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所 得 分 配 理 論 の 一 考 察

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(1)

−乗数原理と代替原理の綜合化を中心として−

有効需要の側面から︑所得分配率の決定要因を考察する所謂WidOW︑sCruse理論の最も代表的なものとして︑

通常︑カルドア乃至ロビンソンの理論があげられる︒この理論は︑レーダーによればつぎのごとく定義される︒

WidOWsCruse

題をもって出発する︒この命題から︑つぎのことが推論せられる︒もし︑経済が諸部門に分割されるならば︑各部門

は︑異なった限界︵そして平均︶貯蓄性向をもち︑体系が均衡であるためには︑これらの部門間の所得分配は︑意図

された事前的投資にひとしい事前的貯蓄を発生せしめるようなものであることを必要とする︒しかし︑集計量におい

ては︑所得水準は︑その分配と同様に︑貯蓄と投資との均等という条件によって決定せられる︒かくて︑蘭厘におい1         2ては︑一つの方程式と︑二つの未知数︑即ち所得水準と︑その階級間の分配が残る茸カルドアは︑完全雇用を仮定す

ることによって︑所得水準を二定とし︑投資所得比率を外生的変数とすることによって︑未知数を︑所得分配率に締

約した︒カルドア的なWidOW︑sCruse理論は本来的にケインズ的乗数分析の応用であり︑乗数分析自体は︑所得

所得分配理論の一考察

(2)

水準決定の分析用具であった︒

てあたえた︒同じ分析は︑もし︑賃銀と利潤との聞の所得分配を所与として取扱うならば︑実質総所得または産出量

qd

 

の決定に適応しうるし︑また︑実質総所得︑産出量を所与とすれば︑賃銀と利潤との所得分配に適用しうる︒﹂カルド

アによれば︑完全雇用の状態では︑実質所得の水準は︑もっぱら︑資本ストックと︑生産技術の状態によってきまる︒ ﹁ケインズの乗数は︑総所得を︑二つの要因︑即ち︑投資支出と貯蓄性向の結果とし

そこで︑所得分配率は︑一定の所得水準の下で︑貯蓄投資の万程式によってきまってくる︒不完全雇用状態の下では︑

生産がキャパシティl以下の水準では労働の限界生産物はコンスタントであり︑限界費用はもっぱら賃銀率によって

きまる︒物価水準はまた産出量に依存しない︒所得分配は︑国民所得水準とは独立的であり︑生産物単位当りの賃銀

費用と価格の比率とによって一義的にきまる︒もし︑乙の比率が所与であれば︑投資の外生的な変化は︑遊休設備が

あるかぎり︑所得水準に影響するが︑所得分配には影響しない︒以上が︑カルドアのケインズ的乗数分析利用におけ

る背景的な考え方であD

カルドアよりも早く所得分配の

ω

VEωσ的モデルを展開したボlルデイングでは︑所得水準と所得分配

とが同時的に決定せらるべき変数として取扱われている︒ポールデイングはカルドアのととく完全雇用を仮定してい

ない︒それ故に所得水準は決定せらるべき未知数である︒ボールデイングは自己の巨視的分配理論をつぎのととく特

﹁私が提供している理論は︑もっと古典的なタイプの理論への復帰を示している︒ある意味で︑それは︑

賃銀基金説の洗錬と復位とを示す︒そこでは︑資本の処分については︑資本家の決意が主要であることを強調し︑分配の法則を︑生産法則の物理的決定要因より解放する︒その意味で︑私の理論は︑マーシャルよりもーミルに近い︒汁

マクロ的な分配関係を︑生産の物理的技術的関係より解放することが︑ボールデイング的意味の古典派理論への部分

的復帰であるならば︑同じく分配関係を限界生産力関係より解放したカルドアモデルはどのような理論への復帰を一不

(3)

