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2002 年 10 月1日受付;2002 年 11 月1日受理

REM 睡眠期と入眠期の事象関連電位の比較

高原  円・片岡 奈央・入戸野 宏・堀  忠雄 広島大学総合科学部人間行動研究講座

Comparison of the event-related potentials between REM sleep

and the sleep onset period

Madoka Takahara, Nao Kataoka, Hiroshi Nittono and Tadao Hori

Department of Behavioral Sciences, Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University, Higashi-Hiroshima, JAPAN

Abstract : During the tonic period of rapid eye movement (REM) sleep, deviant stimuli elicited a P200 and a late positive wave peaking at 380 ms after stimulus onset. The P200 was more anteriorly and the late positive wave was more posteriorly distributed than the P300 in wakefulness. The amplitude of the late positive wave was larger in the attend condition than in the passive condition. During the sleep onset period, deviant stimuli elicited a P200 and a P400. The P400 was more posteriorly distributed than the P300 in wakefulness. The amplitude of the P400, however, did not differ between the attend and the passive conditions. Our findings suggest that the late positive wave in the REM tonic period resembles the P400 in the sleep onset period but these components are modulated differently by attention.

Key words : REM sleep, sleep onset period, event-related potentials, P300, P400, P200

はじめに

 ヒトの意識水準は入眠に伴って低下するが,外界に対する注意機構は失われるわけでなく,睡眠中 も持続的に機能していることが示されている.中でもREM (rapid eye movement) 睡眠期の心理・ 行動特性は,覚醒時の水準に近いと考えられており,外部刺激に対して行動反応することが出来ると いう報告や,夢見体験という精神活動が多く報告されている (例えばAserinsky & Kleitman, 1953; Dement & Kleitman, 1957; Jouvet et al., 1959).しかし,脳波パタンは,入眠期の睡眠段階 1 に 近く,低振幅で不規則な状態である.また,入眠期にも,入眠時心像と呼ばれる心理体験が生じるこ とや緩徐な眼球運動 (slow eye movement, SEM) が現れることなど,REM 睡眠期と入眠期には共 通項が多いといえる.

 睡眠中の脳内の情報処理過程を検討する上で,有効な指標として事象関連電位 (event-related potential, 以下 ERP と略す) が挙げられる.睡眠中の ERP の研究報告は数多く,これらの研究もま た,睡眠中にも脳は外部刺激に対して応答しているという証拠を示している.

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ことを目的とした.まず,実験 1 として,聴覚オドボール課題遂行中の ERP を REM 睡眠期と覚醒 の間で比較検討した.  オドボール課題とは,高頻度標準刺激から低頻度標的刺激を検出する信号検出課題で,信号検出に 伴って出現する代表的な ERP 成分が P300 である.P300 は潜時およそ 300 ms で,頭皮上の中心・ 頭頂領域に出現する陽性成分で,標的刺激の意識的な検出に関連している.標的刺激を検出できな かった場合や,刺激を無視した状態では,P300 は出現しない (Hillyard et al., 1971).

 REM 睡眠中には,オドボールパラダイムを用いたNiiyama et al. (1994) やBastuji et al. (1995) によって,P300 様の後期陽性成分の出現が確認されている.この陽性成分は,覚醒時に比べて振幅 が低く,Bastuji et al .(1995)の研究では,潜時も遅れていたことから,覚醒中に見られる P300 と 同一の成分かどうか議論がなされてきた.これに対して,Cote & Campbell (1999a)は,強度が大 きく逸脱した刺激を標的刺激として,潜時 300ms 付近で頭頂部優位の P300 を記録し,覚醒時の成 分と同一であるとした.しかし,Cote & Campbell (1999a, 1999b) を含め,これまでに報告され ている P300 様の後期陽性成分は,頭頂部だけでなく,後頭部にも広がっている (Niiyama et al., 1994; Bastuji et al., 1995).このような頭皮上分布の違いを考慮すると,この成分が覚醒中のP300 と同一の成分であると断定することは難しい.一方,周波数を変化させた標的刺激ではP300を含む 後期陽性成分は睡眠中に出現しないとする報告もあるように (Nordby et al., 1996),REM 睡眠中 の後期陽性成分については,知見は安定していない.

 REM 睡眠中は,急速眼球運動の有無によって tonic 期と phasic 期に分類されることが知られてい る (Moruzzi,1963).tonic 期は,連続的で安定した活動が持続する期間で,眼球運動などの突発的 な変化を示すようなものが見られない区間である.一方,phasic 期は,不連続で,眼球運動や PGO スパイクなど突発的な活動を含む区間のことを言う.両区間の外的環境に対する反応について, Sallinen et al. (1996)は,phasic 期よりも tonic 期の後期陽性成分が大きいことから,phasic 期の 方が外的環境の変化に対する感受性が低下しているとした.一方,phasic 期に鮮明な夢を見ている 可能性が高いと言われており (Dement & Kleitman, 1957),夢見に REM 睡眠中の注意資源が割り 当てられるために外部刺激に対するERP振幅が低下するという指摘もなされている (Sallinen et al., 1996).

 覚醒中のP300は,標的刺激の呈示確率が低いほど振幅が大きくなるが,課題関連性の効果により, 同じ呈示確率でも,無視させるよりも積極的に弁別反応を行わせた方が振幅は大きくなる(Duncan-Johnson & Donchin, 1977).REM睡眠中の後期陽性成分についても同じことが言えるかどうかは, これまでに検討されていない.そこで,本研究では,睡眠中も弁別反応を課した場合と課さない場合 における,REM 睡眠中の ERP 成分の違いについて比較検討した.REM 睡眠期に出現する後期陽性 成分が覚醒期の P300 と同様の課題関連性をもつとするならば,弁別反応を課した場合に ERP 成分 の振幅が大きくなると考えられる. 実 験 1 方  法 参加者  心身ともに健康で睡眠障害のない大学生・大学院生 10 名(男性 4 名,女性 6 名,平均年齢 21.5 歳) が実験に参加した.すべての参加者の利き手は右手であった.睡眠実験の経験がないものについては

