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放射性元素を吸着する低コストマテリアルの開発

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Academic year: 2021

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– 148 – 19505

放射性元素を吸着する低コストマテリアルの開発

Development of Low-cost Materials that Adsorb Radioactive

Element

援助対象者 Scholarship Student: 手跡 雄太  Yuta SHUSEKI

東京理科大学大学院理工学研究科 博士課程後期 2 年

Graduate School of Science and Engineering, Tokyo University of Science, PhD Student (D2)

E-mail: [email protected]

研究指導者 Academic Leader: 竹内 謙  Ken TAKEUCHI

教授,Professor E-mail: [email protected] 抄 録 福島原発事故は多くの放射性物質を外部に放出したことで多大なる被害をもたらした.この事故か ら申請者は放射性元素を除去するマテリアル開発の研究を行っており,これまでに,炭酸カルシウ ムのアモルファス構造は非常に高い Sr 除去能を有することを見出した.さらなる性能向上のため に,本研究ではこの Sr 除去機構を解明するため,原子・分子レベルの観点から評価し吸着メカニ ズム解明を試みた. ABSTRACT

The Fukushima nuclear accident caused a great deal of damage by releasing a large amount of radioactive material to the outside. From this accident, the applicant is conducting research on the development of materials that remove radioactive element, and has found that the amorphous structure of calcium carbonate has a very high Sr removability. To further improve the performance, in this study, in order to elucidate this Sr removal mechanism, we evaluated it from the viewpoint of atomic and molecular levels and tried to elucidate the mechanism. 成 果 の 概 要 1.緒言 2011 年の福島第一原発事故は多くの放射性 物質を施設外部に放出したことで多大なる被害 をもたらした.この事故から申請者は放射性元 素を吸着するマテリアル開発の研究を行ってお り,これまでに,炭酸カルシウムの結晶とアモ 手跡 雄太

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ルファス構造ではアモルファス構造の方が非常 に高い Sr 吸着能を有することを見出した. アモルファス構造の金属元素除去メカニズム を明らかにすることができれば,より高性能な マテリアルを開発すること可能である.そのた めには材料開発において原子レベルでの構造や 電子状態を知ることは物性の高機能化を行う上 で非常に重要な情報である. そこで,本研究では放射光 X 線・広域 X 線 吸収微細構造を用いた構造情報をもとに,Par distribution function(PDF)を用いて乱れた構造 に潜んだ構造特徴量を抽出し,放射性元素吸着 メカニズムの解明を試みた. 2.実験方法と解析 2.1 マテリアルの合成方法 アモルファス構造を有する CaCO3 (Amor-phous Calcium Carbonate,以降ではACCと呼ぶ.) を合成するために CaCl2 - Na2CO3 - NaOH 系水 溶液反応を用いた.0.10 mol/dm3の Na 2CO3溶 液に合成時の pH を調整するため,あらかじめ 0.10 mol/dm3の NaOH 溶 液 を 添 付 後, こ れ に 0.10 mol/dm3の CaCl 2溶液を添加した.なお,

CaCl2,Na2CO3,NaOH 溶液それぞれの溶液量 を 0.10 dm3,反応温度を 0°C とした.溶液が白 濁後すぐにコロイド状物質を濾過し,0°C まで 冷却したエタノールを用いて洗浄後,乾燥機で 24 h 乾燥して試料とした. 2.2 高輝度放射光 X 線回折 アモルファス材料の構造を明らかにするため には,得られるQ 範囲を広くし,実空間分解 能を向上させる必要がある.そこで,本研究は 高輝度放射光 X 線回折装置を有する SPring-8 の BL-04B2 にて計測を行なった.また,測定 対象の炭酸カルシウムは多種類の原子から構成 されるため,Faber - Ziman 型の構造因子 S(Q) を使用した[1] 得られた構造因子S(Q) は以下の式から算出 した.

