〔文献紹介〕
BarbaraEKahnandLeighMcAlister
GroceryRevolution:TheNewFocusonTheConsumer,Addison-Wesley,1997
小川孔輔
チ結果を,説明手段として説得的に用いているこ とである。著者たちは,〈序文〉でこのことをつ ぎのように表現している。
「本書の目的は,パッケージ商品業界で起こっ ている混沌とした変化を読者に理解してもらい,
その出発点として消費者に焦点を当てることであ る。そのために,本書では,グローサリー商品 (パッケージ商品)を購買するときの消費者行動 に関して,アカデミックな研究から得られた知見
を「読者にわかりやすく」伝えることにする。本
書で紹介する知見の多くは,グローサリー商品の 買物行動についてのリサーチから得られたもので あるが,ほとんどの事柄は,他の業界や商品につ いてもほぼ同様に当てはまるはずである。パッケー ジ商品の業界を例としてとりあげることで,読者 が他の産業や市場で起こっているマーケティング・プロセスの全体像を理解してもらうことを期待す る。」
1.本書のテーマと特徴
‘GroceryRevolution:TheNewFocuson TheConsumer,(邦訳版タイトル「グローサリー・
レボリューション:米国パッケージ商品業界の経 験」)は,ふたりの女性研究者によって書かれた ものである。発売当初から本書は,オンライン書 店「アマゾン・ドットコム」の書評欄などで非 常に高い評価(5つ星)を得ていた。
現在,バーバラ・カーン女史はコロンビア大学 ビジネススクール教授,レイ・マッカリスター女 史はテキサス大学ビジネススクール教授の地位に ある。消費者行動研究の領域は,米国の学会でも 女性研究者が多い分野である。女性という枠を超 えて,ふたりはリサーチャーとして傑出した存在 であり,1970年代の後半以降,ブランド選択理論,
消費者行動の数量モデル分析,実験的な消費者リ サーチで多くの研究業績を残している。
戦後最長の景気回復過程に入るすこし前から,
米国のパッケージ商品業界(Grocerylndustry)
ではドラスティックな構造変化が始まった。本書 は,この業界における構造変化の実態を記述し,
未来を展望したものである。パッケージ商品(業 界)という言葉は,日本の読者にはあまりM|染み
がない用語かもしれない。原語では,“Grocery
lDを指しておI),しばしば「グローサリー」あるい は「グロッサリー」などと呼ばれることもあるが,
一般には,スーパーマーケットなどで品揃えの中 心として取り扱われている「包装消費財」
(PackagedConsumerGoods)のことである。
本書がコンサルタントの書いた類書と大きく異 なっているのは,パッケージ商品業界の変化を説 明するために,ほぼ30年間にわたって研究者(と くに,消費者行動研究者)が地道に取り組んでき た理論研究の蓄積と,検証のための膨大なリサー
2.本書が書かれた時代背景と全体像
本節ではまず,本書のおおよその見取り図を与 えることにする。各章の詳細は,次節で紹介する ことにする。本瞥の全体は,大きく2つの部分か ら構成されている。第1部「流通革命」と第2部
「消費者行動」である(翻訳タイトルは,原文の
忠実な訳にはなっていない)。(1)パッケージ商品業界の流通革命
第一部「流通革命」(RevolutionintheGro- cerylndustry)では,パッケージ商品の業界で 起こっている変化の兆しを整理している。筆者た ちは,変化を引き起こしている基本的な要因は,
「グローバリゼーシヨン」「情報技術」「フラット な組織の出現」の3つであるとしている。ただし,
彼女たちがそこで同時に強調しているのは,この 業界が混乱に陥っている責任のかなりの部分は,
業界人自らが招いたものであるという点である。
業界関係者自らが責任を追うべきは,値下げプ
ロモーションを蔓延させたことである。価格プロ
