1950年代後半から1980年代初頭を中心に
著者 林 彦櫻
雑誌名 社会科学
巻 48
号 1
ページ 147‑170
発行年 2018‑05‑31
権利 同志社大学人文科学研究所
URL http://doi.org/10.14988/pa.2018.0000000117
戦後日本における零細小売業の事業機会の変容
─ 1950 年代後半から 1980 年代初頭を中心に ─
林 彦 櫻
零細小売業の「過剰」問題は,戦前の日本から注目された。しかし,1950 年代以降,
過剰人口の解消,新しい小売業態の発展にもかかわらず,「過剰」とされた零細小売業 はほぼ減少することなく,1980 年代初頭まで増加し続けた。その要因について,従来 には「市場スラック説」や「日本的市場構造説」が存在しているが,本稿は,これら の説を検証するために,多数の資料とデータを用いて,高度成長期と低成長期に分け て零細小売業の事業機会の変容を実証した。
高度成長期には,小売市場が急速に拡大したこと,多頻度少量購買の購買行動がま だ主流であったこと,都市化の進展に伴い,人口急増地域では新規需要が発生したこ と,スーパーマーケットがまだ量的にも質的にも成熟していないこと等によって,多 くの事業機会が存在し,零細小売業はその全盛期を迎えた。低成長期に入ると,需要 の多様化により零細小売業の新たな存立基盤が生まれたものの,市場の拡大が減速し,
人口の大都市集中も一段落がつき,業態の多様化によって競争が激化したため,零細 小売業の事業機会が徐々に縮小した。
本稿は実証を通じて,「市場スラック説」と「日本的市場構造説」の有効性を再確認 した一方,それぞれの限界についても検討した。この時期の零細小売業の存立要因を 説明するためには,時間と空間の諸要素を総合的に取り入れたダイナミックな歴史像 の構築が必要であり,それを今後の課題としたい。
は じ め に
近年の日本では,商店街の急激な衰退により,地方都市を中心に中心市街地の疲弊や 高齢者の買物難等の社会問題が注目されている1)。このような商店街の衰退傾向は,1980 年代以降,零細小売業の数の長期的減少に伴って起きた現象である。しかし,これまで,
零細小売業に対する先行研究の認識においては,「過小過多」という言葉に示されるよう に,むしろ零細小売業の「過剰」であることが問題とされてきた2)。
零細小売業に対する「過剰」という認識は,戦前に遡ることができる。両大戦間期に おいて,零細小売業の「過剰」問題は主に都市部の「過剰人口」の吸収と,過当競争に
よる貧困問題として注目されていた3)。1920 年代の慢性不況の中で,就業機会を求めて 多くの労働力が都市雑業や零細小売業に流入したことにより,零細小売業の貧困問題が 表面化した4)。さらに,1923 年の関東大震災を機に百貨店が打ち出した「大衆化路線」
は,小売業の競争を激化させ,零細小売業の貧困化がさらに進んだのである。
戦後,特に高度成長期になると,零細小売業の「過剰」問題は,貧困問題・社会問題 としての関心が後退したが,それに代わって,「大量生産・大量消費」に対応する大量流 通機構の形成を妨げた流通問題として意識されるようになった5)。1960 年代の「流通革 命論」は,流通部門の発展の遅れが日本経済のボットルネックとなりつつあると主張し,
卸売業者の排除とスーパーマーケットの発展,一部の中小零細小売業者の淘汰による「流 通革命」が起きることを予言した6)。その後の歴史的展開からみると,「流通革命論」の 予言は半分しか現実のものとならなかった。即ち,スーパーマーケットをはじめとする 新しい小売業態は予言通り急成長したが,他方では卸売業者の排除と一部の中小零細小 売業者の淘汰は起きなかった。零細小売業の商店数はむしろ 1980 年代初頭まで増加し続 けた。
それでは,なぜ長く「過剰」とされた零細小売業が,1950 年代後半から 80 年代初頭ま で増加し続けたのか。そもそも,零細小売業の「過剰」という認識は,妥当なのか。そ れに関して,すでにある程度の研究蓄積があるが,それを大別すれば,主に内部要因を 重視する研究と,外部要因を重視する研究とに大別できる。
内部要因を重視する研究として,最も代表的なものは石井淳蔵の「商人家族論」であ ろう7)。石井は,1980 年代後半以降,「商人家族」の解体が零細小売業の衰退をもたらし たと主張し,家族経営という経営形態が零細小売業の存立を支えているとみている。ま た,林彦櫻の一連の論文は,零細小売店主と家族従業者の就業行動に着目し,労働供給 の側面から零細小売業の存立基盤を分析した8)。
一方,外部要因を重視する研究として,田村正紀の「市場スラック説」と丸山雅祥の
「日本的市場構造説」が最も注目される。田村は,高度成長期に市場が急成長する中で,
大型店の発展水準が相対的に遅れたため,それによって発生した「市場スラック」が零 細小売業の存立を温存したとしている9)。一方,丸山は,日本人の多頻度少量購買の消費 行動と,それによる小売市場の構造が零細小売業の存立に適していたと主張する10)。
本稿は,零細小売業の存立を支える外部要因に着目して,1950 年代後半から 1980 年代 初頭まで,零細小売業の事業機会の変容について考察し,なぜ「過剰」とされた零細小 売業がこの時期に長期的に増加したのかを分析する。外部要因を重視する研究には,以
上あげた田村説と丸山説があるが,いずれも仮説的な部分が多く,実証が十分ではなく,
また経済史の研究ではないため,歴史的な変化をあまり重視しない。具体的に言うと,田 村説は,市場規模(需要)や大型店の発展水準(供給)の両方とも視野に入れつつ,動 学的な視点からスピードのギャップで零細小売業の事業機会の存在を検出したが,需要 の中身や大型店発展の実態については十分に検討していない。また,1964 年と 1974 年の 二時点のデータだけを取り上げたため,オイルショック以降「市場スラック」の変化に ついてはほとんど触れていない。それに対して,丸山説は消費者の移動コスト,在庫保 有コストなどに規定される消費行動と,小売店の発注コストと,在庫保有コストに規定 される販売行動を総合的に取り入れたモデルを構築したものの,理論研究であるがゆえ に,時系列的な変化の実証がなかった。
以上のように,田村説と丸山説は,いずれも外部要因に着目して,それぞれ零細小売 業の事業機会の発生メカニズムと内部構成について重要な示唆を与えてくれたものの,
事業機会のそれぞれの構成要素の時系列的な変化についてはあまり実証しなかった。本 稿は,田村説と丸山説を念頭に入れつつ,零細小売業の事業機会の変容を消費需要の変 化,都市化に伴う人口移動,及び小売業の産業構造の変化の三つの要因から実証分析を 試みたい。本稿の構成は次の通りである。まず第 1 節で小売業の構造変化を概観するう え,第 2 から第 4 節にかけて,小売市場の動向,都市化の進展,小売構造の変容という 三つの側面から,零細小売業をめぐる事業機会の変化を考察し,最後に全体をまとめて 結論と残された課題を提示する。
1 零細小売業の概観
まず,この節では,零細小売業を商店数の変化を考察し,この時期における零細小売 業の増加を確認しておこう。なお,本稿で言う零細小売業とは,経営組織の形態(個人・
