日本 の貸 出市場 と貸 出金 利 の 決定
菅 原 晴 之
1.は じ め に
日本 の貸 出 市 場 の機 能 や 金 利 の決 定 につ い て ,日 本 に特 有 の金 融 シス テ ム や 金 融 政 策 の波 及 経 路 を解 明 す る研 究 が 活 発 に行 わ れ て きた
。 就 中,1970年 代 後 半 か ら 日本 の貸 出市 場 の特 色 と して貸 出 金利 の硬 直 性 が 注 目 され
,実 効 金 利 と表 面 金利 との識 別 を可 能 にす る仮 説 が 提 示 され て
,理 論 的 実 証 的 分 析 が 数 多 く試 み られ た。 しか し,貸 出金 利 の 内 生 的 決 定 メ カ ニ ズ ム や金 利 の制 度 的決 定 要 因 な どにつ い て多 くの仮 説 が提 起 され な が ら
,金 利 の 決 定 や 貸 出 構 造 に関 す る理 解 が収 束 した とはい え な い。 さ らに1980年 代 後 半 か らマ ネ ー サ プ ラ イの伸 び率 や 貸 出対 象 分 野 な どの構 造 面 も大 き く変 化 す る過 程 で
,同 時 に制 度 面 で も金 融 の 自由化 が進 展 す る な どの事 実 も無 視 で きな い
。 特 に銀 行 の運 用対 象 と して の国 債 の割 合 が増 加 しつ つ ,こ の 分野 の 自 由化 が貸 出市 場 や 預 金 市 場 の 自由化 を促 進 して い る点 も無 視 で きな い。
この よ うな実情 を念 頭 に置 きな が ら,以 下 で は 日本 の貸 出 市 場 に関 す る研 究 を展 望 しつ つ近 年 にお け る この 市場 な らび に公 社 債 流通 市場 に関 す る実 証 分 析 を試 み た い。 そ の た め の理 論 分 析 の仮 説 と して 日本 の貸 出市 場 の制 度 的 特 色 や,銀 行 と企 業 あ る い は イ ンター バ ン ク取 引 に関 す る取 引 慣 行 を明 確 に
した 上 で,金 利 の決 定 メ カ ニ ズ ム を解 明 した い。
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2.貸 出 市 場 に関 す る論 争
日本 の貸 出市 場 の 特 色
ガ ー シ ェ ン ク ロ ンの仮 説 に よれ ば,後 発 工 業 国 の発 展 段 階 で は間 接 金 融 が 優 位 に な る。 しか し第 一 次 世 界 大 戦 後 に テ イ ク ・オ フ を完 了 した 日本 経 済 は,
内部 資 金 に依 存 す る資 金 調 達 だ けで は旺盛 な国 内 需 要 に応 じ られ るだ け の十 分 な民 間投 資 が行 わ れ な いた め,次 第 に従 来 と異 な っ た資 金 供 給 ル ー トを確 保 す る必 要 に迫 られ た 。 そ こで外 部 資 金 調 達 の手 段 と して 資 本市 場 が 注 目 さ れ,公 社 債 市 場 を育 成 す る こ とに よ り,資 本 市 場 は 自由 な市 場 として成 長 し た 。 実 際,1931年 に お け るフ ロ ーべ 一 ス の産 業 資 金 供 給 の87%が 直 接 金 融 で あ っ た。 そ の後 間 接 金 融 で あ る銀 行 等 の貸 出 が 次 第 に増 加 した が,産 業 資 金 供 給 に 占 め る割 合 が50%を 越 えた の は1939年 以 降 で あ り,し か も1941年 と42 年 は50%を 割 る こ ともあ り,終 戦 の年 を除 け ば第 二 次 世 界大 戦 中 で さ え間 接
1)
金 融 の割 合 は概 ね50%程 度 で頭 打 ち に な った と考 え られ る。
この よ うに戦 前期 に戦 後 期 と比 較 して,直 接 金 融 に よ る資 金 調 達 の割 合 が 高 か っ た の は,金 融 市 場 に対 す る行 政 サ イ ドの 介 入 が 強 くなか った こ とが 第 一 の 要 因 と考 え られ る。 第 二 に税 制 度 が 当時 は酒 税 を は じめ とす る間接 税 中 心 主 義 で あ り,直 接 税 の税 率 の 累進 度 も戦 後 の よ うに急 カー ブで は なか った こ と も重 要 で あ る。 な ぜ な ら,こ の こ とは所 得 ・資 産 格 差 が 戦 後 よ り大 きか った こ とを示 し,富 裕 層 や 多 額 の証 券 を保 有 す る財 閥 企 業 が競 争 的 な ス ポ ッ
ト市 場 に資 金 を十 分 に供 給 す る こ とが可 能 で あ った か らで あ る。 しか し,財 閥 の存 在 自体 が 重 要 な要 因 とは な らな い。 なぜ な ら戦 後 の企 業 集 団 に お い て
も,間 接 金 融 シス テ ム 中心 の制 度 にお い て お の お の の グル ー プ に所 属 す る銀 行 と総 合 商 社 が 中 心 とな って戦 略 的 に大 企 業 へ の 銀 行 融 資 を優 先 した た めで あ る。 しか も輸 出 商 品 ほ ど優 先 度 が 高 く,外 貨 の確 保 は 緊急 的 な課 題 で あ っ た。 この戦 後 の企 業 集 団 の メ ンバ ー の 多 くは戦後 の新 興 企 業 を除 け ば,同 じ
旧財 閥系 企 業 で あ る。
しか し この 間接 金 融 中 心 の経 済 は戦 後 日本 の長 期 的 展 望 にた って構 築 され た よ うに は思 わ れ な い。 民 間 部 門 も政 府 部 門 も圧 倒 的 に資 金 不 足 の状 態 にあ り,し か も外 資 をい っ さ い導 入 しな い方 針 の も とで イ ン フ レ を発 生 させ ず に 国 内 復 興 に よ る旺 盛 な資 金 需 要 に応 え るた め に は,第 一 に消 費 を控 えて貯 蓄 を奨 励 す る必 要 が あ る。 第 二 に,当 面 輸 出主 導力 が あ る と考 え られ る産 業 と そ の イ ン フ ラへ の優 先 的 な 資 金供 給 を実施 す る。 なぜ な ら国 内 を豊 か にす る た め に は,多 くの天 然 資 源 を海 外 に依 存 しな けれ ば な らな い の で外 貨 を確 保
しな けれ ば な らず,そ の た め に は ス ポ ッ ト市 場 の直 接 金 融 中 心 の 金 融 シス テ ム で は緊 急 的 な外 貨 の確 保 とい う課 題 を ク リアで きな い と考 え られ た の で あ る。 日本 銀 行 が 民 間 銀 行 を指 導 して護 送 船 団 方式 に よ る政 策 運 営 が 可 能 に な っ た の は1942年 の 日本 銀 行 法 の制 定 に よる と こ ろが大 きい
。 しか し貸 出 市場 の ス ポ ッ トで は な く相 対 型 の市 場 と して,戦 略 的 な輸 出 優 先 の資 金 供 給 を可 能 に す るた め に は金 利 体 系 の 序 列 化 が 必 要 とな った。 そ こで1952年 に臨 時 金 利 調 整 法 が 制 定 され た。 その後1970年 代 半 ば まで金 利 水 準 は低 く抑 え られ て , 景 気 の動 向 は貸 出 市 場 に お け る需 給 ギ ャ ップがバ ロ メー タ とな っ た
。 日本 の 経 常 収 支 の恒 常 的赤 字 を解 消 す る こ とは経 済 政 策 の長 期 的 課 題 で あ り,大 戦 終 了 直 後 の政 府 に とっ て半 永 久 的 な課 題 と思 わ れ た の で あ ろ う。 しか し経 常 収 支 の赤 字 基 調 は1960年 代 後 半 に解 消 し,む しろ その後 黒 字基 調 に転 換 した の で あ っ た。 い わ ゆ る1940年 体 制 は この時 期 に終 了 した とい え るの で あ り
, 終 戦 後 か ら現 在 まで の50年 間 の 内半 分 に も満 た な い20年 あ ま りしか 続 か な か
っ た とい え よ う。 と ころが 貸 出 市 場 を は じめ,資 金 供 給 の仕 組 み や税 制 度, 財 政 投 融 資 制 度 な ど,融 資 重 点 分 野 は時代 と と もに変 化 した もの の,マ ク ロ 並 び に ミク ロの 両 面 で歴 史 的 に大 き く転 換 して い る環 境 に政 策 の制 度 が 適 応
した とは言 い難 い。
戦 後 の産 業 資 金 の供 給 は圧 倒 的 に民 間 間 接 金 融 に依 存 して お り,直 接 金 融 に よ る資金 供 給 の 割 合 は大 幅 に低 下 した。 む しろ財 政 投 融 資 に よ る政 府 の金
日本の貸出市場と貸出金利の決定77
融 仲 介 の割 合 が無 視 で きな い ほ ど大 きい ばか りで は な く,民 間 金 融機 関 で は 融 資 す るの が 困難 な分 野 に多額 の 資 金 が 供 給 され た。 財 政 投 融 資 資 金 は産 業 イ ンフ ラや 住 宅 な ど民 間 金 融 機 関 の対 象 分 野 とはな らな い分 野,す なわ ち 日
