河川上流域の河道地形
*北海道大学大学院工学研究科
長谷川 和義†
Channel Morphology of Rivers in Upstream Region
Kazuyoshi HASEGAWA,
Graduate School of Engineering, Hokkaido University 1 はじめに 河川上流部の多くはもっぱら山地域に属し,石 礫で形づくられた急勾配河道や白波をたてた流れ を特徴としている.本論の目的は,これら渓流の 形態と流れの性質を紹介し,既往の土砂水理学の 知識によって説明することにある. 上流から下流まで河川の全体を工学的に大分 類する試みが,山本1)によっておこなわれている. 本論で取り上げるのは山本の分類による「セグメ ント M」の山間地域であり,ここでいう渓流は, 源頭部に近い部分(1次河道)を除いた急流石礫 河川とする.また,河道の地形形態を簡単に河床 形態と呼ぶことにする. 2 渓流河床形態のスケールと分類 2.2 形態の分類 渓流の形態に関する分類とその用語は,研究分 野や研究者ごとに異なっており,しかもかなり錯 綜している.河川工学分野では,岸ら 2),長谷川 3),4),沢田・芦田5),Hasegawa ら6)は,流路幅の数 分の1∼1倍スケールの「小規模河床起伏」,流路 幅数倍スケールの「中規模河床起伏(うねり)」, 谷幅スケールの「大規模河床起伏」という分類を *〒060-8628 札幌市北区北 13 条西 8 丁目 †E-mail : [email protected] 図 1 小川における縦断河床形状(平均勾配高差し引き).縦線は河道平面形状の蛇行曲頂位置を示す. 下 流 か ら の 流 路 に そ う 距 離 ( m ) 平均勾配高を 引い た河床高(m ) ステップ・プール 移動平均値 ステップ・プール 移動平均値 2.1 形態の特徴 石礫が卓越する渓流の中心に沿い,流れ方向に 河床起伏を計測すると図 1 のような複雑な凹凸地 形が現れる.この図は豊平川水系「小川」(流域面 積 10.8km2,流路長 7.0km,平均勾配 0.102)の観 測結果で,平均勾配の傾きが差し引かれており, 流向は右から左に向かっている.同図において, ①のこぎりの刃状の短い波長の起伏(平均波長 4.2m),②これらが集まった波長 30m ほどの起伏, ③100∼200m あるいはそれ以上の規模の大きな起 伏の存在が見て取れる.後述のように,これらは それぞれ小規模,中規模,大規模の河床形態に対 応しており,石礫渓流河川の大きな特徴になって いる. 〔特集〕ながれと地形おこない,それぞれの成因について考察している. これらの分類は水理学的な視点が明瞭であり成因 を解明するには都合がよいが,環境評価において 重要な淵や瀬という形態的イメージがやや希薄で ある. 一方,地形学の立場では,Grant ら7)が試験地渓 流の形態を詳しく調べ, “sub unit”(細分単位)ス ケール,“channel unit”(流路単位)スケール,お よび流路幅の 102∼103倍の“reach”(区域)に大別 している.この分類は上述の著者らのものにかな り近い.その上で Grant らは,「流路単位」の形態 として5種類を認め,“Pools”(淵),“Riffles”(浅 瀬),“Rapids”(早瀬),“Cascades”(小滝域),“Steps” (段落ち)をあげている.これらの形態的特徴は 河床勾配と密接に関係しており,上述の順に急な 勾配地域に存在するとしている.淵瀬の性格をと らえる意味でこの分類は優れている.しかし,成 因的には十分整理がついていないようであり,こ こでは,著者らが見いだした大・中・小規模の形 態を紹介するとともにそれらの成因について触れ, Grant らの分類との関係を示すことにする. 3 小規模河床形態の実態と成因 渓流を眺めたときに最も目につくのが小規模河 床形態とその上の流れであり,研究が進むにつれ て二種類のものがあることが分かってきた.礫列 (トランスバースリブ transverse rib)と礫段(ステ ップ・プール step and pool)である.以下にこれら を紹介する. 3.1 礫列(トランスバースリブ)の形態と流れ 図 2 は,礫列が連続して並ぶ渓流の例(豊平川 水系薄別川支川白水川(流域面積 13.63km2,流路 長 8.2km,平均勾配 1/20))である.やや流量の多 い時期のもので,礫の大部分が水面下になってい る.