法人)を問わず,「常時従業者 4 人以下」と定義する11)。この定義は基本的に糸園辰雄の 定義を踏襲した。糸園は各種の統計資料に基づいて,従業者 4 人以下の小売業が労働力 構成,営業時間,販売方式,売場面積と店舗の立地,設備投資,販売効率等の指標にお いて,それ以上の規模階層と比較して,家族従業者に大きく依存し,生産性が低く,設 備面も顕著に劣ることを指摘した12)。言い換えると,この層は最も典型的な家族経営(い わゆる「生業」)である。
さて,以上の定義により零細小売業の商店数についてみると,1950 年代後半から 1980
年代初頭まではほぼ一貫して増加した。通商産業大臣官房調査統計部『商業統計表』に よれば,1956 年の零細小売業の商店数は 110.7 万店であったが,ピーク時の 1982 年には 144.9 万店まで約 34.2 万店増加した。同時期における小売業全体の増加数は 52.0 万店だっ たから,その 6 割強が零細小売業だったわけである。一方,小売業全体に占める零細小 売業のウエイトは低下した。前掲『商業統計表』によると,1956 年時点で,零細小売業 の商店数は小売業全体の 93.7%,年間販売額の 51.6%を占めていたが,82 年にはそれぞ れ 84.2%,32.9%まで低下した。
以上,この時期の零細小売業の商店数の推移をみたが,次に,それを『商業統計表』の 調査年度に合わせて高度成長期(1956 〜 1972 年)と低成長期(1972 〜 1982 年)の二つ の時期に分けて,業種別にみてみよう(表 1)。零細小売業より規模の大きいものも含ま れるが,この時期に零細小売業の商店数が小売業全体の 8 〜 9 割を占めるため,これを 零細小売業の業種構成の変化とみて差し支えないだろう。
高度成長期には市場が急拡大するため,ほとんどの業種で商店数が増加した。戦後の 学校給食制度の影響もあって食の洋風化が進み,「牛乳」421.5%,「卵・鶏肉」178.5%,
「食肉」109.7%の増加率が高い。住居面では一人当たり住居面積の拡大,住宅の洋風化に よって家具の需要が拡大し,家電製品も急速に普及したため,「家具」,「家庭用電気機械 器具」の増加率が高い。一方,商店数が減少する業種は少なく,主に「履物」,「呉服・服 地」,「乾物」等在来的な消費財を扱う業種や,「菓子」等もともと過当競争が存在し,スー パーの進出も早い業種である。
低成長期になると,消費の増加は高度成長期に比べて減速し,零細小売業の商店数も,
中分類でみると,とりわけ飲食料品小売業,織物・身の回り品小売業等の最寄り品にお いて,減少に転じた業種が多い。飲食料品小売業はスーパーにおける生鮮部門の拡大や 取扱品目の増加により,「鮮魚」,「野菜」等は商店数の減少が目立ち,高度成長期に急増 する「牛乳」もこの時期に減少に転じた。また,織物・衣服・身の回り品小売業におい ては,「履物」,「他に分類されない織物・衣服・身の回り品」,「男子洋服・製造小売業(注 文服)」の減少が目立つ。ただし,需要の多様化を反映し,「楽器」,「花・植木」等の嗜 好品や,「料理品」等加工食品を扱う商店も増加した。
高度成長期に飲食料品小売業の商店数が増加するのは,食材の洋風化と加工食品の拡 大による影響が大きい。それを反映して,「牛乳」,「卵・鳥肉」,「食肉」,「パン」,「料理 品」等で商店数が増加した。日本における食材の洋風化は戦後の新しい現象ではないが,
それが敗戦直後の食料難とその中で再開された学校給食制度を契機に,高度成長期にお
表 1 業種細分類別小売業商店数の増加率
商店数が増加した業種 商店数が減少した業種
1956 〜 1972 年
織物・衣服・
身の回り品
寝具(210.1%),婦人・子供服(206.9%),男子洋服・
製造小売でないもの(147.8%), 男子洋服・製造小売
(74.9%),かばん・袋(55.8%),くつ(33.4%)
洋品雑貨・小間物(-6.9%),呉 服・服地(-7.3%),他に分類され な い 織 物・ 衣 服・ 身 の 回 り 品
(-42.6%),履物(-50.2%)
飲食料品 牛乳(421.5%),卵・鳥肉(178.5%),食肉(109.7%),
果実(74.9%),パン(70.7%),各種食料品(64.3%),
料理品(54.4%),鮮魚(23.4%),酒・調味料(23.0%),
茶(18.0%),野菜(1.6%),他に分類されない飲食料 品(0.3%),米穀類(0.3%)
菓子(-31.7%),乾物(-36.4%)
家具・建具・
じゅう器
その他のじゅう器(878.9%),家庭用電気機械器具
(148.8%),建具(70.9%),家具(64.5%),畳(53.1%),
家庭用機械器具(11.4%),金物(5.1%)
陶磁器・ガラス器(-6.2%),荒物
(-38.1%)
自動車・自 転車
自転車(-5.6%)
その他の小 売業
ガソリンステーション(1198.2%), 楽器(258.9%),
スポーツ用品(200.4%),花・植木(116.6%),がん 具(86.3%),骨董品(83.0%),他に分類されないそ の他の小売業(80.9%),写真機・写真材料(75.5%),
化粧品(49.8%),たばこ・喫煙具(48.4%),時計・眼 鏡・光学機械(47.7%), 医薬品(29.8%),書籍・雑誌
(13.7%),農器具(10.9%),燃料(8.7%)
紙・文房具(-5.2%),苗・種子
(-10.4%),肥料(-41.8%),その 他の中古品(-70.7%)
1972 〜 1982 年
織物・衣服・
身の回り品
婦人・子供服(123.4%),かばん・袋物(50.2%),寝 具(32.2%),男子洋服・製造小売でないもの(24.4%),
呉服・服地(3.5%),くつ(1.7%)
洋品雑貨・小間物(-3.4%),男子 洋服・製造小売(-18.3%),他に 分類されない織物・衣服・身の回 り品(-22.5%),履物(-40.4%)
飲食料品 料 理 品(248.2 %), パ ン・ 製 造 小 売(174.6 %), 茶
(28.0%),パン・製造小売でないもの(24.4%),菓子・
製造小売(17.4%),食肉(10.5%),各種食料品(10.4%),
酒・調味料(6.8%),米穀類(5.6%)
鮮魚(-5.4%),野菜(-10.0%),
果実(-10.0%),牛乳(-10.9%),
卵・鳥肉(-15.5%),豆腐・かま ぼ こ 等 加 工 食 品・ 製 造 小 売
(-17.7%),菓子・製造小売でない もの(-18.3%),乾物(-24.3%),
豆腐・かまぼこ等加工食品・製造 小売でないもの(-34.1%)
家具・建具・
じゅう器
その他のじゅう器(53.4%),家具・製造小売でないも の(46.3%),陶磁器・ガラス器(40.2%),家庭用電 気機械器具(36.3%),建具・製造小売でないもの
(24.9%),家庭用機械器具(18.7%),畳・製造小売で ないもの(7.9%),金物(3.1%)
荒物(-7.7%),建具・製造小売
(-8.8%),家具・製造小売(-12.5%)
自動車・自 転車
自動車(97.0%),自転車・自動二輪車(6.0%)
その他の小 売業
ス ポ ー ツ 用 品(88.6 %), 楽 器(82.8 %), 花・ 植 木
(69.3%),新聞(64.0%),写真機・写真材料(54.7%),
