ウサギ粘液水腫性昏睡モデルを用いた 甲状腺ホルモン (T3) 投与の
バイタルサインへの影響に関する研究
おやま せいご
小山 正剛
(総合内科学専攻)
防衛医科大学校
令和2年度
目 次
第
1
章 背景と目的1
頁第2章 対象と方法
4
頁第
1
節 間欠的麻酔薬筋注による長時間観察4
頁 第2節T3
単回静注のバイタルサインへの影響9
頁第3章 結果
12
頁第
1
節 間欠的麻酔薬筋注による長時間観察12
頁 第2節T3
単回静注のバイタルサインへの影響14
頁第4章 考察
17
頁第5章 結論
20
頁謝辞
21
頁略語一覧
22
頁引用文献
23
頁図 表
27
頁1
第
1
章 背景と目的粘液水腫性昏睡は、未治療または管理不十分な重症甲状腺機能低下症を基盤 に発症し、低体温・循環不全・呼吸不全が重層することで中枢神経機能障害を来 す致死的内分泌緊急症である
1)
。正しい診断と迅速な初期対応、つまり、本症を 疑う際には甲状腺ホルモンを測定し、集学的治療を行い、速やかに甲状腺ホルモ ン補充を開始することが重要とされている。死亡率は世界的にみても
36~52% 2-5)
、1999 年の本邦の報告でも25%と高く、
日本甲状腺学会が臨床重要課題として指定し、実態調査や診断基準と治療指針 の 策 定 に 取 り 組 み 始 め て い る 。 診 断 群 分 類 包 括 評 価
(Diagnosis Procedure
Combination: DPC)
に関するデータベースを用いた大野らの実態調査3)
によると、近年の日本でも在院死亡率は
29.5
%(44/149
)と依然高い、中~高齢者に多い、男女比は
1:2、発症数 50
人/年と症例数に乏しい、などが判ってきている2)
。甲状腺ホルモンには、プレホルモンである
L-
サイロキシン(L-thyroxine
:T4)
と、実効ホルモンである
L-トリヨードサイロニン(L-triiodothyronine:T3)の 2
種類が 存在する6)
。T4は即効性には欠ける(作用発現14
時間程度)が、用量調節域が広 いという簡便性があり、T3
は即効性には優れる(
作用発現3
時間程度)
が厳格な 用量調節が必要という差異5-6)
があるが、初期用量およびその後の用量調節法の 記載は「T4では50~500μg/日、 T3
では10~50μg/日を、意識改善まで継続投与」
2
(表 1) 1),3),7)
、と明確とは言い難い。本邦及び海外のガイドラインや専門書に記載された治療法では、甲状腺ホルモン投与と並行した全身管理や誘因の除去が重 要とされているところ、甲状腺ホルモン投与法、とりわけ初期用量と用量調節法 への明確な指針がなく、本研究ではこの部分にこそ、本症の高い死亡率の最大の 原因があると考えた。
本研究では、適切な初期用量や用量調整法が示されていない原因に二つの要 因があると考えた。
まず一つ目に、ホルモン投与量や血中濃度と治療反応の間に個体差が見られ る事である。内分泌系の特徴として、個体がホルモン欠乏に長期に暴露されると 少量のホルモンにも過剰反応する適応現象
(
以下up-regulation)
が起きる8-10)
が、この現象の強さは欠乏程度と欠乏期間により個体毎に異なるため、至適用量域 が全く異なりうるからである。
二つ目は、意識レベル以外の治療指標が示されていない事である。粘液水腫が 昏睡に至る病態生理(図
1)から考えても、意識レベルは個々の病態を統合的には
反映するが治療指標としては迂遠過ぎるし実治療においてもその改善は最も遅 れる。甲状腺ホルモン作用を直接反映する指標として、体温、脈拍、血圧といっ たバイタルサインへの影響が明確になれば、ホルモン投与量の個体毎の至適用 量の迅速な把握と適切な用量調節に繋がりうるからである。ヒトにおける前方視的検討は、その稀少性と緊急性から困難であるため、今回
3
我々は、粘液水腫性昏睡と同様の病態を呈するモデルとして
2016
年に大野らが 作成・報告したウサギ粘液水腫性昏睡モデル11)
を治療実験に応用することとし た。このモデルは顕微鏡鏡下手術で甲状腺を全摘出することで作成し、2
週後で 重症甲状腺機能低下状態に至り、4~15
週後には粘液水腫心による心不全で死亡 する。このモデル治療実験に供するために、麻酔薬投与法に検討を加えて用いる こととした。使用する甲状腺ホルモン製剤と投与法としては、
T3
を単回静注する方法とし た。現在の臨床現場では簡便性や普及度の点からT4
が好んで用いられ補助的使 用に留まっているT3
であるが1),7)
、今回の検討の様に、ホルモンの直接的作用 を見る指標を見出しつつその用量や時間反応を検討する上では、実効ホルモン の使用が適切と考えた。本研究の目的は、ウサギ粘液水腫性昏睡モデルを基に、長時間観察、測定や採 血が可能な治療実験モデルを確立した上で、即効性に優れた
T3
の単回静注が粘 液水腫状態にあるウサギのバイタルサイン(
脈拍・体温・血圧)
に及ぼす影響を分 析することにある。4
第2章 対象と方法
第1節 間欠的麻酔薬筋注による長時間観察
1.
