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Chondrosarcoma of the temporal bone A case report and review of the Japanese literature

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臨 床 耳 科 Vol. 17 No. 2, 1990: 80-86

多彩 な脳神 経症状 を呈 した側頭 骨軟骨 肉腫症例

今 村 俊 一

今 村 まゆみ

荻 野

白 倉 真 人

野 沢

村 上 嘉 彦

山梨医科大学耳鼻咽喉科学教室 1. は じめ に 側 頭 骨 に 原 発 す る 軟 骨 肉腫 は極 め て 稀 で,そ の 早 期 診 断 も ま た 困 難 で あ る と言 わ れ て い る 。 特 に 錐 体 部 に 発 生 した症 例 に つ い て は 多彩 な脳 神 経症 状 が 出現 して 初 め て 診 断 に 至 る の が 現 状 で あ る。 今 回我 々 は 片側 の 難聴,顔 面 神 経 麻 痺 に加 え て 下 部 脳 神 経 障 害 を合 併 し た側 頭 骨 原 発 の 軟 骨 肉 腫 の 一 症 例 を経 験 した の で過 去 の 本 邦 報 告 症 例 と と も に 考 察 を加 え報 告 す る。 2. 症 例 【症 例 】46歳,男 性 【初 診 日】 【主 訴 】 左 側 難 聴,左 側 顔 面 神 経 麻 痺,ふ らつ き感,舌 運動 障 害,榎 声,嚥 下 障 害 【既 往 歴 】26歳 時 に 肺 結 核 の た め ス トレ プ トマ イ シ ン 治 療 を うけ て お り,36歳 時 に は 全 身関 節痛, 発 熱,口 内 炎,結 膜 炎,陰 部 潰 瘍 が 出現 し,Behcet 病 と診 断 され,ス テ ロ イ ド等 の 内 服 治 療 を 続 け て い た 。 【家 族 歴 】 母 親 が 肺 結 核,姉 がBehcet病 の 診 断 を受 け て い る。 【現 病 歴 】4年 前 よ り左 側 の 難聴 と顔 面 神 経麻 痺 が 出現,そ の 後,ふ らつ き感,舌 の 運 動 障害,嗄 声,嚥 下 障 害 を 自覚 し,徐 々 に 悪 化 傾 向 を示 した が,そ の 間 他 院 に お け るCT等 の 精 査 で は 原 因不 明 と言 わ れ て い た との こ とで あ った 。 1988年10月 右 視 力 低 下 が 進 行 し た た めneuro Behcet病 の 疑 い に て 当 院 眼科 へ 入 院 とな り,こ

の 際 施 行 したBrain MRIに て 左 頭 蓋 底 にmass lesionを 認 め た ため,脳 神 経 外 科 へ 転 科 とな っ た。 そ の後,難 聴,顔 面神 経 麻 痺 そ の他 の 脳 神 経 障 害 の 精 査 の た め 当科 を受 診 した。 【臨 床 経 過 】 初 診 時,意 識 障 害 は な く,時 にふ ら つ く事 が あ っ たが 独 歩 可 能 な状 態 で あ っ た。 左 末 梢 性 顔 面神 経 麻 痺(score 10点)が 確 認 さ れ た が, 外 耳 道,鼓 膜 に は 異 常 所 見 を認 め な か っ た。 口腔 内 で は 口蓋 垂 の 右 方偏 位,舌 の 左 方偏 位,運 動 障 害 が み られ,嚥 下 困 難 の 訴 えが あ り,咽 頭 反 射 は 減 弱 して お り,左 声 帯 は 副 正 中位 で 固 定 し て い た 。 さ らに 左側 胸 鎖 乳 突 筋 に 若 干 の 萎縮 傾 向 が み られ た 。両 側 の 視 力低 下 を認 め る もの の 眼球 運 動 障 害 は なか った 。 以 上 に加 え左 側 の 難 聴 を認 め,一 部 不 全 麻 痺 も 図1 初 診時 の純 音聴 力検査 80

