• 検索結果がありません。

1893-1894

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "1893-1894"

Copied!
19
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本郵船 ・ 紡績聯合会のイン ド棉輸送契約の 推移 1893‑1894 年

一推移的な「 組織化 された企業者活動」の一例‑

後 藤 伸

1 .

はじめに

1893(明治26)年10月 に 日本郵船 と紡績聯合 会 1との間で結 ばれ たイ ン ド棉 輸送契約 は、 日 本郵船 に とっては同社初 の遠洋航路の開設 と維 持 を可能 とした もの と して、 また紡績聯合会 に 結集 した紡績企業 に とっては原棉 の安定的かつ 低廉 な輸送手段 を提供す るもの として、それぞ れ位置づ け られ る。 また この契約 を成 立 させ た 両者 の結束 は、後進 工業国が国際競争 のなかで 自国産業 を確立す る際に広範 にみ られた とい う、

業種 を超 えた企業間の相互支持 関係 ‑ 「組織 化 された企業者活動」 の一典型 ともみ られ てい

る。2

筆者 は、郵船 と聯合会 との相互支持 関係 の存 在 を否定す るものではないが、それ はは じめか ら確 固た るもの として存在 したわ けではない こ と、両者 の支持 関係 は国際競争 の展 開のなかで 形成 され変化 していった もの、つま り一言 でい えば推移的な もの と考 えてい る。 その よ うな推 移的な両者 の支持 関係 をみ るために、本稿 では 1893年契約 とその前後 の契約素案や契約改定 と の比較検討 を試 み ることに したい。 これ まで93 年契約 については、その条文 を掲載 した うえで の簡単な内容 の紹介 がな され て きた。 3 しか し、

93年 にいた る素案段階での内容 と93年契約 との 比較対照、あるいは93年以後の契約 との異 同な どについては、詳細 な検討 がな され て こなかっ た。 したがって、 さきの支持 関係 の推移 的な性 格 が見過 ごされて きた と思われ る。

1893年 の契約成立の前段階 にお ける素案 とし ては、 1893年8月 に開かれ た紡績聯合会 臨時総

会の席上にだ され た議案がある。第2節 では こ れ を検討 したい。第3節 では、 1893年契約 を取 り上 げ、その内容 を紹介す る。 さらに第4節 で は、1894年 に追加 された契約 の成立事情 とその 内容 をみてい く。最後 に、郵船 と聯合会の契約 の推移 にみ られ る特徴 をま とめることで、本稿 の結論 とす る。

2.

聯合会臨時総会 における契約素案

1893年5月 に来 日したイ ン ド綿 業者J・N・ タタ と日本側 関係者 との話 し合 いは、兜町の渋 沢栄一の私邸 で開かれ た第4回会談 (6月某 日) で、 日本郵船 とタタ との共 同事業 としてボ ンベ イ航 路 を開設 す る とい う基本 的 な 了解 に達 し た

4ただ し、 この開設 は既 存 の配船船社 ‑ ボ ンベイ航路 において海運 同盟 とい う定期船会 社 間 の カル テル組 織 を結成 してい る欧州3船 社5‑ との激烈 な競争 を惹起す るで あろ うこ と、それ ゆえ荷主か らの積極的 な支援 の確約 な くしては新事業の維持存続 が困難 であることは 関係者 の間で当然 に予期 された。 このため さき の兜町会談 に同席 した鐘淵紡績 会社 の朝吹英二 は、渋沢 に対 してその関係す る 2大紡績企業の 大阪紡績 と三重紡績‑協力 を要請す るよ う求 め る とともに、みず か らは新設航 路事業 に対す る 紡績業者 の全面支援 を確保すべ く紡績聯合会 に 臨時総会 を開かせ て、支援策 を正式 な議題 に上 げ ることを確約 した。 6

この よ うなお膳 立てを経 た うえで、 1893年8 月5日、大阪にて紡績聯合会 の臨時総会 が関か 日本郵船 ・紡績聯合会のインド棉輸送契約の推移 1893‑1894年 55

(2)

れた。7 同総会でかけ られ た議案 はつ ぎの とお りである8

第一項 日本郵船会社ハ タ ヽ氏 卜結合 シテ弐 牌 ノ船 ヲ孟買へ回航セ シムル コ ト 第二項 繰棉‑噸 ノ運賃拾七 「ルー ピー」ナ

ル ヲ引下ケ拾三 「ルー ピー トスル コ ト

第三項 前二項 ヲ実行スルニ於テハ他汽船会 社 卜競争 ノ結果二依 り拾三 「ルー ピー」

以内二引下ケサル ヲ得ザル トキハ其減 額二対 シ聯合会ハ之 ヲ補給 スル コ ト この議案内容 を簡単に補足 してお こ う。第一 項は、ボンベイ航路 を郵船 とタタ家 との共同運 航事業 として開設す るとい うものである。 ここ でいわれてい る 2隻の運航隻数 (による就航頻 磨)がイ ン ド柿 の 日本‑の回漕 に十分であるか どうかは、のちに総会で も問題 となった。第二 項 は、イ ン ドか ら積み出 され る繰棉 (実棉 を乾 燥 させ綿毛 と種 とを分離 した もの) 1 トンの運 賃を17ル ピーか ら13ル ピー‑引き下げるとい う

ものである。 ここでい う1トンとは容積40立方 フィー トの ことを指 し、棉花の重量ではない。

また 「ルー ピー」はイ ン ドの通貨単位 (Rupee) をあ らわす。 17ル ピーはボンベイ航路にお ける 当時の海運 同盟運賃であ り、計画 中の共同運航 事業ではこれ を13ル ピーにまで引き下げる、 と い うのが第二項の内容である。最後の項でい う

「他汽船会社 卜競争」 とい うのは、ボ ンベイ航 路で同盟 を結成 している欧州 3船社 との競争 を 意味 しよ う。その競争の結果、運賃が13ル ピー 以下の水準にまで下がった場合、第二項でい う 13ル ピー との差額 について 「聯合会ハ之 ヲ補給 スル」、 とい うのが第三項 の意味であろ う。 つ ま り、運賃13ル ピーは聯合会が郵船 (お よび タ タ) に支払いを保証す る運賃水準であった。

聯合会の臨時総会で も、第三項の補給の是非 や方法 について疑義 がだ された

9だが、 この 大要だけを示 した議案 に対 しては詳細 を詰 める 必要があるとして、調査委員 を選 出 してかれ ら

に詳細議案の取 りま とめを依頼す ることになっ た。 10 か くして選 出 され た調査委員会 は さっそ くに原案 を取 りま とめ、総会二 日目にこれ を提 出 した。 この全17条か らなる調査委員会原案の 内容は、付録 Ⅰに示 した とお りである。聯合会 の臨時総会は この原案 を審議 し、必要な加除修 正 を くわえて8月10日に採択決議 した。 この全 22条か らなる総会での決議要領 は、付録 Ⅱの と お りである。

最初の委員会原案 と総会の決議要領 との異同 を一覧 して示せ ば、第1表の とお りである。 同 表 において、委員会原案の該 当条項 は丸付 きの 算用数字で、また決議要領 の条項はそのまま漢 数字の順番で示 している。

第 1表に掲 げた委員会原案や決議要領 で言わ れてい る棉花取引お よびその運賃 について、若 干の説明を加 えてお こう (第 1図を参照のこと)0

イ ン ド楠 の買付 けは 「同盟綿商」が行 うこと になってい るので (④お よび第 四)、 日本郵船 に運賃 を支払 うのは さしあた りこの同盟綿商 と い うこ とにな る。 11綿商が 日本郵船 に支払 う運 賃 をここでは市場運賃 と呼んで、記 号

f ,

nで表 す ことに しよ う (添 え字のmはmarketを表記)0 綿商は聯合会の紡績業者 にイ ン ド楠 を 日本で引

き渡すが、そのイ ン ドか らの棉花輸送の運賃は 契約上棉花 1トン (40立方 フィー ト) 当た り委 員会原案 では13ル ピー (③ )、決議要領 では17 ル ピー (第三)に設定 されていた。 この契約 に 定め られた運賃 をここでは約定運賃 と呼んで、

記%fa‑で表す ことにする (添え字のaはagreement を表記、またαの上に引いてあるバーは一定を 意味)。綿 商が 日本郵船 に支払 う市場運賃 と紡 績業者が綿商に支払 う約定運賃 とが一致 してい る場合 、つ ま り

f m

‑fa‑の場合、なに も問題 が ない ことになる。 しか し、 この市場運賃 と約定 運賃 とが一致 しない場合、 どう処理す るかが委 員会原案お よび決議要領 に盛 り込まれた。

まず、市場運賃が約定運賃 よ りも低 くなった 場合、つま り

f m

<fa‑の場合であるOその場合、

紡績 業者 が綿 商 に支払 う約 定運賃 fa‑には変更 がないため (⑤お よび第六)、市場運賃 と約定

(3)

1

表 調査委員会原案 と総会決議 要領 との異 同

事 項 委員会原案 決議要領

日本郵船 との契約者 常務委員3名 ((∋) 同左 (第一)

契約期間 1カ年 (②) 同左 (第二)

