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藤 井 千惠子,三小田 美稲子,池 田 延 行 Chieko FUJII,Mineko SANKODA and Nobuyuki IKEDA

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Academic year: 2021

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全文

(1)

体育系教員養成におけるカリキュラム・マネジメントの 充実に即した教科横断的学習の試み

Attempt at crossed subject learning corresponding with enhancement of curriculum management

藤 井 千惠子,三小田 美稲子,池 田 延 行 Chieko FUJII,Mineko SANKODA and Nobuyuki IKEDA

ABSTRACT

Curriculum management is advocated to let children develop the qualifications and abilities to be able to find issues by themselves and solve problems by thinking independently.

But in our attempt, there are a lot of issues as follows: 1 the relation of educational contents in each subject and field, 2 the cooperation of teachers, 3 the utilization of specific resources inside and outside of school.

In the research I suggested attempting cross subject learning that we can apply to curriculum management. This attempt is to relate science and music by deciding on

“sound” as a common theme. In the subjects Teaching Method Science and Music university students practiced teaching lessons.

Our result indicates that the theme “sound” can embody and express the basic idea of curriculum management and has the comprehensive possibility to relate to other subjects and develop creativity in lessons.

Key words; Curriculum management, STEAM education, crossed subject learning, sound

1.研究の目的と方法

新学習指導要領(平成29年告示)において「子 供たちが未来社会を切り開くための資質・ 能力 を一層確実に育成することを目指す」(平成 29 年 小学校学習指導要領解説 総則)ためにカリキュ

ラム・マネジメントの充実があげられており、そ の実現のために教育の目的や目標の実現に必要な 教育の内容などを教科等横断的な視点で組み立て ていくことが求められている。そこで、教科を関 連付ける理念や方法にSTEAM教育が応用できる のではないかと考えた。STEAM教育の現実の問

国士舘大学体育学部こどもスポーツ教育学科

(Faculty of Physical Education Department of Sport Education for Children, Kokushikan University)

AND SPORT SCIENCE VOL.38, 7-16, 2019

原  著

(2)

題を解決するためには教科や分野の枠を超えて取 り組む必要があるという考えが、カリキュラム・

マネジメントと共通するからである。

本研究は理科と音楽で統一のテーマのSTEAM 教育を計画・実施し、その考察からカリキュラム・

マネジメントに有効な試みを提案するものである。

2.カリキュラム・マネジメント

カリキュラム・マネジメントは小学校学習指導 要領(平成 29 年告示) 総則において「各学校に おいては、児童や学校、地域の実態を適切に把握 し、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容 などを教科等横断的な視点で組み立てていくこ と、教育課程の実施状況を評価してその改善を図 っていくこと、教育課程の実施に必要な人的また は物的な体制を確保するとともにその改善を図っ ていくことなどを通して、教育課程に基づき組織 的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図 っていくこと」と定義されている。

このようなカリキュラム・マネジメントが提唱 されている背景には、学ぶことが学習者にとって 現実の問題を解決し、自分の人生を切り開いてい くための力として認識されていないことがあげら れる。現実に直面する問題は常に多面的であり、

さまざまな知識を用いなければならない。このこ とから「知の総合化」が求められ、子ども自身が 自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的 に判断して問題解決をできる資質能力を養うこと の重要性が示されている。

しかし、カリキュラム・マネジメントは「学校 教育に関わる様々な取組を、 教育課程を中心に 据えながら組織的かつ計画的に実施し、」(総則 39p)なければならず、取組を組み立てる方策や 組織作りにおいて、様々な困難を伴う。既存の教 科に特化して教育を考えてきた教員にとって、他 の教科を意識しつつ特定の教科を教えることはパ ラダイム転換を興す必要があり、各学校における カリキュラム観の再検討が重要である。

また、各教科・領域や教育内容と方法などをど のように関連付けるか、教員同士がどのように協 働していくのか、さらに学校内外にある固有の資 源をどのように活用して教育目標を設定し、学年 や学校種を超えうる学びをいかにデザインするか が検討されなければならない。

3.1 STEAM 教育の定義

STEAM教育とはSTEM教育にArtが加わった ものである。STEM教育とはScience, Technology, Engineering, Mathematicsの頭文字をとって命名 されたものであり、「科学、技術、工学、数学とい う4つの学問分野のうちのいくつか、あるいは4つ すべてを、教科と実世界の課題を結びつけること を基礎にして、1 つの学級、単元、授業の中に結 集すること」と定義されている。(Moor,T.J)こ の STEM 教育に Art が加わることによって、 学 習者を探求、対話、創造的思考に導き、結果とし て学習者は恐れずに思考し、実験的学びに従事し、

あきらめずに問題解決し、共同研究に取り組み、

創造的過程を通して活動することを目的とするこ とができるようになる。

図1のSTEAM教育ピラミッドに見られる通り、

関連する学問領域は広く多様であり、Arts の領 域には美術や音楽などの芸術だけでなく、歴史、

人類学、教育、心理学などリベラルアーツすべて の学問領域も含まれている。

3.2 STEAM 教育の可能性

STEAM教育は問題を解決するために、教科や 学問領域を融合させる。STEAM教育は統合的な 発想によるため、それらを活用する教育方法やカ リキュラムの開発にも関心が向けられている。当 初は世界水準での競争力を刷新するための、自然 科学・数学・技術・工学の教育強化が目的であっ たが、資質能力の育成手段としても有効であると 考えられるようになり、様々なねらいの下で展開 されるようになった。

