社団法人 日本航空宇宙工業会 革新航空機技術開発センター
2007 年 3 月
環境調和型航空機技術に関する調査研究 成 果 報 告 書
No.1803
ISSN 1880-3660
Blade Blended Endwallによる
タービン性能改善の研究
ま え が き
日本航空宇宙工業会は、平成 18 年度事業の一つとして、日本自転車振興会から補助金の交付 を得て、「航空機工業の競争力強化に関する調査研究」および「環境調和型航空機技術に関する 調査研究」を下表のように実施した。
研究の実施に対し、その実現と推進にご尽力賜った経済産業省ならびに日本自転車振興会の ご関係者に厚くお礼申し上げる。
平成 19 年 3 月
社団法人 日本航空宇宙工業会 革新航空機技術開発センター
平成 18 年度委託研究登録番号(報告書No.)一覧
川崎重工業㈱
富士重工業㈱
石川島播磨重工業㈱
住友精密工業㈱
川崎重工業㈱
富士重工業㈱
三菱重工業㈱
新明和工業㈱
石川島播磨重工業㈱
㈱神戸製鋼所
富士重工業㈱
㈱島津製作所 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
1801
1802
1803
1804
1805
1806
1807
1808
1809
1810
1811
機体/空力
機体/空力
推 進
機体/空力
機体/空力
機体/空力
機体/空力
機体/空力
推 進
機体/空力
機体/空力
競争力強化
競争力強化
環境調和
環境調和
環境調和
競争力強化
競争力強化
競争力強化
競争力強化
環境調和
環境調和
継続
継続
継続
継続
継続
新規
新規
新規
新規
新規
新規
キャビテーション・ピーニングの 機体部材への適用技術の研究
Vectranスティッチ複合材料の研究
Blade Blended Endwallによる タービン性能改善の研究
メタル・マトリックス複合材(MMC)の 脚部品への適用研究
フォームコアサンドイッチパネル き裂(はく離)進展抑制手法の研究
複合材配管の研究
複合材構造の製造技術高度化に 関する研究
固体酸化物形燃料電池を使用した 航空機用発電システムの研究 航空エンジン用T iディスク素材の 品質保証技術向上の研究
先進高効率防除氷システムの研究
脚や機体構造等に用いる高強度鋼の カドミウムめっき代替プロセスの研究 競争力強化
/環境調和 継続 /新規 報告書
No. 分 野 研 究 名 委 託 会 社
No.
調査研究委託会社 石川島播磨重工業 (株)
Blade Blended Endwallによる
タービン性能改善の研究
目 次
第1章 研究の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.1 研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.2 実施期間等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.2.1 実施期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.2.2 実施場所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.2.3 研究主務者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.3 実施内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.4 成果概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.4.1 数値シミュレーションの検証結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.4.2 モデル動翼設計の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 1.4.3 回転モデル試験機の設計・製作結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 1.4.4 回転試験結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 1.5 所見・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
1.5.1 数値シミュレーション検証結果について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 1.5.2 Blade Blended Endwallを適用した動翼の設計結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 1.5.3 モデル回転試験によるBlade Blended Endwallを適用した動翼の試験結果 ・・・・・・・・・・10
第2章 研究の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 2.1 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 2.2 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
2.2.1 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 2.2.2 目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 2.3 試験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
2.3.1 Blade Blended Endwallによる効率改善方法理論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 2.3.2 試験計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 2.3.3 H18年度 実施結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 2.3.4 数値シミュレーション解析の検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 2.3.5 モデル動翼の設計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 2.3.6 回転試験機の設計・製作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 2.3.7 計測内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
