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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 ―琵琶湖と池田湖の比較研究から―

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<研究論文>

自然環境保護に資する

環境リスクファイナンスの提案

― 琵琶湖と池田湖の比較研究から ― ●アブストラクト  60 年間の観測史上で初めて,琵琶湖の湖底に酸素を届ける自然現象 である「全循環」が停止した。生態系や流域 1,100 万人の飲料水の水質 を守るために,水深 90 メートルの湖底に人為的に酸素を送り込みたい が,その費用は地方自治体の経常環境予算では賄えない。  そこで,本稿では,既に全循環の停止と再開,部分循環を繰り返す鹿 児島県池田湖の事例を考察することにより,従来の概念では説明しにく い 2019 年の琵琶湖の全循環の停止の要因を新たに抽出する。部分循環 と全循環の差を生み出す気象条件が,「風の累積エネルギー」にあると 考え,この変数化を試みる。複雑な気象要件が絡む琵琶湖の全循環の構 造を明らかにした上で,従来の構造式に加え,同説明変数も併せたダブ ルトリガーを有するインデックス型のデリバティブを提案する。これに より環境リスクファイナンスの実現に向け進む。 ●キーワード  全循環,環境リスクファイナンス,ダブルトリガー

久 保 英 也

菊 池 健太郎

北 澤 大 輔

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目次 1 .初めに 2 .先行研究 3 .全循環停止後の琵琶湖の現状と生態系への影響 4 .池田湖にみる部分循環 5 .最大風速が全循環・部分循環に与える影響 6 .気象条件が全循環時期に与える影響 7 .ダブルトリガーのインデックス型全循環デリバティブの提案 8 .終わりに 1 .初めに  滋賀県立琵琶湖環境科学研究センターは,2019 年 4 月 3 日の定点観測 (今津沖中央,最深部水深 90 メートル地点)の結果公表の中で,溶存酸 素量濃度は 4.2mg/L とし,琵琶湖の湖底に酸素を送る「全循環」が 1959 年観測来初めて停止したことを明らかにした。その後,2019 年 6 月の観 測では溶存酸素量濃度は 6.5mg/L まで改善し,確かに全循環は起きなかっ たものの部分循環は起こっていたことが判明した。今後,酸素量が最も減 少する秋季から冬季において生態系,水質に与える影響が懸念されるが, 自然科学系の研究者も「部分循環」は想定していなかったことから,琵琶 湖の生態系に与える影響についての研究はこれからである。  全循環が連続して停止することは確率的には極めて小さいものと考えら れるが,今後も 2019 年と同じく部分循環となったり全循環の発生時期が 大きく前後したりする可能性がある。  この問題は,琵琶湖淀川流域に住む 1,100 万人の飲料水の水質や琵琶湖 の生態系への長期的な影響という一つの地域的な問題ではなく,地球温 暖化に伴う自然環境の変化にどう対応するかという国際的,普遍的な課 題でもある。経済成長と相反する温室効果ガスの削減目標設定などの温

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 暖化そのものを抑止する方策は国際的合意が事実上難しい中で,2010 年 にメキシコのカンクンで開催された気候変動枠組条約第 16 回締約国会議 (COP16)では,CO2の削減そのものよりその影響に適応していく方策 を講ずる重要性が指摘されている。  本稿では,先行研究を展望した後に,全循環停止後の最新の琵琶湖の現 状と水質,生態系に与える影響を分析する。そして,すでに全循環の停止 と再開,部分循環を繰り返している鹿児島県池田湖の観測データを分析し 両湖を比較することにより,本来は全循環が停止する気象環境になかった 2018 年度の琵琶湖の気象条件を再検証し,「風の累積エネルギー」が大き な影響を与えていることを明らかにする。そして,これらを踏まえて将来 の全循環停止リスクに対し,その対策資金を金融市場から直接調達する全 循環停止リスクのインデックス型デリバティブを提案する。 2 .先行研究  小川(2013)は,リスクファイナンス分野を保険論の観点から整理 し,事前にリスク対応策を準備する重要性を指摘している。「自然災害リ スク」のリスク移転については,斎藤ほか(2005),田中(2008)など多 数の文献が存在するが,既に実務に取り込まれていることも多く,細部の 紹介は割愛する。一方,「自然環境リスク」を移転対象とし,本稿が取り 上げた琵琶湖の全循環停止事象については,北澤ほか(2007)が,「流れ 場・生態系結合モデル」に基づき,その仕組みを分析し,そのモデル構造 については,Kitazawa et al. (2010) に詳しい。琵琶湖以外の湖沼の状況に ついては,宮元ほか(2016),牛垣ほか(2018)が,鹿児島県の池田湖の 全循環停止と再開後の観測記録を精緻に分析している。そして,湖の位置 的条件,大きさ,深度など個別性はあるものの,外的条件が整えば,全循 環の停止や復活が起こることを示唆している。環境省(2013)も琵琶湖流 域水物質循環モデルを用いて,将来の全循環停止の可能性について将来予 測を行っている。その結果,2030 ~ 2039 年の期間について,年平均気温

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が過去 25 年間平均より+ 1.1 度,年平均降水量は同+ 4%,年平均日射量 は同+ 1%という仮定において,2034 年~ 2036 年に全循環が停止する可 能性に言及している。また,海外でも Straile et al.(2003)は,ドイツの コンスタンツ湖などで全循環が停止し,部分循環へ移行するなど湖内の溶 存酸素量が大きく低下していると指摘している。  一方,全循環停止時の湖底の無酸素状況への対策としては,貧酸素水 塊に酸素を注入する手法を提案した熊谷ほか(2009)などがある。原田 (2008)は,その手法の中で PEM 水電解法の効率性が高いことを実証し ている。   ただ,自然環境リスクについてのファイナンスに言及した論文は,久保 (2015)があるのみであり,そこでは,琵琶湖の全循環停止リスクを金融 市場に移転する一つの対応策として,インデックス型のデリバティブを提 案している。疎漏がないように,自然環境リスクを直接金融市場に移転す ることを目的とした論文の所在について,複数の国際保険ブローカーにヒ アリングしたが,論文も市場における取引実績もないとしている。 3 .全循環停止後の琵琶湖の現状と生態系への影響  2019 年 3 月の琵琶湖の湖水循環は部分循環にとどまったため,7 月後半 の溶存酸素量水準(今津沖中央,底から 1 メートル)は,過去に経験し たことのないスピードで低下し,3.2mg/L と例年(過去の 40 年間の平均 値)の 7.9 mg/L を 4 ポイントも下回っている。例年 11 月~ 12 月に溶存 酸素量が年間の最低水準になるが,2019 年は夏場で同水準を下回っている。 今後の溶存酸素量の動きに目途をつけるため,2019 年 7 月の溶存酸素量 実績を起点として,今後,①過去 40 年間の平均月次溶存酸素量消費ペー スを辿るとした場合,②部分循環となった 2018 年度と同じ溶存酸素量消 費ペースを月次平均で辿るとした場合を仮定し,2020 年 3 月までの溶存 酸素量を予測した。  図 1 に示した通り,点線で示した①のパターンで先延ばしすると 2019

