中国企業の海外進出の展開
方暁霞
中国企業の中国国内における変容ぶりは近年著しいものがある。最近では海外 への企業進出もかなり顕著になってきている。企業の海外進出に伴い、この数年、
中国対外直接投資も急拡大している。資源、エネルギーがらみでは国際政治上問 題となっている国々に進出する-万、先進国や先端技術分野のM&Aの動きも活 発化している。
1はじめに
中国は、改革開放以来海外からの直接投資を拡大し、海外の資金と技術を国内 に取り込み、経済は著しいスピードで発展している。近年は、これまでの成長に よって蓄えた資金力・技術力の向上等により中匡}企業による海外への直接投資の 動きが強まっている。世界経済危機の起きた2008年においても、中国の対外直 接投資額(フロー)は、559億ドルと2007年の265億ドルから約19倍に拡大し ている。その動きは、中国の国内経済のみならず世界経済にも大きな影響を与え
ると考えられる。
このレポートは、急増している中国企業の対外投資に焦点を当てて、①中国企 業の対外投資の実態、②中国企業の海外進出の背景と要因、③中国企業の対外投 資の展望と課題について検討する。
2中国企業の対外投資の実態
21中国の対外投資の推移
中国の対外投資に関する統計については、いくつかあるが、その中で最も引用
-129-
され、実態の判断によく使われるのは、中国の商務部・国家統計局・国家外貨管 理局が発表した「中国対外直接投資統計公報」(以下、「公報」)である。中国企 業の対外投資は、1980年代から一部の企業で始まっており、1900年代以来年間 数十億ドルで推移してきたが、2002年以降にあらゆる分野で急増し、非金融分 野だけでも、2005年には122.6億ドルと100億ドルを突破した。2011年9月に 発表した「公報」によると、2010年I未の中国の対外直接投資の規模(ストック)
は累計31721億ドルとなり、世界17位だった。2010年の対外直接投資額は
(フロー)は前年同期比21.7%増の6881億ドルだった。9年(2002~2010)連
続の増加となり、年平均499%増えた(図1)。うち、金融分野以外が259%増 の601.8億ドル、金融分野が863億ドルだった。国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した「2011年世界貿易報告」によると、中国の2010年の対外直接投資は 同年の国際マネーフローの52%を占めて世界5位となり、日本(5626ドル)、
英国(1102億ドル)などの対外投資大国を初めて超えた。中国企業の海外買収
額も26%増の290億ドル以上で、日本と英国をやや下回り、世界4位となった。累計対外直接投資額(ストック)も10年前より10倍増の3172億ドルに達し、
世界の第17位となった。中国の対外投資は世界のさまざまな業種、国・地域に
及び、外資導入額と対外投資の比も1990年代の18:1から2010年の2:1まで
迫っている。
図1中国対外直接投資の推移
億Fル
800 600 400 200 0
2002200320042005200620072008200920m
出所:商務部・国家統計局・国家外?貨管理局「2010年度中国対外直接投資統計
公報」より筆者作成。
-130-
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22中国の対外直接投資の業種~S割強は非金融業
業種別をみると、投資範囲がさらに拡大し、分野が多様化するが、直接投資累 計額(ストック)の8割以上は非金融業である。非金融業で対外投資が最も多い のは、リースや投資などのビジネス・サービス業である。2003年以降、鉱業を 中心に対外直接投資が拡大しており、特に資源獲得のための国有企業による大型 案件が目立っている。金融危機の後、資源国が資源価格下落を海外企業買収の好 機として、鉱山、鉱i業に投資することも増力Ⅱしている。2009年採鉱業の対外投 資は133.4億ドルと過去最大であった、前年比12821%を増えている。
2010年末における中国の対外直接投資累計額(ストック)3172.1億ドルの内、
非金融業は826%、金融業は174%である(表1)。非金融業ではビジネス・サ ービス業が9725億ドル(2010年の投資額全体の307%)と、トップを維持し た1.次が採鉱業14.1%、卸売・小売業2132%が続き、金融業を含めた上位の4
業種で全体の3/4を占めている(図2)。
製造業の累計投資額(ストック)はまた全体の5.6%(2009年55%、2008 年5.3%)に留まっているが、前年同期比での伸びが最も大きかったである。投
表1中国対外直接投資の構成(2010年)
(単位:100万ドル、%)
フロー ストック
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金額|前年比|構成比 非金融業
金融業 合計
601.8 86.3 688.1
259 87.5
-1.1
--
21.7
125
--
100
出所:商務部・国家統計局・国家外貨管理局「2010年度中国対外直接投資統計
公報」より作成。
'ビジネス・サービスに関して、「公■報」は「主に、株式取得のための投資」と説明し
ている。
2「公報」によると、これには貿易会社も含まれる。
-131-
資額(フロー)は前年同期比1082%増となっている。中国は海外から製造業を 中心とした「対内直接投資」の受け入れにより世界の工場と呼ばれているが、中 国から海外への製造業の進川は、まだ端緒についたばかりと思われる。
図2中国直接投資先の業種別構成比(2010年末、ストック)
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米、広…
その
不動産業
23%
業%交通・運輸 倉庫・郵政
78%
出所:商務部 公報」〈
・国家統計局 より作成。
・国家外貨管理局「2010年度中国対外直接投資統計