すものであろうか︒カルドアの分配モデルは︑分配率の変佑を︑物価の変化を媒介としてとらまえようとする︒いわ

ば︑分配理論を有効需要を媒介として物価理論と結合せしめようと試みた点にカルドア分析の一つの特徴があった︒

カルドアのモデルでは既述のととく︑完全一雇用が仮定されており︑所得は一定である︒所得水準が一定であるから︑

分配率は︑物価と︑賃銀の関係によってきまる︒カルドアはかつて︑ケインズの分析に言及してつぎのととく述べて

いる︒﹁私の考えでは︑貨幣賃銀と実質賃銀とは︑根本的に乙となった条件によって決定せられるということを示し

た点で︑ケインズの分析の重要な貢献の一つであった︒労働市場で︑労働の相対的稀少性によって直接影響されるの

は賃銀の水準のみである︒実質賃銀の水準は︑全くことなった諸力によって決定される︒そして︑労働が︑稀少な期

間(またわ完全一雇用)︑実質賃金はあらゆる種類の商品にたいする総需要が︑商品の総供給を超過もしなければ︑不

足もしないという条件によって決定されねばならぬ︒同一の命題を別の言葉で示すと︑実質賃銀は︑資本家と労働者

Uの総支出をして︑その支出をみたすにたる財の供給にちょうどひとしからしめるようなものでなければならぬこ

﹁:::それ故に︑どのような所与の状態においても︑

商品にたいする総需要をして総供給にひとしくならしめるような賃銀と利潤との問の生産物の分配があらねばならぬ︒

もし︑賃銀がこの分配によって示されたものより大であるならば︑需要は供給を超過し︑物価は不可避的に賃銀にた

いして︑相対的に上昇し︑そして︑所得の分け前としての賃銀を減少せしめるであろう︒同様に賃銀がこれよりも低

いならば︑需要は供給に不足し︑物価は低落し︑賃銀の分け前は上昇するであろう︒完全一雇用の状態の下では︑物価

と賃銀の関係は︑常に総需要の総供給にたいする超過あるいは不足をふせぐようなものであらねばならぬ︒同じ命題

を別の表現でいうと︑資本家の支出は(相対的に)彼等の経常収入に依存せず︑労働者の支出は︑彼等の収入に依存

n u 

するから︑資本家は階級としては︑彼等が支出するものをえ︑労働者は彼等がうるものを支出するよ乙のカルドアの カルドアは︑このようなケインズ的思考をさらに進めていう︒

(4)

0 4 1 ω

の 円

ωo

効果を端的に示したものであるが︑乙の効果は︑伸縮的な物価の変動を前堤とする︒

カルドアの分配モデルは︑このような伸縮的な物価と相対的に硬直的な貨幣賃金を舞台裏に寄在せしめることによっ

て︑投資所得比率と所得分配率との関係を陽表的に示しえたのである︒

カルドアモデルで最も批判の焦点となるのは︑供給の技術的関係の軽視である︒このことは︑同じくケインズ的分

析の延長線にあるものの︑

むしろ︑企業の生産要素使用の調節メカニズムとして限界生産力の概念を使用している︒しかし︑カルドア的モデル

の供給的側面の軽視に対する批判から︑乙の生産の技術的関係を積極的に導入することによって︑より綜合的な所得 ロビンソンが︑限界生産力を完全に排除していなことと対照的である︒ロビンソン自身は

分配理論を展開しようとする若干の新しい誠みがある︒その一つは︑ケインズ的な総供給函数と︑総需要図数との交

4叉関係から︑所得分配と所得水準の同時決定をもとめようとするワイントロiブの分析であり可他の代表的なものは︑

生産要素使用に関するヒツクス的な技術的代替の弾力性という概念を使用して︑需要供給の綜合理論を樹立しようと

Uするフィンドレーの分析である︒そのほか︑古典的なウイクセル日アツカlマンの資本理論を利用して︑生産の技術

QU

 

的関係︑主として資本財の耐用性という側面から︑所得分配を考察しようとするソロ!の分析がある︒(乙れらの綜合

理論も現段階ではいまだ問題提起にとどまり︑その名に値する体系的な理論にまで成熟していないけれども︑確に一

つの新しい展開の方向を示すものとして十分に吟味の対象となりうるものである︒本稿では︑新古典派的な分析用具

である生産要素の代替の弾力性という概念を取り入れて︑カルドア的な分析と新古典派的な分析との綜合をはかろう

としたブインドレン流のモデルに依拠したブアiグソンの分析について二︑一二の批判をあたえ︑綜合化の過程に生ず

る若干の問題点を考察したい︒

(5)

巨視的分配理論の樹立はボlルデイングにしろカルドアにしろまず微視的な限界生産力原理の適用を拒否するとこ

ろからはじまった︒たとえば︑ボlルデイングはいう︒﹁:::したがって私は︑総体的分配の理論

ll

分配の巨視的

経済学ーーに関するかぎり︑限界原理の発展は一つの退歩であると見なさざるをえないのである︒限界分析は︑田舎

町の石膏工人への需要を決定するものが何であるかについては︑大いにわれわれに語る口しかし︑総賃銀に関しては︑

殆んど語るところがないのである︒生産函数の同次性に関連した有名な加算問題は︑ある特定企業の収入の分配を論

ずるさいにはいくらかの意味をもつかもしれないけれども︑経済全体に適用された場合には全く非現実的である︒)