麻酔薬の選択大野らが報告したウサギ粘液水腫モデル作成での麻酔は単回の筋注投与だっ た
11)
。今回の治療実験においては、本疾患が緊急症1)
であることから、T3 投与 開始から数時間の反応を見る事を想定し、また、投与するT3
の効果発現時間か ら5-6)
、少なくとも3
時間の連続観察に耐える麻酔が必要となった。一般的には長時間の麻酔には吸入麻酔を用いる場合が多いが、吸入麻酔の場 合には個体に応じた麻酔濃度の調整が必要なこと、気管挿管が難しいといった 難点がある
12)
。一方、筋肉注射は、投与量の均一化が可能であり、気管内挿管無く
13)
麻酔維 持が可能とする報告がある。麻酔時間に関しては、マウスへの反復投与で、初回 投与量の50%
で55
分や、25%
で53
分の麻酔時間が得られたと報告14)
もあるが、ウサギに対する麻酔時間は不明
15)
であり、本研究でも用いるウサギ粘液水腫性 昏睡モデルのような低代謝状態での確認が必要となった。今回、大野らの
11)
のウサギ粘液水腫性昏睡モデルおける麻酔方法を踏襲し、ケタミンとキシラジンを用いた間欠的筋注法を行い、既報と同様に麻酔薬追加 筋注
1
回あたり1
時間の麻酔が得られるか、また、その際のバイタルサインへ の影響を検証し、実験モデルを確立する予備検討を行った。5
2.
使用薬剤ケタミン(ケタラール
®
筋注用500mg/10mL
;第一三共、東京)とキシラジン(セラクタール®2%注射液
500mg/25mL;バイエル薬品、東京)を用いた。
3.
麻酔薬の用量設定と追加投与のタイミング初回量、ケタミン
35mg/kg +
キシラジン5mg/kg
を27
ゲージ針でウサギの左 臀部に筋注した16)
。追加量は、初回量の
50%
群(ケタミン17.5mg/kg
とキシラジン2.5mg/kg)
と、25%群(ケタミン 8.75mg/kg
とキシラジン1.25mg/kg)の 2
群14)
、各群6
羽を設定 し、27ゲージ針で左臀部に筋注した。麻酔薬の追加は、初回投与後の
1
時間、2
時間、3
時間の1時間毎に計3
回に 行った。4.
麻酔薬の効果判定痛み刺激を加えた際の逃避反射の有無を観察し、麻酔が得られているかを評 価した
17)
。5.
動物と飼育大野らの方法
11)
に従い、ニュージーランドホワイトウサギ(雄性、SPF
、体重2.5~3.0kg)を実験に用いた(日本 SLC、静岡)
。幅50cm
・奥行55cm・高さ 35cm
のステンレス製ケージで飼育し、市販の餌(ウサギの餌
CR-3;日本クレア、東
6
京)と水を自由に摂取できるようにした。室温は
25℃を保ち、室内照明は午後 7
時から午前5
時まで消灯し、日内リズムを維持した。手術前に少なくとも5
日 間、新しい生活リズムと環境に慣れさせた。6.
ウサギ粘液水腫性昏睡モデルの作成大野らの報告
11)
に従うためここでは簡単に述べる。ウサギを麻酔導入後に頸 部を正中切開し、右頸静脈から採血した。続いて気管と甲状腺を露出し、甲状腺 右葉、左葉、峡部を全摘した。甲状腺の摘出には、手術用顕微鏡(OPMI pico i
; カールツァイス、オーバーコッヘン、ドイツ)及び電気メス(本体バイポーラ、設定出力
60 W;ERBE ICC 200、鉗子:ERBE No. 20195-038;アムコ、東京)を
用い、摘出後に閉創して外科処置を終了した。
モデル作成の確認として甲状腺全摘前と全摘後
2
週間とで血中T3
濃度を比較 し(1.03±0.13 ng/mL vs 0.26±0.07 ng/mL, p=0.0001)、重度の甲状腺機能低下症に至 っている事を確認した(
図2)
。7.