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1 晩実験室で睡眠をとる順応夜を設けた.実験当日は普段通りに起床し,仮眠をとらないこと,実験 前日からアルコールを摂取しないこと,過度の運動は控えることを教示し,実験当日はカフェインや 薬物の摂取がないことを確認した.実験前日までに実験の概要を説明し,実験参加同意書に署名を得 た.実験終了後は,実験前の説明と実際の実験内容に相違がなかったことを確認し,得られたデータ を分析に用いることについての同意を得た. 手続き  各実験参加者は,注意条件夜と無視条件夜の2晩の実験に参加した.それぞれの実験日では,被験 者の通常就床・起床時刻に合わせて終夜睡眠ポリグラフ記録を行った.就床時刻の2 時間前に実験室 に入室してもらい,実験の概要を説明した後,電極を装着した.覚醒セッションは,反応ボードを取 り付けた安楽椅子に座った状態で 15 分間行った.次に,睡眠セッションとして,ベッドに横になっ てもらい,イヤホンを両耳に固定し,消灯を合図に終夜の実験を行った. 課 題  標準刺激 1000 Hz (90%),逸脱刺激 2000 Hz (10%) の純音を用い,イヤホンを両耳に固定して 60 dB で呈示した.刺激の持続時間は 50 ms,立ち上がり / 立ち下がり時間を 10 ms とした.刺激 間間隔は 1.5s で固定し,逸脱刺激間の間隔を 5 s 以上とした.これは,反応潜時を 5 s とするため である.200 刺激を 1 つのブロックとし,1 ブロック 5 分の内に逸脱刺激が 20 個含まれるようにラ ンダム配置した.覚醒セッションでは 1 ブロックごとに 1 分程度の休憩を挟み,3 ブロック行った. 睡眠セッションでは,同様のブロックで,終夜繰り返し呈示した.  注意条件では,逸脱刺激に対し,反応ボードにより,右手第2指の挙上による反応を求めた.覚醒 セッション中は椅子に座った状態で,音に注意を向けながら,眼前 1.5 m に置かれた絵 (10 cm × 15 cm) を注視し,瞬き・体動はなるべく控えるように教示した.睡眠セッションでは,逸脱刺激に 対して反応しながら眠くなれば眠っても良いが,睡眠中も逸脱刺激が聞こえたらできるだけ反応する ように教示した.また,本実験で最も睡眠中の反応数が多かった者には,賞品が与えられることを教 示した.無視条件では,呈示される刺激を無視するように教示した.覚醒セッション中は,椅子に 座った状態で,音に注意を向けないようにしながら,注意条件と同じように,眼前の絵を注視させ た.睡眠セッションでは,刺激に注意を向けないようにして眠るように教示した. ポリグラフ記録  脳波は,国際 10-20 法に従って,Fp1,Fp2,F7,F8,Fz,F3,F4,T3,T4,Cz,C3,C4, T5,T6,Pz,P3,P4,O1,O2 及び左右マストイド (M1,M2) から,鼻尖を基準部位として導出 記録した.時定数は 3.2 s,ハイカットフィルタ 60 Hz とした.眼球運動は,左右水平方向の眼球運 動を,左右眼角外 1 cm に装着した電極から,左耳朶 (A2) を基準として記録し,上下垂直方向の眼 球運動を左眼窩上下に装着した電極から双極導出した.時定数は3.2 s,ハイカットフィルタは60 Hz とした.頤筋電図を表面電極法により,時定数 0.03 s,ハイカットフィルタ 60 Hz で記録した.電 極は脳波記録にはAg-AgClコロジオン型電極を使用し,顔面部分にはAg-AgCl皿電極を使用し,生 体電気抵抗は 5 k Ω以下とした.生体信号は,生体現象用増幅器 (NEC 製 BIOTOP 6 R12-4) で増 幅し,多用途脳波計 (日本電気三栄製 1A97 型) によって紙記録すると共に,パーソナルコンピュー タ (DELL 製 OptiPlex GX1) によって,サンプリング周波数 200Hz で A/D 変換して記録した.デ ジタル記録されたデータは,実験終了後,オフラインで分析された.

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Fz Cz Pz O1 P300 P200 P400 100ms 5μV 標準刺激 逸脱刺激 P200 P400 無視条件

覚醒期

REM tonic

期

REM phasic

期

注意条件 注意条件 無視条件 注意条件 無視条件

分 析

  睡眠段階判定:脳波は,紙記録から Rechtshaffen & Kales (1968) の基準に従って 30 s ごとに 睡眠段階判定し,覚醒中と REM 睡眠中の試行について分析した.さらに,REM 睡眠は tonic 期と phasic期を厳密に分類するために,REM睡眠区間を3 sごとに区切り,眼球運動のない区間をtonic 期,眼球運動のある区間を phasic 期として分類した.  ERP 分析:各被験者について,刺激呈示前 100 ms から刺激呈示後 900 ms の脳波を状態ごと, 条件ごとに加算平均して ERP を求めた.ベースラインは,刺激呈示前 100 ms の平均振幅とした. 体動などの影響で,脳波,眼球電図,筋電図のいずれかの振幅が± 100 μ V を超える試行は除外し た.加算回数が 20 回以上得られたものを分析対象とした.状態ごと,条件ごとに,全被験者の総加 算平均波形を算出した.  ERP 成分の同定に関して,各成分の潜時ウィンドウ等の条件は次のように設定した.覚醒中の P300 及び REM 睡眠中の後期陽性成分は 250-600 ms に陽性方向の振れを持つ成分,P200 は 150-250 ms に陽性方向の振れを持つ成分とした.  統計分析:各 ERP 成分は,最大振幅の部位の頂点潜時± 50 ms の区間平均電位を用い,条件 (注 意,無視) ×刺激 (標準,逸脱) ×部位 (Fz,Cz,Pz,O1,O2 )の繰り返しのある 3 要因の分散分 析を行った.覚醒中の P300 と REM 睡眠中の後期陽性成分は,注意条件における頂点潜時について 条件×部位の繰り返しのある分散分析を行った.分散分析の際は,Huynh-Feldt の調整自由度を用 い,多重比較には Tukey の HSD 検定を用いた.有意水準は 5 %とした.  トポグラフィ分析:状態ごとに,各 ERP 成分についてトポグラフィ分析を行った.総加算平均か ら,最大頂点振幅を含む部位の頂点潜時での振幅値を用いてトポグラムを作成した. 結 果  REM 睡眠期と覚醒期の ERP 総加算波形から 4 部位を図 1 に示した.覚醒期は,注意条件におい て,逸脱刺激に対して中心・頭頂領域優位の P300 が見られた.P300 は,分散分析の結果,条件の 図 1 REM 睡眠期と覚醒期の ERP の比較 Fz:前頭部,Cz:中心部,Pz:頭頂部,O1:後頭部 (N = 10)

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5μV -5μV P300 P200 P400 12μV -12μV 覚醒期 (θ波期) (頭頂部鋭波期) REM tonic期 脳波段階3 脳波段階4 脳波段階5 (紡錘波期) 8μV -8μV 効果が認められ,注意条件の方が無視条件よりも振幅が大きかった (F (1,9) = 12.38, p < .01).条件 ごとにみると,注意条件では部位 (F (4,36) = 8.61, p < .001) の効果が有意で,多重比較より Cz, Pz が O1,O2 より有意に高振幅だった.  REM tonic 期 (急速眼球運動なし) では,逸脱刺激に対し,前頭・中心部優位に P200 が見られ, 後頭部優位に後期陽性成分が見られた.分散分析の結果,P200 に条件差は認められなかったが,注 意条件で比較すると,刺激 (F (1,9) = 12.70, p < .01) と部位 (F (4,36) = 11.74, p < .001) の主効果が 有意で,多重比較により,Fz,Cz の振幅が他の部位よりも大きかった.無視条件では,部位と刺激 の交互作用が有意で (F (4,36) = 10.98, p < .001),Fz,Cz の振幅が他の部位よりも大きかった.後 期陽性成分は,条件の効果が有意 (F (1,9) = 9.19, p < .05) だった.注意条件では,刺激 (F (1,9) = 6.59, p < .05) と部位 (F (4,36) = 20.16, p < .001) の効果が有意で,多重比較により Pz,O1,O2 の 振幅が Fz,Cz よりも大きかった.無視条件では,部位 (F (4,36) = 10.04, p < .001) の主効果が有意 で,Pz,O1,O2 の振幅が他の部位よりも大きかった.  覚醒期の P300 と REM tonic 期の後期陽性成分について,条件をプールして頂点潜時を比較する と,REM tonic 期の方が有意に長かった (F (1,9) = 9.70, p < .01).  図2に覚醒期のP300とREM tonic期のP200,後期陽性成分について頭皮上分布を示した.P300 は頭頂部 Pz を中心に,REM 期の P200 は前頭・中心部優位に,後期陽性成分は後頭部優位に出現し ていることがわかる.

 REM phasic 期 (急速眼球運動あり) では両条件で顕著な ERP 成分は見られなかった. 図 2 各段階の ERP 成分の電位トポグラム (N = 10) 頭を上から見た図を示す (鼻が上側).間隔は 1 μ V.

