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ビーコンとスマートデバイスを用いた患者と看護師の接触時間に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)医療情報学 39 (4) : 195-202 195. ビーコンとスマートデバイスを用いた患者と 看護師の接触時間に関する研究 児玉 悠希*1 本研究では,ICT ツールを活用し縦断的に病室内での患者と看護師の接触時間を調査した.対 象者は A 病院に入院する患者 40 名とした. 「当日の接触時間」 , 「翌日の接触時間」 , 「接触時間 の変化量」の 3 つの変数について分析を行い,それぞれの変数の特徴と関係性を明らかにするこ とを研究目的とした.分析は記述統計量を算出し,単変量の回帰分析によって変数間の関係性を 分析した.結果として,「接触時間の変化量」の分布が正規分布を示し一般線形モデルにおける 目的変数に適していることが示唆された.回帰分析では, 「翌日の接触時間」を「当日の接触時間」 によって予測する単変量のロジスティック回帰分析でオッズ比が 1.05 であった.また, 「接触時 間の変化量」を「当日の接触時間」によって予測する単回帰分析で説明率が 30%であった.結果 より,当日の接触時間が翌日の接触時間や接触時間の変化量を予測する上での重要な要素である ことが示唆された. ■キーワード:看護管理,ユビキタス,ICT,業務量 *1 Study on Patient and Nurse Contact Times Using Beacons and Smart Devices: Kodama Y. In this study, ICT tools were used to investigate the contact time between patients and nurses longitudinally. The subjects were 40 patients admitted to hospital A. The purpose of this study was to clarify the characteristics and relationships of the 3 variables“contact time of the day”,“contact time of the next day” , and“change in contact time” . In the analysis, descriptive statistics were calculated, and the relationship between variables was analyzed by univariate regression analysis. As a result, it was suggested that the distribution of“change in contact time” shows a normal distribution and is suitable for the objective variable in the general linear model. In the regression analysis, the odds ratio was 1.05 in a univariate logistic regression analysis that predicts“contact time of the next day”by“contact time of the day” . In addition, the rate of explanation was 30% in a single regression analysis that predicts“change in contact time” by“contact time of the day” . From the result, it was indicated that the contact time of the day was an important element for predicting the change of contact time and contact time of the next day. Key words:Nursing management, Ubiquitous, ICT, Effort *1. 日本赤十字秋田看護大学 〒010-1406 秋田市上北手猿田字苗代沢 17-3 E-mail:kodama@rcakita.ac.jp 受付日:2019 年 8 月 13 日 採択日:2020 年 2 月 7 日. Japanese Red Cross Akita College of Nursing 17-3 Azanaeshirosawa, KamikitateSaruta, Akitacity, Akita, 010-1406, Japan *1.

