はしがき
本調査は、平成17年度日本自転車振興会補助事業の「機械工業の発展に資するバイ オ基盤整備等補助事業」のサブテーマ‘先端健康バイオ産業創出技術調査’として、ワ ーキンググループ委員会を組織して実施された調査である。調査に当たっては、下記の 方々に委員をお願いした。ご協力いただきました委員の方々に、感謝申し上げます。
先端健康バイオ産業創出技術調査ワーキンググループ委員名簿
(五十音順、敬称略)
梶本佳孝 ㈱総合医科学研究所 代表取締役 川本和弥 清水国際特許事務所 弁理士
菊島 真 GE ヘルスケア・バイオサイエンス㈱
高村健太郎 ㈱スリー・ディ・マトリックス・ジャパン 取締役 竹内慈実 ㈱大和総研 新規産業調査部
竹本佳弘 ㈱Seed Seek 代表取締役、東京医科歯科大学特任教授
冨田 稔 ㈱三菱総合研究所 産業・市場戦略研究本部産業戦略グループ 松田一敬 北海道ベンチャーキャピタル㈱ 代表取締役
好田 肇 元協和発酵㈱ (委員長)
(オブザーバー)
河内幸男 経済産業省生物化学産業課 事業環境整備室長 南田敦子 経済産業省生物化学産業課
行本治代 経済産業省生物化学産業課
(事務局)
地崎 修 (財)バイオインダストリー協会 専務理事
中山 修 (財)バイオインダストリー協会 研究開発プロジェクト部長 臼井 研二 ㈱富士経済 東京マーケティング本部第三事業部事業部長 田中雄二 ㈱富士経済 東京マーケティング本部第三事業部課長
植尾美香 ㈱富士経済 東京マーケティング本部第三事業部メディカル研究部
平成18年3月 (財)バイオインダストリー協会
平成 17 年度
先端健康バイオ産業創出技術調査報告書
目次
はしがき
序章・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第1章 健康バイオ産業に関する国際動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
第2章 最近のバイオテクノロジーの特許出願動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
第3章 先進バイオテクノロジー技術動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 1.医薬品産業におけるバイオマーカー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 2.疲労とバイオビジネス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 3.メタボリックシンドローム、エイジングのバイオマーカー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 4.美容におけるバイオマーカー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
第4章 バイオマーカー(研究)の現状と分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 1.バイオマーカーの定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 2.健康関連産業とバイオマーカー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 3.バイオマーカーの現状と分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
第5章 バイオマーカー利用産業としての予防医学・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
第6章 先進健康バイオ産業活性化に向けた方向性(総括・提言)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
序章 必要性と経緯
ワトソンとクリックが DNA 螺旋を発見してから半世紀が過ぎ、バイオテクノロジーは、
科学の段階から実用化の段階へと踏み出す段階になってきました。21 世紀に入り、人類 は“バイオテクノロジー”(BT)の飛躍的な発展を迎えています。ヒト全ゲノム完全解 読に代表される成果は「生きる」、「食べる」、「暮らす」といった人々の営み全般で予想 もしなかったような進歩をもたらす可能性があります。こうした可能性を踏まえ、平成 12 年 12 月に「バイオテクノロジー戦略大綱」が策定され、鋭意新産業の育成が図られ ています。最近では、バイオテクノロジーがサイエンスから産業化への速度を増し、ま た、ベンチャー企業を多く輩出し始めています。多くのベンチャーが輩出される理由と して、世界的な製薬企業が、これまで製薬を全て自社内で研究から生産までを行う一貫 体制を取っていましたが、近年見直したことがあります。例えば、基礎・基盤研究は大 学・国立研究所との連携、アーリーステージでは、将来展望の難しい研究はベンチャー に依存、分析、調査、治験等は外部の企業へのアウトソーシングで対応するなどという もののです。こうした状況から、健康・医療分野において、将来的にはこれまでの治療 から、予め知りうる個人情報等を利用した予防医療とも言うべきテーラーメード医療に 向けた体制への移行、ゲノム創薬、更には、病気になる前の段階措置として、健康人を ターゲットにした機能性食品等の新しい流れが生まれてきています。当初、一部の製薬 企業のみがバイオテクノロジーの果実を享受していましたが、いよいよ、医療として、
プレ診療として、また、機能性食品等の健康を維持・増進する分野にも応用されてきて います。本調査では、こうした動きを捉え、‘先端健康バイオ産業’に焦点を当て、新 しい産業化の動きを調査します。
高齢化社会における国民の健康維持・増進のためには、予防と医療の高度化・効率化 と、それを支える先端健康バイオ産業の創出が必要である。健康バイオ産業は、個人健 康情報(遺伝子情報を含む)をベースにして、「病気の予防、健康維持と増進、テーラ ーメイド治療等、個人の健康管理を総合的に支援する産業」であり、これが実現すれば
「新健康バイオ産業による経済活性化および雇用の増加」と「医療費抑制」も併せて達 成されることが期待される。このような認識のもとに、平成 16 年度は、先端健康バイ オ創出技術調査ワーキンググループ委員会を発足させ、①検討対象とする先端健康バイ オ産業の定義の明確化、②健康バイオ産業の重要性・意義及び必要性の検討、③バイオ ベンチャーからみた健康バイオ産業調査及び、広域関東圏に立地する大学における健康 バイオ関連の研究者とその研究テーマ調査、④企業事例調査(バイオチップ・バイオセ ンサ、健康食品・機能性食品、健康サービスの3分野のベンチャー企業と、応用した技 術内容を調査)、⑤注目分野の動向調査(バイオチップ・バイオセンサ、健康食品・機 能性食品)、⑥地域事例調査(北海道地域における取組み事例調査)、⑦健康バイオ産業 の現状と将来的な課題調査等を実施した。
17年度においては、生活習慣病(癌、糖尿病、高血圧、肥満・・・)の「早期診断
技術」としての、バイオマーカー及びそれを使ったバイオチップ(DNAチップ、蛋白 チップ・・)その他の検出技術に着目して調査した。
更に、「機能性食品」の「機能」による生活習慣病の予防(医学と食品学の連携)、悪化 防止についても、触れた。また、機能評価技術として、疲労、コレステロール、肥満防 止、免疫活性化、癌防止等々の評価のためのバイオマーカー、その他の技術についても 調査した。
第 1 章 健康バイオ産業に関する国際動向
・「健康バイオ産業に関する国際動向」については、今年度は第 1 回 Pacific Health Summit におけるディスカッ ション、提言内容ついて精査した。以下に、その概況を記す。
1.Pacific Health Summit の概要 1)Pacific Health Summit の開催目的
アジア太平洋地域の健康問題の頂点を目指すという挑戦に備える為に、2005年6月7日から9日に かけてシアトルで開催された第1 回Pacific Health Summit は、科学、政治、産業、医療および公衆 衛生の各分野における世界最高の見識者を招いた。永続的な協力関係を築くことにより、このパシフィ ック・ヘルス・サミットがベースキャンプとなって、頂上を目指す人々の強力なチームを編成し、登頂 成功を可能にする科学的かつ革新的な技術という装備をチームのために整えることを期待している。
この頂上を極めるために、根本的に新しいレベルの組織や協働関係およびチームワークを作り出さな ければ、健康に関する頂点への到達は孤立状態では実現不可能であると考えている。チームワークこそ が目標達成の唯一の方法であることを示し、富裕層と貧困層の境、文化的境界線と国境、さらにはおそ らくこれらと同様に重要なこととして、それぞれの医療システムを垂直的に分断している状態を、チー ムワークによって切り拓してゆく。また、このことは、医薬品や診断薬、医療器具およびサービスの分 野で互いに隔離された、不適切な思考方法および組織構造の弊害に苦しむ世界的な医療産業にも当ては まる。これらの溝を埋めるために、科学、政策、医療、医療サービス運営、産業およびメディアといっ た様々な健康関連の分野の幅広い層のリーダーたちを招聘した。
【参加国】
オーストラリア、カナダ、中国、英国、フランス、インド、日本、韓国、マレーシア、メ キシコ、ロシア、シンガポール、スイス、台湾、タイ、米国
…上記から約300名が出席
2005 年のサミットは「科学、革新、そして健康の未来」と銘打たれた。新たに生まれる科学的なら びに技術的な進歩を「疾患の予防」「早期発見」「治療」に応用することで、いかにして医療を変えてい くかに焦点を当てている。2005年のサミットでは本会議の議題は以下の4つであった。
① 科学が約束するもの
② 公衆衛生への影響
③ 医療システムおよび個人の健康への影響
④ 科学、健康および経済成長
2 ) Pacific Healthcare Summit の開催の背景
1990年代、世界経済はかつてないほど相互に結びつき、こうした相互連携は、「グローバリゼーショ ン」という一括りにした表現のもとに、キャピタル・フローの増加、貿易の自由化、通信革命、インタ ーネット、移住、労働や資本のアウトソーシングなどの力によって推進された。今日では、別の共通要 素、すなわち「健康」がグローバリゼーションを形成しつつある。