2S中国の対外直接投資の主要投資先~資源国を重視
「公報」によると、2010年末までに、中国は総計178カ国や地域に企業を1 万6000社設立して、今までに投資した国数は全体の727%に達した。投資額 (ストック)の伸び率はオセアニアとヨーロッパが最も大きく、オセアニアは 2005年末の132倍の86.1億ドルに達し、ヨーロッパは2005年末の123倍の 157.1億ドルに達した。欧米先進国と全体に対して、直接投資が総額の94%とな わ、前年同比2%増えた。■一方、アジアと中南米は直接投資の集中地域となり、
投資額(ストック)がそれぞれ22814億ドル(合計額の71.9%)と4388億ド
ル(合計額の138%)に達した。
表2は上位20ヵ国・地域外の直接投資累計額(ストック)とシェアである。
表2を見ると、香港への投資が一番多く、ストックでは全体の628%を占めて いる。次は英領バージン諸島やケイマン諸島で、いわゆるタックス。ヘイブン税 制を有する国・地域への投資が非常に多い(合計額の138%)3゜それに次いで、
-132-
表2中国外直接投資累計額(ストック2010年末)の上位20カ国・地域
シェア(%)
628 73 5.4
ストック(億ドル)
1990.56 23243 国・地域
英領ヴァージン諸島香港
剛-1-2l3T-5l6l7TT-nln|、|田。u|旧一肥一F一蛆一四一別
ケイマン諸島 オーストラリア
シンガポール
17256
7868
妬一四一M一咽一咄mlMlMlM-M
6069
ルクセンブルク 57.87
48.74 アメリカ
南アフリカ
ロシア
41.53 27.88 2229
己
20.03 マカオ
カナダ
19.47 1828 1591 ミャンマー
パキスタン
カザフスタン
Ⅱ而一Ⅲ|価一MlMlMm
1502 ドイツ
スウェーデン モンゴル
14.79 1436 13.58 英国
ナイジェリア インドネシア
合計
12.11 11.50 288828
出所:商務部・国家統計局.|匡|家外1貨管理局「2010年度中国対外直接投資統計 公報」より作成。
表S中国の対外直接投資の主要投資先の投資累計額及び上位5業種のシェア
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46(%
5%
DC
-133-
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68%
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出所:商務部・国家統計局・国家外貨管理局「2010年度中国対外直接投資統計 公報」よの作成。
資源国としてのオーストラリアに対する買収の案件も増えている。表3は「公報 において明示された香港、EU、アメリカ、オーストラリア、ロシア、アセアン の6ヶ国・地域向け直接投資の主な投資業種を抽出したものである。表2、表3 から中国対外直接投資には次の3つの特徴が読み取れる。
(1)資源国を重視
4位のオーストラリア向け7868億ドルの内、その81.6%は採鉱業である(表2,
表3)。後述する通り、中国は資源権益を有する事業会社に対して出資等を行い、
長期安定確保を狙う事例が多いようである。上位20ヵ国・地域に着目するとア フリカの2ヶ国(南アフリカ、ナイジェリア)、中国と国境を接して陸路で輸送 ルートを確保できるロシア、カザフスタン、パキスタン、モンゴルという資源国 が含まれる。この点は、資源を取り巻く国際関係を踏まえた中国の特色として注
3その投資の中で、実際は相当部分が外資としてまた中国に戻ってくると思われる。中 国の場合は、国内投資にはさまざまな規制があるが、外資なら歓迎。優遇される。し たがって、一度タックス・ヘイブンの国。地域で投資会社を作り、そこから中国に投 資すると、外資として免税措置を受けられることになる。例えば、外資であれば、法 人税は2年間免除、その後3年間半減とない設備面でも優遇策を享受できるので、
中国企業は迂回投資しているのである。
-134-
目される。
(2)インフラ、製造業向けの投資を通じてアセアンとの関係強化
中国とアセアンは'二|由貿易協定(FTA)によって2010年1月から--部除外品 目を除き関税撤廃になることを含めて、貿易と投資の両1面iから関係強化が進みつ つある。表3において中国のアセアン向け直接投資の業種別構成をみると、電
力.ガス゛水道業19.3%、製造業13.3%が上位を占めた。中国はアセアンのインフラストラクチャ投資に対して参画しつつ、製造業への直接投資も展開してお り、他国.地域とは異なる関係強化のパターンがみられる。
(3)先進国の販売網、ブランド、技術力の獲得は本格化
アメリカ向けやEU向け直接投資においては、製造業が上位1位、2位にラン クされた(表3)。特に金融危機を境にして、欧米企業買収を検討する中匡|企業 は増えており、その主たる狙いは販売網、ブランド、技術力の獲得とみられる。
例えば、2010年3月、中国の民間大手向動車メーカー漸江吉利控股集団有限公
司(吉林汽車、Geely4)はアメリカのフォード.モーター傘下のスウェーデンの
高級卓ブランド「ポルポ」を買収しましたα買収のlEl的について、吉和自動車の 創業者李書福社長は、ボルボというブランドとその技術を自分のものにするとともに、吉利は中国の市場をよく分かっているから、中国市場にボルボをよわ_層 進出させることができるというふうに考えていると述べた。これは先進国向け直 接投資の一例であった(表5)。
24対外投資の企業の構成
海外投資する中国企業は、中山央企業と地方企業の2つに分けられる。中央企業 とは中国の中央政府(国務院)直属の国有資産監督管理委員会が出資者として責 務を負うエネルギー(石油、石炭)、通信、交通や金融などの国有大手企業の総 称であり、2011年10月12日時点で全117社ある5・中国の対外直接投資に関し
