智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文 疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶
藤 井 教 公
国際 仏教 学大 学 院大 学研 究紀 要 第24 号︵ 令和
年︶
Journal of the International College
for Postgraduate Buddhist Studies
Vol. XXIV, 2020
智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文 疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶
藤 井 教 公
は じ め に 筆 者 は智 顗 撰﹃ 維摩 経 文疏
﹄の 訳 注 を︑ 順 次
︑本 誌﹃ 国際 仏 教 学大 学 院大 学 研 究紀 要﹄ 第 十七 号︵ 平 成 二 十 五 年 三 月 刊
︶ と第 十八 号︵ 同 二 十 六 年 三 月 刊
︑︶ 第十 九号
︵ 同 二 十 七 年 三 月 刊
︑︶ 第 二十 号︵ 同 二 十 八 年 三 月 刊
︑︶ 第 二十 一 号︵ 同 二 十 九 年 三 月 刊
︑︶ 第二 十二 号︵ 同 三 十 年 三 月 刊
︑︶ 第二 十三 号︵ 平 成 三 十 一 年 三 月 刊︶ に︑ それ ぞれ 智顗 撰﹃ 維 摩経 文疏
﹄ 訳注
︵一
︶︑ 同︵ 二︶
︑同
︵三
︶︑ 同︵ 四︶
︑同
︵五
︶︑ 同︵ 六︶
︑同
︵七
︶と して 発表 し た︒ 本 稿は
︑先 に 刊行 し た訳 注︵ 一︶ から
︵七
︶に 続く も ので あ る︒ 体裁 はこ れ まで の 稿を 踏 襲し て︑
﹃ 新纂 大 日 本続 蔵経
﹄ 第十 八巻 所収 の﹃ 維 摩経 文疏
﹄の テキ ス ト原 文を 数行 のま と まり ごと に区 切っ て示 し
︑そ の部 分の 訓 読を 掲げ
︑ 次に その 部分 の訳 注 を付 した
︒本 稿は 四 八二 頁中 段一 行目 か ら四 八五 頁上 段十 三行 目 まで を掲 載す る︒ この 続き は 順次 発表 して いき た い︒ 過誤 の多 いこ と を懼 れる が︑ 大方 の 批正 を請 う次 第で ある
︒ 凡例 は次 の通 り であ る︒ テ キス トの 解題 は智 顗 撰﹃ 維摩 経文 疏﹄ 訳 注︵ 一︶ を参 照さ れ たい
︒ 国
際 仏 教 学 大 学 院大 学 研 究 紀 要 第 二 十 四 号 令 和 二 年 三 月
一
凡 例 一
︑テ キ スト 原文 には 一︑ 二点
︑ レ点 など の返 り点 が 施さ れて いる が︑ 読 点や 句点 はな い︒ 今
︑返 り点 を省 き︑ 意 味に 従 って 句点 を施 した
︒ 一
︑テ キ スト の文 中に は頁 と段 の 変わ り目 にカ ッコ で
﹃新 纂大 日本 続蔵 経
﹄巻 十八 の頁 と段 を 示し た︒ 一
︑字 体は テ キス ト部 分 とそ の 引用
︑書 き下 し 文︑
﹃大 正 蔵経
﹄所 収の 経 典論 書 の引 用 部分 など は
︑原 則と し て 正字 を用 いた
︒そ れ 以外 は略 字を 用い た
︒ 一