貧しい国々はエイズ、マラリア、結核などの終わることのない致命的な感染症に苦しみ続けている。
また、SARSや鳥インフルエンザによってもたらされる危険もある。平均寿命の上昇と出生率の低下と いう人口危機に直面している先進諸国では、医療費が急騰しつつあり、そして、かつては先進諸国に限 られていた糖尿病や心血管疾患などの慢性的な「生活習慣」病が、現在では急激な都市化の余波にあえ ぐ貧しい国々へと広がりつつある。
他方では、科学が癌などの慢性疾患の遺伝的根拠をもう少しで理解するところまできているが、新し いテクノロジー・ツールによってこの「理解」を今までは手を差し伸べられなかったかもしれない人々 の治療に応用することができ、「末期になるまで治療を放置するのではなく早期発見を修得する」とい う新たな健康の枠組み――ニュー・ヘルス・パラダイムが科学者と医療従事者の間で浮かび上がってき た。この新たなパラダイムは、健康の改善、苦痛の軽減、寿命の延長を約束するだけでなく、医療費が 生産性や経済成長がさらに大きな障害になる前に医療費を劇的に削減することになる。
この新たなパラダイムは欧米諸国だけに限ったものではなく、環太平洋地域の国々でも、ライフサイ エンスにおける投資の増加や技術の応用を大いに形成しつつある。欧米諸国に行き、研究結果を共有し、
国際的なパートナーと共同研究開発を行っているアジアの科学者はますます多くなっている。「ライフ サイエンス」「医療」「政策分野」の国際的なリーダーが、意見を交換し、共同研究の推進方法を議論す るアジア太平洋サミットの開催を決定した。
それが米国アジア研究機関(National Bureau of Asian Research : NBR)とフレッド・ハッチンソン 癌研究所(Fred Hutchinson Cancer Research Center)の主催で6月8~10日にシアトルで開催され たパシフィック・ヘルス・サミット(Pacific Health Summit)の始まりだった。
2.主な開催内容
GEヘルスケア社の社長兼CEOのWilliam M.Castell氏は、貧困撲滅をグローバル・ヘルスのイニシ アチブの草分け的存在である。熱烈な擁護者でもあるラッセル・ファミリー財団の議長 George F.
Russell,Jr.とビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団のWilliam H Gates,Sr.の両氏によって提案された サミットの焦点を基調講演に盛り込み、また、「ゲノミクスの可能性」「鳥インフルエンザの脅威」「伝 統的な中国医学の将来性」「様々な国民保険制度の比較」など、多種多様な国際的専門家集団が広範な 数々のトピックを扱う一連のパネルディスカッションを開催した。
【主な出席者】
氏名 所属
Peter ANDREWS, Ph.D. Chief Scientist, Queensland Government, Australia Andrew BERLIN, Ph.D. Director, Biomedical and Life Sciences, Intel Corporation Alan BERNSTEIN, Ph.D. President, Canadian Institutes of Health Research
Louis BURNS Vice President and General Manager, Intel Digital Health Group
William CASTELL President and CEO, GE Healthcare
氏名 所属
SuchaiCHAROENRATANAKUL, M.D. Minister of Public Health, Thailand and President, Thoracic Society of Thailand
Ding-Shinn CHEN, M.D. Chairman, Taiwan Hepatitis Control Committee and Dean, College of Medicine, National Taiwan University
Zhu CHEN, M.D., Ph.D. Vice President, Chinese Academy of Sciences
May Tsung-Mei CHENG Host, International Forum, International Center, Princeton University
Molly COYE, M.D., M.P.H. CEO, Health Technology Center
Eric DISHMAN General Manager, Consumer Health Platforms, Intel
Corporation and Principal Research Scientist, Intel Corporation Victor DZAU, M.D. Chancellor, Duke University Medical Center & Health System Christopher J. ELIAS, M.D., M.P.H. President, PATH
Stephen H. FRIEND, M.D., Ph.D. Executive Vice President, Oncology and Advanced Technologies, Merck and Co. Inc.
Lee HARTWELL, Ph.D. President and Director, Fred Hutchinson Cancer Research Center
Fuchu HE, Ph.D. Chinese Academy of Sciences
J. Edward HILL, M.D. President, American Medical Association Leroy HOOD, M.D., Ph.D. President, Institute for Systems Biology
Gary KAPLAN, M.D. Chairman and CEO, Virginia Mason Medical Center Caroline KOVAC General Manager, IBM Healthcare and Life Sciences Kiyoshi KUROKAWA, M.D. President, Science Council of Japan
David LANE Executive Director, Institute of Molecular and Cell Biology David LAWRENCE, M.D. Former Chairman & CEO, Kaiser Permanente
Jong-Wook LEE, M.D. Director-General, World Health Organization
Kyeong-Ho LEE, Ph.D. President, Korea Health Industry Development Institute (KHIDI)
Shichuo LI, M.D. President, Chinese Association Against Epilepsy
Depei LIU, Ph.D. Vice President, Chinese Academy of Engineering and President, Chinese Academy of Medical Sciences
Edison LIU, M.D. Executive Director, Genome Institute of Singapore (GIS) Craig MUNDIE Senior Vice President, Chief Technical Officer, Microsoft Yusuke NAKAMURA, M.D., Ph.D. Chief Director, Human Genome Center, University of Tokyo Maynard OLSON, Ph.D. Director, Genome Center and Professor of Medicine, Genome
Science, University of Washington
Koji OMI Former Science and Technology Minister and Member of House
of Representatives, Japan
氏名 所属
Mark V. PAULY, Ph.D. Bendheim Professor, Wharton School
John POTTER, M.D., Ph.D. Senior Vice President and Director, Division of Public Health Sciences,Fred Hutchinson Cancer Research Center
You-Lin QIAO, M.D., M.P.H., Ph.D. Professor and Chief, Department of Cancer Epidemiology, Cancer Institute, Chinese Academy of Medical Sciences
Uwe REINHARDT, Ph.D. James Madison Professor of Political Economy, Princeton University
Satku K SATKUNANANTHAM, M.D. Director of Medical Services, Ministry of Health, Singapore Haruo SHIMADA, Ph.D. Professor, Department of Economics, Keio University
Peter A. SINGER, M.D. Sun Life Financial Chair in Bioethics and Director, University of Toronto Joint Centre for Bioethics
Ralph SNYDERMAN, M.D. Chancellor Emeritus, Duke University Health System Linda SONNTAG, Ph.D.