41986年創業の中国最大の民営自動車メーカー、1997年から光成車の製造。販売分野 に参入している。2004年香港で上場。中国の自動車メーカートップ10企業、中国企 業ベスト500など中国の自動車ブランドのリーダー的存在。2010年販売は前年同期 比28%増の41.5万台(同社ウエブサイト)。2010年3月にフォードからボルボ・カ
ーズを買収する契約に最終合意し、同年8月に買収を完了した。
-135-
て主たる担い手は地方企業ではなく、中央企業が大きな役割を果たしており、続 いてその概要と投資動向を確認する。
2010年末に非金融業において、海外投資する中央企業はわずか全体の5%を 占めているが、累計直接投資額(ストック、非金融業)の77%を占めている。
これに対して、95%を占める地方企業は投資額の23%に過ぎない。「2010年度
公報」によると、上位10社(グループ)はすべて中w央企業である(表4)7.この 上位3社を占める中国石油化工工i業集削(シノペック)、中国石油天然気集団 (CNPC/ペトロチャイナ)と中国海洋石油総公司(CNOOC)は採掘、精製、製 造、販売を手がける中国の3大石油会社である。特にCNPCは原油・天然ガス の生産と供給、および石油化学工業製品の生産。販売において中国最大規模の企 業(グループ)であり、アゼルバイジャン、カナダ、インドネシア、ミャンマー、
オマーン、ペルー、スーダン、タイ、トルクメニスタン、ベネズエラなどで世界
30ヶ箇所以上の油田・ガス田の探査や開発にあたっている。表4対外直接投資累計額の上位10企業グループ(非金融業、2010年末) 嘘1’2’3l4l5l6l7l8lglm
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業種、砒一剛 船|鵬 唾餓
出所:商務部・国家統計局・国家外貨管理局「2010年度中国対外直接投資統計 公報」、国務院国有資産監督管理委員会「中央企業名録」(ホームページ)
より作成。
5中国国務院国有資産監督管理委員会のホームページによる。
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2010年、地方企業の対外投資も活発で、中でも西部地域の投資額の伸びが最 も大きい。「公報」によると、地方の金融機関を除く2010年の対外直接投資額 (フロー)は前年比84.8%増の1775億ドルとなって2005年の朋愉に拡大、8 年連続で速い伸びを維持した。うち漸江省、遼寧省、山東≦省が投資額の上位3位。
地域別では、西部が107.1%増の23.8億ドル、中部が7.6%減の146億ドル、そ の他地域が102.4%増の139.1億ドルだった。
2S投資方式の転化~M&Aが主流
(1)中国企業の海外M&Aの増加傾向が続く
中国の対外投資は、l元々会社を設立し、工場を作り、生産するといったグリー ンフィールド投資が中心であったが、近年、世界経済の回復や中国における経済
発展パターンの転換、経済構造の調整、中口央企業のリストラ、有力企業の海外 M&Aに対する支援などを背景として、中国企業による海外でのM&A(企業の
合併q買収)の比率は4割を超え、投資に占める比率も上がっている。公報によ ると、2010年の中国企業のM&Aを通じて海外直接投資額は前年比547%増の297億ドルと、海外直接投資全体の432%を占めた。M&A分野は鉱山開発、製 造正発電・送電、専門技術サービス、金融などだった。対外直接投資によって得 た利益を使って再投資した額は240億ドルと前年より48.9%増え、対外直接投 資に占める比率は前年の28.5%から349%に拡大した。現在、中国企業の海外 進出熱は依然として衰えが見えない。2011年7月17日、北京で行われた全国企 業文化年次総会で、「2010年の中国企業による合併買収(M&A)取引は2556件 に上り、公開された取引価格は総額169643億ドルに達して'1t界2位となった。
M&Aが行われた業種をみると、2010年エネルギー産業の取引額が最も多く 2322億ドル、件数は182件に達した。うち中国1石油化工株式有限公司、中国石 油天然気株式有限公司、中国海洋石油総公司を代表とするエネルギー企業による 海外でのM&Aの歩みが加速し、公開された取引金額の上位10件のうち、エネ ルギー産業の海外M&Aが半数を占めた。」と中国企業連合会の王忠禺会長(中
国企業家協会の会長を兼柾)は述べた6.6人民綱2011-7-18。
-137-
表52010年以来中国の主要の対外直接投資案件
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鉱業・エネルギー・電力
中国海洋石油(CNOOC) 中核国際中国石油化工 (SINOPEC)
中国石油化工 (SINOPEC)
中国錯業 (中国アルミ)
中国海洋石油 (CNOOC)
ニジ エ-ル
アルゼンチン
サウジ アラビア
カナダ
ギニア
米国
Ideal Mini、9 Limited
ブリダス
サウジ アラコム
シンクルー ド・カナダ
リオ ● ティンI、
チェサピー ク・エナジー
2010年1月、中核国際有限公司は総額4.14 億香港ドル(約5,300万ドル)で、イディア ル・ミニング(IdealMiningLimited)の全 株式を中核海外鈷業から取得した。これに より、同社のニジェールのウラン鉱床の権 益の37.2%を取得した。
2010年3河、中国海洋石油(CNOOC)は アルゼンチンの石油lLtL産会社ブリダス ・二[二 ナジー。ホールディングの子会社であるブ リダス・コーポレーションの株式50%を31 億ドルで購入すると発表した。今回の出資 によりブリダスの株式保有比率は、中国海 洋石油(CNOOC)とブリダス・エナジー ホールディングが各50%となる。
●
2010年3月、中国石油化工(SINOPEC)は サウジアラビアの国営石油会社サウジアラ コムとパートナーシップの構築に関する覚 書に調印した。両社はサウジ西部のヤンブ ーに製油所を建設することで合意。中国石 油化1二(SINOPEC)が製油会社の株式の 37.5%、サウジアラコムが62.5%を保有す る。両社が共|可出資する製油会社、紅海製 油会社は2014年から商I業運転を始める。
