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土壌・水環境における コロイド界面現象

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Academic year: 2021

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生物系

Biological

土壌・水環境における コロイド界面現象

筑波大学 大学院生命環境科学研究科 教授

足立泰久

 水の濁り、土壌、大気中の粉塵、私たちの周りにはおびた だしい数のコロイド粒子があります。これらコロイド粒子の大 半は互いに凝集しあってできるフロックと呼ばれる集合体を 作ります。コロイド粒子の表面は疎水的であり、溶けにくい物 質を吸着し濃縮します。さらに、フロックは脆い壊れやすい性 質を持っているため、コロイド粒子のフロック化は難溶性の 物質の流れによる移動の引き金となります(図1)。わたした ちはこのフロックに注目し、環境中におけるミクロな化学的条 件とマクロな系の動態を結びつける方法論を開発しました。

 朝の味噌汁もフロックのよい例ですが、フロックは形成の 初期に壊れやすい性質を示します。河口干潟のようにフ ロックが長い時間をかけ積った底泥層は扱いにくい粘着性 の性質を示し、決して侮れません。フロックの離散化しやす い性質を、連続体の力学の計算モデルに組み込むことは 工学的に重要です。わたしたちの研究室では、有限の体積 の中に無限の表面積を包含できるフラクタル構造と乱流の 局所等方性理論からヒントを得て、フロックの構造と力学的 強度を関連付けた理論式を導きました。この理論は、固体と も液体とも言い切れないコロイド分散系のレオロジーモデル にも適用され、厄介な性質を持つ流れの問題が見通しがよ いのものになりました。

 フロックのふわふわした性質は代掻き後の田んぼの漏水 を防ぐ上で不可欠です。また、ヨーグルトなど食品の製造工 程から舌触りまでフロックの物理性が関ります。フロックの性 質は高分子の吸着で大きく変化しますが、吸着途上の高分 子がどのようにして表面に広がっていくか、そのダイナミクス は全く解っていません。最近、フロックの形成過程の詳細な 解析が、この機構の解明に役立つことが解ってきました(図 2)。先日、開催したセミナーで、微生物の生存戦略にコロイ 粒子の凝集が大きく関わることも指摘されました。今後は、 のように異分野を融合する形でコロイド界面の動力学の基 礎研究を進めていくことが重要と考えられます。来年の5月 に、我々が中心となって第10回国際界面動電現象シンポジ ウム(ELKIN2012)を開催しますが、国際会議の開催を機 にフロックのように荷電を持つソフトな多孔質体の動電的性 質の理解が総合的に大きく進展するものと期待されます。

平成16−19年度 基盤研究(A) 「農業環境におけるコ ロイド界面現象と流体運動が協同する物質動態とその予 測制御」

平成22−26年度 基盤研究(A) 「農業および水環境 におけるコロイド界面現象の工学的体系化」

図1 土壌や水環境の化学物質の移動現象には、コロイド 界面における様々な素過程がコロイド粒子のフロック化 を介してマクロな輸送過程に影響する。

図2 コロイド粒子に粒子表面と反対符号の高分子電解質を添加すると、

高分子電解質はコロイド粒子に吸着しブラウン運動が抑制される(左)も のの、抑制は1時間ほどで緩和する(右)。しかし、この緩和は電気泳動で はほとんど検出されない。このようなコロイド界面の動的な情報がコロ イド粒子のフロック化を解くヒントになる。

研究の背景

研究の成果

今後の展望

関連する科研費

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科研費NEWS 2011年度 VOL.2

(記事制作協力:日本科学未来館科学コミュニケーター 水野壮)

参照

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