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初 心 者 向 け字 幕 翻 訳 ワークショップ—実 践 報 告 A Report on a Subtitle Translation Workshop for Beginners

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初 心 者 向 け字 幕 翻 訳 ワークショップ—実 践 報 告

A Report on a Subtitle Translation Workshop for Beginners

小 倉 峰 子 Mineko Ogura

(フリーランス通 訳 者 ) (Freelance interpreter) Abstract

The main purpose of this paper is to report on a translation workshop on film subtitling. The workshop held by the author was targeted for beginners to acquire not only translation skills but also to experience the technical processes using a subtitle editing tool, Subtitle Workshop. T he paper discusses the problems that the beginners encounter ed during the technical processes and the common mistakes often seen in their translation processes. Hence, the paper describes the crucial points when teaching subtitle translation to beginners .

はじめに

本 稿 は大 学 生 ・院 生 ・ 社 会 人 を対 象 にした、初 心 者 向 け 字 幕 翻 訳 ワークショップにつ いての実 践 報 告 である。本 ワークショップは、筆 者 が自 身 の修 士 論 文 である「ドキュメンタ リー映 画 First Person Plural (Directed by Deann Borshay Liem)字 幕 翻 訳 プロジェクト」

での経 験 を 基 に、実 践 的 指 導 を行 ったものである。 修 士 論 文 では、前 述 の映 画 に字 幕 翻 訳 を完 成 させ、字 幕 作 成 に必 要 なソフトの操 作 や 手 順 を述 べながら、各 プロセスで直 面 した 問 題 点 を考 察 しま とめている。 本 稿 では、筆 者 が培 った 字 幕 作 成 のノウハウを生 かし、指 導 しながら、学 習 者 が直 面 した問 題 点 を指 摘 、考 察 することで、指 導 上 の工 夫 や問 題 点 を振 り返 り、今 後 指 導 をする上 での 改 善 点 をまとめることにする。またこの報 告 に含 まれる実 践 上 の問 題 点 を明 確 にすることで 、今 後 、字 幕 翻 訳 を語 学 教 育 の一 環 と して取 り入 れたいと考 える指 導 者 において、参 考 の一 助 となることを期 待 したい。

1.活 動 概 要

本 ワークショップは筆 者 が修 士 論 文 の翻 訳 プロジェクトで First Person Plural の日 本 語 字 幕 を作 成 した後 、その続 編 であるIn the Matter of Cha Jung Hee (全 編 62分)につ いても字 幕 作 成 を監 督 から依 頼 されたことから始 まった。 参 加 者 は、協 力 を申 し出 た 大 学 生(アメリカ人 留 学 生 1 名 を含 む 2 年 生 から 4 年 生 の 7 名)、社 会 人 (2 名 )、大 学 院 生 (2 名 )、大 学 院 聴 講 生 (1 名 )の計 12 名 である。参 加 者 はほぼ全 員 字 幕 初 心 者 で、

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語 学 力 における知 識 やバックグランドも異 なる 。筆 者 に加 え、字 幕 作 成 経 験 のあるメンバ ー1 名 が リー ダ ー と なり 、 事 前 準 備 や 指 導 、 課 題 のと りま とめ を行 った 。ワ ーク ショ ップ は 主 に月 1 回 90 分 で、2015 年 5 月 より開 始 し、2016 年 4 月 の字 幕 翻 訳 完 成 試 写 会 を 目 標 として作 業 を行 った。

2.目 的

本 ワークショップでは、字 幕 翻 訳 に特 有 の要 素 だけに留 まらず、学 習 者 には、機 械 操 作 も含 めた字 幕 作 成 の技 術 的 プロセスにも参 加 してもらうことで、体 験 的 に 字 幕 翻 訳 の プロセスを習 得 してもらうことを目 的 とした。また技 術 的 プロセスから字 幕 作 りに 参 加 する ことで、完 成 後 に作 品 を作 り上 げたという達 成 感 を学 習 者 に体 感 してもらい、個 人 でも字 幕 作 成 が でき る よ うに な る こと を 目 標 に 掲 げた 。 本 ワ ーク ショ ッ プ は履 修 科 目 と しての 位 置 付 けではないため、気 軽 に参 加 しながら、学 部 生 にとっては、院 生 をはじめ翻 訳 上 級 者 と共 に学 ぶ機 会 でもあり、大 学 のクラスでは味 わうことのできない環 境 で、翻 訳 を 楽 しく 学 べる場 となるよう心 がけている。また学 習 者 には、字 幕 翻 訳 を通 して、語 学 力 だけでは なく、作 品 のもつメッセージや異 文 化 を理 解 し、翻 訳 方 略 を身 につけることでコミュニケー ション能 力 を養 うワークショップとなることを期 待 したい。

さらに筆 者 にとっては、修 士 論 文 の字 幕 翻 訳 プロジェクトで習 得 した字 幕 の技 術 的 プ ロセ スを、本 作 品 で 実 践 応 用 し 、指 導 の 立 場 か ら 新 た に 見 え る 問 題 点 を指 摘 し、 改 善 することを目 的 とする。本 稿 が、字 幕 翻 訳 の 指 導 を視 野 に入 れている指 導 者 へのきっか けとなり得 ることを期 待 したい。

3.指 導 計 画

トランスクリプトを24 のシーンに分 割 し、学 習 者 12 名 が映 画 の前 半 および後 半 で、そ れぞれ1 箇 所 ずつ計 2 回 担 当 できるように割 り当 てた。作 業 は個 人 作 業 を主 とするため、

筆 者 が 音 声 動 画 を 準 備 し配 布 し てい る 。 学 習 者 は各 自 、 次 の 活 動 日 ま で に 課 題 を 提 出 する形 で、計 画 的 に進 める。翻 訳 作 業 については、映 画 の前 半 と後 半 で区 切 り、それ ぞれの 終 わ りに 個 人 作 業 した ファ イルを 回 収 し 、一 つにま とめ ている 。 具 体 的 な授 業 計 画 は表 1に示 す通 りである。字 幕 作 成 ソフトはSubtitle Workshop(SWS)を使 用 し、字 幕 ファイルはsrt 形 式 を用 いる。また前 編 の First Person Plural と固 有 名 詞 (綴 り)や語 彙 を統 一 するために、筆 者 が作 成 したグロサリーを配 布 し、 初 出 の用 語 も 随 時 追 加 するこ とで、学 習 者 が情 報 を共 有 できるように指 導 している。