(2) 196 ビーコンとスマートデバイスを用いた患者と看護師の接触時間に関する研究. 務測定を行うことが可能であることが示されてい. 1. 緒 論. る. こうした技術を看護の管理に活用する強みは,. 看護を定量化し,看護職員の適正な人員配置を. 人的資源を投入せずに時間を尺度としたデータを. 行うことを目的とした研究は日本では 1980 年代. 測定できるという点であり,このことによって,. より行われている.代表的なものには,最初に研. これまで分析に用いることができなかった変数の. 究として取り組みが行われた TNS(Toranomon. 活用が可能となる.それが「患者と看護師の接触. 1). Nursing System) や,日本の医療機関において 2). 時間」である.本稿では,この接触時間という概. 最も普及している看護必要度 等がある.また国. 念を用いて「翌日の患者と看護師の接触時間」を. 外においても,患者分類から看護の定量化を試み. 予測する新たな方法の提案と仮説の検証を行うこ. 3,4). るツールである米国の Nursing Intensity Index ®. や Medicus ,フィンランドを中心とした医療機 5). ととする. 接触時間を縦断的に調査した際に「当日の接触. 関において普及している RAFAELA System 等. 時間」と「翌日の接触時間」には誤差が生じる.. がある.しかしながら,これらの方法を用いても. その誤差を「接触時間の変化量」とした場合, 「当. 翌日の適正な人員配置予測を可能にする実用的な. 日の接触時間」と「接触時間の変化量」によって. システムの確立には至っていない.その原因は看. 「翌日の接触時間」を算出することができる.つ. 護を定量化する手法にある.これまでの先行研究. まり, 「接触時間の変化量」を予測することがで. では,看護を定量化する際に患者分類や看護ケア. きれば, 「翌日の患者と看護師の接触時間」の予. 内容等によって重みづけする間接的な手法がとら. 測も可能であるといえる.この方法の独自性は,. れてきた.しかし,複雑な過程で提供される看護. 直接的に「翌日の接触時間」を予測するのではな. を定量化することは容易ではなく,看護業務量等. く, 「接触時間の変化量」 を予測する点にある. 「接. の予測においては実際の業務量との間に乖離が生. 触時間の変化量」は「当日と翌日の状況の違い」. じていた.本来であれば看護を定量化するための. に基づいているため,予測因子をこれまでよりも. 尺度は,万国共通で最も信頼のある時間を測定尺. 容易に特定することができる.また, 「当日の接. 度として活用することが望ましい.しかし,時間. 触時間」を基準として「翌日の接触時間」を算出. の測定には事象を観測するために人的資源の投入. するため,これまで反映することが難しかった個. を必要とするほか,被観察者や患者に大きな負担. 別の患者の特徴(ナースコール対応が多い,同じ. が生じる.そのため,実際にデータとして活用す. 援助内容でも多くの時間がかかる等)をある程度. ることは難しく,これまでの看護定量化や看護業. 反映できる方法でもある.しかしながら,この方. 務量予測に関する研究では時間を尺度としたデー. 法は 2 つの仮説の検証が前提とされた方法であ. タが直接的に用いられることはなかった.. る.. このような背景のなか,近年では ICT(Infor-. 1 つ目の仮説は, 「接触時間の変化量」が一般. mation and Communication Technology)ツール. 線形モデルの目的変数として扱われるため, 「接. を活用することで人的資源を投入せずに様々な. 触時間の変化量が正規分布に従う」といった仮説. データの測定が可能となっている.ビーコンや近. である.2 つ目の仮説は, 「当日の接触時間」を. 接センサ等を使用することで看護師の勤務中の位. 基準に「翌日の接触時間」の算出を行うため, 「当. 置情報などの行動分析データを定量的なデータと. 日の接触時間が翌日の接触時間に影響を与える」. して可視化することが可能である.実際にそのよ. といった仮説である.. うなツールを活用した業務改善の取り組みの実践. 看護を時間の概念で調査したこれまでの研究報. 例や研究報告も行われている6,7).それらの報告. 告では,タイムスタディに基づいた報告8)や,赤. からは,この技術を活用して看護を可視化し,業. 外線センサを病室に設置することで看護師の訪室.