Kenneth STUART, Ph.D. President and Director, Seattle Biomedical Research Institute Chris TAN, Ph.D. Senior Counselor, Asia-Pacific International Molecular Biology
Network
Andrew C. Von ESCHENBACH, M.D. Director, National Cancer Institute (NCI)
Huimin WANG, M.D. Corporate Vice President, Japan & Intercontinental, Edwards Lifesciences
John WONG, M.D. National University of Singapore, Vice-President of Research and Life Sciences and Director of Office of Life Sciences
Cheng-Wen WU President, International Federation of Cell Biology and
President, National Health Research Institutes, Taiwan
Dezhi YU Deputy Director-General, Department of Planning and Finance
Elias A. ZERHOUNI, M.D. Director, National Institutes of Health (NIH)
Huaying ZHANG, M.D. Director, Health and Wellness for Asia, The Beverage Institute for Health and Wellness, The Coca-Cola Company
【Confirmed Moderators】
氏名 所属
Steve BURRILL CEO, Burrill & Co.
Maria CATTAUI Secretary-General, International Chamber of Commerce (ICC) Richard KLAUSNER, M.D. Executive Director, Global Health, Bill and Melinda Gates
Foundation
Moises NAIM, Ph.D. Editor and Publisher, Foreign Policy Magazine
1)基調講演の主なポイント
(1)W. M. Castell氏 (GEヘルスケア社;社長兼最高責任者)
「我々は新しくよりよい医療のモデルになろうとしているのか」ということをテーマとし、最初に20 世紀における医療の進歩について2つの相違なる科学の功績について述べた。1つは、医化学およびそ れに関連する学問分野が、新規の重要な治療法を生み出し、続いてこれらは製薬業界によって世界規模 で開発され、高業績を上げたこと。もう1つは精密工学および材料化学は医療機器および医療器具にお いて大きな進歩を実現させたことをあげた。
しかし、このような成功にもかかわらず、20世紀の医療の限界とは、開発は先進国の市場と疾患ニー ズを満たす為のもので、過去 20 年間において、産業モデルは、製薬業界の R&D ポートフォリオの優 先順位を決定する為に狭められ、大部分の熱帯病や稀少疾患は一様に無視されてきたと強調した。実際 に欧米諸国では感染症と職業病は減少し、心血管疾患や一部の癌の存在があるにもかかわらず、平均余 命の改善に目覚しい進歩がもたらされた。しかしながら、加齢パターンや環境および生活習慣の全てが 人間の健康と快適な暮らしに新たな難題をもたらしていると、3つの因子をあげた。
今日の医療資産のほとんどが症候性疾患後の治療に焦点をあわせたものであり、このような「晩期疾 患」に焦点を当てることが技術的可能性の最良の利用法となるのか、このアプローチが一人一人の健康 の維持に役立てる最善の方法施あるのかと疑問を投げかけた。
長寿化 × 複数の慢性並存疾患 × 期待の増加 = 医療資源への大きな圧力
21世紀の医療に向かって、世界的な視点に立ち、よりレベルが高く、野心的な医療の目標へ向けてゆ く方法として、現在利用可能になろうとしている一連の技術に対する必要性を述べた。
ゲノミクスとそれから派生した科学領域
インフォマティクス-遺伝学(ミクロ)および疫学(マクロ)の両方 通信技術および需要を通した消費者の接続性
ナノテクノロジー バイオ工学
決定的に重要な相互作用は最初の3項目にあり、これらが一緒になって「バイオロジー(biology)、バ イト(bytes)およびブロードバンド(broadband)」という基本的な構成要素となる。ナノテクノロジ ーとバイオ工学(遺伝子チップから幹細胞まで)は根本的な解決の実現を助ける。
これは極めて強力な変換技術であり、最初の産業革命の場合と同様に、これらの要素は組み合せた場 合にのみ重要な意味がある。これらの分野で利用できる可能性をしっかり把握した社会は 21 世紀にお ける有力な貢献者および受益者になり、「バイオロジー、バイトおよびブロードバンド」の組み合せは、
医療のみの中心にあるのではなく、我々の「環境(environment)、経済(economy)、教育(education)」
全体が相互連結した進歩の中心でもある。これらの B と E は、これから迎える数十年の真の原動力と なるだろうと幅広い期待を述べている。
また、早期健康モデルは、現在の晩期疾患医療システムの維持・構築よりもコスト面や平等性に優れ、
医療サービスの提供の為だけではなく、世界的な確信やその他の経済活動への参加のために役割を果た すことができることを強調した。そして、サミット参加者に対し、戦略的価値、人的価値について話し 合い、早期健康分野に相当額の投資を集めるよう求めた。
(2)Bill Clarke氏(GEヘルスケア社;取締役副社長兼最高技術・医療責任者)
「より良い情報が提供される医療の達成-願望、チャンス、課題」をテーマとして、「情報」の重要 性を強調した。情報は、加速的な動きに共通する推進力であり、人間活動の多くの領域において、情報 は目の回るような速さで押し寄せるため、我々は個人としても集団としても、その価値を吟味し有意義 な判定を下そうと苦闘している現状を挙げ、特に「医療の領域ほど、データを知恵に変えるのが困難な ケースはなく、生データの急増がこれほど顕著であった領域はない。さらに、関係する個人にとって適 用かつ実施可能な、より有用な意思決定情報の必要性がこれほど大きい領域もない。」と、訴えた。医 療を変えるには、このデータと情報の両方が、国際社会から理解と支援を受ける透明性の高い方法によ って医療従事者や医療システムに利用、吸収されるものでなければならないとした。
また、サミットの課題として、いかにして新たなデータを患者や医療従事者、医療システムにとって 実用的かつ機能的な知識に変えるかという議論を行い、様々な文化や国、コンテクストにおいても確実 に的確に変換が行われるようにするために、適用やコミュニケーションおよび提供におけるデータセッ トや方法論およびローカライゼーションの一貫性についての必要性を述べた。そして、各パネルディス カッションと関連付けて議論の活性化のために問題提起をした。
最初のパネルディスカッション議題である「科学が約束するもの」の情報関連についての事項を取り 上げる中では、最も基本的な願望とは、医療に対する今日の病理ベースのアプローチを真に予防的であ り早期介入を行うパラダイムに変換することをあげ、実際はこの理想とは全く対照的なところに現実が あり、新たに出現する臨床および生物医学領域の情報の途方もない増大を、本サミット参加者がそれぞ れ代表している様々な状況や環境の範囲内で、より迅速に利用できるようにする方法を探すことが課題 であると述べた。
2番目のパネルディスカッション議題である公衆衛生に関しては、より良い医療情報の潜在的影響に おいて主な「願い」は2つあり、第一は、臨床および生物医学領域の情報の改善が、より適切でより早 期の診断、より適切でより個別化された治療法、および医療支出をその他の公衆衛生または社会的ニー ズに対してより適切な形で利用することである。第二に、医療システムと医療提供者間の情報のより良 い流れによって、開発途上国における改善された医療パラダイムの採択の迅速化につなげるという願い である。それに対する課題は、1つは公的医療ニーズにおいて情報不足が最も深刻な場所を明確化する 方法はあるかというもの。2つ目は情報が利用可能になった後に生じる課題で、公衆衛生に影響を及ぼ すための積極的かつ有効な伝達が可能なように情報抽出ができるメカニズムを特定することを挙げた。