表 1 指 導 計 画

日 程 内 容 次 回 までの課 題

第 1 回 5/23/2015 字 幕 について

First Person Plural の作 品 紹 介 In the Matter of Cha Jung Hee

作 品 冒 頭 の ハコ割 り 演 習

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上 映 会

第 2 回 7/4/2015 字 幕 のルール

担 当 箇 所 の分 担

担 当 箇 所 の ハ コ 割 り を 完 成 さ せ 、 素 訳 を す る。

SWS を ダ ウ ン ロ ー ド す る

第 3 回 8/8/2015 ハ コ 割 り お よ び 素 訳 に 関 す る 疑 問 点 をディスカッション

ハコ割 りの変 更 素 訳 の見 直 し

第 4 回 9/5/2015 学 習 者 のハコ割 りで、筆 者 がスポッ

ティングしたものを上 映 ハコ割 りの比 較

スポッティングの予 習

第 5 回 10/12/2015 初 めてのスポッティング

(大 学 の CA LL教 室)

担 当 箇 所 の ス ポ ッ テ ィ ングを精 緻 化 する

第 6 回 11/21/2015 字 幕 のルール 字 幕 のルールを復 習

第 7 回 12/3/2015 スポッティング修 正 前 半 の字 幕 翻 訳

第 8 回 1/23/2016 前 半 の字 幕 上 映

ディスカッション

前 半 の字 幕 修 正 後 半 の字 幕 翻 訳

第 9 回 2/27/2016 後 半 の字 幕 上 映

ディスカッション

後 半 の字 幕 修 正

第 10 回 3/26/2016 字 幕 最 終 調 整 字 幕 最 終 修 正

第 11 回 2016年 4月 中 旬

完 成 字 幕 の上 映 会

4.字 幕 作 成 のルール

以 下 に 示 す ルー ルや 技 法 は 、筆 者 の 修 士 論 文 「 ドキ ュ メンタリー 映 画 First Person Plural (Directed by Deann Borshay) 字 幕 翻 訳 プロジェクト」より、一 部 を抜 粋 ・改 稿 し たものである(小 倉 2014, pp.7-9)。字 幕 のルールは、短 時 間 で観 客 が効 率 的 に 読 める ように決 め られてお り、 字 幕 作 成 者 はルー ルに則 り、翻 訳 をすることが 求 められる 。学 習 者 は、以 下 のルールを守 り、多 くの制 約 の 中 で 翻 訳 を強 い られること で 、翻 訳 方 略 を見 出 す 鍛 錬 と な る で あ ろ う 。 以 下 の ル ー ル お よ び 字 幕 の 技 法 は 岡 枝,1988; 岡 枝,1991;

染 谷, 2013; 染 谷, 2014; 太 田,2007; 太 田,2013a; 太 田, 2013b から抽 出 した。

 1秒 4 文 字 (岡 枝 1988, p.18)

 横 字 幕 は、1 行 の字 数 は 12~13 文 字 、最 大 行 数 は 2行 とする(染 谷 2013, p.1)。

これ以 上 、文 字 を入 れることを「画 面 を食 う」という(岡 枝 1991, p87)。

 句 読 点 は入 れ ない 。句 点 は全 角 スペ ース、読 点 は半 角 スペ ースとする 。スペー スは 字 数 には数 えないが、物 理 的 に場 所 をとるので「字 幕 幅 」としてカウントに入 れる(染

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谷 2013, p.1)。字 幕 を読 みやすくするため、例 が示 すように適 宜 半 角 スペースを入 れてもよい。

(例 )相 当 無 理 したようだ→相 当 無 理 したようだ

 1文 字 としてカウントするもの(染 谷 2013, p.1):

小 さい「っ」「ゥ」など(例 )アルファベット→7 文 字 となる。

音 引 き(ー)(例 )デニース→4 文 字 となる。

 1 文 字 としてカウントしないもの(染 谷 2013, p.1):

「!」「?」「・」(中 黒 )「…」(3 点 リーダー)「―」(ダーシ:次 の字 幕 に続 くことを意 味 する)

ただし、これらも字 幕 幅 としてはカウントする。

 数 字 :1 ケタは全 角 、2 ケタ以 上 は半 角 (染 谷 2013, p.1)(例 )6月→2 文 字 となる。

1956 年→3 文 字 となる。

 字 幕 が 1 枚 に 収 ま ら な い 場 合 : 長 い セ リ フ を 「2 つ に 割 る 」 と 言 う ( 岡 枝 1991, pp.287-288)。「―」(ダーシ)を文 末 に入 れることで、字 幕 が次 に続 いていることを意 味 す る 。た だ し 明 ら か に つ なが っ てい る こ と が わ かる 場 合 は 入 れ な く て も よ い ( 染 谷 2013, p.1)。

(例 )最 初 に会 ったとき―

(次 の字 幕 :幼 いあなたは硬 い表 情 をしていた)

 イタリック 体 の使 用 : 音 声 の人 物 が画 面 に 出 てい ない 場 合 で、 モノ ローグ 、ナレータ ー、テレビの声 、電 話 の相 手 の声 、看 板 など(太 田 2013a, p.30)

 1枚 の字 幕 に2 人 の会 話 がある場 合 、「‐」(ハイフン)で表 示 する(染 谷 2013, p.1)

(例 )

 外 国 語 ( 英 語 以 外 ) の セ リ フ: 通 常 は 山 括 弧 に 入 れ る ( 太 田 2013b, p98) ( た だ し Subtitle Workshopで、山 括 弧 を使 用 すると、GOM Playerなどのメディアプレーヤー で映 写 した場 合 、字 幕 が表 示 されなくなるので本 活 動 では使 用 しない)。

 放 送 禁 止 用 語 (差 別 語 ・不 快 語 )は使 用 しない(岡 枝 1988, pp.32-33)。該 当 する かどうかは、インターネットで検 索 できる。

 常 用 漢 字 の使 用 :できるだけ読 みやすい漢 字 を使 用 する(太 田 2013a, pp.26-27)。

インターネットの常 用 漢 字 チェッカーなどを利 用 する。

 一 般 的 には字 幕 は左 寄 せ(Subtitle Workshopは中 央 寄 せの機 能 しかない)。

 字 幕 が 2 行 にわたる場 合 、意 味 の切 れ目 で改 行 する(染 谷 2013, p.1)。

 ルビ:常 用 漢 字 でないもの、或 いはセリフ上 、本 来 の読 み方 をさせないものにはルビ を振 る(太 田 2007, pp.67-71)(Subtitle Workshopにこの機 能 はない)。