書籍・雑誌(51.2%),他に分類されないその他の小売 業(50.3%),骨董品(49.7%),化粧品(41.5%),ガ ソリンステーション(39.1%),農器具(34.5%),医 薬品(27.4%),苗・種子(17.6%),たばこ・喫煙具
(9.4%),紙・文房具(8.6%),肥料・飼料(5.6%),
他に分類されない飲食料品(4.2%),燃料(3.2%), 時 計・眼鏡・光学機械(2.3%)
その他の中古品(-21.1%)
出所:通商産業省官房調査統計部『商業統計表』各年版より作成。
注: (1)括弧内はそれぞれの期間における商店数の増加率。(2)各年の『商業統計表』では,業種分類の改訂により データが連続しないことがあるため,一部の業種の統合をした。また,こうした調整が不可能な業種は省略する。
いて普通の国民生活の隅々まで浸透した13)。
低成長期に商店数が減少する業種が多くなったのは,市場拡大の減速,競争の激化に よって,従来の零細小売業の存立基盤が縮小しつつあるからであろう。一方,所得水準 の上昇に伴い,需要の多様化が進み,それが大量流通に適しない商品の増加をもたらし,
そのような分野は零細小売業の新たな存立基盤となった。
以上,1950 年代後半から 1980 年代初頭まで,零細小売業の商店数の変化と,その業種 構成の変容について確認した。この間,零細小売業の商店数が一貫して増大したが,外 部環境の急変化に適応して,その業種構成も大きく変容した。高度成長期には,市場の 拡大を背景に,ほとんどの業種において零細小売業が増加し,この時期は零細小売業の 全盛期であると考えられる。低成長期に入り,市場の拡大が減速すると,一部の業種で はすでに商店数の減少が見られ,
1980 年代以降の零細小売業の全面的な衰退
14)に比べて,この時期は零細小売業の漸進的な衰退期であるといえる。
2 小売市場の動向
以上で見たように,零細小売業は 1950 年代後半から 80 年代初頭まで業種構成の変化 を伴いながら,長期的に増加していた。その背後には,消費の量的な拡大と消費内容の 高度化,及びこの時期における日本人の消費行動の変化があると考えられる。ここでは,
零細小売業の存立基盤との関連から,小売市場の動向を量的な変化と質的な変化という 両面から確認し,次に消費者の行動と小売市場の構造について検討する。
まず,消費支出の動向についてみよう。1963 年以降のデータに限られるが15),図 1 で は総理府統計局編『家計調査年報』による家計消費支出及び可処分所得の動向を示した。
なお,ここでの着目点は小売市場の変化であるため,サービス関連の消費や,光熱水道 料等,小売業の流通活動とあまり関係ない支出を除いた消費支出も推計してみた。
図 1 により,1963 年〜 1985 年には,1973 年を境に,世帯当たりの可処分所得と消費 支出のいずれも,それまでの急増と,それ以降の停滞傾向が読み取れる。また,高度成 長期にはサービス関連消費,光熱水道料等を除いた世帯当りの消費支出の増加率が可処 分所得と消費支出のそれに比べてやや低いが,1963 〜 1973 年の約 10 年間は実質値で約 1.5 倍まで増加した。それに対して,低成長期に光熱水道料等を除いた世帯当りの消費支 出は逆に緩やかな減少傾向がみられる。後述の世帯規模の縮小の影響もあるので,一人 当たりでみれば必ずしも減少していないが,低成長期に小売市場は高度成長期の拡大か
ら停滞気味に転換したことが窺えよう。
次に,表 2 では,二つの時期に分けて,小売業の流通活動に関わる消費品目のうち,増 加率の上位品目と下位品目を取り上げた。第一期(1963 〜 1973 年)において増加率の上 位品目は「保険・医療用品・器具」,「室内装備・装飾品」,「教養・娯楽用品」,「理美容 用品」等生活の質的向上を反映する商品や,「冷暖房用器具」,「一般家具」,「教養娯楽耐 久財」等の耐久消費財が多い。また,「生鮮肉」,「調理食品」等は食材の洋風化及び加工
図 1 世帯当りの実質月間可処分所得と実質月間消費支出の推移(2005 年価格)
単位:千円
出所:日本統計協会編(2006)『日本長期統計総覧』第 4 巻,255 〜 261 頁より作成,原資料は『家計調査年報』。
注:デフレータは「消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く)」を用いた。
0 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000 400000 450000
1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985
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表 2 品目別世帯当りの実質消費支出の増加率
増加率上位品目(高い順) 増加率下位品目(低い順)
1963 〜 1973 年
保険医療用品・器具(626.4%),冷暖房用器具
(285.7%),飲料(234.3%),室内装備・装飾 品(234.2%),一般家具(184.6%),教養娯楽 用品(160.2%),生鮮肉(158.8%),教養娯楽 用耐久財(152.8%),調理食品(225.3%),理 美容用品(224.7%)
米(-67.5.0%),教科書・学習参考書(-67.2.%),
卵(-29.7%),調味料(-13.5%),果物加工品
(-5.3%),たばこ(3.7%),医薬品(10.4%),
魚肉練成品(13.8%),乾物・海藻(18.5%),
パン(22.0%)
1973 〜 1985 年
教科書・学習参考教材(198.6%),保険医療用 品・器具(177.0%),調理食品(95.0%),パ ン(203.0%),教養娯楽用品(179.3%),婦人 シャツ・セーター(178.1%),婦人用下着類
(173.1%),自動車等購入(165.4%),塩乾魚 介(153.2%),婦人用洋服(149.2%)
生地・糸類(-132.6%),子供用洋服(-98.7%),
卵(-95.1 %), 和 服(-89.2 %), 自 転 車 購 入
(-82.4%),子供用下着類(-81.6%),男子用下 着 類(-80.5 %), 子 供 シ ャ ツ・ セ ー タ ー
(-76.5%),乾物・海藻(-66.3%),教養娯楽用 耐久財(-58.6%)
出所:日本統計協会編(2006)『日本長期統計総覧』第 4 巻,255 〜 261 頁より作成。
食品の拡大を反映している16)。
それに対して,「米」,「パン」等の主食の増加率は比較的低く,また「果物加工品」,「乾 物・海藻」等保存のための加工食品の増加率が低いのは,冷蔵庫の普及により需要が停 滞したのかもしれない。なお,「教科書・学習参考書」が減少するのは,世帯当りの子供 数の減少によるものと思われる17)。