3番目のパネルディスカッションの議題である医療システムと個人の健康についての情報の影響を考 えるとき、「より多くの情報が知識の減少を招くのはどのような場合か」という問いであった。この議 論における「願望」とは、情報が多いほど(大きなデータセットとしてではなく、高度に文脈付けされ、
迅速なアクセスが可能な状態)、より有効かつより効率的な医療システムにつながることである。そし て「課題」は「アクセシブル、到達可能、利用可能」(accessible)という言葉の意味を我々がどう理解 しているかにあると述べた。
そして最後に、「臨床および生物医学領域のデータや情報および知恵の生成はそれ自体が強力かつ有
益な経済活動であり、さらに、医療の知識および知恵の適切な活用は、より健康に経済活動に従事でき る人口の増加へと導く。このように、本サミットの「願い」は、これら2つの経済推進力を促進するた めに医療のデータや情報を豊富な知識と共に利用する方法を探すべきなのである。」と結んでいる。
(3)Lee Hartwell氏(フレッド・ハッチンソン癌研究所;所長)
「分子診断の将来性」をテーマとし、この 40 年間の分子生物学の驚異的な発展について触れ、さら に新たに進展している技術や知識を如何に医療の向上に結びつけることができるかという課題を投げ かけた。
診断上の問題に答える為の分子情報の使用は、制限される。分子診断は、詳細な分子情報を全患者に 利用できるようにする進歩によって可能となるであろうが、それぞれの新規癌患者が知りたいと思って いる「私は癌なのか?」「私の癌はどのような病期なのか?」「私の癌の最も有効な治療法は何か?」「私 の治療は効果が出ているのか?」「私は治癒したのか?」「私の癌は再発しているのか?」という問いに 対する答えを癌細胞そのものの分子において見出すことはできないとした。しかし、分子診断はここ数 年で、主にDNA およびRNAレベルにおいてきわめて大きく進歩したことを述べ、早期診断、リスク 診断、タンパク質診断がもたらす成果と技術の進歩について予測した。
それら技術の鍵となるバイオマーカーが、細胞の分子生物学に関する理解を人の分子生物学に結びつ けることへの大きな期待が述べられた。そのため、疾患のバイオマーカーの検索および導入を促進し、
バイオマーカーの発見と正確な科学的知識を発展させる必要性を述べた。バイオマーカー発見の頑健な 技術の構築は、産学連携として組織化されるべきであり、必要なプラットフォームであると強調してい る。
初期の疾患を予測するタンパク質バイオマーカーを発見できたならば、次のステップは癌などの疾患 がどこに存在するのか、どのくらいの大きさなのか、限局型であるかどうかを知ることが必要となる。
また、治療戦略も、新しい分子標的治療法の開発により、各タイプの癌において重要なタンパク質の理 解の直接的な恩恵を受けることができる。
最善の癌治療法は癌細胞の分子変化を標的とする新薬(Imantinibなど)の開発によって得られると いうものであった。しかし、癌を治癒させる妙薬がさらに多くあるのではないかとの期待は、新薬開発 費の高さ、動物モデルの予測力の低さおよび疾患の複雑さによって裏切られた。しかし、診断の向上は、
臨床試験を短縮し、奏効患者を特定し、毒性の副作用を明らかにすることにより、新薬開発を大きく加 速させると思われる。患者の反応をリアルタイムでルーチンに追跡調査できれば、最も適切な薬剤およ び最も有効な用量が患者毎に選択され、一連の異なる薬剤の有効性が直ちに検討されるであろう。
Steve Burrill(バイオテクノロジー業界のリーダー)が来る時代を「Rx Dx」(処方診断)の時代と呼 び、診断薬と治療薬の統合の必要な役割を強調した点と例として述べた。
(4)Richard Klausner氏(ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団 グローバルヘルス;常任理事)
「21世紀の成果規模の健康-革新の役割」をテーマとし、世界規模の健康改善のために、ビル・アン ド・メリンダ・ゲイツ財団が取り組んできた3つの重要なプログラムについて紹介した。
1)グローバルヘルスのための大いなる挑戦(Grand Challenges in Global Health)プロジェクト 2)グローバルHIVワクチン事業(Global HIV Vaccine Enterprise)
3)ワクチンおよび予防接種のための世界同盟とワクチン基金(Global Alliance for Vaccines and
Immunization and the Vaccine Fund)
「グローバルヘルスのための大いなる挑戦」は、2年前に着手し、世界中の科学、技術および健康分 野のコミュニティに対し「開発途上国の重大な健康問題を解決する上で、立ちはだかっている1つない し複数の障害物を克服するために必要な科学的または技術的な打開策とは具体的にどのようなものか」
という質問と共に案を募集した。その結果、80カ国を超える国々から数千ページにおよぶ提案を受け、
14の具体的な「グローバル・ヘルスのための大いなる挑戦」を定めた。次に問題の解決を目的とした、
実際的、徹底的、ハイリスクでさえある企画の提示を求めた。このプログラムで、1)世界的規模の健 康に関する学問の認知度や水準、刺激を高める、2)世界の科学コミュニティ、特に若い科学者に対し 問題解決には実際に何が必要なのかを考えることを促す、3)ヒルベルトのように未解決で、解決する 価値があり、多くの人々が解決に取り組む可能性のある問題の一覧表を作る、および4)科学および技 術の分野において世界規模の健康問題を解決する人々の新たなコミュニティに対し数億ドル単位の直 接的な資金提供を行うという4つの目標達成を期待している。
「グローバル HIV ワクチン事業」は、ヒトゲノム計画に触発された本事業は、数百人の科学者の研 究を通して1つの科学的戦略計画と継続的にその計画を更新するメカニズムを生み出す持続的プロセス を作った。本事業は HIV ワクチン活動をこの公的で、高度な議論の対象となる、進化を続ける世界的 戦略計画と提携することに合意した資金提供者たちの同盟である。また、このようなネットワークはグ ローバルな透明性の高い共同計画、すなわち活動中で、新たな知識やツール、アイデアと共に変化する 計画に対する我々の説明責任を維持させるメカニズムを生み出すための資源を提供することにもなる。
2000 年 に ワ ク チ ン お よ び 予 防 接 種 の た め の 世 界 同 盟 (Global Alliance for Vaccines and Immunizations <GAVI>)と呼ばれる新たな世界的な協力関係が設立された。GAVIは、ゲイツ財団 からの7億5千万ドルの助成金で発足したワクチン基金と呼ばれる独立型の購入基金と連動している。
この協力関係の目標は、世界の最貧国 75 カ国に対し、ワクチンの製造や資金供給およびワクチン投与 に秩序や信頼性、説明責任および明確な技術的方針をもたらすことにより、富める者と貧しい者の間に ある予防接種の格差をなくすことにある。
2 )パネルディスカッションのポイント
(1)慢性疾患の予防を目的とするゲノミクスの可能性について
サミットの最初のパネルディスカッションは、慢性疾患の予防を目的とするゲノミクスの可能性につ いて具体的に肉付けすることから始まった。サンフランシスコを本拠地とするバリル・アンド・カンパ ニー社(Burrill and Co.)のCEO、Steven Burrill氏は、米国の医療費支出の80パーセントが慢性疾 患の治療に回されることを述べて、議論の方向性を定めた。
NIH所長Elias Zerhouni氏は、パネルディスカッションの焦点を国際的なレベルにまで広げ、中所 得国では慢性疾患がますます広まりつつあり、また、豊かな国での高齢化や鳥インフルエンザで見られ たようなヒト病原体と動物病原体との壁の崩壊など、慢性疾患以外にも不安をもたらす動きがあると述 べた。こうした「erthquake(危険因子)」に対処する際にその衝撃から最も効果的に防御してくれるの は、一人当たりの「所得」ではなく個々の「知識」であるとZerhouni氏は主張した。
フレッド・ハッチンソン癌研究所のLee Hartwell所長は、「科学者は疾患のタイプと頻度を特定する ための大規模な公衆衛生の研究を実施」と、「細胞や組織を検査して疾患を早期発見する表現型解析技 術の発展」についての重要性を述べた。しかしシンガポールの分子細胞生物学研究所(Institute of Molecular and Cell Biology)のエグゼクティブ・ディレクター、David Lane氏は、エイズや結核、マ ラリアなどの感染症の差し迫った危機にさえ取り組むことができないのに、豊かな国々がゲノミクスの 進歩を優先して追及すべきなのかどうか疑問を投げかけた。ワシントン大学医学部(Department of Medicine at the University of Washington)のMaynard Olsen氏もゲノミクスの将来に関して言葉と 現実との間にはギャップがあると指摘し、注意が必要であることを強調した。