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 111 年 10 月前半に,同じく実線で示した②のパターンでは 11 月後半に溶存酸 素量はゼロとなる。その後の溶存酸素量の回復は,2020 年春期の全循環 の発生を待つ必要があるが,それは早くても 2020 年 1 月前半となる。こ の間の 3 か月から 4 か月については,水深 90m 付近の湖底では無酸素状 態が続くことになる。 【図 1 】2019 年度の琵琶湖の溶存酸素量見込み  環境省が定める水中の溶存酸素量(DO)の環境基準(別表 2「生活環 境の保全に関する環境基準」:河川)によれば,河川及び湖沼での DO の 環境基準は,以下のとおり定められている。①一般の魚介類などの水生生 物の生存:3mg/L 以上,②好気性微生物が活発に活動する状態: 2mg/L 以上,③利用目的の適応性(例:水産 3 級)でコイ,フナ等は 5mg/L 以 上とされる。このため,2019 年度の琵琶湖の溶存酸素量は環境基準を下 回るものの,生態系への具体的な影響については,個別性がある。  すなわち,貧酸素水の水塊が小規模である場合には,限られた場所しか 移動しない,上位食性である魚の餌となる小型生物,例えば湖底に住む甲  例年(過去の  年間の平均値)の PJ/ を  ポイントも下回っている。例年  月~ 月に溶存酸素量が年間の最低水準になるが、 年は夏場で同水準を下回っている。 今後の溶存酸素量の動きに目途をつけるため、 年  月の溶存酸素量実績を起点とし て、今後、①過去  年間の平均月次溶存酸素量消費ペースを辿るとした場合、②部分循環 となった  年度と同じ溶存酸素量消費ペースを月次平均で辿る、と仮定し、 年  月までの溶存酸素量を予測した。図  に示した通り、点線で示した①のパターンで先延ば しすると  年  月前半に、同じく実線で示した②のパターンでは  月後半に溶存酸 素量はゼロとなる。その後の溶存酸素量の回復は、 年春期の全循環の発生を待つ必要 があるが、それは早くても  年  月前半となる。この間の  か月から  か月について は、水深 P 付近の湖底では無酸素状態が続くことになる。      環境省が定める水中の溶存酸素量('2)の環境基準(別表 「生活環境の保全に関する 環境基準」:河川)によれば、河川及び湖沼での '2 の環境基準は、以下のとおり定めら れている。①一般の魚介類などの水生生物の生存:PJ/ 以上、②好気性微生物が活発に 活動する状態: PJ/ 以上、③利用目的の適応性(例:水産  級)でコイ、フナ等は PJ/以上とされる。このため、 年度の琵琶湖の溶存酸素量は環境基準を下回るもの の、生態系への具体的な影響については、個別性がある。 すなわち、貧酸素水の水塊が小規模である場合には、「限られた場所しか移動しない、上 位食性である魚の餌となる小型生物、例えば湖底に住む甲殻類でヨコエビなどがこの貧酸 素塊に長時間曝される可能性が高い。過去に全循環が  月後半にずれ込んだ場合は生活水 -2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 4 月① 4月② 5月① 5月② 6月① 6月② 7月① 7月② 8月① 8月② 9月① 9月② 10 月① 10 月② 11 月① 11 月② 12 月① 12 月② 1月① 1月② 2月① 2月② 3月① 3月②

1 2019年度の溶存酸素量見込み

過去40年間平均(1978~2018) 2018実績 ①2019予測:2018準拠 ②2019予測:40年平均準拠 mg/L 予測

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殻類でヨコエビなどがこの貧酸素塊に長時間曝される可能性が高い。過去 に全循環が 3 月後半にずれ込んだ場合は生活水域が貧酸素水隗に包まれた 可能性が高いが,この時には琵琶湖固有種であるアナンデールヨコエビの 大量死が報告されている。一方,広範囲に移動する大型魚類は,貧酸素水 隗を回避できる運動能力を有しており,被害は少ないと考えられる。  一方,貧酸素水隗が大規模に発生した場合には,冷水系の魚(低水温 を好み,通常水深の深い場所で生活する魚)は居場所を失う可能性が高 い。琵琶湖の固有種である「ビワマス」などがこれに該当する。ビワマス は,水中の生態系の上位に位置するため,生態系全体の価値損失につなが る「レジームシフト」を発生させる可能性がある。  また,一般に貧酸素状態は,湖底の嫌酸素性微生物の活動を活発にし, その結果大量のリンが湖底の底泥で生成され,次の全循環の発生により, これが湖水上層に浮上し,湖全体にリンの溶出が進んで大規模な水質悪化 や赤潮などの被害が発生する可能性もある。  2018 年度の部分循環への移行や部分循環さえも起こらない事態となる かは気象条件によるが,琵琶湖の立地を考えると,後述する池田湖のよう に全循環が停止し続ける事態への移行は当面は考えにくい。  図 2 は,過去 60 年間の彦根市の冬季の気温,風速と全循環の発生時期 (インデックス で表示)の動きを示している。全循環の発生時期(観測 データが存在する 1959 年から 2018 年度)のトレンドを計測すると傾きは 0.48,日数に換算してここ 60 年間で 14 日程度後ろ倒しになっている。冬 季の平均気温(ここでは全循環への影響が大きいとされる 12 月から 2 月 の冬季平均気温:細い折れ線)は上昇トレンド(傾きは 0.022)を描き, 弱まると湖内の攪乱効果を低下させる最大風速(傾きは -0.0566)は,共 に全循環を後ろ倒しにする方向に作用している。

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 【図 2 】全循環発生時期,冬季気温,冬季最大風速の長期トレンド  全循環の停止がもたらす①琵琶湖淀川流域の生態系の異変,②琵琶湖の 水質の悪化には,従来取ってきた生活用水,農業,工業用水の排出規制を さらに強化するなど COD を圧縮する次善策に努めることは可能(これま でも推進してきた政策)だが,その主因が温暖化にあるのであれば,琵琶 湖のステークホルダーにはなすべき手段はほとんど残されていないことに なる。山室その他(2011)も宍道湖を例として,貧酸素に伴う水質悪化を COD 圧縮策などにより相殺することは難しいとしている。両湖の自然環 境が異なることは事実であるものの,より面積が広大で深度が深い琵琶湖 を勘案すると,全循環の停止後可能な限り早い時期に湖底の無酸素水隗に 酸素を送り込み貧酸素状態を解消することが最も合理的な対策であると考 えられる。このため,以下の 2 点を考えておく必要がある。   第 1 に,全循環の時期の後ろ倒しによる貧酸素状態の発生に備え,その 影響を最小化するような方策を事前に検討し,その対策の財源準備を進め る,言い換えれば全循環停止リスクに対する大型のリスクファイナンスを 講じる準備を完了していることである。第 2 は,全循環が停止するかしな 最大風速:y = -0.0588x + 40.128 R² = 0.0607 全循環日:y = 0.0082x + 2.0437 R² = 0.0739 平均気温y = 0.022x + 3.7688 R² = 0.1664 0 10 20 30 40 50 60 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 冬季最大風速(右目盛:m/sec) 全循環時期インデックス(左目盛) 冬季(12~2月)の平均気温(左目盛:度) 線形(冬季最大風速(右目盛:m/sec)) 図2 全循環発生時期、冬季気温、冬季最大風速の長期トレンド

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いかのという 2 分法ではなく,その中間に位置する部分循環の影響や効果 等の評価を適正に行っておくことである。 4 .池田湖にみる部分循環  琵琶湖では全循環停止と部分循環への移行という事態は,観測史上初め てのことであるが,深度のある湖の水層の鉛直混合は物理的な現象であり, 条件さえ揃えば,他の湖においても発生している。全循環が停止する第 1 条件は平均気温の高さにあるので,琵琶湖より南に位置し,ある程度の湖 の体積と水深,そして観測インフラを有している湖を探すと,鹿児島県薩 摩半島に位置する池田湖はこれに該当する。  池田湖の湖面積は 10.95㎡と小ぶりではあるが(琵琶湖は 670.4㎡)九州 最大の自然湖沼で,最大深度は 233 メートルを誇る。琵琶湖(同 104m) より深い「熱帯湖」で,観測は,鹿児島県環境保健センターが担当してい る。池田湖は琵琶湖のような温帯湖に比べ全循環は相対的に停止しやすい とされる。池田湖では水質調査が開始された 1977 年以降 41 年間の内,全 循環を観測した年は 1984 年(1983 年度),1986 年(1985 年度),2011 年 (2010 年度),2012 年(2011 年度),2018 年(2017 年度)の 5 回だけで ある。池田湖における全循環の停止が湖にどのような影響を与えているの かを理解するため,代表的な指標である①溶存酸素量(水深 200 mと水 深 100 m),②硝酸態窒素(NO3-N,水深 200 m),③アンモニア態窒素 (NH4-N,水深 200 m)の長期推移を図 3 に示した。一般に,底層にあ る栄養塩類は,有酸素状態では硝酸態窒素が増加し,無酸素状態ではアン モニウム態窒素やリン(T-P:グラフは省略)が増加する。