契約上の運賃 1トン当た り13ル ピー (③) 特別割 引1トンにつ き14ル ピー (7ル ピー、郵船 の第三)

印楠の購入 同盟棉商か らのみ (④) 外購入の場合は納付金 と報告の義務 (同盟棉商か らのみ○ ただ し、盟第 四) 棉商の同盟外販売控 え 規約 な し 規約 あ り (第五)

運賃水 準 <契約 上 の運賃 の

場合の支払運賃 契約上の運賃支払い義務 (⑤) 同左 (第六)

上記の場合の差金処理 同盟棉 商 が積 置金 と して保 管(⑥) 同左 (第七) 運賃水 準 >契約 上 の運 賃 の 積置金 か ら支弁 (⑦)、積置金 同左 (第八、九条) 場合の差金の支弁方法 ない場合 は棉商が立替 (⑧)

最初 か ら市場運 賃 >約 定運

賃の場合の支弁方法 規定な し 棉商が立替 (第十条)

剰余金の処理方法 棉花買入高に応 じて紡績業者 に分旦武 (⑨) 同左 (第十一) 同盟‑の新規加入処理 常務委員が担 当 (⑩) 同左 (第十二) 同盟事務費の負担処理 棉花買入高に応 じて賦課 (⑪) 同左 (第十三)

同盟外棉 商 か ら購 入 の場合 違約金の支払い (⑫) 300斤1俵 に付2円50銭 の違約金

の罰則 支払い (第十 四)

違約監視 の奨励 規約 な し 報 告者 に違 約 金 の 半額 を支 給(第十五) 孟買回漕事務所 同盟棉商 をもって組織 (⑬) 同左 (第十六)

郵船及棉商 との交渉責任 選 出の相談員5名 (⑭) 同左 (第十七) 執行事務の取扱 い場所 聯合会事務所 (⑮) 同左 (第十八) 船舶調整 郵船 との契約 に挿入 (⑯) 同左 (第十九)

運賃以外の費用項 目水準 外国汽船会社 と同一 (⑰) 外国汽船会社 よ りも高 くない こと (第二十)

施行細則 規約 な し 実行細則 の規定作成 (第廿‑)

資料 :付録 Ⅰお よび付録 Ⅱよ り作成

日本郵船 ・紡績 聯 合会 のインド棉輸送契約 の推移 1893‑1894年 57

(4)

日 本 郵 船

fm

1

図 素案段 階 にお ける棉取 引 と運賃 資料 :付録 Ⅰお よび付録 Ⅱよ り作成

4ル ピー の特別割 引

2

図 決議要領 にお ける運賃 と特別 割 引

運賃 との間には差額 fa‑

fm(>o)が生 じる。

このプラスの 「差金」は 「積置金」 として、 さ しあた り同盟綿商が保管す ることとした (⑥お よび第七)。 また反対 に市場運賃が約定運賃 よ りも高い場合、つ ま り

f m>

fa‑の場合、12f

a 1‑f m

<oとなってマイナスの 「差金」 が生 じる。 こ の 「差金」は さきの 「積置金」か ら支弁す るか (⑦お よび第八)、 「積置金」 がない場合 は同盟 綿商が立て替 え、半期 ごとに棉花買入高に応 じ て紡績業者 に賦課 した徴集金 によって清算す る こととした (⑧ お よび第九)。 そ してネ ッ トの

「積置金」残 高が ある場合 には、半期 ごとに綿 花買入高に応 じて紡績業者 に返金す ることに し た (⑨お よび第十一)0

このよ うな条項 で示 され る仕組みは、つ ぎの よ うな ことを前提 に考案 された と思われ る。つ ま り、 日本郵船 は約 定運賃 fa‑をそのまま 自社 の市場運賃

f m

とす るこ とはで きない。 競争 の 展開によっては、約定運賃以下に市場運賃 を下 げて対抗 しなければな らないこともある。また、

競争のあ りよ うによっては、市場運賃を約定運 賃水準にまで下げな くてすむ こともあ りうる。

いずれの場合 にも、市場運賃の設定は 日本郵船

の裁量下にあ り、その運賃設定によっていかな る得失が生 じよ うともそれ は 日本郵船 の責に帰 す とい う前提である。 この前提 の もとで、紡績 業者 は、市場運賃が約定運賃 を下回った場合、

積置金の積み増 しとその還付 とい う形で運賃引 下げのプラス効果 を獲得 し、逆 に市場運賃が約 定運賃 にまで下が らなか った場合 は、 「賦課徴 集」 とい う形で運賃高止 ま りのマイナス効果 を 負担す ることになった。 それ ゆえ、約定運賃は 市場運賃 と う変動す る運賃 との関連で正 (還 付) と負 (徴収)のいずれ かの効果 を生み出す 運賃であ り、その意味では紡績業者が実質的に 負担す る運賃 を割 りだす際の基準運賃であった

といえよ う。

ここで、委員会原案 にはな く、決議要領 にあ らたに盛 られた契約上の運賃 と特別割 引の関係 について言及 してお こ う。 いま一度 同 じ記号を もちいて決議要領 での運賃 と特別割 引 との関係 を図示すれ ば、第 2図の とお りである。

決議要領 で契約上の運賃が委員会原案の13ル ピーか ら17ル ピーに変更 されたが、 これは運賃 の引上げを意味す るわけではない。 日本郵船が

「特別割 引」として 4ル ピー を戻す ことになっ

(5)

期 間plの リベ ー トの支払 い 第

3

図 海運 同盟 の運賃延戻 し制

資料 :後藤 [1990]よ り作成

てい るか ら (第三)、紡績業者 が負担す る運賃 は委員会原案 と同 じ13ル ピー となる。それでは、

決議要領 ではなぜ わ ざわ ざ17ル ピーの約定運賃 と4ル ピーの特別割 引 とい う規定を設 けたので あろ うか。

すでに触れた よ うに、 もともと17ル ピー とい う運賃は、同盟の外国船社がボンベイ/ 日本航 路で掲 げていた雑貨 (綿糸 ・棉花 を含む) 1ト

ン当た りの運賃水準であった。 同盟船社 は この 運賃水準で同盟船 に一手積み した荷主に対 して 15%の延戻 しをお こな っていた (第3図 を参 照)。13 この 「延 戻 し (deferred rebate)」とい うのは、一手積みに同意 した荷主に対 して一定 期間 (期 間pl通常は6ケ月) の積荷運賃‑の 割 引 (リベ ー ト) を、 つ ぎの一定期 間 (期 間 p2)について も荷 主が一手積み をお こなった 場合にかぎ り後で (延べて)支払 う (戻す) と い う仕組みであ り、 も しつ ぎの期 間 (p2)に 同盟外の船社 に積荷 を依頼す るケースがあれ ば その期間 (p2)の割 引は もちろんの こ と、前 の期間 (pl) の運賃割 引 も取 り消 され る。14

さきの決議要領 での約定運賃17ル ピー、特別 割引4ル ピー とい う規約は、紡績聯合会メンバー に一手積みを履行 させ るために とられた、同盟 の運賃延戻 しと同 じ仕組みであったのだろ うか。

そ うとは考 えられ ない。 日本郵船 と同盟綿商 と の間に一手積み契約 を規定す る条項や、また郵 船以外の船社 に積荷 を積み込んだ場合 「特別割 引」が取 り消 され るとの条項 も、 ともに決議要

領 で設 け られているわけではなかった。おそ ら く、 この特別割 引の導入は、 日本郵船 との約定 運賃が同盟の運賃延戻 しを考慮 した うえで もな お 同盟運 賃 よ りも安 い こ とを、 目に見 える形 (「17ルー ピー」マイナス 「4ルー ピー」)で示 す ことにその狙いがあった とい うべきであろ う。

さらに付 け くわえれ ば、運賃 を受 け取ったあ と 特別割引をお こな うまでの期間、 日本郵船 は 1 トン当た り4ル ピーのキャッシュフロー を紡績 業者からえていることになる。この無利子のキャッ

シュフローが一定期間利用可能 となるとい う便 益は、同盟運賃以下に引下げをもとめる紡績業 者 の郵船‑の譲歩 ともみなせ よ う。

ところで、 この よ うな運賃スキームは、総会 で最初 に提 出 された議案の第三項 ‑ 聯合会 に よる運賃補給 とくらべ るとどの よ うな位置づ け となるのだろ うか。総会議案の第三項は、繰 り 返せ ば、競争 によ り運賃が繰棉 1トン当た り13 ル ピー以下に下がった場合、13ル ピー との差額

を聯合会が 日本郵船 に 「補給 スル」とい う内容 であった。いわばイ ン ド棉 の輸送 を担 当す る郵 船 に13ル ピー とい う確定運賃 を保証 しよ うとす るものであった。 これ に対 して委員会原案や決 議要領は、このような確定運賃の保証をおこなっ てはいないo さきに述べた よ うに、約定運賃j;

は 日本郵船 に対 して支払いが保証 された運賃で はな く、聯合会の紡績業者 が同盟棉商に支払 う 運賃であった。その綿商が郵船 に実際に支払 う 運賃 は市場運賃

f m

で あ り、それ は内外船社 と 日本郵船 ・紡績聯合会のインド棉輸送契約の推移 1893‑1894年 59

(6)

