秋草学園短期大学 紀要 34 号(2017年)
乳児を中心とした一時保育の保育環境と保育内容の一考察
榊 原 久 子
A study on the environment and curriculum of infant daycare
Hisako Sakakibara
幼児教育学科 非常勤講師
キーワード:一時預かり保育 保育内容 乳児保育 保育環境
第1章
第1節 はじめに
家庭や地域の子育て機能の低下化が課題になるとともに、在園・未就園に関わらず、保 育者に保護者への子育て支援の役割が求められるようになった。保育園や幼稚園等には、
その保持する資源(園庭・保育室・人・モノなど)並びに専門性を活かした子育てモデル がある。保護者は、そこに教育・保育の専門家としての期待を抱き、更に、保護者が持た ない子ども子育て・保育の専門性を持っていることを期待して子どもを預ける(高山 2014)。これまでも、0.1.2 歳児を中心とした未就園の子どもたちと、その家族に対しては、
地域の子育て支援として、子育てサークルや、ひろば、育児講座、子育て相談等、その内 容は多岐にわたる地域支援事業として展開されてきた。野呂・津田(2010)は、すべての 子育て家庭に支援を行うためには、ひろば型・交流型に加えて、預かり型の支援がセーフ ティネットとして重要であること。更に、子育て支援としておこなう「一時預かり事業(以 下、一時保育と表記)」が、子どもの発達支援、親子の関係支援、親の成長を支える支援 であり、子どもの最善の利益につなげる事業であることを提言している。核家族の進行や 地域連帯性の希薄化、晩婚晩産化に伴う身体的育児困難感の増加など、家族が抱える課題 に対応可能で、且つ子どもの健やかな育ちを保障する場として、一時保育はその必要性と 地域社会における子育て資源としてのポテンシャルを大きく抱えている。しかしながら、
一方で定型保育と比べて、一時保育の実施上の困難性として、多様な子どもへの非連続的 対応が求められること、つまり、保育者の専門性の高さや園全体のチームワーク体制等の 構築の必要性が挙げられている。この、一時保育を担当する保育士の専門性をどう担保す るかについては未だ整理されないまま実態が進んでいる状態がある。そこで、本研究にお いては、乳児を中心とした一時保育に取り組んでいる実践者の語りの中から、保育内容、
保育環境等の現状についての課題を抽出し、多様な実態を明らかにすることで、今後必要 とされる一時保育の質と必要とされる専門性について検討していくこととする。
第2節 子育ての現状と課題
核家族化が進み、育児技術の伝承もなく、乳幼児と関わる機会や経験もないまま親とな り、子育てと向き合わなければならない家族が増加している。晩婚・晩産化、ダブルケア(育 児と介護の両立)などライフスタイルの変化に伴う課題や、近親者も含めた子育てを支え てくれる人が身近に存在しないなどの課題が都市部では多く存在している。一方で、女性 は産後、ホルモンバランスが乱れ、身体的、精神的に不安定な状況に陥りやすくなるなど、
女性特有の産後の課題を抱えながら育児をスタートしている現状がある。併せて、昨今は 男性が育児休暇を取れるようになってきたとはいえ、実際は、まだまだ母親が育児の大部 分を負担しているという実状も働き方の再考も含めた社会的課題として浮上している。子 どもたちが健やかに育つための土台となる家族を形成できるようにするためには、働き方
秋草学園短期大学 紀要 34 号(2017年)
改革と同時に子育て世代を身近な地域で親身に支える仕組みを整備することは喫緊の課題 であろう。併せて、妊娠初期から子育て期において、それぞれの段階に対応した支援や、サー ビスの情報や助言が、子育て家族に伝わり理解されるよう、現状の支援の在り方を利用者 目線で再点検することが急務である。
これら現存する課題に対して、国は、『子ども・子育て支援新制度』を施行した。この 制度は、子育てを「量」と「質」の両面から社会全体で支えていこうとの取り組みである。