2 2 2 2 ( ) c c Σ Σ   Σ Σ n n i j i j i j n n i j ij ij ij I Q f Q f Q S Q f Q f Q f Q f Q S Q W Q S Q      (1) (1) (散乱ベクトルQ: Q = (4π/λ)sinθ,散乱角:λ, 原子i の濃度:ci,原子散乱因子:fi(Q),i-j 原 子間相関に対する重み因子:Wij) また,アモルファス物質の構造を記述するた め,簡約二対分布関数(Reduced pair distribution function),G(r) を使用した.これはある 1 つの 原子から距離r だけ離れた位置に存在するもう 一つの原子を見出す確率を表す[2]

 

max min 2 1 sin d π Q Q G r 

Q S Q  Qr Q (2) (2) 2.3 広域 X 線吸収微細構造 本研究で使用している Sr 濃度は実際の汚染 水濃度に近づけたため,非常に微量であり,実 験室レベルの装置で Sr を測定することが難し い.そのため,適用可能な濃度範囲が広い広域 X 線 吸 収 微 細 構 造(Extended X-ray absorption fine structure)を使用した.計測は SPirng-8 の BL01B1 を使用し,Sr の K 吸収端計測を行った. 解 析 は Bruce Ravel ら が 作 成 し た Athena と Artemis を使用し,吸収端近傍 XAFS スペクト ルの各種処理,EXAFS スペクトルのフィッティ ングを行った. 3.結果と考察 3.1 合成マテリアルの評価と Sr 除去能 合成したアモルファス炭酸カルシウムの Sr 除去能を評価するため,Sr 水溶液に懸濁後採 取した濾液を原子吸光光度計にて評価した(表 1).また,Sr 除去能を比較するために,結晶 の炭酸カルシウム(Calcite 構造を有するもの) でも同様の実験を行なった.この結果,ACC は結晶と同組成にも関わらず,約 70 倍高い Sr 除去能を示すことが明らかとなった.

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また,従来研究より,粉末の吸着現象には比 表面積の影響が大きく作用することが報告され ているため[3],アモルファス・結晶共に BET にてそれぞれの比表面積を評価した結果を表 1 に示す.ACC の方が 1.77 倍大きい比表面積を 有していたが,Sr 除去能の結果と比較すると, 比表面積の寄与は大きくなかった.以上より ACC の高い Sr 除去能は比表面積の影響だけで はなく,アモルファス構造が大きく寄与してい ることが示唆された. 3.2 高輝度放射光 X 線回折データと PDF 解 析 3.1 の結果より,ACC の Sr 除去能にはアモ ルファス構造の影響が大きく寄与していること が示唆された.このメカニズムを明らかにする ためにはアモルファス構造を理解することが重 要であり,その構造を解析する必要がある.そ こで,本研究では高輝度放射光 X 線を用いて, Sr を吸着する前後の構造解析を行なった.図 1(a),(b) に Sr を吸着する前後の ACC の構造因 子S(Q) を示す.また,得られた構造因子 S(Q) をフーリエ変換しG(r) を得た. 図 1 にあるように Sr を吸着する前の ACC は ブロードなパターンを示すのに対し,Sr を吸 着した後の ACC はシャープなピークを示して いることから,Sr 吸着後のアモルファス炭酸 カルシウムは結晶化していることがわかった. また,PDF 解析の結果,アモルファス炭酸カ ル シ ウ ム の そ れ ぞ れ の 原 子 相 関 は C-O… 1.26 Å,Oc-Oc…2.40 Å,Ca-C…2.91 Å に 帰 属 できた. 以上より,Sr を吸着する前後の構造は大き く変化しており,PDF からアモルファス炭酸 カルシウムの短距離構造を明らかとした. 3.3 EXAFS による Sr の配位状態評価 3.2 からアモルファス炭酸カルシウムは Sr 水 溶液中で懸濁することで結晶化した.結晶化後 の ACC は炭酸カルシウムの Calcite 構造であり, Sr がどの位置に存在するか広域 X 線吸収微細 構造(EXAFS)を用いて評価を行なった. Table 1 Sr removability evaluation and specific surface

area measurement.

ACC CaCO3

Sr removability (mg/g) 9.71 0.14 Specific surface area (m2/g) 11.7 6.6

Fig. 1 (a, b) X-ray structure factors S(Q), (c) Reduced pair distribution function G(r), red line is after Sr adsorption, blue line is before Sr adsorption.

