SrTiO?(001)基板上の[Fe/Ni]超格子交互積層膜の評 価
著者 若島 良隆
URL http://hdl.handle.net/10236/12342
2013 年度修士論文要旨
SrTiO
3(001)基板上の[Fe/Ni]超格子交互積層膜の評価
関西学院大学大学院理工学研究科 物理学専攻阪上研究室 若島良隆
はじめに
磁気記録は機動性に富む、記録が容易,消去が可能という長所のために用途が拡大し,様々な分野に応用さ れるようになった.PCに内蔵されたハードディスクについて述べるとインダクティブヘッドからAMRヘッド,さ らにGMRヘッドと移りゆき,記録密度は飛躍的に上昇していった.
L10型FeNiの磁気異方性は比較的大きい値が見積もられることやNiは資源が豊富で安価なことから新素材とし て期待される.薄膜でのL10型FeNiの作製は2007年に嶋敏之氏らが分子線エピタキシー法によりMgO(001)基板上 にてFeとNiの単原子層を交互積層していくことで人工的に作製する実験が行われた.単結晶にエピタキシャル 成長した[Fe/Ni]50交互積層膜は格子定数や規則度、磁気異方性の基板温度依存性からL10型FeNiが基板温度200
~260℃の時に形成されたことが示唆された.[1]
目的
MgO基板上に直接,FeとNiの交互積層膜を成長させるとミスマッチを起こすと考えられる.そのため基板と蒸
着膜との間にバッファ層を挿むことで格子不整合を緩和している.しかしながら,バッファ層を挿んでしまう と,バッファ層の影響によりL10型FeNiそのものの特性を評価することが難しくなってしまう.本研究ではバッ ファ層を挿まずにL10型FeNiの特性を評価することを目的として,まず,分子線エピタキシー法を用いて基板に 直接,L10型FeNiを形成することを考えた.実験
バルクのL10型FeNiの格子定数 a=3.582Å に比較的近い SrTiO3
(格子定数:a=3.905Å )を選択し,FeとNiを
交互積層していくことで [Fe/Ni]50 交互積層膜を作製した.L10型FeNiがSrTiO3(001)基板上に形成しているのが 反射高速電子線回折,X線回折、磁気抵抗効果を測定し,検証をおこなった.結果
反射高速電子線回折より基板温度が高くなるにつれ,明瞭なスポットが得られた.また,回折パターンより f.c.c.構造に近いL10型の構造が形成されていると考えられる.X線回折によるL10型FeNiの 002 ピーク付近の ピークは,基板温度が高温になるにつれ高角へとピークがシフトしており,薄膜が基板により面内に引っ張ら れていることを示唆している.また,回折強度も基板温度とともに強くなり,結晶性が良好になっていると思 われる. 一方磁気抵抗比の測定では,成長温度が高くなるにつれ,飽和磁場が大きくなることが分かった.
これは,基板温度が高くなるにつれて薄膜の結晶性が良好になるためであると考えられる.しかしながら,
PauleveらによるL10型FeNiの磁化測定で得られた値よりも小さな値に止まった.[2]
[1] T.Shima et al., J. Magn. Magn. Mater. 310, 2213 (2003).
[2] J.Pauleve et al., J. Appl. Phys. 39, 989 (1968).