の競争によって決定 され変動す る運賃であった。

fa‑と

f m

が一致 しない限 り、プ ラスまたはマイ ナスの差額が発生 し、それ に応 じて紡績業者が 実質的に負担す る運賃は変動す る。 同盟船社 と の競争 は運賃引き下げ圧力 として作用 し、それ ゆえ市場運賃は約定運賃 を下回 る可能性 が強い と予想 された。 に もかかわ らず、委員会原案お よび決議要領 は ともに運賃の補給 を規約 には盛 りこまなった。それ ゆえ聯合会は、総会決議の 時点では、当初議案に盛 られた運賃保証のスキー ムか らは後退 した、 といえよ う。

問題 は確定運賃の保証か らの後退だけではな かった。積荷 について も未解決の問題 を残 した のである。 なるほ ど、委員会原案お よび決議要 領 ともに紡績業者 に対 してイ ン ド棉花購入 を同 盟綿商か らお こな うよ う義務付 けていた (④お よび第 四)。 しか し、決議要領 の第 四の但 し書 きにあるよ うに、 「三百斤一俵 二付金五十銭 ヲ (‑‑) 同盟‑納付 シ其 旨聯合会‑通告」すれ ば、同盟綿商以外 か らの購入が可能であった。

同 じよ うに同盟綿商が、納付 と通告 を条件 に同 盟外の紡績業者 に売 ることも可能であった (第 五 の但 し書 き)。 それ ゆえ、競争 の展 開に よっ て外国船社が 日本郵船の運賃水準 よ りも充分低 い運賃 を提示 した場合、紡績業者 あるいは同盟 綿商が罰則的な納付金 を支払 ってまで、それぞ れ同盟以外の綿商か ら購入 した り聯合会非加盟 の紡績業者 に売れ ば、十分な利益 をあげ られ る 場合が想定 され る。 これ に対 して 日本郵船が積 荷獲得 をめ ぐる外国船社 との競争のため外国船 社の運賃水準にまで市場運賃を引き下げること は、両素案 に盛 られた さきのスキームか らして 同社の欠損 を拡大す ることになる。 これ を避 け る手段 としては、市場運賃 を約定運賃 に近づけ なが ら、その運賃水準で運搬 できる確定積荷数 量 を聯合会か ら保証 して もらうことであった。

聯合会 は素案 に盛 られた約定運賃 (な らびに特 別割 引)で 日本郵船 に どれ ほ どの積荷数量 を保 証す るのか、これ こそが両者の 「相互支持関係」 の要 となる問題 であった。

しか しなが ら、 この積荷数量保証については

さきの聯合会の臨時総会では統一 した結論 を出 す ことはできず、ひ とまず は各社 とも宿題 とし て これ を持 ち帰 り、聯合会 にあ らためて回答 を 寄せ ることに した。 15だが、 日本郵船‑の返答 期限の8月25日になって も聯合会の意見はま と ま らず、 さらに8月末 日まで回答 を留保す るこ とを願 いで る始末であった。 しか し8月末が近 づいて も返答はできず、 しか も聯合会はイ ン ド 棉花の積 出最盛期 における船便追加 の件 を持 ち だ して事態 を紛糾 させ た。 16郵船側 では返答期 限を再延長 して も聯合会側 か ら積荷保証の確約 はえられない と判断 し、 9月上旬、聯合会 との 交渉 をひ とまず打 ち切 る ことに した。 17事実上 の交渉決裂である。

日本郵船の この よ うな決断の背景 には、つ ぎ の二つの事情があった と考 え られ る。一つはイ ン ド側の事情であ り、ボンベイ航路の共同事業 主であるタタ家がすでにイ ン ドで綿業者か らの 積荷契約 の獲得 に奔走 してお り、18また棉花 の 出荷時期が間近 に迫 っていた。 19 タタ家 との協 同配船準備 に要す る時間や棉花 の出廻時期 を考 えると、8月末前後が交渉 のタイム リミッ トで あった といえる。 も う一つの事情は、 日本郵船 が紡績聯合会所属の有志数社 との間でイ ン ド棉 横取に関す る協議 を進 めてお り、その協議のほ うが郵船の望む条件での契約 内容でま とまる可 能性が高かった ことである。積荷保証 について 態度 を保留す る聯合会 メンバーの意思統一を待 つ よ りは、大手荷主 との確実な契約 を締結す る ほ うが得策 とい う判断が郵船側 にあった とお も われ る。 この大手荷 主 とは、 大手紡績 の3社 (大阪紡績 、三重紡績、鐘淵紡績)お よび棉商 の2社 (内外綿 、 日本綿花)であ り、1893年9 月9日、 これ ら5社 との間でイ ン ド棉横取 に関 す る契約 がま とまった。20 この5社 との契約 が いわば引き金 となって、いままで様子見 を決 め こんでいた他 の聯合会 メンバー も横取契約 に参 加す る決意 をかためた。 この結果、1893年10月 28日、 日本郵船 と聯合会 との間で、イ ン ド棉運 送契約 が締結 され ることになる。 さきの1893年 9月 9日に郵船 と5社か らなる組合会社 との間

(7)

で結 ばれた約 定書 と、 この10月 に聯合会 との間 で結 ばれた約定書は、 こまかな語句 の違い を除 いて基本的に同 じ内容 であった。 そ こで、本稿 では聯合会 との間で取 り交わ され た約定書 を と

りあげ、その内容 を次節 でみてい くことに した

3.1893

年契約

1893年 の約 定書の条文 は付録 Ⅲに掲 げた とお りである。 そのお もな内容 を項 目立てて紹介 し 補足すれ ば、つ ぎの よ うである。

取 引条件 約 定書の第六条 に示 され てい るよ う に、ボンベイか ら積み だ され る棉花は 「本船受 渡 シ」で 日本 に回漕 され ることになっていた。

つま り、棉花 の売 り手 ではな く買い手が手配 し た本船 に棉花 を積み込み、 日本 までの運賃 も買 い手 が負 担す る とい う、 い わ ゆ るFOB (昔ee onboard)条件 に よる船積 みであった。 この場 合 の買い手 とは、 日本 の棉花商ない し紡績業者 であ り、かれ らが船積 みす る本船 の決定権 を持 ち、また運賃 を支払 うことになった。

棉花運賃 容積 1 トン (40立方 フィー ト) につ き17ル ピー に設 定 され たが、 日本郵船 はその う ち 4ル ピー を聯合会 に割 り戻す ことになってい た (第 六条)。 これ は、 さきにみた聯合会 臨時 総会での決議要領 (第三) と同 じ内容 である。

積荷保証 第七条 に明記 され てい るよ うに、聯 合会 は 日本郵船 に対 して年 間 「五万俵 ノ棉花積 荷 ヲ担保 」 した。 また1年 間の積荷が5万俵 に 足 らなかった場合 は、その不足分 について 1 ト

ン当た り13ル ピー を 日本郵船 に支払 うことを約 束 してい る。 したがって、 ここでの積荷保証は 年 間5万俵分の確 定運賃の支払 い保証であ り、

日本郵船 は この保証運収 をベー スに航路採算 を 組 み立てた といえよ う。

ところで、 この積荷保証 は通年での数量であ り、 1航海 あるいは 1船 ごとの数量ではなかっ た。その よ うな契約 になった理 由について、渋

沢栄一 はつ ぎの よ うに述べてい る。す なわち、

「何故 二又紡績聯合会 カ ヒ ト航海 二幾俵積 ム ト イ フ契約 ヲセヌ トイ フ ト原綿 ノ供給ハ或場合ニ ハ亜米利加 力廉イ支那 力廉イ トイ フモ ノテアル カラ果 シテ印度 ヨリ定期 二何程 ノ高 ヲ積 ム トイ フ契約ハ 出来 ヌ」 ためで あ る と。21 日本 の紡績 業 は高番手化 と原棉 コス トの削減 を両立 させ る ために混棉技術 を発達 させたが、これに ともなっ て海外 の原棉調達先 も価格 の高低 にお うじて臨 機応変に組み替 える必要があった。 このために、

‑航海 ごとにあ らか じめ決 まった数量のイ ン ド 棉 を定期 的に 日本 に運送す る契約 内容 では、棉 花調達 の柔軟性 を損 な うおそれ があったのであ

る。

郵船 のスペース保証 聯合会 の積荷数量保証 に 対 して、 日本郵船 も船舶提供 スペースの保 証 を お こなった。 それ は、 「少ナ ク トモ毎 四週一回」

の頻度 でボ ンベイか らの出航 サー ビスを提供す るこ と (第三条)、 またその航海 ご とに 「本船 容量 ノ半数」 までを聯合会 の棉 花貨物 の積み込 み スペー ス として提供す るこ と (第十一条)、

さらに通年 で約 定貨物5万俵 を運送で きなか っ た場合 には、その不足俵数 に相 当す る トン数 に 対 して トン当た り4ル ピー を補償金 として 「聯 合会社」に支払 うこ と (第 四条)、の三つ で あ る。 これ に よって、郵船 とタタライ ンが共 同で 配船す る隻数 は、 当初の 2隻 か ら4隻‑ と増杯 す ることになった。