2.3.9 試験実施結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53 2.4 考察(フェーズ2 数値シミュレーションの検証結果)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 2.5 考察(フェーズ3 動翼回転試験への適用)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 2.6 考察(フェーズ3 動翼回転試験での実証)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64 2.7 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66
2.7.1 フェーズ2 数値シミュレーション解析の検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66 2.7.2 フェーズ3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66
第3章 問題点と今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67 3.1 問題点と今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67
添付資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69 添付資料1 Blade Blended EndwallによるCO2排出削減量の見込みついて・・・・・・・・・・・・・・・・・・70 添付資料2 静翼部品に採用したSLS製法のナイロン翼について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72
第1章 研究の概要
1.1 研究目的
本研究は石油燃料の節約によるCO2削減を目的とし、航空エンジンのタービン流路の3次元最適 設計技術(Blade Blended Endwall)の研究による性能改善でエンジン燃料消費率の改善を目指す。さ らに波及効果として、世界トップレベルの独自技術をアピールすることで、次期開発エンジンにお けるタービン部位への参入機会の優位性を確保するほか、既存エンジンの性能改善プログラムの提 案による市場拡大を目指す。
1.2 実施期間等
1.2.1 実施期間
平成18年4月17日~平成19年3月2日
1.2.2 実施場所
石川島播磨重工業株式会社 航空宇宙事業本部 技術開発センター 要素技術部
〒190-1297 東京都西多摩郡瑞穂町殿ヶ谷229 電話番号 042-568-7251 FAX番号 042-568-7247
1.2.3 研究主務者
三橋 克則(要素技術部 空力要素グループ、課員)
1.3 実施内容
以下に示す研究等を実施した。
(1) 数値シミュレーションの検証の実施
平成17年度に取得した静翼環状翼列試験のデータを用い、流路キャビティ部分の流れ場に対 して、数値シミュレーションの検証を行った。
(2) Blade Blended Endwall適用によるモデル動翼設計の実施
上記結果を基に、動翼にBlade Blended Endwall技術を適用した設計を実施し、数値シミュレ ーションにより効果を予測した。
(3) 回転モデル試験機の設計・製作
Blade Blended Endwallの効果を試験で実証するための回転モデル試験機の設計・製作を実施
した。
(4) 試験の実施
上記回転モデル試験を実施し、Blade Blended Endwall効果の確認を行った。
(3) 平成 18年度実施内容の評価と報告書作成
平成18年度の実施結果についての評価を行い、成果報告書にまとめた。
1.4 成果概要
1.4.1 数値シミュレーションの検証結果
タービン静翼出口流路面にキャビティが存在することによる流れ場への影響を確認する目的で 平成17年度に実施した静翼環状翼列試験により取得したデータを用い、数値シミュレーションコ ードの検証を実施した。平成18年度は、平成17年度に実施した検証作業を引き続き実施し、シ ミュレーション精度の向上を図った。使用している数値シミュレーションコードは自社開発の三 次元粘性解析コードで支配方程式はナビエ・ストークス方程式である。静翼出口流路面のキャビ ティの影響を計測するために実施したトラバース計測位置を図1.4.1.1に示す。試験は静翼出口流 路にキャビティが有る形態、キャビティが無い形態の2種類の形態で実施した(図 1.4.1.2)。図
1.4.1.3に数値シミュレーションモデルのイメージを示す。図1.4.1.4及び図1.4.1.5に計算結果を示
す。その結果、キャビティ内流れが翼間の静圧分布の影響を受けて周期的に変動している状況も 数値シミュレーションで捉えることができることが分かった。
供試体入口 全圧計
全温計 翼入口
全圧トラバース 計測プローブ
静翼
翼出口 全圧・流出角分布 面トラバース計測プローブ
出口ダクト インナ 出口ダクト アウタ トラバース送り装置
入口ベルマウス インナ 整流チャンバ
100mm
図1.4.1.2 平成17年度実施の静翼環状翼列試験実施形態
図1.4.1.3 数値シミュレーションモデル
キャビティ有り形態 キャビティ無し形態
静翼 静翼
圧力分布計測 圧力分布計測
静翼
キャビティ
キャビティ 流路面
【試験データ】 【数値シミュレーション結果】
図1.4.1.4 静翼出口全圧分布の比較(ハブ側キャビティあり)
【試験データ】 【数値シミュレーション結果】
図1.4.1.5 静翼出口全圧分布の比較(ハブ側キャビティなし)
0%Span 100%Span
[Pa]
0%Span 100%Span
[Pa]
1.4.2 モデル動翼設計の結果
1.4.1項で検証した数値シミュレーションコードを用いBlade Blended Endwallの考えを適用した
動翼の設計を実施した。設計に当たっては、まず従来手法を適用した動翼の設計を行い、流路キ ャビティによる動翼性能への影響を確認後(図1.4.2.2)、その影響を低減するようなBlade Blended
Endwall形状を考案し、数値シミュレーションによりその効果を確認した(図1.4.2.3)。