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 【図 3 】全循環と部分循環(池田湖) (出所)鹿児島県保健部のデータを基に,筆者が作成  1984 年,1986 年の全循環発生後はゼロ近傍にあったアンモニウム態窒 素が,4 年後の 1990 年以降に上昇に転じ,0.3mg/L を超える高い数値を 示し,2005 年度には約 0.5mg/L 付近まで上昇している。その後も,全循 環の停止する年度が続いたが,2006 年には部分循環1)が発生したことによ り,同値は 0.1mg/L 前後まで急速に低下した。ちなみに,同様にアンモ ニウム態窒素の低下は 1995 年の部分循環時にも発生している。  ただ,部分循環では 200 mの湖底には十分な酸素がいきわたらないこと から,酸素運搬効果は限定的であり,2007 年からは再び同値は 0.2mg/L を超えて上昇し,2011 年,12 年の全循環の発生によりようやくゼロ近傍 まで低下し,その後,落ち着いた動きを示している。  1) 本稿における池田湖の部分循環の定義は,水深 200 m地点では鉛直混合 が発生していないが,水深 100 m地点では同混合が観測され,かつ 200m 地 点との溶存酸素量の差が冬季(12 月~ 4 月)の間に 3mg/L 以上になった期 間とした。 0 1 2 3 4 5 6 7 8 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 図3 全循環と部分循環 溶存酸素量100m-溶存酸素量200m(左目盛) 溶存酸素量200m(右目盛) 硝酸態窒素200m(左目盛) アンモニア態窒素200m(左目盛) mg/L 全循環発生を示す (出所)鹿児島県保健部のデータを基に、筆者が作成

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 しかし,1990 年や 2014 年から 2015 年の部分循環は,全循環に代わり 硝酸態窒素を高水準に維持し,アンモニウム態窒素の抑制に寄与している ことから,部分循環は,全循環停止に伴う絶望的な状況というより,「水 質維持」に寄与する現象であると考えられる。  すなわち,観測データからは,①全循環は,湖底への酸素供給により栄 養塩やリンの発生増加を抑え,その効果は約 1 年~ 2 年程度継続する,② 色濃い棒グラフで示した部分循環は,水深 200 メートル地点の酸素を補う ことはできないものの,図 3 の○で囲んだ部分に見るように全循環が停止 した後に湖底の栄養塩類の増加を抑える効果がある。水質維持という観点 から捉えると持続効果は短いものの,部分循環は富栄養化を防ぐ効果があ ると考えられ,それは,2018 年度の琵琶湖の部分循環にも当てはまる。 5 .最大風速が全循環・部分循環に与える影響  それでは,全循環に至る気象条件と部分循環にとどまる(もしくは部分 循環に至る)気象条件の差異は何なのかについて考察してみよう。  まず,池田湖の鉛直混合に影響する過去の主要な気象条件を抽出する。 池田湖は,指宿気象台を対象気象台とし,収集可能な 1977 年以降の 41 年間において,前述の通り全循環が 5 回,上記の定義による部分循環が 10 回発生している。したがって,全循環も部分循環も発生していない年 が 26 回ある。鹿児島県の観測インターバルは約 2 か月と長いものの,以 下の 4 回が部分循環期に該当する。すなわち,① 1988/8 ~ 1992/4(対象 冬季期間:1989 年度,1990 年度),② 1995/4 ~ 1996/12(同 1994 年度, 1995 年 度 ), ③ 2003/2 ~ 2004/6( 同 2002 年 度,2003 年 度, ④ 2006/2 (同 2005 年度),⑤ 2014/2 ~ 2015/12(2013 年度,2014 年度,2015 年 度)の 5 期間,年度では 10 の年度がこれに該当する。  部分循環も全循環と同じく物理的な動きであるので,全循環発生の主要 要件である冬季の平均気温が低いほど,全天日射量が少ないほど,風速が

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 速いほど全循環や部分循環が発生しやすい2),そこで,鉛直混合に影響を 与える気象要素として,①冬季(12 月~ 2 月)の平均気温,②冬季の平 均風速,③冬季の最大風速,の 3 つの要素を選択し,年度ごとに全循環と 部分循環との関係を考察し,その結果を表 1 に示した。 【表 1 】池田湖の全循環時,部分循環時における周辺気象条件   (注)シャドー部分は,1977 ~ 2017 年度の平均値を循環促進的に超えるところ。   (出所)気象庁のデータベースから筆者が作成  全循環発生年度は,① 1977 年度から 2017 年度の 41 年間平均の「全期 間平均値」と比べ,3 要素すべてが全循環促進的であると共に,②平均気 温が同平均値を大きく下回る,③平均風速が同平均値よりかなり速い,と いう特徴を有する。 2) 例えば,吉田ほか(2018)は,モデルを用い,冬季の気温の前年格差,全 天日射量,風速が全循環に影響する重要要素であると指摘している。 年度 冬季気温(指 宿:12月~2 月) 平均風速(指 宿:12月~2 月) 最大風速(指 宿:12月~2 月) 全循環 㻝㻥㻤㻟 㻞㻝㻚㻤 㻢㻚㻥 㻞㻜㻚㻜 全循環 㻝㻥㻤㻡 㻞㻟㻚㻝 㻢㻚㻠 㻞㻜㻚㻜 部分循環 㻝㻥㻤㻥 㻟㻝㻚㻣 㻠㻚㻢 㻝㻢㻚㻜 部分循環 㻝㻥㻥㻜 㻞㻤㻚㻟 㻡㻚㻣 㻝㻥㻚㻜 部分循環 㻝㻥㻥㻠 㻞㻥㻚㻤 㻡㻚㻡 㻝㻤㻚㻜 部分循環 㻝㻥㻥㻡 㻞㻡㻚㻟 㻡㻚㻢 㻝㻢㻚㻜 部分循環 㻞㻜㻜㻞 㻞㻥㻚㻠 㻠㻚㻢 㻝㻣㻚㻜 部分循環 㻞㻜㻜㻟 㻞㻣㻚㻡 㻠㻚㻟 㻝㻢㻚㻜 部分循環 㻞㻜㻜㻡 㻞㻣㻚㻢 㻡㻚㻞 㻝㻥㻚㻜 全循環 㻞㻜㻝㻜 㻞㻢㻚㻟 㻢㻚㻝 㻞㻞㻚㻣 全循環 㻞㻜㻝㻝 㻞㻣㻚㻝 㻢㻚㻝 㻞㻝㻚㻟 部分循環 㻞㻜㻝㻟 㻞㻤㻚㻜 㻡㻚㻣 㻞㻝㻚㻥 部分循環 㻞㻜㻝㻠 㻞㻣㻚㻞 㻢㻚㻝 㻞㻟 部分循環 㻞㻜㻝㻡 㻟㻜㻚㻥 㻡㻚㻡 㻞㻟㻚㻥 全循環 㻞㻜㻝㻣 㻞㻠㻚㻢 㻢㻚㻡 㻞㻟㻚㻝 㻞㻤㻚㻣 㻡㻚㻞 㻝㻤㻚㻢 㻞㻠㻚㻢 㻢㻚㻠 㻞㻝㻚㻠 㻞㻤㻚㻢 㻡㻚㻟 㻝㻥㻚㻜  (出所)気象庁のデータベースから筆者が作成 表1 池田湖全循環時、部分循環時の周辺気象条件 1977~2017年度平均 全循環発生年度平均 部分循環発生年度平均  (注)シャドー部分は、1977~2017年度の平均値を循環促進的に超えるところ。