一方、アジアの国々は予防医学において独自の革命的進歩を遂げつつある。東京大学ヒトゲノム解析 センター長の中村祐輔氏は、国の全人口の「バイオ・バンク」を構築するための日本政府の取り組みに ついて説明した。「バイオ・バンク」の目的は、47の遺伝性疾患の1つ以上に罹患している300,000例 の血液サンプル収集によって、科学者がそのデータベースを使用して遺伝的危険因子と環境的危険因子 とを区別する研究に利用することを計画している。また、台湾の国家衛生研究所(National Health Research Institutes)所長のCheng-wen Wu氏は、肺癌の早期発見検査を発展させるための施設の取 り組みについて述べた。台湾では通常、肺癌は喫煙に関係なく、きわめて致死性が高くなっている。化 学療法に通常必要な数週間ないし数ヶ月間よりも長く抗癌治療が効くかどうか、科学者が検査によって 判断することができるのだとWu氏は説明した。
シアトルのシステム・バイオロジー研究所(Institute for Systems Biology)のLeroy Hood所長は、
バイオロジーは、病気の窓口としての遺伝学という新たな「パラダイムシフト」をもたらすと言う。血 液中にタンパク質を分泌する遺伝子ネットワークがあることがわかってきている今日では、問題はいか にして「混乱した遺伝子ネットワークを断ち、その遺伝子ネットワークを活用して病気にならないよう に予防する医薬品をデザインするか」であるとHood氏は指摘した。新たな技術には、血液中の分子の
「指紋」となり得る物質を測定するシステムやタンパク質の相互作用を測定するナノテクノロジー・ツ ールがある。中国医学科学院(Chinese Academy of Medical Sciences)のDepei Liu学長は、代謝ネ ットワークの理解を一層深める遺伝子調節ネットワークに関する研究を推進するための中国医学科学 院の試みについて概略を説明した。
技術によって病気の予防が進む見込みはきわめて大きいが、ヒトゲノム計画と同様に分野を越えた共 同研究が必要だとAndrew Berlin氏の発言に対し、インテル社のバイオメディカル・アンド・ライフサ イエンス・ユニット(Intel’s Biomedical and Life Sciences Unit)を統括しているBerlin氏は、科学者 がさまざまなネットワーク間でデータを共有し診断サービスをデジタル化することの重要性を挙げた。
また、情報技術業界からのもう一人の代表である IBM 社のヘルスケア・アンド・ライフサイエンス・
ユニット(Healthcare and Life Sciences Unit)のCarol Kovac氏は、そのような大規模なデータ共有 の取り組みが起こりうるとの確信を表明した。
(2)感染症-身に迫る当面の危機
国際連合の世界エイズ・結核・マラリア対策基金やビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などの組織 のあらゆる取り組みにもかかわらず、感染症は発展途上諸国の死亡率を大混乱させ続けている。また、
アジアでは、公衆衛生関係者はSARSや鳥インフルエンザなどのほとんど未知の現象にも立ち向かわな ければならない。世界保健機関のJong-Wook Lee事務局長は、世界的な鳥インフルエンザの脅威は「き わめて現実的な」ものであり、5,000 万人が死亡した 1918 年の世界的なインフルエンザ大発生の規模
の可能性があることを警告した。また、比較的犠牲者が少ないシナリオの場合でも、SARSの例からわ かるように、経済的影響は数十億ドルに達しうると氏は指摘した。
アジアの科学界全体での難題は、コミュニケーションの不足だとパネリストたちは指摘した。アジア 太平洋分子生物学ネットワーク(Asia-Pacific International Molecular Biology Network)の上級カウ ンセラーChris Y.H. Tan氏は、アジア諸国がヨーロッパの例に倣い、統合ネットワークを開発して汎ア ジア公衆衛生研究を円滑化するよう促した。また、そのゴールを目指すためのひとつの方法は、アジア 中の科学者を団結させるエイズワクチンの開発などの大掛かりなプロジェクトを推進することだと示 唆した。
国立台湾大学医学部(National Taiwan University’s College of Medicine)の医学部長兼教授 Ding-Shinn Chen氏も、重要な最初のステップとしてアジアの医療従事者間のより良いコミュニケーシ ョンネットワークを提唱した。シンガポール保健省(Singapore’s Ministry of Health)のK. Satku 氏は、SARSや鳥インフルエンザなどの脅威を監視する際に特に重要なのは、十分なコミュニケーショ ン、基本的な公衆衛生、包括的サーベイランスの関係だと力説した。しかし、サンフランシスコを本拠 地とするヘルス・テクノロジー・センター(Health Technology Center)の最高経営責任者Molly Coye 氏は、アジアの公衆衛生機関に対して、情報技術の発展の遅れがあると批判的な見解を述べた。
タイ・ライフサイエンス研究所(Thailand Center for Excellence in the Life Sciences)のPornchai Matangkasombut 氏は、タイでの経験に話題を移して、タイがなぜ診断・治療分野の重要なニッチ産 業(熱帯病に対する医薬品の開発)を開拓する体制を整えているのかを説明した。タイの製薬業界は欧 米諸国の製薬業界よりも間接費がはるかに安いので、貧しい熱帯諸国のためにこうした医薬品を安価に 開発することが非常に容易なのだとMatangkasombut氏は言う。
(3)慢性疾患-イベントではなく、プロセスとしての疾患
豊かな世界では高齢化が進み、発展途上国ではライフスタイルが全面的に変化している状態で、どう すれば国家はもっと協力し合って慢性疾患を予防することができるのか。米国国立癌研究所(National Cancer Institute)所長のAndrew von Eschenbach氏は、癌などの疾患の発現はサイレント・トラジ ェクトリー(無言の軌道)と呼ばれているように、単発のイベントではなく、分子に異常が生じるため であると説明した。また、予防の適用について戦略的に考える必要があり、単に早期発見だけでなく、
進行のペースを理解する方法も必要であると付け加えた。
シアトルのフレッド・ハッチンソン癌研究所の統括責任者John Potter氏は、ライフスタイルの重要 性というテーマを慢性疾患の発現にまで広げて、逆説的な傾向をいくつか指摘した。また、先進諸国の 病気が発展途上諸国へとシフトしている今日の問題は「ニューバイオロジー」が独自の解決法へと飛び 越えることができるか、それとも経済的発展が必要かという課題を投げかけた。中国医学科学院癌研究 所のYoulin Qiao氏は、年間600万の癌による死亡者の43パーセントは食事、喫煙、運動という要素 をいかに対処するかによって予防できると明確な統計を提示してライフスタイルの選択の重要性を強 調した。
メルク社の腫瘍学・先進技術部門(Merck’s Oncology and Advanced Technologies unit)の統括責任 者Stephen Friend氏は、予防は別にして、癌の医薬品の開発にも大規模な改善が必要であると強調し た。薬の発見や検査においてより高度な方法に精力を傾けると医薬品の開発が妨げられる現在の主な問 題の一例として、試験デザインが未完成であること、極端に短期間の計画、試行錯誤的なアプローチへ の過度の信頼を挙げた。
一方、予防に関しては、心血管疾患には独自の複雑さがあるとデューク大学医療センター・ヘルスシ ステム(Duke University Medical Center and Health System)のVictor Dzau総長は言及した。都市 化などの明白な危険因子もあれば、そうでないものもあると指摘した。そしてデューク大学では、特に 発展途上諸国の遠隔地に住む人に有用な、心血管の健康状態の遠隔モニタリングを可能にする新しい植 込み型チップの開発を示した。
(4)医療制度-病に打ち勝つ為に
パネルディスカッションの2日目は、医療制度を作り上げる最善の方法に関する活発な議論から始ま った。デューク大学ヘルスシステムの名誉総長Ralph Snyderman氏は、ゲノミクスにおける新しい技 術と個別化医療と、業者や患者がそれらを利用しようとする意図との間にある大幅な食い違いを強調し た。小規模ながら明白な一例として、Snyderman 氏は職員に早期健康リスク評価を無料で申し出た大 学での研究について活用した職員はほんのわずかだったと説明した。