流路を横断して平行に並ぶ白波が認められる が,これらの場所に礫列がある.川を横断するい くつもの並びが肋骨状に見えることからこの英語 名称が付けられたものであろう.流れは下流の比 較的浅いプールに落ち込み,直後に跳水を起こし ている.Peterson・Mohanty8)は,このような流れ を“tumbling flow”と名付けている.礫列と礫列の間 の距離(波長=プール長),および礫列高(波 高)は,いずれも対数正規分布に従う広がりをも った値を示す.ステップは,通常1ないし2層の 礫によって構成されており,したがって波高も河 床表層礫の 84%通過篩径程度とあまり大きくない 値になっている.この形態は比較的強固であり, 形成時の流量が大きなものほど壊れにくい.礫列 が形成された後には,多くの流れはその形状に支 配されるようになる.流量の違いによって礫列上 図 2 礫列河床形態(豊平川水系白水川) 図 3 (a)∼(e) 礫列上の種々の水面形状(実験) (a) (b) (c) (d) (e) 河川上流域の河道地形
にどのような流況が生ずるかを実験的に調べた例 を紹介しよう. 図 3 (a)∼(e)は,幅 30cm,長さ 11m の水路に波 長 75cm,平均波高 7.5cm の礫列を 6 列にわたって 設置し,3∼30 リットル/秒の流量をあたえたとき の水面形状を示したものである. 流路勾配は,I = 1/20 に設定されている.これから次の特徴をあげ ることができる。 (1) 小流量の流れは堰越えの流れに近く,淵部の 水面はほぼ水平で流速も小さい.このため,落 下水脈は淵中に拡散してエネルギーを失う. (2) 流量の増加とともに越流後の射流域が長くな り,途中で跳水を生じて常流に遷移する. tumbling flow である.跳水の下流には S1 曲線 から M1 曲線に接続する膨らんだ水面形が現 れ,流量を増やしてもこの状態がしばらく続く. (3)流量が 27.5 リットル/秒を越える(e)のケースで 全域射流になる.このときの水面は激しく波立 っており,射流に特徴的な斜め交錯水面波が現 れる.これらの水面波の波長が礫列波長に同調 する条件では,波高が水深の 1.5 倍以上に達す る 3 次元波が発生する. 以上のような水面形の理論的区分が,池内・山 田ら 9)によって試みられている.彼らは,礫列上 の流れを水平床上に突起が存在する比エネルギー の保存される流れモデルに置き換え,ベルヌイ式 から導かれる水深に関する 3 次方程式の判別式を 用い,跳水発生条件などを示した.彼らの結果を 書き直した竜澤ら10)の水面形発生条件式を示す. 射流から跳水流への遷移境界:
h
I
I
c∆
<
+
−
− −
−1
2
3
2
0 4 3 2 3 0 2 3 1 3 1ϕ
ϕ
(1) 跳水流から射流への遷移境界: hc I ∆ − 0 2 3 1 3 2 0 2 3 1 3 0 2 3 0 2 1 1 2 3 2 3 16 (2) 跳水流から潜り流への遷移境界:(
)
h
I
I
c∆
<
+
−
−2
01 8
1
2 3 1 3 0 2 1ϕ
ϕ
(3) 潜り流から落下流への遷移境界: h I I c ∆ < + − ϕ0 ϕ 2 3 1 3 0 2 1 1 1 2 (4) ここで,= 限界水深,q = 単位幅流 量,g = 重力加速度,Δ= 突起高さ, , U0 = 突起上流平均流速,h0 = 突起上流平均水深, I = 平均河床勾配. 図 4 は, ψ0=12 をあたえて式(1)∼(4)の境界を 描いたものである.プロット点は竜澤ら10)の礫列 実験の値であり,明瞭な S1 の水面形曲線が現れて いる場合を跳水,プール部の水面がほぼ水平な場 合を落下流とし,その中間を潜り流として分類し た.図によれば,上の諸式によって大体の水面形 区分ができるようである. 礫列上の流れの最後に,通常必要とされる渓流 を全体としてみたときの平均流速に関する式を紹 介する.多くの研究者が次の Hey 式11)の適合性の よさを指摘している. U gRI 84 (5) ただし,U=平均流速,R=径深,a=流路断面によっ て異なる定数である.図 5 は,上式の成立性を調 べたものであり,著者ら12),Bathurst13),Hey11)の 渓流実測値,および著者らの実験値との比較がお こなわれている.ただし,上式を摩擦係数 f の形 に直して表示している.同図によれば h/d90が1以 下でもなお成立しており,礫列のみならず,次に 示す礫段河床でもある程度利用できるようである.