「量の拡充」においては、必要とするすべての家庭が利用できる支援を目指すために、子 どもの年齢や親の就労状況等、或いは就労の有無に左右されない多様な支援を要すること や、待機児童解消に向けた教育・保育の受け皿の増設等について明記されている。支援の
「質」においては、その向上により、子どもたちがより豊かに育っていけることを目的と して、幼稚園や保育所、認定こども園などでの職員の配置や処遇改善について明記してい る(内閣府 2015)。2017 年 6 月には「子育て世代包括支援センター」が法定化され、妊 娠期からの切れ目ない支援が各自治体で展開され始めている。これらはハイリスクに陥る 前に発見し、必要な支援を届けることで、子どもを安心して産み育てやすい社会的を構築 しようとするフィンランドの「ネウボラ政策」から学びを得た制度であり、誰もが安心し て子育てできる社会をつくろうとの意気込みである。
一方で、2017 年 8 月の全国児童相談所所長会議においては、最新の児童虐待通報数並 びに、近年の虐待発声案件の傾向が発表された(図―1)。虐待の通報件数は増加の途を辿 り、その内容としては、これまで着目されてきた「身体的虐待」から「心理的虐待」へと、
その傾向は変わりつつあることが示されている。また、低体重児の出生や、医療的ケア児 の増加など、子どもの健やかな育ちに対する多様な支援の枠組みも求められ始めている。
図-1
これら昨今の子育て事情を踏まえて榊原(2016)は、身近な支援者が不在な核家族世帯 が多い都市部において、一時保育室は保護者を支え、子どもの育ちを支える「地域子育て のインフラである」とし、一時保育は子どもが育つ場所である一方で、親が子どもの育ち を知ったり、気づいたり「親という立場で地域社会とのやり取りを学ぶ場である」として 一時保育の必要性を示している。
支えてくれる人が身近に存在しないなどの課題が都市部では多く存在している。一方で、
女性は産後、ホルモンバランスが乱れ、身体的、精神的に不安定な状況に陥りやすくなる など、女性特有の産後の課題を抱えながら育児をスタートしている現状がある。併せて、
昨今は男性が育児休暇を取れるようになってきたとはいえ、実際は、まだまだ母親が育児 の大部分を負担しているという実状も働き方の再考も含めた社会的課題として浮上してい る。子どもたちが健やかに育つための土台となる家族を形成できるようにするためには、
働き方改革と同時に子育て世代を身近な地域で親身に支える仕組みを整備することは喫緊 の課題であろう。併せて、妊娠初期から子育て期において、それぞれの段階に対応した支 援や、サービスの 情報や助言が、子育て家族に伝わり理解されるよう、現状の支援の在り 方を利用者目線で再点検することが急務である。
これら現存する課題に対して、国は、 『子ども・子育て支援新制度』を施行した。この制 度は、子育てを「量」と「質」の両面から社会全体で支えていこうとの取り組みである。 「量 の拡充」においては、必要とするすべての家庭が利用できる支援を目指すために、子ども の年齢や親の就労状況等、或いは就労の有無に左右されない多様な支援を要することや、
待機児童解消に向けた教育・保育の受け皿の増設等について明記されている。支援の「質」
においては、その向上により、子どもたちがより豊かに育っていけることを目的として、
幼稚園や保育所、認定こども園などでの職員の配置や処遇改善について明記している(内 閣府
2015) 。
2017年
6月には「子育て世代包括支援センター」が法定化され、妊娠期か らの切れ目ない支援が各自治体で展開され始めている。これらはハイリスクに陥る前に発 見し、必要な支援をとどけることで、子どもを安心して産み育てやすい社会的を構築しよ うとするフィンランドの「ネウボラ政策」から学びを得た制度であり、誰もが安心して子 育てできる社会をつくろうとの意気込みである。
一方で、
2017年
8月の全国児童相談所所長会議においては、最新の児童虐待通報数並び に、近年の虐待発声案件の傾向が発表された(図―