約定外棉花 の横取 約定外 の棉花 については、

性質の異な る 2種類があった。 一つは、聯合会 を受荷主 とす る、5万俵 を超 える棉花 であ り、

も う一つ は聯合会以外 の者 を受荷主 とす る棉花 である。前者 の約定貨物 を超過す る聯合会 の棉 花 については、市場運賃が内外 の競争 によ り約 定運賃か ら運賃割 引分 を引いた運賃 (13ル ピー) 以下に下落 した場合 で も、 日本郵船 はその市場 運賃で5万俵 を超 えた棉花分 を運送すべ きこと が規定 に盛 り込 まれ た (第十条)。 ただ し、渋 沢の回顧 に よる と、聯合会 との契約成 立の過程 において、 5万俵 の保証数量 を超 えて 2万 5千 俵 までの積荷 の運賃保 証があった とい う。す な 日本郵船 ・紡績聯合会のインド棉輸送契約 の推移 1893‑1894年 61

(8)

年 間5万俵 まで の棉 花

4ル ピー の割 引

5万を超え

棉 花

日本郵 棉 花 運 賃 fm

第4図 1893年 約 定 書 で の運 賃 ス キ ー ム 資料 :付緑Ⅲ よ り作 成

わ ち、 「聯 合会 トイ フ魔 力 ラシテ 尚其 上 二万五 千俵 マテハ 引取ル ソノ時ニハ 同 シ直 [‑値]テ 運賃 ヲ払 ホ ウ又郵船会社 モ夫 レハ急度積 ム尤モ 前 ノ五万俵ハ受合 フ高ナ レハ積 ムテモ積 マ ヌテ モ運賃 ヲ払 フ約束 ニ シテ他 ノ二万五千俵 ハ積 ム タラ払 フ即チ七万五千俵 トイ フモ ノカ詰 り契約 ノ高ニナ ッ [タ]。22 この追加 の 2万 5千俵 は 積込 んだな らば5万俵 と同 じ運賃 を支払 うとい うもので あるが、聯合会 との さきの契約 の 中に は明記 され ていない。

後者 の聯合会以外 の者 を受荷主 とす る棉花 の 横取 につ いては、棉花 の市場運賃 にお うじて 日 本郵 船 の とるべ き対応 が異 な った (第八条)。

郵船 の掲 げ る棉花 の市場運 賃が17ル ピー に等 し いかまたは17ル ピー以下13ル ピー以上であ る場 合、13ル ピー との差額 を聯合会 に 「譲 与」す る こととした。また市場運賃が さらにこの13ル ピー を超 えて下が った場合 、聯合会未加 盟 の者 が聯 合会 メ ンバーの約 定棉花 よ りも実質的 に安い運 賃 で棉花 を調達 で きるた め、その場合 は 日本郵 船 は空いた本船 のスペー ス を 「及 フ‑ キ限 り棉 花以外 ノ荷物 ヲ以テ之 ヲ充 タス コ トヲ勉」 め、

そ してなお 「荷物 不足 スル トキニ限 り棉花 ヲ積 入ル ヽコ トヲ得」 とした。23

契約期 間 以上 の よ うな内容 を もつボ ンベイ航 路 にお けるイ ン ド棉 の運送契約 は、その有効期 間 を 1カ年 と して いた (第 二十 条)。 一方 の 申 し出に よ り 1年 間の延長 が認 め られ ていた もの の、基本的には短期 の契約 であった とい えよ う。

さきの 「委員会原案」や 「決議 要領 」 とこの 約 定書 との大 きな違 いは、聯合会 が郵船 に与 え た積荷数 量保証 の有無 であ り、またそれ と連動 した約 定運賃 の意味 内容 の変化 であ る。説 明の 便宜 のた め、 さきに使 用 した記 号 を用 いて図示 すれ ば第4図の とお りで あ る。

す でに述べ た よ うに、聯合会 はイ ン ド棉5万 俵 まで 1 トンにつ き17ル ピー とい う約 定運賃長 を支払 うこ とを約束 した。 ここか ら4ル ピーの 割戻 を差 し引いた残 りの トン当た り13ル ピーが 実質 の負 担 運賃 で あ り、 か く して 、 (容積 トン 数 に換 算 した棉 花5万俵×13ル ピー)24 が聯 合 会 メ ンバー の担保 す る固定運賃額 で あ り、また 日本郵船が確実に収得 を見込める年間運収 となっ た。 さきの委員会原案や決議要領 での約 定運賃 が、 市場 運 賃fmとの かか わ りで 関係 者 にプ ラ スあ るいはマイナ スの効果 を もつ基準運賃 とい う性 格 を帯び てい たの に対 して、 「約 定書」 で

(9)

の約定運賃はあき らかに固定運賃 となったので ある。つま り、保証積荷数量についての約定運 賃f6は、市場運賃

f m

との関連 を断 ち切 ったの である。25

しか し、他方で市場運賃がまった く関係 しな くなった とい うわけではない。保証積荷数量を 超 えたイ ン ド楠 の積み込みについては、約定運 賃 ではな く市場運賃 が適 用 され たか らで あ る (第4図参照)。そ して この市場運賃が どの水準 となるかは、ボンベイ航路 にお ける郵船 ・タタ ライ ンと同盟船社 との競争の展開に依存す るこ とになった。

ところで、5万俵 とい う積荷保証数量は、 じ つは1893年9月9日の5社 との協定にお ける積 荷保証数量 と同 じであった。 この ことは、 日本 郵船 に とってボンベイ航路の開設 ・維持の基本 的前提が荷主側か ら積荷最低保証量‑確定運収 を確保す ることであ り、契約荷主が5社 となる か聯合会 となるかは さしあた り問題ではなかっ た ことを示唆す る。 しか し、協定範囲を5社 に とどめるかあるいは聯合会全体 をカバーす るか は、紡績業者 に とっては死活問題であった。そ の間の事情 を渋沢栄一はつ ぎの よ うに述べてい る。

[ボンベイ航路でP&0を始 め とす る海運同盟 の船社か ら]モシ競争サ レタ場合ニハ五会社 ノミニテ之 ヲ維持 シテ往 ク事ハ覚束ナイ願 ク ハ聯合会 ヲ取纏 メテ此 ノ契約者 タラシムル事 力競争 ノ起 夕時二之 ヲ維持 スルニ必要テアル トイフ事 ヲ深 ク思 ヒマシタ‑‑ (中略)実ハ 聯合会力別 々ニナ ッテ仕舞 フ トイ ウ ト将来 ノ

ど‑・オー

維持力覚束ナイモ シ彼阿力競争 シテ廉イ運賃 テ積 ム トイ フ事ニナル ト五会社 ノ原料 卜他 ノ 紡績会社 ノ原料 トノ価力直 ク違 ッテ来ル有様 力生スル夫力違 ッテ来 タナ ラハ高イ原料 ノ会 社ハ廉イ原料 ノ会社 二負カサ レル事ハ明カテ アル到底五会社 ノ維持力立タヌ訳ニナ ッテ来 ル ‑‑ (中略) ドゥシテモ同一位地二居ル様 ニセネハナ ラヌ所謂 同シ舟 ノ人ニセネハナ ラ ヌ26 ([ ]内は引用者補)

協定範囲を5社 とす るか聯合会 とす るかは、

ま さに紡績業者 の大多数 を 「同シ舟 ノ人」にす ることができるか どうか、またそれ によって聯 合会その ものの分裂 を回避す ることができるか どうかの、重要な岐路であった ことが知れ る。

つま り、聯合会の約定運賃による積荷保証 は、

日本郵船 に対す る支援策である と同時に、聯合 会に結集 した紡績業者間の 日和見的な行動 を防 過す る手段で もあった。 これ によって、紡績業 者側 は市場運賃の動向をみなが ら運搬す る船舶 について郵船 ・タタライ ンか同盟船社かを選択 す るとい う機会主義的な行動 を抑 え られ ること になったのである。

4. 1894

年第‑および第二追加約定

さきの約定書に したがって、1893年11月6日、

日本郵船 の広 島丸がボ ンベイ航 路第 1船 として 神戸を出航 した。 ここにボンベイ航路にお ける 日本郵船 ・タタライ ンの共同事業 と同盟船社 と の競争が開始 されたのである。

競争はお もに運賃の引下げ、それ による貨物 の獲得 をめ ぐってな された。 日本郵船 と聯合会 との1893年契約 によれば、ボンベイ港積 出 し日 本諸港降 しの棉花運賃は40立方 フィー ト1トン 当た り17ル ピー、 うち4ル ピーの割 引 とい うこ とであった (第六条)。 しか し、共 同運航す る タタ側 が、ボンベイ現地の綿糸荷主に対 して同 盟運賃 よ り25パーセ ン ト引きの運賃 をオファー していた。この運賃水準は、同盟運賃の17ル ピー、

その15パーセ ン トの延戻 しを考慮 した正味運賃 の さらに25パーセ ン トの割 引 とい うことで、結 局 トン当た り12ル ピーの運賃 を意味 した。 また タタ側 は、 この運賃ですでに数名 の大手荷主 と の間で積荷の成約 を交わ していた。27このため、