その手法は探究的であり、体験的である。子ど

(3)

もたちはこれまでに得てきた知識を用い、 対話 し・協働しながら問題を解決していく。その過程 で論理的・批判的・創造的思考を身につけること ができる。 芸術(Art) が加わることによって、

STEAM教育には学習者が理論や最適解を導く収 束的思考と多様な解を求める拡散的思考の両方が 内包される。芸術に多様な解があるように、現実 の問題も最適解を求める場合だけでなく、多様な 解の中から選択するなど、拡散的思考は現実的な 問題解決に即している。芸術は成果物の質だけで なく、その過程で学習者に起こる内的変化にも注

目する場合があり、学習者の自尊感情を高めるこ とにも寄与する。また、どのような成果物を作成 するのかという目標の設定やそのためにどのよう な方法を用いるのかという決定が学習者にゆだね られることにより、学びは主体的で体験的となる。

さらに芸術の効果として、1、脳を多忙にする。

2、認知的な能力の促進。3、長期的記憶の改善。

4、創造性の促進。5、社会的成長の促進。6、新 しさを取り入れる。7、ストレスの減少。8、教育 を面白くさせる。があげられている。(デビッド・

A・スーザ、2017)

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図2 STEAM 教育の意義 図1 STEAM 教育 ピラミッド

(4)

4.1 授業計画

(1)テーマ  音

(2)関連教科 理科、音楽

(3)学習指導案

[理科における取組]

(1)理科 3年 音

〈「音」の単元の意味と価値〉

音楽とつなぐ視点から、導入を音楽室で行うこ とにする。様々な楽器があること、音楽とのつな がりを感じ取ることができる、音響効果のよいス ピーカーがある、などの点である。また、導入で は全員に風船を持たせて音を具体的に感じ取るこ とから、音についての疑問を出させ、問題づくり を行うこととした。

問題の解決では、音の震えを可視化するために 様々な方法で実際の楽器に触れ、震えることを確 認できるようにする。伝わることについては、糸 電話を用いて調べる活動を考えた。さらに、音を 可視化するための音の波形を確認できるタブレッ トや実験器具を用いることにする。

これらの学習の後、音楽の授業で音を創作した

り、効果音を考えたりする活動につなげたり、総 合的な学習の時間を用いて物語の音楽を創作した りするなど、科学と芸術を一体化した学習活動を 展開する。

身近な音に興味・関心をもち、音の伝わり方な どを理解するとともに、音の科学に気付いたり、

生活を豊かにするために生かそうとしたりするな ど、STEAM教育の実践を行い、子どもたちにカ リキュラム・マネジメントのよさや意味を実感さ せ、将来の生き方にも影響を与えることができる ようにすることを意図している。

(2)単元指導計画 第3学年 1 単元名「音」

2 単元の目標

音を出したときの震え方に着目し、音の大きさ を変えたときの現象の違いを比較しながら、音の 性質について調べる活動を通して、それらについ ての理解を図り、観察・実験などに関する技能を 身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に 問題を見出す力や主体的に問題解決しようとする 技能を育成する。

3 評価規準

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(5)

4 単元の指導計画 5 時間+ 1 時間  ※ STEAM 教育

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(7)

音楽における取組 1.題材名

いろいろな音にしたしもう 2.題材の目標

・いろいろな音色に興味・関心を持ち、音色の違 いを生かした重ね方を工夫することや物語に 合った音楽を作ることに進んで取り組む

・音色の違いを感じ取りながら、音を重ねたり、

物語に合った音楽を作る工夫をしたりする

・いろいろな音色の違いを生かしながら、曲に合 わせてリズムを打ったり、物語に合わせて自分 たちが作った音楽を演奏したりする。

・いろいろな打楽器の音色の特徴を感じ取り、そ のよさや面白さを味わいながら聴くようにする。

3.評価規準

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ճ ≀ ㄒ ࡟ ྜ ࡗ ࡓ 㡢 ࢆ 㑅 ࡧ ࠊ㡢 ᴦ ࢆ స ࡿ ᕤ ኵ ࢆ ࡍ ࡿ ά ື ࡟ 㐍 ࢇ ࡛

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(8)

4.2 結果

4.2.1 理科の授業

音楽室で理科の模擬授業を実施した。まず、学 生一人一人が風船を持って歌を歌い、その振動に 着目させた。風船は安価であり、一人一人が確認 することができ、音を感じ取る教材としてふさわ しい。そして、音楽の授業でも生かす場がある。