モーションは“ドラッグ”のようなもので,マー ケティング手段としていったん使い始めると,そ こから抜け出すことがむずかしくなる。データで 事実を示すと,1995年には,メーカーのマーケティング予算の75%がセールスプロモーションに支出 されていた。残りの25%は広告予算に使われてい たが,そのうちの3分の1はプロモーションを支 援するために支出されていたのである。
メーカーのプロモーション依存によって生じる 深刻な副作用は,流通業者による商品の「(在庫)
積み増し」(Build-up)である。日本ではそれほ
ど極端ではないが,米国では,価格面で有利なプ ロモーション対象商品を卸小売業者が余分に鱗入 し,プロモーションが実施されていない他地域の 流通業者に転売する(Diversion)ということが 日常的に行われた。商品を転売して,そこから利 ざやを稼ぐことができるからである。その結果,例えば,輸送中に商品が破損したり,送り状を作 成するのに余分な事務経費が多くかかったりで,
その費用が最終的には消費者に転嫁されることに なった。過度なプロモーションによる無駄な費用 が,売上の約10%にもなっていた推定されている。
パッケージ商品業界(メーカー・流通業者の両 方)で非効率なマーケティング・プラクテイスが 一般化しているうちに,サム・ウオルトン率いる
「ウォルマート」(Wal-Mart)のような小売業者 (MassMerchandiser:マス・マーチヤンダイザー)
が,消費者を志向した経営によって急成長を始め た。ウォルマートは,プロモーションの非効率に
巻き込まれることなく,「EDLP価格戦略」(Every‐
dayLowPriceStrategy)を採用し,メーカー との取引で「取引リベート」を一本化するように 求めた。固定的な低価格が実現できるよう努力を した結果,1986年からの5年間で小売業全体が達 成したパッケージ商品の売上増のほとんどを,ウォ ルマートなどのマス・マーチヤンダイザーが奪っ てしまうことになった。
伝統的な小売業者(たとえば,スーパーマーケッ
nは,ウオルマートのような「パワーリテーラー」
(PowerRetailer)の出現に脅威を感じ始め,メー カーと協力をすることになった。パッケージ商品
業界をあげて取り組んだ一連の活動が,「ECR」
(EfficientConsumerResponSe:消費者への効 率的な対応)であった。パッケージ商品業界で活
躍してきた伝統的なプレーヤーたちが採用した戦略としては,P&Gの「バリュー価格戦略」(Value
PriceStrategyLクエーカー・オーツ社の「経 済的付加価値」(EconomicValueAdded)の採 用などである。この過程で起こったことは,商品 カテゴリー・事業単位でマネジャーに経営責任を 与え,戦略的に商品カテゴリーを管理するように 自社組織を再編成したことである。先進的なメー カーのなかには,販売組織を地域別組織から流通 業者別に再編成している。顧客タイプ別に組織を 編成しなおすという傾向は,10年ほど前から日本 でも顕著に見られる現象である。(2)グローサリー商品の買い物行動
こうした変化のすべては,買い物行動に焦点を 当て,パッケージ商品の流通システムを設計し直 した結果に起こったことである,というのが著者 たちの基本認識である。
「誰が消費者なのか?」「消費者は何を必要とし
ているのか?」「どのようにしたら,競合より効率的に消費者のニーズを満たすことができるのか?」
「買い物をするときに消費者を動かしている原理 は何なのか?」
以上の問いに答えるために,第2部「消費者行
動」(Consumers,GroceryShoppingBehavior)
では,グローサリー商品の購買行動について,ア カデミックな研究成果を紹介するという形式が採 用されている。これが本書の最大の特徴である。
アカデミックなリサーチを援用するに際しては,
以下のような課題を取り扱っている。
「消費者はどのように店舗を選択するのか?」
「消費者はどのカテゴリーの商品を購入するのか?」
「ある商品カテゴリーの中で,消費者はどのよう
にしてブランドを選択するのか?」「小売業者の マーチヤンダイジング,価格,プロモーション戦 略に対して,消費者はどのように反応するのか?」消費者の店舗選択を理解するために,店舗の業