第二期(1973 〜 1985 年)においてもやはり「保険・医療用品・用具」,「教養・娯楽用 品」は増加率の上位品目に入るが,モーターリゼーションを反映して「自動車購入」の 支出増加も目立つ。この期には「教科書・学習参考書」が高い増加率を示したが,それ は世帯当りの子供数が比較的安定する中で,子供一人当たりにかける教育費用の増加を 反映していると思われる。第一期では低位品目であった「パン」の支出が上位品目に入っ たが,商店数では非製造小売のパン屋が減少し,製造小売のパン屋が急増することから 考えれば,その増加はパンの需要の多様化を反映したものだろう。各種婦人服が上位品 目に入ったのも,ファッションをますます重視する女性の生活スタイルの変化によるも のであると考えられる。総じていえば,第二期は第一期に比べて消費の個性化・多様化 がより進んだといえる。
以上,世帯単位当たりの消費支出の変化をみたが,この時期には,世帯数及び世帯規 模も大きく変化している。『国勢調査』によれば,日本の世帯数は 1955 年の 1754 万世帯 から 1985 年の 3798 万世帯までほぼ倍増した。同時期に人口数は約 3 分の 1(8927.6 万人 から 1 億 2104.9 万人)しか増加していないから,平均の世帯人員数は縮小し,一世帯平 均約 5 人から 3 人強にまで低下したことになる。このような世帯数の急増と世帯規模の 縮小は,農村から都市への人口移動,都市勤労者世帯の増加と「核家族化」の進展とい う戦後の都市化の過程と一致する。
世帯規模の変化は,消費財の性格によってその影響が異なる。家具や家電製品等の耐 久消費財の多くは,世帯規模に関わらず一世帯の保有量がほぼ決まっている。そのよう な財の消費量は,世帯規模の縮小によって人口の増加以上に急増するのが,この時期に おける耐久消費財の普及の特徴だと言われている18)。一方,食料品や衣料品等は,世帯 人員数によって一世帯の消費量が変化する。前掲図 1 では低成長期において,サービス 関連消費や,光熱水道料を除いた世帯当りの消費支出は停滞ないし低下するが,品目中 分類のデータから確認すると,それは主に世帯当りの食料品支出の低下によるものであ る。
以上のように,高度成長期には,所得の上昇に伴い,小売市場が急拡大したため,零
細小売業はほとんどの業種において商店数が増加した。低成長期には消費の多様化が進 み,零細小売業への新たな需要が発生した19)が,消費支出の停滞により,小売市場も停 滞気味になった。
以上のような小売市場の変化だけではなく,日本人の多頻度少量購買の消費行動と,そ れによる小売市場の構造も零細小売業の存立に適していた。
日本人の消費行動の特徴として,移動範囲の狭さと,一回の購買量の少なさ,買物頻 度の高さがしばしば指摘される。この点は特に生鮮食品において顕著である。たとえば,
総理府統計局(1966)『消費者行動についての世論調査』によれば,生鮮食品の購入先の 距離について,「歩いて 5 分以内の所」は 4 割弱,「歩いて 5 〜 10 分の所」は 2 割強,10 分以内のところで購入するのは合計 6 割前後である。また,買物の頻度について,通商 産業省(1968)『消費者行動からみた小売施設整備の方向』によると,「ほとんど毎日」の 者は 76.7%で圧倒的に多い。
以上の多頻度少量購買の消費行動は,食文化と生鮮食品の特性とも関わるが,それと 同時に日本の住環境による保存コストの高さも一つの要因であると考えられる。総務庁
『住宅統計調査』によると,高度成長期の直前である 1953 年には,日本全国の一人当た り住宅延面積は 10.76m2にすぎなかった。それは高度成長期を通じて急激に変化し,1973 年には 22.19m2まで拡大したが,高度成長期にはまだ居住条件が劣悪で,特に都市部では それが顕著である。
図 2 は住宅公団が 1955 年の発足当初から採用していた「公営住宅 51C型」の間取り図 であるが,これはこの時期の都市型住宅の一つの典型例とみなしていいだろう。ここか
図 2 公営住宅 51C 型の間取り図
出所:経済企画庁編(1995)『国民生活白書(1995 年版)』,35 頁。
らも,台所(兼食事室)と物置等,都市型住宅における貯蔵スペースの狭さが窺える。
更に,上述のような購買行動が可能なのは,高度成長期に家事,育児に専念する専業 主婦の大量の存在も一つの要因であると考えられる。総理府統計局『労働力調査』によ れば,高度成長期以降,家事に従事する女性非労働力人口数は 1955 年の 918 万人から 1975 年の 1603 万人まで増加し,その後緩やかに減少していき,それが女性人口に占める 割合も,55 年の 29.9%から 75 年の 36.9%まで上昇し,その後低下に転じる。高度成長期 における零細小売業の繁栄の背後には,このように毎日徒歩で買物をする専業主婦の姿 があると考えられる。
しかし,このような購買行動は高度成長期から低成長期にかけて大きく変容した。図 3 は,1960 年代と 1970 年代の消費者行動の変化を示した。それによると,消費者が購入先 の選択にあたって,「近くて便利」,「顔なじみ」,「御用聞き・配達」,「品質の良い商品が ある」の割合が顕著に低下し,それに代わって,「安い」,「品数が豊富」の割合が増加し た。この購買行動の変化は,後述の零細小売業からスーパーマーケットへという購買先 の変化に対応している。
このように消費者行動が変わるのは,自動車の普及による消費者の移動コストの低下 と,女性の社会進出があると考えられる。
周知のように,日本が本格的なモータリゼーションを迎えるのは,高度成長期後半か ら低成長期にかけての時期である。総理府統計局『全国消費実態調査』により,データ が把握できる 1967 年以降の動向についてみると,1967 年に 9.5%の自動車普及率(全世
図 3 購入小売店舗の選択理由
出所: 中小企業庁(1976)『中小企業白書(1976 年版)』,198 頁,元資料は内閣総理大臣官房広報室「消費者行動に 関する世論調査」1966 年,中小企業庁委託調査(委託先(株)コア・プレーン)(1975)「消費者購買行動の変 化に関する調査」。
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
1966ᐕ 1975ᐕ
帯)が,1973 年の 36.7%,更にその後 1985 年の 67.4%まで上昇する。特に,人口の少な い地方都市では自動車普及率が高く,公的交通機関が発達していないこれらの地域では,
自動車が主な移動手段であり,それが従来の小売業の構図を大きく変えたと考えられる。
更に,低成長期以降,女性の社会進出も消費行動の変化に大きな影響を与えた。低成 長期以降,パートタイマーという就業機会の増加,高学歴化に伴い,既婚女性の社会進 出が進み,従来の女性就業構造の「M字カーブ」が滑らかになりつつあった。前述のよ うに,1975 年以降家事に従事する女性非労働力人口の減少は,これを反映したのである。
既婚女性の社会進出は必ずしも買物の担い手の変化を意味しないが,仕事をする女性は 専業主婦に比べて移動の範囲が広く,買物の時間も少なくなったため,近所の零細小売 業より通勤途中のスーパー等を選好する可能性があるだろう。
