愛知大學文學會
文 学 会 賞 授 賞 卒 業 論 文 要 旨
〇一〇年度﹁希薄化する社会﹂の検証
1人間関係・コミュニケーションの観点からー
〇七L四三⊥益二小柳真哉
近年︑さまざまな領域で人間関係の希薄化︑コミュニケー
ションの希薄化が叫ばれている︒本論文ではこの﹁希薄化﹂
という現象に注目し︑その諸問題について検討した︒
コミュニケーションとは﹁周囲と何らかの関係を持つた
めにつながろうとする行為﹂であり︑もともと希薄性を有
したものである︒また現代の人間関係は︑相手を傷つける
こと︑そしてその結果自分が傷つくことを恐れた﹁やさし
い関係﹂である︒人間関係には必ず﹁深浅﹂﹁濃淡﹂があり︑
相手が変わればその人間関係も変わる︒私たちは人間関係
を選択しているといえる︒世論は希薄な関係を嘆いている
が︑私たちが人間関係を選択している以上︑希薄な関係が
存在するということは当たり前のことなのである︒
人間関係やコミュニケーションの希薄化は本当に起こっ
ているのかという問いに対しては︑希薄化は起こっていな
いという一応の答えを出した︒しかし︑希薄化しているか 否かは個人の感覚で判断される︒そのため一概に希薄化し
ている/していないと結論づけることは難しい︒
希薄化という現象は曖昧なまま希薄化論は二十年以上も
前から唱えられている︒希薄化論が多く唱えられるように
なったのは一九九七年からである︒これは神戸連続児童殺
傷事件の背景からニュータウンという地域の人々のつなが
りにくさが注目された時期である︒そしてそのつながりに
くさは雇用の規制緩和や携帯電話の普及により︑目に見え
る分かりやすい形で露呈した︒つながりが困難になってき
たことによってコミュニケーションに対して危機感を募ら
せるようになったのである︒
問題はなぜ希薄化論が唱えられるのか︒さらには︑なぜ
希薄化論がいつまでも現代の社会問題の象徴かのように論
じられるのかである︒そこには希薄化論者の感性のズレが
存在する︒
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コミュニケーションはその性質上︑希薄性を含んだもの
であり︑人間関係は多岐にわたる︒しかし希薄化論者たち
はその性質を受け入れられず単純に捉えようとしている︒
そこにズレが生じ︑現実にそぐわない希薄化論が唱えられ
る︒
根拠なき報道もそのズレを生じさせるひとつの原因であ
る︒あらゆる事件や問題は人間関係・コミュニケーション
の希薄化と関連づけられる︒それらは根拠のないまま論じ
られて報道されているため︑実情は報道とは異なっている
可能性は十分にある︒しかし︑異なっていたとしてもそれ
を疑うことなく︑希薄化論は定説と化す︒こうして人々の
なかで感性と実情のズレが生じるのである︒
それはケータイやインターネットの捉え方にも大きく表
われている︒希薄化論者たちはメディアを介したコミュニ
ケーション様式をヒトーメディア関係のコミュニケーショ
ンと捉えている︒しかし当事者とってはそのコミュニケー
ション様式はヒトーヒト関係のコミュニケーションであ
る︒このように希薄化論のなかでは︑当事者と希薄化論者
の間に感性のズレが存在するのである︒
そこにはある種のノスタルジーがあるだろう︒﹁昔はもっ
とよかったのに﹂と過去を美化し肯定することで現代の問
題点を露呈させ批判するのである︒
希薄化論の問題は希薄化論が希薄化を招く危険性がある ということだ︒希薄化論で感性のズレを嘆きそれを批判す
る︒そしていつしか当事者を理解しようとしなくなり︑コ
ミュニケーションをあきらめ︑また批判する︒希薄化論者
と被希薄化論者の間でコミュニケーションの希薄化︑人間
関係の希薄化が起こってしまい︑被希薄化論者同士の問で
も希薄化が起こってしまう︒
私たちが危惧すべきは希薄化論が社会を希薄化させると
いうアイロニカルな現象である︒このような﹁希薄化する
社会﹂を回避するためにも︑﹁希薄な﹂人間関係・コミュ
ニケーションを﹁受け入れる﹂という選択を考える必要が
あるのではないだろうか︒
障害者を対象とした心理的変化に関する研究
1構成的グループエンカウンターによる介入を通してー
〇七L四二九〇小野寺望美
本研究は︑小規模作業所利用者を対象にSGEを実施し︑
被験者の心理的変化と︑SGEの有用性について検討した︒
今回心理的指標として︑自尊感情と自己肯定意識尺度を用
いた︒SGEが自己を前向きに捉えさせる効果があるので
あれば︑自尊感情は高まることが期待され︑またSGEを
通し︑自己理解・他者理解が深まれば︑自身と他者への肯
定的感情も高まることが期待でき︑より肯定的な自己概念
