序 文
赤痢アメーバ
Entamoeba histolyticaは組織侵入 性があり,感染すると腸アメーバ症(アメーバ赤 痢やアメーバ性大腸炎など) と腸外アメーバ症 (ア メーバ性肝膿瘍など)の原因になる.しかし,感 染しても全例が発症するわけではなく,無症候性 シスト排出者(キャリア)も存在する.一方,En-
tamoeba dispar
もヒトの腸管に寄生する.本種には
組織侵入性がなく,非病原性であるが,E. histo-
lytica
とは形態的に鑑別することができない.し
たがって,糞便検査で直径 10〜20
µm (通常 12〜15
µm)の赤痢アメーバ様のシスト(
!子)が検出さ れた場合,血清学的検査や遺伝子診断 (PCR 法) で 両種を鑑別して治療の要・不要を判断することが 必要になる.この概念がはっきり示されたのは 1993 年 で あ り
1),WHO が 正 式 に 認 定 し た の は 1997 年である
2).
赤痢アメーバの病原性については,虫体発見の 当初から最近にいたるまで,様々な論議がなされ てきた
3).以下にその歴史的経過を要約する. 赤痢 症状を呈する患者の便から運動性のあるアメーバ の虫体(栄養型)を初めて 発 見 し た の は Losch
で,彼は
Amoeba coliと命名して 1875 年に報告し
赤痢アメーバ Entamoeba histolytica と Entamoeba dispar の 鑑別診断における Multiplex-PCR 法の有用性
1)大阪市立環境科学研究所微生物保健課,2)大阪市立大学大学院医学研究科医動物学,
3)金沢大学大学院医学研究科寄生虫症制御学
阿部仁一郎
1)木俣 勲
2)井関 基弘
3)(平成 14 年 6 月 7 日受付)
(平成 14 年 8 月 2 日受理)
赤痢アメーバ症の病原体Entamoeba histolyticaと,それとは形態学的に判別のできない非病原性のEn-
tamoeba disparとの鑑別に Multiplex-PCR 法の適用を試み,その有用性を従来の PCR 法と比較検討した.
実験には培養したE. histolyticaHM-1:IMSS 株とE. disparSAW 株,および臨床材料から得た 7 検体(有 症患者 4,無症候性シスト排出者 3)を用い,特異性の比較にはアメーバ以外に 3 種の腸管寄生原虫Cryp- tosporidium parvumHNJ-1 株,Giardia intestinalisPortland-1 株,およびBlastocystis hominisNand II 株を使 用した.結論として,Multiplex-PCR 法は,1)検出感度が従来法に較べて約 10 倍高くなる,2)増幅産 物のサイズが両アメーバ種で異なる(従来法では同一サイズ),したがって,3)1 検体当たり 1 本の反応 チューブを用いて PCR を行うことが可能であり,DNA polymerase の使用量も従来法に較べて少ない,
4)他の腸管寄生原虫類との非特異反応はみられず臨床材料にも十分適用できる,などの諸点で優れた方 法であることが確認された.
〔感染症誌 76:921〜927,2002〕
要 旨
別刷請求先:(〒543―0026)大阪市天王寺区東上町8―34 大阪市立環境科学研究所微生物保健課
阿部仁一郎
Key words: Entamoeba histolytica, Entamoeba dispar, Multiplex-PCR
たが,赤痢症状の原因は共存する細菌によるもの であり,アメーバに病原性はないと考えた.その 後,Councilman and Lafleur(1891)は肝膿瘍から
A. coli
を検出し,膿瘍内に細菌の共生はみられな
かったことから
A. coliには病原性があることを 報告し,Amoeba dysenteriae と命名した.2 年後に
は
A. coliはシストを形成することも判明した.一
方,Casagrandi and Barbagallo(1891) は無症候感 染者から検出したア メ ー バ に 対 し て
Entamoeba coliと命名した.これは現在の大腸アメーバであ る.これに対して Schaudinn(1903)は赤痢の原因 になるアメーバ(A. coli,A. dysenteriae )に
Enta- moebaという属名を使用し,
E. histolyticaという種 名を付け,これが現在も使用されている.しかし,
その後もずっと
E. histolyticaには病原性株と非病 原性株があるとの論議がされてきた.この非病原 性株に対して Brumpt は別種説を提 唱 し,1925
年に
E. disparという種名を付けたが,最近にいた
るまで注目されることなく,両種は厳密に区別さ れないまま,長らく
E. histolyticaとして扱われて き た.1980 年 頃 か ら ア イ ソ ザ イ ム パ タ ー ン や DNA 解析の研究が進むにつれて,病原性株と非 病原性株の違いが明白になり,最近になってやっ と両者を別種として扱うことが定着したのであ る.したがって,これまでの報告で 赤痢アメー バ または
E. histolyticaと記載されているもの
には
E. disparの感染も含まれていることを理解
し,今後は遺伝子解析で両種を厳密に鑑別する必 要がある.