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考  察  REM tonic 期の後期陽性成分は,後頭部優勢で潜時が覚醒期の P300よりも長いことが示された. 頭皮上分布と潜時から,この成分は覚醒期の P300ではなく,むしろ入眠期のP400 (堀他, 1999) の 特徴に近いことがわかった.そこで,この REM tonic 期の後期陽性成分を P400 とした.  tonic 期の P400 振幅は,刺激に対して反応を要求し意図的に注意を向けさせることで増大した. REM 睡眠期には,刺激に対して強い回避動機づけを負荷することで,飛躍的に行動反応が向上する ことが報告されている (Williams, 1967).意図的な注意を喚起したことの影響がERP振幅に敏感に 反映されたのかもしれない.

 P200 は,前頭,中心部優位に出現していた.この結果は Nordby et al. (1996) の REM 睡眠中 の知見と一致している.また,P200 には条件 (注意/無視) の効果は見られなかった.このことは, この成分が,外部から聴覚刺激が入力された後,定位的に処理している過程を反映していると考えら れる.  phasic 期には有意な主効果が得られなかったので,顕著な ERP 成分は出現していないと考えた. これは Sallinen ら (1996) の知見と一致しなかった.phasic 期は,後期に陰性方向のシフトがおこ ることから,充分に陽性変動を示すことができなかった可能性がある.彼らの研究では,時定数が 1 sであり,潜時400-600 ms 付近の現象について議論することは難しい.眼球運動によるアーチファ クトは取り除いているので,急速眼球運動の影響とは考えられない.Sallinen ら (1996) は,pha-sic期の夢見の報告が多いことと関連付けて,phasic期は夢に没頭しているためphasic期はtonic 期 に比べてREM 睡眠中の後期陽性成分の振幅が低いとした.入眠期においても,入眠期心像ありの方 が ERP が小さいという報告がある (Michida et al., 1998).phasic 期に顕著な ERP が認められな かったことは,phasic 期の夢見体験によって,外的環境に向けられる情報処理活動が少なくなった ことを示唆している. 実 験 2  実験1で得られた結果がREM睡眠期に特有のものなのか,睡眠中に共通したものであるのかを確 認するため,覚醒から入眠期に至るまでを検討した.入眠期では,低頻度逸脱刺激に対して P200 (P210,P220 と呼ばれることもある) と潜時 400-500 ms に頂点をもつ後期陽性成分である P400 (P420,P450 とも呼ばれる) が出現することが確認されている (Nielsen-Bohlman et al., 1991; Salisbury et al., 1992; Winter et al., 1995, Harsh et al., 1994, 堀他,1999).堀他 (1999) は,覚 醒期の P300 が頭頂部優勢であるのに対し,入眠期の P400 は後頭部優勢であること,P300 が消え た後に振幅が増大することから,両者は異なる発現機構をもつ成分であると提案した.

 入眠期では,刺激に注意を向ける課題を与えた場合,P200,N300,P400 振幅が大きくなるとい う知見 (Harsh et al, 1994) や,睡眠段階 2 で K-complex の成分である N550 振幅が大きくなると いう知見が得られている (Niiyama et al., 1995).実験 1 と同様に後期陽性成分の頭皮上分布と刺 激に対する意図的な注意の効果について検討することとした.

方  法  以下,実験 1 との相違点のみを記す.

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参加者  心身ともに健康な大学生・大学院生 16 名 (男性 8 名,女性 8 名,平均年齢 22.3 歳) が実験に参加 した. 課 題  各脳波段階の加算回数を確保するため,標準刺激 85%,逸脱刺激 15%の呈示確率とした.また, 注意条件と無視条件は被験者間比較とした.無視条件の場合は,呈示される刺激を無視しながら,眼 前 1.5 m に設置したテレビモニタの映像を見るよう教示した.  睡眠セッションは,消灯後約 120 分間行い,睡眠段階 2 が 3 分以上続いた場合は,実験者がイン ターホンで呼びかけて覚醒させた.次の4つの場合は実験を終了した.(1)参加者の希望があった場合, (2)消灯後 120 分が経過した場合,(3)睡眠セッション開始後 1 時間α波が消失しない場合(入眠困難), (4)実験者による強制覚醒が連続して 3 回続いた場合である. 分 析  睡眠段階判定:脳波段階の判定は,5 段階の脳波段階 (Hori et al., 1994) を用いた.脳波段階 1 (α波期),脳波段階 2 (平坦期),脳波段階 3 (θ波期),脳波段階 4 (頭頂部鋭波期),脳波段階 5 (紡 錘波期) からなる.脳波段階の判定には,Cz部位を用い,5 sごとに視察判定した.徐波やK-complex が出現している区間,アーチファクトが混入している区間は分析から除外した.  統計分析:各 ERP 成分の平均振幅値を用い,条件ごとに,段階×刺激×部位の繰り返しのある 3 要因分散分析を行った.段階は,成分ごとに出現の認められた段階ごとに検定した.段階ごとに条件 ×刺激×部位の繰り返しのある 3 要因分散分析を行った. 結  果  入眠期の ERP 波形を図 3 に示した.入眠期が進行するにつれ,両条件で,特に脳波段階 3 以降, P300 に代わって P200,P400 振幅が増大していくのが観察された.そこで,覚醒期の P300 は覚醒 と脳波段階 1 ∼ 3,P200,P400 は脳波段階 3 ∼ 5 について統計的検定を行った.覚醒期の P300 は, 両条件で段階の主効果が有意だった (注意条件: F (3,21) = 15.15, p < .001; 無視条件: F (3,21) = 9.14, p < .001).下位検定の結果,注意条件では,覚醒期,脳波段階 1,2 の振幅が,脳波段階 3,4,5 の 振幅より大きく,無視条件では,覚醒期,脳波段階 1,2,3 の振幅が脳波段階 4,5 より大きかった. 部位の効果も認められ (注意条件: F (4,28) = 19.42, p < .05; 無視条件: F (4,28) = 4.66, p < .05),下位 検定の結果,注意条件では Fz,Cz より Pz で振幅が大きかった.覚醒期,脳波段階 1,2 で条件の効 果が認められた (覚醒期: F (1,7) = 26.76, p < .001; 脳波段階1: F (1,7) = 7.47, p < .001; 脳波段階2: F (1,7) = 9.89, p < .01).  P200 振幅は,両条件で段階の効果が認められ (注意条件: F (2,14) = 26.02, p < .001;無視条件: F (2,14) = 36.41, p < .001),下位検定の結果,注意条件では,覚醒期,脳波段階 1,2 より脳波段階 3,4,5 で有意に大きく,無視条件では,覚醒期,脳波段階 1,2,3 より脳波段階 4,5 で有意に大 きかった.また部位の効果も有意で(注意条件: F (4,28) = 5.36, p < .001; 無視条件: F (4,28) = 36.41, p < .05),下位検定の結果,注意条件では Cz が Fz,Pz よりも大きく,無視条件では,Pz より Cz で 有意に振幅が大きかった.脳波段階 3 から脳波段階 5 までの振幅値について,P200 振幅には条件の 効果は認められなかった.