限界原理は古典派的分配分析にとってかわったのではなく︑たんに乙の部面に一つの真空状態を作りだしたのである︒﹂

さらにまた彼はつぎのごとく述べている︒﹁限界生産力原理は︑本質的に︑ミクロ経済的なものであり︑その真の意

味は︑投入物にたいする需要についての近以的に有用な理論をあたえるということにある︒需要曲線と供給曲線とは

全経済について集計できぬから︑われわれに必要なのは︑加算しえない個々の項目を取扱うよりもむしろ全体としての社会の所得分配を直接問題とする巨視経済的所得分配の理論なのである︒﹂カルドアは︑限界生産力が入ってくるの

は︑所得分配率(そして資本利潤率)の変佑にたいする資本所得比率の感応性を通じてであるという︒ところがカル

ドアの分配モデルでは資本所得比率が利潤分配率にたいして不変であると仮定される︒乙の仮定の意味は︑あたえら

れた技術状態では︑生産係数は固定的だということであり︑さらに︑銀率の変佑は投資決意に影響せず︑そして︑技

術進歩は中立的であるということである︒限界生産力が入る余地がないというのはこの仮定にもとづく

o u

Aカルドアの体系は新古典派的限界生産力理論の特別なケlスということができると述べている︒乙

所得分周理論の一考察

(6)

‑‑L. 

/

のフィンドレーの解釈は勿論︑彼自身の分析の結果として出てきたものであり︑彼自身の分析もを含めて多くの問題

点をもっている︒いずれにしても︑カルドアモデルでは有効需要が中心的な地位をもち︑生産の技術的な側面が分析

の表面で殆んど取り上げられておらない︒そこに︑かならずしも︑微視的な限界生産力の原理を無条件的に導入する

ζとではないけれども︑忘れられた生産の供給面を積極的に取り上げることによって︑綜合理論への途を見出そうと

する一つの誠みが生れる︒われわれは︑それを乗数原理と代替原理の結合理論と仮称することができる︒本稿の目的

とするところは︑乙の理論の構造を吟味することにある︒ヒックスはその著﹁賃銀の理論﹂の中で︑生産要素の供給変化がその所得分配にあたえる効果について︑三つの命

題を提起している︒

J一生産要素の供給増加は︑その生産要素にたいする需要の弾力性がーより大であるならば︑その要素に帰属する

国 同

絶対的分け前(実質所得)を増大せしめる

一生産要素の供給増加は︑常に︑他のすべての生産要素を総括したものの絶対的分け前を増加せしめる︒

一生産要素の供給増加は︑もし︑代替の弾力性がーより大であるならば︑その相対的分け前(国民分配分の比率)

を増大せしめる︒

乙の第三の命題からもう一つの重要な結果が導かれる︒それは︑

加の条件は対称的であるということである︒即ち︑たとえば︑二つの生産要素を︑労働と資本とすると︑資本にたい

する労働の代替の開力性は︑労働にたいする資本の代替の弾力性と同じである︒もし︑技術の状態と消費者需要の状 一生産要素の相対的分け前を増加せしめる供給増

態とが︑資本の供給が資本の相対的分け前を増加せしめるようなものであるならば︑労働の供給増加は︑労働の相対

的分け前を増加せしめるであろう︒ヒックスは新古典派的な立場から︑所得の分配において︑生産の技術的関係を重

(7)

視しているが︑生産物にたいする需要面を完全に無視しているわけでもない︒巨視的水準では︑生産要素にたいする

需要には︑生産物にたいする需要面からの影響が最も強く作用する︒いはば︑生産要素にたいする需要は派生需要た

るの性格を一一屈に強くする︒特に二財以上の生産の場合︑各生産部門で生産要素の最適投入比率が異なる場合︑生産

物に対する需要状況が生産要素の雇用に影響を及ぼし︑したがって︑所得分配に影響をあたえるであろう︒資本労働

比率が各産業間で異なるという仮定がフィンドレーの分析では重要な意味をもっている︒後で考察したい︒

いま︑生産要素を労働と資本に限定し︑一次の同次函数しての巨視的な生産函数を想定しよう︒

J

(F u )

ー 占

、.../

賃銀率

( W )

及び利潤

(Z

)が︑それぞれ︑その限界生産物に応じて支払われるとすれば︑仮定により

( M )  

労働要素の供給増加が︑その絶対的分け前にどう影響するかは︑労働需要の弾力性により明らかにしうる︒

門 戸 当 円

4a

a

l : l

ωHil‑‑t

F

!