の 当 た らな い分 野 に融 資 して 民 間金 融 機 関 の 資 金 を補 完 しつ つ,一 方 民 間 金 融 機 関 は輸 銀 や 開 銀 な どの審 査 を踏 襲 す るな ど,政 府 の 間接 的 な指 導 を受 け
て いた と言 え よ う。 この よ うな間 接 金 融 中心 の貸 出市 場 にお いて,資 金 の流 れ は政 策 当局 の規 制 を強 く受 けた 。規 制 の 具体 的 な 内容 と して,ま ず 第 一 に
2)
人 為 的低 金利 政策 が 信 用割 り当 て を形 成 し,特 に基 幹 産 業 と輸 出産 業 に資 金 を重 点 的 に配 分 した。 外 資 の導 入 を完 全 に遮 断 す る こ とに よ って,安 定 的 か っ戦 略 的資 金 配 分 の 国家 的 目標 を容 易 に達 成 す る こ とが で きた。
人 為 的低 金 利 政 策 は次 の 規制 に よっ て可 能 にな っ た。 第 一 に,臨 時 金 利 調 整 法 は金利 の上 限 を規 制 す る と同時 に,歩 積 み ・両 建 て 等 が 黙認 され て 実 質 的 に金 利 の 引 き上 げ を困難 に した 。第 二 は大 蔵 省 の 行 政 指 導 に よ る銀 行 の参 入規 制 と店 舗 規 制 で あ る。 特 に戦 後 国 内民 間 金 融 機 関 の新 規 参 入 は一 件 も認 め られ て い な い。 また 低 金 利 に よ って店 舗 の拡 張競 争 が経 営効 率 を低 下 させ る こ とをお そ れ て競 争 を制 限 し,特 に競 争 力 が 劣 る 中小 金 融 機 関 ほ ど店 舗 の 拡 大 を優 遇 した 。一 方 財 政 面 で は大 都 市 並 び に主 要 な工 業 地 帯 か ら離 れ た地 域 に優 先 的 に補 助 金 でバ ッ クア ップ した の で所 得 の 地域 間格 差 が縮 小 した上, 上 記 の よ う に地 方 の 中小 の 金 融機 関 の店舗 の拡 大 が 顕 著 で あ った た め,資 金 の偏在 が生 じ建.す なわ ち欄 的 に大都市1礫 中す る都繊 行 は基:.業 や 主 力輸 出産 業 を担 う大 企 業 に対 して優 先 的 に資 金 を供 給 す るの で 資金 不 足 が 発 生 す るが,地 方 に店 舗 を配 置 す る傾 向 が 強 い中小 金 融機 関 の地 元 で は資 金 需 要 の割 に は補 助 金 な どの手 厚 い 配 分 が行 わ れ た た め に,資 金 の余剰 が 生 じ
る傾 向 に あ る。 この資 金 が コール 市 場 な ど を通 じて都 市 銀 行 等 に流 れ た の で あ る。 さ らに長 期 信 用 銀 行 は もっ ぱ ら金 融 債 を発 行 して,地 方銀 行,当 時 の 相 互 銀 行s信 用金 庫 等 が これ を供 給 す る こ とで 長 期 資 金 の 供 給 ル ー トが確 保 され て い た。 また都 市 銀行 が 集 め る資 金 は比 較 的 預 入 期 間 の短 い預 金 等 で あ
り・ 本 頬 出鯛 も短 い はず で あ るが
,「 転 が し」に よ って実 質 的 に は蜘 信 用 を可 能 に した こ とに な る・ この よ うに して,国 内 の鋤 機 関 は戦 醐 彫 成 され た銀 行 等 の 序 列 体 系 の も とで 「護 送 船 団 方 式 」 に よ
っ て鍬 市 場 縮 築 され た の で あ る。
一 方・ 「外 国 為 替 管 理 法 」に よっ て 躰 の金 融 市 場 は海 外 飴 か ら遮 断 され た 。 円転 換 規 制 が 国 内 円 の海 外 へ の 流 出 を完壁 に阻 止 す る よ うに
コ ン トロー ル す る と と もに・ 国 内企 業 が海 外 か ら飴 を調 達 す る こ とを事 実上 不
可 能 に した。
戦 後 躰 の鋤 市 場 の特 色 は四 点 が 指 摘 され て い る
.そ の うち間雛 融 の 優 位 と人 為 的低 金利 聯 に つ い て は述 べ た とお りで あ る
.さ らに銀 行 と 職 との 関係 で.;外 国 と比 較 して も特 色 が 際 だ つ 点 と して オ ーバ ー 。一 ン を あ げ る こ とが で き る・ イ ンター バ ン姉 場 は ミク ・ に資 金 が不 足 す る鍬 機 関 が存 在 して・ そ の不 足 す る飴 を借 り入 れ て も
,マ 知 的 に は糊 的 に不 足 す る資 金 をす べ て供 給 す る事 はで きな い.こ の こ とを解 消 す るの 力泪 鰭
り入 れ で あ り・ それ が 長 い間 恒 常 化 す る現 象 をオ ーバ ー ・一 ン と呼 ぶ .̲方, オ0バ 』 ボ ロイ ング は企 業 の 資 金 謎 の 割 合 が 銀 行 借 り入 れ に大 き く依 存
し つ つ そ れ が恒 常化 して い る こ と を示 す
。 高度 成 長 期 まで はオ ー バ0ロ ー ン と オ0バ 』 ボ ロイ ング とは表 嬰 体 の 関係 をこあ った が
i後 の後 半 に お い て都 市 銀 行 の運 用 先 が 国債 や 不動 産 部 門 な どをこも拡 大 した た め
,両 者 がパ ラ レル な 関係 に あ る とは限 らな い。
以 上 で述 べ た 四点 の うち,間 接金 融 の優 位 性 に つ い て は大 きな争 点 は な い とい って よ い・ 次 の人 為 的 低 金 利 政 策}こつ い て は
,長 い間 金利 が 低 い水 準 に 固 定 され て お り・ 特 に貸 出金 利 が競 争 的 に形 成 され た か否 か に つ い て は大 き な争 点 とな った。 以 下 で は これ を展 望 す る。
貸 出市 場 に お け る金 利 の 決 定
日本 の貸 出 市場 に関 す る争 点 は,貸 出金 利 の決 定 方 式 お よび貸 出金 利 が な 日本の貸出市場 と貸出金利の決定79
ぜ 硬直 的 か をめ ぐる もの で あ る.競 争 原理 力雪作 用 す る標 準 的理 論 に よれ ば・
貸 出 の 限界 費 用 は競 争 的 な イ ンター バ ンク金 利 に接 近 す るはず で あ り湘 対 的 に低 槻 制 され て い る公 定 歩 合}こ等 し くな る必 要 はな い ・ しか し現 実1こは 貸 出 金利 は イ ンター バ ン ク ・レー トや 現 先 レー トよ り公 定 歩 合 の よ うな規 制 金 利 に翻 す る傾 向が 強 い 。 この こ とは公 定 歩 合 が変 甦 れ る と・ まず長 期 プ ライ ム ・レー トが連 動 して変 化 した 上 で,こ れ に一 定 の上 乗 せ 幅 を加 えて 預 貯 金 金 利 が 設 定 され る.飴 金利 も これ に あ る程 度連 動 して 変 化 す るが ・ 金利 の 上 昇 期 こも貸 出.:.が 旺 盛 で あ った こ とか ら見 て も当該 金 利 が超 過 需 要 を解 消 す る ほ ど+分 高 か った とは言 え ない ・ 一 方 ・ 公 定 歩 合 が 低 い時 期 に も貸 出 金利 につ い て は そ の下 落 率 が 低 し・もの の水 鞘 体 も低 下 して お り・ 金 利 の序 列 体 系 は維 持 され て い た。 も し金利 の一 部 に つ い て競 争 原 理 が 働 い て
いれ ば,金 融 政 策 の緩 和 期 と引 締 期 にお い て長 短 金 利 に関 して順 イ ー ル ド と 逆 イ̲ル ドの両 方 の現 象 が罐 され る はず で あ るが 詩 に高 度 成 長 期 に は実
際 に は恒 常 的 に順 イ ー ル ドしか観 察 され な い 。
さて,日 本 の貸 出金 利 の硬 直 性 を説 明 す るた め に様 々 な解 釈 が 行 わ れ て き
葱 蕪 藷 欝齢 徽 ナ 辮 謙 製 緯
お ける貸 し手 と借 り手 の リス ク ・シ ェア リン グ を重視 す る暗黙 の契 約理 論,
④ 独 占 ・寡 占の状 態 で フル コス ト原 理 の仮 説 に基 づ い て金 利 の設 定 が 行 われ る と説明す る威 ⑤不均ql量 分析 の方法 を躰 の貸 出市場 樋 用す る こ
とによ り金利 の価格調 整機能 を統計 的 に検証 して,間 接的 に貸 出金利 の硬直 性 の可難 を説明す る議 等 に分類 で きる.こ の うち② お よび③ の仮説 は・
金 利 の 決定 メ カニ ズ ム に競 争 的 圧 力 が 作 用 す る とい う こ とに な り,大 な り小 な り需 給 調 整 機 能 が貸 出金 利 を決 定 す る と主 張 して い るの で あ る。 また③ お よび④ の仮 説 の も とで は,資 金 の貸 し手 が 少 数 で あ り,相 対 型 の取 引 形 態 を 分 析 対 象 として い る こ とに な る。
貸 出市 場 の 需給 調 整 機 能 の 出発 点 は,少 な く とも一 般 均 衡 論 の フ レー ム ワ
一 ク に基 づ い た議 論 と して は鈴 木[1974]
の銀 行 行 動 の理 論 で あ る。 しか し この 銀行 行 動 の理 論 は イ ンタ ーバ ン ク ・マ ー ケ ッ トを含 む鍬 市 場 全 体 の メ カ ニ ズ ム と金 融 政 策 の 波及 効 果 に視 点 をお い た もの にす ぎな い