この活動により風船の震えから音が出るときの様 子を調べてみたい、という意欲を引き出すことが 可能となった。

また、音楽室という環境は様々な楽器が身近に あり、音の震えを探し出す活動に最適であった。

震える様子が目で見て分かるものとしてギターな どの弦楽器、音が出ているときに大きく震えてい ることが分かりやすい打楽器(特に大太鼓)、目 で見ているだけでは分かりにくいが手で触ると音 が止んでしまうトライアングルやシンバルなどを 代表的な楽器として取り上げながらその他の楽器 についても見たり、触れたり、紙などを近づけて 震えを確認したりする活動を行うことができた。

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࣭ ឤ ࡌ ྲྀ ࡗ ࡓ 㞺 ᅖ Ẽ ࡸ Ẽ ᣢ ࡕ ࡟ ྜ ࡗ ࡓ 㡢 ࢆ 㑅 ࡧ ࠊ㡢 ᴦ ࢆ స ࡿ ࠋ

࢖ 㸫 ճ

࢘ 㸫 ճ

(9)

学生からは、音が出るときに物が震えること、

音の大きさによって震え方も変わること等のねら いに迫るとともに 3 年生の比較しながら調べる活 動についても充実させることができた。また、理 科の授業を音楽室で行うことがカリキュラム・マ ネジメントの具体的な取組であることを実感する ことができた、という感想もあり、教材や環境を 工夫することが教科間を横断的に捉えることが容 易になり、次の音楽の学習へとつなぐ道筋となっ た。

4.2.2 音楽の授業

音楽は理科の 1 時間目の時間に続き、2 時間目 の授業を実践した。音色を題材とし、初めは体か ら出るさまざまな音に注目し、理科の時間に用い た風船を使い、やはり、音が出る際に物が震えて いることを確認した。次の過程は学生が授業を担 当し、身の回りの物から出る音を探し、理科タブ レットを使って波形を調べた。

授業後の学生の授業に対する感想には①波形を 調べることによって、音の特徴を視覚的に捉える ことができ、わかりやすかった。②音色に集中す ることによって、音自体に興味を持つことができ た。 ③ ICT 機器を使って、 自分たちで活動でき るところがよいと思った。④音楽の授業を理科室 で行うことによって、興味が湧いた。④他の教科 と関連させることによって、多面的な見方ができ 学習が深まる。等が見られた。

これらの感想から理科の授業を受けて音の性質 を意識しながら、音探しをすることによって、音 色や音自体に関心を持たせることができたことが わかる。これは波形を視覚的に捉えることができ ることによって、わかりやすかったことと興味・

関心を引くことができたことが理由として挙げら れる。理科タブレットを使って波形を調べてみる という発想は、理科と音楽をどのように関連付け るのかという教員間の議論の中で生まれたもので あり、教科を結びつけることは新しい授業の方法 や教材を発見することにつながると言える。

5.考  察

本研究では、“音”をテーマにすることによっ て、「教育の目的や目標の実現に必要な教育の内 容などを教科等横断的な視点で組み立てていくこ と」というカリキュラム・マネジメントの基本理 念をまさに体現することができ、“音”というテ ーマはさまざまな教科との関連や授業展開を生み 出す非常に幅広い可能性を持っていることが分か った。また、カリキュラム・マネジメントは未来 を切り開くことのできる資質・能力の向上を目的 としているが、STEAM教育の探究的で体験的で あり、対話し・協働しながら問題を解決していく 手法は、カリキュラム・マネジメントを実現する ために多くの示唆を与えるものであった。

学生 A による感想

今日みたいな音楽の授業は初めて受けたけ ど、音の高さや大きさはそれぞれちがってすて きだなと実感することができた。音色を集中し て聴く機会ってあまりないと思うから、こうい う機会を大切にし、音自体に興味を持つことが 大切だなと思った。目に見えてわかったので、

わかりやすかった。いろいろな面から、同じこ とを学習することって大切というのを実感でき た授業だった。

学生 B による感想

音楽と理科が密接な関係だということがすご

く理解できた。波形で表すことによって音の特

徴を捉えることができるし、実際に目で確認す

ることで子どもたちの理解も深まっていくと感

じた。また、今回の授業のように音楽の授業な

のに理科室で行うことにより、子どもたちの好

奇心や興味を引くことができるので場の設定も

大切だと感じた。実際にICT機器を使い自分た

ちで活動する場が設定されていてすごくいいな

と思った。

(10)

授業実践を通して、学生は社会の変化に伴って 子どもたちが身につけなければならない資質・能 力も変わっていくこと、教師はそれに対応して新 しい考え方・授業方法や取組について知らなけれ ばならないことを実感している。そこで、養成課 程の責務として、カリキュラム・マネジメントの 視点を学生に持たせるために、教科横断的な手法 やカリキュラム・マネジメントに対応するような 取組を体験させるなど、常に新しい視点を提供し ていかなければならないと考える。

今回の研究では、理科と音楽との関連の試みを 取り上げたが、今後“音”をテーマとして、さま ざまな教科との関連を研究していきたい。

参考文献

1)デビッド・A・スーザ、トム・ピレッキ著 胸組

虎 胤 訳 2017 AI 時 代 を 生 き る 子 ど も の た め

の STEAM 教育 幻冬舎(David A Sousa and

Thomas J. Plecki 2017 FROM STEM TO STEAM

Corwin)

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