1) 。虐待の通報件数は増加の途を辿り、
その内容としては、これまで着目されてきた「身体的虐待」から「心理的虐待」へと、そ の傾向は変わりつつあることが示されている。この、低体重児の出生や、医療的ケア児の 増加など、子どもの健やかな育ちに対する多様な支援の枠組みが求められ始めている。
図―
1
これら昨今の子育て事情を踏まえて榊原(
2016)は、身近な支援者が不在な核家族世帯
第3節 子どもを預かる場(環境)としての保育の専門性
ここから、子どもを預かる環境としての保育の専門性を整理し、地域で子どもが育つ場 所としての可能性を先行研究から概観していく。
高山(2003)は、子どもを預かる環境には、安心感があり、遊び込める要素があり、保 健衛生面に配慮され、安全に配慮されているとの 4 つの要素が必要であるとしている。安 心感のある環境について高山は、3 歳未満の子どもにとって親と離れて過ごすということ は大きな不安を伴う。とりわけ 1 歳前後の子どもは、初めての人の中で安定した情緒で過 ごさせることは容易ではない。一時保育では、このような子どもの不安を充分に理解し、
子どもが安心して楽しく過ごせるような配慮が大事である。広い空間であっても「ここな ら安心できる」と思える落ちついた空間づくりの工夫が大切であるとしている。また、3 歳以下の子どもがじっくりと遊び込める環境については、遊びを暖かく見守る人がいるこ と。一つひとつの遊びの素材と道具が子どもの発達に合っていること。一人遊びや並行遊 びが保障される空間になっていることが重要であるとしている。1 歳半までの子どもは、
ほしいと思ったものに対してすぐに手を出す。2 歳の子どもは自分のものと人のものに区 別がつくようになるが、所有欲が出てくるため、おもちゃをすべて自分のものにしたがる。
このような年齢による発達の差異に配慮しながら保育者が関わり、環境設定をおこなって いくことで子どもが安心して遊び込める環境を作り出していくことが可能となる。また保 健衛生面に配慮された空間としては、乳児にとっては、何よりも心地よく安心して眠れる 場の確保が必要だとし、睡眠をとる場の配置での配慮や寝具の固さ、心地よさ、温度、照 明器具等への配慮が必要であるとしている。食事に関しては、アレルギーへの配慮は基よ り、子どもたちが落ちついて座って食事がとれるよう、おもちゃや絵本など食器以外のも のは、子どもの視覚に入るところから遠ざけるとの配慮も必要であるとしている。安全に 配慮された環境については、空間の安全性は、おもちゃの選択と配置、プログラムの内容、
人的配慮によって高めることが出来るとし、1 歳半頃までの子どもは自らの意思が未成熟 なため、環境の出す情報に対して無条件に反応してしまうことと、注意力が低く、運動能 力が未発達なために怪我も起こりやすいことから、このような特質に配慮して、予測でき る危険は排除して環境を作る必要があるとしている。
第4節 一時預かり保育の専門性とは
第 3 節を踏まえ、一時保育における専門性について整理していく。一時預かり保育は、
初めての場所、初めての人の中で過ごすことが多く、非連続的な通園であり、限られた空 間で不特定数の異年齢で過ごすという特徴をもっている。子育てのリフレッシュや、育児 困難・育児負担感の強まりからのレスパイト。冠婚葬祭や兄弟児の疾病入院等、一時保育 の利用理由は多岐多様に渡っている。一時保育を利用した母親の意識調査をおこなった 松岡、櫻田(2004)によると、一時保育を利用している母親の家族構成の 85%が核家族、
一人親家族であるとし、一時保育を利用する以前に子どもを他者に預けた経験のない母親