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 これに対し,10 の部分循環発生年度のうち,① 6 つの年度は 3 要素の うち 1 つないし 2 つの要素が全循環促進的であり,② 3 要素すべてを満た した年度も 3 回(1990,2013,2014)存在するが,いずれも,平均値から の乖離幅は小さい。③ 1989 年度は,3 要素のいずれも鉛直混合抑制的な 数値となったが,例外的に部分循環が発生している。  10 の部分循環発生年度の平均値は冬季平均気温が 28.6 度(3 か月合計) と同平均値である 28.7 度とほぼ同値で,また,平均風速も同 5.3m/s と平 均値 5.2m/s とほぼ同水準となっている。しかしながら,最大風速だけは, 同 19.0 と同平均値の 18.6 を大きく上回っている。気象庁の最大風速の定 義は,10 分間の最速風速と定義されているため,瞬間的な風速とも考え られるが,そこまで風が吹き上がるにはその前後に大きな風のエネルギー の集積があると推察される。平均風速に表れない風の累積エネルギーが最 大風速などの他の指標に現れている可能性が高く,これらが池田湖の鉛直 混合に影響している可能性が高い。  あくまでも推論の域を出ないが,部分循環にとどまった年度のうちいく つかは,最大風速の値がより高ければ全循環に至った可能性がある。逆に, 最大風速の値の低さが,全循環発生までには至らず,部分循環にとどまっ た可能性が考えられる。  この仮説は,2018 年度の琵琶湖の全循環停止・部分循環への移行の動 きが従来の気象条件では説明しにくい事情も良く説明する。琵琶湖では, 2017 年度までは全循環が毎年発生したが,その発生日3)4)が 3 月までずれ 3) 琵琶湖の「全循環」を判断する深水域の溶存酸素量について,長期の観 測を継続的に行っているのは以下の 2 機関である;滋賀県水産試験場(1959 年度以降,月 2 回観測)および琵琶湖環境科学研究センター(1978 年度以 降,月 2 回~ 4 回観測)。ここでは,観測日間のラグは小さい方が好ましい ことから,データの統一性を維持できる 78 年度以降は後者のデータを重視 し,より長期の推計が必要な場合には 1977 年度で 2 つを接合したデータ系 列を使用している。観測日が日次ではないことは制約として割り切り,当 該観測日に全循環が起こっていたかどうかのみを判断基準とした。 4) ただし,1979 年度以降でも悪天候により観測船が出航できず観測自体が

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 込んだ年度が過去 4 回ある。それは,1978,1991,2006,2015 年度であ り(以下,これらの年度を「3 月全循環年度」と呼ぶ),この 4 回の気象 条件を,表 2 に示した。 【表 2 】琵琶湖の「3 月全循環年度」と 2018 年度との気象条件比較 (出所)筆者が気象庁データなどを参考に作成。  驚くべきことに 3 月全循環年度の気象条件は,全循環が停止した 2018 年度の気象条件より,はるかに鉛直混合が起こりにくい条件であった。す なわち,3 月全循環年度は,①前年度からの冬季の気温差が大きく,②同 気温は高く,全天日射量も大きく,かつ,③平均風速の値が低い,という 一般的に言われる鉛直混合を抑制する条件がすべて揃っている。  各要素が全循環時期にどの程度影響しているかは,次節で計量的に分析 中止となった場合には水産試験場のデータを採用した。なお,水産試験場 の調査深度は 77 m付近(底から 1 m)に対し,琵琶湖環境科学研究センター は 90 m付近(底から 50cm)と異なる点については慎重に見極める必要が ある。ただ,同センターの「深度別溶存酸素量」データから,90m 地点と 70m 地点の観測溶存酸素量を比較するとその差は小さく,データ接続の課 題は微細である。 1月 2月 1月 2月 㻝㻥㻣㻤 㻟㻚㻝㻥 㻟㻚㻤 㻝㻣㻚㻞 㻠㻚㻢 㻢㻚㻝 㻞㻞㻚㻣 㻣㻚㻠 㻤㻚㻝 㻝㻥㻥㻝 㻟㻚㻝㻟 㻞㻚㻟 㻝㻢㻚㻠 㻡㻚㻞 㻟㻚㻥 㻞㻟㻚㻥 㻣㻚㻤 㻥㻚㻟 㻞㻜㻜㻢 㻟㻚㻢㻝 㻤 㻝㻤㻚㻠 㻡㻚㻝 㻢㻚㻝 㻞㻡 㻣㻚㻣 㻝㻝㻚㻠 㻞㻜㻝㻡 㻟㻚㻠㻡 㻡㻚㻞 㻝㻥㻚㻜 㻠㻚㻥 㻡㻚㻡 㻞㻣 㻤㻚㻠 㻝㻝㻚㻡 㻟㻚㻟 㻠㻚㻤 㻝㻣㻚㻤 㻡㻚㻜 㻡㻚㻠 㻞㻠㻚㻣 㻣㻚㻤 㻝㻜㻚㻝 㻟㻚㻥 㻟㻚㻣 㻝㻡㻚㻟 㻠㻚㻡 㻡㻚㻤 㻞㻞㻚㻢 㻢㻚㻤 㻥㻚㻡 ― 㻙㻝㻚㻝 㻙㻞㻚㻡 㻙㻜㻚㻡 㻜㻚㻠 㻙㻞㻚㻝 㻙㻝㻚㻜 㻙㻜㻚㻢 1月 2月 1月 2月 㻝㻥㻣㻤 㻣㻚㻠 㻞㻚㻠 㻞㻚㻢 㻟㻤㻚㻣 㻝㻞㻚㻡 㻝㻞㻚㻝 㻝㻥㻥㻝 㻤㻚㻣 㻞㻚㻤 㻟㻚㻝 㻟㻡㻚㻠 㻝㻝㻚㻣 㻝㻝㻚㻟 㻞㻜㻜㻢 㻥㻚㻝 㻞㻚㻥 㻟㻚㻠 㻟㻤㻚㻠 㻝㻠㻚㻠 㻝㻞㻚㻢 㻞㻜㻝㻡 㻥㻚㻢 㻟㻚㻞 㻟㻚㻠 㻠㻜㻚㻞 㻝㻟 㻝㻠㻚㻟 㻤㻚㻣 㻞㻚㻤 㻟㻚㻝 㻟㻤㻚㻞 㻝㻞㻚㻥 㻝㻞㻚㻢 㻝㻜㻚㻟 㻟㻚㻡 㻟㻚㻟 㻟㻢㻚㻡 㻝㻞㻚㻥 㻝㻞㻚㻝 㻝㻚㻢 㻜㻚㻣 㻜㻚㻞 㻙㻝㻚㻣 㻜㻚㻜 㻙㻜㻚㻡   (出所)筆者が気象庁データなどを参考に作成。 平均風速: 12月~2月 累計 最大風 速:12~2 月累計 表2 「3月全循環年度」と2018年度との気象条件比較(琵琶湖) 年度 全循環時期(Index) 前年度と の冬季気 温差 気温: 12~2月 累計 全天日射 量:12~2 月累計 ①3月全循環年度の平均 ②2018年度 差異(②-①) ①3月全循環年度の平均 ②2018年度 差異(②-①) 年度

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するが,これらの要素では説明できない鉛直混合に影響を与える気象条件 が隠れていることになる。その可能性が高い要素が最大風速である。琵 琶湖の 2018 年度の平均風速は 10.3 m/s と 3 月全循環年度の平均値である 8.7 m/s を 1.6 m/s も上回っているにもかかわらず,最大風速は逆に 36.5 m/s と 3 月全循環年度の 38.2m/s を 1.7 m/s も下回っている。月別に,そ の差(2018 年度値-3 月全循環年度値)を見ると 12 月が-1.2 m/s,2 月 が-0.5 m/s と 12 月の最大風速値の低さが際立つ。すなわち,2018 年度 は平均風速や気温が鉛直混合促進的に働いたのに対し最大風速が同抑制的 に働き,全循環の停止につながった可能性が高い。 6 .気象条件が全循環時期に与える影響  気象条件が全循環時に与える「平均的な」影響を知るため,気温と風速 の 2 要素に絞り,単回帰推計により,これらの月次変数が全循環の発生時 期に与える影響を分析した。  被説明変数は,全循環日(インデックス)で,説明変数は,気温につい ては彦根市の冬季(12 月~ 2 月),12 月~ 1 月平均,12 月単月,1 月単 月,2 月単月,そして,冬季気温の前年度差,の 6 つを取り上げた。風速 については,平均風速と最大風速の 2 つを取り上げ,上記の前年度差を除 いた各 5 つの系列とした。また,推計期間は,①安定した推計が可能な 1959 年度から 2018 年度(以下,「全期間」:観測データ数 60)と②うち全 循環が平均全循環発生日(インデックスで 2.29,2 月 8 日)より後ろずれ した年度(以下,「後ろずれ年度」:同 33),③データの統一性が取れてい る 1978 年度から 2018 年度まで(以下,「センター観測期間」:同 41)の 3 区分とした。  推計結果は,表 3 にまとめた。全循環の発生時期に影響する最大の要因 は気温であり,冬季のどの月,期間をとっても有意に働く。「全期間」の t 値から判断すると 12 月の気温(t 値は 6.083),次いで,12 月~ 1 月の気 温(同 5.682)の説明力が高く,冬季のスタート時点の気温が非常に重要