日本郵船 もさきの約定書での約定運賃17ル ピー に対す る割 引を増額す る必要 に迫 られた。1893 年12月14日、 日本郵船 は聯合会 に対 して割 引を

4ル ピーか ら5ル ピーに引き上げることを通知 日本郵船・紡績聯合会のインド棉輸送契約の推移 1893‑1894年 63

(10)

した。28これ は 日本郵船 に とって思 わ ざる運賃 の引下げであった。

しか し、 市場運賃の本格的な引下げは、同盟 船社 か ら仕掛 け られた。 いまその詳 しい経過 を た どることは控 えるが、同盟側 は思い切 った運 賃の引き下げをお こない、1894年1月初頭 まで に、た とえばボ ンベイ/ 日本 間の棉花 ・綿 糸の 同盟 タ リフは トン当た り1ル ピー半 となった。29

さきの約 定書では、他 の船社 が トン当た り13ル ピー以下に運賃 を引き下げた場合 、聯合会が積 荷保証 した5万俵 を超 える棉花 については、競 争相手 と同一水準の運賃で運搬すべ きことを定 めていた (第十条)。 しか し、競争相 手 の同盟 船社 が運賃1ル ピー半 とい う、 もはや タダ同然 にまで引き下げて きた とき、 日本郵船 は これ に どう対処すべ きであったのか。聯合会の結束の ためい くら運賃 を下げて も 日本 向け棉花 を積み 取 ることはできない と判断 して、同盟側 は タダ 同然 の運賃 を 「政略」の観 点か ら掲 げた として も、30 日本側 はそのまま同盟の低運賃攻勢 を放 っ てお けば よいのであろ うか。 関係者 、 とりわけ 聯合会 との橋渡 しをお こない、また この時点で 日本郵船の取締役 となっていた渋沢栄一 はその よ うには考 えなか った。31 かれ は聯合会 に対 し て、 4月の定例会議 を 2月に繰 り上げてまで も、

早急 に郵船 との93年契約 を改訂す るよ う呼びか けた。 その 2月 に開催 され た会議 の席上、渋沢 はつ ぎの よ うな趣 旨の発言 をお こなってい る。

‑‑ (前略)七万五千俵以上 ノ輸入 ス‑ キ モ ノナ ラハ七万五千俵ハ十二 「ルー ピー」運 賃テア トハー 「ルー ピー」半 卜云マス ト大変

あた

ナ懸隔モア リ且 ツ此 ノ競争時期 二方 ツテハ或

ピー ・オ‑

場合 ニハ彼 阿 力聯合会 ノ瓦解 ヲ謀ル為 二無 価テ積 ムカモ知 レマセヌ ソウスル ト原料 ノ価 力ニッニ成テ来ル カ ラ遂二内力崩 レル訳デア ル故二今 日英吉利人二対 シテ 日本人力此 ノ競 争 二打勝 チタイ ト思 フナ ラハ聯合会ハ変テ一 致 シテ総体 ノ綿花 ヲ他 ノ船‑ハ積マヌ トイ フ 事 ヲ契 約 スル カ 宜 イ タ ラ フ ト思 フ ・‑ ・(後 略)32

聯合会分断の意図 を持つ 同盟側 の低運賃政策 に対抗す るためには、聯合会 はその必要 とす る イ ン ド棉 のすべてを 日本郵船 (な らび に共同配 船 してい るタタライ ン)の船舶 に積 み込む よ う 渋沢は勧 めたのである。その際運賃について も、

約 定積荷数量 5万俵 (あるいは了解積荷高 7万 5千俵)の運賃 トン当た り実質12ル ピー を適用 す べ きで、 「総体 ノ棉花」 を積 む か らとい って 郵船 が 「幾分力直 [値] ヲ減 スル カ商売上 当 り 前 ノ事テ アル」33 とい う考 えを聯合会側 は もっ てはな らない。同盟の掲げる トン当た り1ル ピー 半の運賃 は、 「少 シモ将来 ヲ予期 シタ訳テ」 は な く 「決 シテ適 当ナル価格 テモ何テモ無イ」か ら34、 これ との比較 で郵船 の運賃 (引 き下げ) を考 えてはな らない、 と渋沢 は説 く。

聯合会の必要 とす るイ ン ド楠 の輸送すべて を 郵船側 に委ね、 しか もその運賃 は約 定積 高 とお な じ実質運賃 とす るよ う渋 沢は聯合会側 に求 め る一方で、聯合会が郵船側 ‑の譲歩 として、(∋ 海運 同盟 との競争が止んだ後で も郵船 は運賃の

引き上げをお こなわない、② 国家 の補助 がな さ れ る場合 は相応 の運賃引き下げをお こな う、 と い う2点 の確約 を求 め るこ とは妥 当で あ り、郵 船側 もこれ に応 じるであろ うと発言 してい る。35

か くして、聯合会 では渋沢の説 く方 向での契 約 改訂 をお こな うことで一致 し、1894年3月6

日、ボ ンベイ棉花輸送 に関す る追加契約 (第一 追加約 定)が 日本郵船 と聯合会 との間で取 り交 わ され た。

追加約定の条文 は、付録Ⅳ にみ る とお りであ る。す なわち、聯合会 メンバーがボ ンベイか ら 輸入す る棉花 はすべての数量 を 日本郵船 に委託 す るこ と (第‑条)、その運賃 は実質 で1トン 当た り12ル ピー とす るこ と (第 二条)、 この運 賃水準は将来同盟船社 との競争 が止んだあ とで も契約 期 間 中な らび に満 期 後 も維 持 す る こ と (第三条)、また約 定積荷 を超 える積荷 について は市場運賃 を適用す る とい う本約 定第十条 を廃 止す るこ と (第五条)、 さ らに契約期 間それ 自 体 を2カ年 とし、1895(明治28)年11月30日ま

(11)

聯合会 の輸入 イ ン ド棉 す べ て につ いて

5ル ピー の割 引

第5図 第一追加約 定 での運賃 ス キーム 資料 :付録Ⅳ よ り作成

で継続す ること (第六条)、な どを取 り決 めた。

追加約定での運賃スキームを既 出の記号を用 いて図示すれば、第5図の とお りとなる。

この (第一)追加約 定に よって、 「聯合会社 に於て輸入す る孟買綿花 は悉皆其運送 を 日本郵 船株式会社 に委託 し一俵 た りとも他の船舶 に搭 載せ ざるもの とす」 (追加契約第一条) とい う

ことになった。 しか もその運搬棉花すべてにつ いて、聯合会側 は約定運賃 を郵船 に支払 う約束 を した (5ル ピーの割 引があるため紡績業者 が 実質的に負担す る運賃 は12ル ピー とな る)。 こ の ことはなにを意味す るのであろ うか。それ は 約 定運賃 fa‑を市場運賃

f m

か らいっ さい遮 断す ることを意味 した。 同盟側 が どの よ うな競争的 な運賃を呈示 しよ うとも、それ との関連 を完全 に遮断 した契約上の運賃でイ ン ド棉 を輸送す る とい うことである。 それ ゆえ、 この追加契約 は ボンベイ/ 日本間のイ ン ド棉運送市場 を競争的 な海運市場か ら隔離す ることを意味 していた。

イ ン ド棉 の輸送 をめ ぐる競争 は、か くして運 賃 とい う価格 をめ ぐる市場競争か ら離れ、特定 荷主 との双務的な契約 (運送全量に対す る固定 運賃の支払い と船舶 スペースの提供 に関す る相 互確約)の獲得競争 となったのである。 この点 で同盟側 は最初か ら不利 な立場に立た された。

海運同盟 はそ もそ も特定荷主 との個別契約 とい う仕組み を内包 していなかった。大手荷主であ ろ うが小荷主であろ うが、運賃 をふ くむサー ビ ス面で差別化 しない とい うのが同盟の建前であ

り、紡績聯合会相手に この原則 を崩すわけには いなかったか らである。

イ ン ド棉運送の競争市場か らの隔離は、1894 (明治27)年5月4日に 日本郵船 と聯合会社 と の間で締結 された第二追加約定 によって さらに 確実なもの となった。 この契約 の条文は付緑Ⅴ

に掲げた とお りである。

条文にみ られ るよ うに、第二追加約定はイ ン ド棉花の積 出港 を従来のボンベイに加 えて、 コ ロンボ とチ ュチ コ リンの2港 を追加す る とい う 内容 である。積 出港 を増や した理 由はおそ らく 二つ考 え られ る。ひ とつは、本約定お よび1894 年3月の追加約定

(

「第一追加約定」)がボンベ イ港か らの積出棉花 に対象を限定 していたため、

ボンベイ航路の復航ルー ト上にあるほかの積 出 港か らの棉花が協定の対象外 とな り、そ こに競 争相手ない し同業者か らの抜 け道 を作 られ る可 能性があった。 これ を塞 ぐための追加協定 と考 え られ る。 も うひ とつは、聯合会 メンバーが需 要す るイ ン ド棉花 を全量運搬す る体制 を整 える こと、 これ を郵船側が要請 されたため と思われ る。 しか し他方で、積 出港 に関す る協定範囲の 拡大 と最大限のイ ン ド棉輸送‑の要請は、郵船 に とって航路採算 を悪化 させた可能性 がある。