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が 6 割に至るような現況が明らかになっている。利用後の満足感は 9 割が満足と回答して おり、「精神的なゆとりが持てるようになった」「育児不安などは保育園の先生とお話しす ることで気が楽になることがある」など、一時保育は母親にとって、有効な子育て支援に なっていることも明らかにされている。更に、「(子どもの)意欲が出てきた」「言葉が発 達した」等、利用後に子どもの成長発達が促されている変化が多く見られるなど、同世代 の子ども同士が遊ぶ機会や場に乏しい地域の母子にとっては、子どもが集団の中で経験を 積む場所として、その有効性が示されている。このように、特に就園前の在宅子育て家庭 に向けた子育て支援としてニーズの高まりがある一時保育ではあるが「一時的な保育」で あるがゆえの保育内容・環境的課題は多い。松岡・民秋(1999)は、一時保育の保育形態 は専用の保育室の有無、専用保育士の有無、行事への参加などが園によって異なっている ことを指摘している。それらを踏まえ、一時保育専用の保育室を設けることで「保育中に にこやかにしている」「ぐっすり眠る」など、子どもの情緒の安定が図られるとし、保育 内容については、一時保育独自のプログラムを導入することにより「元気に園内を走り回 る」、「子どもが安定して過ごす姿がみられる」など、保育者の持つ専門性を活かした保育 内容や環境構成の再考・実践によって、子どもが健やかに育つ場としての保証をおこなっ ていることを調査から明らかにしている。杤尾・迫田ら(1999)は、一時保育によって、
母親の養育支援と同時に、子育て環境の健全化、児童の健全育成が図られていることを示 しつつ、子どもたちが大なり、小なり、養育者の不安定さを背負って保育所に預けられる こととし、このような子どもたちに接していく保育者は、家庭的、社会的背景を十分理解 した上で、子どもたちが安心して楽しい時間を過ごせるような保育環境の設定と遊びの保 証に努めることが必要であることを説いている。
第2章 調査研究報告
第1節 研究目的
これまでの調査・研究を踏まえ、本研究では、一時保育を担う保育が、保育所が持つ乳 児保育の専門性をどのように一時保育を通しての家庭支援に繋げているのか。また、その 一時保育の中でどのような課題を感じ、その課題を解決するために保育内容・保育環境に どのような視点を抱いているのかを、一時保育を担う保育者へのインタビュー調査を元に 一時預かり保育の現状と課題を整理していく。
第2節 調査対象・調査方法
2016 年 8 月~ 11 月に実施。埼玉県・東京都で実施する保育所内一時保育・独立型一時 保育・子育て支援拠点併設型一時保育・出張型一時保育を担う保育士、合計 10 名に、ど のようなねらい・目的・配慮をもって保育環境を構成しているかの半構造的インタビュー を行った。並行して、1 保育事業所毎に 1 時間程度の一時保育の参与観察を行い、保育者
の子どもに持つ意識・保育環境の特徴・保護者への意識・保育者としての心構えについて インタビュー調査を実施した(図-2)
図- 2
場所 開設日 開設時間 定員 担当者
拠 点 併設型
W市子育て
支援センター 週6日 7:30 ~ 18:00 20 保育士 ひろば
併設型
K区NPO
子育てひろば 週6日 10:00 ~ 16:00 5 保育士 保育園
併設型 O区認可保育園 週6日 8:30 ~ 18:00 8 保育士
企業型 K区子育て応援塾 週 5 日 10:00 ~ 16:00 10 保育士・幼稚園教諭
第3節 結果・考察
1)各施設にて一時保育者におこなったインタビューを、実施形態別の保育環境に対する 配慮から、保育者の持つ課題と配慮について整理していく。
保育環境に対する配慮
独立型 ひろば併設型
・広さ・環境・充分に過ごせるスペースの 必要性
・子どもを楽しませてあげるために、どう いう準備をしたらいいのかを最優先にし て環境構成を配慮している
・子どもの性格によって全然違う。
・オモチャや遊びは、人間になるための練 習道具。その子の持つ運動能力を見て、
高めて、配備している。関係性をつくり ながら好奇心を目覚めさせればいい。
・質温の調節・換気・玩具の消毒等には細 心の注意を払う。