(
2)
1/ 3 / c h = q g 0 U0/ gh I0ϕ
= 図 4 水面形区分式の検証 式(1) 式(2) 式(3) 式(4) 0 1 8+ ϕ − aR =5.75log 35. d , a=11.16 (矩形断面)∼ 1346. 1+ 8ϕ I −1(
)
(
)
>ϕ I ϕ I− ϕ I +1− 長谷川和義しかし,射流の連続する流れ場では,ks=3.5d84 (ks:粗度高)とする抵抗評価は大きすぎるよう で,むしろ ks = d84とした方が実測値に合う.すな わち,この場合の流速は次式となる. U gRI aR d = 5 75 84 . log (6) なお,後の利用のために式(5)をべき関数近似する と以下になる. 4 / 1 84 5 . 3 5 . 6 = d R gRI U (7) 3.2 礫段(ステップ・プール)の形態と流れ 図 6 は,円弧状に連なるステップ礫とそれらに 取り巻かれた比較的深いプールとからなる礫段形 態 の 例 で あ る ( 豊 平 川 水 系 冷 水 沢 ( 流 域 面 積 5.20km2,流路長 6.0km,川幅 5m)).これらの形 態は礫列河床よりも急勾配域で多く見られ,構成 礫の径が大きめで波高が高く淵部も深いが,波長, 波高の統計的な性質は礫列形態と類似しており, 小規模河床形態の一種と考えられる.図 7 は、竜 澤ら10)によってとらえられた礫段構造の詳細図で ある(荒川水系浦山川). 弧状に連なった礫が流 れの収束をもたらし,まとまった落下流脈が小さ な滝状を呈して河床を洗掘し相対的に深い淵を形 成している.淵の中心部は砂で覆われ低流速の流 れに対応している.横断方向に複数の淵が現れて いることが注目され,後述のように成因と関係し ている.これらの形態を礫列と区別している研究 者は,今のところ著者ら以外には見あたらない. 英語名の“step and pool” は,必ずしも礫段に対応 したものではなく,渓流における階段状の河床形 態一般を指すようであるが,礫段の特徴をよく表 わしている. 礫段上の流れを詳しく解析した研究は今のとこ ろ見あたらない.しかし,平均流速は,図 5 で認 められるように Hey 式によって表すことが可能で ある. 3.3 礫列・礫段の成因と形状研究 早くに階段状の河床形状に注目し,その成因が反 砂堆と同じであることを指摘したのは地質学の研 究者達であった.Power14)は、カリフォルニアの岩 石層に上流側に移動したと考えられる河床の層理 を見いだし,その成因が反砂堆ではないかと推定 した.Middleton15)は,細砂を用いた大型の水路実 験をおこない,反砂堆河床の堆積層理は非常に曖 昧で斜交層理ではなくむしろレンズ状になること を指摘した.Walker16),Hand17),Skipper18)は,反 砂堆説の検証をおこなうとともに,理論波長を用
図 6 礫段河床形態の例(冷水沢)
図 7 礫段河床形態の構造(浦山川) 図 5 礫列・礫段河床流れの抵抗則
いて層理の波長から形成時の流れの流速・流向, 水深の推定を試みた.Shaw・Kellerhals19)は,砂利 河川の North Sakatchewan 川において 2 種類の反砂 堆の存在を認めた.ひとつは,等間隔で平面的に 見て直線的な峰線をもつ 20cm ほどの波高の横断 的尾根であり,今一つは,間に鞍部をともなう 30cm ほどの二つのピークをもった規則的に並ぶ 河床形である.前者は明らかに今日いうところの 礫列であり,後者は,モード 2 の礫段に対応した ものであろう.彼らはいくつかの反砂堆の波長理 論を比較検討し,各理論で波数とフルード数の関 係曲線がほとんど似たものになるが,波長から形 成時の水理量を推定する際には大きな開きが生ず ることを指摘した.横川ら20)は,堆積岩層中に見 いだされた流水成の「ハンモック状斜交層理」が, 堆積環境中に形成された 3 次元反砂堆に他ならな いことを著者らとの共同実験によって確かめた. 