(3) 医療情報学 39 (4) , 2019 197. 時間の測定を行った藤田ら9) の報告などがある.. 帯のみとし,始業開始時間から時間外勤務を含む. しかし,それらのデータによる報告は横断的な. 業務終了時間までを調査の対象とした.接触時間. データ分析に基づくものであり,縦断的な患者と. の測定は電波を発するビーコンとビーコンの電波. 看護師の接触時間のデータ分析は行われていな. を受信する端末を用いて測定した.ビーコンを対. い.そのため,本研究で扱う 2 つの仮説を検証す. 象患者の病室に設置し,電波を受信する端末を当. る研究報告は見当たらない.. 該病棟の看護師全員が携帯し業務を行うことで,. 以上のことから,縦断的に患者と看護師の接触. 患者と看護師との接触時間を自動で測定した.分. 時間を調査し,接触時間の特徴を明らかにするこ. 析で扱う変数は「当日の接触時間」 , 「翌日の接触. とは,ICT を活用した新たな看護業務量の予測. 時間」 「当日と翌日の接触時間の変化量(以下「変 ,. 方法の提示につながる重要な知見であり,意義が. 化量」とする) 」の 3 つの変数とした.. あると考える.. 4)器機の仕様とデータ処理 2. 目 的. (1)患者の病室に設置するビーコン 患者の病室に設置するビーコンは Aplix 社の. 患者と看護師の接触時間を縦断的に調査し, 「当. MB004Ac の ビ ー コ ン を 使 用 し た. 大 き さ は. 日の接触時間」,「翌日の接触時間」 , 「接触時間の. 50 mm×70 mm×27.5 mm であり,仕様は iBea-. 変化量」を変数として扱い,それらの変数として. con certified で Bluetooth Low Energy(BLE). の特徴と関係性を明らかにすることを本研究の目. の電波を発するビーコンを使用した.周波数帯は. 的とする.. 2.4 GHz であり,人体や電子機器に影響を及ぼさ 3. 方 法. ない産業科学医療用バンドの周波数帯とした. ビーコンは患者のベッドの頭側のベッドフレーム. 1)用語の操作的定義. の中央に設置した.a 病棟,b 病棟でのビーコン. 患者と看護師の接触時間:ICT ツール(電波. 設置環境は 6 床部屋であり,c 病棟は全対象者個. を発するビーコンとビーコンの電波を受信する端. 室の環境でビーコンを設置した.. 末)を用いて測定した,病室内での患者と看護師. (2)看護師が携帯する受信端末. の接触時間を本研究における当該患者と看護師の. 看護師が携帯する受信端末は apple 社の ios 端. 接触時間とする.複数の看護師が 1 人の患者に対. 末(CPU:Aplle A8, IEEE:802.11a/b/g/n/ac). 応した場合の接触時間は複数人分の看護師との接. を 使 用 し た. 大 き さ は 123.4 mm×58.6 mm×. 触時間を当該患者の接触時間として加える.. 6.1 mm であった.受信端末に接触時間を測定す. 2)対象. るためのアプリ(株式会社ジェーエムエーシステ. A 病院における 3 つの病棟を対象病棟とした.. ムズが提供するアプリ)を組み込み,業務開始時. 対象病棟の看護師の基準配置は 7 対 1 看護配置. にアプリを起動し,業務終了時にアプリを終了さ. であり,固定チームナーシングの看護体制であっ. せることで接触時間を測定した.接触時間は受信. た.3 つの病棟の特徴として a 病棟は整形外科の. 端末内に 1 秒ごとのログデータとして蓄積され,. 診療科を主とする病棟であり,b 病棟は泌尿器科,. 調査終了後に解析を行うことで接触時間をデータ. 婦人科等の診療科を主とする病棟,c 病棟は緩和. 化した.. ケア病棟であった.対象者は当該病棟で入院加療. (3)接触時間のデータ処理. 中の患者 47 名とした.. 接触時間のデータは 1 ログ 1 秒のデータを基. 3)調査方法. に,4 秒間で最も電波強度と頻度の高いものだけ. 病室内での患者と看護師との接触時間を 6 日間. にクレンジングしたログデータ(1 ログ/4 秒の. に渡り縦断的に調査した.看護師の勤務帯は日勤. データ)として抽出した.また,電波の誤探知に.