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側頭骨軟骨肉腫症例 SISI test

持続音

断続音

図 2 自 記 オ ー ジ オ グ ラ ム,SISIテ ス ト 含 めVII,VIII,IX,X,XI,XIIの 脳 神 経 麻 痺 が 確 認 さ れ た 。 1) 神 経 耳 科 学 的 所 見 純 音 聴 力 検 査 に て 左 側 の 高 度 混 合 難 聴(図1)を 認 め,左 側SRは 同 側,反 対 側 刺 激 と も 無 反 応 で あ っ た 。 自記 オ ー ジ オ メ ト リー 検 査 で は 左 側 はJergerII 型 を 示 し,SISItestで は1000,2000Hzで 陽 性 で あ り(図2),recruitment現 象 は 陽 性 と判 定 さ れ た 。 2) 平 衡 機 能 検 査 起 立,お よ び 歩 行 試 験 で は,動 揺 傾 向 を 認 め た が 明 ら か な 偏 椅 は な く,ま た 注 視 眼 振,頭 位 及 び 頭 位 変 換 眼 振 は 認 め な か っ た 。

ENGに てETTはsaccadic patternを 認 め,

OKPは 低 速 よ り解 発 不 良(図3)で あ っ た 。 ま た, caloric testで は 明 瞭 な 左 右 差 を 認 め な か っ た 。 3) 画 像 診 断 単 純 撮 影 で は 明 か な 異 常 を 認 め な か っ た 。 単 純CT(図4)に て 境 界 不 明 瞭 なlow density massが 側 頭 骨 錐 体 内 に 浸 潤 し,乳 突 洞 を 破 壊 し て い る 像(矢 印)を 認 め た が,造 影 に よ る 腫 瘍 の 明 明 か なenhancementは 認 め ら れ な か っ た 。 ま た 軸 位 撮 影,CT,脳 血 管 造 影 よ り左 頸 静 脈,S状 静 脈 洞 の 閉 塞,頸 静 脈 孔 の 拡 大 が推 測 さ れ た 。 MRIに て腫 瘍 が 脳 幹 部 を圧 排 し,頭 蓋 外 へ も浸 潤 し,一 部 側 頭 下 窩 お よ び副 咽頭 間 隙 に お よぶ 像 が確 認 され た(図5)。 以 上 の 所 見 か ら,頸 静 脈 孔 周 囲 及 び 錐 体 後 部 の 腫 瘍 と診 断 し当 院脳 神 経 外 科 に て に腫 瘍 摘 出 術 が 施 行 され た 。 手 術 は,全 身麻 酔 下 に 側 頭 開 頭 に て 施 行 さ れ,同 科 の 記 載 に よれ ば 腫 瘍 は 側 頭 骨 錐 体 部 後 半 部 と硬 膜 外 の 頸 静 脈 孔 付 近 に 存 在 し下 部 脳 神 経,及 び 脳 幹 部 を圧 排 し て お り,こ れ らが 吸 引 除 去 さ れ た 。 硬 膜 内へ の 浸 潤 は な く頭 蓋 内 で の 顔 面 神 経,聴 神 経,及 び 下 部 脳神 経 へ の 浸 潤 は 認 め なか っ た 。 耳 科 医 は 本 手 術 に 直 接 関 与 せ ず,主 と して術 前 の 神 経 耳 科 学 的 評 価 を依 頼 さ れ た に 止 ま っ て い た ため,鼓 室 所 見 や,内 耳 な どへ の 浸 潤 や,そ の 他 の 腫 瘍 に よ る側 頭 骨 へ の 影 響 に 関 す る詳 細 に つ い て は 明 らか で は な い 。 4) 病 理 組 織 所 見 腫 瘍 は 肉 眼 的 に ゼ リー 状 を して お り病 理 組 織 学 臨 床 耳 科 Vol. 17 No. 2, 1990 81

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側 頭 骨 軟骨 肉腫 症例 OKP(水 平)

眼球運動(原 波形)

眼球速度(微 分波形)

ETT(水 平) 眼球 運 動(原 波 形)

眼球速度(微 分波形)

図 3 ENG.(水 平 方 向OKP. ETT)

図 4 CT.(単 純) 図 5 MRI.(造 影Gd-DTPA)