とくに、貨物 出回量が少ない と見 られたチ ュチ コ リン寄港ない し同港か らコロンボ‑の回送 と い う手間は、郵船 としては避 けたかった協定内 容であったか と思われ る。満船積みの 2港間 ピ ス トン輸送が もっ とも効率的であることは、石 日本郵船 ・紡績聯合会のインド棉 輸送契約 の推移 1893‑1894年 65

(12)

炭や鉄鉱 石 な どの嵩高貨物 を積 む専用船 の運航 形態 か らも明 らかで あろ う。 しか しなが ら、航 路採 算 の悪化 を覚悟 してまで も、 日本 向けイ ン ド棉 の運送市場 を競争 市場 か らヨ リ完全 に隔離 す るには、 この第 二追加約 定が必要 であった。

5. おわ りに

以上 、紡績聯合会 と 日本郵船 との間のイ ン ド 棉輸送契約 の成 立 な らび に展 開の過程 をみ るた

めに、1893年8月 の紡績聯合会臨時総会での議 案提案 か らは じめて1894年5月の第二追加 約 定 締結 にいた るまで をた どって きた。最後 に、 こ れ ら契約 内容 の推移 か らえ られ る若干 の結論 に ついてま とめてお こ う。

基本 的 に、イ ン ド棉輸送 をめ ぐる紡績聯合会 と 日本郵船 との相互支持 関係 は、契約 交渉 の最 初か ら確 固た るもの としてあったわけではな く、

それ は推移 的 に形成 され てい った こ とが指摘 で きる。聯合会 と郵船 との最初 の交渉時点 では、

1893年8月 に開かれ た聯合会 臨時総会 での審議 経過 に あ き らか な よ うに、 契約 上 の運 賃 fa‑は 固定 した運 賃 とい うよ りも市場 運 賃

f m

との 関

連 で紡績業者 にプ ラスない しマイナ スの効果 を もた らす基準運賃 とい う性格 を もっていた。 配 船が開始 されれば郵船 と同盟船社 との競争 によっ て市場運賃 は約 定運賃以下 とな るこ とが確 実 に 期待 で きる ことか ら、聯合会 が決議 した運 賃 ス キー ムは競争市場 での運賃 引下 げの効果 を最 大 限 に引 き出そ うとす るものであった。 しか も紡 績業者 のおお くは積荷保 証 を留保 しなが ら、競 争 の展 開か らヨ リ有利 な条件 を引 きだせ ないか 様子見 を決 め こんでいたのであ る。 日本郵船側 が交渉 を断念 したの もそれ な りの理 由が ある と い える。

す で に指摘 した よ うに、積荷保 証 とその固定 運賃、また他方 で運搬 スペー ス提供 の約束 は、

聯合会 と郵船 との相 互支持 関係 の要 とな る部分 であった。 その成 立は、93年 9月 の聯合会 メン バーで もあった5社 か らな る組合 と郵船 との約

定締結 に よって突破 口が開かれ た。聯合会 の多 数 が この約 定 に乗 る形 で93年10月 の基本約 定が 成 立 した。 ただ し、 ここで も注意すべ きは、積 荷 高 が不 足 して も約 定運 賃 fa‑の支払 い を保 証 す る約 定積荷 は聯合会 メンバー が需要す るイ ン ド棉 の一部 に限 られ てお り、それ を超 えて運搬 され る積 荷 に は市場 運 賃 fmが適 用 され た こ と で ある。 日本郵船 と先行 して契約 した組合5社 の約 定積 荷高 を上回 るこ とな く、 しか もそれ を 超 えた (ただ し 2万 5千俵 の了解積 荷 を除 く) イ ン ド楠 については市場運賃 が適用 され る とい う契約 内容 に、他 の聯合会 の メ ンバー は一斉 に 賛同 した。 かれ らに とっては負担が比較的軽 く、

得 られ る便益 が確 実な契約 に乗 り遅れ てはな ら ない、 とい うわ けであ る。

結局、聯合会 と郵船 との相互支持 関係 の完成 は、94年 の第一追加約 定の締結 にあ る とい えよ

う。聯合会 がボ ンベ イか ら積 み 出す い っ さいの イ ン ド棺 の運搬 について 日本郵船 (お よび タタ ライ ン) に委託 し、そのす べ て に約 定運賃 を支 払 うとい う内容 は、臨時船差 し立て をふ くむ郵 船側 の全 出荷量 に見合 う船舶 スペー スの提供 を 交換条件 と してお り、 ここに相互支持 関係 の完 成 がみ られ た。 ただ し、それ は最初 か ら意 図 し た もの とい うよ りは、同盟側 、 と りわけその盟 主で あったイ ギ リス郵船会社p&Oの 「政略」的 な低運賃政策 に よって発動 を余儀 な くされ たス キー ムであった。 日本 向けイ ン ド綿 を海運 市場 か ら隔離す る以外 、同盟 の運賃 ‑価格競争 に よ る聯合会 内部 の分 断政策 を防 ぎきれ なか った と い うこ とであ る。 それ ゆえ、聯合会 と郵船 との 相互支持 関係 の完成 は、海運 同盟 との競争 のな かで特定貨物 の運搬 を海運 市場 か ら引上 げ る と い う非常措置 に よって もた らされ た とい える。

以上の よ うに、ボ ンベイ航 路 にお ける聯合会 と郵船 との相互支持 関係 の形成 が推移 的で ある と して、その契約 は海 上運 送契約 上 ど うい うも の として捉 え られ るであろ うか。最後 に これ に つ いて触れ てお こ う。

す でに指摘 した よ うに、1893年 の基本約 定 に 盛 り込 まれ た運賃 スキー ムでは、海運 同盟 にお

(13)

ける運賃延戻 しと一見同 じよ うな内容が盛 られ ていた。 しか し、荷主に一手積みを条件 として 課す ものではない こと、また荷主が違約 した場 合 には リベー ト‑ 「割 引」の受給資格 を失効す るとい うよ うな条項がない ことによって、同盟 の運賃延戻 し制 とは異 なることを指摘 した。 さ らに、 1894年の第一追加約定では一手積みを確 約す るも、同 じく違約 の場合の 「割 引」受給資 格の失効条項はない。 またそ もそ も 「割 引」に ついて、海運同盟でい う 「延戻 し」 とい う発想 は一貫 して契約 内容 には欠 けていた。海運 同盟 では、荷主の ロイヤルテ ィ、具体的にはその荷 物 をすべて同盟船にだけ積込む約束 を確保す る 手段 として運賃の延戻 しとい う仕組みが導入 さ れた。聯合会 と郵船 との間では、その よ うなロ イヤルテ ィ確保 の仕組 みを運賃スキームに設 け るのではな く、直接契約 に条項 として盛 り込ん だ。すなわち、93年契約で聯合会は年間に積込 む棉花数量の保証 を与 え、また94年 の第一追加 約定では輸入す るイ ン ド棉 の全量について郵船 に運搬 を委託す ることを確約 し、いずれ の契約 で も固定運賃 を支払 う約束 を交わ した。 このよ うな契約 は、定期船社 と荷主 との個品運送契約 とい うよ りも、特定荷 主 と特定船社 との間の個 別契約、つま り専用船契約 に近い契約 内容 と考

え られ る。

今 日の専用船契約の代表例 は、た とえば鉱石 専用船や石炭専用船 にみ られ る。36ここでは鉄 鋼荷主の10年 といった長期積荷保証 にもとづい て、船社 が特定荷主向けに新造船 をお こない、

運航す る。運賃は、船価 の回収 な らびに一定の 利益 を確保 できる水準 に設定 され るが、3年程 度で見直 しがお こなわれ、微調整がな され る。

もちろん、 1893年時点のボンベイ航路開設 にお いて、 日本郵船が聯合会か ら10年 とい うよ うな 長期積荷保証 をえたわけで も、また これ にもと づいて同航路専用の新造船 をお こなったわけで もない。 しか しなが ら、93年 の積荷保証や94年 のイ ン ド棉全量の運搬契約 な どは、荷主か らの 積荷の確約 をえて運航す る専用船 に近い契約 内 容 といえる。 くわえて、約定運賃 も同盟の打 ち

出 した低運賃政策 には追随せず、採算 を考 えて の水準に設定 し直 された ことも、長期安定輸送 を望む専用船契約 に近い内容 といえよ う。実際、

聯合会のイ ン ド棉輸送は、 日本郵船が1896年 に 競争 を収束 してボンベイ航路の海運 同盟 に加入 した後でも、契約 としては毎年更新 されていき、

また運賃について も微調整がそのつ どな され る ことになった。 か くして 日本郵船のボンベイ航 路同盟‑の加入 によって、専用船契約 に近い契 約が海運 同盟の運賃スキームに持 ち込まれ るこ とになった。 これ によって、同盟 内における 日 本郵船の立場 に どの よ うな変化 が生 じたのか、

また聯合会 との 「相互支持関係 」が どの よ うな 変容 をこ うむ ることになったのか、 これ らの点 については別稿の課題 としたい。

付録Ⅰ調査委員会原案 (明治26年8月6日)37

(なお各条項末尾の括弧 とその中の数値 は引用 者が参照の便宜のため入れた ものである)