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 で 2 月にかけその影響度は徐々に低下していく。また,冬季の気温(12 月~ 2 月)の前年差(同 4.878)も説明力が高く,「厳冬後の暖冬」は全循 環の時期を後倒しさせる効果を有している。  また,先行論文で全循環に影響するとされる風速(平均風速)は,全期 間の推計結果からも強い影響力を有している。ただ,気温と異なり月ごと にその影響力に大きなばらつきがあり,1 月の風速(t 値は -4.230)の影 響力が強い。これに伴い 12 月~ 1 月の風速(同 -2.745)も影響力を持つが, 12 月単月や 2 月単月の風速の説明力は低いという特徴がある。  一方,「後ろずれ年度」で推計すると,12 月の気温以上に 2 月の気温の 影響度が大きいことがわかる。また,1978 年度以降の「センター観測期 間」の推計も,全期間と同じ傾向を示している。すなわち,① 12 月の気 温,②冬季気温の前年度差,そして,やや説明力が落ちるものの,③ 1 月 の風速の 3 つの影響力が強い。 【表 3 】琵琶湖の全循環に与える各自然環境要素の影響度(単回帰) (注)(  )は観測データ数。(出所)筆者が推計,作成。  一般的に,小刻みに激しく変動したり,不連続なジャンプを伴う変数や 閾値を有する変数は今回使用した平均的に関係性を捉える最小二乗法では 説明しにくい。ここでは掲載しなかった全天日射量や最大風速は,短期の 自由度調 整済みR2 t-値 ダービンワ トソン比 自由度調 整済みR2 t-値 ダービンワ トソン比 自由度調 整済みR2 t-値 ダービンワ トソン比 ①気温:12月~2月:彦根市 㻜㻚㻟㻠㻡 㻡㻚㻢㻣㻜 㻞㻚㻟㻞㻢 㻜㻚㻝㻤㻠 㻞㻚㻤㻞㻞 㻝㻚㻞㻝㻞 㻜㻚㻟㻡㻟 㻠㻚㻣㻤㻞 㻞㻚㻜㻠㻡 ②気温:同全年度差 㻜㻚㻞㻤㻞 㻠㻚㻤㻣㻤 㻞㻚㻝㻜㻜 㻜㻚㻝㻝㻠 㻞㻚㻞㻜㻠 㻝㻚㻞㻠㻡 㻜㻚㻟㻡㻟 㻠㻚㻣㻣㻢 㻞㻚㻜㻠㻣 ③気温:12月~1月:彦根市 㻜㻚㻟㻠㻢 㻡㻚㻢㻤㻞 㻞㻚㻞㻢㻝 㻜㻚㻜㻡㻞 㻝㻚㻢㻡㻜 㻝㻚㻟㻡㻡 㻜㻚㻟㻜㻜 㻠㻚㻞㻡㻤 㻝㻚㻥㻥㻜 ④気温:1月~2月:同 㻜㻚㻞㻠㻥 㻠㻚㻡㻟㻝 㻞㻚㻟㻡㻡 㻜㻚㻞㻠㻣 㻟㻚㻟㻟㻥 㻝㻚㻝㻣㻞 㻜㻚㻞㻤㻣 㻠㻚㻝㻟㻞 㻞㻚㻝㻤㻞 ⑤気温:12月気温 㻜㻚㻟㻣㻥 㻢㻚㻜㻤㻟 㻞㻚㻠㻡㻝 㻜㻚㻝㻡㻞 㻞㻚㻡㻡㻟 㻝㻚㻣㻜㻢 㻜㻚㻟㻡㻥 㻠㻚㻤㻟㻟 㻞㻚㻞㻡㻜 ⑥気温:1月気温 㻜㻚㻞㻟㻟 㻠㻚㻟㻡㻞 㻞㻚㻟㻜㻡 㻜㻚㻜㻥㻟 㻞㻚㻜㻠㻢 㻝㻚㻟㻢㻢 㻜㻚㻞㻞㻠 㻟㻚㻡㻠㻠 㻞㻚㻝㻠㻡 ⑦気温:2月 㻜㻚㻝㻡㻝 㻟㻚㻟㻥㻡 㻞㻚㻟㻤㻢 㻜㻚㻞㻠㻠 㻟㻚㻟㻝㻥 㻝㻚㻜㻣㻟 㻜㻚㻝㻥㻟 㻟㻚㻞㻡㻡 㻞㻚㻞㻤㻤 ⑧風速:12月~2月 㻜㻚㻜㻟㻤 㻙㻝㻚㻤㻟㻜 㻞㻚㻞㻞㻣 㻙㻜㻚㻜㻝㻥 㻙㻜㻚㻢㻠㻥 㻝㻚㻝㻢㻢 㻜㻚㻜㻜㻠 㻙㻝㻚㻜㻣㻟 㻞㻚㻝㻣㻢 ⑨風速:12月~1月 㻜㻚㻝㻜㻜 㻙㻞㻚㻣㻠㻡 㻞㻚㻜㻣㻟 㻙㻜㻚㻜㻜㻟 㻙㻜㻚㻥㻡㻞 㻝㻚㻞㻝㻟 㻜㻚㻜㻤㻣 㻙㻞㻚㻝㻥㻞 㻝㻚㻥㻞㻣 ⑩風速:1月~2月 㻜㻚㻜㻤㻠 㻙㻞㻚㻡㻞㻤 㻞㻚㻞㻠㻡 㻜㻚㻜㻞㻡 㻙㻝㻚㻟㻠㻜 㻝㻚㻜㻠㻞 㻜㻚㻜㻡㻤 㻙㻝㻚㻤㻡㻡 㻞㻚㻝㻥㻥 ⑪風速:12月 㻙㻜㻚㻜㻜㻠 㻙㻜㻚㻤㻢㻝 㻞㻚㻞㻟㻤 㻙㻜㻚㻜㻟㻝 㻙㻜㻚㻞㻣㻢 㻝㻚㻞㻥㻠 㻙㻜㻚㻜㻜㻥 㻙㻜㻚㻤㻜㻟 㻞㻚㻝㻡㻠 ⑫風速:1月 㻜㻚㻞㻞㻟 㻙㻠㻚㻞㻟㻜 㻞㻚㻜㻟㻟 㻜㻚㻜㻡㻜 㻙㻝㻚㻢㻞㻣 㻝㻚㻝㻡㻡 㻜㻚㻞㻢㻞 㻙㻟㻚㻤㻥㻡 㻝㻚㻣㻥㻣 ⑬風速:2月 㻙㻜㻚㻜㻝㻜 㻙㻜㻚㻢㻠㻝 㻞㻚㻞㻥㻟 㻜㻚㻜㻜㻜 㻙㻜㻚㻥㻥㻣 㻝㻚㻜㻥㻢 㻙㻜㻚㻜㻞㻟 㻙㻜㻚㻟㻞㻡 㻞㻚㻞㻡㻞 ⑭最大風速:12月~2月 㻙㻜㻚㻜㻝㻠 㻙㻜㻚㻠㻟㻤 㻞㻚㻞㻤㻟 㻙㻜㻚㻜㻞㻝 㻙㻜㻚㻡㻣㻣 㻝㻚㻟㻜㻢 㻙㻜㻚㻞㻡㻞 㻜㻚㻝㻞㻣 㻞㻚㻞㻢㻝 ⑮最大風速:12月~1月 㻜㻚㻜㻜㻟 㻙㻝㻚㻜㻥㻝 㻞㻚㻞㻣㻣 㻙㻜㻚㻜㻟㻞 㻙㻜㻚㻜㻜㻤 㻝㻚㻞㻥㻢 㻙㻜㻚㻜㻝㻢 㻙㻜㻚㻢㻜㻥 㻞㻚㻝㻤㻢 ⑯最大風速:1月~2月 㻙㻜㻚㻜㻣㻝 㻜㻚㻜㻤㻡 㻞㻚㻞㻣㻣 㻙㻜㻚㻜㻞㻤 㻙㻜㻚㻟㻡㻡 㻝㻚㻞㻤㻣 㻙㻜㻚㻜㻜㻣 㻜㻚㻤㻠㻠 㻞㻚㻟㻞㻣 ⑰最大風速:12月 㻜㻚㻜㻝㻡 㻙㻝㻚㻟㻤㻠 㻞㻚㻞㻣㻜 㻙㻜㻚㻜㻝㻞 㻙㻜㻚㻣㻤㻜 㻝㻚㻟㻢㻡 㻜㻚㻜㻞㻡 㻙㻝㻚㻠㻞㻞 㻞㻚㻜㻟㻠 ⑱最大風速:1月 㻙㻜㻚㻜㻝㻟 㻙㻜㻚㻡㻜㻣 㻞㻚㻞㻤㻣 㻙㻜㻚㻜㻜㻥 㻜㻚㻤㻡㻠 㻝㻚㻞㻤㻜 㻙㻜㻚㻜㻞㻝 㻜㻚㻠㻠㻜 㻞㻚㻞㻠㻡 ⑲最大風速:2月 㻙㻜㻚㻜㻝㻠 㻜㻚㻠㻡㻡 㻞㻚㻞㻣㻟 㻜㻚㻜㻜㻥 㻙㻝㻚㻝㻟㻜 㻝㻚㻞㻠㻜 㻙㻜㻚㻜㻜㻥 㻜㻚㻣㻥㻣 㻞㻚㻟㻠㻟 全循環指 数  (注)(  )は観測データ数。(出所)筆者が推計、作成。 表3 琵琶湖の全循環に与える各自然環境要素の影響度(単回帰) 被説明変 数 説明変数 1959 ~2018年度 (60) 1978~2018年度 (41) うち、2.29以降全循環  (33)