2010年4月、中脚石油化工(SINOPEC)は 米コノコフィリップスが保有するオイルサ ンド生産会社シンクルード・カナダの株式 9.03%を46億5,000万ドルで取得したと発 表した。
2010年7月、中国アルミは英・豪系資源大手
リオ ・アイ ントに13億5,000万ドルを支払い、
同社がギニアで展開するマンドゥ鉄鉱石プロ
、●
:/ エ クトの権益の一部を取得することで合 意。今後2,3年にわたり同プロジェクトに 出資し、44.65%の権益を得る予定。
2010年10月、中国海洋石油は米天然ガス開
|発企業チェサピーク・エナジーが持つ天然 ガス・原油権枯の取得などのために総額21 億6,000万ドルを投資すると発表した。中国 海洋石油は、10億8,000万ドルで米テキサ
giljにある宕幣内0
の33.3%の罹稀をLDI
【)(意8.0()(】
010年Ⅱ ,
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F1囮石油化工の出誓 4C
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出所:「ジェトロ世界貿易投資報告(2011)』。
(2)中国企業の対日M&Aの事例も増えている
近年、中国企業による日本企業のM&Aが目立ってきている。例えば、蘇寧電 器によるラオックスヘの出資や、山東如意によるレナウンヘの出資、今年のハイ
アールによるパナゾニック傘下のこえ洋への買収等、具体的な企業名とともに雑誌、
新聞報道でも大きく扱われており、世間の注目度の高さを窺わせる。
2010年7月、帝国データバンクの調査によると、同年6月時点で中国企業の 出資を受けている日本企業は611社で、5年前(233社)に比べて約25倍に増
-139-
中国j石油化工 (SINOPEC)
上海電気
ブラジル
イラク
レフ・ゾル ブラジル
。
イラク政府 電力部
スリ1ト|南部にある岩盤内の天然ガス、原油を 取り出すプロジェクトの33.3%の権益を取 得。また、掘削費用として10億8,000万ド ルを支出する。
2010年10月、スペインの石油会社レプソル は、ブラジル0)子会社であるレプソル。ブ ラジルが71億900万ドルの増資を行い、中 国石油化I為がこれをすべて引き受けると発 iAをした。中国石油化工の出資比率は40%と
なる。
2011年4月、’二海電気はイラクのワーシト (Wassit)発電所第1期拡張プロジェクトで、 610メガワット石炭火力発電プラント2基の EPC(設計。調達・建設)プロジ エ クトに ついて、イラク政府電力部と供給契約を締 結した。契約額は10億8,000万ドル。
自動車
漸江吉利控股集団 米国 (フォード自動車)FordMotor 2010年8月、洲江吉和控股集団有限公司は 米フォ --m ド傘下のボルポ買収について可買 収手続きを終了したと発表した。買収価格 は18億ドルで、中国企業による海外の自動 車会社買収では、過去最大規模。航空
中国海航集団 オーストフ リア ファイナンスアリコグループ
2010年1月、中国海航集団有限公司は香港 の100%子会社を通じ、1.5億ドルでアリ
.・ファイナンスグループ(AllcoFinance GroupLtd,AFG)の航空機リース事業を買 収した。
コンテンツ
盛大瀞戯 米国 Mochi(モチ) 2010年1月、中国最大のオンラインゲーム会社である盛大瀧戯(GAMENASDAQ)は 約6000万ドルの現金と2000万ドル相当の 株式により、米Mochi(モチ)社を買収した。
加した。業種別では卸売業が529%で週.半数を占め、サービス業(223%)や 製造業(113%)が続いた。表6は近年の日本と企業に向ける中国企業の出資案件
である。
表e中国の主要の対日直接投資案件
-140-
業種;」_yP、ゴー」 ̄- ̄」+ ̄■ガーー ̄一眼Pプ‐ JJj?■噸風企業JrJ. :ii壷‘ iT(■IJI日本企業 :貴lljX金鱗 慨1J〃i■要 ;?..
---二■礼-1
電機
広東美的集団 三洋電機 23.5億円 2001年10月、三洋電機が広東美的集団に、電子レンジの基幹部品であるマイクロ波発 振■器のj製造技術と生産設備を売却。中国企 業によるI可部品の自社生産は初めて。
印刷機
上海電気集団 アキヤマ印刷機製造 20億円 2002年1月、香港系投資会社モーニングサ イトとともに、民事再生法の適用を申請し たアキヤマ印刷機製造を買収し、アキヤマ インターナショナルを設IlZ・中国企業によ る初の日本企1乗の再生.製薬
三九企業集団 東彌製薬 3億円 2003年10月、東亜製薬は、業務拡大をはか って120150%の増資を予定しており、増資 部分を三九企業集団の「三九本草坊医薬」とハックキミサワが引き受ける。、三九二企業 集団が予定している増資引き受け後の持ち 株比率は51-55%で、f東亜製薬は三九企業集 団の子会社となる。
工作機械
上海電気集団 池貝 20億|】] 2004年8月、池」貝がまず総額3000万円の第 魁者割当増資を実施し、資本金を4000万円 とする。1k海電気はその全額を引き受け筆 頭株主になる。上海電気は池貝の事業拡大 のため、段階的に数億円規模まで出資金を 増やしていくとし】つ ̄ ○人陽光発電、)ニナム販売
尚徳太陽能電力 (太陽電池部材)MSK 345億円 2006年8月、中国の太陽電池大手、尚徳太陽能電力の買収総額はこれまで最大の345億 円(中国企業による日本企業の最大規模の 買収額)で買収。販路や技術情報の取得が
回的。翌年2007年3月末、福岡工場閉鎖。
スポーツウェア
中国動向集団 フエニミ ツ クス 5億円 フェニックスは2004年に産業再生機構入り。その後、オリックスGが100%出資。
2008年4月、中国の動向集団は新株取得の