採血とバイタルサイン測定前項モデル、作成
2
週間後に実験に供した。麻酔薬の筋注後、後肢の足反射が 消失してから、ウサギを背臥位で手術台に固定した。3Fr カテーテル(3Fr 栄養 カテーテル 43003、ポリ塩化ビニル製、アトム、東京)の後端を切断し全長40mm
とし、
PinPort
ポート部(PNP3F22R
;プライムテック株式会社、東京)を接続し中心静脈カテーテルを作成し、右内頸静脈に先端から
10cm
挿入し固定した。7
PinPort
インジェクタ部(PNP3M;プライムテック株式会社、東京)を薬剤注入と採血を行う部分として
PinPort
ポート部と接続し、カテーテル閉塞防止のため シリンジポンプ(TE-513;テルモ、東京)を用いて生理食塩水を10mL/時で点滴
した。外科処置は全て清潔操作で行った。採血は、麻酔薬追加投与
1
回目を0
時間として、0
時間、1
時間、2
時間、3
時 間の、1時間毎に計4
回行った。採血はカテーテル中の生理食塩水を十分に排 除するためカテーテル内腔分0.3mL
を含む3mL
を採取し、カテーテル内腔を血 液で満たした後に、シリンジを交換して1
回あたり2mL
採取し、総採血量と同 量の生理食塩水5mL
を静注した。採血した血液を速やかに採血管に分注し、卓 上小型遠心機(クボタ2420;久保田商事、東京)を用いて、室温・2000G・10
分 間の遠心分離を行い、血清を-80℃で保存した。血清
T3
濃度を電気化学発光免疫測定法(エクルーシスT3
、エクルーシス ク リーンセルM、エクルーシス
プロセルM;ロシュ・ダイアグノスティックス、
東京)により測定した。血中
T3
濃度の測定限界は0.2ng/mL
である。バイタルサイン測定も採血と同様に、
0
時間、1
時間、2
時間、3
時間の、1時 間毎に計4
回行った。実験中の室温は25(±1)℃
、35
℃に設定したヒーターマッ ト(KN-475-3-35;夏目製作所、東京)を用いて保温した。デジタル式直腸温計(挿入型サーミスタ温度プローブ
401J
;日本光電、東京)を直腸に挿入し、深部 体温を連続的に計測した。血圧は40mm
幅のアニマルカフ(YP-992P
;日本光電、東京)を、足関節近傍の後脛骨動脈周囲に巻き、モニター(BSM-3592;日本光電、
東京)に接続し、収縮期・拡張期血圧を非侵襲的に測定した。
3
本の針電極を左8
右前肢と左後肢に刺入し、動物用モニタ(BSM-3592;日本光電、東京)を用い て脈拍と心電図
(
第Ⅱ誘導、感度8
倍)
を記録した(
図3)
。8.
統計解析測定値は平均値±標準偏差で示した。測定感度以下の値は、血清
T3
値では0.2ng/mL
として計算した。P
値は、麻酔薬追加投与1
回目を0
時間として、0時間、1時間、2時間、3時 間の測定値の平均を分散分析により比較した。また、各測定値の経時的変化を、反復測定(対応のある因子)による一元配置の分散分析と多重比較(Bonferroni 法)により解析した。全ての検定は両側検定で行い、p<0.05 を統計学的有意と し、統計解析は
SPSS for Windows
(version21
、IBM
、ニューヨーク、アメリカ合 衆国)を用いた。9.
倫理面への配慮本研究は、米国国立保健研究所編集の「実験動物の管理と使用に関する指針」、 日本学術会議編集の「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」および防衛 医科大学校動物実験規則を順守し、防衛医科大学校動物実験倫理委員会で承認 されている(承認日:2018年
9
月25
日、承認番号:18063)。9
第2節
T3
単回静注のバイタルサインへの影響1
. 甲状腺ホルモンの選択と投与法甲状腺ホルモンには、プロホルモン:T4と実効ホルモン:T3があり、それぞ れの効果発現時間は、T4で
14
時間、T3で2~3
時間と報告されている3-4)
。甲 状腺ホルモンへの直接反応を調べるため、実効ホルモンT3
を選択した。確実か つ速やかな投与を達成するため、T3
溶液を作成し、第1
節で確立した麻酔法を 用いた実験モデルに対し、単回静注投与で実験した。2.T3
の調整法及び投与量設定静注用の
T3
は、3,3’.5-Triiodo-L-thyronine(SIGMA-Aldrich、セントルイス、ア メリカ合衆国)10mg
を、0.05mol/L
水酸化ナトリウム液(
水酸化ナトリウム(
和光 純薬、東京)0.23gを注射用水(大塚製薬、東京)100mlに溶解)で溶解し、0.1mol/L グリシン液(グリシン(和光純薬、東京)0.75g、塩化ナトリウム(和光純薬、東 京)0.58g
を注射用水100ml
で溶解)
を混合したT3
溶液(50μg/mL)
を準備する18)
。T3
投与量として、大量群、少量群、対照群の3
群を設定し、各群6
羽を実験 に供した。投与量設定として、ガイドラインを参考にし1)3)
、ヒトでの最大量150μg/日と最少量 10μg/日を採用し、それぞれを大量群、少量群での用量とし、
ウサギの用量に換算した。
ヒトからウサギへの用量換算において、ヒト等価用量の計算式を用いた
19)
。ウサギ用量
(μg/kg) =
ヒト用量(μg/kg) ÷ (
ウサギ体重(kg) ヒト体重(kg) )
0.33
10
ヒト体重を
60kg、ウサギ体重を 3kg
と設定すると、ウサギ用量(mg/kg)はヒト 用量(mg/kg)の2.7
倍となるため、ヒト大量(150μg:2.5μg/kg)、ヒト少量(10μg:0.17μg/kg)
は、それぞれウサギ換算で、大量群(20.2μg
:6.72μg/kg
)、少量群(1.34μg
:0.45μg/kg)となる。対照群は T3
溶液の溶媒を用いた。3. T3
単回静注、バイタルサイン測定、採血第
1
節と同様に、麻酔し手術台に固定し頸静脈カテーテルを挿入したウサギ に、初回麻酔から1
時間後にT3
投与実験を行った。T3
投与時を時間0
とし、それぞれの群に対応するT3
溶液または溶媒を投与 した。麻酔薬の追加投与は第1
節と同様に、初回投与の1
時間後、2時間後、3 時間後の計3
回行った。バイタルサイン測定、採血は、第1
節と同様に行った(
図6)
。4.
