2S 数学演習 III ・ IV 標準 H007-1
担当教員 : 浜中 真志 研究室 : 理学部A館327 E-mail:hamanaka@math.nagoya-u.ac.jp
複素関数 (2020 年 6 月 9 日 )
作成日: June 7, 2020 Updated : June 8, 2020 Version : 1.0 実施日: June 9, 2020
来週(6月16日(火))の中間レポート試験について:
• 試験範囲は, 4/21, 4/28, 5/12, 5/19, 5/26, 6/2実施の6回分です. (ただしボー ナス問題はすべて範囲外とする. 6/9実施分は期末試験に回します.)
• ノート・プリント・参考書などはすべて参照可です. ただし今回に限り人と 相談しながら解くのは不可とします. (提出時にそれを遵守したという誓約の チェックを入れて提出していただきます.)
• 6月16日13時にNUCTの「小テスト」のところに問題文を掲載します。16時 半までに各自スキャンして, ファイル名を「苗字-中間.pdf」のようにして提出 してください.
• 13時〜16時半の間再提出を1回に限り認めます. まず一通り解けたら提出す ることをお勧めします. その後もしも再提出があった場合は, こちらは最新版 をもとに採点します. 再提出は部分的な「問題n(m)」だけの差し替えなどで もかまいません.
• 万一, 提出に関してネット接続等のトラブルが生じた場合はできるだけ早くは ま中宛てにご連絡ください. 最悪, 郵送提出などの方法になるかと思います.
(その場合の郵送先は以下のようにお願いします;〒464-8602 名古屋市千種区
不老町 名古屋大学多元数理科学研究科 浜中真志)
べき級数と収束半径
問題1. (収束半径) べき級数
∑∞ n=0
anznの収束半径Rは, 次の極限値(左辺)が存在すれば, その逆数に等しい:
nlim→∞
an+1 an
= 1
R, lim
n→∞
√n
|an|= 1 R 次のべき級数の収束半径Rを求めよ.
(1)
∑∞ n=0
(6n−9)zn (2)
∑∞ n=1
( 1 + 1
n )n2
zn (3)
∑∞ n=0
n!
nnzn
初等複素関数
問題2. (指数関数, 三角関数)
複素数zに対する指数関数, 三角関数を次のように定義する:
ez :=
∑∞ n=0
1
n!zn, cosz :=
∑∞ n=0
(−1)n 1
(2n)!z2n, sinz :=
∑∞ n=0
(−1)n 1
(2n+ 1)!z2n+1.
これらはすべて一様収束し,項別に微分・積分といった式変形を行うことができる. (こ こではこれらは認めてよいとする.)
標準H0-2S20-07 難易度 : C 名古屋大学・理学部
2S 数学演習 III ・ IV 標準 H007-2
担当教員 : 浜中 真志 研究室 : 理学部A館327 E-mail:hamanaka@math.nagoya-u.ac.jp (1) eiz = cosz+isinzを示せ. (特にz =θ ∈Rとしたものがオイラーの公式.)
(2) cosz,sinzを指数関数eiz, e−izを用いて表せ. (3) sinz = 0となる複素数zをすべて求めよ.
問題3. (対数関数, 累乗関数) 対数関数w= logz は z =ew で定義される. z =reiθ と極 形式で表したとき,logz = lnr+i(θ+ 2nπ), n∈Z となる. αが複素数のとき, 累乗関 数(べき関数)はz ̸= 0として,zα =eαlogzで定義される.
次の複素数の取りうる値をすべて求め,u+iv (u, v ∈R)の形に表せ.
(1) logi (2) ii
正則関数とコーシー・リーマンの関係式
問題4. (コーシー・リーマンの関係式) z =x+iy (x, y ∈R)とする.
(1) 複素関数f(z)を実部と虚部に分けて, f =u+ivと表したとき, fが正則関数である ための条件をu, v, x, yの言葉で表せ. (答えのみでよい.)
(2) 正則関数の実部および虚部は調和関数である(uxx+uyy =vxx+vyy = 0)ことを示せ. (3) 関数f(x, y) = ax2+bxy+y2+i(x2+cxy+dy2)が正則関数となるように定数a, b, c, d
の値を定めよ.
(4) 複素平面全体で正則な関数f(z)の実部uが, u(x, y) =x2−y2のように与えられて いるとき, f(z)を決定せよ.
(5) 「正則」という言葉の由来を知るために,複素数に値をとる2変数関数f(z,z)¯ を考 えよう. (zは正則座標, ¯zは反正則座標と呼ばれることがあることに注意.)
まず, zとz¯を独立な変数として扱い, ∂
∂z および ∂
∂z¯ を ∂
∂xと ∂
∂y の線形結合で表せ. 次にfを実部と虚部に分けてf =u+ivと表したとき, 反正則座標z¯に依存しない 条件:∂f
∂z¯ = 0 が,(1)で得られた関係式と一致することを示せ.
等角写像
問題5. (複素べき関数による像) 複素関数w=f(z) =z2によって, z平面上の次の式で 表される図形や領域がw平面にどのようにうつされるか. 変換前の図形と変換後の図形を 図示せよ. (2), (3)については, 2直線のなす角はどうなるか. (α∈R, z =x+iyとする.)
(1) 3点A : z = 1
2,B : z = 1 +i, C: z = 2i. (2) 直線l1 : y= 0と直線l2 : y= tanα·x (3) 直線m1 : y=xと直線m2 : x= 1 (4) 上半円板D+ :={z ∈C | |z|<1, y >0} 複素ベクトル空間, 正規直交基底
Cnの標準的エルミート内積は以下で与えられる:
⃗a=
a1
a2 ... an
, ⃗b=
b1
b2 ... bn
に対し, ⟨⃗a|⃗b⟩:=a1b1 +a2b2+· · ·+anbn.