態を概観し,店舗選択の要因を考える。消費者の 購入決定には,計画購買,非計画購買,衝動買い を比較している。他方で,店舗に対する親近度,
時間に対する切迫度,子供が一緒に買物について くることの影響などが考慮されている。同時に,
店舗レイアウト,メーカーの施策(例えば,新製 品,SP,サンプル配布など),小売業者の施策 (例えば,色彩,香り,音楽など)などの影響に ついて考察されることになる。
消費者のブランド決定を理解するために,どの ブランドを消費者が考慮しやすいと感じるのかを たずね,「考慮集合」の構成を決定する影響要因 が取りあげている。その後で,ブランド名の重要 性,既存のブランド名をカテゴリー拡張に利用す る能力,そして,提携ブランドの影響力について 記述されている。また,小売業者が高品質PBの 商品ラインを発売し,メーカーブランドの優位に 対して挑戦することが吟味される。情報収集の方 策とブランドを選択のための情報利用で「ルール が単純化されること」に言及されている。
つぎに,小売業者のマーチヤンダイジングに対 する消費者反応を理解するために,商品カテゴリー やブランドに対する棚スペースの配分方法が考察 されている。商品カテゴリーに対する棚スペース の配分は,消費者のブランド選択行動と製品バラ エティが消費者の知覚に与えるインパクトによっ て決まる。価格戦略に対する消費者反応を理解す るために,まず典型的な消費者が製品の実売価格 を知らないことが明らかにされる。また,価格の 知覚に対して影響を与えるさまざまな環境要因に ついて検討が加えられている。プロモーション戦 略に対する反応については,販売促進が有効なブ ランド群の存在,プロモーション活動のブランド ロイヤリティへの影響,商品在庫の積み増し効果 などについて考察がなされている。
て傭撤したものであり,第2部「消費者行動」
(第8章~第11章)は,消費者の買い物行動に焦 点を絞った記述になっている。
(1)第1章:変革の光と影
変革によってパッケージ商品の業界では従業員 の一時解雇や企業の合併,工場や店舗の閉鎖が起 きている。また,変革によって小売業者は記録的 な赤字を経験し,卸売企業は互いに合併を行って いる。
(2)第2章:広がる革命
パッケージ商品の業界で変化が起きつつある。
その変化の一部を引き起こしている力とはすべて の産業に共通している力である。情報伝達と交通 手段の変化は国と国との間の障壁を取り除きなが ら,グローバルな競争を激化させている。情報技 術の普及は中間管理職を不要にしつつあるし,組 織の階層が消滅することによって,企業組織はいっ そう柔軟で身軽になっていくはずである。
(3)第3章パッケージ商品産業の発展 1974年の価格凍結以前,米国のパッケージ商品 の流通システムはとても効率的であった。しかし,
価格凍結以降,メーカーは,将来価格凍結が起き うることを予想して,メーカー建値を従来の利益 率を確保するのに必要なレベルより上げた。メー カーは,建値を上げたために,時折,大幅な値引 きを流通業者に提供しても十分な利益を確保でき た。流通業者(卸と小売)は,このメーカーの値 引きを利用して,特売仕入と転売によって大量の 商品を仕入れた。しかし,特売仕入や転売にとも
ない商品の取扱い作業が増加し,多くの商品が破 損した。また,流通業者が行う特売仕入と転売に ついてメーカーと交わされた契約が複雑になり,
しばしば,まちがった送り状が送付された。
3.本書の構成(各章の要約)
本書は,内容的に異なる2つの部分から構成さ れている。ここでは,各章の最初に数行から-頁 の長さで掲載されている「要約」を,そのまま翻 訳して掲載しておく。第1部「流通革命」(第1 章~第7章)はⅢパッケージ商品業界を全体とし
(4)第4章:変わるパッケージ商品のマーケティ ングの構造
パッケージ商品メーカーは,3章で述べられた 破壊的な取引に加えて,変わりゆく消費者,媒体 環境,競争環境,そして小売業や卸売業に悩まさ れている。消費者は,ますます時間に余裕がなく