︑テ キス ト文 中の ゴ チッ ク字 体部 分は
﹃ 維摩 経﹄ の経 文部 分 であ る︒ 一
︑テ キス ト文 中の
︿
﹀ 内の 部分 は割 り 注部 分を 示す
︒ 一
︑書 き 下し 文中 の ヤマ カッ コ は筆 者に よ る補 いで
︑﹃ 略 疏﹄ との 対照 に よる テキ ス ト欄 外注 記 に従 っ て字 を 補 った もの であ る
︒ 一
︑守 篤本 純 の﹃ 維摩 詰 經疏 籤 録﹄ の 場 所の 指 示は
︑巻 数 と頁 数 を記 し︑ 頁数 の 次に 表 の場 合 は﹁ オ
﹂︑ 裏 の 場 合は
﹁ウ
﹂ と記 した
︒ 一
︑註 に記 し た典 拠の 引用 文で
︑ 引用 部分 が判 然と しに く い場 合に は該 当部 分 に傍 線を 付し た︒ 本 文 テキ ス ト︼
﹈ 降伏 魔 怨制 諸外 道
智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶︵ 藤 井
二
此 卽傳 釋 紹隆 三寶 不斷 之義
︒只 由 衆生 內有 愛結
︒外 有 鬼神 六天 魔王
︒內 有 諸見
︒外 有十 八種 六 師九 十六 種外 道︒ 所以 能壞 法 城︒ 使三 寶斷 絕︒ 今 明︒ 菩 薩化 衆生
︒內 令禪 定伏 愛
︒外 用神 力降 伏魔 怨
︒內 教智 慧斷 結︒ 外 爲說 法制 諸外 道︒ 內 外魔 怨既 伏︒ 內 外外 道制
︒ 歸正 理︒ 則涅 槃城 存︒ 三 寶之 種不 絕︒ 故得 紹 隆也
︒若 約四 教︒ 破 愛見 天魔 外道
︒則 有 兩種
︒界 內愛 見︒ 用生 滅無 生 滅二 種道 諦︒ 禪定 伏愛
︒ 智慧 制見
︒若 界外 愛 見天 魔外 道︒ 則用 無 量無 作二 種道 諦︒ 定 莊嚴 伏愛
︒慧 莊 嚴制 見︒ 故 此經 云︒ 天魔 者樂 生死
︒ 外道 者樂 諸見
︒菩 薩 於生 死而 不捨
︒於 諸 見而 不動
︒是 故天 魔 外道 皆吾 侍也
︒ 若降 伏界 內 愛見 天魔 外道
︒卽 是護 於 化城 涅槃
︒ 三 藏通 教 所明 二種 三寶 紹隆 不絕 也
︒若 降伏 界外 愛見 天 魔外 道︒ 卽是 護大 涅 槃城
︒使 別圓 兩教 三 寶紹 隆不 斷絕 也︒ 故知
︒此 文 竝是 釋前 化佗 之義 也︒ 問 曰︒ 界 內可 有天 魔外 道︒ 界外 何 得有 天魔 外道
︒ 答 曰︒ 大 涅槃 經說 八魔
︒四 是界 內 魔︒ 四是 界外 魔也
︒ 華嚴 經說 十魔
︒此 通 界內 外︒ 分別 可知
︒ 大涅 槃迦 葉菩 薩 自歎 云︒ 自 此之 前皆 名邪 見人 也︒ 若 內心 成就 界外 愛見 之 法︒ 則是 三藏 通教 三 乘聖 人也
︒皆 名界 外 天魔 外道 也︒ 故 此淨 名 大士 呵 須菩 提 云︒ 入 於 諸見 不 到彼 岸︒ 同 於煩 惱離 清 淨法
︒﹇
﹈汝 與天 魔 外道
︒一 手 作諸 勞 侶︒ 此 豈 非 界外 天魔 外道 也
︒ 問 曰︒ 聲聞 可 爾︒ 菩薩 云何
︒ 答 曰︒ 華嚴 經 明菩 提心 魔三 昧魔 善知 識 魔︒ 皆是 菩薩 魔也
︒ 央掘 魔羅 呵文 殊云
︒ 外道 亦修 空︒ 尼乾 且 悪然
︒是 界 外外 道也
︒若 不 爾者
︒八 千菩 薩何 故被 呵
︒不 能加 報也
︒ 若約 觀心
︒明 三 觀降 伏天 魔制 諸外 道者
︒ 假空 空假 觀成