一方、土木工学や地形学など現世河川の研究で は,Peterson・Mohanty8),Leopold・Wolman・Miller21) などが,早くから実験水路や野外観測を通じて階 段状河床形状の存在を指摘している.Leopold らは, その形成にとって河床材料の非均質性が不可欠の 要件であると述べている.McDonald・Banerjee22) は,初めて“transverse rib”の用語を用いた.その後 McDonald・Day23)は,実験をもとにその成因が次々 に上流に生ずる跳水にあると考えた.本邦では, Ashida・Takahashi・Sawada24)が,ヒル谷の土砂流 出の研究において階段状河床の観測結果を示した のが最も早いようである. 実際の渓流における階段状河床形態についてま とまった水理学的成因研究をおこなったのは, Whittaker・Jaeggi25)である.彼らは実験によって, 反砂堆による河床変形と分級作用による粗粒化層 の形成がその形成原因であると結論づけている. 芦田・江頭・安東26)は,Whittaker らの研究を一歩 進め,礫列形成の必要十分条件として,①河床材 料が混合砂であること,②流れが射流であること, ③初期河床で平均粒径以上の砂礫が移動し,分級 活動が活発に起こること,④最大径の礫が移動し ないことを指摘した.また,藤田ら27)は,千代川 水系河川の階段状河床を調べ,形成流量が 5 年確 率に相当するとしている.破壊条件に関して江頭 ら28)は,河床面粗粒化のために抵抗特性と流砂特 性が変化し,破壊流量が形成流量よりかなり大き くなることを指摘している.藤田ら29)は,上述の 千代川水系河川にこの考えを適用して破壊流量の 確率年が 20 年から 40 年になると推定している. 一方、礫段の成因研究は,Hasegawa ら6),長谷 川・上林30),上林・長谷川31),32)など以外にはほと んど見あたらない.後述のように彼らは,3 次元 水面波によって変形を受けた反砂堆が礫段の成因 であろうと考えている. また,礫列,礫段の大流量形成時の性質や細部 構造に関する研究,ならびに礫列,礫段上の土砂 移動に関する研究が,田中ら33),長谷川ら34),お よび澤田35),中村ら36)によっておこなわれている. 反砂堆・分級説が正しい限り,礫列の波長は反 砂堆の理論波長に近い値をとるはずである.これ までに提案された反砂堆波長の主な理論式のうち, Reynolds37)による発生限界,林 38)による発生限界 (C=0),および Parker39)による発生上限は同じ式に たどりついており,次式にて表わされる. Fr kh kh 2 = 1 tanh( ) (8) ただし,k=反砂堆の波数=2π/ λ,Fr=平均流のフ ルード数,h=平均流の水深. λ=波長. この式は,反砂堆に対してのみ成り立つ発生限 界曲線の一つで,実験値に非常に近い値をとる. 波長推定式として同式を使い,簡略表現のために テーラー展開の第 2 項までとると次式になる. (9) 一方,礫列波高Δは 代表礫径 d84に等しいと考えら れ,芦田・江頭らの発生条件④を想定してこの礫 が限界掃流力状態にあるものとすれば, 0 c * * s hI
χτ
τ
= ∆ = (10) ただし, τ*c0は水平床における d84径の礫の限界 掃流力,χは混合粒径の影響などによる修正係数, s は礫の水中比重である. 次に,式(7)から R≒h とみなして U を求め,流量 Q=UBh から水深を導くと, 7 4 4 1 84 4 1 5 6 5 3 = B gI . Q d . h (11) 式(10),(11)から h を消去し,さらに単純化して τ* c0 = 0.05, χ= 1,s = 1.65 とすれば, 2 1 3 h Fr λ=2π − 長谷川和義c h I .43 56 6 = ∆ (12) を得る.同様に,式(11)を用いて式(9)を書き直す と,波長式が以下になる. c h I I . . 16 3 1 48 6 36 3 − − =