( ω )  

前 叩 ド

H

d︿

(

l)

( )

この式で札は労働需要の弾力性を示す︒そこで九がーより大であれば︑ω式は︑即ち賃銀総額は増加するであろう︒

例えば︑生産函数をコツブリダグラス形と仮定すると︑

Hσ

FR

HE

( )

所得分間理論の一考察

(8)

ζれから︑労働需要の開力性は︑

o v H i

(

)  

資本需要の弾力性は︑

~

; 卜

( )

所得の相対的分け前は︑

1 1  

4ω J

ωF

ω 1ω J

:

(

)  

LK比率の変佑が︑分配率Vにどう影響するか︑

0.. 

Fーヘ市a

同I~I<

z l

(

)  

生産要素の代替の弾力性は︑要素比率の相対的変化と︑限界生産物の比率の相対的変化との比であたえられるから︑

つぎのととくおく︒

(9)

d

d( 号)

相剖細目制限8~m;世i組~~I'AJN心とよ合心心ニムd

:et占'121' d(長)(号)(長)す

‑t

J?d(÷)

d(す)d(i) d(i) K 

)2会.,.n,~ミ吋へ工、長~~ミwl'

十す=~ (1‑去)

!芭~魚雷間程Ql常時 (10) (11) (12) (13) 

4

(10)

そこで︑代替の弾力性がーより大であれば︑労働が資本にたいして相対的に︐増加すると︑分配率は︑労働に有利な方

面にシフトする︒逆にーより小であれば不利な方向にシフトする︒また︑代替の弾力性が1にひとしければ分配率は

コンスタントである︒いま︑前述のコツブHダグラス形の生産函数について吟味すると︑

(

A)

 

ι(

州 )

l l l l

H(一切)

そこで︑この形の函数では︑代替の弾力性は常に1にひとしい︒分配率はLKの変化にかかわらずコンスタントで

ある︒分配率はもっぱらα0の指数に依帯する︒分配率がコンスタンであることは必づしも一次性であることを要

一次の同次性でなくとも︑相対的分け前はコンスタントであるDしかし︑代替の弾

力性がーであることが︑分配率コンスタントの必要条件であり︑生産函数がダグラス形のものである場合に弾力性は しない︒ダグラス形の函数では︑

つぎの図での曲線は直角双曲線となる︒

ok

の切の面積が相対的分け前を一不す︒乙の曲線は︑二生産r

要素の代替曲線である︒この曲線の形状は︑生産の技術的関係に依在する︒したがって︑所得の相対的分け前は︑も

っぱら︑技術的関係によってきまる︒これが︑新古典派的な分配理論の構造である︒

この代替の弾力性という概念に関連して︑考えられるζとは︑所得の相対的分け前の長期的安定性とい ーにひとしいD

(11)

この安定性の重要な意味を指摘してつ

﹁生産力と実質賃銀の比例的上昇︑資本と労働の相

対的分け前の歴史的不変性は︑資本主義的発展の顕著な特徴の一つである4

そして︑カルドアは彼の経済成長モデルのメリットの一つとしてこの安定性

を説明しうる点を強調してつぎのごとくいう︒即ち資本労働比率は上昇した

が︑労働の生産性も同じ率で上昇した︒そこで︑資本産出比率はコンスタン

﹁資本産出比率︑利潤の分け前︑利潤率の不変性は体系のなかで働く内生的諸力の結果であり︑なんら

偶然の結果でないことを示しう︒たとえば︑資本節約的な発明と︑労働節約的な発明とが︑相に丁度相殺し合うよう

に歴史的に生じたということ︑あるいは︑独占の増大が︑完成商品で測られた原材料価格の低落によって相殺される

υζどく歴史的に生じたということを

o V 配率の安定号︑独占度の視角から考察したのはカレツキーであるが嚇一般

に安定性を取り上げた文献では︑つぎのような根拠が示されている︒即ち︑巨視的な生産函数が︑コツブHダグラス

形のもので︑代替の弾力性︑がーであったということ︑或は技術的進歩が中立的であったということ︑あるいはまた︑

代替の弾力性はーではなかったが︑相対的分け前をコンスタントならしめるように非中立的な技術進歩と資本労働比

率の変化とが平行したということ︒これらの仮説の実証にはいまだ決定的な結論はでてない︒そしてその理論的な水

準においですら︑今日の巨視的分配理論は︑この分配率の安定性を十分に説明しうるほど体系的には成熟していない

う経験的事実をどう説明するかということである︒この分配率の長期安定性

という事実は︑いろいろな学者が︑いろいろな分析視角から︑説明の根拠を

あたえている︒例えば︑カルドアは︑

(1) 

