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パラグアイの幼児教育改革 第2期の取り組み : 『国家乳幼児総合発達計画』に関する一考察

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Academic year: 2021

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はじめに  パラグアイ共和国は、35年にわたる独裁政 治の後、1989年に文民政権に移行し民主化を 進めてきた。その中で「教育」は、新しいパ ラグアイを作り上げていくための重要な柱で あった。政府は、1994年の「教育改革戦略 (Plan Estratégico de la Reforma Educativa, Paraguay 2020)」で教育改革に着手し、さら に2009年の「国家教育改革(Plan Nacional de Educación)2024」によって一層の教育改革の 充実に取り組んでいる。教育の中で幼児教育の 分野はやや遅れて、2001年から幼児教育改革 が始められている。「国家幼児教育計画(Plan Nacional de Educación Inicial : PNEI 2002-2011)」を中心に、様々な取り組みが行われ、 ある一定の成果をあげた、と言える。1)

 そして現在、改革の第2期とも言える「国 家乳幼児総合発達計画(Plan Nacional de Desarrollo Integral de la Primera Infancia : PNDIPI)2011-2020」(以下、国家計画そのも のとしてはPNDIPIと称し、国家計画の文献は 『PNDIPI』2)と表記する)」の下、引き続き 幼児教育改革が進められている。本稿では、第 1期からの幼児教育改革を踏まえ、パラグアイ 政府がこの国家計画を通してどのように幼児教 育、そして乳幼児期のケアと教育に取り組もう としているのか、その背景と意義を探っていく。 1.「国家乳幼児総合発達計画」に至る背景  現・国家計画PNDIPIの前段階として、幼児 教育の土台を作るべくPNEI「国家幼児教育計 画」が取り組まれたわけであるが、幼児教育改 革に係るこれら2つの国家計画の根拠法とし て、共通した次の3つの法律が挙げられている。 1989年の「子どもの権利条約(Convención Internacional de los derechos del Niño)」、 1992年の「憲法(Constitución Nacional)」、 2001年の「青少年法規(Código de la Niñez y la Adolescencia)」である。  そこで、政府がこのPNDIPIを計画するに至 った背景を考えるために、パラグアイ国内外に おける子どもの教育、乳幼児のケアに関わる状 況を、次の3つの角度から眺めてみることにす る。 (1)国際的な流れ  まず、子どもの教育や乳幼児のケアに関する、 近年の国際的な潮流を見てみよう。  1989年に国連総会で、子どもの基本的人権を 国際的に保障するために定められた条約「子ど もの権利条約」が採択された(現在、196の国 や地域が締約している)。その後2000年にはダ カールの「世界教育フォーラム」で、「万人の ための教育(Education for All:EFA)」が採 択された。ここでは、国際的開発アジェンダと して6つの目標が掲げられた。そのうち「就学 前教育の拡大・改善」がゴール1として挙げ

