Jpn . J . Clo . Res . 2016, Vol . 59 No . 2 ( 11 ) ― 57 ― 1.はじめに ほとんどの衣料品に洗濯などの取り扱い方法等を 示すケアラベル(取扱い表示記号)がついている。 これが平成 28 年 12 月1日から新しいケアラベルに 切り替わることになったため,その概要について報 告する。 2.繊維製品品質表示規程の改正 現在のケアラベルは,JIS L0217 に従って表示す ることとされている。新しいケアラベルは,平成 26 年 10 月に制定された JIS L0001(繊維製品の取扱 いに関する表示記号及びその表示方法)により表示 することになるが,JIS が改正されたのでケアラベル 表示が変わるのではないことに注意が必要である。 JIS は法律ではないので強制力はない。家庭用品 品質表示法の下にある繊維製品品質表示規程が JIS を引用しているため,JIS に強制力があるようにし ばしば誤解されている。繊維製品品質表示規程が 平成 27 年 3 月に改正され,平成 28 年 12 月 1 日か ら JIS L0001 を引用することになるため,ケアラベ ル表示が切り替わることになる。したがって,平成 28 年 11 月 30 日までは,現行のケアラベルで表示 しなければならない。 また,平成 28 年 11 月 30 日までに製造した繊維 製品については,12 月1日以降もそのまま販売す ることが可能である。新しいラベルを追加したり, 付け直したりする必要はない。 3.JIS の ISO への整合化 JIS L0001 は ISO3758(ケアラベル)に整合化さ れて作られている。JIS と ISO との整合化は,ケ アラベルに限らない。これは,日本も批准してい
る WTO/TBT 協定(Technical Barriers to Trade) に基づき,世界貿易の障害となる各国独自の規格を ISO に整合化させることによる。 しかし,当初,ISO3758 には自然乾燥記号がない こと,家庭洗濯試験機がヨーロッパのウェスケータ のみであったこと,などの理由により整合化させる ことは困難であった。 自然乾燥記号については,当初からヨーロッパ諸 国を中心として,自然乾燥は試験方法がないので ISO 規格には入れられない,という強い反対意見が あった。確かに,日本でも例えば,北海道と沖縄で は,自然乾燥といっても気象条件が大きく違うため, 標準的な方法は決められない。これに対して,日本 などアジア各国では家庭洗濯は自然乾燥と一対のも のであり,自然乾燥が規格にないと整合化できない と反論してきたが,なかなか理解が得られなかった。 このため説明方法を工夫し,自然乾燥はタンブラー 乾燥のように電力を使わず太陽エネルギーを利用す る省エネルギーの方法であるとして説得し,ようや く自然乾燥記号を取り入れることに理解を得ること ができた。 家庭洗濯試験機については,日本の一般家庭で使 用されている標準的な洗濯機ということで,パル セーター式の全自動洗濯機を試験機として規格に取 り込むこととした。これについては,既に多くの家 庭でドラム式洗濯機が普及しているとの意見があっ た。しかし,ドラム式ではウェスケータとあまり変 わらないことから,今回は全自動洗濯機を日本の標 準洗濯機とし,将来の規格改正時に,ドラム式に変 更するかどうか検討するということになった。 このように,日本からの長年にわたる自然乾燥記 号の追加提案,日本の家庭用全自動洗濯機の追加提
特 集
ケアラベル(洗濯表示記号)の全面的変更
−ケアラベルが 12 月 1 日から変わります−
一般社団法人 繊維評価技術協議会 中里 憲司 『洗たくの科学,最前線』(1)日本衣服学会誌 Vol . 59 No . 2 ( 12 ) ― 58 ― 案などがようやく実を結び,ISO3758 が 2012 年に 改正されたことで,日本の消費者にも不利益がない と判断され,今回の整合化となった。 JIS L0217 改正に当たり,対応している ISO 規 格が ISO3758 と ISO6330 の2つであることから, 改正 JIS に2つの ISO 規格をまとめるかどうかも, 議論となった。JIS L0217 改正であれば,2つの ISO 規格をまとめた JIS となるが,その場合には, どちらかの ISO 規格が改正されるたびに JIS を改 正することになりややこしいことから,ISO 規格に 対応して1つずつ JIS 規格を作ることとした。 特に,商業クリーニングの規格は従来の JIS には なく,これもケアラベル関連規格として ISO3175-1 から 3175-4 に基づいて JIS 規格を作成している。 なお,商業クリーニングとは別に,ISO 規格では 工業クリーニングの規格がある。これは,大量の制 服等をクリーニングするときの規格であり,商業ク リーニングとは区別されている。工業クリーニング は,今回の改正の対象外である。 4.ケアラベルの種類 家庭洗濯 漂白 乾燥 アイロン 商業クリーニング ケアラベルの記号の数は,現行の6種類 22 記号 から,5種類 41 記号と大きく増える。 消費者にとっては,記号が増えたことにより使い 勝手がよくなるとも考えられるが,慣れないうちは 記号の解釈にとまどうことがあるかもしれない。特 に,酸素系漂白剤,タンブル乾燥,商業ウェットク リーニングの記号が新しく追加されたので,これら の記号には注意が必要である。 新しいケアラベルの記号は,家庭洗濯,漂白,乾 燥,アイロン,商業クリーニングの5つを基本記号 としているが,ある工程でどの処理をしても問題な いときは,その記号を省略することができる。例え ば,アイロンの記号がない場合は,どの温度でアイ 図1 JIS ISO 対応表 図2 JIS L0217 による表示 図3 JIS L0001 による表示