。 従 来 の 一 般 均 衡 論 の フ レー ム ワー ク で は・ 鍬 仲 僕 務 と して の 預 鏑 品 の供 給 と貸 出
とい うサ ー ビス を同時 に提 供 す る現 実 を表 現 で きな い
.特 に金 畷 関 が提 供 す るサ ー ビス のセ ッ トと して の非 流 動 資 産 の流 動 イヒ
,リ ス クの轍 あ るい は 輔 離 の変 換 や それ に伴 う鍬 資産 ・負 債 の構 造 の変 換 とい うた ぐいの情 報 の生 産 に焦点 を あ て た仮 説 が 完 成 され て い な い。
さ らに,⑤ の不 均 衡 計 量 分 析 で は人 為 的 低 金 利 政 策 を長 い 間実 施 して きた 過 程 で・ 貸 出 金利 は需 綱 搬 能 を果 た さな カめ た とい う こ とが 統 計 的 に検 証 され た 結 果 ・ 信 用 割 り当 て が発 生 して い る とし・う通 説 が 定 量 的 に支 持 され た の で あ る・ しか もモ デル の フ レー ム ワー ク は
,貸 し手 と借 り手 とい う繍 主体 が 自 らの 目的 関 数 を制 約 条 件 付 きの極 大 化 行 動 を と る とい う仮 説 か ら出 発 して お り・ 金 畷 関 が預 鏑 品 の提 供 と貸 出等 の運 用 を利 潤 最 大 化 とい う 仮 説 に よっ て合 理 的 に行 動 す る とい う仮 説 か ら出 発 して い るの で
s用 と調
達 か ら何 らか の情 報 を生産 して鍬 イ中介 を実 現 す る とい う仕組 み に渉 近 づ いた とい え る・ しか し この仮 説 で も家 計 の複 数 の 金 融 資 産 に よ るポ̲̲.̲フ ォ リオ の決 定 ・ 金 畷 関 に よ る資産 の リス ク や期 間 儲 の 変換 とい う問題 の解 決 に は十 分 応 え て い な い。
人 為 的低 金 利政 策 と護 送 船 団 方 式
戦 後 の 日本 にお い て・ 長 い間慣 行 的 に行 わ れ て きた金 利 規 制 や金 融 機 関 へ の業 務 規 制 が,マ ク ロ的 に い か な る影 響 を資 金 供給 に与 え た か とい う問題 を 解 明 す る こ とは も とよ り・ ミク ・的 に この よ うな政 策 が 金融 機 関 の 預 金 の確 保 や貸 出供 給 行 動 に い か な る制 約 を引 き起 こ した か に つ い て も解 明 す る必 要 が あ る。 戦 後1960年 代 まで ,日 本 の 家 計 の金 融 資 産 が十 分 蓄 積 して い な い上, 銀 行 預 金 以 外 の 金 融 商 品 に つ い て も預 金 と同様 に人 為 的低 金 利 政 策 の も とで
日本 の 貸 出市 場 と貸 出 金利 の決 定81
低 い利 回 りに押 さ え られ て お り,し か も店 舗 行 政 につ い て も政 策 当局 が 元来 中小 金 融 機 関 の店 舗 数 を優 先 的 に拡 大 した こ と もあ っ て,家 計 は居 住 地 に近 い 限 られ た銀 行 等 に預 金 す るのが 通 常 で あ った。
当 時 ミク ロベ ー ス の銀 行 の 立場 で は,預 金 金 利 が 恒 常 的 に低 位 に規 制 され て い る こ とか ら通 常 の価 格 メ カ ニ ズ ム に よ って説 明 で き る競 争 条 件 に依 存 せ ず に,店 舗 数 や その配 置 条件 あ るい は渉 外活 動 の よ うな非価 格 競 争 要 因 が 預 金 の確 保 を説 明 す る こ とに な る。 また近 年 に至 る まで金 融 機 関 の競 争 条 件 と
して,景 品 や 懸 賞 金 な ど も厳 し い行 政 指 導 の も とで 規制 され て いた 。 そ の結 果,日 本 の預 金 市 場 で は渉 外 担 当者 を多 数 動 員 す る こ とに よ って預 金 の勧 誘 を積 極 的 に進 め,時 に は官 民 と も激 しい非 価 格 競 争 が 展 開 され た の で あ る。
預 金者 が取 引先 金 融 機 関 を選 択 す る指 標 として,そ の預 金 残 高 が 最 も重 要 な 基 準 とな っ て い た はず で あ る。 また 金融 機 関 は業 態 別 に業務 内容 が きめ細 か く規 制 され て い るの でi同 じ業 態 業 界 の金 融 機 関 同士 が 特 に預 金 の シ ェア を 拡 大 す る こ とに専 念 した の で あ る。 同 じ業態 の金 融 機 関 は貸 出 先 も同 じ程 度 の リス ク を有 す る企 業等 に貸 し付 け,コ ス トとして の預 金 利 子 率 は完 全 な横 並 びで あ り,従 業 員 の給 与 等 もほ ぼ 同 じ水 準 に規 制 され て い る上,出 店 コ ス
トも格 差 が生 じな い よ うに配 慮 され て いた 。 この よ う に各 金 融 機 関 は 同 じ業 態 あ る い は同 じ地 域 に店 舗 が 競 合 す る場 合 にの み,相 互 に激 し い非 価 格 競 争 を行 っ て い た が,長 期 間 にわ た って 資 金 規模 や 利 益 の逆転 現 象 が 生 じな い よ う整 然 と行 政 指 導 が 行 わ れ て い た ので あ る。
銀 行 の店 舗 行 政 は護 送 船 団 方 式 と呼 ばれ る保 護 行 政 の 中心 的 コ ン トロー ル 手 段 として,大 蔵 省 が きめ細 か く規制 して きた。 この店 舗 行 政 が 業 態 別 にみ る と,中 小 業 態 の経 営 基 盤 の強 化 と安 定 に重 点 が 置 か れ て いた とい え る。 す な わ ち,地 方銀 行,相 互 銀 行,信 用 金 庫 の よ うに業 態 規 模 が小 さ く弱 小 で あ る ほ ど店 舗 数 の拡 大 が よ り多 く認 め られ て お り,長 期 信 用銀 行,都 市 銀行 の よ う に業 態 規 模 が大 き い ほ ど出 店 規 制 が 厳 しか っ た。 この よ うな店 舗 行 政 の 結 果,旺 盛 な資 金 霰 を示 す大 企 業 に都 市 金長行 が融 資 して ・ 中 小企 業 や地 域
の地 元 中 小企 業 を対 象 に地 方 銀 行 や信 用 金 庫 等 が 融 資 す るた め
,業 態 間 な ら び に地 域 間 で の 資金 の偏 在 が 拡大 した 。 す で に述 べ た よ うに コー ル 市場 が こ の バ イ ア ス を是 正 す る重 要 な役 割 を担 った の で あ る。 しか し 自由金 利 の コー ル市 場 の存 在 自体 は,マ ク ロ的 に資 金 の超 過 需 要 も超 過 供 給 の 可 能 性 に つ い て は な に も語 らな い。 また,ミ ク ロ的 に も各 銀行 が 日銀 等 か ら借 り入 れ な け れ ば完 全 競 争 的 な コー ル 市場 が 機 能 す る こ とに よ って
,資 金 の 過 不 足 を 自発 的 に解 消 して い る こ とに な る。
しか し1960年 代 前 半 の 日本 経 済 に お い て,都 市 銀 行 は恒 常 的 なオ ーバ ー ロ ー ンす なわ ち大 企 業 の資 金 需 要 が 旺盛 で あ る た め
,コ ー ル市 場 か らの 資 金 調 達 だ けで は なお 資 金 が 不 足 して い た.こ の よ うなマ ク ・的 な資 金 の超 過 需 要 を解 消 す る方法 と して,① 日本 銀行 の 貸 出,債 券 売 買 オペ を通 じた ハ イパ ワ ー ドマ ネー の供 給 が オ0ソ ドッ クス な手 段 と して考 え られ る
。 さ らに,② 預 金 準 備 率 の 引 き下 げ も標 準 的教 科 書 に記 載 され て い る手 段 で あ る
。 最 後 に,
③ 銀行 が 貸 出 先 に貸 出 の一 部 を預 金 と して拘 束 し,銀 行 部 門 か ら流 出 した資 金 の一 部 を回収 して貨 幣乗 数 を引 き上 げ て マ ネ ー サ プ ライ を増 加 させ る方 法 が あ る。 戦 後 日本 の金 融 行 政 で は,銀 行 の 経 営 リス ク は極 力 小 さ く抑 制 され て い る と信 じ られ て いた の で預 金 準 備 率 を必 要 以 上 に高 い水 準 に お くこ とは な く,む し ろ旺 盛 な資 金 需 要 に応 え るべ く準 備 率 は極 力 低 い水 準 に固 定 され て い た の で,政 策 手段 と して は利 用 で きな か った。① の 方 法 に つ い て は,日 銀 は マ ネ ー サ プ ライ は コ ン トロー ル の対 象 とみ な して お らず
,む しろ景 気 の 間接 的 な シ グ ナル と考 えて い た。 日銀 は景 気 の各 局 面 に お い て
,イ ン フ レ と 経 常 収 支 赤 字 の シ グナ ル を に らみ なが ら 日銀 貸 出 を実施 してい た
。 さ らに, 実 際 に は 日本 の高 度 成 長 期 に は③ の 方 法 が黙 認 され て い た。 た だ し この 方 法