パラグアイの幼児教育改革 第 2 期の取り組み

─『国家乳幼児総合発達計画』に関する一考察 ─

長尾 和美

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られ、「最も恵まれない子供たちに特に配慮 した総合的な乳幼児のケアおよび教育の拡大 及び改善を図る」ことが謳われている。また、 UNESCOは、2007年「EFA Global Monitoring Report(EFAグローバル・モニタリング・ レポート)2007」のテーマとして「Early Childhood Care and Education:ECEC(乳幼 児のケアと教育)」をとりあげている。3)  時期を同じくして2000年にアメリカのニュー ヨークで開催された国連ミレニアム・サミット では、「世界の貧困をなくす」という目的の ために、「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」が採択された。 MDGsは、開発分野における国際社会共通の目 標であるが、2015年までに達成すべき8つの指 標が掲げられた。そこには、乳幼児死亡率の削 減、初等教育の完全普及の達成といった、子ど もの教育や乳幼児、ケアに関わる分野が重要な 位置を占めている。それは、誕生から就学前の 乳幼児期におけるケアと教育がその後に人生に おいて非常に重要であることが科学的に証明さ れ、国際的に認知されてきているからである。  1980年代頃からのこういった国際的状況から 見て、乳幼児のケアと教育(幼児教育)は、国 際的にも重要視され、注目される分野となって いる。そして、これらの国際的な目標は、世界 全体の課題として、先進国においても途上国に おいても、それぞれの国策にも反映されている。 パラグアイにおいても例外ではなく、国の政策 における目標の中で指標化されている。 (2)パラグアイの政策  次に、パラグアイ国内の社会政策、とりわけ 子どもや教育に関わる国の政策、戦略を考えて みよう。  『PNDIPI』第1章「行動枠組み」の冒頭でも 述べられているように、この国家計画は、「国 家青少年政策(Política Nacional de la Niñez y Adolecencia 2003-2013)」と、「社会開発政 策(Política Pública para el Desarrollo Social 2010-2020)」の一部を成しており、PNDIPIは この2つの社会政策と共に、その方向性、取り 決め、現行戦略を強化している。すなわち、国 の社会開発政策において、教育が、そして「人 づくり」として乳幼児期の政策が、重要な柱と して組み込まれていると言える。  また、PNDIPI自身が、教育文化省、青少年 庁、健康福祉省による、省庁を超えた「乳幼児 期」のための国家計画となっている。  その一方で、PNDIPIは、それぞれの省庁の 政策、計画の中で進められている。具体的に は、教育省においては、「国家教育改革(Plan Nacional de Educación 2024)」という大きな 柱の中でPNDIPIが進んでいる。健康福祉省に おいては、「幼少期の、公平さを伴った質の 高い生活と健康のための国家振興計画(Plan Nacional de Promoción de la Calidad de Vida y salud con equidad de la Niñez 2010-2015)」 と共に、子どもの権利としての健康状態の改善 を推し進めている。また、青少年庁においては、 PNDIPIは「国家戦略計画(Plan Estratégico 2009-2013)」を引き続き強化しながら、計画 が進められている。  このように、国家の政策が様々な国家計画と 共に縦横に織り込まれている。PNDINIについ て見てみると、3つの省庁間の連携や調整を通 じて、国が一体となって乳幼児期のケアや教育 にあたっていく、という決意の表れであるよう に思われる。 (3)パラグアイの幼児教育改革の経過  最後に、当該国の幼児教育を、第1期の幼児

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教育改革の経過から辿ってみよう。

 他のレベルの教育改革から遅れ、幼児教育 の改革は2001年に着手された。まず、国家計 画に先立って、「幼児及び就学教育強化プロ グラム(Programa de Fortalecimiento de la Educación Inicial y Preescolar 2001-03)」に より、国内の幼児教育の現状、課題を把握す るための調査を実施した。それを基に、PNEI 「国家幼児教育計画」に取り組んだ。この計画 においては、主要目標として「①幼児教育の 質の改善、②6歳未満の子どもへの公平性を伴 った幼児教育へのアクセスを保障する、③幼児 教育のレベルの戦略強化の開発をする」が挙 げられていた。その中で、教育省が特に力を入 れていたのは、就学前教育(5歳児)4)の就学 率の増加、地域格差の減少、インフラ整備、教 材の配布、教育の質(教員への研修、有資格者 の増加)の向上であった。それらの課題を達 成するために、PNEI計画の中で中心的な原動 力となったのは、「幼児教育改善プログラム (Programa de Mejoramiento de la Educación Inicial y Preescolar 2003-2009)」である。 「改善プログラム」は、その大部分が米州開発 銀行からの借款による大きな予算を伴った、中 心的なプロジェクトであった。  この幼児教育改革第1期において、PNEI国 家計画や「改善プログラム」により、パラグ アイの幼児教育は一定の成果を伴って前進し たと言える。例えば、就学前教育の純就学率 は、51.7%(1997)から67%(2000)、70.4% (2008)へと、また、就学前教育において資格 を持った教員数の割合は、28%(2001)か ら、32%(2008)、49%(2012)へと増加して いる。5)6) 図1.就学前教育(5歳児)の祖就学率・純就学率 *出典7) 図2.就学前教育の粗就学率(地域別)*出典8) 図3.就学前教育(5歳児)の教員の有資格者率 *出典9)  また、この国家計画期間に『幼児教育要領』 (2004)および『幼児教育課程(3-6歳児)』 (2004)の作成・発行が実施されたことも、パ ラグアイの幼児教育にとってはひとつの大きな 果実とも言えるだろう。他にも、教員、テクニ コ(幼児教育専門指導員)、教育監督長、学校