形で5億円出資。債務は1円で継承へ
〆rI ヨラナ 1ご1 ニス
ChinaSatcom 夕  ̄ ボ
リナックス 10億円 ターボリナヅクス社が情報通信技術及び事 業マネジメントを行うことで中国に進出し ている日系独資、合作、合弁企業を対象に
けプドUP
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009年ム 忍Zi§::イFiM皇IIWZZri刑0
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壜
9億円’2009年6月24日、家電量販大手の蘇寧雷器對、護り月形 墓ハ脳
の問品l盲輔0
一周勵噸部印加
]興電橋 009 凱旦ユiHiIjfTF
ヨ勤軍部品の1コ
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,
-141-
データセンター事業及びIP電話事」業を展開。
2009年1月、ChinaSatcom内に日本事業部 を設Il1liL、ターボリナックスがその事業部 の運営を一括して請け負う形態となる。
製薬
北京泰徳製薬 ITTバイオファーマ 2億円 2009年4月、北京泰徳有限公司の株式会社 制度導入等の資)本政策に協力するために、ⅢTバイオの持分4%を北京泰徳の役員が代 表を務める法人に対して売却し、出資金売 却祐3,402万円を計」二。
家:富 簸)占 経i菫「
蘇寧電器 ラオックス 19億円 2009年6月24日、家電量販大手の蘇寧電器集 団がラオックスの筆頭株主になると発表。日 本式経常ノウハウや日本の商品情報の入手が
目的○
自動車部品
寧波韻昇 日興電機工業 12億円 2009年12月、自動車部品メーカー寧波韻昇が、いすず自動車系自動車部品の日興電機 I業の発行済み株式の79.13%を11億7000 万1'1で買収。
音響機器
ナショナルオーディオインタグループ ● ● ラックスマン 米公開 インターナショナル・オーディオ・グループ は、開発拠点は本社のある中国以外に米国と 英国にも保有。高級オーディオ機器分野では、ワーフェデール、クオード、など欧リ'ト|の著名 ブランドを所有しており、2009年12月、そ こに日本の名門オーディオブランドであるラ ヅクスマンが加わることとなつた。
ゴルフ用品販売
マーライオンホールディングス 本間ゴルフ 未公開 2010年2円、本間ゴルフの親会社である日本の投資ファンド2社と中国系企業が出資し ている持ち株会社マーライオンホールデイ
ングス(英領バージン諸島)は本間ゴルフ の50%超を買収した。
自動車部品
比亜迪 オギハラ 未公開 2010年4月、比亜迪汽車公司がボディ用金型j大手の株式会社オギワラ傘下の館林二K場 (車体を構成する鋼板金型を製作)を買収。
ア ノ;
し ノレ
山東如意科技 レナウン 40億円 2010年5月、山東如意科技集団有限公司が レナウンの株式41.18%を39億9,999万円で 取得する資本業務提携契約を交わした。
化学
シテイックキャピタル(中信集団)
● 丁東山フィルム 15億円 2010年5月、東山フイルムは、シティック ● キャピタルホールディングス系のファンド会 社、エイチエフホールディングスによる株式 公開買い付け(TOB)を受けた。これにより、
エイチエフホールディングスは同社の株式235 万4,900株を1株650円で買い付け、6312%
の株式を所有する筆頭株兼となった。
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出所:「ジェトロ世界貿易投資報告(2011)」人民網などの資料より作成。
一方、中国企業による日本企業の買収案件はまだ少ないが、端緒についたばか りといえる。前述の帝国データバンクの調査によると、中国企業による日本企業 への出資は年商規模別で「1億円以上10億円未満」が202社(481%)で首位 を占め、中小企業がほぼ半数であった。表5,6に比べると、欧米の資源企業へ の買収額は現在までの日本企業への買収額とケタ違いの出資をしていることが明 らかである。中国の買収額急増は、買収対象が欧米に広がってきたことがボな原 因である。中国企業の対日M&A増加の目的には、シェア拡大等のグローバルな 業界再編を目指したものでなく、日本企業の持ったニッチな技術・ノウハウの獲 得であることが、製造業の技術力や流通業・サービス業など経営ノウハウの獲得
を通じで、自社の競争を向上させる狙いがあると推察される。
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製紙
シテイヅクキャピタル● トライウォール 6550万ドル 2010年9月、中国中信集団公司の傘下企業ンアアイッ、 ̄ ク。キャピタルは特殊ダンボール 製造。販売のトライウォールの株式の過半 数を取得したことを公表。
電機
レノポ NEC レノボ51% 、NEC 49%
2011年1月、NECとレノポは日本において 合弁会社「NECレノボ。ジャパングループ」
を設立すると発表。レノボ51%、NEC49%
の出資比率により設立された合弁会社
「Le 、OVO NECHoldin 9s BVJを持ち株会社 とし、傘下に100%子会社としてNECバー ソナルコンピ
が入る。
_ユ  ̄ ̄ 夕と、レノポ・ジャパン
電池
湖南科力遠新能源 パナソニック 5億円 2011年1月、パナソニックは同社の車載用 ニッケル水素電池事業を、湖南科力遠新能 源に譲渡することを決定。同社の三洋電機 子会社化に伴い、車載用ニッケル水素電池 の商品市場における、競争法」二の懸念を中 国商務部に指摘されたことを受けたもの。電機
ハイアール パナソニヅク 100億円 2011年7月、バナソニックは三洋電機の洗 濯機事業、家庭用冷蔵庫事業、および東南 アジア4カ国における白物家電販売事業をハ イアールに売却すると発表。三洋電機の子 会社化に伴い、課題となっていた重複事業 の解消を目的とする。a中国企業の海外進出の背景と要因
