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竹 田 哲 也 Tetsuya Takeda

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Academic year: 2022

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研究の背景と経緯

 エンドサイトーシスは,細胞外の物質を小胞として 細胞内に取り込む経路で,神経伝達や細胞内シグナル 伝達,細胞運動など,さまざまな生命現象において重 要な機能を持つ.エンドサイトーシスでは,細胞膜が 細胞質側に陥入,切断されて小胞が形成される.エン ドサイトーシスにおけるダイナミックな膜のリモデリ ングには,多くの蛋白質が関与するが,特にダイナミ ン(dynamin)は膜切断において中心的な役割を果た す.ダイナミンは高分子量の GTP アーゼで,膜の切 断部位にらせん状に重合し,GTP の加水分解に伴う構 造変化を起こして膜を切断する.X線結晶構造解析や クライオ電子顕微鏡による解析から明らかになったダ イナミンの立体構造に基づき,これまでに様々な膜切 断モデルが提唱されていたが,実際のメカニズムは不 明であった.

研究成果の内容

 私たちは,ダイナミンによる膜切断機構の解明には,

膜切断過程をナノスケールで「直接見る」ことが不可 欠であると考えた.そこで,ダイナミン-アンフィファ イジン(dynamin1-amphiphysin)複合体による膜切断

過程を in vitro で再現し,電子顕微鏡と高速原子間力 顕微鏡(高速 AFM)を用いて直接観察,解析した.

アンフィファイジンは膜の曲率形成に機能する BAR

(Bin-AMPH-Rvs)ドメインをN末に,また SH3(Src homology 3)ドメインをC末に持ち,SH3ドメインを 介してダイナミンの PR(proline rich)ドメインに結 合し,リング状の複合体を形成する.さらにアンフィ ファイジンはダイナミンに結合し,その GTP 活性や 小胞形成量を増加させることが知られていた.

 まず in vitro 再構成系に大型単層リポソームを用 い,精製ダイナミンおよびアンフィファイジンと混合 すると,複合体により被覆された膜チューブが形成さ れた.次に GTP 添加後の膜切断過程を経時的に調べ ると,GTP 添加 5 秒後には膜チューブに複数の狭窄が 形成され,1 分後には多数の小胞が形成された.さら に膜チューブの狭窄,切断と GTP 加水分解との相関 を解析したところ,GTPγS や GMP-PNP などの非加 水分解性 GTP アナログでは狭窄は見られなかった が,GDP・Pi 遷移状態の模倣条件(GDP+vanadate)

では,深く狭窄した部位が複数観察された.以上より,

ダイナミン複合体による膜切断には,GTP の加水分解 と加水分解産物(GDP および Pi)の遊離が必要である ことが明らかになった.

 次に,in vitro 再構成系に脂質ナノチューブを用い

竹 田 哲 也

Tetsuya Takeda

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生化学

Department of Biochemistry, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

岡山医学会雑誌 第131巻 April 2019, pp. 13-15 平成29年度岡山医学会賞紹介記事 

総合研究奨励賞(結城賞)

昭和44年生まれ

平成 4 年 3 月 筑波大学第二学群生物学類卒業

平成10年 3 月 筑波大学大学院博士課程生物科学研究科修了 平成10年 4 月 筑波大学 遺伝子実験センター 助手

平成13年 4 月 コロンビア大学 微生物学部 Postdoctoral Research Fellow/Scientist 平成17年 4 月 ケンブリッジ大学 遺伝学部 Research Associate

平成25年 2 月 MRC 分子生物学研究所 神経生物学部門 Career Development Fellow 平成26年 1 月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生化学 助教

       現在に至る

<プ ロ フ ィ ー ル>

Takeda T, Kozai T, Yang H, Ishikuro D, Seyama K, Kumagai Y, Abe T, Yamada H, Uchihashi T, Ando T, Takei K : Dynamic clustering of dynamin-amphiphysin helices regulates membrane constriction and fission coupled with GTP hydrolysis. Elife

(2018) 7, pii : e30246.

受 賞 対 象 論 文

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てダイナミン-アンフィファイジン複合体の動態を観 察した.脂質ナノチューブは直径約50nm の桿状リポ ソームで,これを足場としてダイナミンがらせん状に 重合するが,脂質膜が強固なために GTP 存在下でも ダイナミンによる切断が起こらない.このため脂質ナ ノチューブはダイナミンの分子動態観察に頻用されて いる.ダイナミン-アンフィファイジン複合体は,脂質 ナノチューブの周囲に規則的ならせん状重合体を形成 したが,GTP 添加直後からクラスターを形成し,その 後,時間経過とともに消失した.また,ダイナミン-ア ンフィファイジン複合体は,GTPγS や GMP-PNP を 添加しても変化しなかったが,GDP・Pi 遷移状態(GDP

+vanadate)ではクラスター形成が顕著であった.以 上より,ダイナミン-アンフィファイジン複合体は,

GTP 加水分解依存的に狭窄し,GDP・Pi 遷移状態で過 渡的にクラスター化することが示された.