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無視条件 注意条件 100ms 5μV 標準刺激 逸脱刺激 P300 覚醒期 脳波段階 1 (α波期) 脳波段階 3 (θ波期) 脳波段階 4 (頭頂部鋭波期) 脳波段階 5 (紡錘波期) 覚醒期 Fz Cz Pz O1 Fz Cz Pz O1 P200 P400 P200 P400 脳波段階 2 (平坦期) 脳波段階 1 (α波期) 脳波段階 3 (θ波期) 脳波段階 4 (頭頂部鋭波期) 脳波段階 5 (紡錘波期) 脳波段階 2 (平坦期)  P400 振幅は,両条件で刺激の効果が認められた (注意条件: F (1,7) = 41.31, p < .001;無視条件: F (1,7) = 30.93, p < .001).また部位の効果も有意で (注意条件: F (2,12) = 44.53, p < .001; 無視条件: F (2,12) = 12.85, p < .01),下位検定の結果,Fz の振幅が他の部位より小さかった.脳波段階 3 か ら脳波段階 5 までの振幅値について,P400 振幅に条件の効果は認められなかった.  P200,P400 の出現した脳波段階 3 ∼ 5 について各成分の頭皮上分布を見ると (図 2),REM 睡眠 期の成分と同様に,P200 は前頭・中心部優位に,P400 は後頭部優位にみられた. 考  察  入眠とともに,覚醒中の ERP 成分である P300 は減衰していき,θ波が連続して出現する脳波段 階 3 から,中心部優位の P200,後頭部優位の P400 が成長するのが観察された.これらの結果は先 行研究と一致していた (堀他 , 1999; Winter et al., 1995).このことは,入眠によって,覚醒期から 睡眠期特有の情報処理過程に切り替わっていることを示唆している. 図 3 入眠期と覚醒期の ERP の比較 Fz:前頭部,Cz:中心部,Pz:頭頂部,O1:後頭部 (N = 10)

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 P200,P400 には,条件 (注意/無視) の効果は見られなかったことから,REM 睡眠期と同様に, 外部からの聴覚刺激に対し定位的に処理している過程を反映していると考えられる.入眠期に注意の 効果を報告した Harsh et al. (1994) の研究では,睡眠段階 1 をα波期,平坦期 (1A) と平坦期以降 (1B) に分類するという方法をとっており,本研究で用いたHori et al. (1994) とは異なるものであっ たため,入眠期の前半の結果が混入した可能性がある. 総合考察  本研究では,覚醒時と REM 睡眠期と入眠期の外界刺激に対する情報処理過程を ERP を用いて比 較することを目的とした.実験 1 と実験 2 の結果をまとめると,次のように言える. ① 覚醒時は,逸脱刺激によって中心・頭頂部優位の P300 成分が生起した.P300 振幅は注意条件 の方が無視条件と比較して大きかった. ② REM 睡眠中には,tonic 期に限り,P200 と P400 が出現した.P200 は前頭・中心部,P400 は 後頭部で優位だった. ③ 入眠期の脳波段階 3(θ波期)以降は P200,P400 が認められた. ④ REM 睡眠期の P400 の振幅は無視条件と比較して注意条件で大きかったが,入眠期の P400 に は同様の効果は得られなかった.  以上のことから,REM tonic 期の情報処理過程は,覚醒期よりも,入眠期により近いことが示さ れた.REM tonic 期の脳波像は REM phasic 期に比べても,初期の入眠期 (脳波段階 1,2,3) の ものに近く,急速眼球運動が頻発する REM phasic 期とは区別して考える必要がある.

 しかし,REM 期と入眠期における ERP の相違点もある.REM tonic 期の P400 は後頭に偏って 出現しているが,入眠期の P400 は,より前方にもひろがっていた.このことは,P400 が複数の発 生源を持つ可能性を示唆しており,REM期には機能しない発生源がある可能性がある.PETの研究 では,REM 睡眠期に,覚醒期と比べて背側前頭前野皮質の活性が低下していることが示されている (Braun et al., 1997).  覚醒期,REM 睡眠期には,刺激に対して反応させ,意図的に注意を向けることで P300,P400 振 幅が増大したが,この効果は,入眠期には見られなかった.これらの違いから,REM 期と入眠期で P400 は,異なる機能を有している可能性がある.このことについて,今後,更に検討していく必要 がある.  また,入眠期の頭頂部鋭波期以降に出現している P400 振幅は 8-10 μ V 程度だが,REM 睡眠期 の P400 振幅は 5 μ V 程度と,振幅が小さかった.REM 睡眠期の脳波像もまた,入眠期のように不 規則で一定ではなく,REM tonic 期の脳波像は,低振幅で頭頂部鋭波は含まれないので,入眠期の 中でも特に平坦期,θ波期に属すると考えられる.この段階では,P300 から P400 へと切り替わる 時期で,P400 が充分に成長していない状態である.このことが,振幅の違いを説明すると考えられ る.  睡眠段階2以降に特有のK-complexは外部刺激によって出現する.この反応性K-complexのERP 分析を行った研究 (Niiyama et al., 1995, Salisbury et al., 1992, Winter et al., 1995) ではP400の 記載は全くなされていない.本研究の紡錘波期は Rechtshaffen & Kales (1968) の分類では段階 2 に相当するが,K-complex が出現する時期とそれ以降は含んでいない.このことから,P400 は,K-complexが出現する状態までNREM睡眠が進行すると消失する,浅眠状態に特有の成分である可能 性が示された.入眠期前半に出現する成分と REM tonic 期に出現する成分が似ていることから,

(10)

REM 睡眠期の脳の活動水準は,浅い入眠期のレベルに相当し,比較的高い覚醒水準状態を示してい ると考えられる.本研究では,REM 睡眠期を眼球運動の有無から 2 分割して検討したが,REM 睡 眠中に観察される様々な脳波像を分類せずに一括して分析した.今後は,この入眠期の結果をふまえ て,さらに脳波像の推移に関連させた検討が必要である.

引用文献

Aserinsky, E. & Kleitman, N. 1953 Regularly occurring periods of eye motility, and concomitant phenomena during sleep. Science, 118: 273-274.

Bastuji, H., Garcia-Larrea, L., Franc, C. & Mauguiere, F. 1995 Brain processing of stimulus deviance during slow-wave and pradoxical sleep: A study of human auditory evoked responses using the oddball paradigm.

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2002 年 10 月1日受付;2002 年 11 月1日受理

ラットにおける計時処理の選択と時間情報の記憶の関連

小野田慶一1・坂田 省吾2

広島大学大学院生物圏科学研究科1 広島大学総合科学部2

Relationship between choice of timing process

and temporal information memory in rats

Keiichi Onoda1 and Shogo Sakata2

Graduate School of Biosphere Sciences, Hiroshima University1 Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University2

Abstract: The effect of the interruption of the timing stimulus (gap) in rats was examined by using the duration discrimination task. Rats trained to discriminate the duration of light stimulus (2 or 8s), then breaks of stimulus (0.5, 1, 2, 4, 8s) were inserted. They may restart the entire timing process called “reset” or they may “stop” timing for the duration of the gap. The reset had selected by the expansion of the gap duration. The selection rate of the stop increased in the processing at the gap after having trained the temporal information maintenance task. These results suggested that the choice of timing processes, reset or stop, depend on the memory of the temporal information.