(例 )樫 の木

整 形 外 科 で 手 術 し た な

‐ 休 暇 中 に ね

父 さ ん は 本 当 に 変 わ っ て い る わ

父 さ ん は 本 当 に 変 わ っ て い る わ

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 アウト:挨 拶 、相 づち、Yes/Noなど、あえて字 幕 にする必 要 がない場 合 は、「アウト」と し、表 示 しないこともできる(岡 枝 1988, pp.30-31)。

 削 除 (部 分 訳 ):原 文 中 の重 要 な情 報 を担 う「キーワード」を中 心 に、必 要 最 小 限 の 語 数 で字 幕 を構 成 する(染 谷 2014, p.20)。

(例 )In May 1981, I decided to write to the Sun Duck Orphanage.(5秒 のセリフを 20 文 字 で訳 す場 合 )どの情 報 が重 要 か見 極 め、画 面 から分 かる部 分 は削 除 する。

 補 完 性 :前 出 ・後 出 の字 幕 (直 近 字 幕 )との補 完 性 を利 用 する(染 谷 2014, p.21)

(例 )字 数 の関 係 で I don’t care の訳 が 1 枚 の字 幕 に収 まらず、次 の字 幕 で補 完 し ている。

You didn’t come from my mommy’s womb, but I don’t care.

母 さんから 産 まれてないとか―

You don’t have the family eyes but I don’t care.

家 族 と目 が違 うなんて 関 係 ない

 補 足 :直 訳 法 では意 味 が曖 昧 になったり原 文 のニュアンスが適 切 に伝 えられない場 合 、あるいは原 文 の 意 味 をより明 確 にするために、必 要 最 小 限 の補 足 を加 える( 染 谷 2014, p.20)。

(例 )Harry Holt began the o peration →「慈 善 家 」ハリー・ホルトが活 動 を開 始 した

(「慈 善 家 」を補 足 している)。

5.字 幕 作 成 の手 順

字 幕 作 成 のプロセスは、SWS での作 業 に入 る前 準 備 として、各 種 ソフトのインストール や DVD から音 声 と映 像 を取 り出 す「リッピング」と呼 ばれる準 備 などが必 要 である。本 ワ ーク ショ ップ で は、学 習 者 に SWS での 基 本 操 作 を学 んでも らうこと を課 題 と した ため 、 SWS のダウンロードを各 自 で行 うこととし、その他 の諸 準 備 に関 しては筆 者 を含 むリーダ ー2 名 で行 うこととした。よって本 章 では、学 習 者 が取 り組 んだ「ハコ割 り」と「スポッティン グ」の技 術 的 プロセスを中 心 とした、指 導 に直 接 関 係 する字 幕 作 成 手 順 について述 べる。

以 下 に 記 す 手 順 は 、 筆 者 の 修 士 論 文 「 ド キ ュ メ ン タ リ ー 映 画 First Person Plural (Directed by Deann Borshay) 字 幕 翻 訳 プロジェクト」の一 部 を改 稿 したものである (小 倉 2014, pp.18~32)。

5.1 ハコ割 り

ハコ割 りとは、1 枚 の字 幕 に載 せるセリフを区 切 る作 業 で、以 下 に ハコ割 りの例 (図 1)

とポイントを示 す。スクリプトを用 意 し、映 像 を見 ながら図 1のように、スクリプトに意 味 の切 れ目 のよいところで区 切 りをつける(スラッシュを入 れる) 。

 保 存 のしかた

① ハコ割 りしたものを、エクセルにコピーをし、テキスト形 式(*txt)で保 存 する。

② エクセルからハコ割 りしたものを、メモ帳 に貼 り付 ける

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③ メモ帳 から[ファイル]→[名 前 をつけて保 存]

ファイルの種 類 は「*.txt」、文 字 コードは「ANSI」で名 前 をつけて保 存 する。

ハコ割 りの変 更 は、スポッティング時 にも可 能 である。

図 1 ハコ割 り

 ハコ割 りのポイント(以 下 は太 田 2013b; 染 谷 2013 より抽 出 している)。

 間 のよいところ(太 田 2013b, p.39)

 会 話 が長 い場 合 はブレスのあるところ(太 田 2013b, p.39)

 沈 黙 が 1 秒 以 上 あるところ(太 田 2013b, p.39)

 概 ね 6.5 秒 以 内 (1 枚 に入 る字 数 は、最 大 で 1行 13 文 字 なので 2 行 の場 合 、13x 2=26 文 字 となる。1 秒 4文 字 ルールを適 用 し 26÷4=6.5秒 となる)(染 谷 2013)。た だし、ドキュメンタリー映 画 の場 合 は 7 秒 以 内 と考 える説 もある(映 像 翻 訳.com)。情 報 量 が多 いからだと思 われる。

 アウトにする箇 所 は、ハコ割 りしなくてもよい。

5.2 素 訳

ハコ割 りをしたあと、素 訳 をすることを提 案 している 。素 訳 をすることで、まずは文 脈 を 正 しく理 解 しているか確 認 し、情 報 を整 理 できると考 えるからである。5.1 章 のエクセルに保 存 したハコ割 り済 みの原 文 テキストの横 に素 訳 欄 を設 ける。図 2 のように、原 文 と素 訳 が 横 並 びになるように入 力 し、セルの枠 数 が右 と左 で同 じになるようにしておく。

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図 2 素 訳 の正 しい入 力 の仕 方

 素 訳 入 力 時 の留 意 点

図 3 のように便 宜 上 、センテンスのチャンクごとにまとめて素 訳 を入 力 するのではなく、

ハコ割 り通 り素 訳 を入 力 する。これは、字 幕 翻 訳 を入 力 する際 も同 じである。図 3 のよう にセル数 が違 うと、テキストと訳 文 の両 方 を SWS で同 時 表 示 したい場 合 、ずれて表 示 さ れるからである(SWS図 4の⑧と⑨に表 示 される)。図3は、例 えば字 幕 番 号 369と370、 374と 375の原 文 テキストの素 訳 が、まとめて 1 つのセルに入 っている。この状 態 で SWS に取 り込 むと、371 の素 訳 が、上 から 4 つ目 のセルとして、370 の素 訳 として横 並 びで表 示 されてしまう。以 下 、ずれが生 じる。素 訳 がしにくい場 合 でも、空 白 のセルを作 らないた めに、一 時 的 に訳 を入 力 しておく。