なり,人種が多様化し,マーケティング・メッセー ジにうんざりしている。広告媒体は断片化し,効 果的でなくなっても,価格高騰の一途を辿ってい る。「新」製品の粗製濫造は製品の差別化を失わ せ,ブランド資産を低下させている。最後に,卸 売業者や小売業者は合併し,互いに情報技術に投 資を行っている。
これらの領域を効果的に導入するには,視点を これまでの粗利益志向から,「活動基準原価計算」
(activity-basedcostaccounting)によって全て
の直接固定費と間接固定費が製品に適切に振り分 けることによって,純利益志向に変えていく必要 がある。資産の資任ある活用を促進するために,報償システムも見直されなければならない。その 上で,メーカーと流通業者は,組織構造を徹底的 に見直し,戦略的な意思決定権限を両者のインター フェイスに位置する人たちに委譲しなければなら ない。
(5)第5章:市場対応
メーカーは,原材料コストが下がっているにも かかわらず,NB商品の価格を従来通り高くして いたので,高品質のPB商品が出現し成功を収め た。というのは,PB商品の市場への参入機会を 低くするとともに流通の非効率性を撤廃する動き があったからである。P&Gは1991年にハイ・ロ ウ・プロモーション価格戦略を撤廃した。小売業 者及び卸売業者は,当初P&Gの「バリュー価格 戦略」に抵抗したが,業界団体調査を実施した後 で,その考え方により柔軟になった。この調査に よると,新業態の小売業者が26%のコスト優位性 を挺子に,従来の小売業態の最良の顧客と蝋も利 益性のある商品カテゴリーのビジネスをとってし まったために,従来型のスーパーマーケットの売 上が減少してしまった。この巨大な「パワー・リ テイラー」がだんだんと支配的になったにもかか わらず,他のメーカーは,従来型のスーパーマー ケットを支援して再び競争力を回復できるように 手助けしていた。
(7)第7章:未来の構図
さまざまな業界で変化を引き起こしている大き な力(グローバリゼーション,‘情報技術,フラッ トな組織構造など)が,パッケージ商品業界にも 革新的な変化を起こそうとしている。これには,
これまでパッケージ商品業界で行われてきたさま ざまな施策が非効率であったことや,従来のパッ ケージ商品の流通システムの基となっている社会 経済的要因が根本的に変わってきていることが拍 車をかけている。この揺れ動く産業の中で生き残 り,繁栄するためには,消費者を理解し,彼らの 要望を叶えることに焦点を当て続けることが非常
に重要である。
(8)第8章:購買場所の決定
この章では,まずスーパーマーケットとは何か を見てみることにする。今や,近所のバパママ・
ストアでグローサリー商品を鱗入していたときと は,明らかに時代が変わってきている。現在,ア メリカには11種類のスーパーマーケットの業態が 存在しているといわれる。そこで,これらの新た な小売形態の一つひとつを説明し,さらに,イン ターネット上でのショッピングが実現する可能性 について議論をする。
つづいて,消費者がどのような要因を重視して,
ふだん買い物をするスーパーを決めているのかを 調べてみることにする。消費者のグループが異な れば当然,彼らが重要と考える要因も異なってく る。それでもなお,すべての消費者にとって共通 の傾向はあるはずである。したがって,消費者の 一般的な買い物行動についても考えることにする。
(6)第6章:ソリューション:消費者への効率 的な対応
メーカーと伝統的な小売業者は,共同である領 域に踏み込まざるを得なくなっている。その領域 とは,「消費者への効率的な対応」(Efficient ConsumerResponse:ECR)と呼ばれ,伝統的 な小売業者の競争力を回復させ,新しい小売業態 の成長を抑えるのを目的に開発されている。ECR には,各カテゴリーの商品アイテムの組み合わせ を見直す「効率的な品揃え」や,店頭の棚まで継 続的に商品補充を行う「効率的な商品補充」,ハ イ・ロウ・プライスに伴う非効率から脱却するた めの「効率的なプロモーション」,製品の過度な 増加を抑える「効率的な新商品導入」などがある。
平均的な消費者は,どれくらいの頻度でスーパー マーケットに買い物に行くのだろうか?