統計解析統計解析は
SPSS for Windows
(version21
、IBM
、ニューヨーク、アメリカ合衆 国)を用いた。数値は平均値±標準偏差で示し、p<0.05 を統計学的有意とした。測定感度以下の値は、血清
T3
値では0.2ng/mL
として計算した。p
値は、それぞ れの群における各測定の投与前、投与1時間後、2
時間後、投与後3
時間の経時 的変化を、反復測定(対応のある因子)による一元配置の分散分析と多重比較(Bonferroni法)により解析した。全ての検定は両側検定で行い、
p<0.05
を統計11
学的有意とし、統計解析は
SPSS for Windows(version21、IBM、ニューヨーク、
アメリカ合衆国)を用いた。
12
第
3
章 結果第
1
節 間欠的麻酔薬筋注による長時間観察1.
用量毎の麻酔効果25%群では、追加麻酔 1
回目で十分な麻酔が得られず、痛み刺激で覚醒し、追加投与が困難な程の動きが見られる事もあり、以後の検討は中断した。
50%群では、追加麻酔後 1
時間中に足反射の消失が維持された。3回追加麻酔し、その間で死亡する個体は認めなかった。
2.
バイタルサインへの影響50%群の 6
羽で、1 回の麻酔薬追加筋注で1
時間程度の安定した鎮静が得られ、
3
回投与し合計3
時間の安定した鎮静が得られた。本麻酔法により測定と採 血を行った。脈拍、体温、収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧の経時的変化を、表
2、図 6
で示す。体温は、追加麻酔前から
1
時間後の低下傾向を認め(37.1±1.4℃ vs 36.7±1.5℃,p=0.063)
、追加麻酔前から2
時間後の有意差を伴う低下を認めた(37.1±1.4℃ vs
36.3±1.3℃, p<0.005)
。脈拍は、追加麻酔前から1
時間後の上昇傾向が見られ(158.7±18.0
回/分vs 162.3±23.3
回/分, p=0.496)たが、徐々に低下し、2
時間後では 追 加麻 酔前より低下 傾 向 が 見 られ た(158.7±18.0 回/分 vs 149.0±22.6
回/分,
p=0.455)
。3
時間後は2
時間後と比べ変化は認めなかった(149.0±22.6
回/
分vs
148.2±14.3
回/分, p=0.853)。13
収 縮期 血圧は 、追加麻酔前 か ら
1
時間 後 で有意差 を伴 う 低下を認めた(66.5±7.5mmHg vs 57.8±10.2mmHg, p=0.047)
。2
時 間 後(66.5±7.5mmHg vs 58.2±10.2mmHg, p=0.087)、3
時間後(66.5±7.5mmHg vs 59.5±9.9mmHg, p=0.329)で は変化や有意差は認めなかった。拡張期血圧は、追加麻酔前から2
時間後まで 低下傾向を認め(27.2±11.8mmHg vs 18.5±3.6mmHg, p=0.190)
、2
時間後から3
時間 後には増加傾向を認めた(18.5±3.6mmHg vs 23.5±4.2mmHg, p=0.520)
。平均血圧は、拡張期血圧と同様、追加麻酔前から
2
時間後まで低下傾向を認め(40.3±9.0mmHgvs 31.7±5.4mmHg, p=0.563)
、2 時間後から3
時間後には増加傾向を認めた(31.7±5.4mmHg vs 35.5±3.3mmHg, p=0.063)
。3
回の追加投与を行い合計3
時間観察したが、その間に死亡は認めなかった。体温では有意な低下傾向は認め、その点に留意して
T3
単回静注実験に供した。14
第
2
節T3
単回静注のバイタルサインへの影響1. T3
投与前後での、血中T3
濃度及びバイタルサインT3
投与前(時間0)と 1
時間後、2時間後、3時間後での血圧・脈拍・体温と血 液検査値の経時的変化を表3、図 7
に示す。血中
T3
濃度は、大量群の投与前及び1
時間後、2
時間後、3
時間後でそれぞ れ有意差のある著明な上昇を認めた(0.26±0.04 ng/mL, 33.52±24.15 ng/mL,p=0.024, 16.56±11.14ng/mL,p=0.019, 12.00±9.65 ng/mL,p=0.031)。少量群では投与前と 1
時 間後に上昇を認めた(0.27±0.02 ng/mL vs 0.90±0.54 ng/mL, p=0.077)。2時間後で(0.54±0.28 ng/mL)
、3
時間後で(0.45±0.18 ng/mL)
と減少傾向を認め、既報9)
の正常 時T3
血中濃度(1.05±0.25 ng/mL)を下回った。対照群では投与前、1
時間後、2