・登園する予定の子ども組み合わせによっ て、保育環境を変える。
・初めて利用の児が多い場合は、児の人数 を減らして子どもの性格や特性などの実 態を分析し、関わり方を変えていく。
・ 家庭での呼び名・生活リズム・好きなお もちゃやキャラクターなどをアセスメン トしておく。
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保育園型 企業型(コワーキング)
・利用する家庭(児)が「受け入れてもら えている」と感じる環境をつくる。
・定形型保育を利用している子どもたちと の相互作用に配慮している。
・ハサミなど、事故に繋がりそうなものは 環境に置いておくことを避ける。
・一時保育児が遊びやすい環境をその場で 変化させながら構成していく。
・手の届く範囲に危険なものがないか。
・遊びにすぐに入っていけるようにセッ ティングしておく(プラレールをつくり かけにしておくなど)
・コーナー遊びができるようにしておく。
年齢月齢によって分ける。
・性別によって大きく分けたりはしない。
・見てない時におこる事故が怖い(かみつ きなど)。
・オモチャや遊びは、人間になるための練 習道具。その子の持つ運動能力を見て、
高めて、配備している。関係性をつくり ながら好奇心を目覚めさせればいい。
・日毎に利用する児が異なるため感染症や アレルギー罹患歴などの情報を必ず確認 する
インタビューから示された一時保育における環境構成に対する現状と課題を、高山
(2014)が示した子どもを預かる環境構成に必要な 4 つの要素(安心感のある環境・遊び 込める環境・保健衛生面に配慮された環境・安全に配慮された環境)から考察していく。
一点目に、安心感のある環境として「初めて利用の児が多い場合は、児の人数を減らして 子どもの性格や特性などの実態を分析し、関わり方を変えていく」「家庭での呼び名・生 活リズム・好きなおもちゃやキャラクターなどをアセスメントしておく」など、乳児の子 どもの発達段階に配慮し、保護者との分離不安を和らげる配慮をおこなっていた。二点目 の、遊び込める環境としては、「家庭で馴染のあるキャラクターを積極的に取り入れ、初 めての環境でも家庭から切れ目なく遊び込めるきっかけ作りをおこなう」など、子どもの 興味関心を推察し、保育の中にとりこんでいくことに努めていた。三点目、保健衛生面に 配慮された環境に関しては、0・1・2 歳児の乳児をお預かりすることが多い一時保育では、
「室温の調節・換気・玩具の消毒等には細心の注意を払う。」「日毎に利用する児が異なる ため感染症やアレルギー罹患歴などの情報を必ず確認する」等の配慮をおこなっていた。
最後に、安全に配慮された環境としては、様々な年齢の子が不特定的に活動するため、「ハ サミなど、事故に繋がりそうなものは環境に置いておくことを避ける。一時保育児が遊び やすい環境をその場で変化させながら構成していく。」「見てない時におこる事故が怖い(か みつきなど)。」等、ケガ・事故等の予防に細心の注意を払うなど、安全面のリスクマネジ メントを最優先に環境を構成していることも伺えた。どのスタイルの一時保育室において
も課題は、広さ・環境・十分に過ごせるようにとの空間構成であった。これらの課題を解 決する手立てとして、子どもを安心安全の中で、充分に活動し、楽しませてあげるために どういう準備をしたらいいのかとの意識が施設の形態に関わらず、保育者に共通している ことが伺えた。
2)次に、インタビュー結果から、保育者の捉える保護者に対するアセスメントについて 保育者へのインタビュー結果から概観していく。
保護者 ・子どもとどう遊んでいいかわからない、どのような玩具を選んでいいかわ からないという保護者に対して発達についてお話をする
・保育者と保護者との関係性も希薄なため、子ども同士の喧嘩も経験させる ことは避けている
・預ける上でマイナスだと親が感じる事柄を保育者に報告してくれない ・単発利用なため保護者との関係性がつくりにくい
・子どもと離れる時間が必要。