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図 2(a) で は EXAFS 関 数 に Fitting を 行 い, EXAFS 関数をフーリエ変換し,得られた動径 構造関数を図 2(b) に示す.この結果より,Sr-O 間の原子間距離は 2.52 Å であり,酸素の配位 数が 9.4 であった. 炭酸カルシウムには主に Calcite,Aragonite, Vaterite,Monohydro calcite,Ikaite (CaCO3·6H2O) があり,それぞれの Ca に配位する O の数と原 子間距離を表 2 にまとめる. Sr を吸着した ACC の EXAFS から算出した 配 位 数 と 原 子 間 距 離 を 表 2 と 比 較 す る と, Aragonite 構造に最も近い構造を取っているこ とが明らかとなった. 以上より,Sr を吸着した後の ACC の構造は 平均構造が Calcite であり,Sr が存在する局所 構造は Aragonite に近い構造を有していること を明らかとした. 4.結言 アモルファス炭酸カルシウムの Sr 除去機構 を解明することを目的に,放射光 X 線回折や 広域 X 線吸収微細構造を用いて評価を行った. その結果,アモルファス炭酸カルシウムの単距 離構造や,吸着後の Sr の配位状態を明らかと することができた.しかし,これらのデータで は Sr 吸着機構を明らかにするためには情報不 足であり,得られた構造因子S(Q) や PDF の結 果をもとに 3 次元構造モデル構築し,より詳し い解析が必要である.そのためには,モンテカ ルロ法を用いて実験値をもとにモデリングを行 う Revers Monte Carlo 法や分子動力学法などの 実験・理論の両観点からのアプローチが必要で あり,今後の課題でもある.

参考文献

[1] Faber T.E., Ziman J.M., A theory of the electrical prop-erties of liquid metals, Philosophical Magazine, 11 (109) 153–173.

https://doi.org/10.1080/14786436508211931

[2] Keen D.A., Acomparsion of various commonly used correlation function for describing total scattering, Journal of Applied Crystallography, 34 (2001) 172–177. https://doi.org/10.1107/s0021889800019993

[3] Mori C., Suzuki S., Teshima K., Lee S., Kamikawa H., Oishi S., Metal ion adsorption ability of activated car-bons surface-modified by a molten KNO3, 61 (2010) 698–702. https://doi.org/10.4139/sfj.61.698

[4] Ishizawa N., Setoguchi H., Yanagisawa K., Scientific Reports, 3(2832) (2013) 1–3.

https://doi.org/10.1038/srep02832

[5] Pokroy B., Fieramosca J.S., Von Dreele R.B., Fitch E.N., Caspi E.N., Zolotoyabko E., Atomic structure of biogenic aragonite, 19 (2007) 3244–3251.

https://doi.org/10.1021/cm070187u

Table 2 O coordination numbers and Ca-O interatomic distance. O coordination numbers Ca-O interatomic distance Calcite[4] 6 2.36 Aragonite[5] 9 2.56 Vaterite[6] 6 2.41 Monohydro calcite[7] 8 2.46 Ikaite[8] 8 2.48

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[6] Wang J., Becker U., Structure and carbonate orientation of vaterite CaCO3, American Mineralogist, 94 (2009) 380–386. https://doi.org/10.2138/am.2009.2939 [7] Swainson I.P., The structure of monohydrocalcite and

the phase composition of the beachrock deposits of lake butler and lake fellmongery, south Australia, American

Mineralogist, 93 (2008) 1014–1018. https://doi.org/10.2138/am.2008.2825

[8] Tateno N., Kyono A., Structural change induced by de-hydration in ikaite (CaCO3·6H2O), Journal of Miner-alogical and Petrological Sciences, 109 (2014) 157– 168. https://doi.org/10.2465/jmps.140320

外 部 発 表 成 果 口頭・ポスター発表

手跡 雄太,小原 真司,尾原 幸治,伊奈 稔哲,

Matt Tucker,Marshall T Macdonnell,竹内 謙,“ア

モルファス炭酸カルシウムの結晶化に伴う Sr2+

吸着特性評価”,日本セラミック協会第 33 回秋 季シンポジウム(Sapporo, Sept. 2, 2020)1B13.

Table 1  Sr removability evaluation and specific surface  area measurement.
Fig. 2  (a) EXAFS spectrum, (b) Radial distribution function.

参照

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