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側頭 骨 軟 骨 肉腫 症例 的 検 索 に よ り豊 富 なmyxomatousな 基 質 の 中 に 多形 性 に 富 む 腫 瘍 細 胞 が 遊 離 性,浸 潤性 に 増 殖 し てお り(図6),一 部 に 軟 骨 へ の分 化 を示 す 部 分 が 存 在 した 。 ま た一 部 錐 体 部 の海 綿 骨 へ の 浸 潤 も認 め ら れ た 。 ま た免 疫 組織 染 色 に てtype IIコラー ゲ ン,S-100 蛋 白 が 陽 性 で あ っ た 。 以 上 よ り病 理 組 織 学 的 に 側 頭 骨 原 発 の 軟 骨 肉 腫 と診 断 され た 。 術 後,顔 面 神 経 麻 痺,聴 力 は 術 前 よ り悪 化 し た が,ふ らつ き感 は な くな りOKP,ETTに て も改 善 傾 向 を認 め て お り,現 在,局 所 再 発,遠 隔 転 移 も含 め 経 過 観 察 中 で あ る 。 図 6 病 理 組 織 所 見H-E染 色 ×10 3. 考 察 軟 骨 肉 腫 は 腫 瘍 細 胞 が 軟 骨 形 成 能 を有 す る悪 性 骨 腫 瘍 の 一 つ で 日本 整 形 外 科 学 会 の 統 計1)に よれ ば 骨 悪 性 腫 瘍 中11.6%を 占め 大 腿 骨,骨 盤,上 腕 骨 に 発 生 頻 度 が高 い と報 告 さ れ て い る。 同腫 瘍 の 頭 頸 部 領 域 に お け る 発 生 は 稀 で あ り, なか で も側 頭 骨 原 発 の 軟 骨 肉腫 は きわ め て稀 で あ る。 今 回 本 邦 に お け る症 例 報 告 を可 能 な 限 り検 索 した が 自験 例 を含 め6例 の 報 告2)∼6)がみ られ るの み(表1)で あ っ た 。側 頭 骨 を 中心 に 頭 頸 部 領 域 に お け る同 腫 瘍 の本 邦 に 於 け る報 告 例 に つ き考 察 し た。 【発 生 部 位 】 頭 頸 部 領 域 に お い て は,上 顎2)∼9),下 顎7),喉 頭10),鼻 中 隔7),11)な ど の 他,上 咽 頭13),副咽 頭 間 隙13)に 発 生 し た と の 報 告 も 見 ら れ る 。 な か で も 顎 骨 領 域 に お い て は1976年 に 佐 藤 ら7)が35例,喉 頭 に お い て は 森 田 ら10)が1988年 に21例,ま た 小 林 ら9)も1988年 に 上 顎 の 軟 骨 肉 腫 に つ き 本 邦 報 告 例 21例 の 集 計 を 報 告 し て お り,佐 藤 ら7)は,顎 顔 面 悪 性 腫 瘍 に しめ る 軟 骨 肉 腫 の 割 合 は0.3%程 度 で あ る と 報 告 し て い る 。 側 頭 骨 を 含 め た 頭 蓋 骨 に 軟 骨 肉 腫 が 発 生 す る こ と は き わ め て 稀 で あ り,日 本 整 形 外 科 学 会 の 統 計1) に よ る と頭 蓋 骨 の 発 生 は413例 中1例 の み で あ り, Kvetonら14)は,頭 蓋 底 の 軟 骨 肉 腫 は 頭 蓋 内 腫 瘍 の0.15%で あ り,頭 蓋 底 腫 瘍 の6%で あ っ た と報 告 し て い る 。 側 頭 骨 に お け る 原 発 の 肉 腫 は 極 め て 稀 で あ り Naufal15)は1973年 に 過 去100年 間 の 文 献 を 検 討 し 211例 の 側 頭 骨 肉 腫 の 症 例 報 告 が あ り,そ の う ち 1例 が 軟 骨 肉 腫 で あ っ た と 報 告 し て い る 。 ま た Coltreraら16)は1986年 に13例 の 自 験 例 と11例 の 文 献 例 の 報 告 を し て い る 。 本 邦 に お い て は,1976 年 の 村 上 ら2)の 報 告 を初 め と し て 自 験 例 を 含 め6 例 が 報 告 さ れ て い る 。 本 邦 に お け る6症 例 の 側 頭 骨 に お け る 発 生 部 位 で は 本 症 例 を 含 め 錐 体 部2例, 乳 突 部3例,鱗 部1例 で あ っ た 。Coltreraら16)の 報 告 で は14例 が 錐 体 部 で あ り3例 が 乳 突 部 で あ っ た 。 本 腫 瘍 の 発 生 源 と し て は,側 頭 骨 の 鱗 部 は 膜 内 化 骨 に よ り 形 成 さ れ る が,錐 体 部,乳 突 部 は 軟 骨 内 化 骨 に よ り形 成 さ れ,14の 化 骨 中 心 を 持 つ こ と が 報 告 さ れ て お り17),これ ら の 遺 残 が 発 生 母 地 と な る こ と が 推 測 さ れ て い る 。 部 位 的 に はGacek18) は 破 裂 孔 に 存 在 す るfibrocartilageを 推 測 し て お り,村 上 ら2)は 耳 管 軟 骨 を 推 測 し て い る 。 ま た 三 谷 ら4)は 鱗 部 に 発 生 し た 症 例 に 対 し 軟 骨 組 織 の 迷 入 を 起 源 と し て 推 測 し て い る 。 当 症 例 で は,神 経 症 状,手 術 所 見 等 よ り頸 静 脈 孔 周 囲 よ り 発 生 し, 錐 体 後 方 へ 浸 潤 し た の で は な い か と 推 測 さ れ る 。 【好 発 年 齢 】 一 般 に 軟 骨 肉 腫 は10歳 か ら50歳 台 に 発 生 頻 度 が 高 く,各 年 代 間 で,ほ ぼ 同 様 の 発 生 率 を 示 し て い る1)。佐 藤 ら7)の 顎 顔 面 領 域 に お け る 集 臨 床 耳 科 Vo1. 17 No. 2, 1990 83