︒降 伏 界內 愛及 天魔
︒制 界 內見 及諸 外道
︒假 中 中假 觀成
︒ 卽降 伏界 外愛 及 天魔
︒制 界外 諸見 及諸 外 道也
︒ 智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶︵ 藤 井
三
テ キ ス ト 原 文 は
﹁ 隆
﹂ に 作 る
︒﹃ 維 摩 経﹄ 原 文 も
﹁ 降 伏 魔 怨 制 諸 外 道 降 伏
﹂︵
﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻十 四
︑
︶ と あ り
︑ 今
︑ 改 め る
︒ テ キ ス ト 原 文 は
﹁ 爲
﹂ に 作 る
︒﹃ 略 疏
﹄ に は
﹁ 外 用 神 力 降 伏 魔 怨
﹂︵
﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻 三 十 八
︑
︶ と あ り
︑ 今
︑ 意 味 上 か ら も
﹁ 用
﹂ に 改 め る テ キ ス ト 原 文 は
﹁ 外
﹂︒
﹃ 略 疏
﹄ に
﹁ 自 此之 前 皆 名 邪 見
︒ 則 藏 通 三 乘 聖 人
﹂︵
﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻三 十 八
︑
︶ と あ る
︒ 今
︑ 意 味 上 か ら も
﹁ 則
﹂ に 改 め る
︒ 書 き下 し︼ 魔怨 を降 伏 し︑ 諸の 外道 を制 す︒ 此 れ卽 ち 三寶 を紹 隆し
︑斷 ぜざ る の義 を傳 釋す
︒只 だ 衆生 の内 に愛 結有 り
︑外 に鬼 神︑ 六天 の 魔王 有り
︑內 に 諸見 有り
︑ 外に 十八 種︑ 六師
︑九 十 六種 外道 有る に由 り て︑ 所以 に能 く法 城 を壞 し︑ 三寶 をし て 斷絕 せし む︒ 今
︑明 か さく
︒菩 薩は 衆生 を化 す に︑ 内に 禅定 もて 愛 を伏 さし め︑ 外に 神 力を 用い て魔 怨を 降 伏せ しむ
︒内 に は智 慧も て 結を 斷ぜ しめ
︑外 には 爲 に法 を說 いて
︑諸 の 外道 を制 す︒ 内外 の 魔怨 は既 に伏 し︑ 内 外の 外道 は制 せ られ て正 理 に歸 す︒ 則ち 涅槃 の城 は 存し
︑三 寶の 種は 絶 えず
︒故 に紹 隆を 得 るな り︒ 若し 四教 が
︑愛 見︑ 天魔 外 道を 破す に 約さ ば︑ 則ち 兩種 有り
︒ 界内 の愛 見は
︑生 滅
・無 生滅 の二 種の 道 諦を⁝ 用い
︑禅 定は 愛 を伏 し︑ 智慧 は 見を 制す
︒ 若し 界外 の愛 見︑ 天魔 外 道な らば
︑則 ち無 量
・無 作の 二種 の道 諦
⁝
を用 い︑ 定の 荘嚴 は 愛を 伏し
︑慧 の 莊嚴 は見 を 制す
︒故 に此 の経 に云 く
︑﹁ 天魔 は生 死を 樂し み︑ 外道 は 諸見 を樂 しむ
︒菩 薩 は生 死に おい て捨 て ず︑ 諸見 にお い て動 かず
︒是 の故 に︑ 天 魔と 外道 は皆
︑吾 が 侍な り﹂ と︒
智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶︵ 藤 井
四
若 し界 内 の愛 見︑ 天魔