以上は,消費需要と消費者行動の視点から小売市場の変化を検討してきた。そこから わかるように,高度成長期には,消費の量的拡大が著しく,また,食文化や住居条件な どに規定された日本的な消費パターンも顕著に存在したため,田村説と丸山説はいずれ も的を射ているといえよう。しかし,低成長期には,消費需要が中身を変えつつ,量的 には停滞気味になり,また,モータリゼーションの進展や女性の社会進出により,消費 行動も変化しつつあった。その意味で,田村説も丸山説も低成長期の零細小売業の存立 要因の説明としては若干の修正が必要であろう。すなわち,「市場スラック」は特に高度 成長期に顕著な現象であって,低成長期はむしろ「市場スラック」が縮小する時期であ ると考えられる。また,日本の独特な消費者行動は確かに零細小売業の存立に適してい たが,それはダイナミックに変化するもので,日本の市場構造の特殊性はあまり強調し すぎてはいけないと考えられる。
3 都市化の進展
高度成長期から低成長期にかけて,都市化が急速に進むことによって,人口集中地域 で新規需要が発生したことも,零細小売業の一つの存立条件となった。このような都市 化の進展と小売業商店数の増加の関係について,二つの時期に分けて,図 4 から確認し よう。ここでも『商業統計表』の調査年に合わせて,高度成長期を 1956 〜 1972 年,低 成長期を 1972 〜 1982 年とする。
図 4 により,高度成長期における首都圏をはじめとする三大都市圏への人口集中と,地 方の人口減少が容易に確認でき,この時期における大規模な人口移動がイメージできよ
う。それと小売業商店数の増加率との関係についてみると,人口集中が急速に進む三大 都市圏では小売業商店数の増加率よりも人口の増加率が高い。それは,三大都市圏では 人口の集中により大型店が急速に発達し,商店数の増加よりも大規模化が進んだからで あると考えられる。
一方,東北,四国,九州等では人口が停滞もしくは減少するのに,小売業の商店数が 人口以上に増加するのは,この時期に地方でも所得水準が上昇しているので市場が拡大 し,県内での人口移動により新たな需要が発生したからであろう。それと同時に,この 時期には三大都市圏に比べて,地方では交通機関の発達が遅れていたため,零細小売業 は地域住民の消費需要を支えたのである。また,人口減少地域の既存店主は就業機会と 移動の制約により,廃業よりも兼業・副業化の過程を経て緩やかに退出するため,人口 の減少はただちに商店数の減少として現れないと考えられる。
次に,低成長期についてみると,高度成長期の大都市圏への人口集中と対照的に地方 への人口の分散がみられ,この時期はいわば「地方の時代」である。東京都,大阪府,愛 知県という三大都市圏の中心はいずれも人口増加率が低下し,特に東京都はほぼゼロ成 長になった。一方,茨城,埼玉,神奈川,奈良,滋賀等三大都市圏の周辺部は高い人口
図 4 都道府県別人口増加率と小売業商店数の増加率(1956 〜 1982 年)
出所:日本統計協会編(2006)『日本長期統計総覧』より作成。
注:1956 年は「沖縄県」のデータがないため,比較の対象から除いた。
増加率を記録し,高度成長期に人口減少がみられた東北,四国と九州地方でも人口が増 加した。ただし,この時期には地域別の人口増加率と商店数増加率との乖離がみられず,
四国と中国地方以外にほとんどの地域では商店数の増加率は人口増加率に比例した。
以上のように,地域間格差が大きいものの,高度成長期から低成長期にかけて,人口 の急増と大規模な人口移動によって,小売市場の拡大と小売業に対する地域間の「需給 ギャップ」の発生により,零細小売業は増加した。特に,大都市中心部の過密化によっ て周辺部が急速に開発され,そこで人口の集中が進みつつあるが地価はまだ安く,大型 店もまだ進出していないので,多くの零細小売業の新規参入が発生したと考えられる。
この点について通商産業大臣官房調査部第 2 回『商業実態基本調査』から確認しよう。
これによると,1968 年時点には常時従業者 4 人以下の個人商店は 81.2 万店あり,その内 開業 3 年以内のものは 7.6 万店である。その内「繁華街」,「商店街」20)以外の「その他の 立地」(地価 10 万円以下)の地域で開業したのは 6.3 万店で,8 割強を占める。更に人口 規模で「七大都市」,「大都市」,「中都市」,「小都市」21)に分けてみると,これらの地域 の「その他の立地」で開業するのはそれぞれ 1.7 万店,1.8 万店,2.1 万店,0.7 万店であ り,それぞれの地域の既存商店数に占める割合でいうと,8.0%,10.1%,7.5%,5.2%で,
特に「七大都市」,「大都市」の増加率が高い。要は,高度成長期には,おもに人口の増 加率が高い一方,地価が安い「七大都市」と「大都市」の「その他の立地」で,言い換 えれば,市場が拡大していると同時に開業資金が小さいところで多くの零細小売業が開 業したのである。
以上のように考えると,1950 年代後半から 1980 年代初頭にかけて,地域的にみて人口 が停滞もしくは減少する地域では若干商店の「過剰感」が存在するものの,人口増加地 域では零細小売業の新規開業の多くは大規模な人口移動の中で発生した新規需要にいち 早く対応したものである。地価が相対的に安く,また人口の増加により,需要が拡大し ているため,これらの地域で発生した新規需要は零細小売業にとって恰好の事業機会で ある。
しかし,このように都市化の進展に伴う零細小売業の事業機会は,低成長期になると 徐々に縮小しつつあったと考えられる。その要因の一つとして,地価の高騰があげられ る。それは,地価の上昇が,零細小売業の潜在的な開業費用を増大させる可能性がある からである。
日本の零細小売業の多くは,土地と家屋を自己所有する傾向が強いとみられる。たと えば,2005SSM研究会データ管理委員会「社会階層と社会移動調査」の個票データから
零細小売店主の事例を取り上げて,「宅地」と「家屋」の保有状況のわかる 1955,65,75 年調査で見ると,「宅地」の保有率はそれぞれ 71.4%,87.1%,80.0%で,「家屋」のそれ は,47.6% 65.9% 67.5%となっている。就業者平均と比較すると,宅地と家屋の保有率は ほとんどの時期において,零細小売店主が就業者平均を上回っていることがわかる22)。
零細小売店主が保有する宅地と家屋は開業前にすでに所有するものなのか,開業のた めに新規購入したものなのかについては判明できる資料が見つからないが,商店の経営 には立地が重要な要素であるため,もともと所有する土地を活用して開業する者もいる と思われるが,国民金融公庫調査部(1970)や林彦櫻(2015)が考察したように,この 時期の新規開業者の多くは開業前から長く計画して開業したため,立地の良好なところ を選定して開業する者がより多いと考えられる23)。日本政策金融公庫総合研究所(1990)
「小売業の経営に関する調査」の個票データから分析してみると,不動産を所有している 商店より所有していない商店の方が,開業期間が顕著短くなっていることがわかる24)。こ れは,一旦店舗を借りてから,その後資金を蓄積して土地を購入する新規開業者が多い と解釈できよう25)。前述のように,高度成長期の新規開業の多くが,地価の安いところ に集中するのは,以上のような開業者が多いからであろう。その意味で,地価の急上昇 は,将来土地を購入することを考える者にとって,潜在的な開業費用の上昇を意味する ため,零細小売業の事業機会を縮小させる可能性がある。