両種を鑑別することは臨床的にも重要である.
従来の用語としての 赤痢アメーバ (E. histolytica
と
E. disparを含む)の感染者数は,熱帯・亜熱帯
の開発途上国を中心に現在も約 5 億人存在し,患 者数は年間 3,500 万〜5,000 万人,死亡者数は年間 約 75,000 人と WHO などは推定している
4).すな わち,感染者の約 90% は無症状であり,E. dispar
感染者か
E. histolytica感染のキャリアということ
になる.赤痢アメーバ症の治療には,通常,メト ロニダゾールが使用されるが,E. dispar であれば 変異原性をもつ本薬剤を投与すべきではないし,
必要もない.一方,
E. histolyticaであれば発症する
可能性があるし, 他の個体への感染源になるので,
無症状であっても投薬の対象になる
2).
わが国では輸入症例だけでなく,国内感染例も 半数以上存在し,男性同性愛者
5)や知的障害者施 設
6)〜9)などに多 く 見 ら れ,E. histolytica の シ ス ト キャリアも存在する.本症は届出感染症に指定さ れているが,有症者のみが対象であり,E. histo-
lytica
感染であってもシストキャリアは含まれな
い.ちなみに,届出数は 2000 年には 359 例,2001 年は 416 例である
10)11).
届出のための基準は,症状などから本症が疑わ れ,かつ病原学的あるいは血清学的に赤痢アメー バの感染が確認された場合とされる.しかし,形 態学的あるいは血清学的検査による診断にも種々 の制約があるし,とくに,糞便検査でシストのみ が検出された場合は
E. disparとの鑑別に遺伝子 解析が欠かせない.
PCR 法 に よ る
E. histolyticaと
E. disparの 鑑 別 診断法はいくつか報告されているが
12)〜16),まだ国 内では一部の研究機関で行われているに過ぎな い.また,現在国内で利用されている方法は,増 幅産物を制限酵素で切断しその電気泳動パターン で鑑別する方法
12)と各アメーバに特異的なプライ マーを用いて当該サイズの増幅の有無により鑑別 する方法
13)である.しかしながら,これらの方法は 検査手技が簡単とは言えないし,費用も安価では ない.本稿では,最近報告された Multiplex-PCR 法による両アメーバの鑑別診断法
16)を従来法と比 較し,その有効性について検討した.
材料と方法
1.使用アメーバと他種原虫
臨床検査で得た 7 検体(腸アメーバ症患者 4, 無
症候性シスト排出者 3)の糞便から回収した赤痢
アメーバ様シストと,標準株として慶応大学医学
部熱帯医学寄生虫学教室から分与された培養株
E. histolyticaHM-1:IMSS 株(無 菌 株)と
E. dis- parSAW 株(Crithidia fasciculata との共棲株)の栄
養型を用いた.また,特異性の検査には,アメー
バ 以 外 の 腸 管 寄 生 原 虫 と し て
Cryptosporidium parvumHNJ-1 株 ,Giardia intestinalis Portland-1
株(慶応大学医学部熱帯医学寄生虫学教室から分
Table 1 Sources of primer pairs examined in the present study
Reference Specificity
Product size(bp)
Target Sequences of each primer pair
E. histolytica 13 30-kDa cystein 100
rich protein p11:5 -GGA GGA GTA GGA AAG TTG AC-3(Forward)
p12:5 -TTC TTG CAA TTC CTG CTT CGA-3(Reverse)
E. dispar 13 30-kDa cystein 101
rich protein p13:5 -AGG AGG AGT AGG AAA ATT AGG-3(Forward)
p14:5 -TTC TTG AAA CTC CTG TTT CTA C-3(Reverse)
E. histolytica 16 427
SSUrRNA EhL:5 -ACA TTT TGA AGA CTT TAT GTA AGT A-3(Forward)
EhR:5 -CAG ATC TAG AAA CAA TGC TTC TCT-3(Reverse)
E. dispar 16 195
SSUrRNA EdL:5 -GTT AGT TAT CTA ATT TCG ATT AGA A-3(Forward)
EdR:5 -ACA CCA CTT ACT ATC CCT ACC-3(Reverse)
与) ,および
Blastocystis hominisNand II 株 (奈良女 子大学理学部生物科学教室から分与)の DNA を 使用した.