︑外 道を 降 伏せ ば︑ 卽ち 是れ 化 城の 涅槃 を護 り︑ 三 藏通 教の 明か す所 の 二種 の三 寶が 紹 隆し
︑絶 え ざる なり
︒若 し界 外の 愛 見︑ 天魔 外道 を降 伏 せば
︑卽 ち是 れ大 涅 槃の 城を 護り
︑別 圓 兩教 の三 寶を し て紹 隆せ し め︑ 斷絕 せざ らし むる な り︒ 故に 此の 文は
︑ 竝び に是 れ前 の化 佗 の義 を釋 すと 知る な り︒ 問 うて 曰 く︑ 界内 に天 魔外 道有 る べし
︑界 外に 何ぞ 天 魔︑ 外道 有る こと を 得ん や︒ 答 えて 曰 く︑
﹃ 大涅 槃 経﹄ に八 魔を 説く
︒ 四は 是れ 界内 の魔
︑四 は 是れ 界外 の魔 なり
︒﹃ 華嚴 經
﹄に 十魔 を說 く10
︒ 此れ 界の 内 外に 通ず
︒分 別し て知 る べし
︒ 大 涅槃
﹄に 迦葉 菩 薩︑ 自ら 歎 じて 云く11
︑﹁ 此 より の 前︑ 皆な 邪見 人 と名 づ くる な り︒
﹂と
︒若 し内 心 に界 外 愛 見の 法を 成就 せ ば︑ 則ち 是れ
︑三 蔵︑ 通 教︑ 三乗 の聖 人な り
︒皆 な界 外の 天魔 外 道と 名づ くる なり
︒ 故に 此の 淨 名大 士 は︑ 須菩 提を 呵 して 云 く12
︑﹁ 諸 見に 入 り彼 岸 に到 ら ず︑ 煩 悩 に同 じ て清 淨 の法 を離 る れば
︑汝
︑天 魔︑ 外 道と 一手 に諸 の 勞侶 を作 す︒
﹂と
︒此 れ豈 に界 外 の天 魔外 道に あら ざ るや
︒ 問 うて 曰く
︑ 聲聞 は爾 るべ し︒ 菩 薩は いか ん︒ 答 えて 曰く
︑﹃ 華嚴 經
﹄に 菩提 心魔
︑三 昧魔
︑ 善知 識魔 を明 かす13
︒ 皆な 是れ 菩薩 魔な り
︒ 央 掘摩 羅
︑文 殊を 呵 して 云 く14
︑﹁ 外 道も 亦 た空 を 修す
︒尼 乾︑ 且く 黙 然た り﹂ と︒ 是れ 界 外の 外 道な り︒ 若 し 爾ら ずん ば
︑八 千の 菩薩
︑何 故 に呵 を被 り︑ 報を 加 える こと 能わ ざる や︒ 若 し觀 心 に約 して 三觀 もて 天 魔を 降伏 し︑ 諸の 外 道を 制す るを 明か さば
︑ 假空
・空 假の 觀成 ず れば15
︑界 內の 愛 及び 天魔 を 降伏 し︑ 界內 の見
︑及 び 諸の 外道 を制 す︒ 假 中・ 中假 の觀 成ず れ ば16
︑ 卽ち 界外 の愛
︑ 及び 天魔 を降 伏 し︑ 界外 の 諸見
︑及 び諸 の外 道を 制 する なり
︒ 愛 結 愛 は 渇 愛
︑ 結 は 束 縛 の こ と
︒ す なわ ち 煩 悩 の 束 縛 の 意
︒ 智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶︵ 藤 井
五
六 天 の 魔 王 欲 界 の 第 六 天 の 魔 王
︑ 波 旬の こ と
︒ 諸 見 多 く の 見 解
︒ 仏 の 如 実 知 見 以 外 はす べ て 誤 り を 含 ん で い る の で ど れ も 邪 見 に 類 する こ と に な る
︒ 十 八 種
︑ 六 師
︑ 九 十 六 種 外 道 い ず れ も外 道 の 種 類 を 数 え た も の で
︑ 十 八 種 は 六 師 外 道に そ れ ぞ れ 三 種 あ っ た の で
︑ 合 計 十 八 種 と い う