ぎのように述べている︒

所得分配理論の一考察

(12)

ここではカルドアの最初の論文

=

E Z

S

F g gUU

55

ZR

切に限定して︑彼の分配モデルの素描

をあたえよう口完全雇用が仮定される︒この状態では︑実質所得の水準は︑もっぱら︑資本ストックと生産技術の状

態によってきまる︒ところで︑カルドアは︑実質所得を所与とする︒乙の付加的な仮定のもとで︑所得分配率は︑貯

菩投資の均等式によってきまってくるのである︒彼は︑社会の階級を︑支出の側面から︑資本家階級(利泊所得階級)

と労働者階級(賃銀所得階級)との二階級に分ける︒

J +

( 一 ∞ )

乙の階級の根本的な相違は︑単に貯蓄率の差異にある︒資本家の貯蓄を

r u ω

百労働者の貯蓄を

ω

ω当者︑そこで

ω

+S MM

(一.吋)

貯蓄と投資の均等という均衡条件をあたえる︒

4

H Z +S MM

( 一 ∞ )

両辺をY

( 一 ∞ )

カルドアのこの分配モデルでは︑投資所得比率は外生的変数として取扱われている︒各階級の貯蓄率を一定とすれば︑

全体としての経済の貯蓄率は所得分配率に依存してきまる︒そこで︑ω

HH

J

ω

11 ωd

l

J ω

到 ﹃ ωMIlωdq

(M O)  

(13)

を導出する︒乙の式は︑外生的にきまった投資率にひとしい貯蓄率が実現した場合の均衡利潤分配率をあたえる式で

ある︒利潤分配率は︑明らかに各階級の貯蓄率と投資所得比率に依存する︒そして︑資本利潤率は︑

νY 

ωMIBωdq

Ijy Sjy 

D

Y

所得分回理論の一考察

ω 

]12 

J

(N

)

右の式が意味をもつためには︑ω

句 引 よ

A司の条件が成立しておらね

ばならぬ

oS Vω

A 利潤分o

MW配率の均衡値はつぎのようなグラフで求められる︒このグラげ

での二つの曲線の交点Qは利潤分配率の短期均衡水準を示す︒

ところが︑カルドア自身︑彼の分配モデルが最もよくあてはま

(2) 

るのは長期においてであると述べている︒﹁実質賃銀は︑短期に

おいては︑すでに到達された水準にとどまっていて︑下万ヘ非

I一Yを圧縮し︑または︑伸縮的であるかもしれず︑それ故に︑

企業者の期待拡張率の上昇につづいてお乙るIYの上昇をさ

またげるかもしれない︒そこで︑利潤の分け前と賃銀とは︑ニ

つのことなった理由で︑非伸縮的になる傾向がある︒即断︑P一Yの下方非伸縮性と

W

L

の下向非伸縮性とによって︒﹂﹁所

得における利潤の分け前を︑産出量にたいする投資の比率と︑

利潤と賃銀からの貯蓄性向とにまったく依存させるところの│

(14)

ただ長期理論としてのみうけとられる︒なぜならば︑これらの要因の変化は︑短

期においては︑ただ限られた影響しか及ぼさないからである︒:::短期においては︑利潤マージンは︑慣例的な水準 とのモデルに依拠する分配理論は︑

のあたりにとどまって︑上万にも下方にも非伸縮的である可能性がある︒lこのことは︑利潤マージンが大部分は歴

史的に決定されることを意味する︒ここで︑示唆されることは︑長期の投資要求と貯蓄性向は︑これらの慣例的水準

が形成される基準をきだめ︑そして︑なんらかの特定の経済におけるこれらの慣例的水準の漸次的変化︑または哨々

Mの異った経済の間におけるこれらの慣例的水準の差異を生ぜしめるところの基本的要因であるということであるよい

ま︑特別な場合を考えよう︒ロビンソンモデルの最も単純な場合のととく︑ω

H O

(M

N)