図 5 は,1955 年を 1 とする都市規模別立地別の地価指数の推移であるが,それによる と 1955 〜 73 年の間にはいずれの地域でも地価が約 20 〜 40 倍上昇した。最も顕著なの は「六大都市」の住宅地であって,まさに前述のように零細小売業の事業機会が発生し た地域である。その次は「その他の都市」の住宅地で,それに比べると商業地の上昇率 が低い。
住宅地の地価上昇率が高いのは,1955 年時点における住宅地の地価が相対的に安かっ たからと思われるが,このような地価の急騰により,低成長期になると,それまで人口 が急増し,地価がまだ安いところで発生した事業機会は,徐々に少なくなったと考えら れる。
以上のように,都市化の進展の違いによって,零細小売業の事業機会には地域差が存 在した。高度成長期に零細小売業が最も顕著に増加したのは大都市の周辺部であり,「市 場スラック説」で最もよく説明できるのは,まさにこれら人口が急増し,大型店の進出 も相対的に遅れているところであろう。しかし,三大都市圏全体でみると,高度成長期 には人口の増加率に比べて商店数の増加率が低いため,他の地域に比べて大都市の中心
部では小売構造の大規模化が一段と早いものであると推測される。また,地方では人口 の増加率が鈍い一方,交通機関の発達も相対的に遅れ,地域が分断されていたため,こ のような分散的な市場構造は丸山が主張する「日本的市場構造モデル」に近いもので,零 細小売業を主体とする分散的な小売構造に適していたと考えられる。
4 小売構造の変容
以上,小売市場の動向と都市化の進展との関連で,零細小売業の存立基盤の変化につ いて検討したが,市場の拡大と都市化の進展によって零細小売業の存立基盤が拡大した と同時に,スーパーマーケットをはじめとする近代的な小売業態の発達をもたらした。こ のようにスーパーマーケット,コンビニエンス・ストア等近代的な業態と,零細小売業,
中小問屋等の伝統的な流通機構の共存は,この時期における日本の流通機構の特徴であ ると言われる26)。
では,この時期の小売構造の変容は,零細小売業の存立にどのような影響を与えたの か。これについても,高度成長期と低成長期に分けて大まかな傾向を検討しよう。
高度成長期における小売業の革新をリードするのは,主に大量流通を理念とするスー
図 5 都市規模別地価指数の推移
出所:日本不動産研究所『市街地価格指数』各年版より作成。
注: それぞれの地域における 1955 年の地価指数を 1 とする。「六大都市」とは東京都区部,大阪市,名古屋市,横浜 市,京都市,神戸市のことである。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
1955ᐕ 1956ᐕ 1957ᐕ 1958ᐕ 1959ᐕ 1960ᐕ 1961ᐕ 1962ᐕ 1963ᐕ 1964ᐕ 1965ᐕ 1966ᐕ 1967ᐕ 1968ᐕ 1969ᐕ 1970ᐕ 1971ᐕ 1972ᐕ 1973ᐕ 1974ᐕ 1975ᐕ 1976ᐕ 1977ᐕ 1978ᐕ 1979ᐕ 1980ᐕ 1981ᐕ 1982ᐕ 1983ᐕ 1984ᐕ 1985ᐕ
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パーマーケットの発達である。日本初のスーパーマーケットは 1953 年に開業した紀ノ国 屋といわれる27)。その後,スーパーマーケットの店舗数は急増し,1964 年に 3,620 店,
1974 年に 12,034 店というように成長を遂げたが,業態として成熟するにはまだ時間がか かる28)。
初期のスーパーはほとんど既存の中小小売業から転換したもので,設備面としても不 完備なところが多く,比較的小規模で商圏も小さく,仕入れも従来の卸売業に依存して いるため,「スーパー」と名乗りながらも,中身は従来の中小小売店とあまり変わらない ものも多い。
たとえば,日本商工会議所(1963)『わが国におけるスーパーマーケットの現状』によ れば,この時期のスーパーマーケットは,木造建築であるものが 7 割以上,駐車場なし のものが 9 割以上,カートがあるのは 1 割未満であり,初期のスーパーはやはり設備条 件が整っていない。経営者はほとんど中小小売業か卸売業の業主から転換したもので,従 業者も平均 29 人と中小企業の域から脱していない。顧客は主に徒歩で来店し,交通機関 による来店が少なく,商圏も比較的小さい。また,仕入れ先が「主に卸売業者」である 店は 8 割以上であり,「主に生産業者」の店は 5%未満にすぎない。
また,国民金融公庫調査部(1968)「小売商業の構造変化と零細小売商
I
−スーパーマー ケットとの関連を中心に」によれば,1960 年代末の地方中小都市の青森県弘前市におけ るスーパーでは,セルフサービスさえ徹底されず,一部は対面販売が採用されるものも 多い(29 〜 30 頁)。初期のスーパーはまだ業態として成熟していないので,一般の中小零細小売店に比べ て顧客の吸収力が強いわけでもない。たとえば,中小企業庁(1972)『消費者購買行動調 査』によれば,セルフサービス店に対する消費者の態度について,やはり「普通の店で 買物をする」のは 45.3%,「近ければ『セルフサービスの店』で買物をする」のは 26.2%,
「少しぐらい遠くても『セルフサービスの店』で買物をする」のは 21.8%,「わからない」
のは(6.7%)であり,この時期の消費者は,スーパー(セルフサービス店)よりはむし ろ一般小売店で買物をする傾向が強いようである。
以上のように,初期のスーパーはまだ零細小売業に比べて,競争上それほど有利では ないので,零細小売業はまだスーパーマーケットを競争相手としてそれほど意識してい ないようである。表 3 では,『商業実態基本調査』により,この時期の零細小売業はどの ような業態を競争関係にある店として意識したのかについて調査結果をまとめた。
調査によって質問形式が若干変わるが,第 2 回調査と第 3 回調査からみると,高度成
長期において零細小売業はスーパーマーケットよりも同業者による脅威を感じていたと いえる。第 2 回調査は「同業者」という質問項目はないが,「小売市場」はそれに相当す るものとして考えられる。また,「スーパーマーケット」の割合についてみると,第 2 回 調査はむしろ第 3 回調査より大きいが,それは質問形式の違いにより,第 2 回調査のそ れが過大評価されたからであると考えられる29)。
更に,地域別にみれば,この時期にスーパーマーケットの進出は地域差が存在する。そ れについて,先ほども簡単に触れたが,17 の都・府・市を対象とする国民金融公庫調査 部(1968)「小売商業の構造変化と零細小売商(I〜
III)−スーパーマーケットとの関連
を中心に」という大規模調査が存在する。調査結果を簡単に要約すると,スーパーの発 展水準は基本的に人口規模と相関するが,消費者の特性,交通機関の状況,既存商店の 競争状況等によって規定され,地域差がかなり大きい。大都市では名古屋市のようにスー パーの進出が相対的に遅れているものもあり,逆にいうと中都市では四日市市のように スーパーが急激に成長するものもある。同じ都市でも立地によってスーパーの影響が異 なり,スーパーの立地から離れるところは購買人口の流出によって打撃が大きいが,スー パーに近いところでは集積の効果を利用し,専門店化・高級化によって逆に成長する店 も現れた。低成長期に入り,スーパーという業態が成熟し,更にその数も急激に増加していった。