︒﹃ 注 維 摩
﹄ 巻 三 に
﹁ 此 六 師 盡 起 邪 見
︒ 裸 形 苦 行 自 稱 一 切 智
︒ 大 同 而 小 異 耳
︒ 凡 有 三 種 六 師
︒ 合 十 八 部
︒﹂
︵﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻 三 十 八
︑
︶ と あ る
︒ 六師 は 釈 尊 の 当 時
︑ 様 々 な 新 思 想 家 た ち が 輩 出 し た中 で
︑ 仏 教 以 外 の 代 表 的 な 思 想 家 た ち を い う
︒こ の 六 師 が そ れ ぞ れ 十 五 種 の 教 え を 弟 子 た ち に 授 け た の で
︑ 九 十 種 の 教 え と な り
︑ そ れ に 師 の 六 師 を 加 え る の で 計 九 十 六 種 と な る
︒﹃ 薩 婆多 毘 尼 毘 婆 沙
﹄ 巻 五 に
﹁ 爾 時 有 梵 志
︒ 是 外 道 六 師門 徒
︒ 六 師 者
︒ 一 師 十 五 種 教
︒ 以 授 弟 子
︒ 爲 教各 異
︒ 弟 子 受 行 各 成 異見
︒ 如 是 一 師 出 十 五 種 異 見
︒ 師 別 有 法
︒ 與 弟 子 不同
︒ 師 與 弟 子 通 爲 十 六 種
︒ 如 是 六 師 有 九 十 六
︒師 所 用 法 及 其 將 終
︒ 必授 一 弟 子
︒ 如 是 師 師 相 傳
︒ 常 有 六 師
︒﹂
︵﹃ 大 正 蔵﹄ 巻 二 十 三
︑
︶ と あ る
︒ 愛 見 情 動 的 煩 悩 と 意 識 や 概 念 に 基 づ い た 煩 悩
︑こ の 二 種 の 煩 悩 の こ と
︒ 生 滅
・ 無 生 滅 の 二 種 の 道 諦
⁝
⁝ 無 量
・ 無 作 の 二種 の 道 諦 法 華 玄 義
﹄ 巻 二 に 説 か れ る 四 種 の 四諦
︵ 生 滅
︑ 無 生 滅
︑ 無量
︑ 無 作
︶ の う ち 生 滅 と 無 生 滅 の 二 種 四 諦
︑ 及 び無 量 と 無 作 の 二 種 そ れ そ れ の 四 諦 中 の 道 諦 を 指す
︒ 前 二 種 は 界 内 に
︑ 後二 種 は 界 外 に 属 す る
︒ 此 の 経 に 云 く 維 摩 経
﹄ 問 疾 品 に
︑﹁ 又 仁 所 問何 無 侍 者
︒ 一 切 衆 魔 及 諸 外 道 皆 吾 侍 也
︒ 所 以 者 何︒ 衆 魔 者 樂 生 死
︒ 菩 薩 於 生 死 而 不 捨
︒ 外 道 者 樂 諸 見
︒ 菩 薩 於 諸見 而 不 動
︒﹂
︵﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻 十 四
︑
︶ と あ る
︒ 化 城 の 涅 槃 法 華 経
﹄ 化 城 喩 品 に 説 か れ る
︑ 一 時 的 な 蘇 息 処 と し て 仏 に よ っ て 仮 に 設 け ら れ た 幻 の 城
︒ 声 聞 縁 覚 の 二 乗 の 不 完 全 な 涅 槃 を 喩 え る
︒﹃ 妙 法 華
﹄ 化 城 喩 品 第 七 に
﹁ 於 險 道 中 過 三 百 由 旬
︒ 化 作 一 城
︒ 告 衆 人 言
︒ 汝 等 勿 怖 莫 得 退 還
︒ 今 此 大 城
︒ 可 於 中 止 隨 意 所 作
︒ 若 入是 城 快 得 安 隱
︒ 若 能 前 至 寶 所 亦 可 得 去