3.1中国企業海外進出の背景 (1)経済の急速な発展のため
過去30年の経済改革で中国経済は急成長を遂げた。1991~2009年中国GDP
の平均成長率は10%強である7.経済力を代表する一人あたりの名目GDPも増
え続けており、2006年末に2000ドルを超えた。企業は収益の増加により投資余 力も向上し、発展のフロンティアを国外求めて進出し、対外投資の増加が顕著と なっている。特に金融危機後、世界経済の回復が進む中、2010年の中国経済は 3年ぶりに実質ベースで2ケタ成長に復帰(表7)、また同年の名目GDP規模は、日本を上回り世界第2位となった同時にT対外投資(フロー)も日本に抜いて、
世界5位となっている。
(2)貿易収支の黒字の拡大と外貨準備高の増大
中国企業の海外進出増加のも一つの背景としては、貿易黒字の急増である。か
つて中国は、外貨不足であったため、外資の誘致や輸出の拡大を重視し、外貨流 出を規制する外貨管理体制を取っていたが、2001年末のWTO加盟に伴い、海
表了中国GDPと国際収支
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Ⅷ一脚一肌一Ⅷ
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354
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Ⅲ|ⅢlM-WlMlMlM-Ⅲ
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27,129
1,72611,60811,342
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2,064 2,645 3,404
2,499 3,718 4,261
2,177 3,154 34,940
45,195
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49,902 58,783
3,739
-
4,382
2,971
-
3,054
出所:ジェトロ中国基礎的経済指標(http://www・jetro・gojp)と『中国統計年
鑑』(2001~2011)各年。
7「中国統計年鑑(2010)」。
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外から中国への生産r場の移転が加速し、貿易黒字は続いていた。経常収支の対 名|目|GDP比率は、WTO加盟前の1%台から2007年には10%ヘト去昇した(図3L 2008年、リーマンショック後は一段と減少しているが、海外からの対中直接投 資の増加等により資本収口支の黒字も続いておI)、国際収支の「双子の黒字」とい
う構造が定着している(表7)。
貿易黒字と資本収支の黒字によ')、人氏元切l)上げの圧力が生じるが、中国政 府は、雇用の受け皿となる輸出産業;等への影響等を考慮し、為替介入により為替 レートを安定に保っている。為替介入にあたり、商業銀行が企業から、そして中 央銀行が商業銀行から外貨を買い取り外貨準備を貯めてきた。その結果、人民元 のマネーサプライは拡大し、国内の流動性拡大によって、過剰投資、不動産。株 式等の資産バブルなどの経済の過熱の源泉となる。
なお、21世紀に入って対外投資の基礎となる外貨準備が急増し、2006年に日 本を抜いて世界最大外貨保有国となり、金融危機直後の2009年は2兆ドルを超
えてしまう。外貨取得に関する規制を大幅に緩和する余裕ができたことも大規模 な対外投資を可能にさせたといる。
(3)資源、特に石油、金属資源の獲得と確保
中国は資源が豊富と言われているが、日増しに拡大する国内需要に応える一方、
図S中国経常収支対名目GDP総額の比率
%
1200 1000 800 600 400 200 000
3ぞ6同4
9.43 9.34
、95
輸霞鼠悪目Frp
3.5 1.31
2001200220032004200520062007200820092010
出所:ジェトロ中国基礎的経済指標(http://www・jetrogo・jp)。
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世界の工場と言われるほど輸出が急増するなか、中国は自らの需要だけではなく 世界の需要に応えるほどの十分な資源は持っていない。特に、石油、鉱物資源の 不足が中長期的な成長制約要因になるという認識が高まったとみられる。したが って、世界各地の油田あるいは鉱I|」の買収もしくは資本■参加などによい資源を 確保しなければならないのである。
(4)国際競争力を持つ多国籍企業の育成のため
グローバル化の下で多国籍企業は国際競争や経営資源の国際配置の主体であり、
対外直接投資の投資主体となっている。多国籍企業の有無や数は--国の経済力や 国際競争力を示す指標の一つになっている。しかし、中国はGDP総額から見て 規模が「経済大国」であるが、世界範囲で影響力のあるブランドや有力企業は未 だ少ない。そこで、中国政府が多国籍企業化を促す必要'性を痛感し、2002年11 月の第16回共産党大会では、「比較優位のあるさまざまな所有制の企業が海外に 投資し、(中略)実力のある多国籍企業と有名ブランドを作り上げることを奨励 する」といった目標を明確に打ち出した。
(5)過剰生産能力を解消し、海外市場の拡大を獲得する
1990年代半ばから、中国国内においては、繊維、家電などの産業は生産能力 の過剰が生じ、熾烈な価格競争と企業の淘汰が展開することになった。やがて、
この淘汰の過程で生き残った--部の優良企業は、国内における市場の拡大に限界
を感じ、価格競争からの脱却、外国製品との競争、新たな市場を求めた製品ブラ ンドカの強化と海外市場への輸出に注力しはじめた。こうして、「国内市場での
シェア拡大」→「海外市場の開拓」という転換を始めた。(6)貿易摩擦を回避する