標準H0-2S20-07 難易度 : C 名古屋大学・理学部
2S 数学演習 III ・ IV 標準 H007-3
担当教員 : 浜中 真志 研究室 : 理学部A館327 E-mail:hamanaka@math.nagoya-u.ac.jp
問題6. (有限フーリエ展開) n∈Nに対し,以下の複素数を考える. ω=e2πin = cos2π
n +isin2π n
(1) 次で定義されるn次元複素ベクトル空間Cn の基底⃗e1, ⃗e2,· · · , ⃗en はCnの標準的な
内積⟨ | ⟩に関して正規直交基底をなすことを示せ. (内積の定義に複素共役が入るこ
とに注意.)
(⃗e1, ⃗e2,· · ·, ⃗en) = 1
√n
1 1 1 · · · 1
1 ω ω2 · · · ωn−1 ... ... . .. ...
1 ωn−1 ω2(n−1) · · · ω(n−1)(n−1)
.
(2) n= 3の場合を考える. C3の元w⃗ =
1 i
−i
を基底⃗e1, ⃗e2, ⃗e3の線形結合で表せ.
問題7. (フーリエ展開へのプレリュード)
(1) z =reiθ (r≥0,0≤θ <2π)と表したとき, 1
1−z の虚部をr, θを用いて表せ. (2) |z|<1において 1
1−z =
∑∞ n=0
zn = 1 +z+z2+z3+· · · (∗)が成り立つ. これを利 用して,次の積分値を求めよ. (rの範囲あるいは積分値の上限値に注意.)
In :=
∫ 2π 0
2 sinθsinnθ 5−4 cosθ dθ ただし以下の結果は既知としてよい(m, nは自然数):
∫ 2π 0
sinmxsinnx dx=πδm,n.
今週の課題・宿題 (提出期限はすべて6月22日(月)24時です)
問題8. (課題) 今週から「課題」と「宿題」の提出先と提出期限を統一します. (1) べき級数ez :=
∑∞ n=0
zn
n! の収束半径を求めよ.
(2) (1)の等式にz=iθを代入しオイラーの公式を導け. (3) 行列Aの指数関数をexp(A) :=
∑∞ n=0
An
n! で定義する.
複素平面において, 複素数にeiθを乗じる作用は角度θの回転を表す. 特にiを乗じ る作用は90度回転を表し, CをR2と同一視したとき, 2×2行列J :=
(
0 −1
1 0
)
の作用と同一視される. eiθを乗じる作用をexp(θJ)を乗じる作用と同一視し, この 2×2行列exp(θJ)を具体的に計算せよ. (収束性などの厳密性は気にしなくてよい.)
標準H0-2S20-07 難易度 : C 名古屋大学・理学部
2S 数学演習 III ・ IV 標準 H007-4
担当教員 : 浜中 真志 研究室 : 理学部A館327 E-mail:hamanaka@math.nagoya-u.ac.jp
問題9. (宿題) 以下, 双曲線関数の公式集にある性質は用いてもよい. (問題10も同様) (1) coshz = 0となる複素数zをすべて求めよ.
(2) 次の複素数の取りうる値をすべて求め, u+iv (u, v ∈R)の形に表せ.
(ただし実数値対数関数の記号としては「ln」を用いること) (i) log(1 +i) (ii) (1 +i)23
問題10. (宿題) z=x+iy (x, y ∈R)とする.
(1) 複素平面全体で正則な関数f(z)の実部uがu(x, y) = sinxcoshyで与えられている とき, f(z)を(zの関数として)決定せよ.
(2) 複素関数w =f(z) = z+ 1
z によって, z平面上の円 C :={z ∈C | |z|= 2}がw平 面にどのようにうつされるか. 変換前の図形と変換後の図形を図示せよ. (たとえば zを極形式で表して解く.)
双曲線関数の公式集
双曲線関数はべき級数として以下のように定義される:
coshz :=
∑∞ n=0
1
(2n)!z2n, sinhz :=
∑∞ n=0
1
(2n+ 1)!z2n+1, tanhz := sinhz coshz 次の関係式が成り立つ. (興味があれば, いくつか確かめるとよい.)
(1) coshz = ez+e−z
2 , sinhz = ez−e−z
2 , tanhz = ez−e−z ez+e−z (2) cosh2z−sinh2z= 1, 1−tanh2z = 1
cosh2z
(3) cosh(−z) = coshz, sinh(−z) =−sinhz, tanh(−z) =−tanhz (4) sinh(z+w) = sinhzcoshw+ coshzsinhw, sinh 2z = 2 sinhzcoshz (5) cosh(z+w) = coshzcoshw+ sinhzsinhw
(6) cosh 2z = cosh2z+ sinh2z = 2 cosh2z−1 = 2 sinh2z+ 1 (7) tanh(z+w) = tanhz+ tanhw
1 + tanhztanhw, tanh 2z = 2 tanhz 1 + tanh2z (8) cosh2 z
2 = coshz+ 1
2 , sinh2 z
2 = coshz−1 2
(9) sinh 3z = 3 sinhz+ 4 sinh3z, cosh 3z =−3 coshz+ 4 cosh3z (10) coshiz = cosz, sinhiz =isinz, tanhiz =itanz
(11) d
dz coshz = sinhz, d
dz sinhz = coshz, d
dz tanhz = 1 cosh2z
標準H0-2S20-07 難易度 : C 名古屋大学・理学部