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長等への研修、幼児教育施設のインフラの整備 や教材の配布、などが実施された。  ただし、様々な課題が残っていることも確か である。地域間格差が大きいこと、必要な資格 を有していない教員もまだかなり存在すること、 就学前教育以外の乳幼児の教育においては、就 学率、登録率が低い(図4.)ことなどが挙げら れる。特にノン・フォーマル形式の幼児教育に 対しては、改革第1期において教育省による指 導やモニタリング、管理はほとんど実施されて おらず、データにも限りがある。全体的に0-4 歳児向けのプログラムは少なく、幼児教育への アクセスが困難であると言える。ただし、ラテ ンアメリカにおける男女の性別役割分業を含ん だケアの現状と子育て政策は、日本における保 育施設不足や待機児童のような問題とは同一線 上になく、乳幼児のケアと教育を担う者たちへ の育児、養育に関する情報、教育、社会的意識 等が不十分で、そのための支援やネットワーク が必要とされている。 図4.0-4歳児の乳幼児プログラムへの登録率 *出典10) 2.PNDIPI政策の目標  前項において見てきたように、パラグアイの 現在の幼児教育改革とその背景を考えると、パ ラグアイが世界の潮流を強く意識し、幼児教育 および乳幼児のケアを国の様々な社会政策の中 に位置付け、またこれまでの幼児教育の経過を 踏まえた上で、この国家計画を打ち立てている ことがわかる。  それでは、こうした背景の中、現在のパラグ アイの政策として、現国家計画PNDIPIは何を 目指しているのか、『PNDIPI』から探ってみ よう。 (1)PNDIPI計画の行動枠組み  『PNDIPI』第1章「行動枠組み」では、乳 幼児政策の概念的側面、法的・制度的枠組み、 基本原理、目標が示されている。   ま ず 概 念 と し て の 「 乳 幼 児 ( 期 )」 は 、 「(現政策にとって)出生から8歳までの発達 段階を意味する」「乳幼児は、総合的であり、 個人的であることを特徴とする権利の主体であ る」「『子どもの権利条約』は憲法と青少年 法規によってパラグアイ政府の承認を得てお り、法的強制力を持っている」「子どもの権利 は、人間全てに固有で重要な権利であることと 同様である」「子どもの全面的なニーズと権利 は、全面的なケアを必要とするという意味でも ある」とし、国にとって乳幼児の定義、位置づ けが成されている。  次に、法的枠組みと制度的枠組みが示され ている。前者は前述のPNDIPIの根拠法となる 3つの法律である。そして、当政策を支えてい る制度的枠組みは、青少年法規で2001年に創設 された、「青少年のための総合的な保護と振興 のための国家システム(Sistema Nacional de Protección y Promoción integral de la Niñez y Adolecencia:SNPPINA)である。この制度の 中で、子どもの権利を保障するための政策の実 施が計画され見守られているのである。それは PNDIPIによって一層強化されていると言える。