 

(M

∞ )  

そして︑さらに︑資本家は消費しないと仮定すれば︑SH

(M

A)

 

M

H

(N

)

資本蓄積率は資本利潤率にひとしい︒資本家は投資することによってそれにひとしい利潤を獲得する︒ロビンソンは︑

﹁利潤が得られなければ︑企業家は蓄積できず︑蓄積できなければ︑利潤と蓄積の二面的な関係をつぎの言葉で示す︒

(15)

利潤は待られない︒﹂ところで︑式倒に注目するかぎり︑利潤分配率は投資所得比率によってきまる︒しかし︑

﹁このモデルは︑或る意味でリカルドやマルクスのものとまったく正反対である︒賃銀は カルド

アはさらにすんでいう︒

(利潤でなく)は残余である︒利潤は︑投資性向と資本家の消費性向とによって支配され︑それらは︑国民所得における一種の先行的な変佑を示している︒﹂利潤がまず決定せられ︑賃銀は残余として規定せられるというカルドアの考

え方は︑貨幣賃銀と実質賃銀とは異なる諸力によってきまるとしたケインズ的思考の発展と看倣すことができるが︑ e

もし︑それを式側によって語らしめようとしても説得的ではありえない︒なんとなれば︑賃銀分配率は︑投資所得比

率によってきまるということを示す方程式は容易にうる乙とができるからである︒HH3214)+24

ω

1

3+24

~

ωM

ωH

vl

tω

到 可

ω

l'

md

ト司

ωω

lt md

ωM

Ml

aω

dJ

(M

∞ )  

乙れらの方程式の示すかぎりでは︑高田博士も指摘せられるととく︑たんに各数量聞の均衡関係が明らかになるだけ

bu

w 

で先行関係を論ずることはできない︒さらに︑カルドアモデルの制限的な性質は彼自身も明らかにしているととく︑

発展的経済にはともかくとして定常的経済には完全に説明力を失うということである︒ウイクセルやソロlは定常的

IV経済では所得分配率は全く生産の技術的関係によって定まるとした︒ソロ!の分配モデルはさらに発展的な経済をも

合めて︑分配率の規定要因を考察している︒分配理論としてのカルドア分析は限られた経済局面を対象としているに

所得分配理論の一考察

(16)

カルドアモデルが経済的意味をもつためにはさらに制限条件︑が付加されなければならない︒利潤分配率が正である

ωM

Ml

aω

調 ︑

J

¥/ 

(M

)

¥/ 

ω 

=

(M

∞ )  

投資所得比率は︑労働者の貯蓄率より大であらねばならぬ︒また︑労働賃銀の分配率が正であるためには︑

ω

Ml

lm

dJ

2 1 2  

/¥ 

(N U)  

J ︿s

(ω O)  

投資所得比率は資本家の貯蓄率より小であらねばならぬ︒右の二つの条件から︑

S V

ω

カルドアはつぎのととくいう︒Sω司であるならば︑物価の下落は需要の低落を生ぜしめ︑さらにまた物価の下落を誘発せしめる︒同様に︑物価上昇も累積的となる︒﹂即ちカルドアモデルの安定条件である︒カルドアは賃銀低落の

下収として最低生在水準をおいた︒これにたいして︑ロビンソン自身はインフレーション障壁と称するものをおい

た︒利潤低下の下限としてはカルドアは危険プレミアムや独占度によってきまられる最低利潤をおいている︒

(17)

カルドア的な有需要の側面と︑ヒックス的な

生産要素の代替の弾力性いう概念による供給的

側面とを結合した綜合的分配理論を意図し戸最

も新しい分析はブアlグソンのそれである

0 3

っとも︑彼のモデルは︑フィンドレーモデルの

発展と考えることができるが︑ここでは両分析

を相関連せしめて吟味したい︒フアlグソンは

カルドアモデルをつぎのごとくといている︒利

潤分配率と投資所得比率の関係を示す式は直線

で︑縦軸の載片は︑

ilh

同│でマイナス︑

ω ‑v l

  直線の勾配は︑制什引

lで仮定によりーより大

である︒ところで︑彼はさらに︑貯蓄投資均等

式を示す四五度線を補助線として︑この二つの

直線の交点で均衡点を求めている︒その結果︑

lグソンの図表からでは︑均衡分配率︑投

所得分配理論の一考察

Sp ‑Sw Sw 

Y

s=

Sp ‑Sw 

(3) 