Keywords: rat, gap, timing, duration bisection task

序 論

 動物は時間手がかりがなくとも、ある時間を計時したり、2つの時間間隔を弁別したりすることが できる。計時対象である刺激の一時的中断(以下ギャップ)が起こった時、動物はその計時処理を一時 停止し、両極端の反応を選択している。一つは“リセット”(Church, 1978; Roberts, Cheng & Cohen, 1989)と呼ばれる現象で、計時過程を再び 0 から始めることを示す。もう一つは計時を“ス トップ”し(Church, 1978; Meck, Church & Olton, 1984; Roberts, 1981; Roberts & Church, 1978)、ギャップ後に再開することである。計時対象である刺激の中断が起こった時には、ストップ またはリセットのどちらかが行われている。

 動物における計時刺激の中断つまりギャップに対する反応を検討する際には、ピーク法(Catania, 1970; Roberts, 1981)が用いられてきた。この手続きでは、まず動物はFixed Interval(FI)スケジュー ルで訓練される。その後、通常の FI 試行の中に、より持続時間の長い刺激が非強化(プローブ)試 行としてランダムに挿入される。非強化試行において反応率は刺激開始から時間を追うごとに増加 し、強化されるべき時点にピークが見られ、その後減少する。このピークが FI において強化される

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時間と一致すると、その動物は刺激開始から強化までの間隔を学習したことを示す。ピーク法におい て、計時される刺激が途中で中断したときの反応が観察され、このような手続きはギャップ法 (Roberts, 1981)と呼ばれる。例えば 30s のピーク法において、試行開始から 15s 後に一時的に刺激 を中断する。刺激再開後約 30s に出現する反応ピークは計時がギャップによってリセットされてい ることを示す。他方、ギャップ前とギャップ後の刺激をあわせて約 30s 付近に出現する反応ピーク は計時がギャップの間ストップされていたことを示す。ギャップの時間が 2 ∼ 15s の範囲であれば、 ラットは計時処理をストップさせる (Church, 1978; Meck et al., 1984; Roberts, 1981; Roberts & Church, 1978)。同様の手続きを用いた実験で、9s のギャップはハトの計時処理をリセットした (Roberts et al., 1989)。これはギャップ挿入時の計時処理の選択に種差があることを示している。さ らに計時する間隔は通常刺激が呈示されているが、Buhusi & Meck(2000)は、計時する間隔が空白 間隔であっても、ギャップの持続時間が短いときにはストップが選択されることを示している。  ギャップの持続時間が短いときは、ストップが選択されるという知見に対して以下のような解釈が なされている。内部時計モデル(Gibbon, Church, & Meck, 1984)は生体の内部に一定の間隔でパル スを発するペースメーカを仮定し、そのパルスを記憶に蓄積し、過去の時間情報と比較し、反応が決 定されるというものである。Church(1978)は、間隔計時をストップウォッチに例えている。このモ デルではギャップの間、作業記憶内にギャップ前の時間情報を維持することによってストップが起こ ると解釈している。またギャップの時間が長いと時間情報の記憶は失われていくため、リセットが起 こると解釈している。  このように時間知覚過程において計時対象である刺激の一時中断は、動物の時間情報の記憶に依存 して計時処理に影響すると考えられている。つまりギャップ前の時間情報を維持しているかどうかに よって、ギャップ後にストップを選択するか、リセットを選択するかが決定されることを意味する。 本研究では、ギャップ後の計時処理が時間情報の維持に依存することを明らかにすることを目的とし た。ギャップ中の時間情報の維持を訓練によって操作することで、それが計時処理に与える影響につ いて検討した。本実験の時間知覚課題にはピーク法ではなく、持続時間弁別課題を用いた。時間弁別 課題は、持続時間の異なる刺激の長短を弁別させる課題である。この課題では刺激呈示がすべて終了 した後に長短の判断を求める。そのため、刺激終了から反応を行わせるまでに遅延時間を挿入するこ とによって、時間情報を維持する訓練を行うことが可能である。さらにギャップ時間の長さを直接操 作すれば、Church(1978)が解釈している時間情報の忘却を検討することができる。ギャップ時の計 時処理がギャップ前の時間情報の維持に依存しているならば、ギャップ時間が長いほどリセットが選 択され、時間情報維持の訓練後にはストップの選択率が増加すると予測される。 方 法 1.被験体  雄のウィスター系アルビノラット 5 匹を用いた。実験開始時で約 3ヶ月齢であった。実験期間中、 体重は自由摂食時の 85%に維持され、ホームケージ内での摂水は自由であった。 2.装 置  実験の実施には、格納式 2 レバーオペラントボックス(25 × 20 × 38cm)を用いた。ボックスの正 面には格納が可能なレバーが左右に2本、その中央には餌供給用の餌皿が設置されていた。強化子は 45mgのペレットとし、給餌装置を用いて餌皿に供給した。ボックスの上には光刺激呈示用のクセノ

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光刺激 レバー 反応 強化 光刺激 レバー 反応 強化 光刺激 レバー 反応 強化

ITI gap ITI

2s ITI 8s ITI 2s

持続時間弁別課題

持続時間弁別遅延課題 テストセッション

delayl ITI delayl ITI delayl

ン管のライトが設置された。ボックス上部には電球を取り付けハウスライトとし、実験中の照明とし た。オペラントボックスはシールド恒温槽内に置かれた。実験スケジュールの制御及び記録はパーソ ナルコンピューター(NEC 9801DX)によって行った。 3.手続き  被験体はレバー押し行動形成後、持続時間弁別課題の訓練(Figure 1. Top)を行った。この課題は 2つの持続時間の異なる刺激のいずれかを呈示し、それに対応するレバーへの反応に対して強化する 課題である。例えば 2s の光刺激が呈示されると左レバーへの反応に対して強化し、8s の光刺激が呈 示されると右レバーへの反応に対して強化する。刺激には64Hzのフリッカー光を用い、持続時間は 2s 又は 8s のどちらかであった。刺激終了直後に両レバーが呈示され、左右どちらかのレバーを 3 回 押すと反応とみなした。反応後両レバーは格納され、正反応の場合強化された。レバーと刺激の持続 Figure 1 持続時間弁別課題、テストセッション及び持続時間弁別遅延課題の模式図。反応における 短いラインはショートレバーに対する反応を、長いラインはロングレバーに対する反応を 示す。

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時間の対応は個体ごとにランダムに振り分けた。反応が無い場合はレバー呈示から 15s でレバーを 格納し、試行間間隔(InterTrial Interval: 以下 ITI)に移行した。ITI は平均 15s(10-20s)であった。刺 激呈示から反応終了までを 1 試行とし、1 日 120 試行行い、これを 1 セッションとした。この課題の 学習基準は、正答率 85%以上のセッションを 3 セッション連続、または合計 5 セッション達成する こととした。基準達成後、ギャップ試行を含むテストセッションを行った。  テストセッション(Figure 1. Middle)では120試行中20試行においてギャップ試行が挿入された。 残り100 試行は持続時間弁別課題と同一であった。ギャップ試行では、光刺激の呈示が一時中断し、 一定時間経過後に再び呈示された。ギャップ前の光刺激の持続時間は 2.0、4.0 及び 6.0s のいずれか であった。ギャップの持続時間は 0.5、1.0、2.0、4.0 及び 8.0s で変動した。ギャップ後の光刺激の 呈示時間は 2s に固定された。光刺激終了後レバーを呈示し、被験体に長短の判断を求めた。ギャッ プ試行ではどちらに反応しても強化子は与えられなかった。被験体が2sに対応したショートレバー に反応すれば、ギャップ後に時間情報をリセットし、計時を再開したことを示す。逆に 8s に対応し たロングレバーに反応すれば、ギャップ中にギャップ前の時間情報を維持し、計時を継続したことを 示す。ギャップの持続時間はセッション内で変動し、ギャップ前の持続時間はセッション間で操作し た。テストセッションはギャップ前の光刺激持続時間ごとに3セッション、計9セッション行われた。  1回目のテストセッションの後、ギャップ中に時間情報の維持するための訓練を、持続時間弁別遅 延課題(Figure 1. Bottom)を用いて行った。この課題では上記の持続時間弁別課題と異なり、刺激 終了からレバー呈示までに一定時間(0.5、1.0、2.0、4.0、8.0s)の遅延がランダムに挿入された。そ の他の点については、持続時間弁別課題と同一であった。被験体は刺激終了からレバーが呈示される まで時間情報を維持し、反応を決定しなければならない。この課題の正答率が 90% を超えた時点で 時間情報維持の訓練を終了し、2 回目のテストセッションを行った。 4.統計的検定  ギャップ時の計時処理の指標として、テストセッションにおけるギャップ試行におけるロングレ バーへの反応率を用いた。ロングレバーへの反応は被験体が刺激の持続時間を長いと判断したときに 選択され、ギャップ試行では計時処理がストップしていたことを示す。ギャップ試行におけるロング レバーへの反応率を訓練前後(2区間)、ギャップ前の刺激の持続時間(3種類)及びギャップの持続時間 (5 種類)ごとに求め、繰り返しのある 3 要因分散分析を行った。自由度は Greenhous-Geisser による 調整を行った。下位検定にはチューキーの HSD 検定を用いた。結果における数値は平均値±標準誤 差で示した。 結 果  持続時間弁別課題の学習獲得に 14.8 ± 1.7 セッション必要とした。持続時間弁別遅延課題では学 習基準達成までに 10.4 ± 1.5 セッションかかった。持続時間弁別遅延課題の訓練の初日と最終日に おける遅延時間ごとの正反応率を Figure2 に示した。訓練初日では遅延時間が長くなると正反応率 は低下していた。しかし、訓練最終日では長い遅延時間が挿入されても正反応率は高い水準を維持し た。このことから刺激停止から 8s は時間情報を保持するようになったことが確認された。 Figure3 にそれぞれのギャップ試行におけるロングレバーへの反応率を示した。ロングレバーへの 反応率を訓練前後(2 区間)×ギャップ前の刺激の持続時間(3 種類)×ギャップの持続時間(5 種類)の繰 り返しのある 3 要因分散分析によって検討を行った。訓練 (F(1,4)=69.37, p<.001)及びギャップ前刺