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変動が激しく,被説明変数(全循環日)との間の安定的な関係を見い出す ことが難しい。その中で,「全期間」,「センター観測期間」共にt値から みて 12 月の最大風速は,全循環発生時期に影響を及ぼしている可能性は あるが,明確ではない。  しかしながら,表 3 で見たとおり,平均的には説明力が高い「平均風 速」では,全循環が停止した 2018 年度の鉛直混合抑制的な動きを説明しに くいことから,同じ風速でも性格を異にする「最大風速」について検証した。  最大風速を特定期間に風の力が積み上がるエネルギー,すなわち「風の 累積エネルギー」として捉え,このエネルギーが湖内の内部波5) などを生 み出し,鉛直混合を加速させると仮定する。風の累積エネルギーと溶存酸 素量の動きは微細な動きを示すことから,上述の月次データに基づく分析 ではなく,日次データに基づく分析を行う必要がある。ただ,風力データ は気象庁が日次ベースで提供しているものの,溶存酸素量については,観 測日が月 2 ~ 3 回しかないため,日次ベースでは両者の関係は明らかにで きない。  そこで,北澤大輔(2011)により構築された「流れ場生態系結合モデル (以下,Kitazawa モデル)」に基づく数値シミュレーションモデルを用い て,これらの関係を明らかにする。Kitazawa モデルは,気温,全天日射 量,風速などの気象変数を入力値として与えると,流れ場や生態系に係る 状態変数の推移を出力として得る。琵琶湖底層部の溶存酸素量は出力変数 の 1 つであり,得られた溶存酸素量の推移から全循環が発生したのか否か を判定することができる。  分析の手順を以下に示す。まず,滋賀県今津観測所の日中平均気温,日 中平均風速,滋賀県彦根観測所の全天日射量を対象とする時間間隔を 1 日 とする時系列モデルを構築・推計した6)。当該モデルは,気温と全天日射量 5) 内部波については,遠藤修一・奥村康昭(1989)による。 6) 日中平均気温と全天日射量の 2 変数時系列モデルと日中平均風速を対象 とする 1 変数時系列モデルを構築した。このモデル化は,日中平均風速の

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 を対象とする 2 変数時系列モデルと風速を対象とする 1 変数時系列モデル の 2 つの独立なモデルからなる。それぞれのモデルに基づくモンテカルロ・ シミュレーションを行い,気温・全天日射量の組,および風速の先行き 2 年間の気象シナリオを得た。得られた気象シナリオのうち,日中平均気温 と全天日射量のシナリオについて,1 年目の冬季(12 月~ 2 月)気温と 2 年目の冬季気温の差,2 年目冬季気温,2 年目冬季の全天日射量のいずれ も高い値を示す,全循環が停止する可能性の高いシナリオを複数抽出した。 一方,風速シナリオからも,2 年目冬季(1 月)の日中風速の平均値が小さ な値を示す,全循環が停止する可能性が高いシナリオを複数抽出した。こ のようにして抽出した気温・全天日射量シナリオと風速シナリオを組み合 わせた 3 つの気象変数の先行き 2 年間のシナリオ7)を Kitazawa モデルへの 入力変数として与え,琵琶湖の溶存酸素量の数値シミュレーションを行った。  われわれは,3 気象変数のシナリオの結果のうち,2 本のシナリオに着 目した。着目した 2 つのシナリオは,気温・全天日射量のシナリオは同 一8)のものであるが,2 年目 1 月の平均風速が「1.7m/s」,「1.75m/s」と風 速シナリオのみに違いがある。前者を H1 シナリオ,後者を I1 シナリオ と呼ぶ。H1 シナリオと I1 シナリオを入力変数とする Kitazawa モデルの 数値シミュレーション結果について,2 年目 2 月以降に焦点を当て,日次 風速が全循環発生・停止に与える影響を考察し,結果を図 4 に示した。 変動が他の 2 つの気象変数の変動とは独立に定まることを仮定することに なる。この仮定は,日中平均風速が他の 2 つの気象変数との相関係数が比 較的小さい点を踏まえたものである。 7) 合計 70 本の気象シナリオを入力変数とする数値シミュレーションを実行 した。 8) 2 年目の 1 月~ 2 月の日次平均全天日射量が 10.5MJ/m2という過去の実績 値と比べてかなり高い値を取るシナリオである。

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【図 4 】H1 シナリオと I1 シナリオ  ここでは,nについては,3 日と 5 日の 2 ケースを考え,ラグについて は,0 日,3 日,5 日,7 日,10 日,14 日の 6 パターンについて推計した。 その推計結果を表 4 に示した。t値と自由度調整済み決定係数により,最 も説明力の高い推計式を探すと,n= 5 のラグ 10 日のケース(t値 5.8114, 自由度調整済み決定係数 0.4836)であった。 【表 4 】風の累積エネルギー推計式の選択 (出所)筆者が推計,作成 0 2 4 6 8 10