時 間後、3 時間後で血中濃度の変化を認めなかった(0.26±0.08 ng/mL, 0.27±0.08ng/mL, 0.28±0.08 ng/mL, 0.28±0.08 ng/mL)
。体温では、大量群の投与前から投与
3
時間後まで、傾向や有意差のある変化 は 認 め な か っ た(37.2±0.7℃, 37.1℃±0.5℃, p=0.822, 37.1℃±0.4℃, p=0.751,
37.0℃±0.5℃, p=0.420)
。少量群では、投与前と比べ1
時間後から有意差のある低下を認め
(38.0±0.5℃ vs 37.5℃±0.6℃, p=0.012)
、3
時間後まで有意な低下を認めた(38.0±0.5℃ vs 36.9℃±0.5℃, p=0.05)。
脈拍では、大量群は、投与前と
1
時間後で上昇傾向を認め(148.3±18.7
回/
分vs
157.0±21.4
回/
分p=0.517)
、2
時間後、3
時間では傾向や有意差のある変化は認め なかった(154.7±21.7回/分, 159.3±29.4回/分p=0.281)。少量群でも、投与前と 1
時 間後で上昇傾向を認め(129.3±8.1回/分vs 136.5±22.7
回/分p=0.547)、投与前と 2
15
時間後で有意差のある上昇を認めた(129.3±8.1回/分
vs 150.2±20.0
回/分p=0.041)。
収縮期血圧で、大量群は、麻酔前と
1
時間後、2
時間後で傾向や有意差のある 変化は認めず(59.0±13.3mmHg , 58.2±7.2mmHg: p=0.916, 55.7±8.9mmHg:p=0.671)、3
時間後で低下傾向を認めた(59.0±13.3mmHg vs 50.7±10.2mmHg:p=0.056)。少量 群では、麻酔前と2
時間後で有意差のある低下を認めた(74.7±8.6mmHg vs 55.5±10.2mmHg:p=0.023
)。拡張期血圧で、大量群は、投与前及び
1
時間後、2時間後、3時間後で明らか な 傾 向 や 有 意 差 は 認 め な か っ た(18.3±8.7mmHg , 21.0±7.5mmHg: p=0.659, 18.8±4.6mmHg:p=0.874, 22.5±9.8mmHg:p=0.481)
。少量群では、投与前から2
時間 後まで低下傾向を認め(31.2±10.6mmHg vs 18.8±4.6mmHg:p=0.059)、2時間後か ら3
時 間 後 の 間 で は 上 昇 傾 向 を 認 め た(18.8±4.6mmHg vs 21.8±5.3mmHg:p=0.923)
。平均血圧で、大量群は、投与前及び
1
時間後、2時間後、3時間後で明らかな 傾 向 や 有 意 差 は 認 め な か っ た(31.9±7.4mmHg , 33.4±5.5mmHg: p=0.764, 31.1±5.7mmHg:p=0.789, 31.9±6.1mmHg:p=1.000)
。少量群では、収縮期血圧と同様 に 、 投 与 前 か ら2
時 間 後 で 有 意 差 の あ る 低 下 を 認 め(45.7±9.6mmHg vs 29.3±7.1mmHg:p=0.042)、 2
時 間 後 か ら3
時 間 後 の 間 で 上 昇 傾 向 を 認 め た(29.3±7.1mmHg g vs 33.4±4.4mmHg:p=0.664)
。2. T3
投与前と投与後とで比較したバイタルサインの変化量(Δ)個体差が大きいため、投与前
(
時間0)
をベースラインとした、1
時間後、2
時間16
後、3時間後での変化量(Δ)を検討した(表
4、図 8)
。Δ
体温で、大量群は前述の通り、投与1
時間後から投与3
時間後まで、傾向や 有意差のある変化は認めなかった (−0.1±0.6℃ p=0.822, −0.1℃±0.6℃ p=0.751,−0.2℃±0.5℃, p=0.420)。少量群では、1
時間後から有意差のある低下を認めた(−0.4±0.2℃, p=0.012)
。Δ
脈拍では、大量群は、投与前と1
時間後から上昇傾向を認め(8.7±10.2
回/
分p=0.517)、 2
時間後、3
時間では傾向や有意差のある変化は認めなかった(6.3±11.9回/分 p=0.571, 11.0±19.8回/分
p=0.281)。少量群も、前述と同様に、 1
時間後から 上昇傾向を認め(7.2±19.8
回/
分p=0.547)
、2
時間後で有意差のある上昇を認めた(20.8±18.1
回/分p=0.041)。
Δ
収縮期血圧で、大量群は、投与前から3
時間後まで低下傾向を認める(−8.3±7.5mmHg:p=0.056)
。少量群では、投与前から2
時間後までに有意差のある低下を認めた(−19.2±13.2 , p=0.023)。
Δ 拡張期血圧で、大量群は、投与前と
1