Jpn . J . Clo . Res . 2016, Vol . 59 No . 2 ( 13 ) ― 59 ― ロン仕上げをしても問題ないと解釈される。 また,記号の下にある「—」は弱い処理を表し,「=」 はさらに弱い処理を表している。アイロンの「・」 が多いほど高温(強い)処理を表しているのとは逆 の意味になることにも注意を要する。 5.ウェットクリーニング 今回の改正で特に問題となるのは,商業クリーニ ングの内のウェットクリーニングであると思われ る。 ヨーロッパ各国のウェットクリーニングに対する 考え方は,有機溶剤の代わりに環境に優しい水を用 いて洗濯するものというものであり,したがって汚 れが落ちるようにクリーニング条件は比較的強く設 定されている。 これに対して,日本でウェットクリーニングと いっているものは,ドライクリーニングでは落ちな い汚れに対して,比較的弱いクリーニング条件で 洗って汚れを落とすというものである。 現行の ISO 規格のウェットクリーニングの試験 条件で試験すると,日本ではウェットクリーニング を表示できる衣料品がほとんどない,ということに なる。消費者等から,夏物衣料を中心としてウェッ トクリーニングができたほうがよいとの要望が強い ことから,特に弱いウェットクリーニングの記号に ついて,日本の洗濯実態に合わせて試験条件を弱く するよう ISO3175 の改正を現在提案中である。 この記号に対応したウェットクリー ニング試験方法の規格改正を提案中 なお,商業クリーニングでは従来から,ワイシャ ツ,シーツなどを高温度の水で洗うランドリーとい う洗濯方法があるが,これとウェットクリーニング はまったく別の方法である。ランドリーとウェット クリーニングを混同してはならない。 6.アパレル業界・クリーニング業界の対応 新しいケアラベルは,アパレル業界,クリーニン グ業界にも大きな影響を与えることになる。 アパレル業界では,既にガイドラインを作成する などの対応策を講じているが,新しいケアラベル表 示では現行の「洗濯などの取扱方法を指示するため」 という推奨表示から,「洗濯などの取扱いを行う間 に回復不可能な変化を起こさない最も厳しい処理・ 操作に関する情報を提供する」という上限表示に表 示の目的が変わっていることに配慮してほしい。こ れまで,衣料品の表示がトラブルを警戒するあまり 安全側に偏った表示になっているとの指摘がされて きたが,新しいケアラベル表示では,実態に即した 取扱い表示になることが期待されている。 また,クリーニング業界では,従来のパークロロ エチレン,石油系の洗濯に「—」がついた記号のあ ること,さらに新しくウェットクリーニング記号が 追加されたことから,表示の意味を十分に理解し, 適切な処理をしていただきたい。 7.まとめ 平成 28 年 12 月から,衣料品に付けられている ケアラベル表示が現在の JIS L0217 に基づく表示か ら,ISO3758 に整合化した JIS L0001 による表示に 切り替わる。 記号の数がこれまでの 22 記号から 41 記号と倍増 することから,消費者の衣料品に対する取扱い方法 として使い勝手がよくなると期待される。しかし, 従来の表示とはまったく異なる記号となることか ら,消費者,アパレル業界,クリーニング業界など では,表示の意味をよく理解し,適切な表示をし, その表示に従って衣料品を適切に取り扱う必要があ る。 引用文献 1 )消費者庁;家庭用品品質表示法 http://www.caa.go.jp/hinpyo/ 2 ) 経済産業省;衣類の新しい「取扱い表示」で上 手な洗濯! http://www.meti.go.jp/policy/economy/ hyojun/kijyun/sentakupanf.pdf 3 )経済産業省;新しい!衣類の「取扱い表示」 http://www.meti.go.jp/policy/economy/
日本衣服学会誌 Vol . 59 No . 2 ( 14 ) ― 60 ― hyojun/kijyun/sentakuleaf.pdf 4 ) JIS L0001(繊維製品の取扱いに関する表示記 号及びその表示方法)
5 ) ISO3758 (Textiles-Care labelling code using symbols) 【著者略歴】 中里 憲司(なかざと けんじ) 昭和49年 通商産業省入省 各地の繊維製品検査所で JIS 工場立入検 査,家庭用品品質表示法立入検査,技術 基準調査等に従事 平成 7 年 製品評価技術センター 総務部 平成11年 通商産業省 繊維課 平成13年 製品評価技術基盤機構 化学物質管理セ ンター 平成18年 繊維評価技術協議会 現在に至る