4 H1シナリオとI1シナリオ

I1 風速:m/sec H1 溶存酸素量:mg/L H1 風速:m/sec I1 溶存酸素量:mg/L パラメー タ 標準誤差 t値 自由度調 整済みR2 パラメー タ 標準誤差 t値 自由度調 整済みR2 0日ラグ 㻜㻚㻠㻡㻤㻜 㻜㻚㻡㻡㻠㻤 㻜㻚㻤㻞㻡㻢 㻙㻜㻚㻜㻜㻥㻞 㻝㻚㻝㻜㻤㻢 㻜㻚㻤㻞㻥㻞 㻝㻚㻟㻟㻢㻤 㻜㻚㻜㻞㻞㻜 3日ラグ 㻜㻚㻠㻢㻥㻣 㻜㻚㻡㻟㻤㻝 㻜㻚㻤㻣㻟㻜 㻙㻜㻚㻜㻜㻢㻤 㻝㻚㻤㻤㻣㻤 㻜㻚㻣㻜㻝㻟 㻞㻚㻢㻥㻞㻜 㻜㻚㻝㻡㻝㻠 5日ラグ 㻝㻚㻝㻢㻠㻝 㻜㻚㻠㻤㻤㻡 㻞㻚㻟㻤㻟㻜 㻜㻚㻝㻝㻣㻥 㻞㻚㻟㻟㻤㻢 㻜㻚㻢㻞㻞㻢 㻟㻚㻣㻡㻢㻠 㻜㻚㻞㻣㻞㻡 7日ラグ 㻝㻚㻠㻟㻥㻝 㻜㻚㻠㻢㻠㻟 㻟㻚㻜㻥㻥㻞 㻜㻚㻝㻥㻣㻟 㻞㻚㻤㻜㻞㻤 㻜㻚㻡㻤㻥㻤 㻠㻚㻣㻡㻞㻟 㻜㻚㻟㻤㻝㻠 10日ラグ 㻝㻚㻟㻥㻠㻝 㻜㻚㻡㻠㻟㻤 㻞㻚㻡㻢㻟㻣 㻜㻚㻝㻟㻣㻟 㻟㻚㻢㻝㻤㻢 㻜㻚㻢㻞㻞㻣 㻡㻚㻤㻝㻝㻠 㻜㻚㻠㻤㻟㻢 14日ラグ 㻝㻚㻣㻜㻢㻜 㻜㻚㻡㻢㻣㻡 㻟㻚㻜㻜㻢㻜 㻜㻚㻝㻤㻢㻣 㻟㻚㻠㻠㻣㻠 㻜㻚㻢㻡㻠㻢 㻡㻚㻞㻢㻢㻝 㻜㻚㻠㻟㻟㻜  (出所)筆者が推計、作成 表4 風の累積エネルギー推計式の選択 後方3日風エネルギー(n=3) 後方5日風エネルギー(n=5)

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案  上で指摘した通り,1 月風速は全循環発生の遅早に影響を及ぼす変数で あることが表 3 から読み取れる。この点を踏まえると,1 月の平均風速で 大きな値を示す I1 シナリオの方が,H1 シナリオより全循環が生じやすい はずである。しかし,数値シミュレーションの結果は予想に反するもので, H1 シナリオでは全循環が発生し,I1 シナリオでは 2 年目 3 月末までに全 循環は発生しなかった。それぞれのシナリオに付随した溶存酸素量の変動 をみると,H1 シナリオの溶存酸素量(太い実線)は,3 月 8 日に初めて 9.5mg/L を超え全循環相当の鉛直混合が確認できたのに対し,I1 シナリ オ(同,太い破線)では 6mg/L を超えず鉛直混合は確認されないという シミュレーション結果となった。  数日間連続で強い風が吹いた場合には,内部波などを誘発する強い風の 累積エネルギーが発生すると考えられる。H1 シナリオは,当該期間の平 均風速の値は I1 シナリオよりも小さな値を示すものの平準的に風の累積 エネルギーが分布している。気温など他の指標が鉛直混合促進的に効果 的に働く 2 月中に,同エネルギーが累積的に加わることにより,全循環が 発生したと考えられる。一方,I1 シナリオでは,風速の期間平均値は H1 シナリオよりも大きな値を示すものの,2 月中は穏やかな風速にとどまり, 3 月後半にようやく速い風速を示す姿があったため,鉛直混合促進的に強 く働く時期を逃していたと考えられる。  そこで,定量分析のため,風の累積エネルギーを指標化する。具体的には, 「n 日間の累積風エネルギー」を,日次平均風速の後方 n 日間単純平均値と 定義し「n 日風エネルギー」と呼ぶ。また,n 日風エネルギーは更にラグを 伴い琵琶湖の水循環に作用すると考えられ,0 日~ 10 日のラグを組み合わ せることとした。この n 日風エネルギーが溶存酸素量の動きと連動している 構造式群から風速の出方が風の累積エネルギーを作り出す仕組みを探る。  この推計式を用いて,H1 シナリオの溶存酸素量の推計値と実績値をプ ロットしたのが図 5 であるが,溶存酸素量の実績値の上昇過程を推計値が よく追えている。

(20)

【図 5 】風エネルギーを用いた溶存酸素量推計 (出所)筆者が推計,作成 7 .ダブルトリガーのインデックス型全循環デリバティブの提案  全循環停止リスクのデリバティブの組成には複数の種類が考えられるが, 投資家に理解しやすい形として,ここでは天候デリバティブなどで広く利 用されるインデックス型のデリバティブを考える。まず,表 3 の説明変数 候補を最適に組み合わせた重回帰分析を行い,多くの推計トライアルの結 果から説明力の高い式を表 5 に示した。 3 4 5 6 7 8 9 10 11

5 風エネルギーを用いた溶存酸素量推計

H1溶存酸素量実績 同推計値 mg/L (出所)筆者が推計、作成

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自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 【表 5 】全循環時期の推計結果 (注)データは,気象庁データベース:彦根市から。 (出所)筆者が推計,作表。  説明変数は,気温(単月の平均気温と冬季の前年度との気温差)と風速 (平均風速,最大風速)の組み合わせである。全期間(推計式 1),セン ター期間(推計式 3)ともに,① 12 月の気温,②気温差,③ 1 月平均風速, の 3 変数の組み合わせのフィットがよい。明示的に最大風速を説明変数に 加えた推計式 4 は 12 月最大風速のt値が 1.6388 にとどまり,予想通り説 明力が低い。  妥当なダービンワトソン比を示した式の中から,説明変数のt値と自由 度調整済み決定係数から,ここでは推計式 3 を選定することした。このパ ラメータを基に溶存酸素量の推計値を実績値に合わせてプロットしたもの が図 6 である。      パラメータ t値 標準誤差 パラメータ t値 標準誤差 気温(12月) 0.1794 3.7893 0.0473 気温(12月) 0.1770 2.5646 0.0690 気温差(対前年度12 ~2月) 0.0342 2.2683 0.0151 風速(1月) -0.4741 -3.4211 0.1385 風速(1月) -0.2624 -1.6758 0.1566 定数項 2.8162 4.6327 0.6079 定数項 自由度調整済み決 定係数, ダービンワトソン比 自由度調整済み決 定係数, ダービンワトソン比 標本数 標本数 パラメータ t値 標準誤差 パラメータ t値 標準誤差 気温(12月) 0.1979 3.6361 0.0544 気温(2月) 0.1937 3.3450 0.0579 気温差(対前年度12 ~2月) 0.0541 2.8132 0.0192 風速(1月) -0.4213 -2.2164 0.1901 最大風速(12月) -0.0910 -1.6388 0.0556 定数項 2.5249 3.3181 0.7609 定数項 2.7419 3.7117 0.7387 自由度調整済み決 定係数, ダービンワトソン比 自由度調整済み決 定係数, ダービンワトソン比 標本数 標本数,  Log Likelihood   (出所)筆者が推計、作表。 0.5389, 2.266 0.1993 1.5629 表5全循環時期の推計結果 説明変数 推計式1 (1959-2018) 説明変数 推計式2  (1959-2018) 全循環2.29以降 60 33 説明変数 推計式3 (1978~2018) 説明変数 推計式4 (1978~2018、最大風速反映) 0.5647, 2.1989 0.2269, 2.1072 41 41   (注)データは、気象庁データベース:彦根市から。

(22)

【図 6 】全循環日の推計(インデックスモデル)  過去 4 回の「3 月全循環年度」の実績値もある程度正確に追えている。 ただ,第 4 節で触れたように,全循環が停止した 2018 年度の推計値は,2 月の下旬に全循環が発生することを示唆しており,推計値と現実(ここで は,便宜的にインデックスを 4 として表示)との乖離が生じている。この 場合,琵琶湖では現実に全循環が停止しているにも関わらず,デリバティ ブの資金を受け取れないという,いわゆるベイシスリスクが顕在化するこ とになる。その大きな原因が,全循環の動きに臨時的,特別な要因として 大きな影響を与える前節で示した風の累積エネルギーであると考えられ る。したがって,インデックス型のデリバティブの組成には,平均的な動 きを示す上記の構造式(トリガーは,例えば,全循環日インデックス〇〇 以上)に加え,風の累積エネルギーという臨時的,特別な動きを計測する 「n 日風エネルギー」(同じく,2 月末の日次平均風速の後方 5 日間 10 日 ラグ値で〇〇 m/s 以下)のダブルトリガーとして採用することが考えら れる。 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 19 78 19 79 19 80 19 81 19 82 19 83 19 84 19 85 19 86 19 87 19 88 19 89 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 20 14 20 15 20 16 20 17 20 18