時間後、2 時間後、3 時間後で上昇傾向 を認めた(2.7±12.7mmHg p=0.659, 0.5±6.7mmHg p=0.874, 4.2±12.2mmHg:p=0.481)
。17
第
4
章 考察ウサギでの長時間観察のための麻酔は、麻酔偶発関連死亡率の高さに加え、吸 入麻酔での気管挿管の難しさや呼吸抑制が挙げられている。また、麻酔濃度依存 性の血圧低下の報告があることも管理の難しさの一因に挙げられる
12)
。一方、ケタミンやキシラジン等を用いた筋注麻酔は、用量調整は体重での計算となり
16)
、一定条件で麻酔薬投与が可能だが、長時間麻酔に関する検討は少ない。我々は、吸入麻酔の難しさから筋肉注射の間欠投与方法で麻酔を維持する事 を検討したが、ウサギ粘液水腫性昏睡モデルのような代謝が低下したウサギに 対して、ケタミンとキシラジンの混合筋注では、初回投与の
25%
量では麻酔の 効果が得られず、覚醒し痛みのため激しい体動を認め、25%量での追及は断念し
た。50%量の間欠的筋注では、1回あたり1
時間の麻酔が得られ、3回筋注し合 計3
時間の観察時間を得られた。また、既報14)
と異なり、筋肉注射であれば、ウサギでの死亡は、代謝が低下していたとしても見られなかった。だが、バイタ ルサインの大きな影響として、体温低下が見られることから、実験に支障のない 範囲で、保温等の対策を要する事を確認した。
粘液水腫性昏睡の病態において、未治療または管理不十分な甲状腺機能低下 症を背景に、寒冷や感染症や薬剤等の因子が重層し、低体温性脳症、
CO2
ナル コーシス、低Na
血症性脳症といった中枢神経機能障害を来すため1)
、意識レベ ル等の中枢神経機能の改善に先立ち、体温、脈拍、血圧等が改善すると考えた。体温と脈拍とでは上昇効果が認められた。一方、血圧に関しては、時間的に用
18
量的にも一定の傾向が見られなかった。この反応性の差異の原因を、血圧は心拍 出量や末梢血管抵抗などの、甲状腺ホルモン以外に多因子性に決定される
20)
一 方で、脈拍と体温は、甲状腺ホルモンが調整する代謝状態に依存して決まる要素21 )
が比較的大きいためと考えた。体温と脈拍で、投与した用量と反応の間にやや異なる傾向がある事も考えら れたが、本研究の用量設定からは用量反応曲線が描けるわけで無く、更なる検討 が必要である。
体温と脈拍の、
1
時間という反応の速さも注目した。通常、甲状腺ホルモンはT4
で甲状腺から分泌され、T3
に転換された後に、9
シスレチノイン酸(9cRA)
と ヘテロ2
量体を形成し、核内の甲状腺ホルモン受容体に結合し、DNA転写を介 した作用が主経路のため、発現まで遅い(3時間以上)と言われている22-23)
が、そ れ以外の発現が速い、膜受容体やPI3K/Akt
等を介した経路の存在を示唆する報 告も少なからずある23-25)
。本研究で見られた脈拍や体温の変化の早さから、前述 の主経路以外の作用経路の存在を示唆する結果であった。以上から、静注投与された
T3
は、核内受容体を介した転写因子としての作用 のみでは説明できない迅速な反応で、体温や脈拍に影響しており、実臨床で治療 にあたる場合、T3 投与後の経過を見る上で、大いに示唆に富む現象と考える。確実に効く筈の製剤・ルートが選択されている場合、投与1時間後の変化を判定 材料にして用量調整に繋げるべきだからである。
最後に、本研究の限界について考察する。本研究は動物実験であり、麻酔を行
19
うため動物の意識レベル評価が出来ない。また、採血や測定に必須の麻酔の影響 が避けられない事があり、特に今回の麻酔法では体温低下が見られた。また、ウ サギとヒトの間での甲状腺ホルモンへの反応性の種差や、甲状腺全摘後のバイ タルサインでウサギ間の個体差が大きいことも見られた。投薬や採血上の制限 として、採血や薬剤投与ルートを分ける事も考慮したが、シングルルーメンかダ ブルルーメンのカテーテルを選択する事も検討した際に、ウサギの総頸静脈に 挿入しうる細いダブルルーメンカテーテルでは溶血や閉塞が起こったため、本 研究ではシングルルーメンを
1
本右頸静脈に挿入する事を選択した。呼吸状態 の評価では、被毛や静脈圧迫の影響から、今回測定用に準備したSpO2
センサー(ディスポオキシプローブ使用)での測定は不安定であり十分なデータが集め られなかった。動脈血採血による測定では、動脈収縮の問題から頻回測定が難し く、動脈ライン設置は更なる侵襲ストレスを与えるため、今回の研究では追求し なかった。
今回、脈拍のような用量による反応差が見られない指標があったが、これは、
今後更に投与用量を細かく設定して、用量反応曲線のどの部分を観ているのか の詳細な検討を行うべき事項と考える。なお、投与後の
T3
血中濃度は、少量で あっても投与1