図 3 原 文 とセルの枠 数 が合 わない素 訳 の入 力 例

5.3 スポッティング

「スポッティング」とは、セリフの長 さを測 る 作 業 である。SWS で映 像 を再 生 し、ハコ割 り 済 みの字 幕1枚1枚 に、手 動 で字 幕 の開 始 時 間(Spot-in)、終 了 時 間(Spot-out)を設 定 していく(図 4 のボタンを参 照)。

 映 像 を取 り込 む

① 「映 像 」(図 4 の①)から「ファイルを開 く」選 ぶ。

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② 該 当 するファイルを選 ぶ。

③ 映 像 が画 面 に映 し出 される。

 ハコ割 り済 みのテキストを取 り込 む。

① 「ファイル」(図 4の⑦)から「開 く」を選 ぶ。

② 「ファイルの種 類 」は新 規 テキスト(*.txt)を選 び、該 当 するファイル名 を選 択 し開 く。

③ テキスト文 が表 示 される(図 4 の⑧)。

 開 始 時 間 の設 定

① 字 幕 を開 始 したいタイミングで映 像 を一 旦 停 止(図4の②「再 生/一 時 停 止 」ボタン)。

② 「開 始 時 間 に変 更 」ボタン(図 4 の③)をクリックし、開 始 時 間 を上 書 きする。

 終 了 時 間 の設 定

① 映 像 を再 生 する(図 4の②)。

② 終 了 したいタイミングで映 像 を一 旦 停 止(図 4 の②)。

③ 「終 了 時 間 に変 更 」ボタン(図 4 の④)で終 了 時 間 を上 書 きする。

以 上 の作 業 を、字 幕 1 枚 ずつに行 う。

* スポッティングの精 緻 化 :作 業 は手 動 操 作 のため、特 に出 だしのSpot-inは停 止 のタイ ミングを合 わせにくい。SWS 左 下 の開 始 時 間(図 4 の⑤)と終 了 時 間(図 4 の⑥)の右 横 にある上 下 のいずれかのボタンを操 作 すると、1 クリックで 100 ミリセカンド単 位 の変 更 が できるので、多 少 調 整 しやすくなる。上 (△印 ):100 ミリセカンド遅 らせる。下 (▽印 ):100 ミリセカンド早 める。

図 4 SWS の各 種 ボタンと主 な機 能

② 再 生/一 時 停 止

⑦ ①

⑨ 翻 訳 文

⑧ テ キ ス ト 文

③ 開 始 時 間 に 変 更 ④ 終 了 時 間 に 変 更

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 ファイルの保 存

スポッティングの終 了 した字 幕 ファイルは以 下 の手 順 で保 存 する。

① SWS 左 上[ファイル](図 4 の⑦)→[名 前 を付 けて保 存]→フォーマット形 式 「SubRip」

(字 幕 ファイルの種 類 で srt という拡 張 子 で保 存 される)をダブルクリック。

② 任 意 の 保 存 場 所 を 選 ん で 、 フ ァ イ ル 名 を 入 れ て 保 存 す る 。 フ ァ イ ル の 種 類 は SubRip(*srt)とする。

5.4 字 幕 翻 訳

スポッティングが終 わると、いよいよ字 幕 翻 訳 へと進 む。学 習 者 がスポッティングしたsrt ファイルを回 収 し、コピーをして一 つのsrt ファイルにまとめる。srt ファイルは、「秀 丸 」とい うテキストエディタを使 い、エクセルに変 換 する(小 倉 2014, pp.40~47)。表2に、筆 者 が 学 習 者 に配 布 した字 幕 翻 訳 入 力 用 ファイルの一 部 を示 す。

表 2 字 幕 翻 訳 入 力 用 のエクセル

学 習 者 は、E 列 に示 す制 限 字 数 を守 り(ただし 1~2 文 字 の超 過 は許 容 範 囲 としてい る)、H 列 に字 幕 翻 訳 を入 力 する。I 列 には、コメント欄 を設 け、学 習 者 が疑 問 点 を入 力 したり、指 導 者 が コメント を残 せる ように している 。 字 幕 翻 訳 が完 成 すれば 、 以 下 の手 順 でエクセルからsrt ファイルへと変 換 しなおす。

① 表 2 の B列(spot-in)、C列(spot-out)、H 列(字 幕 翻 訳)をコピーし、秀 丸 に貼 り付 け る。

② 置 換 機 能 で、検 索 「¥t」、置 換 に「¥n」を入 力 し、「全 置 換 」する。

③ 名 前 をつけて保 存 する。

④ SWSに取 り込 む際 に、ファイルの種 類 を「すべてのサポートファイル」にして 、③のファ イルを選 択 する(注 :翻 訳 が 2 行 にわたる場 合 、2 行 目 の訳 が2 重 入 力 されているの で、SWS 左 上 の「編 集 」から「行 削 除 」を選 び 2 行 目 の訳 を削 除 する)。

その後 、5.3 章 で述 べた手 順 で映 像 を取 り込 むと、完 成 した日 本 語 字 幕 の映 画 を上 映 することができる。

6. 作 成 プロセスにおける問 題 点 および改 善 点

本 章 では 5 章 で述 べた字 幕 作 成 の各 プロセスごとに、学 習 者 が直 面 した問 題 点 お よび学 習 者 によく見 られたミスを指 摘 し、適 切 な指 導 へとつながるような指 導 上 の工 夫 と

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改 善 点 を考 察 する。

6.1 字 幕 作 成 ソフトのトラブル

本 ワークショップでは Subtitle Workshop (SWS) という字 幕 作 成 ソフトを使 っているが、

これ以 外 にもVirtualDub、Aegisubなど他 にもいろいろなソフトがあり、それぞれに特 徴 が ある。本 稿 では SWSを使 用 した経 験 に基 づいて問 題 点 を挙 げる。

6.1.1 字 幕 作 成 ソフトをダウンロードできない

そもそも本 ワークショップで使 用 した字 幕 作 成 ソフトSubtitle Workshop (SWS) をダウ ンロードできないという、致 命 的 な問 題 点 が 学 習 者 の中 からあがった。またコンピューター のバージョンにより、SWS の取 り込 み機 能 に差 が出 ることもある。