︒ 是 時 疲極 之 衆
︒ 大 歡 喜 歎 未 曾 有
︒ 我
智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶︵ 藤 井
六
等 今 者 免 斯 惡 道
︒ 快 得 安 隱
︒ 於 是 衆 人
︒ 前入 化 城
︒ 生 已 度 想 生 安 隱 想
︒ 爾 時 導 師
︒ 知 此 人衆 既 得 止 息
︒ 無 復 疲 惓
︒ 卽 滅 化 城
︒ 語 衆 人 言
︒ 汝 等 去 來 寶 處 在 近
︒ 向 者大 城 我 所 化 作 爲 止 息 耳
︒﹂
︵﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻 九
︑
︶ と あ る
︒ 大 涅 槃 経
﹄ に 八 魔 を 説 く 南 本
﹃ 大 般涅 槃 経
﹄ 巻 二 十 に
﹁ 欲 破 八 魔
︒ 八 魔 者
︒ 所 謂 四 魔無 常 無 樂 無 我 無 淨
︒﹂
︵﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻 十 二
︑
︶と あ る
︒ 10 華 嚴 經
﹄ に 十 魔 を 說 く 佛 馱 跋 陀 羅 譯﹃ 大 方 廣 佛 華 嚴 經
﹄︵ 六 十 華 嚴
︶ 巻 四 十 二 に
︑﹁ 佛子
︒ 菩 薩 摩 訶 薩
︒ 有 十 種 魔
︒ 何 等 爲 十
︒ 所 謂 五 陰 魔
︒ 貪 著 五 陰 故
︒ 煩 惱魔
︒ 煩 惱 染 故
︒ 業 魔
︒ 能 障 礙 故
︒ 心 魔
︒ 自 憍 慢故
︒ 死 魔
︒ 離 受 生 故
︒ 天 魔
︒ 起 憍 慢 放 逸 故
︒ 失 善 根 魔
︒ 心 不 悔 故
︒ 三 昧魔
︒ 味 著 故
︒ 善 知 識 魔
︒ 於 彼 生 著 心 故
︒ 不 知 菩提 正 法 魔
︒ 不 能 出 生 諸 大 願 故
︒ 佛 子
︒ 是 爲 菩 薩 摩 訶 薩 十 種 魔
︒﹂
︵﹃ 大 正 蔵﹄ 巻 九
︑
︶ と あ る
︒ 11 大 涅 槃
﹄に
⁝ 自 ら 歎 じ て 云 わ く 大 般 涅 槃 経
﹄ 巻 七
︑ 四 倒 品 に
﹁ 世 尊
︒ 我 等 悉 名 邪 見 之 人
︒﹂
︵﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻 十 二
︑
︶ と あ る
︒ 12 須 菩 提 を 呵 し て 云 く 維 摩 経
﹄ 弟 子 品 に
﹁ 若 須 菩 提
︒ 入 諸 邪 見 不 到 彼 岸
︒ 住 於 八 難 不 得 無 難
︒ 同 於 煩 惱 離 清 淨 法
︒ 汝 得 無 諍 三 昧
︒ 一 切 衆 生 亦 得 是 定
︒ 其 施 汝者 不 名 福 田
︒ 供 養 汝 者 墮 三 惡 道
︒ 爲 與 衆 魔 共 一手 作 諸 勞 侶
︒ 汝 與 衆 魔 及 諸 塵 勞 等 無 有 異
︒﹂
︵﹃ 大 正 蔵
﹄ 巻 十 四
︑
︶ と あ る
︒ 13 華 嚴 經﹄ に 菩 提 心 魔
⁝ を 明 か す︒ 前 注
︵10
︶ の 引 用 文 中 で 十 魔 を 説 く 中 に
︑ 三 昧 魔
︑ 善 知 識 魔 が 出 る
︒菩 提 心 魔 は 不 知 菩 提 正 法 魔 に 相 当 す る か
︒ 14 央 掘 摩 羅
︑ 文 殊 を 呵 し て 云 く 央 掘 摩 羅 経﹄ 巻 二 に