2.虫体の調整と DNA 抽出
臨床検体からのシストの回収はショ糖遠心浮遊 法により行った.小指頭大の糞便に水を加えて懸 濁後,ガーゼを用いて 15ml の目盛付き遠沈管に 濾過して遠心後に上清を除去し,沈渣に比重 1.2 のショ糖溶液を 3ml 加えてピペットでよく混和 し,さらにショ糖溶液を追加して総量 10ml とし,
付属のキャップを付けて数回転倒撹拌した.次に キャップを取り外し,水 2〜3ml をショ糖溶液の 上にゆっくりと重層し,2,000 回転(900g)で 10 分間遠心した.アメーバのシストはショ糖溶液と 水との界面に集まってくるので,この層をパス ツールピペットでゆっくりと吸い上げて別の遠沈 管に回収した.回収した液のショ糖溶液を除去す るために,蒸留水を用いて遠心洗浄を数回繰り返 した.沈渣を 1.5ml のエッペンチューブに移し,リ ン酸緩衝生理食塩水(PBS)を 200
µl 加えて凍結融 解を 5 回繰返した.最後の融解後に沸騰浴中で 10 分間加 熱 処 理 を 行 な い,DNA の 抽 出 と 精 製 は QIAamp DNA Mini Kit(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて行った.このキットで DNA を精製した場合,最終的に得られる DNA を含む 溶液は 200
µl であり,今回の PCR 法では得られた 200
µl 中 5
µl をテンプレートとして用いた.
標準株として用いた 2 種アメーバの培養株の場 合 は,BI-S-33 培 地
17)で 培 養 し た 各 ア メ ー バ を PBS で数回遠心洗浄して培地成分を除去し,栄養
型を含む沈渣を 1.5ml のエッペンチューブに移 し,200
µl の PBS を加えて凍結融解を 1 回行い, 沸 騰浴中で 5 分間加熱処理した.DNA の抽出と精 製は上記と同様に行なった.
3.PCR プライマー
E. histolytica
と
E. disparを PCR 法 で 鑑 別 す る ために,従来わが国で用いられてきたプライマー ペ ア(p11 と p12, p13 と p14)
13)と Multiplex-PCR 法で用いるプライマーペア(EhL と EhR,EdL と EdR)
16)のシーケンス,増幅される遺伝子,増幅 産物のサイズ,特異性をまとめて表示した(Ta- ble 1) .従来用いられてきたプライマーは,システ インリッチ蛋白質をコードする遺伝子を増幅さ せ,p11 と p12 のプライマーペアは
E. histolyticaの DNA を,p13 と p14 の プ ラ イ マ ー ペ ア は
E.dispar
の DNA を そ れ ぞ れ 特 異 的 に 増 幅 さ せ る が,そのサイズはいずれも約 100bp である.一方,
Multiplex-PCR 法で用いるプライマーは小亜粒子 リボソーム RNA(SSUrRNA)をコードする遺伝 子を増幅させ,EhL と EhR のプライマーペアは
E. histolyticaの DNA を,EdL と EdR の プ ラ イ マーペアは
E. disparの DNA を そ れ ぞ れ 増 幅 す る.Multiplex-PCR 法により得られる増幅産物の サイズは両アメーバで明らかに異なり,E. histo-
lyticaでは 427bp,E. dispar では 195bp である.
4.PCR 反応液の調整と反応条件
従来のプライマーを用いて PCR を行う場合,増
幅産物のサイズは両アメーバ種でほとんど差が見
られないため,1 つの検体について各々異なるプ
ライマーペアを加えた 2 つの PCR mixture を調
整する必要がある.一方,Multiplex-PCR 法では,
各プライマーペアで増幅される産物のサイズは両 アメーバで明らかに異なるし,2 つのプライマー ペア(EhL と EhR,EdL と EdR)を 1 つの PCR mixture に加えて PCR を行っても非特異な増幅 が認められないので,1 検体あたり 1 つの PCR mixture を調整して PCR を行うことが可能であ る.反応液の総量はどちらの PCR 法でも 50
µl と し,各プライマーは最終濃度で 0.5
µM となるよう に 加 え た.DNA polymerase は TaKaRa Taq
(TAKARA Shuzo Co., Ltd., Otsu, Japan)を 使 用 し,PCR Buffer と dNTP は同 Taq に添付されて い る 10×PCR Buffer と dNTP Mixture(各 2.5 mM)を使用した.
反応条件は,アニーリングの温度を除いて両 PCR 法とも同じ条件で行った.熱変性 94℃30 秒
(1 回 目 は 3 分) ,ア ニ ー リ ン グ 59℃30 秒
(Multiplex-PCR で は 58℃) ,伸 長 反 応 72℃1 分
(最終回は 7 分) ,反応サイクルは 40 回である.