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側頭骨軟骨肉腫症例 表 1 本 邦 にお け る側 頭骨 軟骨 肉腫 自験例 を含 む報 告例 計 で は 平 均 年 齢 は39.3歳(上 顎41.3歳,下 顎35.0 歳),森 田 ら10)の 喉 頭 軟 骨 肉 腫 の 集 計 で は 好 発 年 齢 は40-60歳 で あ っ た と報 告 して い る 。Coltrera ら16)は男 性7例 の 平 均 が39歳,女 性11例 の 平 均 が 49歳 で あ っ た と報 告 し て い る。 今 回 の我 々 の 集 計 は6例 と少 数 で あ り22歳 か ら71歳 と幅 が あ った が, 40歳 台 が3例 で最 も 多 くみ られ た 。 【臨 床 症 状 】 一 般 に 臨 床 症 状 と して は 耳 後 部 腫 瘤, 耳 後 部 痛 の 他 に 多 彩 な 脳 神 経 症 状 を呈 す る こ とが 多 い 。鱗 部 に発 生 し た1症 例4)は 難 聴(伝 音難 聴), 耳 閉感 を主 訴 と して お り脳 神 経 症 状 の 出現 を認 め て い な い が,そ の 他 の5症 例 で は 少 な くと も1つ 以 上 の 脳 神 経 麻 痺 の 出現 をみ て い る。 脳 神 経麻 痺 と して は 顔 面 神 経 麻 痺 が5例 に 認 め られ最 も高 頻 度 で あ り,つ い で 難 聴,嗄 声 の 出 現 が 多 い 。 本 症 例 に お け る聴 覚,平 衡 覚 障 害 の 発 現 の機 序 に つ い て は,前 述 の よ うに 直 接 本 症 例 の 手 術 に 関 与 して い な か っ た の で,特 に 聴 覚 系 の 術 前 の機 能 障 害 に か か わ る側 頭 骨 内 の 所 見 につ い て は 明確 な 記 載 が 得 られ ず,こ れ を明 らか にす る こ とが で きな か っ たが,少 な く と も平 衡機 能 検 査 に よ る 異 常 所 見 (ETT,OKPな ど)は,腫 瘍 に よ る脳 幹 部 方 向 へ の影 響 に よ る もの と推 測 され,ま た下 部 脳 神 経 の 障 害 につ い て は 頸 静 脈 孔 付 近 で の 腫 瘍 に よ る圧 排 が そ の 原 因 と思 わ れ た 。 Coltreraら16)の 報 告 で は 初 発 と して は 外 転 神 経 麻 痺 が 最 も多 く,最 終 的 に これ に加 え迷 走 神 経,舌 咽神 経,顔 面 神 経 の麻 痺 が 高率 に 出現 した と報 告 し て い る。 発症 か らの 経 過 は 約 半 年 か ら 10数 年 と幅 が あ り,神 経 症 状 が 多発 化 し始 め て確 診 に 至 る症 例 も多 い 。 COltreraら16)の 報 告 で も3,4年 を 経過 の 後 に確 診 に 至 っ て い る症 例 も あ り,比 較 的長 い 経 過 を とる症 例 が 多 い よ う で あ る 。 診 断 に はCTが 最 も利 用 され る頻 度 が 高 い と思 わ れ るが,脳 神 経 症 状 の 発 現 状 況 か ら腫 瘍 の 局 在 を推 測 す る事 が 可 能 と思 わ れ,確 実 な脳 神 経 症 状 の 把 握 が 病 変 の 局 在 診 断 の た め 重 要 と考 え られ る。 ま た 当 症 例 の よ うにCTに よ る早 期 診 断 が 困 難 な場 合 も あ る の で,血 管 造 影 の ほ か 最 近 繁 用 さ れ る よ うに な っ たMRI等 の 併 用 は 診 断学 的 に 大 いに 期 待 で き る もの と考 え る。 【治 療 と予 後 】 軟 骨 肉腫 は,化 学 療 法,放 射 線 治 療 の 感 受 性 が低 く,外 科 的処 置 が 第 一 選 択 と考 え られ て い る 。 またColtreraら16)はprotonbeam の 使 用 を検 討 して い る と報 告 して い る。 予 後 につ い て はBastakis19)は 予 後 を左 右 す る 因 子 と して,部 位,初 回 手術 の 際 の摘 出 範 囲,組 織 学 的 なgradeの3因 子 を あ げ,頭 頸 部 の軟 骨 肉腫 で は 部 位 的 に 全 摘 出が 困難 な事 が 多 く,局 所 再 発 が 死 因 とな る こ とが 多 い た め,予 後 は決 して よ くな い と報 告 して い る。病理 組 織 学 的 に はEvans ら20)の分 類 が 有 名 で あ り,gradeに よ り肺転 移 を 含 め 予 後 が 異 な る事 が 報 告 され て い る。 4. ま と め 側 頭 骨 軟 骨 肉腫 は 極 め て稀 な疾 患 で あ り,錐 体 部 に 発 生 した もの は,完 全 摘 出 が 困難 な ため,予 後 は 決 して 良 くな い 。 今 後 脳 神 経 症 状 を参 考 と し 84 臨 床 耳 科 Vol. 17 No. 2, 1990