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点

SWS を使 用 しなければならないスポッティングの作 業 は、SWS がインストールされてい る大 学 のCALL教 室 のコンピューターを利 用 することで対 策 を講 じた。しかしながら、スポ ッティングの作 業 に限 らず、CALL 教 室 での一 時 的 な操 作 演 習 だけでは、学 習 者 が十 分 に習 得 できるとは言 えない。SWS が問 題 なくインストールされれば、スポッティングはも とより、字 幕 翻 訳 をSWS上 で自 由 に試 写 することも可 能 であり、字 幕 作 成 が効 率 的 であ る。よって、対 策 には改 善 の余 地 があり、さらに工 夫 する必 要 がある。

6.1.2 字 幕 作 成 ソフトのデメリット

SWS は、機 能 上 、スクリーン下 に横 字 幕 でしか字 幕 を 表 示 できない。人 物 名 や手 紙 の文 章 などの 画 面 上 の テキストが、セリフと同 時 に表 示 される場 合 、セリフと 画 面 上 の テ キストの両 方 の 訳 を 、スクリーン下 に 表 示 することになるので 、字 幕 が 読 みにくくなる。縦 字 幕 やスクリーン上 部 に字 幕 を表 示 できれば、区 別 して表 示 することもできるが、SWS に はこのような機 能 がない。

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点 :

学 習 者 にはセリフを優 先 し、画 面 上 のテキストの訳 を丸 括 弧 に入 れて表 示 することで、セ リフとの区 別 ができるよう助 言 はしているが、見 場 が悪 いなどの課 題 は残 る(この例 を図 5 に示 す)。

図 5 セリフと画 面 のテキストが同 時 に表 示 される場 合 の字 幕 の方 略 例

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図 5 のシーンは、前 出 の字 幕 からの続 きで、”It was a business transaction”というナレ ーションと共 に、画 面 上 に“Application Fee $5.00”のテキストが表 示 されている。ナレー ションと画 面 上 のテキストを区 別 する方 略 として、ナレーションの字 幕 訳 「行 われた」を上 段 に、画 面 のテキストの日 本 語 訳 字 幕 「申 請 費 用 」を下 段 に丸 括 弧 に入 れて表 示 して いる。ちなみに、このシーンは 2 秒 のため、8 文 字 が制 限 字 数 となっている。“$5.00”の 字 幕 訳 は、制 限 字 数 を超 える 上 、視 覚 で 理 解 できるという理 由 で 、 学 習 者 の方 略 と し て省 略 したものと思 われる。

6.2 ハコ割 りに見 られる問 題 点

ハコ割 りは一 見 簡 単 そうにも見 えるが、字 幕 初 心 者 には難 しい作 業 である。太 田 による と、ハコ 割 りは字 幕 の設 計 図 (2013b, p.37)と 述 べてお り、 大 雑 把 に ハコ 割 りされたもの は、登 場 人 物 のセリフと字 幕 が合 わず、流 れの悪 い字 幕 となる。

課 題 初 回 ではあえ て修 正 はせず 、 学 習 者 のハ コ割 りで、筆 者 が 仮 スポッティングした ものを上 映 した。各 自 で ハコ割 りしたものが、どのように映 像 に反 映 するか、 実 際 に確 認 することで、学 習 者 にハコ割 りの意 味 を理 解 してもらうようにした。

6.2.1 短 すぎるハコ割 りと長 すぎるハコ割 り

初 回 の ハコ 割 り の 中 には、短 す ぎる ものや 長 す ぎ るものが 見 られ た 。以 下 にその 例 を 示 し、それぞれのスポッティングを、修 正 前 と修 正 後 で比 較 する。

短 すぎるハコ割 りの例

かなり短 くハコ割 りされている例 である。このハコ割 りでスポッティングすると、以 下 のような 字 幕 の長 さになる。

表 3 上 述 のハコ割 りをスポッティングしたもの(修 正 前 )

Spot-in (字 幕 開 始) (注 1)mm:ss.m/s

Spot-out (字 幕 終 了)

mm:ss.m/s

*Duration

(長 さ)

(注 2)sec

ハコ割 り

13:56.4 13:58.5 2 They started supporting Cha Jung Hee/

13:58.6 14:00.5 2 through a sponsorship program/

14:00.5 14:02.1 2 called the Foster P arents’ P lan./

14:03.8 14:05.8 2 They sent her $15 a month/

14:06.3 14:07.5 1 and in return /

They started supporting Cha Jung Hee /through a sponsorship program /called the Foster Parents ’ Plan./

They sent her $15 a month /and in return /received letters /from Cha Jung Hee./

(12)

14:07.5 14:08.4 1 received letters/

14:08.4 14:09.3 1 from Cha Jung Hee./

*(注 1) mm:ss.m/s は、分:秒.ミリセカンドを表 す。

*(注 2)Duration は、ミリセカンド単 位 を四 捨 五 入 したものを sec(秒)で表 している。

表3が示 すとおり、字 幕 の長 さは全 て2秒 以 内 である。この字 幕 で上 映 すると、画 面 が パッパと次 々変 わり、観 客 にはフラッシュのように映 り読 みづらい。字 幕 鑑 賞 後 に修 正 さ れたハコ割 りのスポッティングを以 下 に記 す。

表 4 修 正 後 のハコ割 りでスポッティングしたもの Spot-in

(字 幕 開 始) mm:ss.m/s

Spot-out (字 幕 終 了)

mm:ss.m/s

Duration

(長 さ)

sec

ハコ割 り

13:56.4 13:58.5 2 They started supporting Cha Jung Hee/

13:58.6 14:02.4 4 through a sponsorship program called the Foster Parents’Plan./

14:03.9 14:07.2 3

They sent her $15 a month and in return /

14:07.3 14:09.7 2 received letters from Cha Jung Hee./

*スポッティングは手 動 操 作 のため、修 正 前 と修 正 後 では、Spot-in および Spot-out に 若 干 時 差 がある。

表 4 の修 正 後 も、なお短 すぎる感 は否 めないが、少 なくとも字 幕 がパッパと変 わるとい う点 は改 善 された。

長 すぎるハコ割 りの例

He, rather than my birth mother, gave his consent to my immigration and adoption./

The shoes completed the deception./

Looking at these documents made me see my relationship to my adoptive family in a new light./

Because I wasn’ t the child my parents had originally fallen in love with, there was a part of me that always questioned whether I belonged. / And whether I had a right to accept my family ’ s love and to love them./

When my mother was dying, my greatest fear was that she would lose her memory and forget that I was her daughter. /

I asked her one day, “ Do you remember who I am? ” / She paused./

(13)

センテンスの切 れ目 で ハコ割 りをしているのがわかる。このハコ割 りでスポッティングすると 以 下 のような字 幕 の長 さになる。

表 5 上 述 のハコ割 りでスポッティングしたもの(修 正 前 ) Spot-in

(字 幕 開 始) mm:ss.m/s

Spot-out (字 幕 終 了)

mm:ss.m/s

Duration

(長 さ)

sec

ハコ割 り

48:37.7 48:44.7 7

He, rather than my birth mother, gave his consent to my immigration and adoption.