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 また、乳幼児政策の基本原理としては、「子 どもの権利の平等性と普遍化」、「子どもの最 善の利益としてのケア」、「総合性:子どもの 権利は、重要であり個人的であり、独断的な形 で分断されない」、「参加:子どもの意見、表 現の自由を尊重する」、「遊びの方法論:遊び を通して主体性や周囲との関係性を発達させて いくこの時期の能力を尊重する」、「母語:歴 史、文化的な生来の言語を尊重する」の重要性 が挙げられている。  これらの側面を踏まえた上での、国家の乳幼 児政策の主要目的は、「権利への参加および保 護と振興を通して、乳幼児の生活全般、成長、 総合発達を保証すること」とし、国家の責任を 明言している。  このように、第1章では、子どもの権利の重 要性が繰り返し強調されている。それは、乳幼 児政策に向かう国家としての宣言でもあるよう に思える。 (2)PNDIPI計画の目標  『PNDIPI』第2章では、このPNDIPI計画の 総合的戦略的目標として、次の5点が挙げられ ている。 (a)乳幼児期における、住民登録、健康、栄 養摂取、教育の展開など、子どもの権利の普及 と実現を促進し保護することにより、乳幼児期 を可視化し、その生活の質を高める。 (b)社会的に脆弱な状況において、子ども一 人ひとりを包摂し保護するとともに、乳幼児期 の権利の完全な行使を達成する。 (c)総合的かつ包括的なアプローチによる、 SNPPINAの責任機関間での連携し調整された 適切な行動を実施し、促進することにより、乳 幼児期の法的保護を提供する。 (d)乳幼児期を可視化し、子どもへの良好な 対応や養育の模範例の提示、および公共資本や サービスへの体系的アクセスを促進することに より、乳幼児期の福祉と全面的発達を達成する ために、社会的コミュニケーション、社会活動 の戦略を促進し、育成する。 (e)国内のサービス・ネットワークとの連携 や、資源配分の確保など、民間機関やコミュニ ティと協力し、乳幼児期の権利を保証する公的 機関が調整し連携して、管理運営を促進し生成 する。  以上の5つの目標に沿って、次章に挙げられ ているこの計画の行動分野(領域)と路線が決 められている。そしてそれは、「乳幼児期の生 活の質」、「乳幼児期における保護と社会包 摂」、「乳幼児期への法的保護」、「乳幼児期 のための社会的コミュニケーションと社会活 動」、「SNPPINAの制度強化」という戦略軸 から具体的な活動へとつながっているのである。 3.PNDIPIの特徴と意義  前項1.2.において、PNDIPI計画の背景 と政策の理念を見てきたが、そこから見える当 国家計画の特徴、パラグアイ政府の目指すもの を考えてみたい。  一番特徴的なのは、PNDIPI現国家計画が、 教育省による幼児教育に関する計画という側面 だけでなく、国家戦略である「社会開発」の1 つの柱として位置付けられていることである。 このことは、第1章の冒頭部分でも明記されて いる。  そのため、自明のことだが、省庁間での連携、 協力、調整がより重要になってくる。とりわけ、 乳幼児に関する政策であるため、教育という面 からだけでなく、その土台となる生命、健康、 安全、保護、生活、権利といった子どもの発達 に必要な最低限の側面を国が保証する必要があ