図1.4.2.1 動翼数値シミュレーション計算モデル例(○印:キャビティ部)
【キャビティなし流路での計算】 【キャビティあり流路での計算】
図1.4.2.2 従来設計動翼出口全圧分布
【従来動翼】 【Blade Blended Endwall適用動翼】
図1.4.2.3 Blade Blended Endwall適用による動翼出口全圧分布の変化
hub tip
hub tip
hub tip
キャビティ キャビティキャビティ
キャビティのののの存在存在存在存在によりによりによりにより2222次次次次 流
流流
流れれれれ渦渦渦渦ががが大が大大大きくなっているきくなっているきくなっているきくなっている
hub tip
キャビティ キャビティキャビティ
キャビティのののの存在存在存在存在によりによりによりにより2222次次次次 流
流流
流れれれれ渦渦渦渦ががが大が大大大きくなっているきくなっているきくなっているきくなっている
hub 従来形状 tip
従来形状 従来形状 従来形状
hub 従来形状 tip
従来形状 従来形状
従来形状 Blade Blended Endwall
hub tip
2 2 2
2次流 次流 次流れ 次流 れ れ渦 れ 渦 渦 渦が が が弱 が 弱 弱 弱くなっている くなっている くなっている くなっている Blade Blended Endwall
hub tip
2 2 2
2次流 次流 次流れ 次流 れ れ渦 れ 渦 渦 渦が が が弱 が 弱 弱 弱くなっている くなっている くなっている くなっている
1.4.3 回転モデル試験機の設計・製作結果
1.4.2項で設計したBlade Blended Endwall動翼の性能確認を目的として、回転試験を計画し、設
計および製作を実施した。モデル回転試験機の断面図を図1.4.3.1に、製作した回転試験機の外観
写真を図1.4.3.2にそれぞれ示す。
図1.4.3.1 モデル回転試験機の断面図
図1.4.3..2 回転試験機の外観写真(試験設備搭載時)
静翼静翼 静翼静翼 動翼動翼動翼動翼
動翼出口詳細 動翼出口詳細 動翼出口詳細
動翼出口詳細トラバーストラバーストラバーストラバース 計測位置 計測位置 計測位置 静翼 計測位置
静翼 静翼静翼 動翼動翼動翼動翼
動翼出口詳細 動翼出口詳細 動翼出口詳細
動翼出口詳細トラバーストラバーストラバーストラバース 計測位置 計測位置 計測位置 計測位置
1.4.4 回転試験結果
1.4.2項で数値シミュレーションにより効果を確認したBlade Blended Endwall適用動翼に関して、
その効果を回転試験で確認するために、従来設計動翼と相対比較試験を実施した。その結果を 図1.4.4.1~図1.4.4.2に示す。
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
-30 -10 10 30
流れ角[deg]
Span
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
116.2 116.7 117.2
全圧[kPa]
Span
流出角分布 周方向平均 全圧分布 周方向平均
図1.4.4.1 従来設計動翼出口分布 周方向平均値
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
-30 -10 10 30
流れ角[deg]
Span
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
116.2 116.7 117.2
全圧[kPa]
Span
流出角分布 周方向平均 全圧分布 周方向平均
図1.4.4.2 Blade Blended Endwall適用動翼出口分布 周方向平均値
1.5 所見
1.5.1 数値シミュレーション検証結果について
本検証によって、静翼出口の流路面のキャビティ有無による流れ場の違いを定性的に試験結果 と良く一致する傾向を、弊社所有の数値シミュレーションコードで捉えることができた。具体的 には、流路キャビティ内流れが静翼翼間の静圧の影響を受け周方向に周期的な分布を有し、かつ、
キャビティ内では、流れ角度と全圧が急激に変化する様子を数値計算においても捉えることがで きることを確認した。これにより、キャビティの影響を考慮した動翼の空力設計を、当該数値シ ミュレーションコードを用いて実施できる目処を得ることができた。
1.5.2 Blade Blended Endwallを適用した動翼の設計結果
1.5.1項で検証した数値シミュレーションコードを用い、まず、動翼入口のハブ側キャビティが
動翼にどのような影響を及ぼすのか解析を実施し、キャビティが動翼で発生する2次流れを助長 し、動翼性能を悪化させることが分かった。この解析で得られた流れ場を分析することで、静翼 下流に設置する動翼にBlade Blended Endwallを適用した設計を実施しその効果を把握した。その 結果、従来の設計手法による動翼では、動翼入口のキャビティにより性能が悪化したものが、Blade
Blended Endwallを適用することで動翼の性能が改善し、流出角度分布に大きな改善が得られるこ
とを解析により確認した。
1.5.3 モデル回転試験によるBlade Blended Endwallを適用した動翼の試験結果
Blade Blended Endwallによる性能改善効果を把握するために、Blade Blended Endwallを適用した 動翼と従来設計手法により設計した動翼の2種類の翼モデルを製作し、回転試験に供試すること で、両者の相対比較を実施した。その結果、1.5.2項で実施した数値シミュレーション結果のよう に、Blade Blended Endwall適用動翼の方が動翼出口の流れ角度がハブ側で大きな分布になってお り改善効果を見ることができた(図1.5.3.1)。また、回転試験で取得したトルクデータをタービン 段効率に換算すると約 0.15ポイントの効果(図1.5.3.2)となり、本研究の目標としている0.2%
の効率改善に対し、ほぼ目標を達成することができた。
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3
-90 -80 -70 -60
相対流れ角[deg]
Span
従来型動翼 Blade Blended EWC
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3
116.2 116.4 116.6 116.8 117 117.2 全圧[kPa]
Span
従来型動翼 Blade Blended EWC
【【
【【相対流相対流相対流相対流れれれ角れ角角角】】】】 【【全圧【【全圧全圧】全圧】】】