時間後で全摘前の血中濃度まで上昇することが認められたが、2
時間後以降は速やかな濃度減少も認められ、T3 だけで血中濃度を常に基準内に 維持するには単回投与よりは頻回もしくは持続投与の方が望ましい事が再確認 できた。20
第
5
章 結論既報のウサギ粘液水腫モデルにケタミンとキシラジンを用いた間欠的麻酔薬 筋注を施すことで、
3
時間観察しうる治療モデルを確立した。実効ホルモン
T3
の静注は、転写因子としての作用機序より速い時間経過で、体温と脈拍に効果を及ぼした。
粘液水腫性昏睡の治療に必須の甲状腺ホルモン投与においては、早期(投与
1
時間後)から脈拍・体温の変化を注視し、迅速に反応域を掴んで容量調整する事 が重要な可能性がある。21
謝辞
本研究を行うにあたって御指導・御鞭撻を賜りました防衛医科大学校総合臨 床部、田中祐司教授に謹んで感謝申し上げます。
動物実験の実施にあたって、多大なる御指導・御支援をいただきました、防衛 医科大学校防衛医学研究センター特殊環境衛生研究部門 藤田真敬教授・1等空 佐、および同部門 白石安永助教・2等陸佐、総合臨床部 大野洋介准教授・2等 陸佐に深く感謝申し上げます。
本研究は、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「ホルモン 受容機構異常に関する調査研究」からの助成金により実施致しております。関係 各位に御礼申し上げます。
22
略語一覧
DPC:Diagnosis Procedure Combination (診断群分類包括評価) HED
:human equivalent dose (
ヒト等価用量)
PI3K:phosphatidylinositol 3-kinase(ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ) SPF:Specific Pathogen Free(特定の病原菌が存在しない実験動物)
SpO2:経皮的動脈血酸素飽和度
T3
:L-triiodothyronine
(L-
トリヨードサイロニン)T4:L-thyroxine(L-サイロキシン)
9cRA:9-cis retinoic acid(9
シスレチノイン酸)23
引用文献
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27
甲状腺機能低下症
心嚢液貯留
↑↓
心拍出量低下
低換気 代謝低下
循環不全
高 CO 2 血症 低 O 2 血症
アシドーシス 低体温症 低Na 血症
中枢神経機能不全 ( 粘液水腫性昏睡 )
脳神経 疾患
薬剤 感染 呼吸器
疾患 心
疾患
寒冷
粘液水腫性昏睡の診断基準と治療方針
1)
より引用改変 図1.
粘液水腫が昏睡に至る病態生理矢印の太さが病態形成上の重要性や頻度を示す
病態形成には、ある程度長期の機能低下症の持続が必要と考えられる 原発性機能低下症と中枢性機能低下とでは、病像が若干異なる
28
図
2.ウサギ粘液水腫モデルの作成と確認
A.
甲状腺全摘の術中所見気管全面に約
15mm
大の扁平な組織として存在する(破線内)B.
甲状腺全摘前後の血中T3
濃度の変化(n=6)
全摘2
週後で著明な低下を認める(1.03±0.13 ng/mL vs 0.26±0.07 ng/mL, p<0.0001 )
0 0.5 1 1.5
全摘前
2週後
血中
T3
濃度(n g/m L)
5mm
A
p<0.05
B
尾側 頭側
左側 右側
29
A.
大量群投与前(136) 1時間後(163)
2
時間後(150)3
時間後(151)B.
少量群投与前(121)
1
時間後(149)2
時間後(138) 3時間後(130)C.
対照群投与前(132)
1
時間後(134)2
時間後(135)3
時間後(132)図
3.
各群におけるT3
投与直前及び投与1
~3
時間後の心電図変化Ⅱ誘導、感度×8
T3
投与前、1時間後、2時間後、3時間後の心電図を示す(脈拍数 回/分)A.
大量群、B.
少量群、C.
対照群30
ウサギ 粘液 水腫 性昏 睡 モデ ル作 成
頚静 脈 カテ ー テル 留置 麻酔
(初 回投 与)
採血 計測
-2週 -1時間
0 1時間 2時間 3時間
麻酔
(追 加)
採血 計測
麻酔
( 追加
)
採血 計測
麻酔
( 追加
) 採血
計測
麻酔量 ケタミン
(mg/kg)
キシラジン
(mg/kg)
初回
35 5
追加
50% 17.5 2.5
25% 8.75 1.25
図
4.
ウサギ粘液水腫性昏睡モデルを用いた追加麻酔の検証 ウサギ粘液水腫性昏睡モデル作成2
週後に実施麻酔薬の追加投与は、初回投与の
1
時間後、2時間後、3時間後に行った31
図
5.
ケタミン+
キシラジンの間欠的筋注投与による経時的変化A.