48:50.5 48:52.5 2 The shoes completed the deception.

49:00.6 49:06.6 6

Looking at these documents made me see my relationship to my adoptive family in a new light.

49:12.4 49:23.0 11

Because I wasn’t the child my parents had originally fallen in love with, there was a part of me that always questioned whether I belonged.

49:27.1 49:32.6 5 And whether I had a right to accept my family’s love and to love them.

49:38.8 49:50.0 11

When my mother was dying, my greatest fear was that she would lose her memory and forget that I was her daughter.

50:02.7 50:05.8 3 I asked her one day, “Do you remember who I am?”

50:07.0 50:08.1 1 She paused.

字 幕 のルール上 、1枚 の字 幕 は 6.5秒 を超 えないように指 導 をしたにも 関 わらず、表 5 示 すように、6.5秒 以 上 の字 幕 が3枚 ある。このように長 すぎる字 幕 は、1行 に13文 字 以 上 が 並 び 、 情 報 量 が 多 く な る 。学 習 者 は 時 間 内 に 読 め な い こと を確 認 で き た で あろ う。

表 6 は修 正 後 のハコ割 りでスポッティングしたものである。

表 6 修 正 後 のハコ割 りでスポッティングしたもの Spot-in

(字 幕 開 始) mm:ss.m/s

Spot-out (字 幕 終 了)

mm:ss.m/s

Duration

(長 さ)

sec

ハコ割 り

48:37.7 48:39.4 2 He, rather than my birth mother,

(14)

48:40.0 48:44.6 5 gave his consent to my immigration and adoption.

48:50.5 48:52.5 2 The shoes completed the deception.

49:00.6 49:01.9 1 Looking at these documents

49:02.4 49:06.3 4 made me see my relationship to my adoptive family in a new light.

49:12.4 49:16.6 4

Because I wasn’t the child my parents had originally fallen in love with,

49:18.7 49:22.9 4 there was a part of me that always questioned whether I belonged.

49:27.1 49:30.6 3 And whether I had a right to accept my family’s love

49:31.4 49:32.3 1 and to love them.

49:38.8 49:40.1 1 When my mother was dying,

49:42.3 49:45.5 3 my greatest fear was that she would lose her memory

49:48.3 49:50.0 2 and forget that I was her daughter.

50:02.7 50:05.8 3 I asked her one day, “Do you remember who I am?”

50:07.0 50:10.6 4 She paused. Then she said,

表6が示 すとおり、修 正 後 は全 て6.5秒 以 内 に収 めることができた。最 後 の字 幕 では、

後 続 の字 幕 と合 体 したため、字 幕 の長 さが 1 秒 から 4 秒 へと変 更 している。学 習 者 には、

1 秒 以 内 のセリフが続 いて字 幕 が画 面 から瞬 時 に消 えて読 みにくくならないよう、ハコ割 を修 正 してもらった。

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点 :

このように長 すぎるハコ割 りや短 すぎるハコ割 りは、 実 際 にスポッティングした動 画 を見 せる こと で 、 学 習 者 に と ってよ り理 解 しや すいも のになる と 思 われ る 。単 に字 幕 のルール が、6.5 秒 以 内 であるとか、短 すぎると画 面 が次 々と転 換 しすぎて読 みにくくなると 説 明 す るのではなく、なぜ長 すぎるハコ割 りは読 みにくいのか、またなぜ短 すぎるハコ割 りが不 適 切 なのかを、字 幕 のルールと関 連 付 けて 視 覚 的 に 捉 えさせることが重 要 であ ると思 われ た。指 導 をする上 で、学 習 者 にまず両 方 の例 を見 せたうえで、ルールの説 明 をしたほうが 効 果 的 であると思 われた。

6.2.2 画 面 上 のテキスト

画 面 に表 示 される 人 物 名 やタイトル、看 板 、劇 中 の手 紙 などのテキストをハコ割 りして いないケースが目 立 った。その一 例 を以 下 に記 す。

(15)

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点 :

画 面 上 のテキストには、トランスクリプトに記 載 があ るもの、ないものもあるが、記 載 があ っても見 落 としやすいと思 われる 。或 いはセリフ中 心 で、翻 訳 の対 象 になっていなかった のかもしれ ない 。ハコ 割 り は、映 像 を見 ながら 行 うが、 同 時 に 画 面 に表 示 されてい る もの を注 意 深 く 観 察 する こと も重 要 である 。指 導 をす る上 で、このような 説 明 が不 足 していた と思 われる。字 幕 の対 象 となる 人 物 名 、タイトル、看 板 等 も 、セリフと同 じくハコ割 りするこ とを事 前 にしっかりと説 明 しなければならない。

6.2.3 アウト

映 画 前 半 部 分 においては、アウトとなり得 るセリフに対 してもハコ割 りが見 られた。例 え ば、”Uh-huh” “Yeah” ”Alright”などの相 づちである。相 づちなどは、字 幕 にしなくても画 面 の登 場 人 物 からの声 のトーンや表 情 で伝 わる場 合 が多 い。学 習 者 の中 には、後 半 部 分 に 進 むにつれ 、不 要 なセリフをアウトに変 更 したいというコ メン トが多 く 見 られた。前 半 部 分 の翻 訳 を終 え、アウトの技 法 を身 につけたと考 えられる。

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点 :

アウトという技 法 については、取 り上 げて 説 明 して いたが、アウトとする箇 所 に ハコ割 り をしなくてもよいという説 明 が不 十 分 であったと思 われる。特 によく用 いる技 法 やルールに 関 しては、マニュアルにあっても何 度 も説 明 をし、注 意 喚 起 が必 要 である。

6.3 スポッティング

スポッティングは、SWS 上 での機 械 操 作 となるが、各 種 ボタンの操 作 手 順 に関 しては、

特 に 問 題 はなく 、作 業 は 順 調 に 進 め られ た と 考 え る 。しか し、 以 下 の 点 に おい て、 学 習 者 の中 にスポッティングを躊 躇 する傾 向 が見 受 けられた。