パネリストたちは患者教育の向上と浪費削減の必要性も強調した。Snyderman 氏は、先天性心不全 のリスクがある患者に対して、適切に薬を服用する方法についてより徹底した指示を与えたデューク大 学での別の例を挙げ、治療費は 40 パーセント削減したと説明した。また、パネリストたちは、医師は おしなべて独自に行動し、情報を保持する傾向にありすぎるという見解に同意した。ヴァージニア・メ イソン・メディカル・センター(Virginia Mason Medical Center)の議長兼CEOであるGary Kaplan 氏は、医療に関して支出される金額の半分以上が患者にとって「無価値」であると述べた。Kaplan 氏 は、医療従事者の統合ネットワークと患者とを結び付ける「チーム・アプローチ」の価値について述べ た。カナダ保健研究機構(Canadian Institutes of Health Research)の代表Alan Bernstein氏はこの 意見に同意したが、チームに焦点を当てたアプローチの責任の大半は患者にあると言及した。日本およ び大陸間のエドワーズ・ライフサイエンス社(Edwards Lifesciences)の副社長Huimin Wang氏も、
早期発見を中心にした取り組みに対して個人のイニシアチブが果たす重要な役割を強調した。
シンガポール国立大学リサーチ・アンド・ライフサイエンス(Research and Life Science, National University of Singapore)のJohn Wong副総長は、参考として自国の例を示し、シンガポールでは医 療費がGDPのわずか2パーセントしか費やされていない理由として、単一支払制度について説明し、
その制度により科学者や医師の多くが互いに連絡し合う事ができているということを述べた。一方、中 国では農村と都市では医療の質や利用のしやすさに非常に大きな差があり、現状はさらに複雑だと北京 の清華大学医学部(Tsinghua University Medical School)副学部長Mingzhe Chen氏が指摘した。
(5)東洋と西洋の出会い-新たな疑問、伝統的な回答
多くのアジアの国々では幹細胞や癌研究などの分野が進歩しつつあるが、伝統的な東洋医学も広く実 践され続けている。こうしたアジアの伝統の評判が西洋で広がりつつある今、アジア以外の医師や科学 者がこうした医療行為から何を学ぶことができるのか、医療従事者は問いかける必要がある。
北京のコカ・コーラビバレッジヘルス・アンド・ウェルネス研究所(Coca-Cola Beverage Institute for Health and Wellness)のHuaying Zhang氏は、伝統的な中国医学(TCMと呼ばれることが多い)が 健康的な食事や生活習慣の促進によって、本質的に予防を基本としたアプローチであり、このアプロー チは西洋医学と競合するものではなく補完するものであるはずだと強調した。都市化や経済成長によっ て負わされた健康に関する課題を引き合いに出し、その課題を「革新に伝統を取り込むこと」と表現し た。
そのテーマを展開させて、イエール大学のヘンリー・ブロンソン薬理学教授(Henry Bronson Professor of Pharmacology at Yale University)のYung-Chi Cheng氏は、TCMがどのように作用す るかの科学的根拠に基づく理解について、現代技術の将来性に注目していた。またTCMから学ぶこと ができるのは西洋だけではなく、急速に高齢化が進んでいる日本でも、このような予防的アプローチを 医療にもっと組み込むができるはずだと慶應義塾大学の経済学者、島田晴雄氏は指摘した。
経済的コスト、無益性を評価した上で、システムを再構築し、わたしたちが何を求め、どんな政策シ ステムが必要であるかを見出すことが課題であるとCattaui氏が指摘した。
アメリカ医学協会(American Medical Association)の会長Edward Hill氏は、健康習慣は幼少期の きわめて早い時期、胎児期にも発生すると言及した。Hill氏は、知識と技術だけで行動を変えることが できのるかという点に懐疑的であり、つまり予防をベースにしたアプローチを促進することが必要だと 述べた。
次に、IT業界が個別化医療にどのように貢献できるかに話の焦点を移して、インテル社のプロアクテ ィブ・ヘルス・リサーチ部門(Proactive Health Research unit)のEric Dishman氏が、無線ネット ワークを基盤とするアルツハイマー患者のための最先端の個別化治療プログラムについて述べた。この プログラムは、患者を家庭環境とも外界とも結びつけることによって、即時の記憶や人との交流を支援 する。
(6)健康と生産性-ドルに対する健康の価値の拡大-
周知のことではあるが、米国は数百万にのぼる無保険の人を放っておく一方で、他のどの国家よりも 高い GDP比を医療に費やしている。また、世界中の先進工業国においても、民間セクターも公共セク ターも急騰する医療費抑制策に取り組まなければならない状況である。こういった背景から、政策の専 門家と経済学者のグループは、豊かな国々では非効率的な医療制度により経済成長がいかに抑えられて いるのか、貧しい国々ではいかにしてより良いかたちで医療が生産性を向上できるか議論した。進行役 であり『フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)』誌の編集者Moises Naim氏は「無益性」とは生産 性の低さについての非専門的な言い方で、インセンティブ、すなわち価格に結びつくと指摘した。
HMO(Health Maintenance Organization:米国保健維持機構)事業の観点から、Kaiser Permanente 社の前会長兼CEOのDavid Lawrence氏は、米国の制度には非効率性が根付いていると指摘した。米 国人はそれぞれ複数の――引退するまでに6~12人程度――さまざまな医師にかかりうるが、その医師 たちが情報を共有して協力できるようなインセンティブや制度はない。診療ごとの支払いに基づく補償 制度は、コストを低下させる一方で質を向上させうる長期的な治療プロセスではなく、独立した医療行 為により報酬が得られると説明した。Lawrence氏によると、米国医療の30~50%が非効率であると概 算している。
課題の性質は国によってさまざまだが、アジアも医療費の危機の高まりに直面していると指摘したパ ネリストたちもいた。Korean Health Industry Development Instituteの所長Kyeong-ho Lee氏は、
韓国を例に取り上げて、1960 年代に策定され医療保険と平均寿命に巨大な利益を獲得した国の単一支 払制度について賞賛した。しかしながら、今やそれは高齢化による厳しい局面にある。また中国は、貧 しい農村地域とより豊かな都市部の医療の質と保険との間にある巨大な分水嶺に橋をかける方法を発 見しなければならない。中国衛生省規画財務司(Department of Planning and Finance)のDezhi Yu 氏は、何らかの保険の適用を受けている中国の農業従事者はわずか800,000人だと報告した。それに対 し、政府の反応は、農村における地域医療を確立するとともに、地域の病院には鳥インフルエンザなど
の大発生に関して北京への報告を実行させる全国規模の取り組みを行うとした。
日本学術会議会長の黒川清氏は、より広い範囲に焦点を当て、単に「80歳ではなく90歳まで生かす」
ためのものとして医療の効率を考えないよう訴え、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が行なってき たように、発展途上諸国で数百万人の命を救うことができる比較的単純で効率的な解決法に対して、豊 かな国々はプライオリティの焦点を再び定めるべきだと言明した。そのコストについてオーストラリア のクイーンズランド州主任研究員Peter Andrews氏と、コロンビア大学の経済学者Jeffrey Sachs氏が 見積もった金額は、年間270億ドルであると述べた。
(7)理想的なシステムとは-数は全てを物語るか-
米国における全面的な医療改革の試みが 10 年以上行き詰っている一方で、国際間比較の問題が依然 として経済学者と政治家の注意を引き続けている。この精神で、サミットの最終パネルはどの国が最良 の医療モデルを提供するか、つまり実際に世界中で同じように機能するモデルがあるかどうか、という 議論が展開され、Moises Naim氏が再び議論を導いた。
日本の元科学技術政策担当大臣の尾身幸次氏は、最も幅広く賞賛されているモデルでさえも緊張感を 強めつつあると指摘した。日本は世界で最も高い平均寿命と国民皆保険制度を誇るが、人口統計学的傾 向から、財政危機が起こる可能性が最も高いとされている。全日本人の36%が2015年までに65歳を 超える。そのため、税金の引上げ、年金の引下げ、保険料の値上げなどの手段を挙げ、警告した。