サ ー マ ル サ イ ク ラ ー は GeneAmp PCR System Model 9700(Perkin-Elmer Corp.,U.S.A.)を用い た.当該産物の増幅は PCR 終了後の反応液 10
µl を 3% アガロースゲルで電気泳動し,エチジウム ブロマイド溶液で染色した後にトランスイルミ ネーターで確認した.
5.各 PCR 法の検出感度の比較
各 PCR 法の検出感度を比較するために,既知濃 度の
E. histolyticaDNA と
E. disparDNA を各々滅菌蒸留水にて 10 倍段階希釈した DNA サンプル を調整し (10
µg
!ml,1
µg
!ml,100ng
!ml,10ng
!ml,
1ng
!ml,100pg
!ml,10pg
!ml) ,各 濃 度 の DNA サンプル 5µl を PCR 反応のテンプレートに用い た.なお,Multiplex-PCR 法では,両アメーバの各 濃度の DNA サンプル 5
µl を各々テンプレートに 用いた.
結 果
1.臨床材料から得たシストの鑑別と各プライ マーの特異性
標 準 株 と し て 用 い た
E. histolyticaと
E. dispar(レー ン 1)は,従 来 の PCR 法 と Multiplex-PCR 法において,それぞれ期待されるサイズの増幅産
物が得られた(Fig. 1A-C) .
臨床検査で赤痢アメーバ様シストが検出された 7 検体(レーン 2―8)では,E. histolytica に特異的 な プ ラ イ マ ー ペ ア で あ る p11 と p12 を 用 い た PCR 法で 100bp 付近に増幅産物が認められ(Fig.
1A) ,E. dispar に特異的なプライマーペア(p13 と p14)では当該サイズの増幅産物は認められな かった (Fig. 1B) .Multiplex-PCR 法においても
E.histolytica
に特異的なサイズ(427bp)にのみ明瞭
なバンドが確認され,E. dispar に特異的な 195bp 付近には増幅産物は認められなかった (Fig. 1C) . したがって,これらの臨床検体はすべて
E. histo-lytica
であると判定された.
アメーバ以外の 3 種類の腸管寄生原虫(レーン 9―11) では,従来の PCR 法および Multiplex-PCR 法において,両種アメーバに該当するサイズの増 幅産物は全く認められなかった(Fig. 1A-C) .
2.各 PCR 法の検出感度の比較
各 PCR 法の検出感度の結果を Figs. 2A-C に示 した.E. histolytica に特異的な p11 と p12 のプラ イ マ ー ペ ア を 用 い た PCR 法 で は,100pg
!ml の DNA サンプルまで当該サイズ付近に増幅産物が 確認され(Fig. 2A) ,E. dispar に特異的な p13 と p14 のプライマーペアを用いた PCR 法では,1ng
!ml の DNA サンプルまで 100bp 付近に増幅産物 が 確 認 さ れ た(Fig. 2B) .一 方,Multiplex-PCR 法では,E. histolytica に特異的なプライマーペア で増幅される 427bp と
E. disparに特異的なプラ イマーペアで増幅される 195bp の産物はそれぞ れ 10pg
!ml お よ び 100pg
!ml の サ ン プ ル ま で 明 瞭に認められた (Fig. 2C) .なお,PCR 法の再現性 を確認するために同様の条件で各 PCR 法を 2 回 行ったが,結果はいずれも初回と同様であった.
すなわち,Multiplex-PCR 法の検出感度は,
E. his- tolyticaも
E. disparも,従来の PCR 法に較べて約 10 倍高くなることが判明した.
考 察
従来,赤痢アメーバ症の確定診断は形態学的検
査と血清学的検査によってなされてきた.形態学
的検査では,赤血球を貪食し活発に運動する典型
的な栄養型を患者便から検出するためには,糞便
100 bp
M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
101 bp
M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
195 bp
M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
427 bp
100 bp
M 1 2 3 4 5 6 7
101 bp
M 8 9 10 11 12 13 14
427 bp
M 15 16 17 18 19 20 21
195 bp Fig. 1 Detection ofE. histolytica(A),E. dispar(B), or
E. histolyticaandE. dispar(C)specific fragments by PCR with each diagnostic primer pair in the clinical samples. Lanes:M, molecular marker(100bp lad- der);2―8,E. histolytica-like cysts found in the fecal samples;9,C. parvumstrain HNJ-;10,G. intestina- lisstrain Portland-1;11,B. hominis strain Nand II.