(4) 198 ビーコンとスマートデバイスを用いた患者と看護師の接触時間に関する研究. よるデータを除外するため,iBeacon10)の距離判 定における far. ※1. 認を得て実施した.. を示すログデータと,電波強度. 4. 結 果. を 示 す RSSI(Received Signal Strength Indicator)が-97 以下(受信端末が受信できる電波の. 1)対象者(表 1). 境界にあたる電波強度) のログデータは除外した.. 47 名の対象者のうち,入退院,転棟等の患者. さらに,看護師が受信端末を携帯している状態に. 入れ替えイベントにより接触時間の縦断的測定が. おいては,同一の位置関係にいたとしても電波強. 困難な者を除外し,40 名(a 病棟 20 名,b 病棟. 度を示す RSSI が常に微量に変動するため,5 分. 10 名,c 病棟 10 名)のデータを分析に用いた.. 以上電波強度に変動がみられないログデータは誤. 変数として扱う「当日の接触時間」 , 「翌日の接触. 探知と判断し除外した.. 時間」 , 「変化量」の 3 つの変数において,欠損な. 5)分析. く収集されたデータ数は 185 であった.病棟ご. 分析は「当日の接触時間」 , 「翌日の接触時間」 ,. との対象者の性別,年齢層,入院日数等は表 1 を. 「変化量」の 3 つの変数を用いて分析を行った.. 参照とする.. 各変数の記述統計量を算出するとともに変数の分. 2)記述統計量と変数の分布(表 2,表 3,図 1). 布を確認した.変数の分布を確認後,回帰分析に. 全体のデータにおける「当日の接触時間(単位:. よって「翌日の接触時間」や「変化量」を予測す. 分, 以 下 同 じ ) 」 の 平 均 は 31.51±23.23(mean. る際に「当日の接触時間」がどの程度の影響を示. ±SD 以下同じ) , 「翌日の接触時間」は 33.91±. すかを分析した.回帰分析の手法は正規分布に従. 24.02, 「変化量」は 2.40±26.91 であった.接触. わなかった「翌日の接触時間」を目的変数とした. 時間の最大値は 122,最小値は 2 であった.各変. 単変量のロジスティック回帰分析と,変数の正規. 数のパーセンタイル値,および病棟ごとのデータ. 性が確認された「変化量」を目的変数とした単回. に関しては表 2 を参照とする.. 帰分析によって,オッズ比と説明率を算出した.. 全体のデータによる各変数の分布について, 「接. ロジスティック回帰分析においては,目的変数で. 触時間」のヒストグラムは歪度が大きく,中央が. ある「翌日の接触時間」を 2 値の変数とするため,. 左にずれた歪んだ分布を示した.正規性の検定で. 中央値よりも接触時間が長い群と,中央値以下の. は,外れ値を含む全データと,上下 5 パーセンタ. 群に分類し,接触時間が中央値よりも長くなる事. イルを除去したデータをもとに検定を実施し,い. 象を予測するモデルとした.. ず れ も Shapiro Wilk 検 定 に て p=.000 で あ り,. 6)倫理的配慮. 接触時間の分布は正規分布を示さなかった. 一方,. 対象者の研究への協力は自由意思であり,研究. 「変化量」のヒストグラムは歪度が小さく左右の. 協力の有無によって不利益を被らないこと等の説. 歪みは少なかった.正規性の検定では,外れ値を. 明を当該病棟の看護師長立ち合いのもと書面を用. 含 む デ ー タ に お い て Shapiro-Wilk 検 定 に て. いて行った.研究への同意は,本人または家族の. p=.000 であったが,上下 5 パーセンタイルを除. 同意書への署名によって同意を得た.研究倫理に. 外 し た デ ー タ で は Shapiro-Wilk 検 定 に て. 関わる審査については対象病院の研究倫理審査委. p=.173,Kolmogorov-Smirnov 検 定 に お い て も. 員会からの承認と,日本赤十字秋田看護大学日本. p=.200 であり変数の分布が正規分布を示した.. 赤十字秋田短期大学研究倫理審査委員会による承. 3) 「当日の接触時間」による「翌日の接触時間」 のオッズ比(表 4). iBeacon における距離判定10)は「Immediate」 「Near」 , , 「Far」 , 「Unknown」の 4 段階で示される.本研究では およそ 3 m 以内を示す「Immediate」と「Near」を対 象者と接触している時間として判断した. ※1. 目的変数を「翌日の接触時間(接触時間が中央 値よりも大きい事象の予測」 ,説明変数を「当日 の接触時間(連続変数) 」とした単変量によるロ.