P

Y c Y' 

(18)

Y¥ 

資率︑貯蓄率は三者相ひとしいという事実があたえられる︒

ω M M

1J

i l J

l J

( ω

)

ところで︑利潤分配率が投資所得比率とひとしいという結果は︑ω式では︑宏司

H

30

H C

という貯蓄率の条件によ

って成立する︒これは特殊なケiスである︒カルドアのモデルはもっと広いケiスを含むものであってω

H O

ることを必要としない

03

Vω

喝の条件が成立すればたりるのである︒ブア

lグソンのモデルでω式のような結果が

誘導された点に疑問が伏在する︒側式は本来的に︑貯蓄と投資とが相ひとしいという条件が成立してはじめて成立し

た式である︒この式には既に外生的変数たるIYにひとしい貯蓄率︑が成立しておる乙とを含んでいるのである︒

PYは貯蓄と投資とをひとしくならしめた均衡値なのである︒いはば︑モデルの解を示す式なのである︒ωのグラ

lグソンは再びゲ線を補うことによって︑更に均衡点を求めている︒ζAa

のことは二重の均衡条件を付加したことになる︒その結果が︑ω式という特殊なケlスを生じたのである︒SYωのグラフでは横軸ではかられるべきでPYと同じ軸ではからるべきでない︒むしろ︑ブアlグソンのグラブは不 フがこのことを示している︒ところが︑

要と看倣しでもよい︒

lグソン自身は︑このグラフによってカルドアモデルの解を求めている︒

1

P一Y線はマイナスの載片とーより大なる勾配をもつから︑二つの線は交叉しなければならぬ︒その交

叉点は相互に霊的な均衡投資所得比率

S

と平均貯蓄率︑利潤分配率

PY

h L

貯蓄と利潤分配率は距離︒切であたえられ︑労働分配率は回わであたえられ︑さらに︑︒回目︒﹀であるから

h

︐ ︐ ︑

ー ゆ

i H ω

!lわれわれは彼の綜合理論には︑

知るのである︒

この表現は不必要であり︑

ほとんど意味をもっていないことを

(19)

技術的関係から︑所得分配を考察しようとする新古典派的モデルでは︑生産要素の相封的価格は導入されている

が︑完全競争均衡を仮定して生産物の相対価格の変化を陽表的に取扱はっておらない︒他方︑カルドアの

41

m

U E

ω ω

モデルでは︑物価と賃銀との関係が相対的分け前の決定に重要な役割を演じているものの︑生産要素の相対価

格︑生産物の相対価格は分析の表面で取扱はれでいない︒そこで︑綜合理論では︑これらの相対価格をエクスプリッ

シトリに導入しようとするo

lグソンは︑労働と資本の完全雇用を仮定し︑LKの比を所与とするoさらに消

費財と資本財の供給は常に需要にひとしい均衡状態を問題とするから二財の産出はその需要によって表現される︒そ

の比を恥一向で示すoニ財の価格はれ一町で示されるoつぎの方程式体系があたえられるo

J内川巧+同M

( 一 ∞ ︑

)

ωH24

+S

MM

(.)

つぎに所得分配率と投資率との関係として︑

lu

(3

18

)

+ ω

(ω M)  

つぎのごとく変形する︒

lu

(3

18

)

I$JI

J

+ω

d

(ω ω)  

所得分配理論の一考察

(20)

HN

同の関係から︑分配率は︑

生産物に対する需要の側面を考える︒消費需要は︑

H

lS HM

lg

そこで︑二財の需要の比は︑

PH 24

+S

HM

l

=

1::

'i:J1W 

~~I 司|者

+1 

O

( ω

)

( ω ω )

 

( ω

∞ )  

( ω

)

wpが上昇すれば︑カルドア的安定条件

S V ω

当がみたされる限り︑消費財需要が相対的に上昇す

ることが知られる︒wp

担 金

について微分すると︑

ω

l t ω

到 可

( ω

+3

3u

( ∞ ∞ )

 

(21)

ω

タI~

p.. 

~I~I 丘

¥/ 

( ω ω )

 

とおくことができる︒つぎにニ財の生産はともに非弾力的すると︑二財の相対価格は︑二財の需要比率に依存するとして︑

p.. 

/

ロi~1身

‑‑'1

¥/ 

(

)

とおくことができるo最後に︑生産要素価格の比は︑生産要素の比

(L

k

に依存するとして︑)

N I

同l~

Ip.. 