中国経済発展に伴って、諸外国との貿易摩擦も激しくなってくる。特に、
WTOを加盟以来、中国商品に対するダンピング提訴が増加している。海外への 直接投資によって、これまでの大量輸出を、現地生産に切り替えて各種の圧力を
緩和できることに期待をかけるようになった。32政府の後押し:投資を加速させる中国の対外投資政策「走出去」
1990年代末から、経済急速の発展、と企業実ブJの強化、世界経済と関連の深化、
外貨不足の制約の解消などに伴い、海外に進出し世界範囲で更なる発展を図ろう とする企業が増えていた。特に2001年のWTO(世界貿易機関)加盟を経てこ
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の勢いは-段強まっている。このような状況の変化に基づいて中国政府は企業の 対外直接投資に対して従来の厳しい規制を一転して支援する姿勢に変わり、さら
に国策として「走出去(海外進出)」政策を打ち出した。「走出去」というのは、
企業を海外に行かせるという意味であいすなわち企業のグローバル経営、対外 投資を奨励することである。この戦略は、1990年代末から政府が初めて提起し、
2000年以降は、国家戦略として推進し、第10次血か年計画(2001-2005年)で 正式に打ち出され、第11次五か年計画(20062010年)にも受け継がれている。
また、中国第11期全国人民代表大会第3回会議(2010年3月5曰)における 2010年の施策方針においても、「走出去」戦略の実施を掲げ、〔1〕海外へ生産能 力を移転することを奨励、〔2〕合併・買収の後押し、海外における資源の互恵 協力の深化、〔3〕海外工事の請負と海外労働の質的向上、などについて強調し
ている。
中国政府はこれまで、税制や融資の優遇措置、各種の審査・認可手・続面での簡 素化、法制度の整備や外貨使用に関する規制緩和、投資先に関する情報の提供等、
対外直接投資拡大に向けた-一連の支援策を相次いで発表しているb (1)税制面での支援
企業が対外直接投資で工場を設1ケ広し、海外に原材料や部品を持ち込んで加工や 組立事業を行い、国内の輸出を増大させる場合は、輪出戻し税の引上げ又は輸出
関税の免除等を行っている。
(2)金融面での支援
主に融資、信用保証に関する支援を行っている。中国輸出入銀行、国家開1発銀 行や中国輸出保険信用公i二mと言った政府系金融機関からの優遇ローンや投資保険 といった政策的措置が講じられている。例えば、海外での原料、部品輸出加工・
組立て業務に対する優遇金利の融資や、一部の資源開発プロジェクトに対する金 利の全額補助等を行っている。また、地方政府によっては、企業の対外直接投資
を支援するための特別基金も用意している。
(3)認可手続の簡素化
2009年5月1日に商務部は企業の対外直接投資について規定した「対外投資 管理弁法」を施行した。弁法の施行に伴い、投資案件の認-可権限が地方政府へ大 幅に委譲された。商務部によれば、現在、対外直接投資案件の約85%は省レベ ルの主管部門が管轄することになっている。商務部への申請が必要なのは、国交
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のない国・地域への投資、中国側投資額が1億ドル以上の案件などとなっている。
その_し企業設立時の申請手続きの簡素化、審査期間の短縮化が図られるごと となった。対外投資申請書提出後、特段の問題がなければ、3営業日以内に企業 対外投資証書を発給するなどとしている。
(4)外貨調達制限の緩和
中国国家外貨管理局は、2009年6月に国内企業の国外貸付に関する外貨管理 についての通知を公布し、多国籍企1業に限定されていた海外子会社への貸出に対 する規制を緩和した。また、2009年7月に対外直接投資における外貨管理規定 を公布し、対外直接投資に使用可能な資金の範囲を自己資金のみならず、外貨借 入、人民元からの交換外貨、対外直接投資から得た利益などに拡大、対外直接投 資に使用する外貨の管理方式を事前審査から事後管;録に変更するなどの規制緩和 が盛り込まれている。
(5)投資先の情報を提供する
商務部は、企業向けに投資先国・地域の』情報提供サービスを行っている。また 商務部は、投資先に関する投資環境の評価や企業からの苦`情処理にも取り組んで いる。2004年7月に商務部と外交部が「対外投資国別産業指導目録」を定め、
国別に業種毎の投資指導ガイドラインを設けている。これは、国内的には政府に よる産業指導であり、企業の認可手続きを円滑に進め、国内関係当局からの優遇 措置を得やすくするために制定されたものである。対外的には、当該指導目録の 制定機関に外交部が入ることで、中国企業のI対外直接投資が投資先国。地域との 間で政治問題や摩擦となるのを避けるよう、投資先に対し事前に奨励対象業種を 明確にしておく狙いがあるものと思われる。
上記以外にも各地方政府が独圃の支援策を講じるなど、中国の対外進冊にかか る「走出去」政策は様々な支援により推進されている。
4・中国企業の対外投資の展望と課題
2001年に中国がWTO加盟国になって以来、中国企業の海外投資は急速に成
長し、昨年の中国対外直接投資の純流出額は世界全体の52%となった。現在の中国は途上国の中で最も外資を引きつけている国であると同時に、対外投資の成
長が途上国の中で最も速い国である。今後は中国政府の提唱と奨励政策の実施に-147-
より、中国企業による海外買収に対して勺一層の拡大が予想できよう。「2011年 世界投資報告書」は中国の海外投資が急増し続けている傾向を踏まえ、中国の対 外投資と外資導入額は向こう10年間に1:1を上回ることになると予測されて いる。この国際的な投資活動に伴い、中国企」業はその管理レベル、開発技術力、
国際ルールに対する理解と遵守、高度な能力を有する管理人材の育成、民族ブラ ンドの創出および資源の確保など、一連の革新策を実現することができるように なる。