は貨 幣乗 数 にバ イ ア ス を与 え るの で,景 気 の シグ ナ ル 自体 を ゆが め,政 策 当 局 は景 気 の実 態 を見 誤 る こ とにな りか ね な い。
日本 の貸 出 市場 と貸 出 金利 の 決 定83
3.メ イ ン バ ン ク 制 度
情 報 生 産 とエ イ ジ ェ ンシ ー理 論
戦 後 日本 の 都市 銀 行 は,メ イ ンバ ン クの 関係 にあ る取 引先 企 業 か らの借 入 要 請 に優 先 的 に応 じる こ とに よ っ て,そ の貸 出 等 の資 産 運 用 の リス ク を軽 減 させ つ つ 同 時 に分 散 を図 るの に成 功 した。 メ イ ンバ ン ク制 度 とは,① 当該 企 業 の中 で 融 資 の割 合 が 高 く,② 従 業 員 の給 与 振 り込 みや 社 内預 金 の独 占的 権 利 を有 し,③ 役 員 の派 遣,④ 経 営 危 機 の場 合 の企 業 の再 建,⑤ 安 定 株 主,⑥ 投 資,経 営,税 務 等 の分 野 全 般 にわ た る相 談 に応 じる こ とな どが 特 色 と して
あ げ られ る。 そ の た め,メ イ ンバ ン クは企 業 経 営 全 般 に深 く関 わ るの で あ る。
た だ し,銀 行 が 一 般 企 業 の株 主 として購 入 で き るの は,各 企 業 の 発行 済 み株 式 数 の5%以 下 に規 制 され て い る。企 業 の 安 定 株 主 と して一 行 の みが 保 有 す
るケ ー ス は稀 で あ り,そ の他 の都 市 銀 行 等 の協 力 を得 て協 調 融 資 団 を結成 し た上 で融 資 を実 施 し,一 方他 行 を メイ ンバ ンク とす る非 幹 事 融 資 先 企 業 向 け の協 調 融 資 団 に参加 す る こ とに よ り,貸 出 の相 互 乗 り入 れ を長 期 継 続 的 に参 加 す る仕 組 み にな って い た。 しか も財 閥本 社 が メイ ンバ ン ク と異 な る点 は,
① 企 業 の資 金 調 達 の割 合 と して貸 出 は事 業 債 の発 行 等 と比 較 して低 く,② メ イ ンバ ンク に相 当す るの は財 閥 本 社 に相 当 す るが,協 調 融 資 は行 わ ず,財 閥 本 社 が 融 資 や経 営 の相 談 を一 手 に引 き受 けて いた 。 また③ 財 閥 本 社 は財 閥 内 の企 業 の み に融 資 した り,経 営 に関 わ った にす ぎな いが,戦 後 の メイ ンバ ン ク は融 資 先 企 業 の子 会 社 ・孫 会 社 まで経 営面 の チ ェ ック を実 施 す る。
この よ うな メイ ンバ ンク制 度 は銀 行 に とっ て い か な るメ リッ トが存 在 した の で あ ろ うか 。資本 市 場 な らび に貸 出市 場 が 競 争 的 で あれ ば}MM定 理 に よ
っ て債 券 を発 行 して も銀 行 借 入 を行 っ て も企 業 が 受 け取 る利 潤 は不 変 で あ る こ とに な9).そ の後MM定 理 に負 債 発 行 の節 税 上 の メ リ ッ トと倒 産 処 理 費 用 の確 率 分 布 に関 して一 定 の 条件 をお くこ とに よ り,企 業 の 負債 調 達 額 は,節
税 の 限界 的厚 生 と倒 産 騨 の上 昇 に伴 う限 界 的 な コ ス トが 等 し くな る よ うな 水 準 で 決 定 され る こ とを主 張 す る こ とが で きる よ うに な
っ1}Q}1yV.しか し,そ の 後Miller均 衡 に お い て 薙 分 析 の結 果 ,倒 産 コ ス トは無 視 で きる との結 果 を 踏 まえ て・ 法 人 税 は比 例 税 率 で あ るが所 得 丁ま通 常 累 進税 制 度 で あ るの が̲
般的 であ る と蓋碑 実 的な枠組 み に換 えた・その結果,当 初 のMM糎 と同 じ結 論 に達 した・ さ らに そ の後 企 業 の 内融 こは様 々 な利 害対 立 が あ り
,そ の コス トの決 定 が 資 本 構 成 と関 連 が あ る とい う仮 説 力澄 場 した
.負 債 発 行 に伴 う レバ レ ッジ ・コス トの鵬 を加 え る こ とで
,再 び 資本 構 成 の 無 関 連 性 命 題 が 復 乱 奮 の で あ る・ レバ レ ッ ジ の 例 と し て エ イ ジ
ェ ン シ ー ・コ ス トな どが 挙 げ られ る。
現 代 の企 業 は・利 害 関 心 が 異 な る数 多 くの繍 主体 か ら繊 され て い る
。 この よ うな利 害 対 立 は分 配 の視 点 ばか りで1まな く
,最 適 な投 資計 画 の 実 行 に も影 響 を及 ぼ しか ね ず ・ この よ うな企 業 内部 また1ま企 業 凋 辺 との利 害 対 立 に関 わ る生 産 ・投 資 活 動 の非 効 率 化 力葺原 因 とな っ て発 生 す る損 失 を
エ イ ジ ェ ン シー ・コス トとい う。 企 業 が 資 金 調 達 す る に当 た っ てエ イ ジ ェ ン シー.コ ス トは企 業 価 値 の低 下 を引 き起 こす 。 この よ うなエ イ ジ ェ ン シー ・コス トが 発 生 す る こ とが あ らか じめ予 測 で き るの で あ れ}ま
,こ れ を考慮 して資 鋼 達 の 手段 や 最 適 調 達 額 を決 定 す る こ とに な る
.特 に銀 丁7はス ケ ー ル.メ リ ッ ト な ど を活 用 して・ 事 前 に企 業 の経 営 状 態 欄 査 す る
.銀 行 が本 来 の事 前 審 査 能 力 を+分 発 揮 して いれ ば・ そ の よ うな審 査 能 力 を持 た な い株 主 に対 す る配 当 と比 較 して前 者 の貸 出 の ほ うが 資 本 調 達 コス トが低 くな る はず で あ る
.ま た銀 行 が貸 し出 した先 の企 業 が倒 産 す るお そ れ の あ る よ うな経 営 危 機 に 陥
っ て も・ 銀 行 は長 期 的 な視 点 か ら判 断 して禾噂払 い の勧 延 べ や債 務 返 済 翻
の 蔀 免 除 等 の撒 な手 段 を活 用 して,企 業 の倒 産 を回避 し よ う と努 力 す る
。 仮 に そ の よ うな企 業 が 倒 産 す る ケー ス で も,コ ス トを極 力 抑 え る よ うに手 を 尽 くす こ とに な る・ いず れ の ケ ー ス で も銀 行 の審 査 機 構 や 貸 出 先 の企 業 の経 営 危 機 に対 す る ノ ウハ ウ は,エ イ ジ ェ ン シー ・コス トを引 き下 げ る こ とが で
日本の貸出市場と貸出金利の決定85
13}
。
この よ うな コス トの低 下 が 銀 行 の情 報 生 産 の コス トを上 回 る限 り・ 資金 調 達 の手 段 として 負債 の拡 大 はエ イ ジ ェ ンシー コス トを引 き下 げ る こ とにな る。 この 場 合 株 主 に とっ て 自 ら また は第 三 者 機 関 が銀 行 の審 査 や コ ンサ ル タ ン トの ノ ウハ ウ を下 回 るコ ス トで それ に匹 敵 す る'情報 生 産 が で きな い 限 り・
配 当水 準 が た とえ低 くて 綴 行 の監 視 を受1ナる方 が 有利 に な る・ さ らに エ イ ジ ェ ン シ̲.コ ス トは限 界 費 用 に お い て低 下 す れ ば・ 企 業 は外 部 資 金 を縫 す る割 合 を高 め る こ とが有 利 にな る。 この こ とは同 時 に株 主 に も当 て は ま り, 最 適 な資 本徽 は企 業 と株 主 に とっ て双 方 と も最 も有 利 な割 合 を購 に決 定 す る こ とにな る。
銀行 が貸 出先 をモ ニ タ リング しな い こ と}こよ り受 け る損 失 の期 待 値 はモ ニ タ リン グす る コ ス トを上 回 って い る限 り,銀 行 は債 権 者 の代 理 人 として モ ニ タ リ ング を行 う.実 際 メ イ ンバ ン ク は経 営 の様 々 な実体 につ いて 幅 広 く監 視 す るが,特 に相 手 先 企 業 の資 産 負 債 か ら決 済 勘 定 を管 理 す る立 場 上,日 々 の 資 金 繰 りの状 況 まで把 握 で き る立場 に あ る。
企 業 の 資 本 構 成 の 決 定 に 関 す る実 証 分 析 の 分 野 で は,米 国 の場 合Long andMaritz[1985],TitmanandWessels[1988]な どの数 多 くの研 究 成 果
が公 表 され て い るが,日 本 の実 証 分 析 の成 果 は未 だ数 少 な く始 ま った ばか り で あ る。 米 国 の研 究 成 果 はお お むね ク ロ ス ・セ ク シ ョンデ ー タ を 用 い て負 債 の エ イ ジ ェ ン シー ・コス トが 負債 比 率 と負 の相 関 に あ るか を立 証 す る もの で あ る.最 近 の 日本 の 資 本構 成 に関 す る研 究 は メ イ ンバ ン ク制 を中心 として企 業 系 列 を制 度 的 制 約 としつ つ,従 来 の よ うに外 部 資金 の:aに 伴 うエ イ ジ ェ