消費者は,特定のスーパーマーケットへのロイ ヤリティを高めているのだろうか?それとも,複 数のスーパーマーケットで買い物をする傾向にあ るのだろうか?
消費者は複数のスーパーマーケットで買い物す ることがふつうである。また,ひとつの地域にい くつもの異なるスーパーマーケットがあることが 一般的なので,スーパーマーケットの事業は今日,
競争が非常に激しくなってきている。そこで,消 費者を自店に来てもらうために,あるいは,店内 での滞在時間を長くして,より多くの金額を買い 物に費やしてもらうために,積極的なインストア・
マーケティング戦略を展開している。
小売業における競争は同業態のスーパーチェー ン間での競争にとどまらない。他業態の小売業,
すなわち,マス・マーチヤンダイザーやカテゴリー キラー(たとえば,トイザらスやベトコ社など)
など,異業種の小売業に顧客を奪われることをも 視野に入れておかなければならない。最近では,
消費者に食料品以外の商品を,スーパーマーケッ トでも購入してもらえるように販売に努力してい る。
が,非計画購買に影響を与える。これらの要因は,
様々な形で非計画購買に影響を与えることがわかっ ている。
スーパーが消費者の購買習'慣を変えることもあ る。第一に,スーパーのレイアウトは,消費者が どの通路を通るのかに影響し,結果的には消費者 が何を買うかに影響する。第二に,メーカーの小 売店内での購買促進活動も非計画購買を増加させ,
一般的な購買習慣を変えさせる。メーカーは新製 品を紹介したり,価格やプロモーション習慣を変 えるなど,購買率に影響を与える活動を行うこと ができる。もっと直接的には,メーカーは店内で のプロモーション・プログラムを支援したり,店 舗内での実演や試食販売・デモンストレーション 販売をすることで嚇買促進を助けることができる。
最後に,店の雰囲気(店内環境の感覚的側面の 変化)も購買に影響を与えることが証明されてい る。周囲のにおい,音楽,あるいは,装飾の視覚 的変化など,店内の雰囲気は,消費者がどれくら いの時間を店内で過ごすか,そして,店内にいる 時の消費者の気持ちに影響を与える。これらの要 因は,購買される製品アイテムの種類や非計画購 買の発生率にも関係してくる。
(10)第10章:購入ブランドの決定
消費者が-度ある商品クラスから購入すること を決めると,次にはその商品のどの製品アイテム もしくはブランドを買うのか決めなければならな い。ブランドは,その消費者の考慮集合(すなわ ち,消費者が購入を考慮している製品アイテムの 集合)の中に入っていなければ選択されることは ない。
それらのブランドは,どのようにして消費者の
考慮集合に入るのだろうか?この意思決定は,
消費者が店舗に入る前と入った後,両時点での諸
要因に基づいてなされる。消費者は,店舗外で情
報手がかりを通して商品について学習を舐んでい る。例えば,その消費者は広告に接触しているか もしれないし,他の商品クラスでのブランド経験 からあるブランドの名前に親しみを感じているか もしれない。また,口コミでそのブランドのこと を聞き知っているかもしれない。しばしば,消費 者のあるブランドへの選好は,店舗の中で形成ざ(9)第9章:購買カテゴリーの決定
消費者が買い物に行こうと決めて,どのスーパー に行くかも決めたら,次に決めるのは何を買うか である。購買の決定は,あらかじめ決められてい る場合(計画購買)と,店内で決められる場合 (非計画購買)がある。さらには,購買が無意識 のうちに合理的な理由がなく,衝動的に起こる場 合もある。非計画購買決定は店内で行われている ことから,インストア・マーケティングやマーチヤ ンダイジングが重要であるが,このように非計画 購買が起こりやすいという事実は,小売業者にとっ て非常に興味深い。調査によると,スーパーでの 購買決定の60%以上は,非計画購買によるもので ある。個人的な要因が非計画購買に影響を与えて いる。とくに,消費者が買い物環境に償れている かどうか,時間的プレッシャーを感じているかど うか,あるいは,消費者がひとりで買い物をして いるのか同伴者がいるかどうかといった要因など
れる゜この場合,パッケージ,棚割り,陳列,価 格設定のパターン,ブランド間での強制的な比較 などがブランドの選択に影響を及ぼしている。
消費者があるブランドに関して集めた情報,た とえば,ブランド名,栄養成分情報,パッケージ の特徴や口コミによる推奨などの記憶のされ方が,
消費者のブランドに対する好みやそのブランドの 鱗入を考慮するかどうかに影響を与えている。ま た,棚に並んだストア・ブランドやPB商品の存 在そのものが意思決定に影響している。
仮に消費者が最適な意思決定者であるのならば,
考慮集合の内容が違っていたとしても,最終的な 商品購入は変わらないであろう。つまり,消費者 は初めの段階で他のブランドの購入を考慮してい たということとは関わりなく,常により好ましい ブランドを選択するはずである。しかし,多くの 場合,消費者が十分に注意を払って最適な選択を しているという確証はない。むしろ,消費者は購 入を考慮するブランドを絞り込むために,しばし ば意思決定を単純化するためのルールを用いる。