~l~l ::r

¥/ 

( )

lグソンにしたがってモデルの均衡は︑つぎのグラフで示される口ω式は

( a )

のグラフを示す

o

KL

は外生的にあたえられるo

LKに対応して︑要素価格比がきまる︒

(b

)

ω式を示し︑この直線の勾配は生

産要素比を示し︑生産要素の価格比がきまれば︑所得分配率がきまる︒つぎに︑

得分配率がきまれば︑投資一前得比率がきまる︒

( C )

ω式のグラフで

(b

)

(d

) 

ωここで︑需要の比がきまり︑最後にω式を

示す

( e )

のグラフで生産物の価格比が決定される︒以上がフアlグソンの一般均衡的なモデルの解の導出過程であ

る︒われわれが︑ここで注意したいのは︑

( C )

のグラフとこのグラフをあたえるω式である︒フアlグソンは貯蓄は

所得分配理論の一考察

(22)

w ‑ p  

De  D, 

(d) 

/冒

PC 

PI 

(

Y T ‑ ‑ ‑

玉 上

(c) 

'D  

DD

(a) 

事後的に投身にひとしいのみならず事前的にも投資にひとし

e) 

くなければならぬという定義によって︑ω式を誘導したのであるがカルドアの初期の分配モデルでは︑所得は所与であり

IYは外生的変数として仮定されている︒即ち︑

(A M)  

(4) 

Gは所得の成長率︑Vは資本係数である︒ともに外生的にき

o所得分配率によってきまるのは貯蓄率sY D

即ち︑ヵルドアによれば︑pY

IY

pYによりてSYがきまる︒貯蓄率にひ

としくなるのは分町率の変佑を媒介としてである︒pY

よってIYがきまるのではないo

iグソンのとの表現

ではこのプロセスが見失はれる恐れがある︒彼はとのモデル

をもってヒックス的よりもむしろカルドア的だと称している

が︑カルドアモデルの本来的な性格を欠いている︒彼はまた

カルドアモデルでは︑均衡においては︑pYIY

としくなければならぬと述べているが︑ーそうではない︒乙の

(23)

乙とは既に指摘した

O ( a )

のグラフは生産要素の技術的な代替関係を示している︒

L

K

の比の変化が分配率をどの

方向にシフトせしめるかは︑この代替曲線の性質に依存する︒L一Kが低下したとしよう︒

( a )

W

Zの上昇

が生ずる口そこで︑これに対応して

W7

は変化する

o L

Kの低下は︑(b)図の直線の勾配を低下せしめるo

で ︑

WPが上昇するか︑コンスタントか︑或いは低下するかは︑(b)図の直線の勾配の低下程度︑換言すれば︑

︿a

)図の代替曲線の形状に依在する︒こで︑資本財産業と消費財産業との生産要素の集約度について考えてみよう︒ζ

iグソンの分析ではこの要素の集約度の相違が陽表的に取り上げられてはおらない︒もっとも彼自身このことを

考えていないわけではない︒﹁一財の場合には︑相対的要素需要の弾力性はまったく代替の弾力性と同じである︒し

そのときは︑新古典派理論とともに︑われわれが出発したところに帰るであろう︒しかし︑第二の財が付加さ

そして︑利潤所得者と賃銀所得者とにたいして異なった貯蓄性向が想定されると︑相対的要素需要巾れはも

はや︑純粋な技術的曲線でなくなる︒ある意味では︑

ヒックスよりももっと技術的である︒両生産プロ

セスの相対的要素集約度が明示されねばならぬからである︒しかし︑相対的要素需要は︑相対的商品需要とは独立的

m H

でなく︑相対的商品需要は︑所得の分配に依在し︑これはまた相対的要素需要に依存する︒以下依寄関係は繰返す︒﹂

両産業における生産要素の集約度の相違が︑フィンドレーモデルでは重要な前提条件をなす︒フアiグソンモデルの

原型は恐らくフィンドレーの分析と考えられるから︑関連的にフィンドレーモデルを要約約に吟味したい︒

資本財産業と'消費財産業との生産函数はともに生産規模に関して収穫不変である︒しかし︑資本の集約度は︑資本

財産業の方が高いと仮定される︒この仮定は︑フィンドレーモデルは第一次的重要性をもつものである︒このモデル

の目指すところは︑全く技術的な関係にすぎなかったヒックス的な生産要素の代替関係に︑生産物にたいする需要関

所得分配理論の一考察

参照

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