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側頭骨軟骨 肉腫症例 た,CT,MRI等 に よ る 早 期 診 断 が 必 要 と 思 わ れ る 。 本 論 文 の 要 旨 の 一 部 は 第17回 日本 臨 床 耳 科 学 会 に て 口演 し た 。 謝 辞 本 症 例 の 検 査 お よび 手 術 所 見 等 に 付 き,資 料 の 提 供 を い た だ い た 本 大 学 脳 神 経 外 科 貫 井 英 明 教 授,西 ヶ 谷 和 之 氏 に 深 謝 す る 。 参 考 文 献 1) 日本 整 形 外 科 学 会 骨 軟 部 腫 瘍 委 員 会 編: 整 形 外 科 病 理 悪 性 骨 腫 瘍 の 扱 い 規 約, 第1版. 金 原 出 版, 東 京, 9-16, 1982. 2) 村 上 嘉 彦, 石 井 雍 良, 水 島 昇, 他: 右 側 頭 骨 錐 体 部 原 発 の 軟 骨 肉 腫 症 例-そ の 診 断 と 治 療. 臨 床 耳 科3: 36-37, 1976. 3) 片 岡 隆 嗣, 渡 田 守, 杉 山 絢 子, 他: 側 頭 骨 原 発 軟 骨 肉 腫 の1症 例. 日 耳 鼻85: 1619-1620, 1982. 4) 三 谷 芳 美, 牧 野 浩 二, 森 満 保: 側 頭 骨 軟 骨 肉 腫 の1症 例. 耳 喉56: 267-271, 1984. 5) 川 上 晋 一 郎, 斎 藤 龍 介, 青 地 克 也, 他: 側 頭 骨Chondrosarcomaの1例. 臨 床 耳 科14: 297, 1987. 6) 藤 本 政 明, 川 上 晋 一 郎, 瓦 井 康 之, 他: 側 頭 骨 軟 骨 肉 腫 の2症 例. 臨 床 耳 科15: 53, 1988. 7) 佐 藤 研 一, 額 賀 大 文, 今 井 祐: 顎 骨 領 域 に お け る 骨 原 性 腫 瘍. II本 邦 に お け る 顎 顔 面 領 域 の 軟 骨 肉 腫 の 統 計 的 観 察. 日 口 外22: 513-522, 1976. 8) 矢 野 博 美, 花 牟 礼 豊, 小 川 和 昭, 他: 顎 顔 面 領 域 の 軟 骨 肉 腫 の2症 例. 耳 喉57: 43-47, 1985. 9) 小 林 大 三 郎, 伊 東 健, 川 辺 良 一, 他: 上 顎 に 発 生 し た 軟 骨 肉 腫 の1症 例. 日 口 外34: 2649 -2656 , 1988. 10) 森 田 恵 司, 武 藤 二 郎, 滋 賀 秀 壮, 他: 喉 頭 軟 骨 肉 腫 の2症 例. 耳 鼻34: 488-493, 1988.