6 全循環日の推計(インデックスモデル)

全循環日インデックス(実線) 同推計値(破線)

(23)

自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 8 .終わりに  観測史上初めての琵琶湖の全循環停止など,温暖化に伴う自然環境の変 調が世界各地で顕在化している。ただ,そのような変化があったとしても, 自然環境や生態系の価値は潜在化しているため,人々は変化に気づきにく く,注目もされにくい。また,何よりもその価値は,目に見える形で新た なキャッシュフローを生まない(無意識に恩恵を享受している)。被害が 明確に見える自然災害などと異なり,人的,物的被害が現実に発生してい ない状況下で,環境保全のための大きな対応資金を国や地方自治体が拠出 したり,将来のキャッシュフローを生まない事象に対して,民間の金融 機関からの融資などの資金調達も難しい。しかも,仮に実現したとしても, その資金には,元本の返済義務が生じる。  すなわち,自然環境保護対策の資金を確保するには,元本返済の必要の ない,①一般的な寄付の募集か,②潜在化しているリスクを明確に評価し, 直接金融市場にそれを移転することを通じて資金調達を行うことしか現実 には方策がないと考えられる。前者で大きな金額を集めることは事実上困 難であることから,後者,すなわち,本稿で提案したような環境リスク ファイナンスを活用することが重要となる。  ただ,ここで使用するリスクファイナンスは,既に汎用的に使用されて いる天候デリバティブや多くの調達実績がある地震や台風についての大災 害ボンドとは異なり,リスク評価からモデルの作成まで個別事象に対応し た形で新規に行う必要がある。  将来リスクが顕在化する可能性のある自然環境事象について,顕在化し た時に即座に対応できるように,事前にステークホルダーが協力して,早 い段階から環境リスクファイナンス組成の準備を進めておくことが重要で ある。  本論文は,文部科学省科学研究費及び公益財団法人損害保険事業総合研

(24)

究所の損害保険研究費助成制度による研究成果の一部である。

(久保英也:立教大学 21 世紀社会デザイン研究科)   (菊池健太郎:滋賀大学経済学部)           (北澤大輔:東京大学生産技術研究所)        

【参考文献(本文で直接引用していない参照論文も含む)】

1)  Cao, M and Wei, J (2004)“Weather Derivatives Valuation and Market Price of Weather Risk,” Journal of Futures Markets, Vol.24, pp.1065-1089.

2)  Kitazawa, D, Kumagai, M, Hasegawa, N (2010) “Effects of Internal Waves on Dynamics of Hypoxic Waters in Lake Biwa”, Journal of the Korean Society for Marine Environmental Engineering, Vol.13, No.1. pp.30-42. 3)  Robert J. D, Rutger R (2008) “Spreading dead zones and consequences for

marine ecosystems” Science, Vol.321, Issue 5891, pp.926-929.

4)  Straile, D, Jöhnk, K and Rossknecht, H (2003) “Complex effects of winter warming on the physicochemical characteristics of a deep lake,” Limnology and Oceanography, Vol.48, pp.1432-1438.

5)  牛垣里奈・宮本誠・右田裕二・鞆憲弘・山道哲洋・大庭大輔(2018)「池田 湖の水質変動及び全循環発生要件について」『鹿児島環境保健センター年報 2018』Vol.19.pp.40-46。 6)  尾辻裕一・坂元克行・貴島 宏・永井 里央・宮ノ原 陽子・長井一文(2012)「池 田湖における全層循環について」『鹿児島県環境保健センター所報』第 13 号, pp.41-49。 7) 小川 浩昭(2013)「リスクファイナンス論の新展開」『商学論集』第 59 巻 3・4 号   2013 年 3 月,pp.29-54。 8)  環境省 水・大気環境局 水環境課(2013)「気候変動による水質等への影響 解明調査報告」pp.1-32。 9)  北澤大輔(2011)「温暖化が大型淡水湖の循環と生態系に及ぼす影響評価に 関する研究:(1)琵琶湖の全循環と生態系モデリングに関する研究」『環境 省環境研究総合推進費終了研究成果報告書』D-0804-1,pp.1-24。 10) 北澤大輔・熊谷道夫(2007)「流動場―生態系結合モデルによる琵琶湖生態 系シミュレーション」『生産研究』59 巻 1 号,pp.21-26。 11) 久保英也(2015)「環境リスクファイナンスの提案‐琵琶湖の全循環停止リ スクを対象として」『保険学雑誌』第 630 号,pp.43-60。 12) 熊谷道夫・早川和秀・焦春萌・辻村茂男・伊藤靖彦・田坂明政・福中康博・

(25)

自然環境保護に資する環境リスクファイナンスの提案 伊藤博・細田尚・杉山雅人・伴修平・朴虎夫・北澤大輔(2008)「水素エネ ルギー産学官連携共同研究」『滋賀県琵琶湖環境科学研究センター研究報告 書』第 4 号,pp.1-8。 13) 熊谷道夫・川村淳一・高木純(2009)「水電解による水質改善と自然エネル ギー利用への挑戦」『沿岸域学会誌』22 号,pp.31-35。 14) 財団法人地球環境戦略研究機関・NKSJ リスクマネジメント株式会社(2012) 「環境リスクを移転する仕組みに関する基礎的情報調査」pp.1-72。 15) 斎藤誠・多々納裕一・高木郎義(2005)『リスクファイナンスの役割:災害 リスクマネジメントにおける市場システムと防災政策』勁草書房,pp.86-106。 16) 焦春萌・青木眞一・奥村陽子・南真紀・矢田稔・石川可奈子・中島拓男・ 石川俊之・辻村茂男(2011)「琵琶湖の低酸素化の実態把握および北湖生態 系に与える影響の把握に関する解析モニタリング 琵琶湖の低酸素化の実態 およびその生態系に与える影響」『滋賀県琵琶湖環境科学研究センター研究 報告書』平成 20 ~ 22 年度 Vol. 7,pp.150-181。 17) 焦春萌・石川可奈子・桐山徳也・井上栄壮・永田貴丸(2012)「調査解析 1 北湖深水層と湖底環境の把握」『滋賀県琵琶湖環境科学研究センター研究報 告書』平成 24 年度版,pp.25-32。 18) 田中賢治(2008)「自然災害リスクの特殊性とそのリスクマネジメントの困 難性:企業の自然災害リスクマネジメントに関するサーベイ」『内閣府経済 社会総合研究所 ESDI Discussion Paper Series』 No.199,pp.1-22。

19)永田俊・熊谷道夫・吉山浩平(2012)『温暖化の湖沼学』京都大学学術出版会。 20) 原田宙幸(2008)「PEM 水電解による高圧縮水素エネルギー発生装置」『水 素エネルギーシステム』Vol.33,No.3,pp.36-37。 21) 宮元誠・鞆憲弘・中尾兼治・右田裕二・山田正人(2016)「池田湖の全層循 環後の水質について」『鹿児島県環境保健センター所報』第 17 号(2016), pp.101-104。 22) 丸茂恵右・横田瑞郎(2012)「貧酸素水塊の形成および貧酸素の生物影響に 関する文献調査」『海生研研究報告』Vol.15,pp.1-21。 23) 山室真澄・神谷宏・石飛裕(2011)「汽水湖沼である宍道湖における成層 に伴う貧酸素化と COD(Mn)との関係」『水環境学会誌』Vol.34, NO.4, pp.57-64。

24) 山本毅・Tee Kian Heng・郷古浩道 , (2005)「天候リスクの戦略的経営― EaR とリスクスワップ―」朝倉書店。

25) 吉田毅郎・北澤大輔・周金鑫・朴相圭・久保英也・菊池健太郎・吉山浩平(2018) 「琵琶湖における全循環の数値シミュレーションと気候変動の関係」『生産 研究』,Vol. 70(1),pp.25-28。

参照

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