ン シー.コ ス トと資 本構 成 との相 関 の み な らず,内 部 資 金 の調 達 に よ るエ イ ジ ェ ン シー一・コス トや 自己資 金 が資 本 構 成 に与 え る影 響 を実証 的 に考 察 しつ つ,企 業 とメ イ ンバ ン ク との関 係 が 資 本 構 成 にい か な る効 果 を及 ぼ す か につ い て も盛 ん に謝 され る よ うに な った.す なわ ち・ す で に述 べ た よ うに銀 行 は審 査 や 経 営 の ノウハ ウ を活 用 す る こ とに よ って企 業 の 負債 の エ イ ジ ェ ン シ
一'コ ス トを引 き下 げ るの で あ り
・ この こ とが企 業 の負 債 比 率 を引 き下 げ る とい う仮 説 を提 示 した・ 最 近 ・ この ・sを 統 計 的 に検 証 す る試 みが よ うや く 行 わ れ る よ うに な った・ 第 一 の成 果 は,躰 の メ イ ンバ ン ク は負 債 の エ イ ジ
ェ ン シー コ ス トを引 き下 げ る とい う仮 謙 ま統 計 的 に も有 意 で あ
る こ とが 確 か め られ て い る・ 同 時 に株 式 の集 中度 力§統 計 的 賄 意 で な い こ とが確
か め ら れ て お り・ 株 主 総 会 が企 業 縮 の チ ェ ック に有 効 で は な い こ とを示 唆 す
る も の で あ る。
しか し この よ う 曝 近 に至 る まで 日本 の メ イ ンバ ンク の存 在 が企 業 の 鰭 の エ イ ジ ェ ン シ0'コ ス トを低 下 させ て い た こ とを
,鋤 テの審 査 能 力 や 経 営 の ノ ウハ ウが情 報 生 産 した結 果 で あ る と積 極 的 に評 価 して よい の で あ ろ う
か 。 LelandandPyle[1977]以 降 に お い て
,最 近 の鍬 仲 介 理 論 は金 融機 関 の情 報 生 産 に関 す る生顔 素 が 聾 で あ る との認 識 を欠 い て い る
.し か し戦 後 日 本 の鍬 機 関 の情 報 生 産 が企 業 儲 の み な らず
,産 業 の育 成 や鍬 シ ス テ ム の安 定 性 に大 きな騰 を及 ぼす こ と を櫨 す れ ば
,こ の生 顔 素 の役 割 は き わ め て鞭 な役 割 を果 た す の で はな い だ ろ うカ㌔ す なわ 旛 査 能 力 と
い う生 産.:.一 の蓄 積 は潮 一 夕 で は形成 不 可 倉筐で あ り
,繍 離 が大 き く変 化 す る 時 期 に は その 変 化 に素 早 く適 応 す るLaか りで は な く
,変 化 の方 向 を予 測 しな が ら生 産 要 素 の質 的 変 化 を図 らな けれ1まな らな い
.し か し現 実 に は その よ う な理 想 的適 応 を実現 す る ど こ ろか・ む しろ金 融 機 関 は審 査 能 力 の形 成 とい う 本 来 の 責務 を放 棄 した可 能 性 もあ る。
日本 の銀 行 の 審 査 能 力
高度 成 長 期 に 眠 間部 門 の 設鍛 資 意 欲 が 旺 盛 で あ るた め
,景 気 の 変 動 に も関 わ らず一 貫 して飴 額 が 供 給 を上 回 る状 態 で あ
った.し たが って ミク ロ的 に は臓 省 の店 舗 行 政 の制 約 条1牛の 下 で
,各 銀 行 が非 価 格 競 争 の預 鑛 得 の駄 化 を 目標 と して い た ・ なぜ な ら,短 期 的 にみ て マ ク ・的 に は,̲̲.̲.
の 国 内具丁 の シ ェ アの 拡 大 は貸 出 等 の運 用額 の 拡 大 に つ な が るか らで あ る
。 日本の貸出市場と貸出金利の決定87
しか も都 市 銀 行 の貸 出先 は お お む ね体 力 の あ る大 企 業 で あ り・ また地 方銀 行 ・ 信 用 金 欝 の貸 出 先 で あ る地 元 の 中小 企 業 零 細 企 業 あ るい は個 嫡 店 等 は
㈱ や 大 型 店 舗 の 出店 規 欝 各 観 制 をこよ って手 厚 く購 を受 けて い 蝶 界 で あ るた め,金 畷 関 が 多額 の審 韻 用 を要 す る こ ともな くこの よ うな企 業 等 に融 資 して も金 畷 関 が 舘 危 機 にβ楢る こ とは稀 で あ った ・ 特 に大 企 業 に
つ いて は 日本 開 発 銀 行 力藩 査 して お墨 付 き とな った企 業 は・ 都 市 銀 行 が額 す るた め の 限界 費 用 はゼ ・で あ る とい って も差 し支 えな し・・ 中小 企 業 等 の貸 出 につ い て は,政 府 系 の 中小 企 業 金 融 公 庫 や 国 民金 融 麟 るい は商 工 中 金 等 が審 査 す れ ば洞 様 に地 方 銀行 等 が これ ら企 業 旛 査 す る限積 用 もゼ ロ
とな る。 しか も銀 行 が企 業 の株 式 を保 有 す る に当 た っ て,す で に述 べ た よ う に̲行 が 一 企 業 の全 発行 済 み株 式 の5%を こえて はな らな い の で ・ この こ と は銀 行 に とって企 業 倒 産 に よ る貸 し倒 れ リス ク を分 散 させ る こ とに な る・ し た が っ て高 度 成 長 期 に は 日本 の金 融 機 関 は審 査 能 力 を十 分 蓄 積 した とはい え な い可 能 性 もあ る。
そ の後197。年 代 半 ば か ら,日 本 経 済 は貸 出 資金 が'麟 的}こ超 過 霰 を解 消 で きな い とい う高 度 成 長 期 の神 話 は成 立 しな くな った。 当時 か らマ ク ロ的 に
も企 業 の資 金 霰 全 般 が低 迷 す る とい う循 環 的 要 因 と・ 大 企 業 が 外 国 で 自 ら 起 債 す る歴 史 的轍 の要 因 に よっ て,都 市 銀 行 は メイ ンバ ン ク として の大 企 業 へ の影 響 力 を失 った.そ の後 円転 規制 の撤廃 を}よじめ とす る資 本 の 舳 化
が 進 みs企 業 の銀 行 離 れ の流 れ は加 速 化 した。
この 流 れ に対 して,金 融 機 関 は まず 第 一 に従 来 シ ンジ ケ ー ト団方 式 で割 り 当 て られ て いた 国 債 の 引 き受 け を,競 争 入 札 方式 で各 金 融 機 関 の必 要 に応 じ て購 入 す るル ー ル に換 えて,国 債 の運 用 の割 合 を増 加 させ た・ そ の結 果 国債 の応 募 者 利 回 りは市 場 の実 勢 を あ る程 度 醜 した もの で あ るた め・ 従 来 の低 利 回 りで 強制 的 に割 り当て られ るデ メ リッ トを解 消 した・ 第 二 に1f'}に 都 市 銀 行 は従 頬 出対 象 とし なか った 刺 ・企 業 腫 視 す る よ うに な った ・ その 結 果,都 市 銀 行 とその 他 の業 態 の銀 行 靴 の貸 出先 の轍 比 にお け る格 差 が縮
小 した。 しか し金 融 の国 際 化 が進 む につ れ て,銀 行 の業 務 内容 が多 様 化 した に も関 わ らず従 業 員 にす べ ての業 務 を経験 させ る とい う従 来 型 の 人 事 シス テ ム で はか え っ て一 つの 業 務 に専 念 す る期 間 が短 くな る の で あ る
.も とよ り金 融機 関 の審 査 は・ 元 来 専 門家 集 団 の 質 的情bこ 関 す る高度 な情 報 生産 .処 理 の綴 で な けれ ば な らな い・ い わ ゆ る ライ ッシ ュ の シ ンボ リック .ア ナ リス トの 集 団 で あ る。 この よ うな 専 門 家 の 能 力 は競 争 的 な市 場 で正 当 に評 価 され な けれ ば な らず ・報 酬 も市 場 で算 定 され な けれ ば な らな い
.こ れ に対 して, 従 来 の 躰 の 繊 で は・ 金融 機 関 も他 の 民 間 企 業 と同様 に
,閉 じた繊 の 中 で量 的拡 大 に とっ て鱗 な人 物 が 高 く評 価 され るが
,そ の組 織 内 に お け る評 価 の 個 燗 格 差 が小 さ い・ しか に 度 にわ た る石 油 危 機 と円 高 シ ョ ックが 金 融 機 関 を は じめ とす る企 業 の新 しい聯 へ の適 応 を遅 らせ た
。
しか も1980年 代 後 半 に は,銀 行 に よる中 小 企 業 へ の貸 出 の 内容 が大 き く変 化 した。 す な わ ち まず は じめ に,す で に 国 内 に滞 留 して いた 国 内貯 蓄 の は け 口 と して金 利 の低 下 を受 け,金 融 機 関 の預 金 が 株 式 に 向 か い続 い て新 た に貯 蓄 した 資金 や蓄 積 して いた 資 金,あ るい は株 式 投 資 で 含 み 益 を抱 え て それ を 担 保 に貸 咄 され た資 金 が土 地 に向 か った .か くして株 ・土 地 の含 み益 が 資 産 イ ン フ レ を引 き起 こす こ とに な り,鍬 機 関 の含 み融 資 が審 査 能 力 の思 考 停 止 を引 き起 こ した の で あ る・ この よ う鰍 資 〃ま土 地 に対 す る融 資 で あ