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る。そしてこれらの土台を作り上げていくため には、横のネットワークが欠かせない。これは、 教育省による前国家計画とは異なる点であろ う。11)  そして、このPNDIPIにおいては、省庁や公 的機関間のネットワークのみならず、より広い 層を巻き込んだ計画となっている。保護者、家 庭、地域、広く国民一般に向けてのアピールが 実施され、国民への意識づけがされている。そ の一つの例を挙げよう。当計画は冊子の形で 『PNDIPI』(全110ページ)が関係者向けに 発行されているが、その簡略版ともいえる冊子 (全60ページ。完全版よりもかなり小さめの版 型。写真1.)が発行されている。内容は同じで あるが、保護者や地域、一般に向け、より分か りやすく書かれており、保護者や関係者への研 修等にも使用されているという。 写真1.『国家乳幼児総合発達計画』(簡略版)  この『PNDIPI』の表紙、裏表紙には国家計 画名が記載されているが、ロゴと共に、その 上に“Todos y todas por la Primera Infancia (全ての人が乳幼児のために)”と書かれてい る。前述の「社会開発政策」にも、“Paraguay para Todos y todas(全ての人のためのパラグ アイ)”と銘打たれている。こういった国家計 画や政策に、スローガン的に“Todos y todas (全ての人)”を冠していることは、パラグア イ政府の「全国民に向けている」というメッセ ージのように思われる。  もう1つの重要な点は、このPNDIPIが世界 および地域(ラテンアメリカ・カリブ諸国)の 流れ、傾向を意識した国家計画となっているこ とである。現在では、世界のどの国においても 「子どもの権利」の重要性は認められているが、 EFDやMDGsで挙げられている世界の子どもの 現状、問題点、解決に向けての課題や提案、具 体的な指標等は、途上国に共通のものが多い。 それは、パラグアイの政策への取り組みにも反 映されている。12)  例えば、対象となる子どもの年齢である。 「幼児教育」は0歳から6歳の子どもを対象と し、教育省の「幼児教育局」も同様である。幼 児教育の4つの段階(分類)である、フォーマ ル形式の「就学前教育」、「幼児園」、「乳児 園」、そして「ノン・フォーマル(形式)」の うち、前国家計画において中心の取り組みは 就学前教育であった。プログラム、プロジェ クト等には「就学前教育と幼児教育」と分け て表記されることも多かった。一方、PNDIPI においては「幼児教育」という表記ではな く、「乳幼児期」を「0歳から8歳まで」と定義 し、幅広い概念が使用されている。これはまた、 UNESCOの年齢の定義を取り入れたものと言 える。13)現在では教育省幼児教育局において、 「Educación Inicial(幼児教育)」のみならず、 「Primera Infancia(乳幼児期)」が頻繁に使 用されているが、この言葉自体がUNESCOの 「ECEC」の「Early Childhood」からの訳語だ と思われる。  また、OECDは「ECEC」の定義として、 「フォーマル、インフォーマル、ノンフォーマ

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ル全ての環境での誕生から初等教育就学までの 子どもの生存、成長、発達、学習−健康、栄養 や衛生、そして認知的、社会的、身体的、情緒 的発達を含む−を指す」としている。そして、 「有効なECECプログラム」としては、「1つ の課題にのみ焦点を当てるのではなく、栄養、 健康、ケア、教育を組み合わせたアプローチ」 や「母語によるプログラム」がより効果的であ ると言及している。「インクルーシブなプログ ラムは伝統的な保育実践の上に築かれ、子ど もたちの言語的・文化的多様性を尊重するも の」「質を決定づける要因は子どもと保育者の ふれあいであり、それは子どものニーズに即し たもの」であるべきだとも指摘している。ま た、ECCEの目標を達成するために必要なこと は、「高いレベルでの政治的サポート」、「0 歳から8歳までの子どもを対象とした国家政策 をつくり上げる協議プロセス」「幼い子ども たちやECECに関する政策のために最も主導的 な省庁を決めること、そして、関係省庁間を調 整するメカニズムをつくり、そこに意思決定権 を持たせること」「政府、民間セクター、さ まざまな地域でECECに取り組む主要な関係 者間のより強固なパートナーシップ」(等)が 重要としている。14)ここまで見てきたように、 『PNDIPI』で示されている政策、計画の方向 性−例えば、PNDIPI計画の目標や戦略軸−は、 OECDで提示されているものを忠実に反映して いると言える。  近年、乳幼児に関する科学的な研究に基づく エビデンスが確認され、OECDやUNESCOと いった国際機関が、ECECの重要性を提唱する ことにより、ECECは世界的な潮流となってい る。それは各国の教育改革やECEC改革を方向 付け、政策に影響をもたらすことも少なくない。 パラグアイにおいて、教育省は、社会開発政策 の一端を担うこの計画によって、幼児教育から、 軸足を乳幼児期に少しずらし、より広い乳幼児 期の課題に取り組もうとしている。パラグアイ の幼児教育改革の第2期は、2000年代の幼児教 育改革には見られなかった、より広い幅や領域 を持つ包括的アプローチによる、広い層を巻き 込もうとする政策となっている。第1期の改革 の経過や成果、課題点の上に立った国家計画は、 今後のパラグアイのECECを高めていくための 有効な手段となることを期待されている。 おわりに  パラグアイは2011年に独立から200周年を迎 えた。“Todos y todas”は、新生パラグアイを 国民皆で創りあげていこうという決意の表れの ように筆者には見える。  パラグアイの幼児教育改革の第2期にあたる 2010年代の政策は、このPNDIPI計画を中心に 現在進められている。その中で最も特徴的なの は、「乳幼児期」に焦点化されていることであ ろう。現国家計画は、既に期間の半分以上が過 ぎたが、第1期と比べて何が変わってきたのだ ろうか。包括的アプローチによる、目標の達成 はどうなっているのだろうか。また、「幼児教 育」に特化した教育省独自の取り組みとしては どんな実践が行われているのだろうか。前国家 計画においても予算を伴ったプログラムが大き な牽引力となった。このPNDIPIにおいても既 にプログラムやプロジェクトの形で、幼児教育 の改革が進んでいる。  本稿ではPNDIPI計画の背景と基本精神、意 義を見るにとどまった。本計画における幼児教 育の具体的な取り組みについては、今後の研究 の課題としたい。そして、第2期の幼児教育改 革の進展を今後も引き続き見守っていきたい。