(5) 医療情報学 39 (4) , 2019 199. 表 1 対象者の性別,年齢層,入院日数 単位:人 病棟. 対象者. a 病棟 b 病棟 c 病棟. 20 10 10. 性 別. 年 齢. 調査開始時の入院日数. 男性. 女性. 20-39 歳. 40-64 歳. 65 歳以上. 1-3 日目. 4-7 日目. 8-14 日目. 15 日以上. 14 6 4. 6 4 6. 1 0 0. 8 1 0. 11 9 10. 2 2 1. 2 1 0. 7 6 1. 9 1 8. 表 2 記述統計量 調査 場所. 5 パー 10 パー 25 パー 50 パーセ 75 パー 90 パー 95 パー 最大 最小 センタ 平均値 標準 センタ ンタイル センタ センタ センタ 偏差 値 値 イル センタ イル イル (中央値) イル イル イル . 変数. 当日の接触時間 全体 翌日の接触時間 変化量*. 31.51 23.23 122 33.91 24.02 126. 当日の接触時間 a 病棟 翌日の接触時間 変化量*. 33.12 22.08 122 35.69 22.38 122. 14.0 16.5. 25.0 29.0. 41.5 46.5. 64.0 64.4. 72.0 79.5. 185 185. 2.40 26.91 117 -77 -39.1 -30.4 -13.0. 1.0. 16.0. 33.4. 47.2. 185. 16.0 19.0. 30.0 32.0. 45.5 5.0. 64.0 64.6. 70.6 73.2. 93 93. 77 -57 -37.9 -31.6 -14.0. 1.0. 17.0. 30.6. 48.6. 93. 当日の接触時間 37.88 27.63 120 6 7.0 9.4 16.0 b 病棟 翌日の接触時間 37.07 27.31 120 6 7.0 9.0 14.0 変化量* -0.81 26.78 56 -72 -52.8 -29.6 -18.0. 27.0 28.0 -3.0. 52.0 50.0 16.0. 77.4 77.4 39.4. 100.4 100.4 50.2. 43 43 43. 当日の接触時間 c 病棟 翌日の接触時間 変化量*. 2.57 25.19. 22.88 18.68 106 27.78 23.37 126. 2 2 2 3. 2 2. 6.0 6.0 5.7 5.7. 3.0 5.5. 7.0 9.0. n. 7.8 9.4. 6.0 8.0. 11.0 14.0. 19.0 21.0. 28.0 37.0. 51.0 51.0. 60.0 87.0. 49 49. 4.90 30.29 117 -77 -45.5 -21.0. -8.5. 5.0. 15.5. 39.0. 66.0. 49. 数値の単位: 「分」 :変化量とは( 「翌日の接触時間」 - 「当日の接触時間」 )で表される接触時間の変化量を示す. *. 表 3 変数の正規性 データ. 歪度. 尖度. 接触時間. 外れ値含む 上下 5 パーセンタイル除去. 1.384 0.742. 2.223 -367. 変化量. 外れ値含む 上下 5 パーセンタイル除去. 0.521 0.115. 2.22 -0.439. Shapiro-Wilk. Kolmogorov-Smirnov. .000 .000. .000 .000. .000 .173*. .003 .200*. *. :帰無仮説(H0) 「データが正規分布に従う」が採択されたことを示す. ジスティック回帰分析によって, 「当日の接触時. でモデルの当てはまりに問題はなかった.. 間」によるオッズ比を算出した.オッズ比は 1.05. 4) 「当日の接触時間」による「変化量」の説明. であり,オッズ比の 95%信頼区間は下限 1.03,. 率(表 5). 上限 1.07 であった.Nagelkerke の疑似決定係数. 目的変数を「変化量」 ,説明変数を「当日の接. は .245 で あ っ た.Hosmer-Lemeshow 検 定 に よ. 触時間」とした単回帰分析によって, 「当日の接. るモデルの適合度検定では,有意確立(p)=.617. 触時間」による「変化量」の説明率を算出した..

(6) 200 ビーコンとスマートデバイスを用いた患者と看護師の接触時間に関する研究 25. 20. 20. 15. 15. 度数. 度数. 25. 10. 10. 5. 5. 0. 0. 20. 40. 60 80 接触時間. 0. 100 120. 40. 0. 10 20 30 40 50 60 70 接触時間(上下 5 パーセンタイル除去). 25 20. 30 度数. 度数. 15. 20. 10. 10. 5. 0. −50. 0 50 変化量. 0 −40 −30 0 20 40 変化量(上下 5 パーセンタイル除去). 100. 図 1 ヒストグラム. 表 4 単変量ロジスティック回帰分析(目的変数:翌日の接触時間) n=185 説明変数. 偏回帰係数 (B). 標準誤差 (SE). p値. オッズ比. 95% CI. Nagelkerke R2. Hosmer-Lemeshow 検定. 当日の接触時間. .048. 0.009. .000. 1.050. 1.030-1.069. .245. .617. 表 5 単回帰分析(目的変数:変化量) n=185 説明変数. 標準偏回帰 b の標準 係数( b) 誤差. 当日の接触時間. -.549. .072. いて,病室内で患者が看護師と接触する時間の分 布は,ヒストグラムでは歪度が大きく,中央が左 にずれている非正規分布であることが特徴的で. 2. p値. R. .000. .302. あった.接触時間のパーセンタイルをみると,中 央値が 25 分であり,75 パーセンタイル値が 41.5 分,95 パーセンタイル値が 72 分であることから,. 2. 標準偏回帰係数(β)= .549 であり, 決定係数(R ). 病室内での接触時間がおよそ 40 分を超える患者. =.302 であった.分散分析による有意確立(p). は看護提供時間が多い上位 25%にあたり,およ. =.000 であった.. そ 70 分超える患者が上位 5%にあたる患者であ 5. 考 察. ることが本研究結果から推測される.一方,接触 時間が少ない患者をみると 25 パーセンタイル値. 1)各変数の特徴. が 14 分であることから,およそ 4 分の 1 にあた. 全体のデータにおける「当日の接触時間」につ. る患者が約 15 分以内の接触時間で日勤帯を終え.