 次に,高速 AFM により,ダイナミン-アンフィファ イジン複合体による膜切断プロセスをリアルタイム観 察した(図A).膜チューブ上のダイナミン-アンフィ ファイジン複合体は,ほぼ等間隔のピッチ(平均約

22nm)をもつらせん状構造として観察された.興味深 いことに,GTP を添加すると複合体が膜チューブに沿 って動き,らせん 2 ~ 3 周分から成るクラスターを形 成した(クラスター部分の平均ピッチ約16nm).すな わち,GTP 加水分解に伴うダイナミン複合体の動き は,膜チューブを狭窄する周方向だけでなく,長軸方 向にもダイナミックに動く事が明らかになった.ダイ ナミン複合体のクラスター化により,膜チューブには 複合体による被覆部分と非被覆部分が生じるが,後者 が強く狭窄していたことから,膜の切断は非被覆部分 で起こることが示唆された.

研究成果の意義

 以上の結果に基づき,ダイナミンによる新規の膜切 断モデルを提唱した(図B).ダイナミン複合体が脂質 膜の付近に存在すると,ダイナミンの自己重合能と PH ドメインを介した脂質結合能により脂質膜上でら せん状に重合し,膜チューブを形成する.次に,GTP が存在するとダイナミン複合体はらせん 2 ~ 3 周分ず

図  ダイナミン-アンフィファイジン複合体による膜切断過程の高速 AFM 像(A)とダイナミンによる新規膜切断メカニズム

「Clusterase Model」(B)

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つクラスター化する.GTPγS や GMP-PNP などの非 加水分解性 GTP アナログではクラスターが形成され ないことから,クラスター化は GTP 加水分解に伴う 構造変化により起こると考えられる.複合体がクラス ター化するとクラスター間にタンパク質が存在しない 非被覆膜領域が生じ,その領域で膜切断が起こる.こ の膜切断メカニズムはまだ明らかではないが,クラス ター形成により非被覆膜領域に生じる,さまざまな物 理的な力によるものであると考えている.例えば,複 合体がクラスターを形成する際に膜チューブに沿って 移動すると,非被覆領域には「張力 tension」が発生 し,複合体が狭窄すると,非被覆領域の膜チューブに は周方向に「ねじれ力 torsion」が生じる.さらに,被 覆領域ではダイナミン複合体との相互作用によって膜 脂質の流動性が低下し,非被覆領域の膜脂質分子の動 きが障害されて「摩擦力 friction」が発生する.これら の力の統合的な作用により,膜切断に至ると考えられ る.このモデルの特徴は,ダイナミン複合体のコンフ ォメーション変化による機械的な動きが,周方向の「狭 窄」だけでなく,チューブの長軸方向にも起こり,ク ラスター形成をもたらす点である.ダイナミンらせん 状重合体の膜チューブに沿った移動は,脂質ナノチュ ーブを用いた in vitro 再構成系の電顕観察や高速 AFM 観察でも報告されていることから,このダイナ ミクスはダイナミンの本質的な性質であると考えられ る.ダイナミン複合体のクラスター化が膜切断の鍵と なることから,我々はこのモデルをクラスタラーゼ・

モデル(clusterase model)と名付け,ダイナミンによ る膜切断機構の新規モデルとして提唱した.

今後の展開や展望

 ダイナミンは,年齢依存性てんかん性脳症,シャル コー・マリー・トゥース病,先天性ミオパチーなど,

神経や筋肉におけるさまざまな難治性疾患の原因遺伝 子として知られている.本研究の成果は,エンドサイ トーシスにおける膜切断メカニズムの解明だけでな く,ダイナミンが関与するさまざまな難治性疾患の発 症機序を分子レベルで解明する上で,重要な足がかり になることが期待される.

文   献

1 ) Ando T, Uchihashi T, Kodera N:High-speed AFM and applications to biomolecular systems. Annu Rev Biophys

(2013) 42,393-414.

2 ) Antonny B, Burd C, De Camilli, P, Chen E, Daumke O, et al.:Membrane fission by dynamin:what we know and what we need to know. EMBO J (2016) 35,2270-2284.

3 ) Takei K, Slepnev VI, Haucke V, De Camilli P:Functional partnership between amphiphysin and dynamin in clathrin- mediated endocytosis. Nat Cell Biol (1999) 1,33-39.

平成30年12月25日受稿

〒700-8558 岡山市北区鹿田町 2 - 5 - 1 電話:086-235-7125 FAX:086-235-7126 E-mail:[email protected]

参照

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