って, 中小 企 業 へ の融 資 の 能 力 が 形 成 され た こ とに はな らな い
。
この よ う審 査 の思 考 停 止 は,そ の能 力 の 回 復 を遅 らせ る こ とにな り,今 後 の貸 出業 務 に何 らか の 支 障 を来 して い る可 能 性 が あ る
。 特 に近 年,不 況 期 の た め資 金 需 要 が 低 迷 して お り,か つ大 企 業 の 銀行 離 れ が停 止 した の で もな い の に金 融 機 関 の貸 し渋 りが 目立 つ よ うに な った
。 その理 由 と して第 一 に,本 来 の 銀行 の 審 査 能 力 が 回復 した結 果 担保 を無 視 した非 常 識 な貸 出 が行 わ れ な
くな った の で藩 査 が厳 し くな っ た か の よ うなE口象 を受 け る とい う説 明 で あ る。 しか しむ し ろ1980年 代 の 方 が 土地 に対 す る融 資 を除 けば
,審 査 が 厳 しか っ た の で はな い か ・ 第 二 に・BIS雛 吐の影 響 が しば しば取 り上 げ られ る.し
日本の貸出市場と貸出金利の決定89
か し大 手 の銀 行 はお お む ねBIS基 準 は ク リア して お り,こ の 点 は重 要 で は な い。 む しろ いわ ゆ る 「貸 し渋 り」 は貸 し渋 りで はな く,貸 出供 給 側 に とっ て どの企 業 に貸 し出 す べ きか を審 査 す る能 力 の形 成 が で きな い一 方 で,豊 富 な 貯 蓄 の資 金 が 滞 留 して い る に も関 わ らず貸 し手 の資 金 供 給 態 度 が80年 代 後 半 に は危 険 愛 好 的 で あ った の が,90年 代 に は一一転 して危 険 回避 的 に転 換 した の で は ない か 。 その 結 果,与 信 と受 信 の ミス マ ッチが 生 じて い る現 象 で はな い だ ろ うか。
また い わ ゆ る不 良債 権 の存 在 自体 もあ る程 度 体 力 の あ る銀 行 で あ れ ば,不 良 債 権 の割 合 が 一 定 水 準 以 下 で新 規 の預 金 が伸 び続 け,か つ リス クが 大 き い 貸 出 を避 けれ ば倒 産 の 危 険 は な い。 しか し金 融 機 関 は今 後 と も金 融 仲 介 機 関 と して の役 割 を内外 の証 券 市 場 と差 別 しな けれ ばな らず,そ の意 味 で審 査 能 力 の 回復 と蓄 積 は最 大 の課 題 で あ ろ う。 た だ し,中 小 企 業 に対 す る審 査 や モ ニ タ リ ング は従 来 型 の組 織 で 実 現 で き るわ けで は ない 。 日本 の金 融機 関 に と
っ て,こ の よ うな 中小 企 業 へ の貸 出 に ウエ イ トを お くの に伴 う体 質 転 換 の機 会 は少 な くと も三 回 あ っ た。 第 一 は第0次 石 油 危 機 直 後 で あ る。 当時 す で に
日本 経 済 は恒 常 的 な対 外 赤 字 体 質 を克服 し て お り,そ の直 後 に石 油 危 機 が 生 じた の で従 来 型 の体 質 へ の執 着 で は な く,金 融 シス テ ム も 自由化 へ の準 備 を 始 め るべ きで あ っ た。 第 二 回 目 は第 二 次 石 油 危機 当時 で あ った が,当 時 の 金 融 政 策 の成 功 が か え って 自 由化 へ の転 換 を遅 らせ た の で は な い か。 第 三 回 目
は1985年 の 円高 シ ョッ クで あ る。 しか し,そ の後 マ ク ロ的 に は総 合 経 済対 策 や 緊 急経 済 対 策 を打 ち出 した が,ミ ク ロ的 に は む し ろ各 業 界 の規 制 件 数 は増 加 し続 け るな ど,金 融 シス テ ム を は じめ として あ る意 味 で は多 くの業 界 で規 制 が強 化 され た の で あ る。 当 時 マ ク ロ的 に は 日本 に は膨 大 な規 模 の国 内 貯 蓄 の 累積 と急増 した 対 外 資 産 が 存 在 しなが ら,そ の投 機 資 金 が専 ら株 式 と土 地 に しか 向 か わ な か った の は}そ の他 の 資産 形 成 に制 度 的 な障 害 が あ るた め運 用先 が 限 られ て いた か らに他 な らな い。 この よ うな仕 切 られ た投 機 的現 象 は 金 融 機 関 が 環 境 の変 化 に適 応 で き る審 査 能 力 の 形 成 を阻 害 し,同 時 に直 接 金
融 の育 成 が 要 請 され て い る とい う シグ ナ ノレで もあ る に も関 わ らず 政 策 当局 は そ の重 要 性 を認 識 して い なか った 。 む しろ政 策 当局 が,日 本 経 済 の収 益 率 が低 下 して い る に も関 わ らず・ そ の認 識 を欠 い て撒 な手段 を用 い て規 制 を 強 め た こ とは金 融 機 関 に と っ て 制 度 的 障 害 と認 識 す る ど こ ろ か
,ハ イ リス ク ・ハ イ リタ ー ンの 保 険 を政 府 が実 質 的 に負 担 して い る と受 け止 め て お り
, 金 畷 関 の モ ラル ・ハ ザ ー ドが発 生 した の で あ る.す な わ ち護 送 船 団 方 式 は, 金 融機 関 が 自 ら払 うべ きそ の保 険 料 を政 府 に肩代 わ りして も ら う こ とに よ
っ て フ リー ・ライ ダ.̲....を創 り出 した の で あ る。
4.金 融 シ ス テ ム に 対 す る公 的 規 制
銀 行 危 機
金 融 シス テ ム の あ り方 を考 え る に当 た っ て,銀 行 危 機 の発 生 の要 因 を次 の 二 通 りに分 類 す る必 要 が あ る。 まず 第 一 は,サ ンス ポ ッ ト均 衡 型 の 銀行 危 機 で あ り,健 全 経 営 の銀 行 に も関 わ らず偶 然破 綻 す る とい う根 拠 の な い噂 が信 じ られ て,多 くの預 金 者 が 実 際 に預 金 を引 き出 す こ とに よっ て,当 該 の 銀 行 が 預 金 者 の払 い戻 しの請 求 に応 じ られ な くな る ケ ー ス で あ る。 第 二 は,銀 行 の経 営状 態 に関 す る情 報 公 開 が 実 施 され て い な い上
,銀 行 の首脳 や 大 蔵 省 な ど もそ の実 体 を十 分 把 握 して い な い場 合 に破綻 を来 す ケ ー ス で あ る
。
第 一 の サ ン ス ポ ッ ト型 の危 機 は政 策 当局 な どが正 確 な情 報 を人 々 にわ か り や す く提 供 す る こ とに よ って収 拾 可 能 で あ るた め,当 座 の対 応 の みで 金 融 シ ス テム 全体 に悪 影 響 を及 ぼ す お そ れ はな い。 銀行 の経 営 内 容 が公 開 され て い る上,そ の情 報 を預 金者 が 完 全 に把握 して いれ ば この よ うな危 機 は そ もそ も 発 生 しな い。情 報 が 公 開 され て い れ ば,預 金 者 が それ を十 分 知 らな くて も事 後 的 な情 報 の提 供 だ けで事 態 は直 ち に収 拾 可 能 で あ り,そ の社 会 的 費 用 も少
な くてす む。
問題 は第 二 の ケ ー スで あ る。 この場 合,仮 に預 金者 が銀 行 の 経 営 内 容 に 関 日本の貸出市場と貸出金利の決定91
す る情 報 を完 全 に把 握 して い れ ば,預 金 者 が預 けて い る銀 行 の経 営状 態 が破 綻 して い て も取 り付 け は その 問題 の銀行 だ けで す む。 しか し情 報 が 公 開 され
て い な けれ ば,経 営 状 態 が 思 わ し くな い と人 々 が確 信 した銀 行 か ら取 り付 け 騒 ぎが連 鎖 的 に波 及 し,最 悪 の場 合 に は優 良 銀 行 まで 危 機 に巻 き込 みか ね な い こ とに な り,そ の可 能 性 が常 にあ る こ とが他 の業 界 と大 き く異 な る。 た だ し,情 報 が 公 開 され て い て も誰 が個 別 の銀 行 に特 有 の リス ク を評 価 で き るの か は未 解決 で あ る。
この よ うな金 融 機 関全 般 にわ た る リス ク を正 確 に評 価 す るの は預 金 者,経 営 者,株 主,政 策 当 局,第 三 者 機 関,リ ス ク を評 価 す る市 場 の い ず れ な の か。
預 金 者,経 営 者 あ るい は株 主 が何 らか の 方法 で 金融 機 関 あ るい は企 業 の 内部 の リス ク をチ ェ ックす る とい う仕 組 み に つ い て は,従 来 の通 俗 的 な考 え方 に 多 い。 公 正 取 引 委 員 会 や 非 政 府 組 織 の第 三 者 機 関 の メ ンバ ー が チ ェ ックす る とい う方法 につ い て も,し ば しば考 え られ て きた 。 しか し,そ の メ ンバ ー の 中 に政 策 当局 関 係 者 が 含 まれ れ ば,実 際 に は政 策 当局 にチ ェ ック を依 頼 す る の と同 じ こ とにな りか ね ない 。戦 後 日本 の金 融行 政 は危 機 が 発 生 す れ ば政 策 当 局 が場 当た り的 な対 応 を施 す の み で,そ の こ とが新 た な規 制 を生 み 出 す と い う弊 害 に多 くの人 々 が気 づ い て い な い 。