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0.5 1 2 4 8 0.5 1 2 4 8 0.6 0.5 0.7 0.8 0.9

1.0 First day Last day

Delay (s)

Correct response rate

6s 4s 2s Duration of gap (s) 0.0 0.6 0.4 0.8 0.2 1.0

Response rate of long lever

Pre Post 0.5 1 2 4 8 0.5 1 2 4 8 激の持続時間(F(2,8)=46.36, ε =0.74, p<.001)の主効果が認められた。訓練×ギャップの持続時間の 交互作用に有意傾向が示された(F(4,16)=3.36, ε=0.61, p=.07)。ギャップ前刺激の持続時間の主効果 が認められたため、下位検定を行った。その結果、すべての条件間に有意な差が認められ(p<.05)、 ギャップ前刺激の持続時間が長いほどロングレバーへの反応率は高くなっていた。  訓練×ギャップの持続時間の交互作用に有意傾向が認められたため、1 要因ごとに検定を行った。 訓練前ではギャップの持続時間の主効果が認められたが(F(4,16)=10.57, ε =0.37, p<.05)、訓練後で はみられなかった(F(4,16)=0.07, ε=0.56, n.s.)。訓練前ではギャップの持続時間が長くなるほどロン Figure 3 持続時間弁別遅延課題訓練前後のテストセッションにおけるギャップ時間ごとのロングレ バーへの反応率(mean ± s.e.)

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グレバーへの反応率は低下したが、訓練後では有意な変化は認められなかった。ギャップの持続時間 ごとに訓練の効果を検討したところ、ギャップの持続時間が 2.0、4.0 及び 8.0s の時で訓練の影響が 認められた(2.0s: F(1,4)=67.40, p<.01; 4.0s: F(1,4)=34.97, p<.01; 8.0s: F(1,4)=4.95, p=.09)。これらの ギャップの持続時間におけるロングレバーへの反応率は訓練前より訓練後で高くなっていた。  訓練後では、ギャップ前の刺激の持続時間によって、ギャップの影響が異なる方向に出ていた。そ のため訓練後において、ギャップ前刺激の持続時間×ギャップの持続時間を要因とする分散分析を 行った。有意な交互作用(F(8,32)=2.40, ε =0.33, p<.05)が得られたため、ギャップ前の刺激の持続時 間ごとに、ギャップ時間を要因とする1要因分散分析を行った。それぞれのギャップ前刺激の持続時 間において、ギャップ時間の有意な主効果は認められなかった(F(4,16)<3.11, ε =0.40 ∼ 0.45, n.s.) 考 察  本実験の目的は、ギャップ時の計時処理の選択に及ぼす時間情報維持訓練の効果を検討することで あった。本実験の結果から以下のことが示された。時間情報を維持する訓練を行うことにより、ロン グレバーへの反応率が増加した。ギャップ前の光刺激の持続時間が長いほど、ロングレバーへの反応 率が高くなっていた。訓練前ではギャップの時間が長くなるほど、ロングレバーへの反応率は低下し た。訓練後ではギャップ前刺激の長さによって、ギャップの時間の影響は異なったが有意な変化では なかった。  ロングレバーへの反応率は、ギャップが挿入された際の計時処理においてストップが選択された割 合を示す。時間情報を維持する訓練の前では、ギャップが長くなるほどロングレバーへの反応率が低 下していた。時間情報は時間の経過に伴って消失するので、ギャップ時の計時処理はギャップ前の時 間情報が維持されているかに依存することを示唆している。この結果はピーク法におけるギャップを 用いた実験(Church, 1978; Meck et al., 1984; Roberts, 1981; Roberts & Church; 1978)と基本的 に一致している。これらの実験では被験体としてラットが用いられ、ギャップの時間が 2 ∼ 15s の 範囲であれば、計時処理をストップさせることが示されている。先行研究から予測すると、本実験で 用いたギャップは 0.5 ∼ 8s と短いことからストップの選択率が高くなると考えられた。しかし、訓 練前では、ギャップの時間が短くともストップの選択率は 50%程度であり、全体としてリセットの 選択率が高かった。ストップの選択率が高くなると予測された訓練後においても、最大で 70%程度 であった。これは課題依存的な差異であると考えられる。持続時間弁別課題ではショートレバーへの 偏向性が出るため(Church, 1980)、計時処理はショートレバーに対応したリセットが選択されやす くなる可能性が考えられる。  持続時間弁別遅延課題を用いて、時間情報を維持する訓練を行った。その訓練初日では、刺激終了 からレバー呈示までの遅延時間が長くなるほど、正答率は低下していた。この結果は長い遅延及び ギャップはITIとみなされ、次の試行のために時間情報が破棄されたことを示唆する。このことから も、1回目のテストセッションでは時間情報がギャップ中維持されなかったために、リセットに偏っ た計時処理の選択がなされたと考えられる。時間弁別遅延課題を十分に学習すると 8.0s の遅延でも 時間情報を維持し、正確な反応が可能であった。  訓練後のテストセッションでは、ロングレバーへの反応率が訓練前と比較して増加していた。 ギャップ前の時間情報を保持できるようになったため、光刺激再開時の計時処理においてストップの 選択率が高くなったと考えられる。しかし、ギャップの持続時間の影響は、ギャップ前の刺激の持続 時間によって異なる傾向を示した。この結果は時間情報維持の訓練によって、時間情報のカテゴリー

