保育士の問題解決的思考に及ぼす応用行動分析学の研修効果
障害児教育専攻 猪 子 秀 太 郎
目 的
近年,知的障害を伴わない発達障害について の社会的関心が高まるとともに,保育所,園に おける「気になるこどもJの保育に関する研修 ニーズが増加している。本研究では,保育士に 対する障害児保育と応用行動分析学に関する研 修を開発した上で,その研修プログラムが,
( 1 )
障害特性および指導法の理解や応用行動分析学 の基礎的用語の習得に効果を及ぼすか,( 2 )
幼児 の問題行動に対する原因推定と解決策策定能力 を向上させるか,について検討する。方 法 参加者
T
県の障害児保育研修会(以下,研修会と記 す)の受講生の中から,保育土1 0
名が参加した。1 0
名は,全てT
県内の公立保育所および認可 の私立保育園の保育士であり,経験年数は 1"‑'22年,障害児の保育経験年数は 0 " ‑ '13年であ
ったo 全ての参加者は,これまでに障害児保育 の研修経験があったが応用行動分析学の研修 経験は無かったo独立変数:研修会の構成
研修会は
2
回で構成され,第1
回研修会は 2007年 7月 5 日,第 2回研修会は 2007年 8 月 23日に開催された。 2回の研修会を通して延 べ1 0
時間の研修が行われた。研修内容は,自閉症・
ADIHD
の障害特性お よび指導法およひ守子動分析学の基礎と技法等に 関する講義と演習,問題行動の原因推定と原因指 導 教 員 橋 本 俊 顕
に対応する解決策の策定演習で、あった。
従属変数:研修効果の評価テスト
自閉症および
AD
厄D
の障害特性と指導法の 理 解 , 応 用 行 動 分 析 学 ( Ap p l i e d B e h a v i o r An a l y s i s : AB
A)の基礎的用語の習得に関する 研修効果を評価するためにr
障害特性・指導 法・ABA
用語テスト」を作成実施し,研修会の 事前,中間,事後テストの正答率を比較した。幼児の問題行動についての原因推定と解決策 策定能力に関する研修効果を評価するために,
f原因・解決策記入テスト」を作成実施し,研 修会の事前,事後における原因および解決策の 記入数,解答スピード,正答率,原因の評定カ テゴリ数および拡散度,原因と対応関係のある 解決策の記入率を比較した。
結 果 障害特性・指導法・
ABA
用語テスト全ての参加者において 事前テストに比して 中間および事後テストの正答率が上昇した。テ ストの各設問のうち 第
1
回研修会指導内容に 関する設問の平均正答率は中間,事後テストに おいて,第2
回研修会指導内容に関する設問の 平均正答率は事後テストにおいて,それぞれ有 意に向上した(図1)。問題行動の原因・解決策記入テスト
事後テストにおいて,原因解答の記入数は向 上の傾向が認められ,解答スピードは有意に向 上した(図
2 )
。解決策解答の記入数と解答スピー ドは有意な向上は見られなかったo 原因および‑240‑
解決策の誤答数は減少し,解決策解答の正答率 が有意に上昇した(図 3)。事後テストでは「個人 攻撃の畏に抵触する
J r問題行動との随伴関係が
不明確である J といった誤答がなくなった。原
因の評定カテゴリ数は有意に増加したが(図4 )
,
解答の拡散度は向上しなかった。原因に対応し
た解決策の記入率には,有意な向上は見られな
かった。
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判 明 出 日 明 朗 朗 山 相 初 日
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則 的 羽 初 日 1 E 答 率 (% V 1 ' 正 答 率 (
% ) 1 亙 答 率 (
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第1回 研 修 会 指導内富田=
隠する設問
第2宙 研 修 会 指導内望日ご 関する設問
研 修 会 宅 指 導 してい訟い内 容に関する蔵 間
事前テスト
水
* = p < α
n.s.
=
rot si2J1if回nt図
1 :指導内容に関する設問別の正答率
0
..6
r
0..8 ス解答 l0 ..6
置
.0.4園 田
0.2 0..0
・
0.0事前テスト 事後テスト
原因 n.$. : no¥ sicnif松田t
車 :p<.05
rl$.
事前テスト 事後テスト
解決策
図
2 : 原因,解決策の解答スピード
1 ω m m
同 刊 抽 出
正 答 率 円
% )
事前テスト 事後テスト
原因 n.s. : not S~ ificant ': pく日5
事前テスト 事後テスト
解決策
図
3 : 原因,解決策の正答率
5 4 3 2 1 0
原国評定カテゴリ数(個)
*事市
F
スト 事後テスト*:pく部
図
4 : 原因の評定カテゴリ数
考 察
研修会は,保育士の(1)障害特性および、指導法 の理解や応用行動分析学の基礎的用語の習得に 有効で、あった。また, (2)幼児の問題行動に対 する原因推定と解決策策定能力については
a .
問題行動についての原因推定数と推定スピード の向上,b .
妥当性のある原因推定と解決策策定 能力の向上C .
多様な観点で、の原因推定能力の 向上に有効だったが,d .
解決策策定数や策定ス ピードの向上e .
推定した原因と対応関係のあ る解決策策定能力の向上については,効果が認 められなかったD発達障害を含めた特別なニーズのある幼児の 保育を専門とする保育士の育成プログラム開発 は,喫緊の課題である。保育士の問題解決的思 考力を高め,指導計画立案能力を向上させる意 味で,今回の研修会の意義は大きかった。しか し,解決策策定能力を向上させるための様々な 指導法に関する豊富な知識と技術の習得という 面では,まだ十分とはいえない。
今後,発達障害を含めた特別なニーズのある 幼児の保育に関して保育所,園のリーダーとし て活動できる保育士を育成するために,養成段 階を含めた専門性向上のための制度的充実,お よび現場における事例研究と組み合わせた専門 的な研修システムの開発が必要であろう口