調査結果によると,考慮集合の構成内容が変化す ると同様に,最終的な選択も変化することが明ら かにされている。
棚割りを管理する必要がある。顧客の購買パター ンの記録に沿ってデザインされた棚割りは,売上 を伸ばし,さらなる利益を生み出す。また,品揃 えも棚スペースの配分を決定するのに重要である。
幅広く品揃えをすれば,いろいろな種類の商品を 提供することになるが,多すぎるとかえって顧客 を混乱させてしまう。その場合,類似アイテムを 棚から取り除くことによって,小売業者は収益性
を改善することができるのである。
カテゴリー内でのブランドの品揃えを決定した なら,小売業者は価格設定を考える必要がある。
消費者は,主に3つの形で価格に関わっている。
第一に,消費者は価格について知っている必要が ある。鱗買決定において,価格は非常に重要な基 準であるにもかかわらず,いくつかの研究による
と,消費者はしばしば習・慣で買い物をするので,
特定のアイテムを購買するのに支払った絶対的な 価格を思い出せないことが報告されている。第二 に,消費者は一般に参照価格と照合して,価格が
妥当かどうかを判断する。参照価格とは,購買時 点で示される価格であり,例えば,特売時と比較
した場合の通常価格,すなわち,競争的価格であ る。言い換えれば,参照価格とは,消費者が記憶に留めている価格なのである。もし,購買価格が その参照価格と同等かこれを下回れば,その価格
は妥当に思える。購買価格が参照価格を上回るな らば,価格が妥当ではないと考える。第三に,消 費者が価格の上げ下げに反応することによる価格 との関わりである。消費者は,価格が下がって喜 ぶこともあるが,それ以上に,価格の上昇に悩ま されることの方が多いとされている。最後に,小売業者は短期の価格プロモーション を行うかどうかを考えなければならない。スーパー でよく用いられる価格プロモーションには,メー カーや小売業者が発行するクーポン,主通路やエ ンドの店内ディスプレイ,新聞広告や店内チラシ における特定ブランドの目玉価格の広告という3 つのタイプがある。
(11)第11章:小売業者の戦略に対する消費者の 反応
消費者にグローサリー商品を販売する場合,マー チヤンダイジングに関して小売業者が考えなけれ ばならないことがたくさんある。マーチヤンダイ ジングの決定には,以下のもの含まれる。すなわ ち,(1)ひとつのカテゴリーにどのくらいのス ペースを配分すべきか,そして,カテゴリー内の 各ブランドへどのようにスペースを配分すべきか。
その際に,ブランドを置くスペースの位置はどの ようにすべきか(例えば,棚の-番上なのか-番 下なのかなど)。(2)商品アイテムの追加と削減 に関するの決定,すなわち,新しいアイテムを採 用すべきかどうかと,他の新しいアイテムが出た 場合に既存アイテムを打ち切るべきかどうか。
(3)価格設定,および,(4)プロモーションの 決定である。
利益を上げるためには,小売業者は梢賢者の買 い物の仕方を理解したうえで,そのカテゴリーの
4.米国のパッケージ商品業界:その後の変化 1997年に出版された原著響については,法政大 学産業情報センターが主催する「プランドマネジ
メント研究会」の参加メンバー17人により,ほぼ 半年をかけて翻訳作業が行われてきた。日本語版 は,2000年の3月末に「同文舘出版」から刊行さ れる予定である。
邦訳の出版に際して,筆者(小川)のリクエス トに答えて,二人の原著者がわざわざ日本語版へ の序文を書いてくれることになった。〈日本語版 によせて〉の翻訳は,3月末刊行予定の日本語版
「グローサリー・レボリューション」に掲載され
るはずである。しかし,序文の原文を読者が目に する機会はおそらくないと考えて,本紹介文の最 後に〈付録〉として全文を掲栽することにした。筆者がふたりに〈日本語版によせて〉を執筆し てもらうことにした動機は、以下の通りであった。
〈付録〉は,「原著が出版されてからすでに2年 以上が経過しているので,(1)その後の業界の 変化,(2)情報革命の影響,(3)梢賢者リサー チの新展開について知りたい」(小川)という質 問に対する,彼女たちの回答になっている。
電子メールの中で,筆者は4番目の質問をして いる。
「(4)本瞥で展開された理論と実証結果は,
日本の小売業者や消費者市場を解釈する上で若干 の修正が必要ではないだろうか?というのは,
第2次大戦後に日本は米国からマーケティング技 術と小売業の運営ノウハウを導入したが,日本で はその後,米国と異なる発展を遂げている。その 背景としては,①価格感度が高い米国の消費者に 比べてロ日本人は品質標準に対してより厳しい判 断を下す傾向がある(事実,クーポンなどの制度 が普及しなかった),②スーパー(量販店),ホー ムセンター,コンビニエンス・ストアなどに見ら れるように,小売業態の消費者に対する役割が異 なっている,③基本的な社会経済的な条件(たと えば,人口密度など)が異なっているために,消
費者のショッピング行動が違っている。」