6.3.1 外 国 語 字 幕

本 作 品 では英 語 以 外 に韓 国 語 のセリフがあり、オリジナル版 では外 国 語 として の韓 国 語 に、英 語 字 幕 がつけられている。しかしながらスポッティングの精 緻 性 に欠 け、登 場 人 物 の発 話 開 始 と英 語 字 幕 表 示 開 始 時 間 にタイムラグがあり、字 幕 の開 始 時 間 が概 して 遅 い。以 下 にその例 を示 す。

図 6では、登 場 人 物 が韓 国 語 で右 下 に示 す 43:33,822 でセリフを開 始 している。

しかし、この英 語 字 幕 が出 るのは、シーンが移 った図7の43:38,192である。英 語 字 幕 が 約 5秒 弱 遅 れて表 示 されている。学 習 者 からはスポッティングを字 幕 に合 わせるべきか、

発 話 に合 わせるべきかという質 問 が挙 がった。

San Kwan Orphanage (Wells Children's Home) National Welfare Foundation Orphanage サン・クァン 孤 児 院

Namyangju Police Station 南 楊 州 市 警 察 署

(16)

図 6

図 7

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点 :

太 田 によると 、海 外 の英 語 字 幕 の作 品 は国 際 映 画 祭 などに 出 品 されるような作 品 で さえ、音 声 と字 幕 のタイミングが合 っていない、字 幕 がいつまでも出 ている、またはわずか 1秒 のセリフに長 々とした字 幕 があると指 摘 している(太 田 2013b, pp.139-142)。日 本 の 字 幕 が世 界 のトップレベルとされる理 由 に字 幕 のタイミングの正 確 性 が挙 げられ ているこ となどから、このような場 合 、 発 話 に合 わせてスポッティングするように指 導 している。ただ し、遅 れて英 語 字 幕 だけが残 ることになるので、課 題 は残 る。

6.3.2 セリフが重 なるシーン

ドキュメンタリー映 画 のため、セリフが重 なるシーンも多 く、特 に劇 中 の通 訳 が入 るシー ンにおいては、韓 国 語 と英 語 の両 方 でセリフが重 なり合 う。セリフが重 なるシーンでのスポ ッティングに苦 労 したという学 習 者 からのコメントが多 かった。 例 えば図 8 のシーンでは、

韓 国 語 のセリフがあり、そのセリフを訳 す通 訳 の声 も同 時 に入 ってくる。学 習 者 は、ここで は通 訳 の声 をアウトにしている。

(17)

図 8

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点 :

会 話 が 2 人 の時 はハイフンで区 別 をすることもできるが、複 数 の言 語 が絡 み合 ってい る場 合 、 全 てのセリ フを入 れ る こと は不 可 能 であ る。よって アウトも 一 つの 方 略 である こと を提 案 しているが、シーンによっては難 しいスポッティングとなる。

6.4 訳 出 に頻 出 したミス

技 術 的 操 作 を含 む 一 連 の字 幕 作 成 プロセ スを経 て 、ようや くメイン とも 言 える 字 幕 翻 訳 へと タスクが 移 行 した わけだが 、概 して 基 本 的 なルー ルが守 られてい ないなど 初 歩 的 なミスが、学 習 者 に散 見 された。よって以 下 に、学 習 者 に頻 出 したミスをまとめ考 察 する。

6.4.1 固 有 名 詞 の綴 りや名 称 の統 一 ができていない

例 えば、Cha Jung Hee という固 有 名 詞 は、チャ・ジャンヒとするところを、チャ・ジャンヒ ー 、 チ ャ ・ ジ ャ ン ・ ヒ ー な ど の 綴 り が 見 ら れ た 。 こ の 固 有 名 詞 は 、 前 編 の First Person Plural から登 場 する頻 出 の人 物 名 であり、本 作 品 のタイトルでもある。前 編 と統 一 させる ために、グロサリーにも記 載 しているのだが、活 用 できていないとみられる。また本 作 品 で 初 出 の 固 有 名 詞 についても同 じことが言 える。例 えば、 「ISS」とい う団 体 名 称 には、「 国 際 社 会 事 業 」と「ISS」の2通 りの訳 出 が見 られた。グロサリーに追 加 されていれば、どちら かに用 語 統 一 するための議 論 がなされたはずであり、作 品 内 で異 なる訳 出 が出 なかった であろう。

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点 :

グロサリーの活 用 をうまく促 せていなかった点 に問 題 があった。グロサリーを作 成 しただ けに 留 ま り、 ほぼ放 置 状 態 だ った とも 言 え る 。学 習 者 の 間 でも 、初 出 の 固 有 名 詞 なども 追 加 されてい なかった 。 今 後 、グロサリーだけを配 布 するのではなく 、訳 出 入 力 と同 じエ クセルファイルに入 れることで、有 効 的 に活 用 されるよう改 善 を図 りたい。また作 成 するだ けではなく、活 用 を促 すことも重 要 であると思 われる。

6.4.2 字 幕 のルールが守 られていない。

以 下 に頻 出 のミスを挙 げる。

(18)

 算 用 数 字 の使 用 例):(正)500人 (誤)五 百 人

 イタリックの使 用 登 場 人 物 が画 面 に出 ていない場 合 の ナレーションを、イタリックに していないケースが目 立 った。

 1行 に13文 字 以 上 入 力 している。疑 問 符 や半 角 スペースなど「字 幕 幅 」がカウントさ れていない。また制 限 字 数 は守 られているが、1行 の文 字 数 をオーバーしているケー スが多 く見 られた。制 限 字 数 内 に収 めるために は、文 脈 を理 解 し、要 約 することで、

メッセージを正 しく 伝 える ためのコミュニケーション能 力 が培 われたのではないだろう か。

 放 送 禁 止 用 語 (差 別 語 ・不 快 語 )が使 われている。

例):Widow→ (訳 )未 亡 人

学 習 者 の方 略 ):「寡 婦 」にすると読 みにくく、ルビが必 要 となる。「ひとりで~」などの 工 夫 が 必 要 。無 意 識 に 使 ってい る 差 別 語 や 不 快 語 も 多 い 。 改 め て日 本 語 を見 直 すこともできたのではないだろうか。

 指 導 上 の工 夫 と改 善 点 :