図1.5.3.1 モデル回転試験結果比較
19.4 19.6 19.8 20 20.2 20.4 20.6 20.8
1.11 1.112 1.114 1.116 1.118 1.12
圧力比(Total-Total) [-]
トルク [Nm]
従来型動翼 Blade Blended EWC
図1.5.3.2 モデル回転試験結果-トルク比較
タービン効率換算で約 0.15ポイント向上
第2章 研究の内容
2.1 緒言
近年、ビジネスのグローバル化による海外出国機会の増加、また、景気回復による海外旅行機会 の増加などによって、航空機による長距離移動の需要はますます増加している。また、欧米大陸で はそのスケールから日常の移動手段として航空機が欠かせない存在となっている。この航空機の推 力源となっているジェットエンジンはファン、圧縮機、燃焼器、タービンより構成され(図 2.1.1 参照)石油燃料を燃焼させることで大きな推力を得る機械であり、更なる移動時間短縮のため、高 性能のジェットエンジン開発が要望されている。一方で、ジェットエンジンは大量の石油燃料を消 費して推力を得る変わりに、大量のCO2を排出するため、環境保全、地球温暖化防止の面から、燃 料消費率改善によるCO2排出量削減の研究が必要であり、各構成要素のさらなる効率改善が不可欠 である。特にジェットエンジンの構成要素のうち、低圧タービンの効率向上はエンジン燃料消費率 改善に対し大きなインパクトを持つため、低圧タービンの効率向上が環境負荷改善への課題となる。
低圧タービン効率向上に対して、ジェットエンジン製造メーカ各社はこれまでに様々な研究を行い、
他社に優位性のある技術を開発し実際のジェットエンジンに適用してきた。これらの技術は大きく 分類すると3つの世代に分けることができる。第一世代の技術としては低圧タービン翼形状の二次 元的な最適化を行い、第二世代として翼に三次元形状を採用した最適化を実施し、翼形状そのもの を最適化することを実施してきた。第三世代として挙げられるのは、流路面に着目し、従来は軸対 象であった流路面に三次元形状を適用した最適化技術である(図2.1.2参照)。近年では流路面の三 次元流れ場に注目した研究が航空エンジンメーカ各社でも盛んに実施され、学会等での研究発表も 実施されている。
図2.1.1 ジェットエンジンの構成
ターボファンエンジン
低圧タービン部
ファン 圧縮機
燃焼器
高圧タービン
静翼
動翼
図2.1.2 これまでの低圧タービン効率改善技術 第一世代設計技術
2次元的翼形状
ASME 2001GT0440 ASME 2001GT0440
第ニ世代設計技術 3次元翼設計技術の適用
ASME 2001GT0436
ASME 2001GT0436 ASME 2002 GT 300337
第三世代設計技術 流路面への3次元設計の適用
2.2 目的
2.2.1 目的
本研究は石油燃料節約によるCO2削減を目的とし、ジェットエンジンの低圧タービンにおいて、
第三世代の技術である三次元流路設計に加え、キャビティの影響も考慮した最適化技術(Blade Blended Endwall)の研究による性能改善でエンジン燃料消費率の改善を目指すものである。さら にこの技術による波及効果として、世界トップレベルの独自技術をアピールすることで次期開発 エンジンおけるタービン部位への参入機会の優位性を確保する。また、本研究による性能改善効 果は既存エンジンの性能改善プログラムへも導入可能であり、防衛用エンジン、民間用エンジン への提案による市場拡大を目指す。
2.2.2 目標
本研究の目標は、低圧タービンの効率を0.2 pts向上させることで、航空エンジンの燃料節約(添 付資料1参照)を図り、CO2排出量削減に貢献するものである。
2.3 試験方法
2.3.1 Blade Blended Endwallによる効率改善方法理論
タービン翼列の流路では、発達した境界層流れが翼列に流入することにより、翼前縁から流路 に沿って渦が発生し、この渦が圧力損失の原因となっている。この流れ場の模式図を図2.3.1.1に 示す。現在各社で研究が実施されている三次元流路設計はこれらの渦を流路形状によって抑制す るもので、その例としては翼間二次流れについては翼腹面を凸形状、背面を凹形状にすることで 翼間の圧力差を低減し、流路渦の強さを弱めている。また、これらの技術は数値シミュレーショ ン技術の進歩により流路近傍の流れの予測精度が向上したことで可能となっている。弊社の所有 する三次元流路設計技術は、流路形状の最適化により渦強さを低減するもので、その一例として
図2.3.1.2に数値シミュレーションの解析結果を示す。通常の軸対象の流路で強く発生していた渦
が三次元流路を適用することにより、渦強さが低減していることが分かる。ところが実際のエン ジンの流路をみた場合、図2.3.1.3に示すように翼列入口にはエンジン構造の都合上キャビティが 存在しており、ここを通過する流れが擾乱を加えることで流れ場がよりいっそう複雑になり図
2.3.1.4のような流れ場となっている。
そこで、本研究で提案する効率改善方法は、図2.3.1.5に示すように弊社の所有する三次元流路 設計技術に、キャビティの存在による流れの変化を考慮して流路面の最適化設計を行うもので、
このような設計を実施した流路形状を「Blade Blended Endwall」と呼ぶ。
図2.3.1.1 タービン流路近傍の流れ場
図2.3.1.2 数値シミュレーション結果
翼列入口 翼列入口 翼列入口 翼列入口 壁面境界層 壁面境界層 壁面境界層
壁面境界層 流路壁面 流路壁面 流路壁面 流路壁面
流路面横断流 流路面横断流 流路面横断流 流路面横断流れ れ れ れ
翼背側 翼背側 翼背側 翼背側
(
(
(
(圧力低 圧力低 圧力低 圧力低) ) ) )
流路渦 流路渦 流路渦 流路渦 翼腹側
翼腹側 翼腹側 翼腹側
(
(
(
(圧力高 圧力高 圧力高 圧力高) ) ) ) タービン タービン タービン タービン翼 翼 翼 翼
従来形状 従来形状 従来形状
従来形状 3 3 3 3次元流路形状 次元流路形状 次元流路形状 次元流路形状 流路渦強 流路渦強
流路渦強 流路渦強さ さ さ低減 さ 低減 低減 低減
図2.3.1.3 エンジン内のキャビティ形状
図2.3.1.4 エンジン流路近傍の流れ(キャビティ形状考慮)
流路面のキャビティ
翼列入口 翼列入口 翼列入口 翼列入口 壁面境界層 壁面境界層 壁面境界層 壁面境界層
流路壁面 流路壁面 流路壁面 流路壁面
流路面横断流 流路面横断流 流路面横断流 流路面横断流れ れ れ れ
翼背側 翼背側 翼背側 翼背側
( ( (
(圧力低 圧力低 圧力低 圧力低) ) ) )