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化が促進された可能性を示す。訓練前では、刺激開始時にはショートレバーの前で待機し、一定の時 間が経過すれば、ロングレバーへ移動するという解決方略が用いられ、時間情報をカテゴリー化する 必要はないと考えられる。時間情報維持訓練において、刺激終了からレバー呈示までに遅延が挿入さ れたため、この解決方略を用いることはできない。そのため、時間情報を“短い”または“長い”に カテゴリー化し、それを遅延の間維持し、反応を行ったと考えられる。訓練後のテストセッションに おいても、時間情報がカテゴリー化されため、ギャップ前の刺激の持続時間で異なる結果がみられた のであろう。ギャップ前刺激が2sのときは、“短い”+“短い”という処理が行われる。その際、ギャッ プ時間が短ければ、ギャップ前の情報は堅固に維持されているので、“短い”に対応するショートレ バーへの反応が多くなる。ギャップが長くなると、訓練後とはいえ、時間情報は少しずつ失われるの で、反応はチャンスレベルに近づく。ギャップ前の刺激が 6s の時は、“長い”+“短い”という処理 が行われる。これも同様に、ギャップ時間が短ければ“長い”に対応したレバーに反応し、ギャップ 時間が長くなるとチャンスレベルの方向へ反応率は変化する。ギャップ前の刺激が 4s のときは、カ テゴリー化が困難であったため、ギャップ時間に依存せず反応率はチャンスレベル付近を推移したの だろう。このように時間情報維持の訓練は、情報のカテゴリー化を促進したと仮定すれば、訓練後に おけるギャップ前の刺激時間の影響を説明することが可能である。  以上に述べたように、ギャップ時における計時処理に影響を与える要因は本実験及び先行研究に よって明らかとなった。今後は計時処理の選択がどのような脳内メカニズムに基づいて行われるか検 討する必要がある。計時処理に関与する部位として中隔野や海馬が報告されている(Olton, 1989; Meck et al., 1984)。神経伝達物質レベルではドーパミン系の関与が示唆されている(Buhusi & Meck, 2002)。これらの部位や神経伝達物質がギャップ時の計時処理過程においてどのように情報処理を 行っているかが今後の検討課題となると考えられる。

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2002 年 10 月1日受付;2002 年 11 月1日受理

音楽の「懐かしさ」と感情反応・自伝的記憶の想起との関連

小林 麻美1)・岩永  誠2)・生和 秀敏3)

1) 広島大学大学院生物圏科学研究科

2), 3)広島大学総合科学部

Relations of nostalgia with music to emotional response

and recall of autobiographical memory

Asami Kobayashi1), Makoto Iwanaga2) and Hidetoshi Seiwa3)

1) Graduate School of Biosphere Science, Hiroshima University 2), 3) Faculty of Integrated Arts and Science, Hiroshima University

Previous researches suggest that musical mood and preferences affects on emotional response, and that con-text of music also affects on musical-dependent memory. We often feel ‘nostalgia’ when listening to old familiar tunes. Nostalgia is related to eliciting positive emotions, recall of autobiographical memory and positive evalu-ations for recall contents. The present study aimed to examine effects of musical mood, preference and nostalgia on emotional responses, the amounts of recall of autobiographical memory, and evaluations to contents of them. Participants were 50 undergraduates. They were presented with 4 music pieces that have listened when they were about ten-years-old. All participants listened to all pieces. As the results, the influences of nostalgia elic-ited greater positive emotion and amounts of recall of autobiographical memory than musical mood and musical preference. Regardless of musical mood and preference, the more feeling nostalgia, the more elicits positive emotion and autobiographical memory recall.

Keyword: music, nostalgia, emotion, autobiographical memory

 人は過去に聴いたことのある音楽を聴いたときに、感情が喚起されるだけでなく、過去の記憶を思 い出すことがある。これは、音楽が記憶を想起する手がかりとなっているためであると考えられる。  音楽と記憶の想起との関係について、これまで文脈依存効果や気分依存効果の観点から検討がされ てきた。ジャンルの異なる音楽を用いた Smith (1985)や、テンポの異なる音楽を用いた Balch Bowman & Mohler (1992)は、単語とともに音楽を呈示し、その後単語の再生課題を行なうと、記 銘時と想起時で同じ音楽を呈示したときに単語再生量が最も多いという音楽の文脈依存効果を示し た。また、楽しい気分が誘導される音楽を用いた Thaut & I’Etoile (1993)や、楽しいまたは悲し い気分が誘導される音楽を用いた Eich & Metcalfe (1989)は、音楽によって誘導された気分が記 銘時と想起時で類似している場合に最も想起量が多くなるという気分依存効果を示した。これらによ り、音楽自体や音楽によって喚起された感情は、想起の手がかりとなるといえる。

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ことがあるというのは誰もが体験することである。音楽を聴いたときにも、それが昔聴いたことのあ る曲ならば「懐かしい」と感じることが多い。「懐かしさ」は、過去の物や行為に対する好意的な感情 (Holbrook, 1993)であるともいわれている。しかも、「懐かしさ」は、単に過去の出来事を見聞きし たときに生じる感情ではなく、記憶や気分に影響を及ぼすことが示されている。「懐かしさ」を強く 感じたときには自伝的記憶が多く想起されること(Batcho, 1998)や、想起した内容を「懐かしい」 と感じたきには、気分がポジティブであり、内容に対してはポジティブな評価をすること(多田 , 1998)が明らかにされている。また、良い思い出を思い出すときに「懐かしさ」を感じやすいこと が指摘されている(Cavanaugh, 1989)。音楽を聴いて「懐かしさ」を感じることによって、気分 や自伝的記憶の想起量、想起内容への評価に変化が生じると考えられる。  明るい音楽はポジティブな気分を生起し、暗い音楽はネガティブな気分を生起することや(谷口 , 1991)、覚醒的な音楽より鎮静的な音楽はリラクセーションを高めること(諸木・岩永 , 1996)と いうように、音楽の感情価が感情反応に影響を及ぼすことが示されている。また、音楽による感情反 応には、音楽への好みが媒介していることが示されている(岩永 , 1999)。これらの先行研究では、 主に音楽の感情価や好みといった音楽に対する態度が感情喚起の要因であるとされてきた。しかし、 検討対象とされた音楽は実験参加者が聴いたことのない新奇な音楽であり。「懐かしさ」については 検討されているわけではない。「懐かしさ」を感じるとポジティブな気分となる(多田 , 1998)こと から、「懐かしさ」を感じる音楽を聴いたときに喚起される感情反応は、音楽の感情価だけではなく 「懐かしさ」の影響を受け、ポジティブ感情の喚起が促されるのではないかと考えられる。  そこで、本研究では、音楽の感情価や好みに加え、「懐かしさ」が感情反応と想起量、想起内容の 評価に対して及ぼす影響について検討することを目的とした。感情反応については、主観的な側面と 生理的な側面からの検討を行うために、主観指標と自律神経系の指標の測定を行うこととした。  仮説は以下の3つとした。懐かしさが音楽の感情価や好みよりも強い影響を及ぼす場合、1.懐か しさを強く感じると、ポジティブ感情が高まる。ポジティブ感情のうち、主観的にリラックス感が高 まると生理的な覚醒度が低下し、主観的に快活感が高まると生理的に覚醒度が増加する。2.懐かし さを強く感じると、自伝的な記憶の想起量が増す。3.懐かしさを強く感じると、想起内容に対する 評価はポジティブになる。 【方 法】 実験参加者  心理学講義を受講する大学生 50 名(女性 30 名、男性 20 名;平均年齢 18.9 歳)を実験参加者と した。使用した3曲の音楽に対して聴取経験があると答えた 36 名のうちの、生理指標にアーティ ファクトの混入が認められた5名を除き、最終的な分析対象を 31 名とした。 音楽刺激  大学生138名に対して「懐かしい」と思う曲はどのような曲かについて予備調査を行い、「懐かしい」 曲とされた 10 曲を選んだ。選ばれた 10 曲を予備実験で大学生 14 名に聴取させ、明暗性と力動性、 好みを評定させた。明暗性の評定値に基づき、明るい曲と暗い曲各2曲計4曲を本実験の刺激として 選定した。その際、4曲の力動性と好みの評定値が同程度であることを確認した。明るい曲は「赤鬼 と青鬼のタンゴ」と「切手のない贈り物」、暗い曲は「もっと強く抱きしめたなら」と「ムーンライト伝 説」であった。用いた音楽刺激の歌手やジャンル、用いた CD について Table 1 に示した。ただし、 「赤鬼と青鬼のタンゴ」は聴取経験があると答えた実験参加者が他の曲よりも少なく分析から除いた