・自分以外の他人に預けることに慣らしていく。
・お家でのやり方を認めてあげる。成功事例を伝える。関わりの工夫の仕方 を伝える・母の連絡帳の書き方によって親子の関係性を読み取る
・生活習慣をつけていない親が増えている
・子育ては人間を育てているのだという理解が必要。人間を創るのであれば、
どういう環境が必要か人間を創ることを学んでいく場やアドバイスが必 要。
・オモチャを環境の一つとして置いておくことで、保護者が迎えに来た時に 子どもの発達段階の話をすることができる。
・人間関係「この組み合わせだと手が出る」という子どもの利用がある場合、
親同士の関係性も、保育者との関係性も希薄であるため、本来経験させた い人間関係を学習するために「必要な喧嘩」を経験させることが難しい。
・ママと二人の子育てでいいはずがない。その子の才能が芽生えない ・子どもの関係性作りはママの気質で決まる
・孤立ギリギリのお母さんが多いように感じる。
・自分だけでやらないでいいのだと思っただけでほっとしましたと話す母が 多い。
・子育てを助けてくれる拠点の存在を知ると自分の生活スタイルが変わる。
・思い出とともに成長していく。家族以外に思い出を共有してくれる人が居 るだけで孤立はしない。
上記の調査結果から、保育者のもつ一時保育利用保護者への意識を整理していく。「孤
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立ギリギリのお母さんが多いように感じる」「思い出とともに成長していく。家族以外に 思い出を共有してくれる人が居るだけで孤立はしない」等、保護者の抱える育児困難感を 捉えると共に「子どもとどう遊んでいいかわからない、どのような玩具を選んでいいかわ からないという保護者に対して発達についてお話をする」「オモチャを環境の一つとして置 いておくことで、保護者が迎えに来た時に子どもの発達段階の話をすることができる。」な ど、家庭で子育てを担う保護者が、子どもの発達に気づいたり、学んだりしていけるよう な働きかけをおこなっていることを読み取ることが出来る。更に、保護者の育児困難・育 児負担の軽減等、「子どもを預けると新しい気持ちで子育てに臨める」との子育てのレスパ イトの場であると同時に、孤立した子育てからの脱却としてもその有用性はあると感じて いることも示唆された。他者に預け慣れていないなど、核家族化が生んだ課題を解決でき るよう、自分以外の他人に預けることに慣れていく機会、場とし、親が親として育つ場で あると共に、社会の中で親として振る舞ったり、行動したりできるような働きかけをおこ なっていることが推察される。同様に、親族や近隣に、子育ての相談先がない核家族にとっ て、子どもの育ちについて学ぶ場や自分のおこなう子育てを振り返る場があることは、個 別に感じている課題を解決していくための具体的な支援として有効であると理解できる。
何より自分以外の人との関わりの中で育っていくことの有用性を実感できる保育の場とし て、保育の専門性を地域子育てに還元していく意識をもち得ていることが推察された。
3)次に一時保育を担う保育士がもつ保育内容への配慮・留意している意識について、イ ンタビューから示された結果を概観する
保育内容 ・子どもの気質やその日の体調や機嫌など、預かる子どもの情報の共通理解 が細かいところまで必要。
・朝、登園する前に基礎データと前回利用の場合は記録を確認。その他、上 書きされている情報に関しては、随時保育者同士で声を掛け合い確認をお こなう。
・担当保育者が関わる前の情報をベースに、その日の保育を創っていく。
・親がどれだけ保育者を信頼しているかがわからない。
・家庭では経験していない遊びや遊具、玩具などで怪我が発生しないように ピリピリするぐらい気をつけている。
・子どもの泣く声を一日聞いていると、幻聴で、聞こえてくる時がある。そ れぐらい、一時保育は子どもの泣きと向き合う保育である。
・限られた時間の中で、その子に対するじっくりと関わる時間を取ってあげ ることが難しかった。