λ
(13) ただし,(
2)
1/3 / g q hc = =限界水深である. 図 8 は,竜澤ら10)による実験結果と式(12),(13) の比較である.波高,波長ともに広く分布するが, 推定式が最頻値に近い値を示している. 長谷川・上林30),上林・長谷川31)は,幅 30cm, 長さ 10m の可傾斜水路を用いて無給砂の礫列,礫 段の発生実験をおこない,その成因について調べ た. 河床材料は d50=0.38cm,d84=0.65cm,最大粒径 =3cm で あ り , 分 級 後 は お よ そ d50=0.87cm , d84=1.52cm である. 図 9 の左右の写真は,それぞれ典型的な礫列と 礫段の発生を示すものである.礫列実験では,通 水後反砂堆が成長し始め上流に遡る.峰から下流 にかけて分級が進み,大きめの礫が残されて形状 を保つ.このときの水面波は 2 次元的であり,水 切りによって強制的に斜め波を起こしても 1 波長 程度で減衰し,河床への影響は現れない.これに 対し礫段が発生した実験では,同じように反砂堆 が成長するが,峰線の側岸付近から斜め交錯水面 波が生じ,2 つの斜め波の谷線が重なる部分で深 い窪みが,峰線が重なる部分で大きな高まりがで き,河床にも同じ形の 3 次元波が連なるようにな る.図 9 はこの状態で停水したものである.通水 を続けると 3 次元水面波は砕波するまでになり, その後すみやかに河床が平坦化して始めからのプ ロセスをくり返す.以上から,礫段は,河床起伏 と自由水面波の共振現象として生じた大振幅 3 次 元水面波によって生じるものといえる. 斜め交錯波の波数とフルード数の関係を定常 Airy 波の分散関係によってあたえることにすると, Fr h h k hw k l w w 2 2 2 2 =β tanh(β ) β= + ( ) , (14) ただし,kw= 斜め交錯波の流下方向波数 = 2π/λw, lw= 斜め交錯波の横断方向波数= 2mπ/ B, B = 水路 幅, m = 斜め交錯波の横断方向波数モードで整数 (波長が水路幅に一致する場合に 1 )をとる.式(14) の近似表現をおこなうと次式になる. Fr h k hw 2 2 0 83 = αβ α= ( ) , . (15) 礫段の発生条件は,上式に含まれるλwと式(9)によ る λが一致することであり,両者を等置すること から, h B m Fr Fr Fr B m = − − − ≈ 2 1 3 1 3 0 2 4 2 2 2π
α
α
( ) ( ) . (16) 図 9 礫列(左)と礫段(右)の発生実験 図 10 礫段発生条件の検証 図 8 波高・波長理論式と実験値分布の比較 河川上流域の河道地形の関係を得る.後半の近似関係は,Frの関数値が ほとんど変化しないことによる.結局、礫段は、 m B h B h =0 2 = 5 . (17) によって求められる
m
が整数となる場合に形成 される.ところで、河床波の λと水面波の λw が 完全に一致しなくとも,互いに近い値をもつ場合 には群波あるいはうねりと同様に,部分的に位相 が重なり礫段の部分発生が起こる.実験結果を参 考にすれば, 0 16. B 0 24. m h B m < < (18) がその領域となる.この式に式(11)を代入するこ とにより,発生領域を流量 Q と勾配 I によって表 すことができる.図 10 は,Q‐I による発生領域 である.図中央の右上がり曲線が式(17)に,これ を挟む 2 本の破線が式(18)の上下限に対応してい る.ただし,m
=
1