‑ 日本郵船会社 トノ契約ハ常務委員三名 ノ名 ヲ以テスル事 (①)

一 同社 トノ契約ハーヶ年 卜定ムル事 (②)

‑ 総テ孟買 ヨリ買入ル ヽ棉花 ノ運賃‑ー噸 二 付拾参ルー ピー ヲ払 フ事 (③)

一 同盟綿 商 ノ外 ヨ リ一切 同業者ハ棉花 ヲ買入 レザル事 (④)

‑ 内外船 ニテ競争上‑噸拾参ルー ピー以下二 運賃 ヲ引下 クル ト錐 トモ、 同盟綿商 ヨ リハ 紡績業二対 シー噸拾参ルー ピー運賃 ヲ申受

クル事 (⑤)

一一 競争上運賃 ヲ引下ゲ タル結果 二依 り生 ジタ ル差金ハ之 ヲ積置 キ、 同盟綿商ハ確 実ナル 方法 ヲ設 ケ保管スル事 (⑥)

‑ 競争上反対 ノ結果 二依 り外船二於テ運賃 ヲ Jif)i5'[

拾七ルー ピー以上二引上ゲ、又ハ拾参ル ー ピーニ引下ゲザル トキハ拾参ルー ピー以上 ノ差金ハ積置金 ヲ以テ之 ヲ支弁スル事 (⑦)

‑ 前条 ノ場合 ニシテ若 シ積置金之 レ無 キ トキ ハ 、同盟綿 商二於テ立替へ支弁 シ置 キ、毎 日本郵船 ・紡績聯合会のインド棉輸送契約 の推移 1893‑1894年 67

(14)

半半季各社孟 買棉花 買入高二応 ジ賦課徴集 スル事 (⑧)

‑ 運賃引上高 ノ差金 二対 シ、積置金 ヲ以テ支 [アル]

弁 シタル上、剰余金ナキ トキハ毎半季 二孟 買棉花 買入高二応 ジ分賦返戻スル事 (⑨) 盟 ヲ申込 ム トキハ、常務委員 ノ見込 ヲ以テ 之 ヲ許 ス事 (⑩)

一 本案 二係ル一切 ノ経費ハ都テ孟買棉 買入 高 二賦課 スル事 (⑪)

‑ 同業 中約束 ヲ破 り同盟外 ノ綿 商 ヨ リ孟買棉 花 ヲ買入 レタル トキハ発 見次第何時ニテモ 相 当違約金 ヲ申受 クル事 (⑫)

‑ 孟買二於テ ノ回漕事務所ハ各取引先 ノ綿商 ヲ以テ組織 スル事 (⑬)

一 本案決議 ノ上ハ相談委員五名 ヲ撰 ミ、常務 委員 卜協議 ノ上、郵船会社及 ヒ綿商二関ス ル都テ決定執行方 ヲ委託 スル事 (⑭) 一 都テ決定後 ノ事務ハ聯合会事務所 二於テ執

行 スル事 (⑮)

‑ 郵船会社 ノ契約 中、殊 二期節 二依 り船舶 ノ 大小又ハ増減 ヲ協議 シ得ル事 ヲ記載 スル事

(⑯)

‑ 日本郵船会社ハ海 上保険船積入費其他 回漕 二係ル入費ハ外 国汽船会社 卜同一 ノ価格 ヲ 以テ支弁セ シムル事 (⑰)

付録Ⅱ総会決議要領 (明治26年8月10日)38

第‑ 日本郵船会社 トノ契約ハ常務委員三名 ノ 名 ヲ以テスル事

第二 同社 トノ契約ハ一個年 卜定ムル事 第三 総テ孟買 ヨ リ買入ル ヽ棉花 ノ運賃ハー噸

二付拾七 「ルー ピー」 ヲ払 フ事

但 四 「ルー ピー」ハ 日本郵船会社‑特別 割 引ヲ為サ シムル事

第 四 同盟棉 商 ノ外 ヨ リ同業者ハ一切孟 買棉花 ヲ買入 レサル事

但同盟外 ヨ リ買入ル ヽ場合 アル トキ‑≡

百斤一俵 二付金五十銭 ヲ買主 ヨ リ同盟‑

納付 シ其 旨聯合会‑通告 ス‑ シ

第五 同盟棉 商‑ 同盟外‑孟買棉花 ヲ売渡ス ヲ 得ス

但 同盟外‑売渡 ス時ハ一俵 二付五十銭 ヲ 売主 ヨリ納付 シ其 旨聯合会‑通告ス‑ シ 第六 内外船 ニテ競争上‑噸拾七 「ルー ピー」

以下二運賃 ヲ引下 クル ト錐 トモ 同盟棉 商 ヨリハ紡績業二対シー噸拾七 「ルー ピー」

ノ運賃 ヲ申受 クル事

第七 競争上運賃 ヲ引下ケ タル結果 二依 り生 シ タル差金ハ之 ヲ積置 キ、聯合会 二協議 ノ 上 同盟棉 商ハ確 実ナル方法 ヲ設 ケ保管 ス ル事

第八 競争上反対 ノ結果 二依 り外船 二於テ運賃 ヲ拾七 「ルー ピー」以上二引上ケ タル時 ハ以上 ノ差金ハ積置金 ヲ以テ之 ヲ支弁 ス ル事

第九 前条 ノ場合 ニシテ若 シ積置金之 レナ キ時

‑ 同盟棉 商二於 テ立替‑支弁 シ置 キ毎半 季各社孟 買棉花 買入 高二応 シ賦課徴集 ス ル事

第十 競争上反対 ノ結果 二依 り万一最初 ヨ リ拾 七 「ルー ピー」以上 ノ運賃 ヲ仕払ハサル ヲ得 サル場合 二於テハ其取替金 二対 シ相 当利子モ併セテ徴集 ス‑ シ若 シ之二差金 ヲ預 り置 ク場合 二於 テハ之二対 シテモ相 当利子 ヲ付 スル事

第十一 運賃引上高 ノ差金 二対 シ積置金 ヲ以テ 支弁 シタル上剰余金 アル時ハ毎半季 二孟 買棉花買入高二応 シ分賦返戻スル事 第十二 内外 ノ商店 ヲ間ハ ス確 実ナル商店 ヨ リ

同盟 ヲ申込 ム時ハ常務委員 ノ見込 ヲ以テ 之 ヲ許 ス事

第十三 同盟 二係ル一切 ノ経費ハ都テ孟 買棉 買 入高二賦課 スル事

第十 四 同業 中約束 ヲ破 り同盟外 ノ綿 商 ヨリ孟 買棉花 ヲ買入 レタル 時ハ発 見次第何時ニ テモ三百斤一俵 二付武 円五十銭 ヲ申受 ク ル事

第十五 前条 ノ発 見 ヲナ シ本会事務所‑密告 ス ル者‑ハ違約金 ノ半額 ヲ付与シ‑ シ

(15)

第十六 孟買二於テ ノ回漕事務所ハ各取 引先 ノ 棉商 ヲ以テ組織 スル事

第十七 本案決議 ノ上ハ相談委員五名 ヲ撰 ミ常 務委員 卜協議 ノ上郵船会社及 ヒ棉商 二関 ス都テ決定執行方 ヲ委託 スル事

第十八 都 テ決定後 ノ事務ハ聯合会事務所 二於 テ執行 スル事

第十九 郵船会社 ノ契約 中殊 二期節 二依 り船舶 ノ大小又ハ増減 ヲ協議 シ得ル事 ヲ記載 ス ル事

第二十 日本郵船会社 ノ海 上保 険、船積入費其 他 回漕 二係ル入費ハ外 国汽船会社 ヨリ高 価ナ ラサル価格 ヲ以テ処理 ス‑ キ事 第廿‑ 常務委員相談委員ハ本案執行 二付必要

ナル諸規則 ヲ制 定 シ本案 ノ文字 ヲ修正 シ 及 ヒ本案執行上差支ナ シ ト認 メタル 時ハ 之 ヲ実行 スル事

第廿二 本案確 定 ノ上ハ 同盟各社 ノ認証 ヲ受 ク 可キ事

付録Ⅲ 日本郵船 と聯合会社 との約定書 (明治 26年10月28日)39

第一条 日本郵船船会社ハ此約定 ノ条件二依 り、

前記 ノ聯合会社 [社名略]カ印度 「ボンベ‑」

ヨリ輸入 スル棉花 ヲ運送ス‑ シ

第二条 日本郵船会社ハ英国 ロイ ド会社 ノ登記 ヲ経第一等二該 当スル汽船 ヲ使用ス‑ シ 第三条 前条 ノ航海ハ天災其他不時 ノ出来事ニ

テ航海 二堪‑サル場合 ヲ除キ通常毎三週一回 ヲ目的 トシ少ナ ク トモ毎四週一回 「ボンベ‑」

ヨリ出船 シ適宜 ノ港津 ヲ経テ相 当ノ期間二神 戸‑到達ス‑ シ

日本郵船会社ハ其便宜二依 り 「ホンコン」又 ハ他 ノ港津二於テ積替 ヲナス コ トアル‑ シ 第四条 日本郵船会社 二於テ、前両条 ノ約束 ヲ

履行セス聯合会社 ノ輸入棉花五万俵 ヲー ヶ年 ノ期間二運送 シ得サル場合 二於テハ其運送不 足俵数二相当スル噸数二対シ毎噸四 「ルー ピー」

ノ割合 ヲ以テ 日本郵船会社 ヨリ聯合会社‑棉

償金 ヲ支払 フ‑ シ

第五条 聯合会社 二於テ棉花運送 ノ為 メ 「シン ガポール」 「ホンコン」 「シャンハイ」 ノ外更 二他 ノ港津‑寄船 ヲ要 シ其積荷‑港二付千俵 以上ア リテ本船 「ボンベ‑」出船前相 当ノ期 間二於テ通知 スル時ハ毎三週一回ノ航海 二差 支ナキ限 リハ 日本郵船会社ハ其請求二応 ス‑