1973 年に大規模小売店舗法が成立し,それまで百貨店法から規制を逃れていたスーパー も規制対象となったが,1979 年改正まで大店法の規制対象は店舗面積が 3000m2以上(特 別区・指定都市は 6000m2)と,規模が比較的大きいものに限られ,中小スーパーは対象 外であった。そのため,スーパー(セルフサービス店)の店舗数は 1974 年の 12,034 店か ら 1985 年の 25,211 店まで急増し,前掲表 3 のようにこの時期に零細小売業の主な競争相
表 3 零細小売業の競争関係にある店の推移 競争関係にあ
る店はない 同業者 小売市場 百貨店 スーパー マーケット
コンビニエ
ンス・ストア 農協・生協 その他 第 2 回調査(1968 年) 27.2% 3.9% 21.5% 7.4%
第 3 回調査(1973 年) 25.7% 48.9% 1.7% 16.3% 2.2% 5.0%
第 4 回調査(1979 年) 21.0% 47.6% 1.4% 22.3% 7.8%
第 5 回調査(1986 年) 8.2% 38.8% 7.0% 31.5% 2.5% 4.5% 6.0%
出所:通商産業省官房統計調査部,中小企業庁編『商業実態基本調査』各年版より作成。
注: 第 2 回調査と第 5 回調査における「農業協同組合」,「消費者協同組合,購買会」を「農協・生協」に,第 3 回調 査,第 4 回調査における「自店と同規模の同業者」,「自店より規模の大きい同業者」を「同業者」にそれぞれ統 合した。なお,第 2 回調査はそれぞれの業態について競争関係にある店の有無について質問したので,複数回答 が可能で,合計も 100%にならない。
手も同業者からスーパーマーケットへ徐々にシフトしていった。
更に,低成長期には消費の多様化に伴い,コンビニエンス・ストア,専門店チェーン 等,多様な業態が開花し,それによって小売業の競争はいっそう激化した。
コンビニエンス・ストアという業態は 1960 年代から通商産業省が押し進めたボランタ リー・チェーン政策によってすでにある程度存在していたが,それが急成長を遂げたの は,やはり 1973 年以降イトーヨーカドーがフランチャイズ・チェーンを導入して以降の ことである30)。それまでの零細小売業は,長時間営業と近隣性を武器にして,大型店と 対抗してきたが,コンビニエンス・ストアの発展はそのような優位性を崩しつつあった。
更に,専門店チェーンの発展によって,飲食料品以外の分野でも小売業の競争が激し くなった。前掲表 1 のように,高度成長期から低成長期にかけて,スーパーマーケット の発展により,加工食品を中心とする一部の業種では零細小売業がすでに減少していた が,衣料品,家電製品等では零細小売業の商店数は依然として増加していた。
しかし,低成長期において専門店チェーンが急速に展開し,表 4 のように,1980 年代 初頭になると,専門店チャーンは家電製品,インテリア用品,家具,スポーツ・レジャー 用品,カメラ・オーディオ製品等多くの分野を制覇した。1980 年代半ば以降の零細小売 業の衰退時期において,ほぼすべての業種において零細小売業が減少する31)のは,以上
表 4 商品品目別・購入先の割合 地元商
店
中小 スー パー
大型 スー パー
コンビニ エンスス トア
ディスカ ウント・
ショップ デパー
ト 専門店 低価格 専門店
生協・
農協 その他 生鮮食品 40.0% 31.9% 20.3% 0.4% 0.0% 1.1% 1.7% 0.0% 2.4% 2.1%
加工食品 26.0% 38.8% 27.8% 0.2% 0.0% 1.1% 0.0% 0.4% 2.5% 3.2%
最寄衣料 13.9% 10.5% 34.6% 0.2% 0.6% 28.1% 9.1% 0.3% 0.2% 2.6%
買回衣料 5.0% 1.0% 10.2% 0.0% 0.2% 50.8% 31.0% 0.3% 0.2% 1.3%
家庭電気製品 28.7% 1.2% 9.2% 0.0% 2.8% 6.0% 32.1% 15.4% 0.4% 4.1%
インテリア
用品 15.1% 4.9% 26.9% 0.2% 1.3% 16.0% 34.0% 0.2% 0.1% 1.3%
家具 14.3% 0.7% 5.8% 0.0% 1.9% 16.8% 57.7% 1.2% 0.2% 1.4%
レジャー・ス
ポーツ用品 6.2% 0.6% 9.4% 0.0% 3.0% 20.2% 55.4% 4.0% 0.2% 1.0%
カメラ・オー
ディオ製品 9.1% 0.2% 3.5% 0.0% 0.8% 7.2% 52.2% 23.6% 0.4% 2.9%
出所:中小企業庁(1982)『中小企業白書(1982 年版)』217 頁,元資料は中小企業庁(1981)『消費者行動実態調査』。
注: 網掛けの項目はそれぞれの商品品目における購入先の内,割合が一位であるもので,下線のある項目は,それぞ れの購入先における商品品目の内,割合が一位であるものである。
の専門店チェーンの発展による影響が大きいと思われる。
以上のように,低成長期に小売業における業態の多様化と競争の激化は,零細小売業 に大きな打撃を与えた。中小企業庁(1977)『分野問題等に関する中小小売業者の意識調 査』によると,第一次石油危機の 1 〜 2 年前の競争状況に関して,「極めて激しい」,「激 しい」と回答した者は合わせて 39.7%であるのに対して,調査時点(1977)ではそれが 72.9%となり,明らかに競争が激化した。それに伴い,多くの零細小売業は副業・兼業に よって商業収入の減少を補わざるを得なくなり,1980 年代以降の衰退はすでにこの時期 からその端緒がみられるのである。
お わ り に
本稿では,1950 年代後半から 80 年代初頭にかけて,零細小売業の事業機会の変化を,
高度成長期と低成長期に分けて検討した。
高度成長期には,消費の急増によって小売市場が急速に拡大すること,多頻度少量購 買の購買行動がまだ主流であったこと,都市化の進展に伴い,人口急増地域では新規需 要が発生すること,それと同時にスーパーマーケットがまだ量的にも質的にも成熟して いないこと等によって,多くの事業機会が存在し,零細小売業はその全盛期を迎えた。低 成長期に入ると,需要の多様化により一部の分野では零細小売業の新たな存立基盤が発 生するものの,市場の拡大が減速し,人口の大都市集中も一段落がつき,更に業態の多 様化によって競争が激化したため,零細小売業の事業機会が徐々に縮小した。この時期 には零細小売業が層として存続しているものの,「過剰感」が徐々に強まっていき,緩や かな衰退過程に入りつつあったといえる。