としており,射流限界,およ び 50%粒径・最大粒径に関する限界掃流力曲線も 同時に描いている.全面発生を見た Run-4,7,8 が中央の実線近傍に,部分発生の生じた Run-3,5, 9,10 が両側破線付近に,非発生の Run-1,2,6, 11 がほぼ境界の外にあって礫段の発生非発生が 分離されている. 4 中規模河床形態の実態と成因 4.1 中規模河床形態の実態 図 1 に見られる中規模河床起伏は,川幅の 3∼ 4.5 倍の平均波長をもち,比較的長く続く緩勾配の 背斜面を有していて前縁で急激に落ち込んでいる. この段落ちは巨石や流木で構成されており,しば しば落差が 1m を越え場所により 2m に達する.こ れらの形態が沖積河川で広く観察される交互砂州 (砂礫堆)と同じものであることが,図 11 の平面図 や実験から知ることができる. 図 11 は,図 1 の 50m∼300m 区間に対応する平 面形状であり,陰影部は堆積地を示す.また,図 中の横断線は段落ちの位置を示すものであり,こ れらの線に挟まれる区間で谷壁の浸食が左右岸交 互に生じている.河道内で白く抜けているところ は,礫列・礫段のプールであり,一つの中規模形 態上に 5∼10 共存している. 図 12 は,著者ら40)がおこなった中規模・小規 30 20 10 0 900 800 700 600 500 400 300 200 水路縦断方向距離(cm) -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 Flow (cm) 図 12 中規模小規模河床形態の共存実験(流量 2.0 l/s,平均流路勾配 0.10,平均砂礫径 0.74cm) 図 11 小川平面形状(1985 年測量) 陰影部は堆積地を表す.数字は測量時の植生年代を示し堆積地の年度を意 味する.河道に沿って描かれた曲線は側岸浸食を表す.1981 年に大きな出水があった. 長谷川和義模河床形態の共存実験の結果である.長さ 11m, 幅 30cm 水路に,d50=0.3cm,dm=0.74cm,d84=1.38cm, dmax=5.0cm の粒度分布をもつ河床材料を使用し, 勾配 1/10,流量 2.0l/s にて実施している.細粒分 の輸送が活発な通水初期に交互砂州の形成が進み, 明瞭な蛇行水路(平均波長 1.26m)が形成されて いる.分級が進むとともに小規模河床波(礫列)の 形成が顕著になる(平均波長 19.6cm,平均波高変 化を示すものであり,中・小規模形態の共存が鮮 明にわかる.砂州の前縁にあたる蛇行転向部終端 で,大きな段落ち(3 段にわたる粒径 2cm 以上の 大きな礫の並び)が認められた.これらは,小川 における形態に酷似している. 4.2 中規模河床形態の成因解析 渓流河川においても交互砂州が発生しているこ とは明らかであり,砂州の成因が沖積河川におけ る砂州のそれと同じであることは容易に推定でき る.しかし,広い粒度構成範囲の河床材料を有す る渓流河川について,沖積河川の場合と同様に 2 次元浅水流と流砂連続式を組み合わせた河床の線 形安定解析を試みると,非常に興味深い結果が得 られることが分かった41).スペースの制限から結 果のみを示すと,渓流河床では砂州の成長(河床 不安定)だけでなく,粗い礫と細かい砂の領域が 縦横断方向に交互に分かれる分級波の発生(分級 不安定)が認められ,①河床不安定が卓越する場 合,②分級不安定が卓越する場合,③いずれも生 じない場合のあることが分かった.著者らの実験 によると,①の条件では発生した交互砂州の統合 が見られ,波長が理論卓越波長の 3 倍ほどになる. ②の条件では,河床は平坦となり礫部分と砂部分 のパッチが交互に現れる.波長は理論卓越波長に ほぼ等しい. 以上のような解析結果が,現実の渓流形態とど のように対応しているかは興味深い問題であるが, 今後の課題になっている. 4.3 共存形態のまとめ これまでの知識をまとめて図にすると,図 13 になる.川幅の 3∼5 倍の波長の交互砂州が中規模 形態の起伏をつくり,その上に 5∼10 個の礫列ま たは礫段が形成され小規模形態をなしている.礫 段形態ではしばしばカスケードが見られ,また砂 州の先端は段落ちになっていて一段と大きな落差 をもつ.その下流では深い淵が広がり,続く交互 砂州河床の勾配が小さめであれば,礫列が共存し 全体として早瀬を構成することになろう.それぞ れ,Grant ら7)による形態分類に対応していること になる. 5 大規模河床形態の実態と成因 5.1 大規模河床形態と網状流路 数 100m 規模の大規模河床起伏については,そ れが谷幅の広狭,ならびに網状流路の発散・収束 に関係していること以外には不明なことが多く, まとまった研究は見あたらない. 図 13 渓流形態のまとめ 河川上流域の河道地形