流路渦 流路渦 流路渦 流路渦 翼腹側 翼腹側
翼腹側 翼腹側
(
(
(
(圧力高 圧力高 圧力高 圧力高) ) ) ) タービン タービン タービン タービン翼 翼 翼 翼
キャビティ キャビティ キャビティ キャビティ渦 渦 渦 渦
キャビティ キャビティ キャビティ
キャビティによる による による による 擾乱
擾乱
擾乱
擾乱流 流 流 流れ れ れ れ
図2.3.1.5 Blade Blended Endwallによる効率改善理論
弊社所有特許形状を用いた 3次元流路設計技術
流路面のキャビティ
タービン翼
最適3次元通路形状
“Blade Blended Endwall”
翼と流路面の一体化
キャビティの存在による流れ
変化を考慮した設計技術
2.3.2 試験計画
本研究は以下に示すよう3段階での計画を立案し、平成18年度に全て完了した。
フェーズフェーズ
フェーズフェーズ111 1 静翼翼列静翼翼列モデル静翼翼列静翼翼列モデルモデルモデル試験実施試験実施試験実施試験実施 ((((HHH17H171717年度年度年度年度))))
タービン翼の設計時では図2.3.2.1 のCase-2 のような理想的な流路形状を想定して設計計算を 実施しているが、実機では構造上の都合から Case-1 のようなキャビティが存在している。そこ で、静翼出口の流路にキャビティの有る形態と無い形態の2種類のタービン静翼環状翼列モデル の設計、製作及び試験を実施し、キャビティの存在による流れ場への影響を計測により確認した。
フェーズ フェーズ フェーズ
フェーズ222 2 数値数値シミュレーション数値数値シミュレーションシミュレーションシミュレーション解析解析解析解析ののの検証の検証検証検証 ((((HHHH17171717年度年度~H年度年度~H~H~H18181818年度前半年度前半)年度前半年度前半)))
フェーズ3でキャビティの存在を考慮した設計を数値シミュレーションを用いて実施するため、
フェーズ1で取得したデータに基づき、自社開発の数値シミュレーションコード(三次元粘性解 析コード・支配方程式はナビエ・ストークス方程式)の検証を実施した。
フェーズフェーズ
フェーズフェーズ333 3 動翼回転動翼回転モデル動翼回転動翼回転モデルモデルモデル試験試験試験試験へのへのへのへの適用適用適用と適用ととと実証実証実証実証 ((((HHH18H181818年度年度年度年度))))
数値シミュレーション解析を用い、回転動翼へBlade Blended Endwallを適用した設計を行った。
次に図2.3.2.2に示す動翼モデルの回転試験(従来設計と新規設計の2形態)により性能向上の確
認を実施するとともに、数値シミュレーション結果との整合性も確認した。
図2.3.2.1 フェーズ1 静翼環状試験 試験計画 静翼
Case Case Case Case- -- -1 11 1
静翼
Case Case Case Case- -- -2 22 2
キャビティ有り
静翼-動翼のキャビティ形 状を模擬(実機相当)
キャビティ無し
翼設計時の解析で使用し ている理想的な流路形状
図2.3.2.2 フェーズ3 動翼回転試験 試験計画
静翼 動翼
従来設計形状とBlade Blended
Endwallを適用した形状の2種類
の動翼を製作して試験を実施する
2.3.3 H18年度 実施結果
H18年度の詳細実施結果一覧を表2.3.3.1に示す。
表2.3.3.1 平成18年度実施結果一覧
444
4月月月月 5555月月月月 6666月月月月 777月7月月月 888月8月月月 9999月月月月 10101010月月月月 11111111月月月月 12121212月月月月 111月1月月月 222月2月月月 333月3月月月 フフ
フフェェェェ
ーーーー
ズ ズ ズ ズ 222 2
数値数値
数値数値シミュレーションシミュレーションシミュレーション解析シミュレーション解析解析の解析ののの検証検証検証検証
モデル モデル モデル
モデル動翼動翼動翼動翼ののの設計の設計設計設計
---- 従来動翼従来動翼従来動翼従来動翼
---- Blade Blended EndwallBlade Blended EndwallBlade Blended Endwall動翼Blade Blended Endwall動翼動翼動翼 回転
回転 回転
回転モデルモデルモデル試験機モデル試験機試験機の試験機ののの設計設計設計・設計・・・製作製作製作製作 回転
回転 回転
回転モデルモデルモデル試験モデル試験試験の試験ののの実施実施実施実施 試験試験
試験試験データデータデータのデータのの評価及の評価及評価及び評価及びび報告書作成び報告書作成報告書作成報告書作成 フ
フ フフェェェェ
ーーーー
ズズ ズズ 3 33 3
平成平成 平成平成18181818年度年度年度年度
2.3.4 数値シミュレーション解析の検証
(1) 平成 17年度に実施した静翼環状翼列試験データを用いた検証
タービン静翼出口流路面にキャビティが存在することによる流れ場への影響を確認する目的 で平成17年度に実施した静翼環状翼列試験により取得したデータを用い、数値シミュレーショ ンコードの検証を実施した。平成18年度は、平成17年度に実施した検証作業をベースに、よ り試験実施条件に合わせるべく、静翼出口チップ側にも流路キャビティを模擬した形状での検 証を実施し、シミュレーション精度の向上を図った。使用している数値シミュレーションコー ドは自社開発の三次元粘性解析コードで、支配方程式はナビエ・ストークス方程式である。
静翼出口流路面のキャビティの影響を計測するために実施したトラバース計測位置を
図2.3.4.1に示す。試験は静翼出口ハブ側流路にキャビティが有る形態、キャビティが無い形態
の2種類の形態で実施した(図2.3.4.2)。図2.3.4.3に数値シミュレーションモデルのイメージを
示す。図2.3.4.4~図2.3.4.7に計算結果を示す。その結果、キャビティ内流れが静翼出口におけ
る周方向翼間の静圧分布の影響を受けて周期的に変動している定性的な状況を数値シミュレー ションで捉えることができ、またキャビティ内で全圧と流れ角度が急激に変化している定性的 な様子も捉えることが分かった。これにより、当該数値シミュレーションコードは流路キャビ ティの影響を定性的に捉えることが可能と判断でき、本研究の目的である流路キャビティの影 響を考慮した動翼設計手段として目処を得ることができた。
図2.3.4.1 静翼環状翼列試験装置とトラバース計測位置
図2.3.4.2 平成17年度実施の静翼環状翼列試験実施形態
キャビティ有り形態 キャビティ無し形態
静翼 静翼
圧 力 分 布 計 測 圧 力 分 布 計 測
