらのスロースリップの活動もシミュレーションに加える必要がある。ま た、また 2011 年東北地方太平洋沖地震発生前には震源域における M5 以上の地震の b 値が減少していたという報告がある。現在は M7 以上のアスペリティを対象にしてい るが、このようにスロースリップや M5 までの地震といったマルチスケールシミュレ ーションが要請されており、この場合更に小さなセルサイズを必要となる。 また気象や海洋分野で用いられているデータ同化手法を用いた摩擦パラメータ推 定及び地震発生予測シミュレーションを行うには、繰り返し計算を必要とする このように大規模マルチスケール地震サイクルシミュレーションやデータ同化手 法を用いた予測シミュレーションが要請されている。このためにはシミュレーション の省メモリ化・高速化が必須である。. 日本列島には、東から日本海溝沿いに太平洋プレートが、南からはフィリピン海プ レートが南海トラフ沿いに沈みこみ、数十年〜百年に一度プレート境界型大地震を発 生させている。以下に地震発生サイクルシミュレーションの通常の計算手順について 述べる。 まず、半無限均質弾性体を仮定し、その中に3次元プレート境界形状を設定する。 境界要素法的解法を用いて、このプレート境界を N 個の小さなセルに分割すると、各 セル i での準静的運動方程式は次のように書ける。. . .  i t    K ij  j t  V pl , j t  j. ここで、.  i , Vi ,  j , V pl , j , Kij , G, . G 2. . Vi t. (1). は、それぞれ、セル i でのせん断応力、すべり速度、. セルjでのすべり、プレート収束速度、セル j での単位すべりによるセル i での応力 変化(すべり応答関数)、剛性率、S 波速度である。式(1)は、プレート沈み込みからの すべり遅れによって生じる応力(右辺第1項)と地震波放射による応力降下(右辺第 2項)の和とせん断応力(τ i)の釣り合いから得られる弾性体の準動的運動方程式で ある。このせん断応力と、速度と状態に依存する摩擦則のうち、composite law に従う 摩擦力. . . . . .  i t   i *  i t  ai ln V* / Vi t  V* / Vst. 4. シミュレーションの省メモリ化・高速化.  (2).  Vpl,i Vpl,i    t   V t  V t   di t  biVpl,i  exp   i  exp   i   i i t   bi ln    dt Li  bi   Vc  Li  Vi t  Vst . 式(1)のすべり応答関数行列とすべり損ベクトル籍に必要なメモリ及び計算量 は O(N2)である。これまで、この行列・ベクトル積で O(N)〜O(NlogN)のメモリ量や計算 量を達成する手法として、 1)モデル領域の対称性を仮定した FFT 法(Fast Fourier Transform method)、 2)高速多重極法(Fast Multipole method)、 3)階層型行列法(Hierarchical Matrices method) を試みてきた。 その結果、以下のことが分かっている。まず、沈み込み帯におけるプレート境界型 地震を扱うには対象性があまり期待できないため、FFT 法の適用は難しい。無限媒質 中でのすべり応答関数での高速多重極法の適用は有効であるが、地表を含む半無限媒 質中ではまだうまく多重極展開できる形が得られていない。これに対し、階層型行列 の要件はすべり応答関数が距離とともに減衰するという性質のみを要し、海溝型プレ ート境界巨大地震サイクルシミュレーションに適していることが分かった。また、沈 み込み帯では不均質構造や粘弾性構造を考える必要があるが、階層型行列法はこう言 った媒質の不均質性を考慮したすべり応答関数行列にも対応できる可能性がある。. (3). を連立させて各プレート境界セルにおけるすべりの発展をシミュレートする。実際に は、式(1)と(2)を時間で微分し連立させ、速度の時間微分を得て、これを式(3)と連立 させて、時間刻み幅可変の 5 次 Runge-Kutta 法により積分している。 式(2)(3)で、セル i には、摩擦パラメータ ai,b i, Li およびプレート収束速度 Vpli を与え る。a-b<0 だとすべり速度が増すと摩擦力が低下(速度弱化)する摩擦特性を示し、 地震を発生させるアスペリティ域にこのパラメータを与える。逆に a-b>0 だと速度強 化を示し、アスペリティ以外の領域に与える。L は特徴的すべり量と呼ばれ破壊エネ ルギーに比例するのですべりをコントロールする。. 3. 大規模マルチスケール地震発生サイクルシミュレーション M9.0 の 2011 年東北地方太平洋沖地震は 500x200km の巨大な震源域を持つ。また東 2. ⓒ 2011 Information Processing Society of Japan.

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