ペンシルベニア大学ウォートン校(Wharton School at the University of Pennsylvania)の教授Mark Pauly氏は、米国の医療に関して言えば「謙虚になるべきことが多い」と他の人たちに同意したが、医 療費の国際比較に意味を持たせるためには、国々の賃金や物価の差に合わせて調節する必要があると主 張した。また、ある国で医療費が高くても、住宅費、食費、被服費など、医療費以外のコストが低いこ とで相殺されることも多いと指摘し、「治療費は安いが住宅は狭い日本は幸福な国でしょうか」と述べ た。
米国のアプローチについて、プリンストン大学国際センター(Princeton University’s International Center)のMay Tsung-Mei Cheng氏がPaulty氏に異議を唱え、世界のほとんどの制度が実際は公共 手段と民間手段との混合であることに言及し、Cheng氏は、国民から最も支持を得ているデンマークな どの制度にも強い公的要素があることを示す調査を示した。
トロント大学の生命倫理学研究所(University of Toronto’s Joint Centre for Bio-Ethics)のPeter Singer氏は、ある国が自国の人々の医療にいくら使うかということではなく、世界的な医療の課題にど のようにアプローチするかということを論点にすべきだと主張した。また、「理想的な医療制度とは、
自国以外の他の 50 億人を無視しないシステムです。」と、Singer 氏が付け加えた。サンフランシスコ を本拠地とするエクイティ・インベストメント・パートナーズ社(Equity Investment Partners)の創 設者Linda Sonntag氏は、今日の世界における死の95%が発展途上諸国で起こっている事実を示して、
その主張を支持した。
発展途上諸国では状況が厳しいかもしれないが、より幅広い改革のための道標として役に立つ希望と 革新の例はあると、南アジアを本拠地とするアポロ病院グループ(Apollo Hospital Group)の共同統括 者であるSangita Reddy氏は言明した。Reddy氏によるとグループは、ひとつの村で5年以上の歳月 と200万ドル弱を費やし、1人当たり年間2ドルで医療保険を提供する補助的治療の病院を建設した。
そのプログラムは予防接種、癌の早期発見プログラム、病院への「遠隔医療」リンク、上水と下水設備、
ヨーガまでも提供している。
(8)今後の活動-言葉から行動へ-
サミットの終わりが近づき、サミットが解散した後の今後の活動について意見交換が行われた。サミ ットは東洋と西洋の国々の橋渡し役を果たし、科学と医療政策における最善の良心をまとめることに成 功したと広く賞賛された。しかし、参加者のほとんどが共鳴したテーマは、「医療における不公平と科 学力との不均衡の持続」「科学者が人々に何をもたらすことができるのか」ということだった。シアト ルで開催される来年のサミットを左右することになる課題として GE ヘルスケア社の上級副社長 William Clarke氏は「わたしたちには偉大なる科学と偉大なるゲノミクスがありますが、発展途上諸国 では今なお子供たちがポリオで命を落としています。このつながりを理解すべく共に研究しましょう。」 と表明した。プリンストン国際センターの国際フォーラム(International Forum at Princeton’s International Center)のホスト役May Cheng氏は、「たとえ政治が発展途上諸国により良い医療をも たらすために存在するとしても、その他の手ごわい障害物、主に医療インフラの不足や医療業界を構築 するための資本へのアクセスの不足を克服するには十分に機能しないだろう」と指摘した。
多くのコメントでは、サミットの結論を支配していた現実感が強調されていた。しかしながらサミッ トが、医薬品、ライフサイエンス、医療の第一線の人々が意見交換を行ない、国家や学問分野を越えて 関係を築く貴重な経験であったことに参加者は全員同意した。サミットのゴールを促進する際の技術の 役割は、インテル社のデジタル・ヘルス・グループ(Digital Health Group)の統括責任者兼ゼネラル マネージャー、Louis Burns氏と、マイクロソフト社の上級副社長兼最高技術責任者Craig Mundie氏 による特別発表によってさらに補強された。Burns氏はラマン・バイオアナライザー・システム(Raman Bioanalyzer System;血清にレーザーをあてて健康な細胞と異常な細胞との差を認識するフレッド・ハ ッチンソン癌研究所との共同プロジェクト)など、インテル社の最新の革新をいくつか例に挙げた。一 方Mundie氏は、予防を基本とした医療へのアプローチを発展途上諸国にもたらす大規模な戦略の必須 要素として、ブロードバンドなどの新しくて安価な技術を併用した自助アプローチの必要性を強調した。
NBRヘルス・アンド・エイジング・センター(NBR Center for Health and Aging)の所長であり本 サミットのエグゼクティブ・ディレクターのMichael Birt氏とNBR代表のRichard Ellings氏は、主 要な国際科学イニシアチブから重要な政策問題に焦点を当てたワークグループにいたるまで全範囲に 及ぶ数多くの共同プロジェクトを引用した。フレッド・ハッチンソン癌研究所Lee Hartwell氏主導の もと、癌などの疾患における早期スクリーニングのためのバイオマーカーを専門とする8ヶ国で構成さ れたチームが集う大きな科学的イニシアチブは、これによりいっそう大きなはずみをつけた。別の取り 組みである早期の健康促進に焦点を当てたパシフィック・ヘルス・サミットのメンターシップ・プログ ラムは、貧しい農村地域において新しい通信技術を利用して細胞病理学、すなわち細胞の病気の研究に 関する報告の送信計画のプロジェクトを実践し、さらに現地での財政的支援も行った。現在は企業支援 として考えられている10 以上のイニシアチブが出現したと Birt 氏は言及し、「これらの取り組みは、
スターとしては小規模なものかもしれないが、総合すれば、サミットの課題に関する声明でWilliam M.
Castell氏がわかりやすく説明したビジョンが根を下ろしているという証拠である。」と述べた。
3.2006 年に向けての方向性
パシフィック・ヘルス・サミット開催の重要な特徴は、パワフルで前進するメカニズムを行動とイン
パクトを与える為に創造してゆくことである。2005 年度サミットの最終日には、今すぐサポートが必 要なものも含むプロジェクトの提案と先導的な意見が出された。2006年のサミットやその先に向けて、
これらのいくつかのプロジェクトに取り掛っている。
(1)国際バイオマーカーチーム(International Biomarker team)
This project is led by Lee Hartwell, who in addition to his position as the president of the Fred Hutchinson Cancer Research Center and the 2001 Nobel Laureate for Medicine is the research chair for Life Science Innovation Forum (LSIF) of the Asia Pacific Economic Cooperation forum (APEC).
Under the leadership of Dr. Hartwell, a major international initiative has been launched that seeks to bring together teams of scientists committed to improving cancer outcomes by more effective discovery of protein biomarkers for disease.
Biomarker discovery teams have been assembled in the US, Korea, Singapore, and Taiwan. Other countries including Australia, China, Malaysia, and Thailand have now committed to the initiative.
The project has been endorsed by APEC within the LSIF strategic plan and we anticipate that the governments of the 21 APEC economies will commit growing resources to this project.
(2)最新コホート(The Last Cohort)
Also included in the strategic plan of APEC’s Life Science Innovation Forum, the “Last Cohort”