第六条 聯合会社カ 「ボンベ‑」 ヨリ積入ル → 綿花 ノ運賃ハ荷物本船受渡 シニテ長崎神戸又 ハ横浜二至ルマテー噸 (四拾立方尺)ニ付印 度貨十七 「ルー ピー」ト定 メ 日本郵船会社 は 其内四 「ルー ピー」 ヲ割 引ス‑ シ沿道寄港 ノ 地 ヨリ積入ル ヽ棉花ハ現今普通 ノ運賃 ヲ標準

トシ二割五分 ヲ割 引ス‑ シ

第七条 聯合会社ハー ヶ年五万俵 ノ棉花積荷 ヲ 担保 シ万一積荷 ノ高通計五万俵二上 ラサル ト キハ聯合会社ハー噸十三 「ルー ピー」 ノ割合 ヲ以テ五万俵 二対スル不足俵数 ノ運賃 ヲ 日本 郵船会社二補充ス‑ シ

前項補充 ノ金額ハ、聯合会社連帯ニテ其責二 任 ス‑ シ

第八条 日本郵船会社ハ聯合会社外 ノ棉花 ヲ 日 本‑運送スル トキハ総テー噸二付十七 「ルー ピー」ノ割合 ヲ以テ運賃ヲ収入 シ其内四 「ルー ピー ヲ聯合会社二譲与ス‑ シ但約定外 ノ棉 花運賃十七 「ルー ピー」以下十三 「ルー ピー」

以上ナル時ハ其差金 ヲ譲与スべ シ十三 「ルー ピー」以下二降 り船腹二空虚 ヲ生スル場合二 於テハ 日本郵船会社ハ及 フ‑ キ限 り棉花以外 ノ荷物 ヲ以テ之 ヲ充 タス コ トヲ勉 ム‑ シ而シ テ尚荷物不足スル トキニ限 り棉花 ヲ積入ル ヽ

コ トヲ得

第九条 聯合会社二於テ棉花綿 糸ニアラサル他 ノ貨物 ヲ印度地方 ヨリ輸入 スル トキハ 日本郵 船会社ハ其種類二依 り積入 当時普通 ノ運賃 ヨ

リ相 当ノ割 引ヲナス‑ シ

第十条 内外国汽船会社二於テ棉花 ノ運賃 ヲ十 三 「ルー ピー」以下二引下グルモ ノアル トキ ハ 日本郵船会社モ亦第七条二掲 グル担保 ノ俵 数二超過 スル積荷二対 シテハ、同一 ノ割合 ヲ 日本郵船 ・紡績聯合会のインド棉輸送契約 の推移 1893‑ 189469

(16)

以テ運賃 ヲ引下 グベ シ

第十一条 日本郵船会社ハ此約定荷物 ト 「ボン ベ‑」約定荷物 卜福湊 スル時 卜錐モ常二公平 ヲ旨 トシ本船容量 ノ半数マテハ聯合会社 ノ荷 物 ヲ積入ル‑ シ其公平 ヲ維持 スルカ為聯合会 社力其取引先 ノ綿商 ヲシテ 「ボンベ‑」ニ於 ケル回漕事務二参与セ シムル事 ヲ要スル トキ ハ 日本郵船会社ハ其請求二応 ス‑ シ

第十二条 日本郵船会社ハ聯合会社 ノ積荷 ヲ差 措 キ他人 ノ荷物 ヲ積入ル‑カラス

第十三条 日本郵船会社ハー ヶ年聯合各会社 ノ 社員二名 ヲ限 り食卓料 自弁 ヲ以テ往復乗船 ヲ 許 スベ シ

第十四条 聯合会社 ノ積荷多キニ随 ヒ船舶 ノ更 替又ハ航海 回数 ノ増加 ヲ要シ其得失相償 フ‑

キ見込アル トキハ 日本郵船会社ハ其請求二応 スへ シ′

第十五条 日本郵船会社二於テ若 シ 日本政府 ヨ リ 「ボンベ‑」航海二対 シ特別 ノ保護 ヲ受 ク ル事アル場合二於テハ該会社ハ聯合会社二相 当ノ譲与 ヲナス‑ シ

第十六条 日本郵船会社二於テ其便宜二依 り他 ノ運送者 ヲシテ此約定運送 ノ事二参加 シ若 ク ハ連合セ シメン ト欲 スル トキハ聯合会社ハ之

ヲ承諾 ス‑ シ

第十七条 本邦又ハ印度二於テ天災若 クハ人事 上予期 ス‑カラサル異変 ヲ生シ棉花 ヲ輸入 シ 又ハ輸 出シ能ハサルニ至 リタル トキハ協議 ノ 上此約定 ノ一部若 クハ全部 ノ施行 ヲ中止 シ若 クハ廃止スル コ トアル‑ シ

第十八条 紡績業者及綿業者 二於テ此約定二加 名セ ン ト欲 スル者 アル トキハ此契約者双方協 議 ノ上其許否 ヲ決 ス‑ シ

第十九条 聯合会社ハ 日本郵船会社 二対 シ第七 条補充金連帯責任 ノ場合及分 ツコ トヲ得‑カ ラサル条件 ヲ除 クノ外此約定二依 り各 自二権 利 ヲ得義務 ヲ負 フ‑ シ

第二十条 此約定ハー ヶ年 ヲ以テ期限 トス但 シ 契約者 ノ一方力約定期間二其義務 ヲ完 クシ尚 ホ向フー ヶ年約定継続 ヲ申出ル トキ‑、他 ノ ー方ハ之二応 ス‑ シ

70

付録Ⅳ 日本郵船 と聯合会 との追加契約 (第一 追加約定。明治

2 7

3

6

日)40

第一条

聯合会社 に於て輸入す る孟買綿花は悉皆其運 送 を 日本郵船株式会社 に委託 し一俵た りとも 他の船舶 に搭載せ ざるもの とす

但 し日本郵船株式会社 の都合 を以て其委託せ られたる棉花 を他 の船舶 に搭載す るは此限に あ らず

第二条

第一条運送棉花 の運賃 は本約 定第六条 に依 る即 ち‑噸 (四拾 立方 尺) に付 印度貨十七

「ルー ピー」 と定 め 日本郵船株式会社 は其 内 五 「ルー ピー」を割戻すべ し

第三条

第二条運賃の定額 は将来競争止みた る場合 に於て も此約定期間及満期後継続す る間は加 重す ることを得ず

第四条

日本郵船株式会社 は第‑条 の棉花 を輸送す る為め必要の季節 に於ては本約定第三条に規 定 したる外臨時船 を使用すべ し然れ ども若 し 聯合会社 に於 て将来或 る施設 に依て孟買棉花

を季節 に拘 は らず輸入の数量 を年 中毎航平均 して搭載 し臨時船の使用 を必要 とせ ざること を得 るに至 る ときは担保以外の輸入棉花に対 しては更に協議 を遂げ運賃定額 の幾分 を減額 す ることあるべ し

第五条

本約 定書 中第十条 は此追加約定 に依 て消滅 す

第六条

約定期 限は本約 定第二十条 に‑ カ年 とある を二 カ年 と改め明治二十八年十一月三十 日ま で継続す るもの とす

付録 Ⅴ 日本郵船 と聯合会社 との第二追加約定 (明治

2 7

年5月4日)41

参照

関連したドキュメント

III.2 Polynomial majorants and minorants for the Heaviside indicator function 78 III.3 Polynomial majorants and minorants for the stop-loss function 79 III.4 The

(The Elliott-Halberstam conjecture does allow one to take B = 2 in (1.39), and therefore leads to small improve- ments in Huxley’s results, which for r ≥ 2 are weaker than the result

“Breuil-M´ezard conjecture and modularity lifting for potentially semistable deformations after

lines. Notice that Theorem 4 can be reformulated so as to give the mean harmonic stability of the configuration rather than that of the separate foliations. To this end it is

S., Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English, Oxford University Press, Oxford

At the end of the section, we will be in the position to present the main result of this work: a representation of the inverse of T under certain conditions on the H¨older

支払方法 支払日 ※② 緊急時連絡先等 ※③.

また、同法第 13 条第 2 項の規定に基づく、本計画は、 「北区一般廃棄物処理基本計画 2020」や「北区食育推進計画」、