4章 で述 べたように、字 幕 には多 くのルールがあるため、見 落 としやすいとも言 えるだろ う。学 習 者 の中 には、制 限 字 数 に集 中 するあまり、訳 出 だけで精 一 杯 でルールまで注 意 がいかないようにもとれる。指 導 においても、字 幕 のルールはマニュアルを配 布 しているの だから、学 習 者 は守 ってくれるはずだという思 い込 みがあったとも言 える。マニュアルに頼 るのではなく、学 習 者 には、必 ずルールを再 確 認 するよう 、何 度 も注 意 を促 すことで、字 幕 のルールに関 するミスがなくなるように 改 善 していきたい。

7.まとめ

6 章 で述 べたように、学 生 が直 面 した問 題 点 には、第 1に字 幕 作 成 ソフトのトラブルを 始 め、ハコ割 りやスポッティングなどの各 プロセスにおける技 術 的 な問 題 点 があり、第2に 字 幕 翻 訳 の過 程 では、字 幕 のルールに付 随 する問 題 点 が多 く見 受 けられた。技 術 面 で の問 題 点 においては、筆 者 の経 験 をもとに対 策 や助 言 を与 えたが、SWS の機 能 上 の問 題 点 から、見 やすい字 幕 を作 成 する という点 で 課 題 が残 る。この点 に ついては、さらにリ サーチが必 要 で今 後 の 課 題 としたい 。一 方 、字 幕 翻 訳 に散 見 されたルールに 関 連 する ミスの中 には、学 習 者 がよく理 解 できていなかったルールや技 法 もあったと言 えるだろう。

筆 者 の指 導 の未 熟 さで もあり、説 明 が不 十 分 な点 や、マニュアルに 書 い てあるから読 ん でいるはずだという思 い込 みがあったように思 われる。学 習 者 がミスを繰 り返 さないために も、マニュアル任 せではなく、何 度 も繰 り返 し字 幕 のルールを説 明 し、注 意 を促 すことが、

改 善 につながるのではないかと思 われる。

今 後 の課 題 として、 訳 出 のディスカッション に時 間 をかけることが挙 げられる 。これは、

今 回 のワークショップが ハコ割 りやスポッティングに 重 点 を置 いたため、訳 出 のディスカッ ションに 時 間 が 十 分 確 保 でき なかった からであ る。そ のため 、目 標 に 掲 げていた 異 文 化 の理 解 やコ ミュ ニケー ション 能 力 の 養 成 が 達 成 でき なかった 可 能 性 が あ る 。また 字 幕 に

(19)

おいては、字 面 などの ビジュアル面 も重 要 視 され 、漢 字 とひらがなのバランスのよい組 み 合 わせの工 夫 が求 められるのだが、この点 についてはほとんど言 及 しなかった。今 後 は、

こうしたビジュアル面 での推 敲 についても 指 導 していきたいと考 える。

...

【著 者 紹 介 】

小 倉 峰 子 (OGURA, Mineko) 2015 年 、神 戸 女 学 院 大 学 文 学 研 究 科 英 文 学 専 攻 通 訳 ・ 翻 訳 コース修 士 課 程 修 了 。現 在 は通 訳 ガイド 他 J ICA 研 修 監 理 員 。

...

【オリジナル映 像 】

First Person Plural (2000). Dir. Deann Borsha y Liem. Mu Fil ms.

In the Matter of Cha Jung Hee (2010). Dir. Deann Borsha y Lie m. Mu Fil ms .

【参 考 文 献 】

映 像 翻 訳.com(2006)「[字 幕 翻 訳] ハコ書 きとスポッティング」 [Online]

http:// www.eizou -honya ku.co m/category/j i maku/0 15.ht ml (2014 年 1 2 月 3 0 日) 小 倉 峰 子 (2014)「ドキュメンタリー映 画 First Person Plural (Directed by Deann Borsha y

Lie m) 字 幕 翻 訳 プロジェクト」神 戸 女 学 院 大 学 大 学 院 文 学 研 究 科 岡 枝 慎 二 (1988)『スーパー字 幕 入 門 』バベル・プレス

岡 枝 慎 二 (1991)『映 画 スラング表 現 辞 典 』 語 学 春 秋 社

太 田 直 子 (2007)『字 幕 屋 は銀 幕 の片 隅 で日 本 語 が変 だと叫 ぶ』 光 文 社 太 田 直 子 (2013a)『字 幕 屋 のニホンゴ渡 世 奮 闘 記 』岩 波 書 店

太 田 直 子 (2013b)『字 幕 屋 に「、」はない』イカロス出 版

染 谷 泰 正 (2013)「字 幕 翻 訳 入 門 」2013年 度 神 戸 女 学 院 大 学 文 学 研 究 科 通 訳 ・翻 訳 コー ス 翻 訳 実 践 特 別 講 義 配 布 資 料(2013 年 11 月 3 日)

染 谷 泰 正 (2014)「字 幕 翻 訳 入 門 :TI LTの実 践 例 として」2014 年 度 神 戸 女 学 院 大 学 文 学 研 究 科 通 訳 ・翻 訳 コース 翻 訳 実 践 特 別 講 義 配 布 資 料(2014 年 7 月 3 0 日)

(20)

表 1  指 導 計 画
図 2  素 訳 の正 しい入 力 の仕 方   素 訳 入 力 時 の留 意 点 図 3 のように便 宜 上 、センテンスのチャンクごとにまとめて素 訳 を入 力 するのではなく、 ハコ割 り通 り素 訳 を入 力 する。これは、字 幕 翻 訳 を入 力 する際 も同 じである。図 3 のよう にセル数 が違 うと、テキストと訳 文 の両 方 を SWS で同 時 表 示 したい場 合 、ずれて表 示 さ れるからである(SWS 図 4 の⑧ と ⑨ に表 示 される) 。図 3 は、例 えば字 幕 番
図 5 のシーンは、前 出 の字 幕 からの続 きで、 ”It  was  a  business  transaction” というナレ ーションと共 に、画 面 上 に “Application Fee $5.00” のテキストが表 示 されている。ナレー ションと画 面 上 のテキストを区 別 する方 略 として、ナレーションの字 幕 訳 「行 われた」を上 段 に、画 面 のテキストの日 本 語 訳 字 幕 「申 請 費 用 」を下 段 に丸 括 弧 に入 れて表 示 して いる。ちなみに、このシー
表 4 の修 正 後 も、なお短 すぎる感 は否 めないが、少 なくとも字 幕 がパッパと変 わるとい う点 は改 善 された。
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参照

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