(7) 医療情報学 39 (4) , 2019 201. ていることが推測される.. 要素の一つであることが示唆された.. 全体のデータにおける「変化量」の分布では,. 3)今後の展望. 正規分布に従うことに加え,50 パーセンタイル. 少子高齢化に伴うわが国の保健医療における課. 値が 1 分であり接触時間の変化が全体としてバラ. 題の一つは生産性をいかに高めるかということで. ンスよく分布していることが特徴的であった.患. あり,厚生労働省11)は 2035 年に向けたビジョン. 者と看護師の接触時間が個々の患者要因による影. としてリーンヘルスケアの概念を掲げている.そ. 響のみで構成されるのであれば,このように 0 付. のため,看護管理の分野においてもより実用的な. 近を中央値とした正規分布をとることは考えにく. 分析ツールや予測モデルの開発が必須である.そ. く,病棟全体のイベントや,重症患者の割合,配. のような背景を踏まえると,本研究結果は患者と. 置される看護師の受け持ち状況や総合的な能力な. 看護師の接触時間を日常的にデータとして蓄積す. ど,看護を提供する側の全体的な要素が接触時間. ることで翌日の接触時間を予測するといった新た. に影響を与えていることが推測される.そして,. な可能性が示唆されており,社会的にも重要な知. 変化量の幅をみると,25 パーセンタイル値が-13. 見である.今後は日常的に看護管理に活用される. 分,75 パーセンタイル値が 16 分であったことか. 実用的な ICT ツールの開発や,接触時間を予測. ら,およそ半分の患者は病室内での接触時間の変. するモデルの予測精度を高める要因の探索が課題. 化量が,約 15 分以内であり接触時間に大きな変. となる.. 化がないことが推測される.また,上下 10 パー. 4)研究の限界. センタイル値をみると,10 パーセンタイル値が. 本研究では,BLE(周波数帯が 2.4 GHz)を用. -30.4 分,90 パーセンタイル値が 33.4 分であり,. いて病室内での接触時間を調査した.複数患者が. 接触時間の変動がおよそ 30 分を超す患者は全体. 近くにいる部屋においては,電波強度による識別. で 20%程度であることも結果から明らかとなっ. を行い接触時間の算出をしているが,近接する互. た.. いのビーコンによる電波干渉による誤探知は否定. 2)当日と翌日の接触時間の関係. できない.また,一般的に 2.4 GHz の周波数帯. 本研究では,「翌日の接触時間」と「変化量」. は多くの電子器機の電波が使用される周波数帯で. を回帰式の目的変数として予測する 2 通りの分析. もあり,環境による影響も受けやすい.これらの. を行った.単変量によるロジスティック回帰分析. ことを考慮すると,本研究の BLE による近接セ. の結果では, 「翌日の接触時間」が中央値よりも. ンサで収集したデータの精度には限界があり,. 大きくなる事象を予測するモデルとし, 「当日の. BLE を用いてどれだけ精度の高いデータを収集. 接触時間」によるオッズ比が 1.05 であり有意な. できるかは,今後検証が必要である.. 結果を示した. 「当日の接触時間」が連続変数で. 接触時間に影響を与える交絡因子について,調. あることを考慮すると,当日の接触時間が 10 分. 査を行った 3 病棟では接触時間の変化量の中央値. 増えた時のオッズ比は 1.63 である.そのため,. が 0 付近で正規分布に従っていた.このことから. この結果からは当日の接触時間が翌日の接触時間. は,病棟全体として概ね看護師が患者に対応でき. を予測する上で重要な要素の一つであることが推. る時間が決まっていることが推測される. 例えば,. 測される.また,「変化量」を目的変数とし, 「当. 重症な患者がいた場合には,その患者への接触が. 日の接触時間」を説明変数とした単回帰分析では. 多くなり,他の患者への接触が少なくなるなどの. 2. =.302 であり,「当日の接触時間」 決定係数(R ). 状況である.こうした病棟全体としての調整が行. による「変化量」の説明率が約 30%であること. われるために接触時間の変化量が 0 付近で推移す. が示された.これらの結果から, 「当日の接触時間」. ることが推測される.つまり,接触時間に影響を. が翌日の接触時間や変化量を予測する上で重要な. 与える交絡因子として,病棟全体の患者重症度や.