・何か一つでもたのしかったなと思って帰ってくれれば、また遊んでみよう かなと思って帰ってくれれば、嬉しい。また遊んでみようかなという気持 ちが育つように関わっている。
・泣き続けてしまうことは、仕方ないと思う。無理やり泣き止まそうとは思 わない。子どもの気持ちを中心にしてあげる。
・いろんな子がいて、いろんな先生のアプローチの仕方が、いろんな事例か ら見えてくる。むしろ、自分のやり方を強く持っている人はできない。こ れまでの保育観にこだわっているとやれない
・これまでの保育経験値を活かす。いろんなやり方を試してみて、引き出し を増やしている。とはいえ、その子たち用の引き出しを持っているだけで は通用しない。心を創る関わり人間づくり。月齢に応じた人間づくり、社 会性を育む出発点に必要なコミュニケーションづくりに配慮している。
・ママと二人の子育てでいいはずがない。その子の才能が芽生えない ・子どもの関係性作りはママの気質で決まる
・孤立ギリギリのお母さんが多いように感じる。
・自分だけでやらないでいいのだと思っただけでほっとしましたと話す母が 多い。
・子育てを助けてくれる拠点の存在を知ると自分の生活スタイルが変わる。
・思い出とともに成長していく。家族以外に思い出を共有してくれる人が居 るだけで孤立はしない。
・性格読めない。 ・予知する前に動かれる。
・攻撃的な行動の前兆の仕草を感じた瞬間に、該当児の側に走ることの繰り 返し。
・1 対 1 の保育を余儀なくされる。噛みつきの傾向のある児や怪我をしやす い子など、子どもの行動特性が見通せない=事故やけがへのリスク・泣く のは基本。ただ、手が足りなくなってくる。人手と子どもの状況。
・預けられることによって他の大人から子育てをしてもらえる。
・いろいろな子との関わりで、子ども同士が、刺激を受けあうことができる。
・親子が、社会に出ていく練習に慣れていく場として一時保育を利用してほ しい。
・子どもは、いろんな考え方に触れて自分の価値観を築き上げていくのかな と思っているので、多世代のコミュニティの中で育てていくことの必要性 を感じている。親以外の価値観に触れる機会は必要。
・誰を味方にすればいいのかという時間を作ってあげる。馴染んでから好奇 心を刺激していく。マネジメント高い。
・人間関係で「この組み合わせだと手が出る」という子どもの利用がある場合、
親同士の関係性も、保育者との関係性も希薄であるため、本来経験として 必要な「喧嘩」を経験させることはできない。
・大切な命を預かる。ほんの数分の間に、児の発達を洞察し、その子の興味 関心を導いて保育をつくっていく、保育者の多様な引き出し(保育技術)
が必要。
・一時保育の場は、一日だけだけど、一週間だけだけど楽しめる何かを持っ ている必要がある。その子が気持ちよく過ごせるための導きが保育に必要 となる。
上記の調査結果から、一時保育を利用することで、子どもたちが、親以外の多様な価値
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観との出会い、同年齢や少し先のロールモデルと関わりながら育ちに対する学びを得るな ど、いろいろな子との関わりで、子ども同士が、刺激を受けあうことができるように保育 内容を配慮していることが伺えた。一時保育を担う保育者たちが、自らが持つ専門性に照 らし合わせながら、在宅家庭で育つ子どもたちの発達や経験を観察、考察し育ちに寄り添っ ている姿を伺うことができる。
更に、一時保育は、多様な背景を抱える子どもを預かる数だけ、これまでの保育経験値 を活かしつつ、いろんなやり方を試してみて、関わり方を工夫することの繰り返しであり、
保育者のアセスメント力やマネジメント力が問われる。つまり、個別に保育スキルの引き 出しを持っているだけでは通用しない。「心を創る関わり人間づくり。月齢に応じた人間 づくり、社会性を育む出発点に必要なコミュニケーションづくりに配慮している」と、コ メントにあるように、通常の保育以上に、保育者の多様な引き出し(保育技術)が必要と され、定型保育とは異なる専門性の必要性を痛感していることが推察される。なによりも、