供試体入口 全圧計
全温計 翼入口
全圧トラバース 計測プローブ
静翼
翼出口 全圧・流出角分布 面トラバース計測プローブ
出口ダクト インナ 出口ダクト アウタ トラバース送り装置
入口ベルマウス インナ 整流チャンバ
100mm
図2.3.4.3 数値シミュレーションモデル
静翼
キャビティ
キャビティ 流路面
0%Span 100%Span
[Pa]
【試験データ】 【数値シミュレーション結果】
図2.3.4.4 静翼出口全圧分布の比較(ハブ側キャビティあり)
0%Span 100%Span
[Pa]
【試験データ】 【数値シミュレーション結果】
図2.3.4.5 静翼出口全圧分布の比較(ハブ側キャビティなし)
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 1.1
40 50 60 70 80 90
流れ角[deg]
Span
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 1.1
40 50 60 70 80 90
流れ角[deg]
Span
【試験データ】 【数値シミュレーション結果】
図2.3.4.6 静翼出口流れ角度分布の比較(ハブ側キャビティあり)
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 1.1
40 50 60 70 80 90
流れ角[deg]
Span
-0.1 0.1 0.3 0.5 0.7 0.9 1.1
40 50 60 70 80 90
流れ角[deg]
Span
【試験データ】 【数値シミュレーション結果】
図2.3.4.7 静翼出口流れ角度分布の比較(ハブ側キャビティなし)
2.3.5 モデル動翼の設計
(1) 従来設計手法による動翼設計と動翼入口ハブ側キャビティの性能への影響
従来設計手法で設計した動翼の翼モデルを図2.3.5.1に示す。まず、ハブ側流路キャビティの 性能に及ぼす影響を調べるために、従来設計動翼をモデルとして、キャビティのない滑らかな 理想的な流路面(図2.3.5.2)での数値シミュレーション解析と、図2.3.5.3に示すような動翼前 後にキャビティを有する流路形状での数値シミュレーション解析を実施し、流路キャビティの 影響を調べた。結果を図2.3.5.4 ~ 図2.3.5.5に示す。
その結果、ハブ側キャビティが存在するために動翼で発生する二次流れが助長され、動翼出 口ではキャビティの存在がすると流路中央(ミッドスパン)側に流れがシフトし、流出角度の 分布も大きく付くことがわかった。
図2.3.5.1 従来設計動翼モデル
図2.3.5.2 動翼数値シミュレーション計算モデル例(滑らか流路面)
図2.3.5.3 動翼数値シミュレーション計算モデル例(○印:キャビティ部)
【キャビティなし流路での計算】 【キャビティあり流路での計算】
図2.3.5.4 従来設計動翼出口全圧分布
Ralative Flow Angle@T/E Trv
0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 0.20
-70 -65 -60 -55 -50
Flow Angle [deg]
Span from Hub
キャビティ考慮なし キャビティ考慮あり
_
図2.3.5.5 従来設計動翼出口流れ角分布
hub tip
hub tip
hub tip
キャビティ キャビティ キャビティ
キャビティののの存在の存在存在により存在によりによりにより2222次次次次 流流
流流れれれれ渦渦渦が渦ががが大大大大きくなっているきくなっているきくなっているきくなっている
hub tip
キャビティ キャビティ キャビティ
キャビティののの存在の存在存在により存在によりによりにより2222次次次次 流流
流流れれれれ渦渦渦が渦ががが大大大大きくなっているきくなっているきくなっているきくなっている
Loss Coefficient@T/E Trv
0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 0.20
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25
Loss Coefficient
Span from Hub
キャビティ考慮なし キャビティ考慮あり
_
図2.3.5.6 従来設計動翼損失係数分布
(2) Blade Blended Endwall適用動翼設計結果
従来設計動翼の数値シミュレーション結果から得られた動翼入口部分の流れ状況を詳細に検 討し、キャビティから動翼ハブ面への流れ込みがスムーズになる形状をスタディし、図 2.3.5.7 に示すようなBlade Blended Endwall動翼を設計した。この動翼をキャビティ付きの流路に適用 した解析結果を図2.3.5.8および図2.3.5.9に示す。図から、Blade Blended Endwall適用により、
一旦流路中央寄りにシフトした流れがハブ側に抑え込まれるようになっていることがわかる。
また、このため動翼で生じる二次流れ強さも低減されていることがわかる(図2.3.5.10)。
図2.3.5.7 Blade Blended Endwall動翼モデル
Ralative Flow Angle@T/E Trv
0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 0.20
-70 -65 -60 -55 -50
Flow Angle [deg]
Span from Hub
従来設計動翼 Blade Blended Endwall
_ 図2.3.5.8 Blade Blended Endwall動翼出口流れ角分布
Loss Coefficient@T/E Trv
0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 0.20
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25
Loss Coefficient
Span from Hub
従来設計動翼 Blade Blended Endwall
_ 図2.3.5.9 Blade Blended Endwall動翼損失係数角分布
hub 従来形状 tip
従来形状 従来形状 従来形状
hub 従来形状 tip
従来形状 従来形状 従来形状
Blade Blended Endwall
hub tip
2 2 2
2次流 次流 次流 次流れ れ れ渦 れ 渦 渦が 渦 が が弱 が 弱 弱 弱くなっている くなっている くなっている くなっている Blade Blended Endwall