図 14 は,白水川の薄別川合流点から上流 1.3∼ 2.3km 区間における縦断河床形状であり,図 15 は, こ の 間 の 網 状 流 路 を 示 す も の で あ る . 図 中 の A,B,C 地点は相対的に河床が高い箇所で,大規模 河床波の頂部に相当している.平面図では,これ らの点は幅 20-30m の谷狭窄部に位置しており, その地点を過ぎると幅 100m 以上の広い谷平地に 遷移する.谷の広がり部においては,多数の分岐 流路や廃棄流路が確認されるが,A,B,C などの大 規模波頂点に向かうにつれて収束していくことが 分かる. これらの観測結果を総合すると,山地河川にお ける大規模波は流路の網状化と深く関連しており, 大流量時に形成される長波長の砂州に起因して生 ずるものと考えることができる.洪水後,より小 さい流量によって小規模・中規模波が形成され, 大中小 3 つの形態が重なるのであろう. 5.2 実験検証 前節の仮説について実験検証を試みた42).すな わち,長さ 20m,幅 60cm,勾配 1/20 の水路に, タルボット型粒度分布 P=(d/dmax) n(P:粒径 d の砂 礫の通過重量比率,dmax:最大粒径=1.5cm,n:べ き数=1/4)に従う混合砂礫を敷き詰め,水路中央 に深さ 2.0cm,幅 30cm の通水路を切り,1.78l/s の 流量を 10 分間流して図 16 のような複列砂州を発 生させた.このときの流路形態は,中央に中島が ありそれをとりまいて左右岸に二つの水みちがで き,分岐と合流を繰り返してちょうど瓢箪状のパ ターンが繋がったようになっている(波長 200cm ∼300cm).部分的には,二つ以上の流路に枝分か れた場所があった.これらの形態は,図 15 などで 見られる谷幅の広狭変化と網状流路に対応してい るように考えられる. この後,0.6l/s の小流量を 83 分間,0.9l/s の流量 を 50 分間流し,中小規模河床形態の発生をうなが した.小流量通水実験では,流れが複数の水みち の一つに集中して蛇行低水路を形成し,その河床 を深く掘り下げる現象が見られた.これにより, 上流側から順に河床の粗粒化が進み,低水路に小 図 16 大流量による複列砂州の発生(左) 図 17 小流量による礫列の発生(右) 図 15 白水川の河床平面図 -1.5 -0.5 0.5 1.5 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 図 14 白水川の流路沿い河床縦断変化(平均勾配差し引き) A B C
Flow
下流からの流路沿い距離(m) 長谷川和義規模河床波が形成された.この様子を図 17 に示す. 図 2 の白水川小規模形態と非常によく似ている. 部分的に勾配が急になる場所では,斜め交錯水面 波が河床起伏に激しく共振し,円弧状の形状を有 する礫段が形成された. 図 18 は,一連の通水後の最終形状について見 た主流路沿いの縦断河床高変化である.ただし, 平均勾配高を差し引いたものである.また,図 19 は,おなじ最終河床形状を河床高コンターによっ て描いたものである.短波長の小規模河床波,波 長 30∼80cm の中規模河床波,および波長 300cm 程度の複列砂州(網状流路)の重なりが見られ, 図 14, 15 の様子に非常に似ていることが分かる. 