生活経験のバックグラウンドが多様な子どもたちを預かるために、安心と安全の保育環境 を確保するためのリスクマネジメントへの配慮は勿論のこと、保育内容の検討においては、
保護者の利用ニーズが多様であると同時に、生後間もない時期から対象とするため、利用 する児童の月齢比率が毎日変化している中で、発達や年齢に応じた保育内容の設定は見通 しがたてにくく、内容に対する保育士の対人数構成が難しいとの課題を抱えていることも 推察された。
第4節 まとめ
乳児を中心とした一時保育を担う保育者がもつ専門性を概観する時、保護者との面接に おける家庭状況の把握や保護者の持つ育児技術、子どもの発達の見立てに始まり、初登園 の際の子どもの様子の把握など、わずかな時間で、児の発達を洞察し、こどもの興味関心 を導いて保育をつくっていく力が必要であることが推察された。それは、保護者へのイン テーク時の情報と受け入れ後、数十分の児との関わりをすり合わせながら、対象児の行動 特性や興味関心を察知していく能力等、子どもの気質、特性、発達や興味関心に関する高 いアセスメント力が必要とされる専門職であると言い換えることが出来るであろう。保育 者としての専門性を基盤として、自己の中にある、既存のあらゆるデータと突き合わせ、
仮説を立てながら、対象児と関わる。関わりながら再アセスメントを繰り返している。
更に、専門家集団として、子どもを理解しようとする意欲と、固定観念や偏見を回避す るための保育者同士の密な保育カンファレンス実施と、併せてプロとして個々で確立した 専門性を突き合せていけるチーム力の豊かさも求められる。一時保育の場は、一日だけ、
一週間との期間限定保育であったとしても、子どもたちがその空間で楽しめる何かを持っ ている必要がある。
平成 29 年 10 月 1 日付で、育児介護休業法が改正され、育児休業期間を最長 2 年まで延 長することが可能となった。待機児童問題の解消は基より、育児休業期間の延長に併せて
育児休業給付金の支給も延長されることにより、乳児をもつ家庭のライフデザインは一層 多様化していくことが予想される。出産後の社会復帰を目的とした一時保育の利用、育児 のレスパイトを目的とした一時保育の利用、家庭的事情や保護者の疾病等を理由とした一 時保育の利用、育児の孤立化からの虐待予防のための一時保育利用等、地域で子育てを進 める家族にとって、一時保育はまさに「育児のインフラ」となりつつある。個の社会的現 状を踏まえる時。これまでの保育者としての専門性に、インテーク、アセスメントをはじ めとした、いわゆるソーシャルワークの視点を併せた保育者の専門性の育成が、今後必要 とされるのではないだろうか。今後の課題としては、一時保育を利用する児の発達を促す 保育の有用性と保育内容について、保育者の語りと実践から、それを明らかにしていく必 要があると考えている。
引用文献
保育所における一時保育を利用した母親の意識調査 2004 松岡知子・櫻谷眞理子 立命 館人間科学研究 第 7 号
一時保育における保育の処遇のあり方について 1999 民秋言他 厚生科学研究費補助金
(子ども家庭総合研究事業)平成 11 年度研究報告書」P688 ~ 689
乳幼児が安定する一時保育の保育方法 1999 杤尾勲・迫田圭子・河野季香・中久喜直保 美 日本保育学会大会論文研究 52 号p 732 ~ 733
子どもを預かる環境づくり~一時預かりの場合~ 2003 高山静子 預かりとひろば 子 育て支援環境づくり実践ハンドブック p 76 ~ 89
育ちの理解と指導計画 2014 今井和子 小学館
環境構成の理論と実践―保育の専門性に基づいてー 2014 高山静子 エイデル研究所 一時保育の担い手に必要な専門性と支援技術―支援を行う保育士のナラティブ分析―
2016 内田千春・榊原久子 第 26 回日本乳幼児教育学会研究発表論文集 pp234 - 235