11) Ishikawa K, Hanazawa S, Yamada M, et al: Chondrosarcoma arising in the nasal septum: A case report. Auris Nasus Larynx (Tokyo) 13, 35-41, 1986. 12) 久 保 將 彦, 山 田 弘 之, 清 水 猛 史, 他: 甲 状 腺 癌 を合 併 し た 上 咽 頭 軟 骨 肉 腫 の 一 症 例. 耳 鼻 臨 床79: 2061-2066, 1986. 13) 渡 部 雄 二, 夜 陣 紘 治, 羽 熊 直 行, 他: 副 咽 頭 間 隙 のchondrosarcomaの 一 症 例. 耳 鼻 臨 床 補 27: 106-109, 1988.

14) Kveton JF, Brackmann DE, Glasscock ME III, et al: Chondrosarcoma of the skull base. Otolaryngol Head Neck Surg 94: 23-32, 1986.

15) Naufal PM: Primary sarcomas of the temporal bone. Arch Otolaryngol 98: 44-50, 1973.

16) Coltrera MD, Goode PB, Harrist TJ, et al: Chondrosarcoma of the temporal bone, diagnosis and treatment of 13 cases and review of the literature. Cancer 58: 2689-2696, 1986.

17) Anson BJ, Donaldson JA: Surgical Anatomy of the temporal bone, 3rd edition. WB Saunders. Philadelphia. 1981. pp. 47-57. 18) Gacek RR: Diagnosis and management

of primary tumors of the petrous apex. Ann. Otol. 84: Suppl. 18, 1-20, 1975.

19) Bastakis JG: Tumors of the head and neck. Clinical and pathological considerations. 2nd edition. Williams & Wilkins, Baltimore, 1979. pp. 383-387.

20) Evans HL, Ayala AG, Romsdahl MM: Prognostic factors in chondrosarcoma of bone. Cancer 40: 818-831, 1977. 論 文 受 付 2年6月25日 論文 受 理 2年8月20日 別 刷 請 求 先:〒409-38山 梨 県 中 巨摩 郡 玉 穂 町 下 河 東1110 山梨 医科 大 学 耳 鼻 咽 喉 科 学 教 室 今 村 俊 一 臨 床 耳 科 Vol. 17 No. 2, 1990 85

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側頭骨軟骨 肉腫症例

Chondrosarcoma of the temporal bone

A case report and review of the Japanese literature

Shun-ichi Imamura, Mayumi Imamura, Jun Ogino Masato Shirakura, Izuru, Nozawa, Yoshihiko Murakami

Department of Otorhinolaryngology, Yamanashi Medical College

A 46 year-old male was first seen with a complaint of a left progressive hearing loss, facial weakness, hoarseness, and swallowing difficulty. Physical and radiological examinations revealed a space occupying lesion involving the petrous part of the temporal bone and infra-temporal fossa on the left side. After subtotal removal of the lesion, which was done by the neurosurgeons, a diagnosis of chondrosarcoma invading the left temporal bone with multiple involvement of the lower cranial nerves was made.

In the area of head and neck, particulary in the temporal bone, chondrosarcoma is ex-tremely rare. There are only 6 case reports of the tumor in the Japanese literature including our case. Since the tumor occurs infrequently and is usually located in an inaccessible region of the skull, it is usually diagnosed after the tumor reaches considerable size and causes multiple cranial nerve deficits or intracranial complications.

Key word: Chondrosarcoma, Temporal bone, Cranial nerve paralyses

図  4  CT.(単 純) 図 5  MRI.(造 影Gd‑DTPA)

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