project is a large-scale international collaboration that aims to understand how environmental factors such as diet, smoking, and exercise affect disease development, and how this risk varies with genetic make-up. This project is led by John Potter, the director of Public Health Studies at the Fred Hutchinson Cancer Research Center. The study of one million people is designed to span countries across the Asia-Pacific region.
(3)その他の提案
【プロジェクト提案】
プロジェクト名 提案者 概要
Pacific Health Fellows/Mentorship Program
Bill Clarke, the Executive Vice President of GE Healthcare
2-3 young leaders from Asian countries would be selected to participate in a yearlong mentorship program to nurture a new generation of leaders engaged in the themes and goals endorsed by the Pacific Health Summit.
The emerging idea is to have each Fellow rotate through a number of organizations and situations in order to gain a broad understanding of the issues, technologies, and opportunities.
Early Health Index. We propose the development of an annual benchmarking study called the “Early Health Index,” that would provide a comprehensive hard metrics and perceptual map of how the participating countries of the Pacific Health Summit are doing in terms of implementing the basic elements of prevention, early detection, and early intervention. This proposal has met with immediate and strong support from a number of directions. The value of this index would be to direct annual media attention to the issues of the Summit and a document to approach policymakers in each country as a means to encourage change and growth.
Telemedicine Cytopathology
Dr. Ben Anderson, director of the Breast Health Global Initiative (BHGI),
the development of a tool to digitally capture microscopic images of standard pathology slides and transmit these images using cellular phone technology to a central facility in a developed country. The written report could be transmitted by fax using the same cell phone system.
This solution would use readily available and appropriate technologies to help low-resource countries provide more accurate and immediate cancer care.
X-Prize Greg Simon of
FasterCures
the X-Prize is looking for a new challenge, now that privately financed space flight has been achieved. The idea would be to identify a technological challenge that could be met by the time of the 2008 Pacific Health Summit to be held in Beijing prior to the 2008 Beijing Olympics. The prize is $10 million.
【ワーキンググループ】
プロジェクト名 提案者 概要
East meets West Group Dr. Huaying Zhang, director, of the Beverage Health and Wellness Institute
This group will bring together an active and diverse group interested in looking at the respective roles of Western medicine and Traditional Chinese Medicine (TCM) and the possible integration of the different approaches. One direction would be to examine the cultural, regulatory differences in the context of an international network of clinical trials. For example, how should we develop validation studies for the anecdotal claims of TCM?
Another direction is to look at how tradition and culture influences how different healthcare systems approach
“health” issues as well as specific diseases.
Health Information Technology Policy Group
The Fujitsu team The establishment of a workgroup that would examine the national and international public policy framework with regard to the implementation of effective and safe healthcare information systems.
Emerging
Infections/Pandemic Group
Dan Sharp, president of the Royal Institution World Science Assembly
Encouraged the launch of a project on pandemic
preparedness with the goal of saving lives and minimizing the economic impact. He called for companies and
organizations to support the development of an
information network linking policy, science, and effective crisis management plans. He will be working together with Ann Marie Kimball and the Emerging Infections Network (EINet) of APEC.