以 上 の リス ク評 価 に関 す る選択 肢 は,リ ス ク を評 価 す る主 体 の違 い で は な い。 政 策 当局 が 評 価 主体 で あ れ ば,リ ス ク を正確 に評 価 で きなか った金 融 機 関 にペ ナ ル テ ィを与 え るの で あ り,そ れ を正 し く評 価 で きて も報 奨 は与 え ら れ な い。 仮 に政 策 当局 が リス クの評 価 を誤 った り,そ れ に伴 う事 後 の対 応 が 遅 れ れ ば,そ れ に伴 う負担 は イ ク ス プ リシ ッ トに あ るい は イ ンプ リ シ ッ トに 納税 者 や 預 金 者 に賦 課 され るの で あ る。 一 方,リ ス ク を評 価 す る独 立 した市 場 が存 在 す れ ば,金 融 機 関 の リス ク を正 し く評 価 で きた 参 加 主 体 に は市 場 か ら報 奨 を受 け取 る こ とが で き,評 価 で きた主 体 の数 が少 な けれ ば さ らに独 占 的 な報 奨 を獲 得 で き る。 た だ し,こ の市 場 は競 争 的 で あれ ば長 期 間 にわ た っ て独 占的報 奨 を確 保 し続 け る こ とはで きな い。 この市 場 の参 加 者 の うち リス
ク を正 し く評 価 で きなか った 主体 は,報 奨 が 少 な くな るだ けで あ り,最 悪 の 場 合 で も自主 的 に市 場 か ら撤 退 す るだ けで あ る。 この場 合,最 大 の課 題 は金 融 機 関 の リス ク を評 価 す るた め に公 開 され た情 報 を解 析 す る シス テ ム を い く つ か の民 間 企 業 が あ る程 度 設 計 で き る こ とで あ る。 す なわ ち,重 要 な ポ イ ン
トは,こ の よ うな シ ス テム を設 計 で き る技 術 者 と これ を活 用 で き る専 門 的 コ ンサ ル タ ン トが育 成 で きるか で あ る。
公 的 規 制 と金 融 シ ス テ ム に対 す る介 入
上 記 の サ ン ス ポ ッ トタ イ プ の銀 行 破 綻 に対 して は,通 貨 当局 の介 入 が直 接 的 間接 的 に必 要 で あ る。 ただ し,こ の介 入 方式 の うち全 面 的 にEI銀 信 用 供 給 で対 応 す れ ばモ ラル ・ハ ザ ー ドが 発 生 す るお そ れ が あ る。 しか しなが ら民 間 金 融 機 関 の モ ラル ・ハ ザ ー ドの 可能 性 に対 して店 舗 行 政 や業 務 規 制 等 の行 政 指 導 な どを武 器 に金 融 秩 序 を維 持 しよ う と して も,自 由化 が進 行 す れ ば行 政 指 導 の効 果 は薄 れ る で あ ろ う。 まず預 金 保 険機 構 を十 分 活 用 で き る よ う に し
た上 で,な お この制 度 を利 用 して も金 融 機 関 の決 済 が最 終 的 に不 履 行 とな る 分 に つ い て の み,中 央 銀 行 が 最 後 の貸 し手 として預 金 の払 い戻 しを保 証 す べ
きで あ る。
第 二 の銀 行 危 機 に対 して は,ま ず個 別 の 金 融機 関 の リス ク 内容 を公 開 す べ きで あ る。 仮 に政 策 当局 が この よ うな情 報 の分 析 に優 れ た能 力 を発 揮 し う る の で あれ ば,そ の 結 果 を広 く公 開 す べ きで あ る。 旧来 の 金 融機 関 に対 す る規 制 は金 融 シス テ ム の安 定化 に効 力 を発 揮 したが,金 融 シス テ ム を取 り巻 く諸 情 勢 が 大 き く変 化 して い る状 態 に あ っ て この よ うな規 制 はむ しろ弊 害 とな り
つ っ あ る。 さ ら に金 融 情 勢 が加 速 化 して 変 化 す る の で あ れ ば,金 融 機 関 の個 別 運 用 事項 ご とに債 権 化 す るセ キ ュ リタイ ゼ ー シ ョ ンの よ うな市 場 に よ る リ
ス クの 客観 的評 価 を促 進 す べ きで あ ろ う。 した が っ て,中 央 銀 行 が 市 場 に介 入 す るの は,① 預 金保 険機 構 を活 用 して もな お金 融 シス テム が 破綻 す るお そ れ が あ るケ ー ス や,② 金 融 機 関 を チ ェ ック した 内容 につ い て,個 別 の リス ク
日本 の 貸 出 市 場 と貸 出金 利 の決 定93
の一 部 が極 端 に高 い ケ ー ス で あ る。仮 に,こ の チ ェ ックが 不 完 全 で あ っ た た め に金 融機 関 が 破 綻 す るお それ が 顕 在 化 す る よ うな こ とが あ れ ば,そ の対 応 を先 送 りしな い こ とで あ る。
5.お わ り に
最 初 に人為 的低 金利 政 策 を可 能 に す る制 度 的背 景 と して,金 融 政 策 の波 及 経路 の視 点 か ら護 送 船 団方 式 の金 融 行 政 の存 在 を ア プ リオ リに受 け入 れ た 。 しか し戦 後 日本 の貸 出市 場 にお い て,な ぜ 間 接 金融 が優 位 で あ った の か に つ い て,そ の制 度 を前 提 に した説 や 不 均衡 分 析 の シ ョー トサ イ ドの原 理 だ け で は十 分 説 明 で きな い。 換 言 す れ ば なぜ戦 後 日本 の金 融 シス テ ム に お い て直 接 金 融 の役 割 が小 さか った のか を説 明 で きな い。 そ こで戦 後 日本 の金 融 制 度 で 特 有 の メ イ ンバ ン ク制 度 に着 目 し,こ の 制 度 が 各 金 融 機 関 の エ イ ジ ェ ン シ ー ・コ ス トを引 き下 げ る一 方,資 金 を調 達 す る企 業 に とって も銀行 の モ ニ タ ー を受 け る こ とが 資 金 調 達 コス トを引 き下 げ る こ とに な る学 説 を フ ォ ロー し た。 最 近 の実 証 分 析 の結 果,銀 行 の審 査 や 経 営 の ノ ウ ・ハ ウが 企 業 の エ イ ジ ェ ン シー ・コス トを引 き下 げ る ので,こ の こ とが 企 業 の 負債 比 率 を引 き下 げ る とい う仮 説 を支持 す る ので あ る。
しか し この よ うな審 査 能 力 が 戦 後 日本 の銀 行 が 自 らの経 験 だ けで形 成 で き た と積 極 的 に評 価 で きな い。 高 度 成 長 期 にお い て は,特 に都 市 銀 行 は貸 出 市 場 に お い て常 に資 金 の超 過 需 要 に遭 遇 して お り,不 足 す る資 金 を イ ンター バ ンク市 場 で手 当 した。 この資 金 を供 給 す るの は店 舗 政 策 で優 遇 され た 地 方 銀 行 以 下 の 中小 金 融 機 関 で あ る。 石 油 危機 以 降 か ら1980年 代 前 半 に至 る まで, 貸 出 の超 過 需 要 の圧 力 は弱 まる一 方,国 債 の運 用 が増 加 した。 特 に国債 の流 通 市 場 は金 融 自 由化 の 環境 に お い て 自然 発 生 的 に発 達 して か ら,貸 出 金利 と
国 債 利 回 り との 間 で 裁 定 が 行 わ れ る傾 向 が 強 ま っ た と考 え られ る。 しか し 1990年 代 に お い て もイ ンタ ーバ ン ク ・レー トの 水 準 が貸 出 金 利 に影 響 を与 え
る こ とが 今 回 の 実証 分 析 で も確 か め られ た。 この結 果 は従 来 の店 舗 行 政 の地 域 間 のバ イ ア ス を是 正 で き な い こ とか ら現 在 で も貸 出市 場 の地 域 間 の 需 給 バ イ ア ス を生 み 出 した こ とに す ぎな い 。 す なわ ち金 融 行 政 面 で は従 来 型 の シ ス テ ム が維 持 され なが ら,金 融 機 関 の 資金 の運 用 面 で は 自 由化 の波 をか ぶ り,
また資 金 の調 達 面 で も自 由化 は着 実 に浸 透 して い る。 今 後 日本 の 民 間 金 融 機 関 が エ イ ジ ェ ン シー ・コ ス トを引 き下 げ るた め に は貸 出 の審 査 能 力 を蓄 積 す る一 方,国 債 流 通 市 場 で収 益 力 を向上 させ るた め相 当 の情 報 化 投 資 を実行 す る必 要 が あ る。 そ の こ と自体 が リス ク を高 め るの で あ るが,こ れ をカバ ー す るの は収 益 力 の 向 上 で あ っ て もは や参 加 者 全 員 に よ る リス ク の分 散 で はな い。
付 論
… … シ ラ ー ラ グ 推 計 … … (1993:1‑‑1995:7)
Kの 値=4
1NTLTNB=十34.4276十1.464101NTGSK (3.52){5.68) シ ラ ー ラ グ 対 象 変 数:WPI
0 1 2 3 4 5 6 7 8