﹁ 外 道 亦 修 空 尼 乾 宜 悪 然
﹂︵
﹃ 大 正 蔵﹄ 巻 二
︑
︶ と あ る
︒ 15 假 空
・ 空 假 の 觀 成 ず れ ば 天 台 の 観 法 で
︑従 仮 入 空 観
︑ 従 空 入 仮 観
︑ 中 道 第 一 義 観 を 三 観 とい う が
︑ 虚 妄 の 仮 よ り 空 に 入 り
︵ 従 仮 入 空 観
︶︑ そ の 空 に 沈 滞 せ ず に
︑仮 の 存 在 に 一 定 程 度 の 意 義 を 認 め て 諸 法 の 差 別 の 理 を 体 得 す る
︵ 従 空 入 仮 観
︶︒ こ の 段 階 に 達 す れ ば
︑ 界 内 の 愛 見
︑ 天 魔
︑ 外 道を 制 す る こ と が で き る と い う
︒ 智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文 疏
﹄ 訳 注
︵ 八︶
︵ 藤 井
七
16 假 中・ 中 假 の 觀 成 ず れ ば 従 空 入 仮 観 に よ っ て 施 設 さ れ た 仮 の 諸 法 の 理 を 体 得 し
︑ 次 に そ こ か ら 中 道 の 理 に 達 す る
︵中 道 第 一 義 観
︶︒ た だ し
︑ 仮 と 中 道 は 隔 絶 し た 存在 で は な く
︑ 仮 と 中 道 と は 相 卽 し た も の で あ る と達 す る
︒ こ の 段 階 に 至れ ば
︑ 界 外 の 愛 見
︑ 天 魔
︑ 外 道 を 制 す る こ と がで き る と い う
︒ 別 教 で は 三 観 は 次 第 の 三 観 で あ るが
︑ 円 教 に お い て は 不次 第 の 三 観 で
︑ し か も 一 心 に お い て 三 観 が 同 時に 修 さ れ る と す る
︒ な お
︑ 前 項 の 假 空
・ 空 假 の 観︑ 及 び 假 中
・ 中 假 の 観は
︑ 次 段 以 降 に も 同 じ 表 現 が 見 ら れ る
︒ テ キス ト︼ 悉已 清淨 此 下二 廣 歎自 行化 佗︒ 卽爲 二︒ 一 從悉 已清 淨訖 不起 法 忍︒ 是廣 歎自 行︒ 二 從已 能隨 順︒ 訖心 所 行︒ 是廣 歎化 佗︒ 一廣 歎自 行
︒復 爲二
︒一 歎斷 德︒ 二 歎智 德︒ 一歎 斷德 文 有三 別︒ 一總 歎︒ 二 別歎
︒三 釋歎
︒一 總 歎斷 德者
︒明 此 諸菩 薩結 惑 生死 皆斷
︒故 言悉 已清 淨
︒結 惑生 死有 二種
︒ 一界 內︒ 二界 外︒ 若 三藏 教補 處︒ 止伏 界 內見 思︒ 修諸 功 德名 爲清 淨
︒既 未斷 結非 悉已 清淨 也
︒通 教補 處雖 斷界 內 見思
︒侵 除習 氣︒ 名 爲清 淨︒ 界外 見思 未 斷︒ 非悉 已清 淨 也︒ 別教 補 處雖 斷界 外十 一品 無明
︒ 盡名 爲清 淨︒ 三十 一 品無 明尚 在︒ 非悉 已 清淨 也︒ 圓教 補處 非 但界 內惑 盡︒ 界 外四 十一 品 無明 亦盡
︒雖 餘一 品︒ 有 若微 烟︒ 乃可 得名 悉 已清 淨也
︒如 地持 論 明︒ 第九 清淨 禪︒ 至 離一 切見 清淨 淨 禪煩 惱智 障 斷清
﹇
﹈ 淨淨 禪︒ 菩 薩依 是禪 故得 大菩 提 果︒ 故約 圓教 補處
︒ 說悉 已清 淨也