図 18 と図 19 を比較すると,大流量で形成された 瓢箪状流路の狭窄部(網状流の合流部)に河床高の 極大点が対応し,瓢箪状流路片側の蛇行低水路の 曲頂点近傍に河床高極小点が対応している.これ らの性質は,図 14, 15 における A, B, C 点の特性 と同じである. 6 まとめ (1) 河川上流部の渓流においては,規模および成 因の異なる 3 つの河床形態が認められ,互いに共 存している. (2) 水深スケールの小規模河床形態である礫列, 礫段は,いずれも反砂堆形成と分級作用を成因と して射流下で形成されるが,後者は水面波の共振 条件のもとで生ずる.礫列,礫段流れでは,流量 の大小に応じて各種の水面形が現れる.抵抗則と して Hey 式がよく合う. (3) 川幅スケールの中規模河床形態は,交互砂州 と同じものであるが,その前縁が落差の大きい段 落ちを形成する.また,砂礫の分級不安定の影響 を受けて長波長化することがある. (4) 谷幅スケールの大規模河床形態は,谷を形づ くるような大流量時に形成された複列砂州を成因 としており,谷の狭窄部に河床頂部をもち,広が り部に河床底部をもつ.また,広がり部では流路 の網状化が盛んで,小流量時にはそれらの一部が 蛇行低水路になる. (5) 大中小規模の河床形態は,この順に流量の違 いに応じて形成され,共存しているものと考えら れる.破壊は逆の経過をたどるものと判断される が,分級による大礫の残存や植生進入のため,一 般に,破壊流量は形成流量よりも大きい. 7 おわりに 本稿は,著者が土木学会水理委員会(当時)夏 期講習会などの折りにまとめたテキストをベース に,その後の研究を加えたものであり,内容に濃 淡があることをお詫びしたいと考えている.特に, 4 節中規模河床形態,5 節大規模河床形態に関する 記述は,著者らの研究の引用紹介のみになってお り研究全体のレビューがまったく果たされなかっ
縦断距離 (cm)
高さ
(cm)
-4 -2 0 2 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900 2000 図 18 縦断河床高変化(平均勾配高差し引き)Flow
0 30 60 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900 2000 図 19 形成低水路河床高コンター 河川上流域の河道地形た.また,3 節小規模河床形態においても,礫列, 礫段などの用語は著者の勝手な命名であり,オー ソライズされたものではない.今後,追試観測や 実験がなされ,より適切な分類と命名がなされる ことを期待している. いずれにしても,山地上流域河川(渓流)の地 形は,見かけ以上に規則性を有しているようであ る.周辺に人の居住がなく工学的意義が弱いため か河川工学的な研究が遅れ,現在においても少数 にとどまっているが,この領域には新しい発見に つながる課題が多く残されているものといえる. 本稿によって少しでも山地河川への関心が高ま り,研究に進展がもたらされることを望む次第で ある. 引 用 文 献 1) 山本晃一:「沖積河川学 堆積環境の視点から」, 山海堂(1994) 2) 岸力・森明巨・長谷川和義・黒木幹男:山地河 川における土砂輸送と河床形状に関する調査 研究,「比較河川学の研究」15,文部省科学研 究費成果報告書(代表 岸力)(1987),pp.343-364 3) 長谷川和義:山地河川の形態と流れ,水工 学シリーズ 88-A-8(1988),土木学会水理委員会, pp.1-22 4) 長谷川和義:渓流の淵・瀬の水理とその応用, 水工学シリーズ 97-A-9(1997),土木学会水理委 員会,pp.1-20 5) 沢田豊明・芦田和男:山地渓流における流路形 態と土砂流出,第 33 回水理講演会論文集(1989), pp. 373-378
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