SUM‑一
決 定 係 数=0.59782
十 〇.19858(0.92) 0.05982(‑0.39)
0.04739(一 一一〇.5fi) 0.04593(‑0.67)
o.Ofi155c‐o.s7)
0.08261(一 一1.22)
0.09250(一 一1.55) 0.08667(‑1.52)
0.07510(‑0.69}
0.35300
標 準 誤 差=0.36 ダ ー ビ ン ワ ト ソ ン比=0.808
日本 の 貸 出市 場 と貸 出 金利 の 決定95
… … シ ラ ー ラ グ 推 計 … …
(1993:1‑一 一1995:7) Kの 値=1
1NTLTNB=十34.1588十1.477801NTGSK (3.55){5.85) シ ラ ー ラ グ 対 象 変 数:WPI
O→‑0.29502(1.17) 1‑0.20223{‑0.79) 2‑‑0.03887(‑0.30)
3十 〇.03401(0.25)
4‑0.03216(‑0.25}
5‑0.13029(‑1.06) 6‑0.14936{‑1.13) 7‑0.08695(‑0.71) 8‑0.03946(‑0.24) SUM‑0.35029
決 定 係 数=0.61561標 準 誤 差=0.35ダ ー ビ ン ワ ト ソ ン 比=0.808
… … シ ラ ー ラ グ 推 計 … …
(1993:1‑1995:7}
Kの 値=1
1NTLTNB‑一̲‑22.9172‑十 一〇.29903WPI (‑2.51)(2.90)
シ ラ ー ラ グ 対 象 変 数:INTGSK O十1.25423(4.84)
1‑0.17256(‑0.81) 2‑‑4.16345(‑1.51)
3‑0.15370(‑1.48}
4‑0.11053(‑1.08}
5‑0.11206(‑1.11) 6‑0.18852(‑1.78)
7‑0.27199(一 一一3.00}
8‑一 一一 〇.33238{‑2.27}
SUM‑0.25096
決 定 係 数=0.85620標 準 誤 差=0.21ダ ー ビ ン ワ ト ソ ン 比=1 .647
… … シ ラ ー ラ グ 推 計 … …
(1993:1‑1995:7)
Kの 値=・1
1NTLTNB=十 一34.1454十 〇.0000000LTNDB十1 .477451NTGSK
{3.41){0.41){5.62}
シ ラ ー ラ グ 対 象 変 数:WPI
O十 〇.29494(1.14)
1‑0.20203(一 一〇.76)
2‑0.03893(一 一〇.29)
3十 〇.03392(0.24)
4‑‑0.03209(‑0.24)
5‑0.13024(一 一1.04}
6‑‑0.14935(‑1.10) 70.osssgt‐o.s9)
8‑‑0.03946(一 一 〇.24)
SUMO.35015
決 定 係 数 憲0.59537標 準 誤 差=0.36ダ ー ビ ン ワ ト ソ ン 比=0 .808
… … シ ラ ー ラ グ 推 計 … …
(1993:11995:7 Kの 値=1
1NTLTNB=一 一23.2132十 〇.0000002LTNDB十 〇 .30209WPI
(一 一2,49)(0.58)02.87) シ ラ ー ラ グ 対 象 変 数:INTGSK
O十1.24764(4.73) 1‑‑0.17743(‑o.82) 2‑0.16493(‑1.50)
3‑0.15294(‑1 ..45)
日 本 の 貸 出 市 場 と 貸 出 金 利 の 決 定 97
4‑0.10967{‑1.06) 5‑0.11227(‑1.10) 6‑0.18870C‑1.75) 7‑0.27069(‑2.94}
8‑0.32760(‑2.20) SUM‑一 一 〇.25658
決 定 係 数=0.85127標 準 誤 差=0.22ダ ー ビ ン ワ ト ソ ン 比=1.682
… … シ ラ ー ラ グ 推 計 … …
(1993:1‑1995:7}
Kの 値;1
1NTLTNB=‑23.8967十 〇.0000016LTNDBOB十 〇.30589WPI
(‑2.18)(0.17)(2.70) シ ラ ー ラ グ 対 象 変 数:INTGSK
O‑十 一1.26053(4.70) 1‑0.17553(‑0.80)
2‑4.1fi534(‑1.49}
3‑0.15457{‑1.45}
4‑0.11053(‑1.Ofi) 5‑0.11150(‑1.08) 6‑0.18783(‑1.73) 7‑0.26992(‑2.88) S‑0.32699(‑2.14) SUM‑0.24168
決 定 係 数=0.84889標 準 誤 差=0.22ダ ー ビ ン ワ ト ソ ン 比=1.660
… … シ ラ ー ラ グ 推 計 … …
(1993:1‑1995:7) Kの 値=1
1NTLTNB=十62.3104‑0.0000422LTNDBQB十1.419351NTGSK (3.05)(‑1.55)(5.76) シ ラ ー ラ グ 対 象 変 数:WPI
0十 〇.11fi11(0.43) 1‑0.18439(‑0.75)
2十 〇.03321(0.25)
3十 〇.13135(0.90)
4十 〇.06217(0.45)
5‑一 一 〇.08061(‑0.66) 6‑0.17492(‑1.36}
7‑‑0.20713(‑1.46) 8‑0.25595(‑1.22) SUM‑‑0.5fiO11
決 定 係 数=0.64239標 準 誤 差=o.34
… … シ ラ ー ラ グ 推 計 … …
{1993:1‑1995:7) Kの 値=1
1NT‑一 十2.42378十 〇.308121NTCR
(51.18)(5.51) シ ラ ー ラ グ 対 象 変 数=INTOR
O十 〇.07830(1.17)
1十 〇.07417(1.49)
2十U.05250(1.80)
3十 〇.03896(x.30)
4十 〇.03125(1.09)
5十 〇.02357(0.83}
6十 〇.01325(0.46)
7→‑0.02359(0.81)
8十 〇.05168(1.76)
9十 〇.07920(3.01}
10十 〇.08808(2.23)
SUM十Q.55454
決 定 係 数 罵0.98613標 準 誤 差=0.06
(注)1.()内 の 数 値 はt値 。
ダ ー ビ ン ワ ト ソ ン 比=0.982
ダ ー ビ ン ワ ト ソ ン 比=x.204
日本 の 貸 出 市場 と貸 出金 利 の決 定gg
2.測 定 に 利 用 し た 月 次 デ0タ と変 数 。 INTLTNB
INTGSK INT WPI LTNDBOB INTCR INTOR
sl INTBD LTNDB
:国 債 利 回 り(10年 物),東 証 上 場 国 債 流 通 利 回 り(10年 物 指 標 銘 柄)
:公 社 債 現 先 参 考 利 回 り,3ケ 月 物 ・月 中 平 均(日 証 協 調 べ) :全 国 銀 行 約 定 平 均 金 利(全 銀 協)
:卸 売 物 価 指 数,1990年 を100と す る 。(日 本 銀 行) :普 通 国 債 残 高(日 本 銀 行 『経 済 統 計 月 報 』) :コ ー ル レ ー ト,有 担 保 翌 日物 ・平 均
:公 定 歩 合(月 初 め)
:利 付 き金 融 債 売 買 高(5年 物 ワ イ ド) :利 付 き 金 融 債 利 回 り(同 上)
:国 債 新 規 発 行 額(10年 物 長 期)
注
1)江 見 康 一(他)『 貯 蓄 と通 貸 』(長 期 経 済 統計 第5巻),野 口[1995]第2章 等 を参 照 せ よ。
2)日 本 の信 用割 り当 て につ い て は寺 西L1982]を 参 照 せ よ。
3)人 為 的低 金利 政策 を前提 と した 資 金 偏 在 の フ レー ム ワー クで,金 融 シス テ ム の一 般 均 衡 理論 を展 開 した の は鈴 木[1974]で あ る。 また 堀 内[1980]も 参 照 せ よ。
)㌧ノ)))))4FOハ07σ0◎Q﹂nU1
鈴 木[1974]お よ び 堀 内[1980]が 代 表 的 で あ る 。 黒 田[1979]を 参 照 せ よ 。
池 尾[1985]が 代 表 的 な 文 献 で あ る 。
岩 田 ・浜 田[1980],鹿 野[1994]な ど が 挙 げ ら れ る 。
伊 藤 ・植 田[1982],浅 子 ・内 野[1987]な ど の 間 で 論 争 が 行 わ れ て い る 。 ModiglianiandMiller[1958]が 問 題 を 提 起 し た 最 初 の 論 文 。
ModiglianiandMiller[1963]は,一 部 の 前 提 を 変 更 す る こ と に よ っ て 最 初 のMM定 理 を修 正 した 。
11)Miller[1977]は 本 文 中 の よ うな前 提 に よ ってz再 びMM定 理 が成 立 す る こ と を 証 明 した 。 す で に 述 べ た よ う に,法 人 税 の み を 考 慮 したMMモ デ ル で は, 企 業 は可 能 な 限 り負債 を発 行 す る こ とが有 利 で あ る。しか し累進 的所 得税 制 度 に お い て多 くの 負債 を発 行 し,消 化 す るた め に は負債 収 益 率 を上 昇 させ る必 要 が あ る。 この こ とが 負 債 の 自己 資 本 に対 す る有 利 性 を低 下 させi負 債 発 行 と 自