しかし、中国企業の対外投資にはいくつかかの問題と課題が残されている。
第1に、中国企業の海外進出はまだ期間が短く、経験が浅いため、多くの企業は 対外投資への準備が不足している。これまで、中国の知名度の高い企業による M&Aが行われる度に、中国国内のマスメディアによって、「蛇が象を飲み込ん だ」との過剰な賞賛がなされてきたが、実は買収したのは、多くは累積赤字を抱 え、しかも再建が難しくて親会社から切り捨てられて売却されたような会社であ る。中国企業は、買収した企業の経営を建て直し、黒字転換させ、戦略転換する までの段階で非常に苦労している。その結果、経営不振に陥ったいもしくは清 算に追い込まれたりしたのは少なくない。例えば、TCLは、2004年にトムゾン、
2005年にアルカテルの携帯電話事業を買収し、また、聯想は、2005年にIBM のパソコン部門を買収したが、いずれも年間1~2億ドルの赤字を出しており、
黒字転換に苦労していた。現TCLの会長が教訓として、買収当初から人を派遣 すべきであったということv買収先の企業文化をそのまま放置すべきではなかっ たと述べている。そして、海外進出に当たっては、企業の目的、戦略、優位』性を 見定め、更に冷静かつ慎重に計画を進めるべきであると反省している。
第2に、海外進出する中国企業のコア競争力が不足である。欧米の大型多国籍 企業と比べると、海外進出している中国企I業はz流S流の企業が多く、ほとんど が伝統的な建設請負会社。ハイテク産業や高付加価値製品を扱う企業はあまり見
られず、中国企業は海外進出の水準をさらに高める必要がある。
第3に、海外戦略に不呵欠な“グローバル人材”がまだ足りない。海外に工場 や販売拠点を作ると駐在員を常駐させなければならないが、その場合の人材を中 国の会社はほとんど抱えていない。例えばTCLは、フランスで会社を買収した が、現地には人を派遣しておらず、買収した企業のCEOをそのまま採用した。
最近は、この点が問題だと気付きはじめ、中国企業はw人材備蓄を重視するよう
-148-
になり、英語を操る人や国際金融を学んだ人、あるいはMBAを持っている人な どを採用するようになった。国際経常、法律、国際商習慣やルールを熟知し…外 国語を自由に操叺しかも海外での企業経営と事業の発展を任せられる経営人材 の獲得と育成が海外進出中国企業にとっては非常に大きな問題である。そして、
どうのようにして国内外の優秀な人材を引き付けるか、また、どのようにして国 際的な人材を育成するのかが緊急の課題であろう。
第4に可企業はさまざまな事態に対処できるよう、徹底的にマネジメントを行 い、危機管理体制を強化しておく必要がある。近年の例を見ると、東日本大震災 に伴う大津波で在日中国人研修」し他人が亡くなり、数人が負傷、帰国を余儀なく された人も少なくない。その際、企業側はどのように対処するか、というリスク 管理が非常に重要である。自然界の急変はいつ、どこで何が起きるかは予測しが たいとしても、それらが発生した場合には如何に迅速に対処、問題解決ができる か、事前に対応策を講じておくべきである。
第5に、厳しい国際環境。こうした中国のliIi発な直接投資に対して、投資受入 国や企業から大きな期待が寄せられる一方、--部では不安も広がっている。中国 の台頭が著しい資源ビジネスでは既存の業界秩序が変動するかもしれず、またア フリカなど途上国では中国の直接投資の受入が必ずしも地元経済を潤さないとい う懸念も浮上している。こうした期待と不安が錯綜する中で、中央企業の中国ア ルミによる英豪資源メジャーのリオ・テイント(RioTinto)ヘの195億ドルの 追加出資、資本提携は大きな話題となった。この提携は一日合意したが(2009 年2月)、’ノオ・ティント株乖の強い抵抗にあって2009年6月に取り止めが決定 している。この大型案件と前後して中国企業の対外直接投資に対する警戒感は広 がり、一部では中止、または未決として調整を要する案件が目立ちはじめたよう である。このほか、政治的な介入で買収を断念せざるをえないという事例も多々 ある。M&Aの失敗率、すなわち国際貿易の撤回、拒絶、期限切れなどによる買 収事業の撤退の比率を示す指標で見ると、中国企業の海外企業「M&A失敗率」
は2009年は12%、2010年に11%に達し、米国、英国など先進国の水準(2%
以下)に比べて相当高いと報じられている8・中国企業の海外企業買収をとりま
く国際環境が厳しくなっているのが一因であろう。
8人民網サイトに転用された「フイナンシヤル・タイムズ」の記事、2011-02-07。
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第6に、企業現地化と現地雇用創出に関する問題である。この点に関しては、
中国政府はすでに重視し始めており、企業側にもその重要性を認識するよう促し
ている。2010年12月、商務部が打ち出した「走出去」を加速する新方針の中で、国外の重要なエネルギー、鉱産物資源、農業への協力を継続して推進し、中国へ の国内供給を保障すると同時に、投資国の経済発展、就業拡大、国民生活の改善
を支援するなど、新しい対外投資の方向性を示した。今まで中国企業の海外進脇は拡大してきており、また今後も、更に大きく躍進
していくとおもわれるが、様々な難問と課題に直面しているのも事実である。企業側はいかにリスク意識を高め、真剣Hつ'慎重に対策を立てて、対外投資の展開
を進めていくのか問われている。
主要参考文献
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中国商務部公式サイト(http://www・mokomgovm/)類似ページ
中国商務部「国・地域別投資促進系列報告」、各国版。中国商務部『国別貿易投資報告」寸各fF版。
ジェトロ『ジェトロ貿易・投資白書j、各年版。
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学論集』第46巻第4号、1-22頁。
151-