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1)MEC(Ministerio de Educación y Cultura)

“Informe Nacional ParaguayEducación para Todos 2000-2015”Asunción, 2014 ( h t t p : / / u n e s d o c . u n e s c o . o r g / images/0023/002300/230036S.pdfより) 2)『PNDIPI』は、次の文献によるものである。

“Todos y todas por la Primera Infancia : Plan Nacional de desarrollo integral de la primera infancia” 2011, Asunción Paraguay 3)EFA Global Monitoring Report Team 「EFAモニタリングレポート2007 概要  ゆるぎない基盤 乳幼児のケアおよび教 育」(翻訳監修:浜野隆)2007 ( h t t p : / / u n e s d o c . u n e s c o . o r g / images/0014/001477/147785jpn.pdf) 4 ) パ ラ グ ア イ の 幼 児 教 育 は 、 ほ と ん ど の 文 献 で 、 フ ォ ー マ ル 形 式 の 「 就 学 前 教 育(Preescolar 5歳児)」、「幼児園 (Jardín de infantes 3,4歳児)」、「乳 児園(Jardín maternal 0−2歳児)」、そ して、「ノン・フォーマル〔形式のケア〕 (Non-formal)」と分類されている。その ため、一般的には「就学前教育」という言 葉は「(0~6歳までの)小学校に入学前の 子ども」に対する教育を意味する場合が多 いが、本稿では、5歳児クラスの教育・保育 を「就学前教育」と訳している。 5)MEC,前掲書 p.30-35 6)UNESCO-IBE“Datos Mundiales de Educación 7ª edición,2010/11 Paragauy” (http://www.ibe.unesco.org/sites/ default/files/Paraguay.pdf) 7)MEC,前掲書 p.33 8)MEC,前掲書 p.32 9)MEC,前掲書 p.34 10)MEC,前掲書 p.31

11)MEC“Acompañando el viaje… Plan Nacional de Educación Inicial” 2002, Asunción Paraguay

12)前掲書『PNDIPI』p.22,23

13)EFA Global Monitoring Report Team,前 掲書

14)同上書 参考文献

−MEC“Programa de Estudios Jardín de Infantes y Preescolar(tres a seis años)” 2004

−MEC“Marco Curricular de Educación Inicial” 2004 −宇佐美耕一「ラテンアメリカにおける子育て 政策分析の視点」、「新興国における子ども に関する政策研究会』基礎理論研究会調査報 告書、アジア経済研究所、2015 −長尾和美「パラグアイの幼児教育改革とその 実践的展開」兵庫教育大学平成19年度修士論 文 −長尾和美「パラグアイの幼児教育改革(Ⅰ) −改革の背景と現状−」『幼年児童教育研 究』第22号、2010年3月

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