体温、B. 脈拍、C. 収縮期血圧、D. 拡張期血圧、E. 平均血圧 各測定の0
時間、1時間、2
時間、3時間の経時的変化を、反復測定(対 応のある因子)による一元配置の分散分析と多重比較(Bonferroni
法)により解析した (n=6)
*:P
< 0.05(0時間と1
時間後の比較)†:P
< 0.05(0時間と2
時間後の比較)§
:P
<0.05
(0
時間と3
時間後の比較)34 36 38 40
0 1 2 3
体温
( ℃ )
時間(hr)
120 140 160 180 200
0 1 2 3
脈拍
(
回/
分)
時間
(hr)
§
40 50 60 70 80
0 1 2 3
収縮期血圧
(m m H g)
時間
(hr)
0 10 20 30 40
0 1 2 3
拡張期血圧
(m m H g)
時間(hr)
C D
A
20 30 40 50 60
0 1 2 3
平均血圧
(m m H g)
時間
(hr)
E B
† §
32
ウサ ギ 粘液 水腫 性 昏睡 モデ ル作
成 頚
静 脈 カテ ーテ ル 留置 麻酔
( 初回 投 与)
採血 計測
-2週 -1時間
0 1時間 2時間 3時間
図1. ウサギ粘液水腫性昏睡モデルを用いた甲状腺ホルモン(T3)静注 ウサギ粘液水腫性昏睡モデル作成2週後、甲状腺ホルモン(T3)を
単回静脈投与した。用量はヒトにおけるヒト等価用量(Human equivalent dose) の計算式から換算した。
麻酔
(追 加
)
採血 計測
麻酔
(追 加
)
採血 計測
麻酔
(追 加
)
採血 計測
群
T3(μg/kg)
大量6.72
少量0.45
対照0
単回 静注
図
6
.ウサギの甲状腺ホルモン投与実験の時程および測定・採血 初回麻酔1
時間後にT3
を単回静注した(時間0)
麻酔薬の追加筋注は、採血や測定後に実施
T3
投与量は大量群:6.72μg/kg
、少量群:0.45μg/kg
、対照群:0μg/kg(T3
溶 媒のみ)とし(各群6
羽)、生理食塩水にT3
溶液を混合し合計5mL
にして 頸静脈カテ−
テルより投与した麻酔量は以下の量を左臀部に筋注した
初回:ケタミン(35mg/kg)+キシラジン(5mg/kg) 追加:ケタミン
(17.5mg/kg)+
キシラジン(2.5mg/kg)
計測は脈拍、体温、血圧、心電図を測定した採血は各回
2mL
採取した33
図
7.
各群における血中T3
濃度と体温、脈拍、血圧(収縮期、拡張期、平均)の経時的変化
大量群、少量群、対照群の
3
群:各群6
羽A.
血中T3
濃度、B. 体温、C. 脈拍、D. 収縮期血圧E.
拡張期血圧、F. 平均血圧*、**
:P
<0.05
(0
時間と1
時間後の比較)†
、††
:P < 0.05(0時間と2
時間後の比較)§、§§
:P
<0.05
(0
時間と3
時間後の比較)*
、†
、§
:少量群、**
、††
、§§
:大量群0.1
1 10 100
0 1 2 3
血中総
T3(ng/ dL )
時間(hr)
34 36 38 40
0 1 2 3
体温
( ℃ )
時間(hr)
100 120 140 160 180 200
0 1 2 3
脈拍
(
回/
分)
時間(hr)
A B C
D E F
** 1. *
*
§
†† §§
†
40 50 60 70 80 90
0 1 2 3
収縮期血圧
(mmHg )
時間
(hr)
20 30 40 50 60
0 1 2 3
平均血圧
(m m H g)
時間(hr)
0
10 20 30 40 50
0 1 2 3
拡張期血圧
(m m H g)
時間(hr)
34
図
8.
各群における血中T3
濃度と体温、脈拍、血圧(収縮期、拡張期、平均) の投与前からの変化量大量群、少量群、対照群の
3
群:各群6
羽A. ΔT3、B.
Δ体温、C. Δ脈拍、D. Δ収縮期血圧E. Δ
拡張期血圧、F. Δ平均血圧*
、**
:P
<0.05
(0
時間と1
時間後の比較)†、††:P
< 0.05(0時間と2
時間後の比較)§、§§:P
< 0.05(0時間と3
時間後の比較)*
、†
、§
:少量群、**
、††
、§§
:大量群0 10 20 30 40 50 60
0 1 2 3
Δ T3 (ng /mL)
時間
(hr)
-2 -1 0 1
0 1 2 3
Δ
体温( ℃ )
時間
(hr)
-40 -20 0 20 40 60
0 1 2 3
Δ
脈拍(回/
分)時間
(hr)
-40 -20 0 20
0 1 2 3
Δ
収縮期血圧(mmH g)
時間
(hr)
-40 -30 -20 -10 0 10 20
0 1 2 3
Δ
拡張期血圧(mmH g)
時間
(hr)
-45 -30 -15 0 15
0 1 2 3
Δ
平均血圧(m m Hg)
時間
(hr)
A B C
D E F
†† §§ *
†
†
§
§
35
表1.粘液水腫性昏睡の治療指針 甲状腺ホルモン投与
T4
投与経鼻胃管より
L-T4 50~200μg/日
を投与し、意識障害が改善す るまで継続、あるいは翌日から50
~100μg/
日を投与する。T3
投与~50μg/日で
T4
との併用を考慮する 全身管理 酸素投与鼻カニュ−レで
0.5~1.0L/分より開始
重篤例では早期に気管内挿管下の人工呼吸管理を考慮 循環管理
中心静脈圧を測定しながら輸液量を調整
収縮期血圧
80mmHg
未満が続く場合は昇圧剤の投与を検討 低体温対策毛布や室温調整による保温(電気毛布等による加温は禁忌)
電解質異常
低
Na
血症の是正副腎皮質ホルモン投与 ヒドロコルチゾンを静脈投与
甲状腺ホルモン剤の投与に先行して、ヒドロコルチゾン
100
~300mg
を静注し、以後8
時間毎に100mg
を追加投与し、副腎不全が否定されるまで漸減継続する 誘因への対策 抗菌薬投与
誘因と考えられる薬剤の中止
粘液水腫性昏睡の診断基準と治療方針