以上のように,本稿は,多くの資料によって「市場スラック説」と「日本的市場構造 説」を検証した。結論から見ると,両説とも零細小売業の存立要因の理論として有力で あるものの,一面的なところもあると考えられる。「市場スラック説」は零細小売業が存 立できる需要発生のメカニズムを説明できたものの,需要の量的変化を重視するあまり に,需要の質的変化や消費行動の変化についてはあまり説明していない。地域的に見る と,「市場スラック説」が最も当てはまるのは高度成長期における人口急増の大都市周辺 部であり,成長期や高度成長期の大都市中心部と地方都市ではかなり様相が異なってい る。一方,「日本的市場構造説」は日本の小売構造の分析に体系的なモデルを提示してく れたものの,そのダイナミックな変化や地域差について論じていない。その意味で,1950
年代後半から 80 年代初頭にかけての零細小売業の存立要因を説明するためには,時間と 空間の諸要素を総合的に取り入れたダイナミックな歴史像の構築が必要であり,本稿は その試みの一つとして十分に検討できていない論点が多く残されているものの,それら についてのさらなる検討を今後の課題としたい。
注
1 )たとえば,杉田聡(2008)『買物難民:もうひとつの高齢者問題』大月書店,福田敦(2009)
「高齢者の購買行動と地域商業の課題」『経済系』239 号,80 〜 95 頁。
2 )たとえば,石原武政(2004)「中小小売業―過小過多構造の動態」石原武政・矢作敏行編
『日本の流通 100 年』有斐閣。
3 )具体的には,竹林庄太郎(1941)『日本中小商業の構造』有斐閣,鈴木安昭(1980)『昭和 初期の小売商問題:百貨店と中小商店の角逐』日本経済新聞社,攝津斉彦(2006)「戦間期 における中小小売商の雇用吸収と信用不安 ―中小商業問題 の一側面」『社会経済史学』
72 巻 2 号,202 〜 205 頁,満薗勇(2013)「昭和初期における中小小売商の所得構造:商外 所得に着目して」『社会経済史学』79 巻 3 号,419 〜 438 頁等を参照。
4 )中村隆英(1993)『日本経済―その成長と構造(第 3 版)』東京大学出版会。
5 )1966, 1968, 1969 年の中小企業庁『中小企業白書』では,いずれも日本の流通機構の問題と して,零細小売業の商店数の過剰を取り上げた。具体的には,1966 年版第 1 部第 2 章第 3 節「中小商業における構造変動の進展」,1968 年版第 2 部第 2 章第 3 節「流通構造の変化 と中小商業」,1969 年版第 2 部第 4 章第 1 節「我が国商業の実態」,を参照。
6 )林周二(1962)『流通革命:製品・経路および消費者』中央公論社。
7 )石井淳蔵(1996)『商人家族と市場社会』有斐閣。
8 )林彦櫻(2015)「戦後日本における零細小売業の存立基盤―店主及び家族従業者の就業行動 の視点から」京都大学経済学会『経済論叢』188 巻 4 号, 77 〜 90 頁,林彦櫻(2015)「戦 後日本における零細小売店主の供給源―1950 年代後半から 1980 年代初頭を中心に」『社会 経済史学』81 巻 1 号,3 〜 23 頁。
9 )田村正紀(1986)『日本型流通システム』千倉書房。
10)丸山雅祥(1992)『日本市場の競争構造―市場と取引』創文社。
11)法人商店も含めるのは,この時期における法人化した零細小売業の多くは税制上の事情か ら法人成りしたものであり,その実態は家族経営の個人商店とあまり変わらないからであ る。
12)糸園辰雄(1980)『日本中小商業の構造(改訂版)』有斐閣,58 〜 66 頁。
13)江原絢子,石川尚子,東四柳祥子(2009)『日本食物史』吉川弘文館,306 〜 307 頁;渡辺 実(2007)『日本食生活史』吉川弘文館,311 〜 314 頁;中川博(1995)『食の戦後史』明 石書店,165 〜 166 頁。
14)1980 年代半ば以降における零細小売業の減少は,ほとんどの業種において商店数が減少す
るという全面的な衰退を特徴とすることは,すでに杉岡碩夫(1987)「減少段階に入った小 売商」『国民金融公庫調査季報』1 号によって指摘された(2 頁)。
15)1963 年以前のデータは,消費支出の品目分類が大きく異なるため,ここでは取り上げなかっ た。ただし,1955 〜 1963 年においても,実質消費支出や実質可処分所得が急上昇してい ることは,データからも容易に確認できる。
16)高岡美佳(2010)「小売業態の転換と流通システム」下谷政弘,鈴木恒夫編『経済大国への 軌跡(1955 〜 1985 年)』,279 〜 308 頁は,高度成長期における食生活の変化を,「食材の 洋風化」と「加工食品の拡大」という二つのキーワードで捉えている(290 頁)。
17)厚生省大臣官房調査情報部『人口動態調査』によれば,日本の合計特殊出生率は 1947 年の 4.5 人前後から 1957 年の 2.0 人前後まで急激に減少し,その後緩やかに低下する。その意 味で,1960 年代は世帯当り学齢人口が急減する時期にあたると考えられる。
18)吉川洋(1997)『高度成長:日本を変える 6000 日』読売新聞社,125 頁。
19)この点については,国民金融公庫調査部(1974)「小零細小売業実態調査―存立条件の変 化を探る」『国民金融公庫調査月報』168 号,1 〜 84 頁を参照。
20)当該調査では,小売店が密集(大都市では 100 軒ぐらい,その他の都市では 30 軒ぐらい)
している区域を商店街とし,地価を時価で調査し,七大都市における地価 100 万円以上の 商店街を「繁華街」,地価 10 万円以上の商店の密集地域を「商店街」として,地価 10 万円 以下の区域を「その他の立地」とする。
21)「七大都市」とは東京都区部,横浜市,名古屋市,大阪市,京都市,神戸市,北九州市であ り,「大都市」,「中都市」,「小都市」とは「七大都市」以外の,人口がそれぞれ 20 万人以 上,5 〜 20 万人,5 万人以下の都市である。
22)「社会階層と社会移動調査」個票データによる零細小売店主の分析手法について,具体的に は林彦櫻(2015)「戦後日本における零細小売店主の供給源―1950 年代後半から 1980 年代 初頭を中心に」『社会経済史学』81 巻 1 号,3 〜 23 頁,を参照。なお,当該データが調査 したのは,住居としての「宅地」と「家屋」の保有状況であるため,厳密には零細小売店 主の店舗の保有状況とは異なるが,石井淳蔵(1998)が主張するように,この時期には住 居と商店が同じ場所となっていることが一般的であるため,ここでは両者を近似的に捉え ている。
23)国民金融公庫調査部(1970)「小零細企業新規開業実態調査報告」『国民金融公庫調査月報』
117 号,1 〜 76 頁,林彦櫻(2015)「戦後日本における零細小売業の存立基盤―店主及び家 族従業者の就業行動の視点から」京都大学経済学会『経済論叢』188 巻 4 号, 77 〜 90 頁。
24)具体的には,不動産を所有している商店の開業年について,「大正以前」は 11.8%,「昭和 19 年まで」は 9.8%,「昭和 20 〜 29 年」は 15.1%,「昭和 30 〜 39 年」は 16.2%,「昭和 50
〜 64 年」は 23.0%,「平成以降」は 2.3%である。不動産を所有していない商店について同 じ順でみると,それぞれ 2.4%,7.7%,9.5%,13.0%,20.1%,42.0%,3.6%で,開業年数 の短いものが多い。
25)名武なつ紀(2007)は,近世の大阪都心の北船場では,「主家から独立した商人は,まず借