彼女たちの答えは,「わたしたちは日本の市場 や消費者をよく知らないので,“訳者のまえがき,, のなかであなたたちから読者に回答を与えてほし い」というものであった。
<付録〉
IntroductiontoJapaneseTranslation ofGroceryRevolution
SincethepublicationoftheEnglishlan- guageversionofGmceZyReuoJutjo〃:mhe jVbLuFbcuso〃theCO"sumerinl997,the
globalgrocerymarkethascontinueditsrapid
changeAspredicted,weakergroceryplayers arebeingrapidlyabsorbedbystrongerplayers・IntheUSmarketinl999,Krogerbought FredMeyer(combinedsales$43billion),
AlbertsonosboughtAmericanStores(combined
salesof$33billion),SafewayboughtRan‐
dalrs(combinedsalesof$27billion),and
Ahold,aDutchgrocer,istryingtobuyPath-
marktomakeitthefourthlargestUSgrocer (combinedsalesof$20billion).IFouryears
ago,thetopfivefoodretailersintheUSrepre- sentedonlyone-fifthofsalesAswemovein-totheyear2000,thetopfourfoodretailers representone-thirdofallUSsupermarket saleS2
Thisconsolidationisnotlimitedtothe USmarket・Inl999CarrefourboughtPromodes
(combinedsales$65billion)inwhatisseenas anattempttoprotecttheFrenchmarketfrom Wal-Mart・AndWal-Mart(globalsalesof
$160billion)movesrelentlesslyintotherest oftheworldwithanoffertobuyASDAgroup、
Whenwelookattheworld0stenlargestfood retailers,weseeWal-Martleadingthepack,
Carrefour/Promodesadistantsecond,and Japan,sltoYokado($40billioninannual
sales)eighthonthelistthatcontainsfour
USbasedchains,twoGermanchains,two Frenchchains,oneDutchchainandoneJapa‐nesechain3
Onthemanufacturerside,weseea reversalintheECR-inspiredtrendtoward reducedpromotionspendingintheUSAccor‐
dingtoA.CノVIeJse"もノVZ"thA〃、uαノSⅢruey
focusedonwaystoincreasevaluetothecon‐
sumer・Onestreamofresearchhaslookedat howtoincreasetheuseablevarietyinanassort- mentwithoutexorbitantlyincreasingcosts、
Someofthemoreinterestingresearchhasfound thatitmightbeinretailers'bestinterestto strategicaUyreducethenumberofSKUsinan assortmentinordertoincreasetheperceptions ofdesirablevariety、Otherresearchhasfocus‐
edonunderstandinghowconsumersarelikely tousethelnternettoshopfortheirgoods Forexample,researchershavebeenstudying
howconsumerssearchforinformationand browseontheInternet・Modelshavebeen
developedtotryandcapturenewinsightsmto consumerbehaviorthroughthecaptureofthe
“click-stream',datathatinternetbrowsing generatesAnothertopicofconcernishow pricesensitivitiesandreactionstopricepromo‐