(8) 202 ビーコンとスマートデバイスを用いた患者と看護師の接触時間に関する研究. スタッフ構成などが考えられる.本研究において は,こういった交絡因子の調整に限界があり,今 後の研究課題としてあげられる. 6. 結 論 患者と看護師との接触時間を分析し, 「接触時 間」の分布が非正規分布であり,一般線形モデル における目的変数としては不適切であるというこ とが明らかとなった.一方, 「接触時間の変化量」 の分布は正規分布に従う分布であり,一般線形モ デルにおける目的変数として適していることが示 された.また,本研究で扱った変数間の関係とし ては,「翌日の接触時間」や「接触時間の変化量」 を予測する際に「当日の接触時間」が重要な要素 の一つということが示唆された.本研究の結果か ら,患者と看護師の接触時間を持続的に観測する ことによって,翌日の接触時間を予測する新たな 方法を確立できる可能性が示された. 本研究は,一般社団法人日本私立看護系大学協 会研究助成事業 平成 30 年度若手研究者研究助成 を受け実施している. 本論文に関連し開示すべき利益相反はない . 参 考 文 献 1)栗原やま.TNS について(虎の門病院看護部編) . TNS「忙しさ」の尺度と看護人員配置.メヂカル フレンド社,1995:15-30. 2)筒井孝子.看護サービスを評価する方法. 「看護必 要度」の研究と応用.医療文化社,2003:1-23.. 3)Reitz JA. Toward a comprehensive nursing intensity index:Part I, development. Nursing Management 1985;16, 8:21-30. 4)Reitz JA. Toward a comprehensive nursing intensity index:Part Ⅱ, testing. Nursing Management 1985;16, 9:31-42. 5)Rauhala A, Lisbeth F. Determining optimal nursing intensity:the RAFAELA method. Journal of Advanced Nursing 2004;45, 4:351-359. 6)磯田達也,井上創造,花沢明俊,他.携帯センサ と近接センサを用いた看護業務時間に影響を与え る要因の分析.情報処理会誌 2015;9:1-8. 7)杉山康彦,白水麻子,中島直樹,井上創造.センサー と医療ビッグデータを活用した医療サービス分析 システムの研究開発:業務分析から課題を抽出し 改 善 に つ な げ る. 看 護 管 理 2017;27, 8:658663. 8)筒井孝子.急性期病棟における業務量調査データ を用いた看護時間推定モデルの開発― 「看護必要 度」予測システムへの応用.看護 2000;52, 3: 25-29. 9)藤田 茂,永井庸次,飯田修平,他 . ビーコンと センサーを用いた他計式タイムスタディに基づく 重症度,医療・看護必要度の評価.医療マネジメ ント会誌 2017;18, 2:61-66. 10)Apple. Getting Started with iBeacon Version1.0. Apple, 2014. [https://developer.apple.com/ibeacon/GettingStarted-with-iBeacon.pdf(cited2019-Aug-8) ] . 11) 「保健医療 2035」策定懇談会.2035 提言書.厚生 労働省,2015. [https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/ hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035/assets/ file/healthcare2035_proposal_150609.pdf(cited 2019-Aug-8) ] ..

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参照

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