Lane 1 in Fig. 1A, 1B, or 1C isE. histolyticastrain HM-1:IMSS,E. disparstrain SAW, or the mixture of both amoeba respectively.
Fig . 2 Comparison of the sensitivity of each PCR with the different primer pairs.E. histolyticaorE.
dispar diagnostic fragment was amplified with p11 and p12(A)or p13 and p14(B)primer pair respec- tively , and the specific fragment of each amoeba was also amplified by multiplex-PCR(C). Lanes:M, molecular marker(100bp ladder);1―7,E. histolytica DNA samples diluted with distilled water into 10 µg!ml, 1µg!ml, 100ng!ml, 10ng!ml, 1ng!ml, 100pg!
ml, 10pg!ml;8―14,E. disparDNA samples diluted similarly withE. histolyticaDNA;15―21, mixture of diluted DNA samples of both amoeba.
採取後 1 時間以内に検鏡する必要があり, さらに,
できるだけ 37℃ に近い状態で検体を検査機関ま で搬送しなければならない.また,糞便中のシス トは 4℃ で 1 週間程度は保存可能であるが,染色 標本を作成しても鏡検で形態的に
E. disparのそ れと区別することは不可能である.
赤痢アメーバの糞便内抗原を ELISA 法で検出 するキットが市販されており(E. histolytica II:
Tech. Lab.,関東化学) ,国内でも入手可能である が,高価であること,抗体を固定化したウエルが 8 連 1 組となったストリップであるため,検体数 が少ない場合には未使用ウエルが無駄になるこ と,さらに,まだ体外診断試薬として認可されて いないので研究目的のみに使用が制限されること など,実際には利用されにくい.
血清学的診断の陽性反応は現在の感染のみなら ず過去の感染をも反映し, また, 用いる方法によっ ては急性のアメーバ症では陰性となるなどの問題 点も指摘されている
18).このため,血清学的診断 法のみならず,病原学的診断法を併用することが 重要である.
PCR 法による赤痢アメーバの遺伝子検出法と
E. dispar
との鑑別診断法はこれまでいくつか報告
されているが
12)〜16),その中で PCR-RFLP 法
12)14)15)は PCR 産物を制限酵素で切断し,その電気泳動パ ターンで鑑別するために,PCR→電気泳動(当該 産物の増幅を確認するため)→制限酵素処理→電 気泳動(切断パターンの確認)と,診断までに複 数の操作を行なわねばならず,また,制限酵素を 用意しておく必要がある.p11 と p12, p13 と p14 のプライマーペアを用いた鑑別法
13)では,増幅産 物のサイズが両アメーバ種でほぼ同じであること から,アメーバを同定するためには 1 つの検体に ついて各々異なるプライマーペアを含む 2 本の mixture を調整して PCR を行なう必要がある.こ のため,DNA polymerase の使用量も多くなる.
一方,Multiplex-PCR 法では,1 検体あたり mix- ture の調整は 1 本ですむことになる.さらに,今 回 の 実 験 結 果 か ら 明 ら か な よ う に,Multiplex- PCR 法の検出感度は従来わが国で用いられてい る PCR 法よりも高く,アメーバ以外の 3 種の腸管
寄生原虫には増幅産物は認められず,臨床材料の 糞便についても鑑別診断できることが確認された
(Figs. 1,2) .以上の点から,赤痢アメーバと
E. dis- parを鑑別するための方法として,Multiplex-PCR 法は従来の PCR 法にくらべて優れていると考え られた.
今回著者らが検査した臨床材料の糞便からはシ ストのみが検出された症例である.アメーバの DNA を抽出し PCR を行った結果,すべての検体 で種の鑑別が可能であったことから,今回用いた シストの回収法と DNA 抽出のための前処理法,
および,市販キットを用いた DNA の抽出と精製 法は,シストキャリアでの鑑別診断に有効な方法 あると判断された.
謝辞:赤痢アメーバ,E. disparおよびGiardiaの培養株
を提供していただいた慶応大学医学部の竹内 勤教授と
小林正規先生,Blastocystisを提供していただいた奈良女子 大学理学部の吉川尚男先生に深謝いたします.
文 献
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Usefulness of Multiplex-PCR for Identification of
Entamoeba histolyticaand
Entamoeba disparNiichiro ABE
1), Isao KIMATA
2)& Motohiro ISEKI
3)1)Department of Microbiology, Osaka City Institute of Public Health and Environmemtal Science
2)Department of Medical Zoology, Graduate School of Medical Science, Osaka City University
3)Department of Parasitology, Graduate School of Medical Science, Kanazawa University