tionsmaychangewheninformationandcom- parisonshoppingcanbedoneeasilythrough theuseofspeciallydesignedsearchengines Finally,therehasbeenagreatdealofre‐
searchexaminingtheroleofbrandname,
bothofretailersandmanufacturers,asthese
industrychanges(e、9.,therampantconsolida‐
tionofgrocersandincreaseuseofthelnter‐
net)takeplace・
Inclosingthisintroduction,wewantto repeatthecalltoactionlaidoutintheEng‐
lishlanguageversionofthisbook・Changeis comingtoallindustriesinallpartsofthe globe. “Overthenext30years,geographic andregulatorybarrierswillfall,electronic distributionwillstarttoparallelandevento bypassphysicaldistribution,…andfocused competitorswillattacklikepiranhasCom- panieswillhavetorestructureordie'’6 q/TradePromotio〃Practices,USmanufactur‐
ersspent15%ofsales($75billion)onpromo-
tioninl998afterspendingonly12%ofsalesonpromotioninl997.(Thisincreaseinpro‐
motionspendingmaybearesultoftheretailer consolidationJ
Consolidationinthegroceryindustry providestheopportunityformassivescale
economiesifretailersandmanufacturerscan
effectivelyglobalizetheiroperationsOne elementcriticalfortheglobalizationeffortsto succeedwillbethestandardizationofdata andcommunications・Whatwillreplaceand extendtheroleoftheUPCcode?
Aswelookintothefuture,weseethe Internetposingathreattobricks-and-mortar stores,PricelineosWebhouseClub,“Peapod,
NetGrocer,HomegrocerandStreamlinestand outamongthemorethanthreedozenlnternet grocerydeliveryservicesnowresidentonthe WehTheStreamlineconfigurationmost closelyapproximatesthehighly-toutedauto- maticreplenishmentpotentialofthelnternet
viaits“Don,tRunOut,,[DRO]program、
7,,1“DROautomaticallygeneratesashopp‐
inglistbasedonmemberconsumptionpatterns,
thenpromptsconsumersviae-mailtoalter thestandinglistwhenthesystemdetects variancesinusageRetailersenjoytheearly warningsystemandcanmorecloselycalibrate inventories・Manufacturerspointtothein‐
herentadvantagesofasystemthatvirtually locksconsumersintoabrandpreferenceand eliminatescomparisonshoppingo’5
B2B(i、e、,business-to-businesstran- sactionsovertheinternet)promisestohave anevenbiggerimpactonthesupplychain
structureandcoststhandidECR、Thecom‐
municationandcostsavingswillspreadbe‐
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