︒若 約 三觀 明悉 已清 淨 者︒ 假空 空 假觀 成︒ 但離 界內 煩惱 障
︒名 爲清 淨︒ 界外 二 障未 盡︒ 不名 悉已 清 淨也
︒假 中中 假觀 成
︒界 外煩 惱障 盡︒ 名悉 已清 淨 也︒ 原 テ キ ス ト は
﹁ 名
﹂ に 作 る が
︑ 欄 外 注 記に
﹁ 名 疑 誤 當 作 明
﹂ と あ り
︑ ま た 意 味 上 か ら も︑ 今
︑﹁ 明
﹂ に 改 め る
︒
智 顗 撰
﹃ 維 摩 経 文疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶︵ 藤 井
八
書 き下 し︼ 悉く 已に 清 淨に して 此 の下
︑ 二に 廣く 自行 化佗 を歎 ず
︒卽 ち二 と爲 す︒ 一 には
﹁悉 已清 淨﹂ よ り﹁ 法忍 を起 こさ ず
﹂に 訖る まで
︑ 是れ 廣く 自 行を 歎ず
︒二 には
﹁已 に 能く 隨順 す﹂ より
﹁ 心所 行﹂ に訖 るま で
︑是 れ廣 く化 佗を 歎 ず︒ 一 に廣 く 自行 を歎 ずる を復 た二 と 爲す
︒一 には 斷德 を 歎じ
︑二 には 智德 を 歎ず
︒一 の斷 德を 歎 ずる の文 に三 の 別あ り︒ 一 に總 じて 歎ず
︒二 に別 し て歎 ず︒ 三に 歎を 釋 す︒ 一に 總じ て斷 德 を歎 ずと は︑ 此の 諸 の菩 薩の 結惑 生 死︑ 皆な 斷 ずる を明 かす
︒故 に﹁ 悉 已清 淨﹂ と言 う︒ 結 惑生 死に 二種 有り
︒ 一に は界 內︑ 二に は 界外 なり
︒若 し 三藏 教の 補 處な らば 止も て界 內の 見 思を 伏し
︑諸 の功 德 を修 する を名 づけ て 清淨 と爲 す︒ 既に 未 だ結 を斷 ぜず
︑
﹁悉 已 清淨
﹂に 非ざ る なり
︒通 教の 補 處は 界內 の 見思 を斷 じ︑ 習 氣を 侵除 す るを 名づ け て清 淨と 爲 すと 雖も
︑界 外 の 見思 は未 だ 斷ぜ ず︒
﹁ 悉已 清淨
﹂に 非ざ る なり
︒別 教の 補 處は 界外 の 十一 品の 無 明 盡く 斷ず る を名 づけ て 清 淨と 爲 すと 雖も
︑三 十一 品 の無 明 尚お 在り
︒﹁ 悉 已清 淨﹂ に非 ざ るな り︒ 圓教 の補 處 は但 だ 界內 の惑 盡 くる のみ に 非ず
︑界 外の 四十 一 品の 無明 亦た 盡き
︑一 品 を餘 し︑ 微烟 の若 き 有り と雖 も︑ 乃ち
﹁ 悉已 清淨
﹂と 名づ く るを 得 べき なり
︒﹃ 地持 論﹄ の明 かす が 如く
︑﹁ 第 九清 淨禪 は 離一 切見
・清 淨淨 禪 にし て︑ 煩惱 智障 斷 清淨 淨禪 に至 る︒ 菩薩 は是 の 禪に 依る が故 に大 菩提 の 果を 得︒
﹂と
︒故 に圓 教の 補處 に 約さ ば﹁ 悉已 清淨
﹂ と說 くな り︒ 若 し三 觀 に約 し て︑
﹁悉 已清 淨﹂ を 明か さば
︑假 空・ 空假 の 觀成 じ て但 だ界 內 の煩 惱障 を 離る る を名 づけ て 清 淨と 爲す
︒界 外 の二 障未 だ盡 きざ る を﹁ 悉已 清淨
﹂と は 名づ けざ るな り︒ 假中
・ 中假 の觀 成じ て︑ 界 外の 煩惱 障 盡く るを
﹁ 悉已 清淨
﹂と 名づ くる な り︒ 智
顗 撰
﹃ 維 摩 経 文疏
﹄ 訳 注
︵ 八
︶︵ 藤 井
九