を形成することが可能になるのではないかという仮説を立
て︑研究を進めた︒
まず︑各心理的指標におけるSGE実施前後の平均的の
比較で有意差や︑傾向がみられたことから︑SGEを通し
てできた他の人とのつながりや︑メンバーと共に取り組ん
だエクササイズが︑被験者に肯定的な影響を与えたと考え
られる︒自分もみんなと同じようにうまくできるという自 信や︑相手の気持ちを考えながら︑自分の気持ちを表現で
きるようになり︑他者に対しての積極性も高まっていた︒
各回のエクササイズに関しては︑被験者のほとんどが全
ての回で楽しく参加でき︑みんなの考えを聞くことができ
たと感じていた︒そして︑回を重ねることで︑自分の考え
が伝えやすくなり︑自分を素直に出せるようになっていく
傾向がみられた︒
次に︑三回の活動をふりかえったSGE効果尺度の結果
からは︑SGEの効果として︑他者と打ち解け︑良好な関
係を築くことは達成できたが︑自身の考え方や視野の広が
りにまでは及ばなかったことが言えた︒活動を通して︑他
者理解は深まったが︑相互理解へつなげるには︑エクササ
イズ内容や︑実施期間の見直しの必要が考えられる︒
そして︑効果を四つの群に分けた検討では︑①肯定的
効果高‑苦手意識低群が各心理的指標において︑SGE実
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施後に望ましい変化をしており︑この結果は目的の仮説を
支持するものであった︒②肯定的効果高‑苦手意識高群は
平均通所期間が最も長かったが︑﹁被評価意識・対人緊張﹂
の得点が高くなったのは︑エクササイズにおいて︑通所期
間が長く︑日頃頼りにされている者がメンバーから称賛を
受ける場面があり︑そこで自分が頼りにされていることに
気づき︑評価を受けることでこの得点は高まったと考えら
れる︒③肯定的効果低‑苦手意識高群では平均年齢が最も
低かった︒年齢が若い人にとって︑年上の人と意見を交換
し︑活動を行うことに苦手を感じていた可能性が示された︒
そして④肯定的効果低‑苦手意識低群は︑年齢︑罹患年数︑
入院回数において最も平均値が高かった︒この群では︑ほ
とんどの心理的指標において望ましい変化をしたとは言え
ず︑SGEの効果を肯定的に捉えることが難しかった︒そ
の要因として鈍麻・減退に伴う精神症状の影響が考えられ
た︒それゆえ︑患者が体験する︑鈍麻・減退感情をサポー
トする重要性を改めて考え直し︑エクササイズをより活動
的なものにし︑参加者の自発性を促すプログラムが必要で
あると考えられる︒
刺激等価における分類型訓練とネーミング訓練の効果について
〇七L四三三五森美香
一︑本研究の目的
行動分析学では︑概念形成や推論などの認知的行動
を分析する方法の一つとして︑刺激等価性(ωニヨ三⊆ω
equivalence)S研究が行われている︒この研究では一般的̲;"見本QIIわせ手続き(matching‑to‑sampleprocedure)
によって任意な刺激感の関係を訓練する︒そこで本研究で
は︑大学生二十八人に対し︑簡潔に刺激等価を成立させる
方法の一つとして︑見本合わせ訓練と異なる︑十二枚の無
意味図形の描かれたカードを使った分類型訓練での刺激等
価の効果を検討してみる︒また︑分類型訓練と対応しない
共通ネーミング訓練を実施し︑どのような刺激関係が成立
するのかも検討した︒さらに︑訓練段階では最小限一回で
きたら次の試行へと移行させ︑あえて過剰学習はさせない
方法を用いた︒
二︑手続き
実験は︑分類型訓練とネーミング訓練の二つの訓練と2 回の分類テストで構成された︒
分類型訓練で形成された刺激関係は︑A1←B1︑A2
←B2︑A3←B3︑B1←C1︑B2←C2︑B3←C
3︑C1←D1︑C2←D2︑C3←D3の9関係であっ
た︒これにより成立が予測される等価クラスはA1︑B1︑
C1︑D1からなるクラスー︑A2︑B2︑C2︑D2か
らなるクラス2︑A3︑B3︑C3︑D3からなるクラス
3の3クラスであった︒
一方︑ネーミング訓練では︑これらの等価クラスに一致
しない刺激群に対し共通の名前を付けることを参加者に求
めた︒A1︑Bl︑C2︑D3には︒アルフ7A2︑B
2︑C3︑D1には,ベータ"A3︑B3︑C1︑D2には.ガンマ"という名前を設定した︒このように︑分類型
訓練によって成立する等価クラスとネーミング訓練によっ
て成立する刺激クラスではC1︑C2︑C3︑D1︑D2︑
D3の6刺激が一致しないようにした︒
上述の二つの訓練の実地順序は群によって変えられた︒
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