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Title Singer Ganre brightness activity preference 赤鬼と青鬼のタンゴ      尾藤イサオ   童謡 5.3 4.8 5.3 切手のない贈り物   春口雅子 童謡 5.9 4.7 5.7 もっと強く抱きしめたなら WANS 流行歌 5.0 3.9 5.6 ムーンライト伝説  ムーンリップス アニメ主題歌 4.8 5.0 5.0 質 問 紙  音楽の印象評定と気分評定、想起に関する質問紙を用いた。  音楽の印象評定 音楽の感情価を測るため、音楽作品の感情価測定尺度(谷口 , 1995)、感情価・ 感情反応測定尺度(中村 , 1983)より明暗性5項目と力動性5項目、音楽に対する好みについて5 項目、聴取経験1項目の計 16 項目から構成した。明暗製と力動性と好みは SD 法、7件法、聴取経 験は2択(はい・いいえ)で評定させた。  感情評定 多面的感情状態尺度(寺崎・古賀・川本 , 1992)より、非活動的快3項目、親和感2 項目、活動的快3項目、抑鬱・不安感4項目、一般感情尺度(小川・門地・菊池・鈴木 , 2000)よ り否定的感情因子に含まれる2項目、爽快感2項目、懐かしさ1項目計 17 項目から構成した。各項 目はリッカート法、7件法で評定させた。  想起に関する質問紙 音楽聴取中に思い浮かんだことについての自由記述と、想起内容に対する評 価から構成した。評価については自分の過去の体験であるか否かを尋ねる1項目、肯定的回想尺度、 否定的回想尺度、再評価傾向尺度(野村・橋本 , 2001)を参考とした肯定的回想4項目、否定的回 想4項目、再評価傾向4項目、計 12 項目から成る。各項目はリッカート法、5件法によって評定さ せた。記述した内容のうち自分が過去の体験したことであると答えた内容に対してのみ評定させた。 肯定的回想得点が高いほど内容が肯定的な回想であること、否定的回想得点が高いほど内容が否定的 な回想であること、再評価傾向得点が高いほど内容が再評価された回想であることを示している。 手 続 き  実験参加者入室後、実験者は実験内容についての説明をし、生理反応の測定に関して了承を得た 後、指尖へ生理反応を測定するためのバンドを装着した。実験者が再び入室するまで安静にしている ようにと指示した。実験者退室後、3分間のベース測定を行い、ベース測定後実験者が入室し気分評 定に記入させた。私語をせず体を動かさないようにと教示し、実験者は退室し音楽呈示を行なった。 音楽呈示は、1分間の無音期と3分間の音楽呈示、1分間の回復期から成った。生理反応は実験の セッションを通して測定し続けた。回復期の後、実験者が入室し、音楽の印象評定と気分評定に記入 させた。この後で、想起の自由記述を行なわせた。実験参加者には、音楽を聴いているときに間思い 浮かんだことを自由に記述することと、無理に思い浮かべようとせずふと思い浮かんだことを記述す ればよいということ、実験者が入室し合図するまで記述を続けるようにと教示し、記述用の用紙を手 渡して実験者は退室した。そして先に呈示した音楽と同じ音楽を3分間呈示した。音楽終了後すぐに 気そらし課題として迷路課題を1分間行なった。これを1曲分のセッションとして4セッション行っ た。曲の順序はカウンターバランスをとった。すべてのセッションが終了した後ベース測定3分間を 行い、実験を終了した。 ため、最終的に分析に用いたのは3曲であった。

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測定指標

 主観指標は音楽の印象評定と気分評定、想起内容の評定、生理反応は心拍数と相対血流量とした。 装  置

 音楽は、コンパクトディスクプレーヤー(DENON製、DCD-815G)からアンプ(DENON製、PMA-2000)を介し、デジタルオーディオデッキ(PIONEER 製、D-05)で MD に録音し、デジタルオー ディオテープデッキ(PIONEER 製、D-05)からアンプ(DENON 製、PMA-2000)を介し、スピー カー(Infinity 製、Kappa series Ⅱ)で呈示した。呈示音圧は等価騒音レベルで約 70dB であった。 生理反応の測定は指尖容積脈波を用いた。左手第2指の指尖に装着した日本電気三栄製の指用脈波 ピックアップ 45261 から導出し、生体電気用増幅ユニット(日本電気三栄製、1253A)を用いて増 幅し、DAT データレコーダー(TEAC 製、RD-120TE)を用い、サンプリング周期 1kHz で記録し た。  分  析  分析に用いた値 音楽の印象は、評定値をもとに主因子法バリマックス回転による因子分析を行っ た結果、3因子を抽出した。第1因子を “明暗性”因子(固有値= 4.07、α =.85)、第2因子を“好 み”因子(固有値= 2.11、α =.71)、第3因子を “力動性”因子(固有値= 1.47、α =.68)とした。 これらの因子のα係数は .68 ∼ .85 であり、いずれの因子も中程度以上の内的一貫性を示していた。 各因子に含まれる項目の評定値の平均値を各因子の得点とし、分析に用いた。音楽の感情価を示す因 子を“明暗性”と“力動性”とし、音楽に対する好みを示す因子を“好み”とした。  主観的気分は、感情評定の評定値をもとに因子法バリマックス回転による因子分析を行った結果、 4因子を抽出した。第1因子を“ネガティブ感”因子(固有値= 4.07、α =.88)、第2因子 “快活 感”因子(固有値= 2.11、α =.88)、第3因子“リラックス感”因子(固有値= 1.47、α =.87)、第 4 因子 “親和”因子(固有値= 1.47、α =.69)とした。これらの因子はα係数が .69 ∼ .88 であり、 いずれの因子も中程度以上の内的一貫性を示していた。各因子に含まれる項目の評定値の平均値を各 因子の得点とした。音楽聴取後の因子の得点からベースでの気分評定の因子の得点を引いた変化量を 分析に用いた。  「懐かしさ」は、音楽聴取後に答えた気分評定の「懐かしい」項目の得点を懐かしさ得点とした。  生理反応は、心拍数は記録された波形から1分間のピーク数をカウントし、心拍数とした。血流量 は1分あたりの平均値を算出した。心拍数と血流量は、音楽聴取前1分間、聴取中3分間、聴取後1 分間の値からベースで測定した値を引いた変化量に変換した。音楽聴取中と聴取前の差分値(音楽聴 取中3分間の平均値−聴取前1分間平均値)を分析に用いた。 自由記述内容が自身の過去の体験であったものを自伝的記憶とみなし、この総数を想起量として分析 に用いた。自伝的記憶である記述ごとに肯定的回想得点、否定的回想得点、再評価傾向得点の平均値 を算出し分析に用いた。  分析方法 説明変数を音楽の感情価(明暗性、力動性)、好み、懐かしさ得点、目的変数を主観的 気分(快活感、ネガティブ感、親和感、リラックス感)と生理反応(心拍数、相対血流量)、自伝的 記憶の想起量、想起内容に対する評価得点(肯定的評価、否定的評価、再評価)とする階層的重回帰 分析を行った。ステップ1で音楽の感情価(明暗性、力動性)、ステップ2で好み、ステップ3で懐 かしさ得点を説明変数として投入した。ステップ1,2,3ではいずれも強制投入法を用いた。

図

Figure 2 持続時間弁別遅延課題の初日と最終日における遅延時間ごとの正答率(mean ± s.e.)
Table 1   Average rating of  music moods and preference of each music
Table 2   Change of R 2  and B coefficient on 3 step in subjective emotional responses
Table 4   Change of R 2  and B coefficient on 3 step in amounts of recall and evaluation
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参照

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