hub tip
2 2 2
2次流 次流 次流 次流れ れ れ渦 れ 渦 渦が 渦 が が弱 が 弱 弱 弱くなっている くなっている くなっている くなっている
【従来動翼】 【Blade Blended Endwall適用動翼】
図2.3.5.10 Blade Blended Endwall動翼出口全圧分布
2.3.6 回転試験機の設計・製作 (1) 回転試験機概要
本研究での回転試験機の概要及び主な構成品を図2.3.6.1に示す。
図2.3.6.1 回転試験機概要及び構成部品
*印はH18年度製作部品 それ以外は弊社社有品及 びH17年度製作部品
供試体入口 全圧計 全温計
翼入口
全圧トラバース 計測プローブ
翼出口
全圧・流出角分布 面トラバース計測プローブ
供試体出口 全圧計*
静翼
動翼*
出 口 ダ ク ト アウタ*
出口ダクト インナ*
(2) 供試体入口全温計・全圧計
供試体入口にて空気源から導かれた空気の全温度及び全圧を計測した。H17年度製作部品。
(3) 翼入口 全圧トラバース計測プローブ
翼入口の全圧分布を計測するためのプローブ。弊社既存のトラバース送り装置に接続して半 径方向に移動しながら全圧の計測を実施した。H17年度製作部品
(4) 翼出口 全圧トラバース計測プローブ
翼出口の全圧分布及び流出角を算出するための3孔プローブ。弊社既存のトラバース送り装 置に接続して半径及び周方に移動しながら計測を実施した。H17年度製作部品。
(5) 静翼
静翼は動翼とともに設計を実施したもので、その構成枚数は42枚である。本試験ではコスト、
製作納期の面からSLS(Selective Laser Sintering)法による製作を採用し、素材は翼にかかる荷 重を考慮してナイロン素材であるDuraForm(添付資料2参照)を使用した。翼を供試体本体に 取り付ける際、その接合面での強度が問題となるため、インナ、アウタバンドを補強するため に、金属製のリングを介して供試体本体にボルト締めする構造をとった。H17年度製作部品。
(6) 動翼
動翼は、従来設計技術を適用したものと、Blade Blended EWCを適用したものの二通りを製 作した。その構成枚数は 56 枚である。本試験では、静翼と同様にコスト、製作納期の面から SLS(Selective Laser Sintering)法による製作を採用し、素材は翼にかかる荷重を考慮してカー ボンベースのナイロン素材である WindFormXT(添付資料2参照)を使用した。翼製品の写真
を図2.3.6.2に示す。本年度製作部品。
図2.6.6.2 動翼(四連翼一セクタ)
図2.3.6.3 動翼Sub Assy状態
(7) 出口ダクトインナ
回転試験に対応できるように動翼後のキャビティ形状を持った出口ダクトインナを製作した。
図2.3.6.4に製品の写真を示す。本年度製作部品。
(8) 出口ダクトアウタ
本部品は流路のアウタ側を形成するだけでなく、出口ダクトインナを支える構造物として、
リアフレームの役目を果たす。図2.3.6.4に製品の写真を示す。本年度製作部品。
(9) 供試体出口全圧計
供試体出口にて静翼及び動翼を通過してきた全圧を計測した。図2.3.6.4に製品の写真を示す。
本年度製作部品。
図2.3.6.4 出口ダクト
出口ダクトインナ 出口ダクトアウタ
出口全圧計
(9) 供試体組立
供試体の組立時の状況として、入口から静翼までを組立てた時の写真を図2.3.6.5に示す。
図2.3.6.5 供試体組立状況
(10) 試験装置搭載
組立てた供試体を弊社タービン試験設備に搭載した写真を図2.3.6.6 ~ 図2.3.6.7に示す。
図2.3.6.6 供試体搭載状況 (1)
図2.3.6.7 供試体搭載状況 (2)
空 気 の 流 れ
空 気 の 流 れ
2.3.7 計測内容 (1) 計測概要
本試験での計測の概要を図2.3.7.1に示す。試験条件の設定及び動翼出口流れ場の把握のため 以下の(2)~(6)の計測を実施した。
(2) 供試体入口全圧・入口温度
タービン段に流入する空気の圧力及び温度を計測した。項目 (5) の翼出口静圧とから圧力比を 算出した。計測器を図2.3.7.2 ~ 図2.3.7.5に示す。
(3) タービン段入口全圧トラバース計測
タービン段入口の全圧分布を計測した。流れ角は0°であるため二次元流れとみなし、トラ バース計測は半径方向のみ実施した。項目 (4) の翼出口全圧分布からタービン段の圧力損失を算 出した。プローブを図2.3.7.6に示す。
(4) 動翼出口全圧・流出角トラバース計測
動翼出口で3孔プローブを静翼1枚分の範囲を半径方向・周方向にトラバース計測した。
計測としては、プローブの三箇所の圧力を計測し、事前に実施したプローブの校正試験の結果 から、算出された校正データに基づき、真の全圧、流出角を算出した。プローブを図2.3.7.7に 示す。
(5) 静翼出口静圧
静翼出口の翼中間位置で壁圧を計測した。周方向の全圧のばらつきを排除するため、周方向 位置3箇所で計測した。計測は静圧チューブによって行い、計測ライン自体が圧力損失を発生 しないように、翼を中空に加工し、その中に計測ラインを通す構造とした。翼部での計測ライ ンの写真を図2.3.7.8~図2.3.7.10に示す。
(6) 動翼出口静圧
動翼出口の翼中間位置で壁圧を計測した。周方向の全圧のばらつきを排除するため、周方向 位置4箇所で計測した。計測は静圧チューブによって行った。
(7) 供試体出口全圧
供試体出口で流出する空気の全圧を計測した。計測には固定計器を用い、周方向一カ所に付
(8) その他
その他の計測として、弊社既存設備にて、主流空気流量、主流空気温度、大気圧、大気温度 を計測した。
図2.3.7.1 計測概要
供試体入口 全圧計 全温計
翼入口
全圧トラバース 計測
翼出口
全圧・流出角分布 面トラバース計測
供試体出口 全圧計
動翼出口静圧計測 インナ
動翼出口静圧計測 アウタ
静翼出口静圧計測 アウタ
静翼出口静圧計測 インナ
図2.3.7.2 供試体入口 全温計
図2.3.7.3 供試体入口 全温計(計測部 詳細)
図2.3.7.4 供試体入口 全圧計
図2.3.7.5 供試体入口 全圧計(計測部 詳細)
図2.3.7.6 翼入口 全圧トラバース計測プローブ
図2.3.7.7 翼出口 全圧・流出角分布 面トラバース計測プローブ
図2.3.7.8 静翼及び補強リング全体図
図2.3.7.9 静翼及び補強リング 翼部拡大図
図2.3.5.4 静翼出口静圧計測位置
図2.3.7.10 静翼出口静圧計測位置
静圧計測位置
静圧計測ラインは この翼の中を通した
静圧計測位置
2.3.8 試験実施内容
(1) 試験1 タービン段入口全圧分布計測試験
