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ペスタロッチ幼児教育思想における「生きる力」への基本理念

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Academic year: 2021

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(1)ペスタロッチ幼児教育思想における「生きるカ」への基本理念 学校教育研究科修士課程学校教育学専攻 幼年教育コース 学籍番号㎜606蝸 氏名 野々村明手.  今日,日本の教育において「生きる力」の育. 求めた教育ではr真の幸福」を得るための内面. 成が大きな課題となっている。本論文は,r生き. 的育ちが重視された。神から付与された本質的. るカ」の思想的原点をスイスで活躍した教育実. 善を開花・伸長させるためには,r自然の道」に. 践家・ペスタロッチに求め,その教育思想から. 沿った教育が望ましいとペスタロッチは考えた. 幼児教育への示唆を探ってゆくことを目的とす. 生まれ落ちた家庭環境を基点に人間関係を学び,. る。論文の構成は次の通りである。. やが下社会関係を広げていく筋道を構揮したペ スタロッチは,最も身近な親子関係を基盤にし. 序章. て愛・信頼・感謝を他者へ,そして神へと同心. 第{章 プロテスタンティズムを基盤とした子どもへの. 円的に広げていこうと考えた。.    まなざし.  人間の内には神的性質,すなわち暖と信頼.  第1節ペスタロッチ教育思潮こおける宗教的基礎. の素質」は,正しい方向に自ら仲びようとする ベクトルを持っているとペスタロッチは捉えた。. 第2節神の被造物としての子ども. 子どもの精神にある自己の欲求を抑え,このベ.  第3節ペスタロッチの発達思想. クトルに沿うことで,子どもの内面に安らぎと 第2章ペスタロッチの主要著作における〈生きるカ〉. 喜悦に満ちた感情が芽生える。こうした感情の.  第1節 聰者の夕暮れ』における生活圏の思想. 現れは,道徳精神を育む上で第一歩となる。. 第2節 『シュタンツ便り』で示された道徳的陶冶.  第2軍では,ペスタロッチの著作から「生き. 第3節 『幼児教育の書簡』における生きるカの育み. る力」の示唆を得るために,『隠者の夕暮れ』『シ. ュタンツ便り』『幼児教育の書簡』を取り上げて 第3章ペスタロッチ教育思想における「生きるカ」の. 考察した。.    原点.  『隠者の夕暮れ』は,ペスタロッチの生涯に.  第1節 〈生活が陶冶する〉の神髄. 通じる原理・原則を述べた作品である。彼の家 庭での「身近」な関係や生活に着目し,現代の. 第2節調和的発達の重要倖. 「生きる力」を育むうえでの基本的要素を取り.  第3節 〈生きるカ〉を育むメトーデ. 上げていた。子どもには本来内的な善なる感情. 終章. を持っており,その感膚は身近な生活を通して. 引用参考文献一覧. 育まれる。それは第一に母と子の関係である。. 母と子のやり取りから人間関係を学び,それを. 第1章では,ペスタロッチの宗教思想のから 導ま出された人間観や教育思想に迫った。彼が. 基盤にやがて社会関係を学んでいくのである。. このような考察は,現代の問題とされている唯. 一20一.

(2) 活の乏しさ」「関係性の崩れ」「社会性の乏しさ」.  ペスタロッチは「全人教育」理念の源流をな. をどう回復すべきかを解決するにあたって重要. す思想家であり,子どもの素質や能力を調和的. な示唆を与えてくれる。. に発達させる必要性を説いた。当時の言葉・知.   『シュタンツ便り』は,ペスタロッチが実際. 識偏重の教育や職業陶冶に特化した教育を批判. にシュタンツで教育を行った記録である。その. して,「自然の道」にしたがって人間の善なる性. 際,子どもの悲陰な状況から道徳心を育むこと. 質を伸ばしてゆく「基礎陶冶」を重視した。こ. の重要性を感じ,道徳教育に力を注いたのであ. こでは精神・心情・身体の調和を保ってゆくこ. る。ペスタロッチの道徳的教育についての考え. とが重要になる。そして,こうした調和的な発. 方と方法は,基本的に次の三つである。. 達を促す場は家庭を原型とした生活圏であり,. 1.家庭生活で愛と信頼を基礎にして道徳己・を. 学校もまた,家庭のありようにならったもので. 身につける。2.正しレ判断に導きになるよう. なけれぱならないと考えられた。. な身近な直観や経験によって感膚に働かせるこ.  この調和的発達に欠かせないのが,人間のも. と,この働きが自己抑制の精神を育み,正義や. つ諸力を統合する能力としての「一般カ」であ. 善なる態度を身につける。3.道徳的な見方や. る。これを中心にしてあらゆる能力の活動が相. 考ネ方を訓練し,正しさを見分ける三とができ. 互に結合すると考えられるのである。この能力. る。. は,現代で言う「生きるカ」の核心的な部分に.  r幼児教育の書簡』は子どもをどのように教. あるといえよう。それを育むための方法として,. 育すればよいか。その基礎教育について書かれ. ペスタロッチはギメトーデ(Methode)」を構想し. ていた。ペスタロッチは自立できない幼児には. たのである。それは,知識を言葉より感覚器官. 母親の助けが必要だという。ペスタロッチは母. を通して教えていくr自然の法則」に沿った方. 親に,幼児を利他心の精神をもった人間に育て. 法を中心とするr直観教授」を中心としたアプ. る牟め3つのことを重視させた。1=規則正し. ローチである。そしてまた,人間の本源的な感. く幼児の世話をすること。2.同じ習慣を身に. 情としての心情の陶冶を精神陶冶との調和のも. つけさせるヒと。3.わが子の要求を意のまま. とで発達させ,道徳性と自立性を育んでいくこ. にかなえないこと。. ともまた,メトーデの重要な」部であった。.  こうした青みが子どものうちに情愛を発現さ.  今や教育学上の古典となっているペスタロ. せていくのである。母親の情愛は子どもが自立. ッチの著作を現代的な視点か読み直すこと. するための土台,「生きるカ」.を育むための土台. は実り多い作業であった。ここから得た知見. と同義な視点で捉えられていた。. を生きる力を育む現代的な営みへと繋げて.  第3章は,ペスタロッチの教育思想を構成す. いくことが,私たちに課せられたテーマであ. る基鞭理の観点から,r生きる力」を育成する. ると言えよう。ペスタロッチから学んだ基本. ための示唆を得た。ペスタロッチは,r生活が陶. 理念を保育実践に活かしながら,教育実践学. 冶する」ことを重視した彼にとって生活とは. の構築に参画していきたい。. 内的基盤を育てる場であった。日常経験を通し. て,子どものもつさまざまな能力は正しく発達. 主任指導教員 名須川 知子 教授. し,r直観」が磨かれていく。. 指導教員   佐藤 哲也准教授. 一21一.

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