静翼入口の全圧分布を把握するために静翼入口で全圧トラバース計測を実施した。主流条件
を表2.3.8.1、試験の実施フローを図2.3.8.1、トラバース計測ピッチを図2.3.8.2に示す。
表2.3.8.1 試験条件
図2.3.8.1 試験実施フロー
入口温度 約310[K]
入口圧力 約 116[kPa]
入口流量 約4.9[kg/s]
回転数 約4160[rpm]
圧力比 主流条件設定
スパン方向(Z)移動 全点計測
計測
全点計測
トラバース位置 チェック
終了
最終位置
スパン初期位置設定
図2.3.8.2 タービン段入口トラバース トラバース計測ピッチ
NO. スパン[%]
1 2
2 4
3 6
4 10
5 20
6 50
7 80
8 90
9 94
10 96
11 98
0%
100%
(2) 試験2 従来設計動翼出口全圧分布計測試験
従来設計動翼の流路キャビティによる性能への影響を把握するため、動翼出口全圧分布及び 流出角についてトラバース計測を実施した。主流条件を表2.3.8.2、試験の実施フローを図2.3.8.3、
トラバース計測ピッチを図2.3.8.4に示す。
表2.3.8.2 試験条件
図2.3.8.3 試験実施フロー
入口温度 約310 [K]
入口圧力 約116 [kPa]
入口流量 約4.9 [kg/s]
回転数 約4160 [rpm]
圧力比 チェック 主流条件設定
周方向(R)移動 全点計測
計測
全点計測 トラバース位置
チェック
終了
周方向最終位置 スパン方向位置設定
ヨーメーター角度設定 スパン位置初期設定
図2.3.8.4 従来動翼出口トラバース試験 トラバース計測ピッチ
No. スパン[%]
1 2.5
2 5.0
3 7.5
4 10.0 5 15.0 6 20.0 7 40.0 8 60.0 9 80.0 10 90.0 11 92.5 12 95.0 13 97.5
(3) 試験3 Blade Blended Endwall適用動翼出口全圧分布計測試験
Blade Blended Endwallを適用した動翼の性能確認のために、動翼出口全圧分布及び流出角に
ついてトラバース計測を実施した。主流条件を表 2.3.8.3、試験の実施フローを図 2.3.8.5、トラ バース計測ピッチを図2.3.8.6に示す。
表2.3.8.3 試験条件
図2.3.8.5 試験実施フロー
入口温度 約310 [K]
入口圧力 約116 [kPa]
入口流量 約4.9 [kg/s]
回転数 約4160 [rpm]
圧力比 チェック 主流条件設定
周方向(R)移動 全点計測
計測
全点計測 トラバース位置
チェック
終了
周方向最終位置 スパン方向位置設定
ヨーメーター角度設定 スパン位置初期設定
図2.3.8.6 Blade Blended Endwall適用動翼出口トラバース試験 トラバース計測ピッチ
No. スパン[%]
1 2.5
2 5.0
3 7.5
4 10.0 5 15.0 6 20.0 7 40.0 8 60.0 9 80.0 10 90.0 11 92.5 12 95.0 13 97.5
2.3.9 試験実施結果
(1) 試験1 タービン段入口全圧分布計測試験
タービン段入口全圧トラバース計測の結果を図2.3.9.1に示す。供試体入口には大きな圧力分 布、境界層はみられなかった。
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
113 115 117 119 121 123
全圧 [kPa]
Span
_
図2.3.9.1 試験1 静翼入口全圧分布
(2) 試験2 従来設計動翼出口全圧分布計測試験
従来設計の動翼出口での全圧及び流出角分布をトラバース計測した結果を図 2.3.9.2~図
2.3.9.4 に示す。計測した3孔プローブの圧力値に対し、校正カーブから全圧補正、流出角の算
出を実施した。図2.3.9.4に全圧及び流出角の周方向平均をしたものを示す。
(3) 試験3 Blade Blended Endwall適用動翼出口全圧分布計測試験
Blade Blended Endwallを適用した動翼出口において全圧及び流出角分布をトラバース計測し
た結果を図2.3.9.5 ~ 図2.3.9.6に示す。計測した3孔プローブの圧力値に対し、校正カーブから 全圧補正、流出角の算出を実施した。図2.3.9.7に全圧及び流出角の周方向平均をしたものを示 す。
-30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
-4 -2 0 2 4
周方向位置[deg]
流れ角[deg]
Span:97.5%
Span:95.0%
Span:92.5%
Span:90.0%
Span:80.0%
Span:60.0%
Span:40%
Span:20.0%
Span:15.0%
Span:10.0%
Span:7.5%
Span:5.0%
Span:2.5%
図2.3.9.2 試験2 従来設計動翼流出角分布
116.2 116.3 116.4 116.5 116.6 116.7 116.8 116.9 117
-4 -2 0 2 4
周方向位置[deg]
全圧[kPa]
Span:97.5%
Span:95.0%
Span:92.5%
Span:90.0%
Span:80.0%
Span:60.0%
Span:40%
Span:20.0%
Span:15.0%
Span:10.0%
Span:7.5%
Span:5.0%
Span:2.5%
図2.3.9.3 試験2 従来設計動翼出口全圧分布
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
-30 -10 10 30
流れ角[deg]
Span
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
116.2 116.7 117.2
全圧[kPa]
Span
流出角分布 周方向平均 全圧分布 周方向平均
図2.3.9.4 試験2 従来設計動翼出口分布 周方向平均値
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25
-4 -2 0 2 4
周方向位置[deg]
流れ角[deg]
Span:97.5%
Span:95.0%
Span:92.5%
Span:90.0%
Span:80.0%
Span:60.0%
Span:40%
Span:20.0%
Span:15.0%
Span:10.0%
Span:7.5%
Span:5.0%
Span:2.5%
図2.3.9.5 試験3 Blade Blended Endwall適用動翼出口流出角分布